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審決分類 審判 一部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z25
審判 一部無効 観念類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z25
管理番号 1172487 
審判番号 無効2005-89159 
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-03-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-12-09 
確定日 2008-01-18 
事件の表示 上記当事者間の登録第4720921号商標の商標登録無効審判事件についてされた平成18年10月25日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成18年(行ケ)第10528号、平成19年5月31日判決言渡)があったので、更に審理の上、次のとおり審決する。 
結論 登録第4720921号の指定商品中、第25類「被服」についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4720921号商標(以下「本件商標」という。)は、「POLO COUNTRY」の文字を標準文字で書してなり、平成12年8月7日に登録出願され、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同15年10月24日に設定登録されたものである。

第2 請求人の引用商標
請求人が、本件商標の登録無効の理由に引用する登録第1434359号商標(以下「引用商標1」という。)は、「POLO」の欧文字を横書きしてなり、昭和47年6月13日に登録出願され、第17類「ネクタイ、その他本類に属する商品、但し、ポロシヤツ及びその類似品ならびにコートを除く」を指定商品として、同55年9月29日に設定登録されたものである。
同じく、登録第1447449号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、昭和47年4月22日に登録出願され、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、同55年12月25日に設定登録され、その後、平成11年8月11日に、商標権一部取消し審判により指定商品中「布製身回品(他の類に属するものを除く)」について、同じく商標権一部取消し審判により指定商品中「寝具類(寝台を除く)」について、登録を取り消す旨の審判の確定登録がされ、さらに、同13年2月14日に指定商品を第5類「失禁用おしめ」、第9類「事故防護用手袋,防火被服,防じんマスク,防毒マスク,溶接マスク」、第10類「医療用手袋」、第16類「紙製幼児用おしめ」、第17類「絶縁手袋」、第21類「家事用手袋」及び第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子」とする指定商品の書換登録がされたものである。
同じく、登録第2721189号商標(以下「引用商標3」という。)は、「POLO」の欧文字を横書きしてなり、昭和56年4月6日に登録出願され、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、平成9年5月2日に設定登録されたものである。
同じく、登録第4015884号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、昭和58年5月11日に登録出願され、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、平成9年6月20日に設定登録されたものである。
同じく、登録第4041586号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲(3)のとおりの構成よりなり、昭和58年5月11日に登録出願され、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、平成9年8月15日に設定登録されたものである(以下、上記の5件を一括していうときは、「各引用商標」という。)。

第3 請求人の主張
請求人は、「商標法第46条の規定により、本件商標の指定商品中の「被服」に係る登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第53号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
(1)本件商標について
本件商標は、「POLO」の文字と「COUNTRY」の文字を一文字の間隔をおいて表した「POLO COUNTRY」なる構成の商標である。「POLO」は「ポロ」と称呼され、「COUNTRY」は「カントリー」と称呼され、各々「馬上競技、ペルシア起源の騎乗競技」、「国、地方、田舎」等の意味を有する語として英和辞典のみならず広辞苑にも記載があり(甲第10号証及び甲第11号証)、本件商標が、「POLO」と「COUNTRY」よりなるものであることは、その構成自体から明らかである。一方、「POLO COUNTRY」なる語は、辞書に記載もなく、全体として特定の熟語や団体名称を表す既成の観念を示すものではないのであるから、本件商標に接した需要者は、「POLO」と「COUNTRY」の文字部分を分離して認識するのが通常であり、本件商標が、一体不可分のものと認識される理由はない。本件商標は、外観及び観念上、各構成部分がこれを分離して観察することが取引上不自然と考えられるほど不可分一体に結合しているということはできず、簡易迅速を尊ぶ取引においては、前段の「POLO」の文字部分のみが分離して認識されて自他商品の識別標識として機能することがあるのは経験則上明らかである。
よって、本件商標からは「ポロ」の称呼及び「POLO」の観念が生じる。
また、「COUNTRY」なる語は、「POLO」の語と異なり、中学程度で習得すべき基本的な学習語であって、我が国で非常によく知られ慣れ親しまれている語に当たる(甲第10号証及び甲第11号証)。したがって、本件商標は、その前段たる「POLO」を受けて、「POLO COUNTRY」全体として、「ポロの国」、「ポロの地方」、「ポロの田舎」というような意味合いを容易に認識せしめるものである。よって、「POLO」の文字は、重要な意味を持つ言葉として認識されるものであり、本件商標に接した取引者及び需要者は、「POLO」の文字部分に着目して、出所を連想すると考えるのが自然である。
さらに、「COUNTRY」(カントリー)なる語は、「カントリー雑貨」(甲第12号証)、「カントリー家具」(甲第13号証)、「カントリーショップ」(甲第14号証)、「カントリードール」(甲第15号証)等、「田舎・田園風の素材・デザイン」等、商品の材質ないしデザインを示す語として、一般に親しまれ、使用されている語である。
本件指定商品「被服」についても、同様に、「カントリー・ウエア」(甲第16号証ないし甲第20号証)、「カントリー・ルック」(甲第18号証、甲第20号証及び甲第21号証)、「カントリー・スーツ」、「カントリー・ジャケット」(甲第17号証及び甲第18号証)、「カントリー・ストライプ」(甲第18号証)なる語が、特定の「被服」の用途、材質ないしデザインを表す普通名詞として各種服飾辞典に記載されていて、業界誌及び業界紙のコレクションレポート(甲第22号証ないし甲第24号証)、ストリートファッションレポート(甲第25号証)、日本ファッション史(甲第26号証)、ファッション関連の書籍(甲第27号証ないし甲第29号証)のみならず、広く一般消費者を対象としたブランド紹介(甲第30号証及び甲第31号証)、ショッピングサイト(甲第32号証ないし甲第36号証)、その他のウェブサイト等(甲第37号証ないし甲第40号証)に至るまで、「被服」の商品の内容を伝えるにあたって頻繁に使用されるほど、「カントリー」の語は、「被服」の特定の用途、材質ないしデザインを表す語として一般に慣れ親しまれている。
すなわち、本件商標中「COUNTRY」なる語は「カントリー」の称呼を生じ、「国、地方、田舎」等の意味を有する普通名詞であるところ、「被服」との関係においては、「力ントリーウェア」として、ツイードのノーフォーク・ジャケットやニッカボッカーズ等を典型とする「英国の田園紳士たちがその所領で着用した田舎服・運動服」を起源とし、現在では、「カントリーフィーリング」、「カントリータッチ」、「カントリー風」等、「田舎や郊外で着る服」、ツイード素材やレース、フリル、花柄模様など「田舎・田園のイメージを表現した素材、デザイン、色合いを用いたスポーティなウウェア、カジュアルウェア」という、「被服」の特定の用途、材質ないしデザインを表す語として、一般に親しまれ使用されている語であることは明白である。
したがって、本件商標を、「被服」に使用した場合、本件商標中「COUNTRY」なる語は、その商品の用途、材質ないしデザインを表す普通名詞として認識し、「POLO」の文字部分を自他商品の識別機能を果たすものとして認識すると考えるのが自然である。
よって、本件商標において自他商品の識別機能を果たす要部は、「POLO」の文字部分である。
(2)引用商標との対比
引用商標1及び3は、正に「POLO」の文字のみからなるものであり、本件商標の要部と称呼、外観において同一である。
引用商標2、4及び5は、外観上、筆記体で書した「Polo」及び、「POLO」の文字部分が、他の図形及び文字部分とは異なる態様で大きく書されており、外観及び観念上、各構成部分がこれを分離して観察することが取引上不自然と考えられるほど不可分一体に結合しているということはできない。したがって、図形部分を除いた筆記体で書した「Polo」の文字部分のみ、「SPORTS」の文字部分を除いた筆記体で書した「Polo」、「POLO」の文字部分のみが分離して認識されて自他商品の識別標識として機能することがあるのは、経験則上明らかである。よって、引用商標2、4及び5からは、「ポロ」の称呼及び「POLO」の観念が生じる。
さらに、引用商標2の文字部分は筆記体で書した「Polo」のみであり、引用商標4及び5中の「SPORTS」なる語が「スポーティなウェア、カジュアルウェア」という「被服」の用途ないし品質を示す語であって自他商品を識別する標識として機能しない語であることが顕著な事実であることからしても、引用商標2、4及び5中、自他商品の識別機能を果たす要部は、筆記体で書した「Polo」、「POLO」の文字部分であり、本件商標の要部と称呼において同一であって外観において書体を変更させたものにすぎない。
そして、「POLO」の語が、主として英国及び旧英国領の諸地域等において行われている馬上球技の普通名詞(甲第10号証)として我が国でも慣れ親しまれていること、襟付の半袖のカジュアル衣料を示すポロシャツの語が、本来ポロ競技の選手が着用したことにちなむもので、今日、広く一般に普通名詞として用いられていることから、本件商標の要部と引用商標1及び3並びに引用商標2、4及び5の要部とは、いずれも、取引者及び需要者に、ポロ競技ないしその略称であるポロの観念を生じさせるものである。
したがって、本件商標と各引用商標は、称呼、外観及び観念において類似する。
本件商標と各引用商標とは、称呼、外観及び観念において類似しており、指定商品「被服」の需要者は、通常は特別の専門知識を有するものではない一般消費者であることも考慮すれば、本件商標と各引用商標を、本件指定商品に使用する場合、商品の出所につき誤認混同を生じるおそれが極めて高い。
したがって、本件商標の指定商品「被服」に係る登録は、商標法第4条第1項第11号に違反する。
(3)他の審判・裁判例
「ポロカントリー」の片仮名文字と「POLO COUNTRY」の欧文字を上下二段に横書きした商標(登録第2579042号商標及び登録第2723387号商標)に係る審判、裁判においても、「『POLO COUNTRY』『ポロカントリー』との文字ないし語が、全体として特定の熟語や団体名称を表すものとして一般の取引者・需要者によく知られているものとは認められない。そして、『COUNTRY』『カントリー』は、『国』、『地方』という意味も有するから、その前の『POLO』『ポロ』を受けて『ポロの国』『ポロの地方』というような意味合いを感じさせる。したがって、本件において『POLO』『ポロ』の文字は重要な意味を持つ言葉と認識される。」(甲第47号証、平成11年(行ケ)第315号審決取消請求事件 平成12年3月21日判決言渡)、「本件商標は、『ポロ』『POLO』と『カントリー』『COUTRY』よりなるものであることは、その構成自体から明らかである。そして、『POLO COUNTRY』『ポロカントリー』との文字ないし語が、全体として特定の熟語や団体名称を表すものとして一般の取引者・需要者によく知られているものではないことは、前認定のとおりである。そうである以上、これが一体不可分のものと認識される理由はない。」(同判決)、「本件商標は、『ポロカントリー』、『POLO COUNTRY』文字よりなるところ、『ポロカントリー』、『POLO COUNTRY』の話が、全体として特定の熟語や団体名称を表すものとして一般の取引者、需要者によく知られているものとは認められない。そして、『カントリー』、『COUNTRY』は、『国、地方』という意味も有するから、『ポロ』『POLO』と『カントリー』、『COUNTRY』の文字部分は、分離して認識されるものである。」(甲第48号証、無効2001-35399 平成14年7月28日審決)と「ポロカントリー」と「POLO COUNTRY」を二段に横書きした商標の一体不可分性が否定され、混同のおそれが判断されている。
上記審決取消訴訟及び審判は、いずれも、被請求人が、第三者の登録商標に対し、商標法第4条第1項第15号違反を理由に登録無効を請求した事案である。請求人は、上記判決及び審決中の、被請求人の「POLO」標章及び使用商標の周知著名性の認定については、異論がある。しかし、「POLO」「ポロ」と「COUNTRY」「カントリー」の語からなる「ポロカントリー」と「POLO COUNTRY」を二段に横書きした商標の一体不可分性を否定した判断は、相当なものと思料する。
したがって、本件商標「POLO COUNTRY」についても、「POLO」と「COUNTRY」が分離して認識され、「POLO」の文字部分から、「ポロ」の称呼及び「POLO」の観念が生じるとして引用商標との類否を判断するのが相当である。さらに、上記詳述したように、本件商標中「COUNTRY」なる語は、「田舎や郊外で着る服」、「田舎・田園のイメ-ジを表現した素材、デザイン、色合いを用いたスポーティなウェア、カジュアルウェア」という、「被服」の用途、材質ないしデザインを表す語として、一般に親しまれ使用されている語である以上、本件商標を「被服」に使用した場合、自他商品の識別機能を果たす要部は、「POLO」の文字部分である。
よって、本件商標と各引用商標は、「被服」に使用した場合、出所混同を生じるおそれの高い類似する商標であることは明らかである。
なお、上記審決取消訴訟及び審判(甲第47号証及び甲第48号証)では、混同のおそれの判断にあたり、被請求人の「POLO」標章の周知著名性が斟酌されているが、引用商標1及び2の使用権者たる被請求人と、その使用許諾者たる請求人とが商標法第4条第1項第11号該当性を争う本審判においては、商標法が先願登録主義を採用し、商標権者の専用権及び禁止権を保障している観点から、かかる周知著名性を斟酌すべきではないことは、POLO JEANS事件判決(甲第8号証)及びPOLO GOLF事件判決(甲第9号証)の判示のとおりである。
他に、被請求人の「POLO」標章の周知著名性を理由に第三者の商標が取消、無効となった審決、裁判例が存するとしても、本件使用許諾契約の対象商標たる引用商標1及び2の禁止権に属する本件商標につき、使用許諾者たる請求人の使用をも排除する独占権を取得しうるまでの地位が被請求人に与えられるものではない。
(4)結び
以上により、本件商標の指定商品「被服」に係る登録は、各引用商標との関係において、商標法第4条第1項第11号の規定により、商標登録を受けることができない商標である。
よって、本件商標の指定商品「被服」に係る登録は、商標法第46条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。
2 弁駁の要旨
(1)本件商標について
被請求人は、本件商標が、欧文字を同書・同大に一体的に表示したものであって、「ポロカントリー」とよどみなく一気一連に称呼されるものであるから、本件商標は一体の商標と認識・把握され取引に資されるものであると主張する。しかし、「POLO JEANS」商標(登録第4637721号商標:甲第8号証)、「POLO GOLF」商標(登録第4600778号商標:甲第9号証)はじめ、同書・同大に書した構成であって、全体から生じる称呼がさほど冗長でない商標であっても、構成文字部分の意味合いや取引の実情から構成文字部分に識別力の軽重があれば、識別力の強い文字部分が分離抽出され出所識別標識として機能する場合は当然にある。事実、甲第8号証として提出した審決取消請求事件判決に係る被請求人の「POLO JEANS」登録商標について、自他商品の識別機能を果たす要部は「POLO」の文字部分であると認定し、請求人所有の引用商標と類似することを理由とした無効審決がすでに確定している(甲第49号証)。
よって、文字構成の外観と総音数のみを理由として、本件商標が一体不可分であるとはいえない。
そして、被請求人自身も、「ポロカントリー」と「POLO COUNTRY」を二段に横書きしてなる登録商標の無効審決取消訴訟において(甲第47号証及び甲第48号証)、同商標が、「POLO」と「COUNTRY」に分離して看取されうる旨主張している。
本件商標は、「POLO」と「COUNTRY」の英単語を並べた商標であると容易に認識されるものであって、「POLO」は、その先頭に表示されている。「POLO」の語自体はクロスカントリー等のように、当然に「COUNTRY」と結びついて一語となるような語ではなく、他方、「COUNTRY」は、国、地方、田舎などを意味する極めてありふれた語であって、他の語と結合させて、「・・・の国」、「・・・の地方」等といった意味を表す語として広く用いられていて、「POLO」の語と比して識別力が極めて弱い言葉であることなどからすると、本件商標に接した取引者及び需要者は、本件商標中「POLO」の部分から強く支配的な印象を受けるものである。
「ポロの国」、「ポロの地方」との意味合いからしても、本件商標中「POLO」の文字が重要な意味を持つ言葉として一般の取引者及び需要者に認識されることは、平成11年(行ケ)第315号判決(甲第47号証)で認定されているとおりであって、出所識別にあたり、「POLO」の文字部分が本件商標の要部として機能する理由は、十分にある。
その上、本件商標査定時(2003年10月7日)前の、「COUNTRY」の文字列を含む商標出願ないし登録は、「被服」と同一もしくは類似する商品について172件(甲第50号証)、第25類全体で289件(甲第51号証)、全区分で986件(甲第52号証)も存在していることからすれば、本件商標のように、一般の取引者及び需要者が「COUNTRY」の文字列に別の文字列が併記されている商標に接した場合、「COUNTRY」の文字列以外の文字列に注目して、出所の識別に当たる場合が相当多いことは、容易に推認できる。よって、この点からしても、本件商標に接した一般の取引者及び需要者が、前段の「POLO」の文字部分に着目して、出所を識別する場合が相当にあると考えるのが自然である。
ましてや、審判請求書で詳述したように、本件商標中、「COUNTRY」の文字は、被服等商品について自他商品識別機能を発揮しない語であるのだから、本件商標を被服に使用した場合に、自他商品の識別機能を果たす要部は、「POLO」の文字部分であって、本件商標から「POLO」の観念、「ポロ」の称呼が生じることは明白である。
被請求人は、「カントリー風」等の語が漠然とした意味合いの語であること等を理由に本件商標中の「COUNTRY」の語が、被服等商品の用途、材質又はデザインを特定・限定した文字と認識されることはないとして、本件商標から、「POLO」のみが分離して自他商品識別標識として機能することはないと主張する。
しかし、「CASUAL」、「SPORTS」の語も、「COUNTRY」の語と同様に、各々、「略式の、カジュアルな」、「運動、スポーツ」といったその語本来の意味合いで慣れ親しまれていると同時に、被服等の商品分野においては、「カジュアルな」、「スポーティな」という語のほか、甲第53号証に示すように「カジュアルウェア」、「カジュアル・ジャケット」、「スポーツ・シャツ」(ネクタイをつけない日常着のシャツ)、「スポーツ・コート」(別布のズボンと組み合わせて着る表着)等他の成語との結合語が多数存在しているが、被服等の商品に使用する結合文字商標に使用した場合、「気軽に着られるデザインの服、普段着」、「スポーティな感じを持つ商品」という被服等商品の品質、内容等を認識させるにすぎず自他商品識別機能を発揮しない語として、先願商標との類否が審理されていることは、周知の事実である。
そして、「COUNTRY」の語が、ツイード素材やレース、フリル、花柄模様など「田舎・田園のイメージを表現した素材、デザイン、色合いを用いたスポーティなウェア、カジュアルウェア」という、複数の素材、デザイン、アイテムを認識させるものであると同様に、「CASUAL」、「SPORTS」の語も、カジュアルもしくはスポーティなイメージを感じさせる、綿素材、ジャージィ素材、ジッパー使いのデザイン、コットンパンツ、ジャンパー等、各々、「気軽に着られるデザインの服、普段着」、「スポーティな感じを持つ商品」という、複数の素材、デザイン、アイテムを認識させる語であって、例えば「SILK」や「PLEATS」の語のように、一義的に単一の素材、デザインを認識させる語でないことは言うまでもない。したがって、「COUNTRY」の語を被服等商品に使用した場合、CASUAL」、「SPORTS」と同様に、「COUNTRY」の語が自商品の識別標識として機能しないことは容易に推認できる。
よって、本件商標から、「POLO」のみが分離して自他商品識別標識とて機能することはないという被請求人の主張は、理由を欠くものである。
(2)本件商標と引用商標との類否について
一般に、簡易、迅速をたっとぶ取引の実際においては、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているのでない商標は、常に必ずしもその構成部分全体の名称によって称呼、観念されず、しばしば、その一部だけによって簡略に称呼、観念され、1個の商標から2個以上の称呼、観念の生ずることがあるのは経験則の教えるところである。そして、この場合、1つの称呼、観念が他人の商標の称呼、観念と同一または類似であるとはいえないとしても、他の称呼、観念が他人の商標のそれと類似するときは、両商標はなお類似するものと解するのが相当である(最高裁昭和38年12月5日判決 民集17巻12号1621頁)。
上述のとおり、本件商標の要部は「POLO」の文字部分であって、本件商標からは「POLO」の観念、「ポロ」の称呼が生じるのであるから、本件商標と、「POLO」の文字からなる引用商標1及び3並びに筆記体で書した「Polo」、「POLO」の文字部分を要部とする引用商標2、4及び5とが、通常の取引の実態を考慮に入れた一般的・抽象的なレベルにおいて、出所混同を生じるおそれがある類似する商標であることは明白である。
被請求人は、本件商標と引用商標の類否を判断するにあたり、考慮すべき取引の実情として、被請求人の「POLO」標章の周知著名性、引用商標には周知性がないことを挙げ、これを理由に本件商標と引用商標が非類似であると主張している。
請求人は、商標の類否判断にあたり商標の周知著名性を考慮することを否定するものではない。しかし、商標法が、法目的たる競業秩序の維持を達成せんとして先願登録主義を採用して先願に係る他人の登録商標と抵触する同ー又は類似の商標の登録を認めないものとし、そのことによって、登録商標につき商標権者の専用権(商標法第25条)及び禁止権(同法第37条)を保障していること、さらに、商標権の財産的活用を企図して使用許諾制度を採用していることにかんがみれば、上記商標制度と相容れない主張に係る周知著名性は、本号適用にあたって考慮すべき取引の実情に含めるべきではないと解すべきである。
被請求人は、請求人の引用商標は周知性がなく、被請求人の「POLO」標章は周知著名であるから、取引者・需要者は、本件商標を構成する「POLO」からは、ラルフローレンのデザインに係る商品を想起・認識するのであって、請求人の引用商標を想起することはないと推認でき、本件商標と引用商標とは類似しないと主張する。
しかし、被請求人は引用商標1及び2の使用権者である。登録商標に通常使用権が設定されている場合において、当該登録商標が、上記通常使用権に基づき、その使用をしている者の業務に係る商品を表示するものとして広く取引者及び需要者に認識され、周知著名性を獲得することは、十分にあり得ることである。そのような状況が生じているからといって、直ちに、当該商標を要部とする標章を指定商品に使用しても、実際には商品の出所につき誤認混同が生じる蓋然性がないか又は極めて低いとして、両者は類似しないと判断するのは相当ではない。本件のように、契約対象商標とその使用権者が使用する本件商標とが、外観、称呼、観念において類似し、これらを特定の指定商品に使用した場合、その通常の取引実態を考慮に入れた一般的・抽象的なレベルにおいて、商品の出所につき誤認混同を生じるおそれがあると認められる以上、本号における商標の類似判断において、両者は類似すると判断すべきである。なぜなら、これと異なる解釈を採れば、商標法が先願登録主義を採用し、先順に係る他人の登録商標と抵触する同一又は類似の商標の登録を認めないものとし、そのことによって、登録商標につき商標権者の専用権(商標法第25条)及び禁止権(同法第37条)を保障しているにもかかわらず、その権利性を稀釈化ないし弱体化することになり、上記商標制度に沿わない結果を招来するからである(甲第8号証平成17年(行ケ)第10018号判決27頁から28頁参照)。よって、被請求人の主張は、我が国の商標制度と相容れないものとして許されない。
さらに、被請求人は「COUNTRY」の文字列を含む他の登録例を挙げて本件商標の一体不可分性を主張し、「POLO」の文字列を含む他の登録及び「POLO COUNTRY」拒絶査定不服審判の審査では請求人の引用商標を理由に11号違反で拒絶されていないとして、本件商標と引用商標との非類似を主張する。しかし、そもそも商標の類否は、指定商品に関する取引の実情に即して、商標の構成を具体的全面的に対比検討して決せられるべきことであって、過去の審査例が必ずそのまま現在の法的判断の基準となり得るべきものではないし、過去の審査例に全く誤りがないともいい難いのであるから、被請求人が指摘する「COUNTRY」の文字列を含む登録例が存することをもって、本件商標が、常に一体の商標と認識・把握され取引に資されるとする理由にはならないし、他の出願商標の審査において請求人の引用商標が引用されていないことをもって、本件商標が引用商標と非類似である理由にもならない。
なお、被請求人は、被請求人の「POLO」標章が、日本において昭和50年代半ば以降には、取引者及び需要者の間に広く認識されるに至っていたことが多数の判例・審決例で認められていると主張するが、明らかに不正確で問題がある。別紙記載のとおり、被請求人の「POLO」標章が引用された判決は多数存在するが、最高裁平成12年(行ヒ)第175号判決は、平成4年7月24日に出願された商標の登録性を争った事案であり、その他、ほとんど全ての判決は、平成以降の出願商標もしくは登録商標の使用についての判決である。すなわち、被請求人の「POLO」標章の周知著名性獲得時期自体は実質上争われず、被請求人が単にそのように主張し、当事者間に争いのない事実として訴訟手続上そのように扱われたにすぎないものである。
昭和58年5月11日に出願された引用商標4及び5に係る平成12年(行ケ)第40号及び第41号判決では、昭和50年代の被請求人の「POLO」標章の周知著名性が争われ、請求人の前身会社の「POLO」商標の周知性が斟酌された上で、上記出願時の日本においては、「POLO」、「ポロ」は、ラルフ・ローレンのデザインに係る被服等のみを表示するものとして、取引者及び需要者の間に広く認識されるに至っていたものと認めるのは困難であり、昭和55年から昭和58年当時においては、ラルフ・ローレン氏が手がけるいわゆるポロ商品は、「POLO by Ralph Lauren」、「ポロ・バイ・ラルフローレン」ないし「ポロ・ラルフローレン」という一連の標章によって識別されていたものと認めるべきものである、と認定されている。
被請求人は、請求人の所有商標が、矢野経済研究所のライセンスブランド全調査2005年版(乙第18号証の1及び2)に掲載されておらず、請求人所有の引用商標がライセンス市場に浸透していないと主張しているが、同誌に掲載されているか否かで請求人の所有商標の浸透性が決せられるものではないことは言うまでもない。
(3)まとめ
以上、詳述したように、被請求人のいずれの主張も、本件商標が各引用商標と類似することを否定する理由とはならない。
本件商標の要部は「POLO」であり「ポロ」の称呼が生ずることから、本件商標と「POLO」からなる引用商標1及び3並びに筆記体で書した「Polo」、「POLO」を要部とする引用商標2、4及び5とは、称呼、外観及び観念において類似する商標であり、本件商標の第25類「被服」に係る登録は、各引用商標との関係において、商標法第4条第1項第11号の規定により、商標登録を受けることができないものである。
したがって、本件商標の第25類「被服」に係る登録は、商標法第46条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第26号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号に該当しない理由
請求人は、本件商標は「ポロ」の称呼「POLO」の観念を生ずるから引用商標と類似すると主張するが、その理由は以下のとおり成り立たない。
(1-1)本件商標について
(ア)請求人は、「POLO COUNTRY」が語として存在せず、また「POLO」と「COUNTRY」は夫々意味を有する語であり一体不可分に結合したものでないから、取引にあたっては「POLO」のみが自他商品識別機能を果たすと主張する。
しかしながら、商標は、特段の事情がない限り商標全体の外観及び称呼・観念をもって商取引に資されるものである。その点本件商標は、「POLO COUNTRY」の欧文字を同書・同大に一体的に表示したものであって、該構成文字からは「ポロの国」「ポロの地方」の意味合いを想起させるものであり、また、「ポロカントリー」とよどみなく一気一連に称呼されるものである。したがって、本件商標は一体の商標と認識・把握され取引に資されるものである。
(イ)請求人は、本件商標中の「COUNTRY」がよく知られ、親しまれた語であり、また、被服等商品の用途、材質、デザインを認識するから本件商標の要部は「POLO」であると主張する。
しかし、結合文字商標は、一般に文字間の外観上の差異、称呼長の程度、また、慣用・品質等を認識させる文字や周知又は著名商標を認識又は想起させる文字の有無などにより当該文字が独立して自他商品識別標識として機能するか否かを個別具体的に判断されるものであって、成語間の周知度によって画一的に一方を出所表示と判断されることはない。その点、本件商標は、上述のとおり、構成文字の外観上の差異は無く、また、「ポロカントリー」の称呼も冗長でない。そして、被服等の商品分野において、田舎用や田園用などという使用場所や用途を限定した商品は存在しないし、材質又はデザインを特定するのにカントリー風や田舎風、田園風などという漠然とした意味合いの語を用いていることもない。
確かに、デザインの世界においては「タウンウェア」に対比した用語として「カントリーウェア」の語が使用されているが、その場合「カントリーウェア」として一定の意味を理解できるのであって「カントリー」のみではデザインの内容等を理解できるものではない。カントリールック、カントリースーツ、カントリージャケットも同様である。これは、「Country」の語が「国、地方」などの意味を有する語として一般に熟知されており、その派生語又は他の成語との結合語が多数存在し、夫々が「COUNTRY」と別意の語として認識されていることからも首肯できる。
したがって、「COUNTRY」の語が、被服等商品の用途、材質又はデザインを特定・限定した文字と認識することはない。
そして、被服について「COUNTRY」を含む登録列を俯瞰しても、そもそも「COUNTRY」「カントリー」「COUNTRY/カントリー」のみが商標登録されており、それらと併存して「Town Country」「Town&Country」「BABY COUNTRY」「FREE COUNTRY」「CHILD COUNTRY」など成語と「COUNTRY」とを組合せ、全体として一定の意味合いを想起又は暗示させる商標が多数登録されている。更には、以下の事例のように、同様な結合商標が「COUNTRY」を除いた語からなる商標と併存して登録されている。
URBAN COUNTRY × アーバン
TRAD COUNTRY × TRAD
POPCOUNTRY/ポップカントリー × American/POP
COLUMBUS COUNTRY/コロンブスカントリー × COLUMBUS
CRITTER COUNTRY × CRITTER
ANIMAL COUNTRY/アニマルカントリー × ANIMAL
RainbowCountry × REINBOW/レインボー
上記の事実は「COUNTRY」を含む結合商標が「COUNTRY」を除く同一語からなる商標とは一般的な出所混同のおそれがない、即ち非類似と判断されているにほかならない。
したがって、本件商標は、「POLO」のみが分離して自他商品識別標識として機能するとの主張は、理由が無いというべきである。
(1-2)本件商標と引用商標の類否について
(ア)引用商標について
引用商標1及び3は、「POLO」の文字のみからなるものであるから「ポロ」の称呼「ポロ競技」の観念を生ずるものである。また、引用商標4及び5は、その構成文字及び図形から「ポロスポーツ」の称呼「ポロ競技」の観念を生ずるものである。また、引用商標2は、「ポロ競技」の観念を生ずるものである
(イ)本件商標と引用商標の対比
上述したとおり、本件商標は、構成文字に相応し、「ポロカントリー」のみの称呼、「ポロの国」「ポロの地方」の意味合いを生ずるのに対し、各引用商標からは「ポロ」「ポロスポーツ」の称呼、「ポロ競技」の観念を生ずるものである。したがって、本件商標と各引用商標とは、称呼及び観念において相違するものであり、また外観においても明らかに区別できるものであるから、類似するものではない。
(ウ)本件において考慮すべき取引の実情
(a)被請求人使用「POLO」標章が周知著名性を有していること
被請求人使用の「POLO」標章は、ラルフ・ローレンのデザインに係る被服等の商品を表示するものとして、日本においても昭和50年代半ば以降には取引者、需要者の間に広く認識されるに至っておりその状態が現在においても継続している。そのことは、最高裁平成12年(行ヒ)第172号判決ほか多数の判例・審決例が認めるところである。
(b)引用商標には周知性がないこと
被請求人は、請求人が引用商標を使用してどの程度商品を販売しているか不知であるが、少なくとも特許庁「日本国周知・著名商標検索」には、請求人の引用商標は掲載されていない。また、日本市場で展開されているライセンスブランドを対象とした矢野経済研究所のライセンスブランド全調査2005年版では、被請求人のブランドはポロゴルフ、ポロジーンズカンパニー、ポロボーイズ、ポロラルフローレンと商品ラインまで掲載されているが請求人のポロは掲載されていない。このことは、日本市場でのブランド浸透力の目安となるライセンス市場において、被請求人のポロ関連商標は浸透しているが請求人の引用商標は浸透していないということである。したがって、引用商標が請求人の商品を示すものとして需要者の間で周知性を獲得していることはない。
これらの取引の実情に徴しても、取引者・需要者は、本件商標を構成する「POLO」からは、ラルフ・ローレンのデザインに係る商品を想起・認識するものであって請求人の引用を想起することはないと推認できるものであるから、本件商標と引用商標とは、類似しないというべきである。
(1-3)裁判・審判例との関係
(ア)請求人は、平成11年(行ケ)第315号審決取消請求事件及び無効2001-35399号無効審判事件で「POLO COUNTRY」の一体不可分性が否定されているから本件商標も「POLO」部分から生ずる称呼・観念に基づき引用商標との類比判断をすべきと主張する。
しかし、それらの判・審決は、何れも混同可能性の理由として「POLO COUNTRY」が特定の熟語や団体名称名でないこと、「ポロの国、ポロの地方」の意味合いから「COUNTRY」に比して「POLO」の文字が重い意味を認識させると判断しているのであって、「POLO」が一般的な出所表示と認識される程度に独立して認識されるとしているのではない。したがって、上記判・審決は、請求人主張のように解すべきでない。
同様に、被服を指定商品とする「POLO COUNTRY」拒絶査定不服審判事件(平成6年審判第18425号、平成11年(行ケ)第334号)では、本件商標とほぼ同一の商標・指定商品に係る出願について、正に審査・審判官の経験則に基づく専権判断事項である先行商標との関係を形式的・仮定的に判断する11号該当性に関する審査において引用商標をもって類似とする拒絶判断をしないで、具体的証拠の必要な被請求人使用の「POLO」標章を想起するとして出所混同のおそれがある(15号)と判断している。このことは、「POLO COUNTRY」商標を被請求人以外の第三者が使用するとラルフ・ローレンのデザインに係る商品に使用され周知・著名な「POLO」標章を想起することはあるが、先行商標との11号該当性については、請求人の引用商標を想起することはなく、一般的な類似には、該当しないと判断されたものである。
また、「POLO」とよく知られた成語が組み合わされた商標の被服を指定商品とする登録例に、「POLO MALLET」「POLOGROUND」「POLO HORSE」「POLOSOCIETY」「POLOHOUSE」「POLOLEAGUE/ポロリーグ」などが請求人の「POLO」商標と併存して登録されている。被請求人は、これらの商標は、被請求人使用の「POLO」標章と混同を生ずると考えるが、少なくとも請求人の「POLO」商標とは、類似しないとして登録されているものである。これらの登録事例に徴しても、本件商標は引用商標と類似しないというべきである。
(イ)請求人は、平成17(行ケ)10018号他の判・審決を引用し、11号該当性を争う本件においては被請求人のPOLO標章の周知・著名性を斟酌すべきでないと主張する。しかし、商標の類否判断方法について最高裁は「対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであり、誤認混同を生ずるおそれがあるか否かは、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者及び需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察し、その商品についての取引の具体的な実情に照らし、その商品の取引者及び需要者において普通支払われる注意力を基準として、総合的に判断すべき」旨判示されており(昭和39(行ツ)110号)、商標の周知・著名性についても判断要因となっていること明らかである。したがって、被請求人の使用する「POLO」標章の周知著名性は当然斟酌されるべき実情である。
なお、平成17(行ケ)10018号事件は、上記最高裁説示の判断基準を考慮しても指定商品である「ジーンズ製被服」に使用した場合には「POLO JEANS」と「POLO」は「一般的な出所混同(類似)すると判断されたのであって(平成17(行ケ)10245号事件も同旨)、上述のとおり「COUNTRY」が商品の品質等を認識させない本件商標とは事案を異にするものである。
また、請求人は、殊更、引用商標1及び2についての使用許諾契約の存在を挙げ被請求人に本件商標権取得の権利がないと主張するが、本件商標は上述のとおり引用商標1及び2と非類似であるから使用許諾契約の存在とは関係なく被請求人が権利取得できるのは自明である。
(1-4)以上述べたとおり、本件商標は、「ポロ」の称呼、「POLO」の観念を生じないから、本件商標と各引用商標は非類似の商標というべきである。
(2)結語
以上、本件商標と各引用商標とは、非類似であるから請求人の主張は、理由のないものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものでなく、その登録を無効とすべきでない。

第5 当審の判断
本件商標は、前記したとおり「POLO COUNTRY」の欧文字よりなるものである。
そして、請求人の提出に係る甲第10号証ないし甲第47号証によれば、「COUNTRY」及びその発音の「カントリー」の語は、一般には、「国」、「地方」、「田舎」、「郊外」等の意味を有するものとして知られているが、これらの語が被服について使用された場合には、これに接した取引者・需要者は、これらの語が、当該被服がカントリー・ウェア、あるいはカントリー風のデザイン、色彩等を備えた被服であることを示すものと認識、理解するのが通常であるということが相当である。
そうとすると、本件商標が、その指定商品中の「被服」について用いられた場合、本件商標の構成中の「COUNTRY」の文字部分は、当該被服の形状、品質等を表すものとしか認識されず、「POLO」の文字部分のみが、自他商品の識別機能を果たすものと取引者・需要者に認識されることは明らかであり、本件商標の要部は、「POLO」の文字部分にあるものと認めるのが相当であり、これより「ポロ」の称呼をも生ずるものと認める。
一方、引用商標1及び3は、「POLO」の文字のみからなるものであるから、これより「ポロ」の称呼を生ずること明らかである。
よって、本件商標と引用商標1及び3とは、「ポロ」の称呼を同一にするものである。
また、「POLO」の語が、馬上競技を示す普通名詞であること、「ポロシャツ」の語が普通名詞として用いられていることは、公知の事実であり、本件商標の要部と引用商標1及び3とは、いずれも、取引者・需要者に、「ポロ競技」又はその略称である「ポロ」の観念を生じさせるものと認められる。
そうすると、本件商標と引用商標1及び3とは、外観において差異があるとしても、称呼及び観念において類似するというべきである。
そして、本件商標の指定商品中「被服」と引用商標1及び3の指定商品とは重複し、その需要者が通常は一般消費者であることも併せ考慮すれば、本件商標と引用商標1及び3とは、本件商標の指定商品中「被服」について使用される場合、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあると認められる。
被請求人は、商標の一部に「COUNTRY」の文字を有する併存して登録されている例、裁判例及び審決例をあげて縷々述べるところあるが、本件商標とは事案を異にするものであり、本件商標については上記のとおり判断するのが相当であるから、被請求人の主張は採用することができない。
したがって、本件商標は、その指定商品中の「被服」について、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項に基づき、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)引用商標2


(2)引用商標4


(3)引用商標5


審理終結日 2006-10-03 
結審通知日 2007-08-27 
審決日 2006-10-25 
出願番号 商願2000-86977(T2000-86977) 
審決分類 T 1 12・ 262- Z (Z25)
T 1 12・ 263- Z (Z25)
最終処分 成立  
特許庁審判長 田代 茂夫
特許庁審判官 伊藤 三男
岩崎 良子
登録日 2003-10-24 
登録番号 商標登録第4720921号(T4720921) 
商標の称呼 ポロカントリー、カントリー、ポロ 
代理人 川本 真由美 
代理人 山根 広昭 
代理人 田中 秀佳 
代理人 城村 邦彦 
代理人 曾我 道照 
代理人 曾我 道治 
代理人 熊野 剛 
代理人 岡田 稔 
代理人 江原 省吾 
代理人 白石 吉之 

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