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審決分類 審判 全部無効 観念類似 無効としない Z38
審判 全部無効 称呼類似 無効としない Z38
審判 全部無効 商7条(平成8年改正前)連合商標 無効としない Z38
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Z38
審判 全部無効 商3条柱書 業務尾記載 無効としない Z38
管理番号 1171163 
審判番号 無効2006-89032 
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-03-08 
確定日 2008-02-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第4457746号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4457746号商標(以下「本件商標」という。)は、平成11年12月16日に登録出願され、「MIZUHO」の文字を標準文字で書してなり、第38類「移動体電話による通信,テレックスによる通信,電子計算機端末による通信,電報による通信,電話による通信,ファクシミリによる通信,無線呼出し,テレビジョン放送,有線テレビジョン放送,ラジオ放送,報道をする者に対するニュースの供給,電話機・ファクシミリその他の通信機器の貸与」を指定役務として、同13年3月9日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第4246220号商標(以下「引用商標」という。)は、平成9年5月26日に登録出願され、「みずほねっと」の文字を標準文字で書してなり、第35類「広告,商品の販売に関する情報の提供」及び第38類「電子計算機端末による通信ネットワークへの接続の提供」を指定役務として、同11年3月5日に設定登録されたものである。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の全部又は一部を無効とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び同第2号証を提出した。
1.請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号、同法第8条第1項又は同法第3条第1項柱書きのいずれかに該当するものであるから、その全部又は一部の登録は、無効とされるべきものである。
(1)引用商標の役務と同一又は類似の役務について
引用商標の指定役務中、第38類の「電子計算機端末による通信ネットワークへの接続の提供」はプロバイダ(電気通信事業者)によるインターネットへの接続サービスの意になる。ところでプロバイダが提供する役務には、このインターネットへの接続役務の他にも、電子メールやホームページ開設場所の提供といった役務があり、電気通信事業を所管する総務省の『電気通信サービスQ&A』(2002年4月発行)には「インターネットを楽しむために」と題して、以下のように記載されている。
「インターネットは、世界中のコンピュータ同士を相互に結び付けているネットワークです。利用者はプロバイダと呼ばれる電気通信事業者と契約することで、インターネットを楽しんだり、電子メールを使い世界中の利用者と文章や画像をやり取りできます。また、目的に応じて様々な情報を発信できるホームページを開設したり、他の人のホームページを閲覧して楽しむことができます。プロバイダが提供している役務には、『インターネットへの接続サービス』の役務以外にも『電子メールサービス』の役務や『ホームページ開設サービス』の役務があるということです。」
ここでいうプロバイダは、ASP(Application Service Provider:アプリケーション・サービス・プロバイダ)でなくISP(lnternet Service Provide:インターネット・サービス・プロバイダ 電気通信事業者)をいう。そして、このプロバイダが提供するこういった「インターネットへの接続サービス」の役務は、商標法の指定役務でいうと、「電子計算機端末による通信」になるので第38類の役務に当たる。
また、「電子メールサービス」は、第38類の役務であるが、「電子メール」はPOPやIMAPといったプロトコルによる「サーバエリアの貸与」によってその提供が行なわれているので、「電子メールのサーバエリアの貸与」でもあり、第38類の役務に当ると同時に第42類の役務にも当ることになる。
「ホームページ開設サービス」は、「インターネットホームページのサーバエリアの貸与」で第42類の役務に当る。
したがって、引用商標の同一又は類似役務には、第35類「広告(インターネットによる広告を含む。)」、「商品の販売に関する情報の提供(インターネットによる商品の販売に関する情報の提供を含む。)」、「広告場所の提供(インターネットによる広告場所の提供を含む。)」、第38類「電子計算機端末による通信」、「電子メール」及び第42類「電子メールのサーバエリアの貸与」、「インターネットホームページのサーバエリアの貸与」といった役務が含まれるといえる。
(2)商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同法第8条第1項について
「みずほねっと」を例えば「MizuhoNet」「MIZUHO NET」との表記で使用することは「平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の呼称及び観念を生ずる商標(商標法第50条第1項)といえるものである。
すると、同条項の「社会通念上同一と認められる商標」に「みずほねっと」を「MIZUHO.NET」とドメイン名表示での使用が含まれるのかの判断を特許庁に求める。
「みずほねっと」は、「みずほ」と「ねっと」との2つの語の結合商標といえ、「ねっと」の部分は形容詞的文字といえる。したがって、「みずほねっと」は「みずほ」と類似する。
「みずほねっと」の「みずほ」の部分からは、「ミズホ」の呼称及び「瑞穂(みずみずしい稲の穂)」の観念が生ずる。他方「MIZUHO」からも同じく、「ミズホ」の呼称及び「瑞穂(みずみずしい稲の穂)」の観念が生ずる。したがって、「みずほねっと」と「MIZUHO」とは同一又は類似の商標であり混同を生ずるおそれがある。
してみれば、本件商標は、引用商標の指定役務及び類似役務にあたる役務について、商標法第8条第1項、同法第4条第1頂第11号及び同第15号のいずれかの理由あるいは複数の理由に該当するものであるから、その登録は無効とされるべきものである。
(3)商標法第3条第1項柱書きについて
商標審査基準には、以下のように記載されている。
「自己の業務に係る商品又は役務について使用」をしないことが明らかであるときは、原則として、第3条第1項柱書きにより登録を受けることができる商標に該当しないものとする。
(例)出願人の業務の範囲が法令上制限されているために出願人が指定商品又は指定役務に係る業務を行なわないことが明らかな場合
ところで、銀行法(昭和56年法律第59号)によれば、当該免許を受けて銀行業を営む者は同法第2条に掲げる業務を本業とし、同法第10条第11条第12条及び「普通銀行/信託業務/兼業等二関スル法律(昭和18年法律第43号)」第1条に掲げる業務のほか、他の業務を営むことができない(同法第12条第47条)とされている。「自己の業務に係る商品又は役務について使用」をしないことが明らかであるときは、原則として、第3条第1項柱書きにより登録を受けることができる商標に該当しないもの」とされるので、登録査定の日を判断の基準日とした場合には、本審判対象の役務の全部又は一部について原則として無効になるものである。
2.弁駁の理由
(1)本件商標の指定役務のなかで、どの役務が引用商標の指定役務と同一又は類似の役務にあたるのか。
「電子計算機端末による通信ネットワークへの接続の提供」を提供する事業者が「電子メールのサーバエリアの貸与」や「インターネットホームページのサーバエリアの貸与」の役務を提供することがあるとしても、そのことのみをもって、商標法上それらの役務の全てが同一或いは類似するということはできない。商標審査基準によれば、これらの役務は相互に非類似の役務とされている。実際に電子メールによる通信を利用する需要者の範囲とホームページ開設サービスを利用する需要者の範囲は著しく相違するから、これらの役務が類似するということはできない。との被請求人の指摘は、「そのことのみをもって類似するということはできない」ということは、他のなにかを満たせば類似するのか、電気通信事業法による電気通信事業では「だめ」との指摘であるのか、
「電子計算機端末による通信ネットワークへの接続の提供」
「電子メールのサーバエリアの貸与」
「インターネットホームベーシのサーバエリアの貸与」
これらの(3っつの)役務は相互に非類似の役務(商標審査墓準による)
「電子メールによる通信」
「ホームページ開設サービス」
これらの2役務が類似するということはできない(利用する需要者の範囲は著しく相違するからということか)。商標法の運用はよく理解できない。
(2)本件商標「みずほねっと」と引用商標「MIZUHO」の類否について
(ア)請求人の商標は「みずほネット」「瑞穂ネット」という表示でなく「みずほねっと」という表示をしている。「ネット」とカタカナ表記していないのだから「network(ネットワーク)」「internet(インターネット)」の意味ではない。ひらがな表示した「ねっと」は、インターネットを示す文字ではないとの指摘である。
商標の表記に関する規定、商標法第50条第1項の規定があるにもかかわらず、商標の類否について、被請求人はあえて平仮名表記に限定した視点から主張しているのはなぜなのか理解出来ない。
更に、被請求人の指摘によれば、片仮名表示で「ミズホネット」とした場合、「ネット」はインターネットを示すこととなるが、「ミズホ」と片仮名の表示は外来語を示すものとなるので、日本の「瑞穂・(みずほ)」とは何ら関係のないものとならざるを得ない。
念のため申し添えるが、「MIZUHO」とローマ字(英字)表示しようが「みずほ」とひらがな表示しようが、「瑞穂(みずほ)」の称呼と観念を生ずると請求人は判断するものである。
(イ)被請求人は、特許庁における「ねっと」の語を含む商標に関する登録実務並びに異議決定及び審決での判断を示しているが、商標の類似については、個別具体的に判断されるものであって、過去の特許庁においてなされた本件と無関係の事案に関しての判断例が、本審判事件においても同様に適用されなければならないということはない。本件と無関係の事案に対してなされた特許庁の判断に拘束されるものではない。
(ウ)請求人は、「みずほ」「MIZUHO」の商標について、「銀行」「証券」の各指定役務において、本件被請求人の業務に使用され著名であることについて別事件の知財高裁の裁判過程でも認めている。とはいえ、これら以外の役務についての著名性を認めている訳ではない。(平成17年(行ケ)第10756号 審決取消請求事件)
他に「みずほ」・「MIZUHO」を冠して現在広く使用されている他者(みずほフィナンシャルグループ以外の者)の著名・周知商標がないと言っているだけである。
(エ)被請求人は、「みずほねっと」と「MIZUHO.NE丁」は「全く別異の商標」「全く相違する」と指摘しているが、請求人は、「密接なる商標」との認識を持っている。
「みずほねっと」と「MIZUHO.NET」とが、これら呼称上も視覚上も類似性の高い商標同士を全く異質の商標(全く相違する)とするのはいかがなものか、ましてや、ネット上での役務が行なわれている現実が、役務の取引の実情である。
むしろ、本審判対象の役務の商標の類否の判断にあたってはドメイン名をふまえた判断もなされるべきではないか、とするのが請求人の主張である。(3)「みずほねっと」を例えば「MizuhoNet」「MIZUHO NET」と表示することは「平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の呼称及び観念を生ずる商標といえるものであり、つまり、商標を使う際、「みずほねっと」をローマ字「MizuhoNet」、「MIZUHO NET」と表示しても同一視される。
「みずほねっと」と「MIZUHO.NET」はどうなのか。社会通念上同一と認められる商標であるなら、「みずほねっと」の商標の使用として、「MIZUHO.NET」が使える。同一とまでは認められないなら、「みずほねっと」の商標の使用として「MIZUHO.NET」を使う権利は生じない。ネットでドメイン名が使用されるということは社会通念といえ、「みずほねっと」はドメイン名でないことは明白で、「みずほねっと」に最も類似なドメイン名は「MIZUHO.NET」であり、「みずほねっと」の商標権には禁止権もある。商標の登録にあたっては、ひとつでも拒絶の理由があれば登録できない。
「MIZUHO」が登録された場合「MIZUHO.NET」の登録はできない。「みずほねっと」がネットでの役務であることからすればドメイン名を考慮にいれて、商標法第4条第1項第15号の適用があってもしかるべきではないか。
(4)本件商標は、引用商標と類似するものである。したがって、本件商標の指定役務のうち引用商標の指定役務と同一・類似のものについては商標法第8条第1項に該当する。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第23号証(枝番を含む。)を提出している。
(答弁の理由)
(1)商標法第4条第1項第11号について
(ア)先ず、本件商標の指定役務の全てが引用商標の指定役務に類似するわけではない。
本件商標の指定役務のうち、「テレビジョン放送,有線テレビジョン放送,ラジオ放送,報道をする者に対するニュースの供給,電話機・ファクシミリその他の通信機器の貸与」は引用商標の指定役務のいずれとも類似しないことは明らかである。
なお、請求人は、引用商標の指定役務である「電子計算機端末による通信ネットワークへの接続の提供」が「電子メールのサーバエリアの貸与」や「インターネットホームページのサーバエリアの貸与」などの役務に当たると述べ、その根拠として、「プロバイダと呼ばれる電気通信事業者」が「電子メールサービスの役務」や「ホームページ開設サービスの役務」を提供することがあると主張しているようであるが、同一の事業者が、多種多様な商品やサービスを提供することは一般的であって、そのような多種多様な商品やサービスの全てが類似の商品または役務として取り扱われるわけではない。 したがって、仮に、「電子計算機端末による通信ネットワークへの接続の提供」を提供する事業者が「電子メールのサーバエリアの貸与」や「インターネットホームページのサーバエリアの貸与」の役務を提供することがあるとしても、そのことのみをもって、商標法上それらの役務の全てが同一或いは類似するということはできない。
商標審査基準によれば、これらの役務は相互に非類似の役務とされており、実際に、電子メールによる通信を利用する需要者の範囲とホームページ開設サービスを利用する需要者の範囲は著しく相違するから、これらの役務が類似するということはできない。
(イ)本件商標は、引用商標に類似しない。
商標の類否の判断は、商標の有する外観、称呼及び観念のそれぞれの判断要素を総合的に考察しなければならない(特許庁商標審査基準第3の九、1参照)。
(a)外観上、本件商標は引用商標に類似しない。
本件商標は、標準文字により「MIZUHO」の欧文字6文字を横書きにしてなり、他方、引用商標は標準文字により「みずほねっと」の平仮名6文字を横書きにしてなるものである。したがって、外観上、両者が異なる文字種により構成された非類似の商標であることは明らかである。
(b)称呼上、本件商標は引用商標に類似しない。
本件商標からは、その構成文字に応じて「ミズホ」の称呼を生じる。他方、引用商標からは、その構成文字全体に応じて「ミズホネット」の称呼のみが生じる。その理由は以下のとおりである。
(i)「みずほねっと」は全体で一体不可分の造語である。
請求人は、「『インターネット』は『ネット』とも称されています」と主張し、「『みずほねっと』は『みずほ』と『ねっと』の2つの語の結合商標といえ、『ねっと』の部分は形容詞的文字といえる」と主張する。
しかしながら、外来語である「インターネット」の略称を平仮名で「ねっと」と記載して表現することが一般的であるという事実は全く無いから、引用商標に接した需要者、取引者は、引用商標を構成する文字のうち「ねっと」の部分を「インターネット」の略称としての「ネット」と認識することはない。
仮に、引用商標の「ねっと」の文字部分が、外来語の「ネット」に通じ、さらにこれから、請求人が主張するように「インターネット」の意味合いが生じることがあったとしても、外観上、全ての文字をひらがなで、標準文字(同書同大)により、スペース等による分離箇所もなく、まとまりよく一体的に表現されていること、引用商標全体から生じる称呼が全体で5音と短く、よどみなく一連に称呼しうるものであることから、引用商標に接した需要者・取引者は、これを全体として一体不可分の一種の造語と理解し、「ミズホネット」と称呼する。
(ii)特許庁における「ねっと」の語を含む商標に関する登録実務並びに異議決定及び審決で示された判断
特許庁における従前の登録例においては、以下の並存登録例が存在する。
商標「じょいふるねっと」(登録第4599748号)と商標「JOYFUL」(登録第3052416号)〔乙第3号証の1及び2〕
商標「ゆめねっと」(登録第4446165号)と商標「ユメ/You&Me」(登録第4080387号)〔乙第4号証の1及び2〕
商標「ミテ」(登録第4456466号)と商標「みてねっと」(登録第4101007号)〔乙第5号証の1及び2〕
商標「あぱねっと」(登録第4614940号)と商標「APA」(登録第4442250号)〔乙第6号証の1及び同2〕
このような多くの並存登録例が存在する中で、上記の各商標と同一の音数またはそれより短い音数からなり、平仮名をもって同書同大等間隔に一連に記してなる上記の各商標と同様の構成を有する引用商標「みずほねっと」のみが「みずほ」と「ねっと」とに分断して認識されると解すべき理由を見出すことはできない。
また、乙第7号証ないし乙第10号証の審決及び異議決定においては、商標が外観上まとまりよく一体に表示されており、全体から生じる称呼が冗長でなく、よどみなく一連に称呼し得るものである場合には、たとえ構成中に「ネット」または「NET」の文字が含まれているとしても、構成全体をもって特定の観念を生じない一体不可分の造語として認識し、把握されると見るのが自然であるとの判断がなされている。そして、引用商標にあっては、上記の判断基準を満たすものであることは明らかであるうえ、引用商標はその構成文字の全てが平仮名をもって構成されていることから、上記の異議決定及び審決例の対象とされた商標と比較すれば、外来語である「NET(ネット)」の語を想起させ難いものであり、より一層一体感の強い商標として認識されることは明らかである。
以上のとおり、引用商標は、その構成文字の全体に相応して「ミズホネット」の称呼のみが生じるのであって、これと本件商標から生じる称呼「ミズホ」とは、「ネット」の音の有無により明らかに聴別し得るものであるから、称呼上、本件商標は引用商標とは非類似の商標である。
(c)観念上、本件商標は引用商標に類似しない。
本件商標は、被請求人及びその企業グループが統一して使用している著名商標「MIZUHO」と同一であり、著名商号「みずほ」とも類似することから、被請求人及びその企業グループを表象するものであり、その旨の観念が生じる。又、その構成文字に相応して「瑞穂(瑞々しい稲の穂)」(乙第11号証)の観念も生じうる。他方、「みずほねっと」または「ミズホネット」という成語は存在しないから、引用商標に接した需要者、取引者は該語をなんら特定の意味を有しない造語として認識し把握する。そうすると、本件商標と引用商標の間には観念上類似すると見倣すべき理由はなんら存在しない。
(ウ)以上述べたとおり、本件商標の指定役務のうち、先ず、「テレビジョン放送,有線テレビジョン放送,ラジオ放送,報道をする者に対するニュースの供給,電話機・ファクシミリその他の通信機器の貸与」は引用商標の指定役務のいずれとも類似しないものであり、その他の指定役務についても、そもそも本件商標は、引用商標とは外観、称呼及び観念のいずれにおいても区別できる明らかに非類似の商標であって、互いに相紛れるおそれがないものであることは明白である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
本件商標の出願時および査定時において、引用商標が請求人の業務にかかる商品または役務について使用され、広く知られていたという事実はおろか、そもそも請求人が引用商標を何らかの業務について使用したという事実すらない。混同が生じる対象となる請求人の業務自体が存在しないのであるから、本件商標が引用商標との関係において商標法第4条第1項第15号に該当するとの請求人の主張は、主張自体失当である。
(3)商標法第8条第1項について
上記(1)で述べたとおり、本件商標の指定役務の全てが引用商標の指定役務と類似するわけではない。また、そもそも本件商標は引用商標と類似しない。そうすると、引用商標が本件商標よりも先に出願されたものであっても、本件商標が商標法第8条第1項に該当することはない。
(4)商標法第3条第1項柱書きについて
本件商標の登録査定時において、本件商標の出願人が自己の業務にかかる商品または役務について本件商標を使用しないことが明らかであったという事実はない。
(ア)みずほホールディングスの業務範囲
本件商標の出願人は株式会社みずほホールディングス(以下、「みずほホールディングス」という。)であり、みずほホールディングスは、査定時施行の銀行法(以下、「銀行法」という。乙第21号証)第52条の2に基づく内閣総理大臣の認可を受けた銀行持株会社であった。銀行法第52条の5は、銀行持株会社の業務範囲を「その子会社である銀行及び第52条の7第1項各号に掲げる会社の経営管理を行うこと並びにこれに附帯する業務」と規定している。
ここで「経営管理に附帯する業務」とは、例えば、銀行持株会社が傘下の子会社のためにグループを代表して継続的に資金調達をすること、営業用ソフトや不動産の子会社への貸し付けを行うことなどが該当し、みずほホールディングスの子会社がその業務に使用する、グループ名称を含む商標を、グループを代表して出願・登録・維持・保全し、当該商標を各子会社を通じて使用ないし使用させる業務も当然にこれに該当するものである。
(イ)みずほホールディングスの子会社の業務範囲
銀行法第52条の7第1項に基づき、銀行持株会社は第7号イに規定する従属業務を専ら営む会社を子会社とすることができるところ、従属業務には「他の事業者のために電子計算機に関する事務を行う業務(電子計算機を使用することにより機能するシステムの設計若しくは保守又はプログラムの設計、作成、販売若しくは保守を行う業務を含む)」(銀行法施行規則第34条の8第1項第17号)が含まれる。上記電子計算機に関する事務を行う業務には、例えば「コンピューターネットワークへの接続の提供」や「コンピュータ端末による通信」等、各種の電気通信役務が当然に含まれるものである。
したがって、銀行持株会社の子会社は、第二種電気通信事業、例えば、信販会社と加盟店間の売上げデータ等の伝送・交換や、クレジット会社相互間の資金決済情報の伝送・交換を行うことをその業務として提供することができる。
(ウ)以上のとおり、本件商標の登録査定時において、みずほホールディングスは、銀行法上の従属業務及び金融関連業務を専ら営む子会社を通じて、グループ全体として、本件商標をその指定役務について使用することができた。そして、実際に特許庁における審決でなされた判断においても、出願人が銀行以外のものである場合には、その業務が法令上制限されているものではないと認定されている。さらに、仮に出願人が銀行であったとしても、第38類の役務を指定役務とするものについては、第3条第1項柱書きの要件を満たすものとして商標登録が認められるのであるから、登録査定時において銀行以外の者が出願人であった本件商標が当該登録要件を満たすものであることは明らかである。
したがって、本件商標が、その登録査定時において、出願人の業務の範囲が法令上制限されているために、出願人がこれらの役務にかかる業務を行わないことが明らかな場合に該当するものであったということはできず、本件商標が、商標法第3条第1項の規定に違反して登録されたものということはできない。
(5)まとめ
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号、同法第8条第1項及び同法第3条第1項柱書きのいずれにも違反していないから、答弁の趣旨のとおりの審決を求めるものである。

第5 当審の判断
(1)本件商標と引用商標との類否について
本件商標は、前記したとおり「MIZUHO」の欧文字を書してなるから、これよりは「ミズホ」の称呼及び「瑞穂(よく実った穂)」の観念を生ずるものと認められる。
これに対し、引用商標は、前記のとおり「みずほねっと」の文字を平仮名で同書、同大、同間隔に一連に書してなるものであり、これより生ずる称呼も冗長でなく一気に称呼し得るものであるから、これよりは「ミズホネット」の一連の称呼のみを生ずる造語よりなるものと判断するのが相当である。
しかして、本件商標より生ずる「ミズホ」の称呼と引用商標より生ずる「ミズホネット」の両称呼は、後半部において「ネット」の有無という顕著な差異を有するものであるから、それぞれを一連に称呼しても、何ら相紛れるおそれはないものである。
また、本件商標と引用商標は、それぞれ前記の構成よりなるから、外観上、十分に区別し得る差異を有するものであり、さらに、観念においても引用商標は前記したとおり造語と認められるものであるから、両者は比較し得ないものであり、類似するものとは認められない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、その指定役務において抵触するところがあるとしても、その称呼、外観及び観念のいずれの点からしても、非類似の商標といわなければならない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
本件商標と引用商標は、上記(1)で認定、判断したとおり非類似の商標と認められるものであり、かつ、そもそも商標法第4条第1項第15号の規定は、引用商標が需要者の間に広く認識されていること(著名性)が要件とされているところ、請求人は、引用商標の著名性はもとより、引用商標をその指定役務に使用していることについて何らの証拠も提出していないものであるから、本件商標をその指定役務に使用しても、その出所について混同を生ずるおそれがあるものとは認められない。
(3)商標法第3条第1項柱書きについて
本件商標の出願人(当初の商標権者、以下同じ。)は、「株式会社みずほホールディングス」(平成15年9月16日付けで現権利者(被請求人)に本商標権の移転登録がされた。)であり銀行持株会社と認められるところ、被請求人より提出された乙第21号証をみると、銀行法第52条の5(銀行持株会社の業務範囲等)で「銀行持株会社は、その子会社である銀行及び第52条の7第1項各号に掲げる会社の経営管理を行うこと並びにこれに附帯する業務を営むことができる」旨が規定されているところからすれば、本件商標の出願人は、自己の業務に係る役務について本件商標の使用をするものと認め得るものであるから、商標法第3条第1項柱書きにより登録を受けることができる商標に該当しないものということはできない。
(4)結び
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書き、同法第4条第1項第11号、同第15号及び同法第8条第1項に違反して登録されたものでないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2006-12-07 
結審通知日 2006-12-13 
審決日 2006-12-28 
出願番号 商願平11-114784 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (Z38)
T 1 11・ 18- Y (Z38)
T 1 11・ 263- Y (Z38)
T 1 11・ 3- Y (Z38)
T 1 11・ 262- Y (Z38)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 柴田 昭夫
特許庁審判官 岩崎 良子
小川 有三
登録日 2001-03-09 
登録番号 商標登録第4457746号(T4457746) 
商標の称呼 ミズホ 
代理人 鳥海 哲郎 
代理人 廣中 健 
代理人 阪田 至彦 
代理人 永田 早苗 

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