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審決分類 審判 一部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない Y41
審判 一部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y41
管理番号 1170778 
審判番号 無効2006-89182 
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-12-28 
確定日 2007-12-03 
事件の表示 上記当事者間の登録第4899107号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4899107号商標(以下「本件商標」という。)は、「LAFESTA」の文字を標準文字で書してなり、平成16年9月29日に登録出願、「小型自動車競走の企画・運営又は開催」ほかの第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務、並びに、第3類、第4類、第6類ないし第9類、第11類、第14類、第16類、第18類、第20類、第21類、第24類ないし第28類、第30類、第34類、第37類及び第39類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として同17年10月7日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、本件商標に係る第41類に属する指定役務中、「小型自動車競走の企画・運営又は開催」についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第62号証(枝番号を含む。ただし、甲第24号証及び甲第33号証は、いずれも欠号。)を提出した。
(1)利害関係
請求人は、後述のとおり、日本におけるクラシックカーレースを有限会社フォルツァに毎年、企画させ、かつ、実質的に運営させているし、また、商標「La Festa 1000」について、第41類「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,放送番組の制作,小型自動車競走の企画・運営又は開催」を指定役務として、商標登録出願(商願2006-55133号)したが、当該商標に対し、本件商標が引用され、商標法第4条第1項第11号に該当し、これを登録することはできないとする拒絶理由通知がなされたから(甲第62号証)、本件審判請求をするにつき利害関係を有することは明らかである。
(2)無効理由
本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第41類に属する役務である「小型自動車競走の企画・運営又は開催」について、以下のとおり、商標法第4条第1項第10号又は同15号に該当するから、同法第46条第1項第1号に基づき、その登録を無効とされるべきである。
(ア)請求人は、イタリアにおける「Mille Miglia」又は「1000 Miglia」と称するクラシックカーレースの開催を行っている「マルバ エス アール エル(MARVA S.R.L.)」(前身名「ダルマ エス・アール・エル(DARMA S.R.L.)」)から日本におけるクラシックカーレースの開催を許可されるとともに、「Mille Miglia」関連商標の管理を委託されている(甲第1号証及び甲第2号証)。「ダルマ エス・アール・エル」がイタリアにおける上記自動車レースの開催団体であることは、平成11年審判第35389号の審決(甲第3号証)から明らかである。なお、「ダルマ エス・アール・エル」から「マルバ エス アール エル」への名称変更の経緯は、次のとおりである。
「有限会社マルバ エス アール エル」は、会社合併などにより、旧「有限会社ダルマ エス・アール・エル」の名称が変更されたものであり、イタリアにおける会社登記簿謄本である甲第59号証及びその訳文である甲第60号証により、この事実は明らかである。
請求人は、1997年(平成9年)3月に「有限会社フォルツァ」(現「株式会社フォルツァ」)(以下、単に「フォルツァ」という。)との間で、「スポーツカー・イベント開催及び商標等の管理の委託契約書」を締結し、同年より日本における「La Festa Mille Miglia(ラ・フェスタ ミッレミリア)」と題するクラシックカーレース(以下、単に「本件イベント」という。)をフォルツァに毎年、企画させ、かつ、実質的に運営させている。フォルツァが本件イベントを企画・運営していることは、1998年?2004年の各年の本件イベントに関するリーフレットにおいて、「企画制作 FORZA」と記載されていることから明らかである(甲第16号証ないし甲第18号証の各3頁、甲第19号証ないし甲第22号証の各4頁)。
なお、本件イベントの主催者は、名目上1997年から2002年まではテレビ朝日のみであり、フォルツァは企画制作の担当となっているが、2003年以降は、テレビ朝日とフォルツァの共催となっている(甲第16号証ないし甲第18号証の各3頁、甲第19号証ないし甲第22号証の各3及び4頁)。
(イ)さらに、請求人は、本件商標に類似する商標、すなわちイタリア北部都市、ブレシアを中心に過去数十年間にわたって行われてきた自動車レース「ミッレ・ミリア」のシンボルマークと認められるところの赤色地の右向き矢印図形内に白抜きで「1000」及び「MIGLIA」の文字を表示し、該図形を囲むように「C」の文字風に表示してなる緑色地の矢印図形内に白抜きした「ミッレ・ミリア祭」を意味する「La Festa」の文字を上部に「Mille Miglia」の文字を下部に表示した構成よりなる商標について、第26類「衣服用き章(貴金属製のものを除く。)、衣服用バッジ(貴金属製のものを除く。)、衣服用バックル、衣服用ブローチ、帯留め、ボンネットピン(貴金属製のものを除く。)ワッペン、腕章」を指定商品として商標登録を受けている(登録第4527256号商標:別掲参照)(以下「引用商標1」という。)。
これらの各指定商品は、本件イベントに伴って販売されるグッズであり、それらのグッズに用いる本件イベントのシンボルマークである商標について保護を受けるため、請求人は、上記商標権を2001年(平成13年)に取得している。
(ウ)請求人は、引用商標1並びに「La Festa Mille Miglia」の文字からなる商標(以下「引用商標2」という。)及び「ラ・フェスタ ミッレ・ミリア」の文字からなる商標(以下「引用商標3」という。)を本件イベントのシンボルマーク又はレースの名称として1997年以来現在に至るまで、継続して、かつ、大々的に使用している。特に、本件イベントである「小型自動車競走」の企画・運営・開催について、これらの商標を1997年以来使用し続け、その使用による当該シンボルマーク(引用商標1)及び引用商標2又は3の周知度は極めて高い。
なお、引用商標2は、甲第15号証の表紙に記載の「La Festa Mille Miglia 1997」から「1997」の文字を除いたものである。
また、引用商標3は、甲第23号証の2頁の最上部に記載の「ラ・フェスタ ミッレミリア 2000 走行予定時間」から「2000 走行予定時間」の文字を除いたものである。
以下に、引用商標1ないし3の「小型自動車競走の企画・運営・開催」についての使用実績と、そのマスメディアでの取り上げられた実情を示し、引用商標1ないし3が本件商標の登録出願前に我が国において「小型自動車競走の企画・運営・開催」について周知であったことを示す。
(a)日本における「La Festa Mille Miglia」と題するクラシックカーレースである本件イベントは、イタリアにおける「Mille Miglia」と称する1927年以来開催されている伝統的クラシックカーレースと同様に、自動車の走行の速さを競うものではなく、各チェックポイント毎の通過タイムなどの正確性を競うものであり、その行程は、東京発→東北道→栃木→福島→山形→福島→茨城→東京→箱根などに亘り、総走行距離は1,600km、すなわち1000マイル(イタリア語で「1000 Miglia」又は「Mille Miglia」)である。
また、全ての参加車が安全かつ快適に、この総走行距離を走行するために、本件イベントは、5日間(自動車の走行が4日、表彰式が1日)に亘って開催されるものである。
そして、各地方自治体や、各所轄の警察署の協力を得る必要があるため、コースの設定や、宿の確保、各チェックポイントの設定、そのための人員の配置など、毎年10月に開催されるレースであるにもかかわらず、毎年、年初から準備のための運動が開始されている。特に、各地方自治体や、各所轄警察、関連施設、宿泊先に対しては、上記シンボルマークや文字商標の印刷されたオフィシャルポスターや説明書であるリーフレットあるいはプログラムなどをあらかじめ配布している。
因みに、1997年以降毎年、オフィシャルポスター(大)(同ポスターの縮小版である甲第28号証ないし甲第32号証、甲第34号証及び甲第35号証参照)を2,000部以上、リーフレット(甲第15号証ないし甲第22号証)を1,000部以上、それぞれ関係先に配布している(甲第8号証)。また、2000年以降は、上記に加え、オフィシャルポスター(小)を500部以上、プログラム(甲第23号証及び甲第25号証ないし甲第27号証)を50,000部以上毎年、それぞれ関係先に配布している(甲第8号証)。そして、本件商標の出願のあった2004年の前年の2003年には、オフィシャルポスター(大)を2,300部、オフィシャルポスター(小)を700部、リーフレット(甲第21号証)を1,400部、プログラム(甲第26号証)を70,000部をそれぞれ関係先に配布している(甲第8号証)。なお、これらの配布関係先の数も1997年の10カ所から始まり、1998年には、19カ所、1999年には、37カ所と増加し、2003年には、73カ所となっている(甲第8号証)。
(b)上記ポスター、リーフレット、プログラムなどのほか、引用商標1を形取ったステッカー、引用商標1が印刷された小旗、引用商標1を形取ったピンバッジなどが多数製造、配布されている(甲第43号証ないし甲第45号証参照)。また、関係先と参加者には、ルートブックと称する全行程の詳細な情報が記載された本が配布されている(甲第36号証ないし甲第42号証)。これらのルートブックにおいても、引用商標1や引用商標2が随所に印刷されている。
因みに、2003年には、400部のルートブックが製造され、そのほとんどが配布されている(甲第8号証)。
(c)本件イベントの主催者については、上記のとおりであるが、後援者として、FM東京、イタリア共和国大使館、渋谷区、ブレシア自動車クラブなどがあるほか、特別協力者として、(社)日本自動車連盟(JAF)、国際クラシックカー連盟(F.I.V.A)が名を連ねている(甲第20号証3頁)。
(d)本件イベントを取り扱ったマスメディアの記事や放送番組は、極めて多数である。フォルツァは、1999年以降、毎年、本件イベントが終了すると、終了報告書を作成している(甲第9号証ないし甲第14号証)。1999年の終了報告書によると、日本版「ミッレミリア」としての「ラ・フェスタ ミッレミリア」を紹介する新聞記事が多数見られる(甲第9号証)。
また、スポーツ報知東京版の’99.10.18の記事では、「『ラ・フェスタ?』しゅっぱ?つ」の見出しを付け、「ラ・フェスタ ミッレミリア」を略して「ラ・フェスタ」と紹介している(甲第9号証20頁)。
同様に、スポーツニッポン東京版の’99.10.18の記事では、「『ラ・フェスタ・・・』スタート」の見出しを付け、「ラ・フェスタ ミッレミリア」を略して「ラ・フェスタ」と紹介している(甲第9号証21頁)。
そして、2003年の終了報告書には、本件イベントを掲載した新聞記事が合計51に及ぶと記載されており、それらの記事を併せて掲載している。これらの中には、朝日新聞、毎日新聞、東京新聞なども含まれている(甲第13号証20頁)。さらに、同報告書には、本件イベントを掲載した雑誌記事が合計で43に及ぶことが記載されており、それらの記事を併せて掲載している。これらの中には、ベストカー、くるま選び、ホリデー・オート、モーターマガジン、週刊カーセンサなどの自動車関連雑誌のみならず、週刊プレイボーイ、ぴあ、Tokyo Walker、週刊新潮など、一般誌も含まれている(甲第13号証43頁)。そのうえ、同報告書には、本件イベントを掲載したインターネットのサイトや各種広報誌の記事が合計で23に及ぶことが記載されており、それらの記事を併せて掲載している(甲第13号証90頁)。
しかも、同報告書は、同イベントを取り扱ったテレビ番組が21にも及ぶことを掲載している(甲第13号証127頁)。
(e)本件イベントは、テレビ朝日が主催者の一員であり、テレビ朝日では、毎年12月に、その年の10月に行われた本件イベントのレポート番組を放送している(甲第10号証68頁、甲第11号証41頁、甲第13号証128頁)。
これらの放送では、レースの様子が映し出されるとともに、その名称が「La Festa Mille Miglia」/「ラ・フェスタ ミッレ・ミリア」である旨が紹介され、かつ、引用商標1と同一又は類似のシンボルマークや引用商標2と同一又は類似の「La Festa Mille Miglia」及び引用商標3と同一又は類似の「ラ・フェスタ ミッレ・ミリア」の文字が小型自動車競走の名称として使用されている様子を伝えている(甲第46号証、甲第47号証、甲第49号証及び甲第51号証ないし甲第53号証)。
この放送では、第1日目の出発から、第4日のゴールまでを時間の経過とともに紹介しているが、途中のスタンプポイントの様子も示している(甲第48号証ないし甲第51号証)。
さらに、テレビ朝日以外の各系列テレビ局においても、毎年10月の本件イベントの前後には、ニュースとして本件イベントを「La Festa Mille Miglia」又は「ラ・フェスタ ミッレミリア」の名称で紹介している(甲第54号証ないし甲第58号証)。
本件イベントには、これまで数年に亘り、寛仁親王殿下をお招きしており、例えば、1999年の場合、殿下は箱根までおいでになり、観戦され、2001年の場合、殿下は第1日目のスタートや最終日の横浜元町観戦など、本件イベントを楽しまれている(甲第9号証5頁、甲第11号証10頁)。
本件イベントは、タレントなどが多数参加することも特徴である。常連としては、堺正章、近藤真彦、保坂尚輝、木内みどりなどのほか、複数回参加したタレントとして、高岡早紀(本名:保坂佐紀子)、西田ひかる(本名:衣斐光)、旭道山などがいて、このイベントの人気をさらに高める要因となっている(甲第9号証ないし甲第12号証中の各参加者名一覧参照、甲第11号証23頁)。
(f)このように、日本版「ミッレミリア」としての「ラ・フェスタ ミッレミリア」は、業界紙や業界誌のみならず、一般新聞や一般雑誌でも大きく、かつ、全国的に取り上げられ、また、テレビでの放送回数も多く、小型自動車競走の企画・運営・開催の役務を示す商標として広く知れわたっているものであり、1997年以来、引用商標1ないし3を上記役務について繰り返し使用した結果、少なくとも、本件商標の登録出願前の2004年8月までには、需要者が何人の役務に係る商標であるかを十分認識できる状態になっていた。
特に、上記各マスメディアの記事などから明らかなように、イタリアで毎年5月に開催されるクラシックカーレースである「ミッレミリア」と1997年以来、毎年10月に日本で開催される本件イベントとを区別するために、後者の名称として「ラ・フェスタ ミッレミリア」が用いられており、イタリア版と日本版を区別するキーワードが「ラ・フェスタ」にあることは明らかである。
したがって、小型自動車競走の業界では、「ラ・フェスタ」といえば、日本版ミッレミリア、すなわち「ラ・フェスタ ミッレミリア」のことであると認識されるようになっている。
(エ)本件商標「LAFESTA」は、「ラフェスタ」と称呼されることは明らかであり、日本版「ミッレミリア」で使用されている引用商標2の「La Festa Mille Miglia」や、引用商標3の「ラ・フェスタ ミッレミリア」と比較すると、「Mille Miglia」又は「ミッレミリア」以外の部分の称呼は、ともに「ラフェスタ」であって、共通している。「La Festa Mille Miglia」は、「La Festa」の部分と「Mille Miglia」の部分の2つの要部から成り立っている。
また、「ラ・フェスタ ミッレミリア」も同様に「ラ・フェスタ」と「ミッレミリア」の2つの要部から成り立っている。
してみると、本件商標である「LAFESTA」と「La Festa Mille Miglia」又は「ラ・フェスタ ミッレミリア」とを比較すると、前者は、後者の要部と同一の称呼を有しているものであって、全体として見ると、これらは相互に類似するといえる。
さらに、本件イベントの正式名称は、「ラ・フェスタ ミッレミリア」であるが、その省略形として「ラ・フェスタ」が用いられていることは、上述のとおりである。
したがって、「ラ・フェスタ」として全国的に周知となった本件イベントの名称と本件商標が相互に類似することは明白である。
このように、日本版「ラ・フェスタ ミッレミリア」において、1997年以来使用され、周知となっている引用商標2「La Festa Mille Miglia」や引用商標3「ラ・フェスタ ミッレミリア」、あるいは、その略称であり、同様に周知となっている「ラ・フェスタ」と類似する本件商標が、その指定商品及び指定役務中、第41類「小型自動車競走の企画・運営又は開催」について、本件イベントと何ら関係のない被請求人に登録されているから、商標法第4条第1項第10号に規定する「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用するもの」に該当するので、本件商標が同法第4条第1項第10号に違反して登録されたことは明らかである。
(オ)なお、仮に、本件商標が商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものではないとされたとしても、被請求人が本件商標「LAFESTA」を小型自動車競走の企画・運営又は開催について使用すれば、上記日本版「ミッレミリア」としての「ラ・フェスタ ミッレミリア」と題する本件イベントの開催者であるテレビ朝日並びフォルツァの業務に係る役務と混同を生ずることは明らかである。
すなわち、上述のように、「ラ・フェスタ ミッレミリア」なる用語がイタリアにおけるクラシックカーレースである「ミッレミリア」と区別するために用いられ、また、「ラ・フェスタ ミッレミリア」と比較的音節数が多い用語を簡略化して「ラ・フェスタ」と呼ぶことにより、日本における同イベントをより簡潔に示すものとしてマスコミなどでも多用されているので、被請求人が本件商標を小型自動車競走の企画・運営又は開催について使用すれば、「ラ・フェスタ」と簡略化されて認識されている本件イベントの開催者であるテレビ朝日及びフォルツァの業務に係る役務と混同を生ずることは明らかである。
(3)まとめ
以上から明らかなように、本件商標は、その出願日である2004年9月29日前に、他人の業務である日本版クラシックカーレースに係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている引用商標1ないし3及びその略称である「ラ・フェスタ」に類似する商標であって、その役務又はこれに類似する役務である「小型自動車競走の企画・運営又は開催」を指定役務としているので、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたことは明らかであり、また、仮に、本件商標が同号に違反して登録されたものでないとしても、被請求人が本件商標を「小型自動車競走の企画・運営又は開催」について使用すれば、他人の業務に係る役務と混同を生ずることは明らかであるから、同法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるので、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効とされるべきである。

3 被請求人の答弁
被請求人は、上記2の請求人主張に対し、何ら答弁するところがない。

4 当審の判断
(1)利害関係について
請求人は、自己の商標登録出願(商願2006-055133)に対して、本件商標を引用した拒絶理由の通知を受けており、本件商標の存在により、不利益を被っているから、その登録の無効を求める本件審判請求について、法律上の利害関係を有することが認められる。
(2)商標法第4条第1項第10号又は同15号該当性について
(ア)請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(a)請求人は、イタリアにおいて、「Mille Miglia」又は「1000 Miglia」(ミッレミリア)と称されるクラシックカーレースを開催している「マルバ エス アール エル」(旧名「DARMA S.R.L.」;甲第59号証及び甲第60号証)から日本におけるクラシックカーレースの開催を許可され、「Mille Miglia」(ミッレミリア)関連商標の管理を委託されている(甲第1号証及び甲第2号証)。
(b)請求人は、1997年3月にフォルツァと委託契約を締結し、同年より日本において「La Festa Mille Miglia(ラ・フェスタ ミッレミリア)」と称するクラシックカーレース(本件イベント)をフォルツァに企画運営させている(甲第16号証ないし甲第22号証)。
(c)本件イベントは、イタリアにおいて1927年以来開催されているクラシックカーレースと同様に、速さではなくチェックポイントの通過タイムの正確性を競い、東京から北海道まで等の距離1600km(1000マイル)(イタリア語で「1000 Miglia」又は「Mille Miglia」)を走破するもので、5日間(自動車の走行が4日、表彰式が1日)に亘って開催されるものである。
本件イベントの開催に当たっては、別掲に示したとおりの構成よりなる引用商標1、「La Festa Mille Miglia」の文字からなる引用商標2、及び「ラ・フェスタ ミッレ・ミリア」の文字からなる引用商標3を印刷したオフィシャルポスター、リーフレット、プログラム、ルートブックが毎年作成され、コースに当たる各地方自治体、各所轄警察、関連施設、宿泊先等の関係先、レース参加者等に配布されているほか、引用商標1を形取ったステッカー、小旗、ピンバッジ等が多数製造され、配布されている(甲第15号証ないし甲第23号証、甲第25号証ないし甲第32号証及び甲第34号証ないし甲第42号証)。
(d)本件イベントの主催者は、1997年から2002年まではテレビ朝日(企画制作はフォルツァ)であったが、2003年からは、テレビ朝日とフォルツァとの共催となり、FM東京、イタリア共和国大使館、渋谷区、ブレシア自動車クラブ等が後援し、日本自動車連盟(JAF)、国際クラシックカー連盟(F.I.V.A)等が特別協力者として参画している(甲第9号証ないし甲第14号証及び甲第20号証)。
(e)フォルツァは、本件イベントについて、毎年終了報告書を作成し、本件イベントに関する新聞・雑誌の記事、放送番組、参加者等についてまとめている。
例えば、2003年の報告書には、本件イベントに関する新聞記事が51件、雑誌記事が43件であったことやテレビ番組が21件あったことが掲載されている(甲第9号証ないし甲第14号証)。
本件イベントについて報道・紹介する、これらの記事や放送番組においては、引用商標1ないし3を一連一体に表示しているほか、本件イベントを「ラ・フェスタ・ミッレ・ミリア」、日本版「ミッレミリア」等と称しているものがほとんどであるが、スポーツ新聞の記事(2件)において、本件イベントにつき「ラ・フェスタ?」の省略形による見出しをつけたものも、ごくわずか存在する。
(f)テレビ朝日は、毎年本件イベントのレポート番組を放送し、引用商標1ないし3とともにレースの内容を紹介しているほか、他のテレビ朝日系列のテレビ局でもニュースとして本件イベントを「La Festa Mille Miglia」又は「ラ・フェスタ ミッレミリア」の名称で紹介している(甲第46号証、甲第47号証、甲第49号証、甲第51号証ないし甲第58号証)。
(イ)以上の認定事実によれば、引用商標1ないし3は、本件イベントについて使用する商標として、本件商標の登録出願時には既に、第41類に属する指定役務中、「小型自動車競走の企画・運営又は開催」に係る取引者、需要者の間において広く認識されていたものというべきであり、その状態は、本件商標の登録査定時(平成17年9月1日)においても継続していたものと認められる。
しかしながら、引用商標1ないし3が「La Festa」又は「ラ・フェスタ」と省略して使用されている証左は見当たらないし、本件イベント自体についても、単に「La Festa」又は「ラ・フェスタ」と略称されている事実を示す証拠は、ほとんどないことからすると、「La Festa」又は「ラ・フェスタ」の文字が本件イベントの略称として、かつ、請求人又はフォルツァの業務に係る役務を表示する商標として周知著名になっていたものとは認められない。
(ウ)また、本件商標と引用商標1ないし3との類否について検討するに、本件商標は、「LAFESTA」の文字からなり、「ラフェスタ」の称呼を生ずるのに対し、引用商標1ないし3は、いずれも一連一体のものとして認識し、把握され、それにより「小型自動車競走の企画・運営又は開催」に係る取引者、需要者の間において広く認識されているものといえるから、「ラフェスタミッレミリア」の称呼を生ずるというべきである。
そして、本件商標から生ずる「ラフェスタ」の称呼と引用商標1ないし3から生ずる「ラフェスタミッレミリア」の称呼とは、「ミッレミリア」の音の有無において、顕著な差異を有し、明確に区別し得るものである。
また、本件商標と引用商標1ないし3とは、それぞれの構成に照らし、外観上判然と区別し得るところである。
さらに、イタリア語が我が国において、それ程普及しているとも認め難い事情よりしても、本件商標が、その取引者、需要者によって、親しまれた既成の意味合いを有する語として容易に認識し、理解されるものとは認め難く、むしろ、一種の造語として認識し、把握されるというのが自然である。
よって、本件商標は、観念上引用商標1ないし3と比較すべくもない。
してみれば、本件商標と引用商標1ないし3とは、称呼、外観及び観念のいずれの点においても、互いに紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
(エ)したがって、たとえ、引用商標1ないし3が第41類「小型自動車競走の企画・運営又は開催」に係る取引者、需要者の間において広く認識されているとしても、引用商標1ないし3と本件商標とが類似するものでない以上、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものではない。
また、上記(ア)ないし(ウ)の事情下において、本件商標をその指定役務中、第41類「小型自動車競争の企画・運営又は開催」に使用しても、これに接する取引者、需要者が引用商標1ないし3を連想、想起することはないというべきであり、さらに、本件商標を当該役務に使用しても、請求人又は、それと経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかの如く、その出所について混同・誤認を生ずるおそれもない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものでもない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第41類「小型自動車競争の企画・運営又は開催」について、商標法第4条第1項第10号又は同15号のいずれにも違反して登録されたものではないから、その登録を無効にすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
引用商標1

注:色彩については、原本を参照されたい。

審理終結日 2007-10-03 
結審通知日 2007-10-10 
審決日 2007-10-23 
出願番号 商願2004-89051(T2004-89051) 
審決分類 T 1 12・ 271- Y (Y41)
T 1 12・ 25- Y (Y41)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邉 健司 
特許庁審判長 山口 烈
特許庁審判官 寺光 幸子
鈴木 新五
登録日 2005-10-07 
登録番号 商標登録第4899107号(T4899107) 
商標の称呼 ラフェスタ、フェスタ 
代理人 二瓶 正敬 

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