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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200689163 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y30
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y30
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y30
管理番号 1169045 
審判番号 無効2006-89113 
総通号数 97 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-01-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-08-11 
確定日 2007-11-29 
事件の表示 上記当事者間の登録第4839256号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4839256号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4839256号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成16年7月23日に登録出願、第30類「キャンデー,キャラメル,チューインガム(医療用のものを除く。),その他の洋菓子」を指定商品として、同17年2月18日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録商標は、以下のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第3276055号商標(以下「引用A商標」という。)は、「HICHEW」の文字を横書きしてなり、平成5年1月18日に登録出願、第30類「茶,コーヒー及びココア,氷,菓子及びパン,ウースターソース,ケチャップソース,しょうゆ,食酢,酢の素,そばつゆ,ドレッシング,ホワイトソース,マヨネーズソース,焼肉のたれ,角砂糖,果糖,氷砂糖,砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,水あめ,ごま塩,食塩,すりごま,セロリーソルト,化学調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,穀物の加工品,アーモンドペースト,サンドイッチ,すし,ピザ,べんとう,ミートパイ,ラビオリ,即席菓子のもと,酒かす,食用グルテン」を指定商品として、同9年4月11日に設定登録、その後、商標権の存続期間の更新登録がされているものである。
(2)登録第4598722号商標(以下「引用B商標」という。)は、「HI-CHEW」の文字を標準文字で書してなり、平成13年12月5日に登録出願、第30類「コーヒー及びココア,コーヒー豆,茶,調味料,香辛料,食品香料(精油のものを除く。),米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン,穀物の加工品,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,菓子及びパン,即席菓子のもと,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,アーモンドペースト,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,氷,アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,酒かす,ホイップクリーム用安定剤,穀物を主原料とする粉状・粒状・錠剤状・カプセル状・液体状・ゼリー状の加工食品」を指定商品として、同14年8月23日に設定登録されたものである。
(3)登録第1327395号商標(以下「引用C商標」という。)は、「ハイチュウ」の文字を横書きしてなり、昭和50年2月1日に登録出願、第30類「菓子、パン」を指定商品として、同53年3月10日に設定登録、その後、商標権の存続期間の更新登録が2回されているものである。
(4)登録第4017987号商標(以下「引用D商標」という。)は、「ハイチュー」の文字を横書きしてなり、平成6年8月4日に登録出願、第30類「コーヒー及びココア,茶,ウースターソース,ケチャップソース,しょうゆ,食酢,酢の素,そばつゆ,ドレッシング,ホワイトソース,マヨネーズソース,焼肉のたれ,角砂糖,果糖,氷砂糖,砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,水あめ,化学調味料,香辛料,食用グルテン,穀物の加工品,サンドイッチ,すし,ピザ,べんとう,ミートパイ,ラビオリ,菓子及びパン,即席菓子のもと,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,アーモンドペースト,氷,酒かす」を指定商品として、同9年6月27日に設定登録されたものである。
(5)登録第4814416号商標(以下「引用E商標」という。)は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、平成16年1月28日に登録出願、第30類「アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー及びココア,氷,菓子及びパン,調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆,穀物の加工品,アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン,穀物を主原料とする粉状・粒状・錠剤状・カプセル状・液体状・ゼリー状の加工食品」を指定商品として、同16年10月29日に設定登録されたものである。
以下、引用A商標ないし引用E商標を一括して「引用商標」という。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第50号証及び検甲第1号証ないし検甲第3号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
(1)本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(ア)称呼、外観及び観念における対比
(a)称呼上、本件商標は、引用商標と類似する。
本件商標からは、その構成文字に従って「マイチュウ」又は「マイチュー」の称呼が無理なく自然に生じる。なお、本件商標の構成文字のうち、「MY」の部分は、わが国国民に広く知られた英単語である「MY」、「BY」、「TYPE」、「STYLE」、「CYBER」等の読み方に倣ってこれを「マイ」と読むものと考えられ、「ミチュウ」(又は「ミチュー」)のような不自然な称呼は生じない。一方、引用商標からは「ハイチュウ」又は「ハイチュー」の称呼が生じる。「マイチュウ」(又は「マイチュー」)と「ハイチュウ」(又は「ハイチュー」)を対比すると、いずれも4音節の同数音からなり、相違する「マ」と「ハ」は母音「ア(a)」を共通にするものであるから、商標審査基準に照らし、両称呼は原則として類似する。
商標審査基準では、称呼が原則として類似する場合であっても、全体の音感を異にするときは例外とされる場合がある、として、語頭音に音質又は音調上著しい差異があるとき、音節に関する判断要素において称呼が少数音であるとき(3音以下)、語の切れ方、分かれ方(シラブル、息の段落)が明らかに異なるとき、などの事由を挙げている。
そこで、本件商標と引用商標を対比すると、相違する一音である「マ」と「ハ」に音質又は音調上著しい差異はない。その理由は以下の通りである。
「マ」の音は、響きの弱い鼻子音(m)と明確に響く母音(a)が結合した音であって、子音よりはむしろ母音の「ア(a)」の印象が強いものであり、子音よりはむしろ母音「ア」が強く響く音である。一方、「ハ」の音も、(m)と同様に響きの弱い無声摩擦音(h)と明確に強く響く母音(a)が結合した音であって、子音(h)は呼気とともに発せられる、力の入りにくい弱い音として発音されることから、むしろこれに帯同する母音「ア(a)」が強く響き、母音「ア(a)」にあたかも吸収されて、「ハ」の音は「ア」に近似した音として聴取される。過去の審決例や裁判例においても、「マ」及び「ハ」の音について前記のような認定が一貫して行われている(甲第8号証ないし甲第15号証)。
そうすると、「マ」と「ハ」の音はいずれも、響きの弱い子音が明確に強く響く母音「ア(a)」に吸収されて、「ア」に近似した音として聴取される点において相互に近似した音であるというべきであり、少なくともこれらの音が「著しい差異」を有するものであるとはいえない。したがって、本件商標と引用商標を対比するとき、相違する一音である語頭音「マ」と「ハ」に音質又は音調上著しい差異はなく、原則として類似すると考えられる両商標を例外的に非類似とするべき理由はない。
商標審査基準においても明らかにされている通り、商標の称呼類否判断にあたっては、「時と所を異にして、両商標が称呼され、聴覚されるときに聴者に与える称呼の全体的印象(音感)から、互いに相紛れるおそれがあるか否かによって判断」するのであって「各称呼を構成する個々の音の音質等を比較するのではなくて、称呼全体において、それより生ずる全体の音感(中略)において互いに相紛れるおそれがあるか否かが判断される」(甲第17号証)。
したがって、相違する一音を切除・抽出し、これを対比することのみによって商標の類否が判断されてはならない。
本件商標から生じる「マイチュウ」(又は「マイチュー」)の称呼と引用商標から生じる「ハイチュウ」(又は「ハイチュー」)の称呼を対比すると、両者の間には、次のような共通した特徴がある。いずれも4音節の同数音であること。いずれも4音節のうち、語頭音を除く「イチュウ」(又は「イチュー」)の3音節が完全に一致すること。相違する一音である「ハ」と「マ」においても、母音「ア(a)」を共通にすること。いずれも一息によどみなく読みくだすことができるものであって、音調上も、前半2音が平板に発音され、後半が前半よりもやや低く発音される点で共通すること。共通する後半の「チュウ」(又は「チュー」)は、強く響く歯茎破擦音に「ウ(u)」の母音が重なり、あるいは長音を伴うことによって音量が多くなることから、強音として聴取されること。
とりわけ、両称呼に共通する後半の「チュー」は、響きの強い歯茎破擦音「ch」が、「母音の調音上、最も特色ある代表的の三音」の一つであって、「聴えの上からも、最も明瞭に隔たる音色を備えたものである」(甲第15号証参照)とされる母音「ウ(u)」を帯同し、これにさらに「ウ(u)」が続き、又は長音を伴うことによって音量が多くなることによって、強音として聴取される。商標審査基準においても「語尾において、共通する音が同一の強音(聴覚上、ひびきの強い音)であるか(これが強音であるときは、全体の音感が近似して聴覚されることが多い)」とされているとおりであるから、本件商標と引用商標の対比においても、語尾部分の「チュー」が強く印象付けられる結果、「マイチュウ」(又は「マイチュー」)の称呼と引用商標から生じる「ハイチュウ」(又は「ハイチュー」)の称呼は相互に全体的語調語感が近似する。
上記の共通点を総合して、「マイチュウ」(又は「マイチュー」)の称呼と引用商標から生じる「ハイチュウ」(又は「ハイチュー」)の称呼を全体として対比すると、語頭の一音における子音の差異は、上記共通点を凌駕しうるものではなく、むしろ、明瞭に発音される「ア」及び「イ」の母音を共通にする前半2音が軽やかに称呼され、強音として聴取される後半の「チュー」へとリズミカルにテンポよくつながる全体の音調の近似性が語頭の一音における子音の微弱な差異を圧倒するものであり、両称呼は著しく類似する。
よって、本件商標は引用商標と称呼の上で類似する。
(b)外観上、本件商標は、引用A商標及び引用B商標と類似する。
本件商標と引用A商標は、ともに欧文字6文字から成り、このうち「C」、「H」、「E」及び「W」の4文字から成る「CHEW」の部分を共通にする。
本件商標と引用A商標は、1文字目を異にしているが、「M」及び「H」の文字は、いずれも左右両端に垂直に平行して位置する2本の縦棒を「V」又は横棒で結合したものである点において字形が近似している。とりわけ、本件商標にあっては、各文字が丸みを帯びた太文字をもって表示されているため、「M」が持つ字形上の特徴が通常の書体より失われ、「H」との差異は外観上僅かなものとなっている。
本件商標と引用A商標は、2文字目を異にしているが、「Y」と「I」は、アルファベット26文字の中では互いに字形が近似している文字同士であるうえ、本件商標にあって「I」の文字は白抜きした太文字を、丸みを帯びた書体をもって表示しているため、欧文字「Y」が有する字形上の特徴が通常の書体より失われ、「Y」と「I」の差異は外観上僅かなものとなっている。現に、「Y」と「I」の外観上の類似性については、甲第21号証で認定しているとおりであり、本件商標と引用A商標の「Y」と「I」の文字も同様に語の中間に位置し外観において極めて近似している。
したがって、本件商標と引用A商標とは、いずれも欧文字6文字から成る語の大部分を占める「CHEW」の部分が完全に一致しており、「M」と「H」並びに「Y」と「I」の各文字の外観上の相違も微差にすぎず、外観上相紛らわしいものである。
引用B商標は、引用A商標の構成文字「HICHEW」のうち「HI」の部分及び「CHEW」の部分の間にハイフン(-)が配された態様であるが、ハイフンは符号の1つとして理解し認識されるにとどまるものである。引用B商標と本件商標との外観の対比においては、引用B商標の「CHEW」の部分が区切られていることによって、商標全体6文字のうちの4文字を占める当該部分が本件商標と共通であることがより強く看取され、引用B商標と本件商標との類似性がより強く認識・把握される結果、両商標は外観上類似する。
以上のとおり、本件商標と引用A商標及び引用B商標は外観上多くの共通点を有しており、類似する。
(c)観念上、本件商標は、引用商標と彼此識別することができない。
本件商標はなんら特定の観念を生じない造語であり、引用商標も、同じく、なんら特定の観念を生じない造語である(甲第22号証の1ないし12)。そうすると、両者の観念の対比は意味をなさず、少なくとも、本件商標と引用商標は、その観念に基づいて彼此識別することができないというべきである。
以上のとおり、本件商標と引用商標は称呼において類似するうえ、本件商標と引用A商標及び引用B商標は、外観において相紛らわしく、かつ、いずれも彼此識別しうるような特定の観念を有するものでもない。したがって、これらを総合的に考察すれば本件商標は引用商標に類似すると考えられる。
(イ)取引の実情
甲第23号証及び甲第24号証の判例が判示するところに拠れば、本件商標と引用商標の類否を判断するに当たっては、以下のような具体的な取引状況が検討されなければならない。
本件において、引用商標の著名性については以下の事情がある。
(a)引用商標を付した請求人商品の独創性とその歴史
請求人は1899年(明治32年)に我国最初の本格的洋菓子製造会社として創業し、当初からビスケット及びドロップス等を主力製品としていたが、現在では、広く菓子(キャラメル、ビスケット、チョコレートなど)から食品(飲料、ココア、ホットケーキなど)、冷菓(アイスクリームなど)、栄養補助食品の製造、さらに、飲食店やトレーニングジムの経営等を行うわが国有数の企業となっている。請求人は、1899年(明治32年)の創業時からキャラメル、チョコレートクリーム等とともにソフトキャンデー類の発売を開始し、それ以来数多くの定番商品、ヒット商品を生み出し、市場をリードし続けている。なかでも、引用商標を付したソフトキャンデー「ハイチュウ(HICHEW)」(以下、「請求人商品」という。)は30年もの間一貫して、請求人の戦略商品、重点商品として位置付けられてきた(甲第25号証の1ないし3)。
請求人は、1931年(昭和6年)に、当時としては斬新な他に類を見ないソフトキャンデー「チューレット」の発売を開始した。特殊な原料を配合して弾力性を与えるなど、請求人独自の製法で作り出された「チューレット」は発売以来新しいキャンデーとして好評を得たが、この「チューレット」のもつ特性をさらに向上させたオリジナル商品として、請求人は1975年(昭和50年)に請求人商品を発売し、その商標として本件引用商標を採択した。請求人商品には、請求人が永年にわたって蓄積してきたキャラメルの製造技術・方法が生かされており、請求人商品はキャラメル製品のひとつである「ミルクキャラメル ハイソフト」等の高級品質商品グループの一角を占めるキャンデーに育てようとする意図で発売された請求人のオリジナル商品である(甲第26号証)。
発売開始当初は、請求人商品はストロベリー味であったが、その後、請求人は、アップル味、オレンジ味、メロン味等、次々と新しい風味の請求人商品を発売した。さらに、クリスマス期間限定のストロベリーヨーグルト味及び梅の季節限定の梅風味等の期間限定発売の商品や、北海道限定発売の夕張メロン味及び沖縄限定発売のパイナップル味等の地域限定発売の商品を引用商標を使用して販売したことに加え、各種の風味の請求人商品をパックにした「3コパック」及び「5コパック」等のいわゆるアソートタイプの商品を販売し、請求人商品は、その種類の豊富さ、様々な風味を取り入れる斬新なアイデアから人気を高め、キャンデーのトップブランドとして、子供達、中高生、OL、主婦等に限らず幅広い年代から圧倒的な支持を得るようになった(甲第27号証の1ないし24)。
菓子業界の変遷に関する書籍「ザ・おかし」に当時の様子についての記述があるが、昭和50年代の菓子業界について「ソフトキャンデーが台頭してくるのもこの頃で、昭和50年、森永製菓『チューレット』がハイグレード化し、『森永ハイチュウ』(ストロベリー)に移行した。」、また、平成になってからは「低迷するキャンデー業界の中で売れているのは森永ハイチュウなどのソフトキャンデー。かむキャンデーとして森永製菓がトップをいく。」と書かれている(甲第28号証)。
(b)請求人商品に使用された引用商標の態様
引用商標は、1975年(昭和50年)の発売以来変わることなく請求人商品に付され販売されている。これらのパッケージの見本は、請求人の広報・IR部史料室作成にかかる「ハイチュウ歴史図鑑」という資料(甲第26号証)及び1975年以来請求人が作成、頒布してきた取扱商品カタログ(甲第29号証の1ないし63)に示すとおりである。発売当初の箱型から持ちやすいスティックタイプになるなどパッケージの変更はあったものの、「HICHEW」、「ハイチュウ」の名称に変更は一切無く、引用商標は、1975年(昭和50年)から現在に至るまで30年間もの長期にわたり一貫して継続的に使用されている。
このように、請求人商品は、30年もの間継続的に製造・販売され、一貫して引用商標が使用されてきた、我国の菓子業界あるいは菓子製品における代表的な著名なロングセラー商品である。
(c)請求人商品の売上高
請求人商品は、発売以来30年もの長期にわたり需要者の支持を得て安定した売上を保ち、その売上高は現在もなお好調に伸び続けている。請求人商品が現在と同じようなスティックパックの包装形態に変更された最近の20年間(1985年(昭和60年)度から2004年(平成16年)度)に限っても、累積販売金額は約2000億円を超え、ソフトキャンデー市場の約34%を占め、キャンデー市場全体で見てもシェアはトップである(甲第30号証)。このことは、調査機関が実施した、飴・キャラメル・キャンデー・ドロップ・のど飴の購入銘柄調査にも顕著に現れており、引用商標を付した請求人商品が、調査が実施された2001年(平成13年)から2005年(平成17年)までの5年間継続して圧倒的なトップシェア商品となっている(甲第31号証及び甲第32号証)。
このように、引用商標は1975年(昭和50年)から現在に至るまでの間、本件請求人の商標として、一貫して請求人商品に使用され続けており、最近の20年間に限っても累計販売金額が約2000億円以上にも及ぶ驚異的な販売実績をあげている。
(d)請求人商品の広告宣伝活動
商品の変遷が激しい菓子業界において、かかる長期間にわたり驚異的な売上を続けてきた背景として、請求人が引用商標を付した請求人商品を、同社の中核的なブランドにも育てるべく行ってきた宣伝広告活動をその一因として挙げることができる。請求人は、テレビコマーシャル及び雑誌を中心とし、様々な媒体を通して積極的な活動を展開してきている。以下に添付の証拠方法を引用しながら代表的なものを説明する。
請求人は請求人商品のテレビコマーシャルに、ハリウッド・スターのウーピー・ゴールドバーグ、若者を中心に人気を得ていた歌手のカヒミ・カリィ、相川七瀬、及び川村隆一等の人気歌手及びタレント等を起用したり、コマーシャルを複数制作しシリーズ化して放映する等、活発な広告宣伝活動を行ってきた(甲第33号証の1ないし14)。近年では、幅広い年代から絶大な支持を得ている歌手の浜崎あゆみを起用し(甲第34号証の1ないし14)、また、380人もの子供達が人文字作り請求人商品を広告するという大規模なテレビコマーシャルを制作・放映しているが、これらは各種新聞及び雑誌で大きく取り上げられるほど大きな反響があり話題となった(甲第35号証の1ないし14)。また、上記歌手の浜崎あゆみを起用したテレビコマーシャルは2001年(平成13年)から2005年(平成17年)1月頃まで継続的に制作及び放映されており、浜崎あゆみの全国的な人気と相俟って、取引者、需要者の間に請求人商品とそれに付された引用商標を強力に印象づけたのである。
そして、その後も継続して、人気グループ「KINKI-KIDS」の堂本剛がイメージキャラクターとなって独創的なTVCFが放映されているから、引用商標の著名性はますます高まっているのである(甲第36号証の1ないし4)。
上記のとおり、請求人が常に話題性のある斬新なテレビコマーシャルを企画・制作し、請求人商品及びそれについて使用される引用商標の認知度を上げるべく永年にわたり盛大に広告活動を行ってきたことにより、膨大な数の取引者・需要者が請求人商品の広告とそれに使用される引用商標に接していることは明らかである。
甲第37号証の1ないし181は、雑誌及び新聞に掲載された請求人商品の広告である。「小学五年生」、「週刊少年ジャンプ」、「週刊平凡」及び「主婦の友」等、子供向け、10代及び20代の若者や主婦層、成人向け等、多岐にわたる雑誌、及び新聞に広告を掲載することにより、幅広い年代において請求人商品及び引用商標の認知度を高めている。雑誌等に掲載された請求人商品の広告は膨大な量になるため、一部のみを証拠として提出するが、あらゆる年代の読者が請求人商品及び引用商標の広告に接していることは、これらの資料に徴しても明らかである。
(e)引用商標の著名性を示す各種の調査結果
株式会社ビデオリサーチ作成の「2003年度『森永ハイチュウ』郵送調査報告書」によれば、無作為に抽出された約1,500人を対象として行われた調査の結果「『ハイチュウ』の認知率は関東全体93%関西全体97%とほぼ飽和状態である」と評価され、関東における認知率は競合する菓子ブランド「ミルキー」、「キシリトール」に続いて3位であり、関西では1位である(甲第38号証の1)。同じく「2004年『森永ハイチュウ』郵送調査報告書」では、無作為に抽出された約1,300人を対象として行われた調査の結果「ブランド認知」として、「全体データを見ると『ハイチュウ』は<関東>99%<関西>100%(中略)認知はほぼ飽和状態といえる」と評価されている(甲第38号証の2)。同じく「2005年度『森永ハイチュウ』ブランド評価調査結果ご報告書(母親版)」によれば、3,200名を対象とする調査の結果「全体データを見ると『ハイチュウ』は<関東><関西>ともに99%と東阪ともに認知は非常に高く、飽和状態といえる」と評価されている(甲第38号証の3)。同じく「2005年度『森永ハイチュウ』ブランド評価調査結果ご報告書(本人版)」でも、3,200名を対象とする調査の結果、「全体データを見ると『ハイチュウ』は<関東>99%<関西>100%(中略)となっており(中略)認知は東阪ともにほぼ飽和状態といえる」と評価されている(甲第38号証の4)。第三者による上記調査結果によれば、遅くとも2003年(平成15年)の時点において、引用商標が請求人商品の商標として全国的に広く知られていること、すなわち著名である事実は疑念を差し挟む余地を許さない明白な事実である。
さらに、引用商標が請求人の商標として全国的に周知な商標であることは、東京商工会議所及び全日本菓子協会が、客観的にこれを証明しているとおりである(甲第39号証及び甲第40号証)。
以上のとおり、引用商標が30年以上にわたり使用されてきた事実、引用商標を付した請求人商品の販売数量、その圧倒的な市場シェア、継続的かつ莫大な量の広告宣伝活動及び第三者による客観的な調査結果及び証明に照らせば、引用商標が、遅くとも本件商標の出願日である平成16年7月23日時点において、わが国において請求人商品について使用される商標として全国的に周知・著名となっていることは、明らかである。
(f)以上のとおり、引用商標は、遅くとも本件商標の出願日である平成16年7月23日時点において、請求人の商標として全国的に周知・著名となっていた。そして、著名商標については、その著名性ゆえに取引者、需要者が当該著名商標を連想、想起する範囲は広いので、その類似の範囲も広く解釈される。
引用商標も、その著名性ゆえに、本件商標のように相紛らわしい商標に接した取引者、需要者は、引用商標を想起、連想し、出所の混同を生じる恐れが高いのである。そして、30年にわたる継続的で、かつ、圧倒的な量に昇る使用の結果、引用商標に化体している請求人の業務上の信用及び無形の財産的価値を保護するために、その類似性の範囲を広く解釈し、混同の恐れを排除するべきである。
(g)本件商標が使用される商品は、請求人商品と同一の商品である。
本件商標の指定商品は「キャンデー、キャラメル、チューインガム(医療用のものを除く)、その他の洋菓子」であるが、被請求人が本件商標を使用する商品が、請求人商品と極めて酷似する同種のソフトキャンデーであることは以下に述べる事実より明らかである。
請求人が現在日本国内で販売している請求人商品を検証物として提出する(検甲第1号証の1及び2)。
請求人は、大韓民国において平成8年頃から請求人商品を販売しており、平成15年には、大韓民国向けの専用パッケージを採用した。
他方、平成16年5月頃、被請求人は、大韓民国において、請求人商品に外観、風味、食感等が非常によく似たソフトキャンデーを発売した(甲第43号証)。請求人が大韓民国において販売した商品(以下、「請求人韓国商品」という。)を検証物として提出する(検甲第2号証の1及び2)。
さらに、被請求人が大韓民国において販売した商品(以下、「被請求人商品」という。)を検証物として提出する(検甲第3号証の1及び2)。
さらに被請求人は、平成18年3月14日から17日にかけて、千葉市美浜区中瀬2-1の「幕張メッセ」で開催された「フーデックス2006」に出展し、被請求人商品を掲載した商品カタログを頒布した(甲第44号証)。当該カタログには被請求人商品の写真とともに「MYCHEW(STRAWBERRY,GRAPE,APPLE)」と記載され「SOFT CHEWY CANDY」(ソフトキャンデー)と記載されている。
以上の事実から、被請求人が、本件商標を、請求人商品に酷似する同種のソフトキャンデーについて使用するものであることは明らかである。
(h)需要者とその注意力
請求人が引用商標を現実に使用する請求人商品は、現在、主として一個60円(スティックタイプ6粒入り)、100円(スティックタイプ10粒入り)又は、200円(OPアソート)の価格で食料品店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、キオスク等、流通経路末端の小売店において、一般消費者向けに販売されている。一方、本件商標がその指定商品たる「キャンデー,キャラメル,チューインガム(医療用のものを除く。),その他の洋菓子」のうち、具体的には「ソフトキャンデー」について使用されるものであることは上記に述べた事実から明らかである。すなわち、請求人が引用商標を現実に使用し、被請求人が本件商標を使用する商品は、日常的に街頭で売買される比較的単価の安い商品であって、購買時に需要者が払う注意力は高いものではない。
また、甲第38号証の1に示す調査結果によれば、小学4?6年生、小学1?3年生、幼稚園生及び幼稚園前の各需要者層における請求人商品の摂食経験率は、男子がそれぞれ100%、96.3%、96.3%及び71.4%であり、女子がそれぞれ100%、100%、96.4%及び65.4%であった。
この事実から、請求人商品の主たる需要者には、13歳以下の幼児及び年少者が含まれることが明らかである。本件商標が使用される被請求人の商品が、請求人商品と全く同様のソフトキャンデーであることから、その需要者にも、請求人商品の主たる需要者と同様に、13歳以下の幼児及び年少者が多数含まれると考えるのが合理的である。
そうすると、成人に比べれば注意力、判断力の劣る幼児や年少者の間で、上記で述べたとおり、称呼上著しく類似し、外観上も類似する本件商標と引用商標が、時と所を異にして、全体として称呼され、視覚・聴覚されるときに互いに相紛れる恐れは極めて大きい。
(ウ)まとめ
上記に述べた、引用商標が、請求人の業務にかかる商品「ソフトキャンデー」を示すものとして著名であること、本件商標が請求人の著名商標が使用される「ソフトキャンデー」と同様の「ソフトキャンデー」に使用されるものであること、本件商標が使用される商品の購買時に需要者が払う注意力がさほど高いものではなく、本件商標が使用される商品の主たる需要者には成人に比較して注意力、判断力の劣る幼児や年少者が含まれること等、以上述べてきた取引上の実情を、上記で述べた、本件商標と引用商標とが称呼、外観の上で相紛らわしく類似するものであることと併せ考えれば、本件商標をその指定商品に使用するときには、請求人が販売するソフトキャンデーに使用する商標として著名な引用商標を強く想起、連想させ、取引者、需要者は、本件商標が引用商標のシリーズ商標であるもの又は本件商標を付した被請求人の商品が、請求人が販売するソフトキャンデーの姉妹商品として請求人の製造・販売にかかるものと誤認し、商品の出所につき混同を生じる恐れが極めて高いものである。したがって、本件商標は引用商標に全体として類似する。
以上のとおり、本件商標は、外観及び称呼上の類似性並びに取引の実情に照らし、請求人の先願にかかる引用商標に全体として類似する商標である。そして、上記に述べたとおり、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品の全部又はその一部と同一又は類似するものである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
上記において詳述したとおり、引用商標は請求人の業務にかかる「ソフトキャンデー」の商標として永年使用された結果、遅くとも本件商標が出願された平成16年7月23日時点において、わが国国内において全国的に周知・著名となっており、その著名性は、本件商標の登録査定時(平成17年1月27日)はもとよりのこと、今日に至るまで継続している。
上記で述べた通り、「ハイチュウ」、「ハイチュー」、「HICHEW」あるいは「HI-CHEW」という成語は存在せず、引用商標はいずれも特定の観念を有しない造語である(甲第22号証)。
したがって、引用商標はいずれも独創性が極めて高いものである。
本件商標と引用商標が著しく相紛らわしく類似するものであることについては、上記において詳述したとおりであるが、外観及び称呼の上での両者の共通点を再度整理すると以下のとおりである。なお、本件商標と引用商標はいずれも特定の観念を生じない造語であるから観念の上で共通点はないが、相違点もない。
(ア)外観上の共通点
本件商標を構成する欧文字6文字のうち第3字以下の4文字「CHEW」が引用A商標と一致すること。引用B商標との対比においても、本件商標を構成する第3字以下の4文字「CHEW」が、引用B商標の第4字以下の4文字と一致すること。本件商標と引用A商標及び引用B商標との間で相違する第1字「M」と「H」及び第2字「Y」と「I」もアルファベット26文字の中では字形が近似していること。
(イ)称呼上の共通点
本件商標と引用商標から生じる称呼は、いずれも4音節の同数音からなること。いずれも4音節のうち、語頭音を除く「イチュウ」(又は「イチュー」)の3音節が完全に一致すること。相違する一昔である「ハ」と「マ」においても、母音「ア(a)」を共通にすること。いずれも一息に淀みなく読みくだすことができるものであって、音調上も、前半2音が平板に発音され、後半が前半よりもやや低く発音される点で共通すること。後半の「チュウ」(又は「チュー」)は、強く響く歯茎破擦音に「ウ(u)」の母音が重なり、あるいは長音を伴うことによって音量が多くなることから、強音として聴取される点において共通すること。
上記のとおり、本件商標から生じる「マイチュウ(又はマイチュー)」の称呼と引用商標から生じる「ハイチュウ(又はハイチュー)」の称呼を対比すると、両者を構成する4音のうち3音が共通し、相違する一音も母音を共通にするものである。そして両者の音調も、よどみなく一息に読み下されるものであって全く同一であり、明瞭に発音される「ア」及び「イ」の母音を共通にする前半2音が軽やかに称呼され、強音として聴取される後半の「チュー」へとリズミカルにテンポよくつながる全体の音調が著しく類似するものである。とりわけ、両称呼に共通する後半の「チュー」は、響きの強い歯茎破擦音「ch」が、力を入れて発音され易い母音「ウ(u)」を帯同し、これにさらに「ウ(u)」が続き、又は長音を伴うことによって音量が多くなることによって、強音として聴取される。このように、本件商標と引用商標の称呼は、語尾部分の「チュー」が強く印象付けられるものであり、その結果、両称呼は相互に全体的語調語感が著しく近似するものである。
他方、両称呼における唯一の相違点は、第一音を構成する子音の差異であるが、それらがいずれも響きの弱い音であって、帯同する母音「ア(a)」に吸収されることから、本件商標と引用商標を一連のものとして称呼した場合、これが上記の共通点を凌駕して、聴者に語調、語感が顕著に異なるとの印象を与えるものではない。
引用商標は、請求人の業務にかかる商品「ソフトキャンデー」について使用されるものであり、上記において詳述したとおり、本件商標も、請求人商品に酷似する同種のソフトキャンデーについて使用されるものであるから、これら商品間の関連性が極めて高いことはいうまでもなく、当然にその取引者、需要者も完全に一致するものである。
上記において詳述したとおり、本件商標が使用されるソフトキャンデーは、食料品店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、キオスク等流通経路の末端において、一般消費者に対して日常的に売買される比較的単価の安い商品であって、その購買時に需要者が払う注意力は高いものではない。
以上のとおり、引用商標が極めて著名であること、引用商標と本件商標が、外観及び称呼の各要素に照らし類似するものであること、仮に類似しないとしても、極めて多くの共通点を有するものであること、両商標にかかる商品の明白な同一性並びにこれに基づく流通経路及び需要者の同一性を考慮し、加えて、需要者が通常当該商品を購入する際に払う注意力が特段高いものではないことを勘案すれば、被請求人が本件商標をその指定商品について使用した場合、その取引者・需要者において、本件商標が引用商標のシリーズ商標であるもの若しくは本件商標を付した被請求人の商品が、請求人が販売するソフトキャンデーの姉妹商品として請求人の製造・販売にかかるものと誤認し、又は請求人と経済的若しくは組織的になんらかの関係がある者の業務にかかる商品であると誤認し、商品の出所につき混同を生じる恐れが極めて高い。
したがって、本件商標は、請求人の業務にかかる商品と混同を生じる恐れがある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する。
上記において詳述したとおり、引用商標は請求人の業務にかかる「ソフトキャンデー」の商標として永年使用された結果、遅くとも本件商標が出願された平成16年7月23日時点において、わが国国内において全国的に周知・著名となっており、その著名性は、本件商標の登録査定時(平成17年1月27日)はもとよりのこと、今日に至るまで継続している。
本件商標と引用商標が著しく相紛らわしく類似するものであることについては、上記において詳述したとおりである。
以下に述べる事実に基づき、被請求人が、わが国における請求人商品の人気にあやかって、引用商標の著名性に便乗し、これにただ乗りする目的又は引用商標が有する出所表示力を希釈化して請求人に損害を与える目的を持って、本件商標を使用するものであることは明らかである。
商標法第4条第1項第19号に規定する「不正の目的」とは、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識され、周知・著名となっている他人の商標について、不正の利益を得る目的又は当該他人に損害を加える目的その他取引上の信義則に反するような目的と解される。これには、他人の商標に化体した信用や名声等に対してのただ乗り(フリーライド)、希釈化(ダイリューション)や汚染(ポリューション)することにより当該他人に損害を与えることとなる場合も含まれる(甲第46号証)。
上記で述べたとおり、請求人は、平成8年頃から大韓民国に引用商標を付した請求人商品を輸出しており、平成15年には、大韓民国向けパッケージを採用した請求人韓国商品を本格的に発売したことを受け、大韓民国における販売数量は飛躍的に増大し、請求人韓国商品が大韓民国市場に定着するに至った。この経緯と軌を一にして、被請求人は、平成16年5月項、請求人韓国商品に商品及び包装が酷似した同種のソフトキャンデーである被請求人商品に、本件商標と同一の標章を付して発売したものである。大韓民国におけるこれらの事実に加え、わが国において請求人商品とこれに使用される引用商標が高い著名性を有すること及び被請求人が請求人と同じく製菓業を業とする法人であることからすれば、大韓民国内において販売されている請求人韓国商品を含む菓子製品については本件商標の登録出願前には当然にこれを認識・把握していたと考えられること、大韓民国の隣国であるわが国で販売されている菓子製品の中でも、請求人商品のごとく30年以上のロングセラー人気商品に関する情報についても、本件商標の登録出願前に十分に知りうる状況にあり、むしろ知らなかったとは考えられないこと等を勘案すると、被請求人が、請求人商品及び請求人韓国商品とは関係なく独立して、被請求人商品に用いる本件商標を採択したとは到底考えられない。
さらに、甲第43号証として提出する陳述書の第6項に記載の通り、請求人は、平成16年6月15日付通知書を被請求人に送付し、請求人商品が、請求人が永年にわたり販売してきた人気商品であること、被請求人が使用する本件商標が、請求人が有する「HICHEW」商標と類似するものであり、需要者の間に混同を生じる恐れがあるとともに、請求人の「HICHEW」商標の出所表示力を希釈化する恐れがあること等を通知した。
したがって、被請求人がわが国において本件商標を登録出願した平成16年7月23日には、被請求人は、請求人韓国商品及び請求人商品の存在並びにこれに使用される引用商標が高い著名性を有すること及び引用商標はこれに化体された強力な顧客吸引力を有することを確知していたといえ、引用商標のかかる著名性に便乗し、その顧客吸引力を不当に利用する目的をもって本件商標を出願したものであることは明らかである。その後、請求人が平成16年10月にソウル中央地方法院において被請求人を被告として商標権侵害差止等請求事件を提起したところ、被請求人は、大韓民国においては平成17年始めに被請求人商品の包装デザインを変更し、本件商標と同一の標章の使用を自発的に中止した。この事実からしても、主観的にも、被請求人が、本件商標と同一の標章の使用は、請求人の引用商標にかかる商標権その他の権利を侵害する可能性があることを認識していたことは明白である。
そこで、本件についてみると、被請求人は、平成18年3月14日から17日にかけて、千葉市美浜区中瀬2-1の「幕張メッセ」で開催された「フーデックス2006」に出展し、被請求人商品を掲載した商品カタログを頒布しているところ(甲第44号証)、当該カタログには被請求人商品の写真とともに「MYHCEW(STRAWBERRY,GRAPE,APPLE)」と記載され、「SOFT CHEWY CANDY」(ソフトキャンデー)と記載されている。このことから、被請求人が、わが国において、請求人商品に酷似する同種のソフトキャンデーについて使用することを念頭において、引用商標と極めて相紛らわしい本件商標の出願に及んだことは明らかである。
以上の事実から、被請求人が、不正の目的、すなわち、わが国における請求人商品の人気にあやかって、引用商標の著名性に便乗してこれにただ乗りすると同時に、引用商標の出所表示力を希釈化し、請求人が永年にわたる商品開発や広報宣伝等の不断の努力によって引用商標に化体させた貴重な顧客吸引力を毀損することによって、不正の利益を得るとともに請求人に損害を与える目的をもって、本件商標を使用するものであることは明らかである。
以上の通り、本件商標は、わが国において広く知られた引用商標に類似するものであって、被請求人が不正の目的をもって使用するものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(4)かくして、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第19号の規定に該当するから、その登録は商標法第46条第1項第1号の規定により無効にされるべきである。
2 弁駁の理由
(1)商標法第4条第1項第11号について
(ア)商標の類否判断に当っては取引の実情を考慮しなければならない。
被請求人は、本件商標と引用商標の間にある相違点をとりあげて、本件商標が非類似であると主張するが、請求書で述べたとおり、本件商標と引用商標を対比すると、外観において紛らわしく、称呼において類似し、観念の上では対比することができないものであって、総合すると共通点が相違点を凌駕して、相互に類似するものである。とりわけ、被請求人の主張は、引用商標が「ソフトキャンデー」について請求人が永年使用してきた商標として著名であること、本件商標が引用商標が使用される商品と全く同種の「ソフトキャンデー」について使用されるものであること、引用商標が付された請求人のソフトキャンデーと、本件商標が付された被請求人のソフトキャンデーは、キャンデー一粒一粒の形態と大きさ、商品としての形態と大きさ、包装等々全て酷似していること、本件商標が使用される商品の購買時に需要者が払う注意力がさほど高いものではなく、本件商標が使用される商品の主たる需要者には幼児や年少者が含まれること等の取引の実情を何ら考慮しておらず、甲第7号証が判示するところに従って、本件商標と引用商標との類否について正しく考察、判断したものとはいえない。
(イ)被請求人が掲げる判決例は本件商標が引用商標に称呼の上で類似することを何ら左右しない。
被請求人は、本件商標から生じる称呼「マイチュウ(マイチュー)」と引用商標から生じる称呼「ハイチュウ(ハイチュー)」が非類似であるとの主張の根拠として、乙第1号証の1、2を掲げる。しかしながら、当該判決は、「へ」と「エ」の音の相違について判断したものであるに過ぎず、請求書で述べたとおり、「マ」と「ア」、「ハ」と「ア」がそれぞれ近似した音である事実及びそのことが多数の審決・判決例によって肯定されている事実を何ら左右するものではない。
また、被請求人が掲げる乙第2号証の1、2についても、「ハ」と「ファ」の相違が「ハニーベル」と「フアニーベル」の類否判断に与える影響について判断したものに過ぎず、本件商標と引用商標から生じる称呼の類否判断において何ら斟酌するべき点はない。
(ウ)観念上の対比について
被請求人は、本件商標と引用商標が、観念上比較することができないものであることについては認めているから、本件商標と引用商標が、観念上彼此識別することができない点については争いはない。
なお、被請求人は、「MY」が英語で「私の…」を意味し、「HI」や「ハイ」が「高級な、上手な」等の意味する外来語として理解される、「ハイ」は返事に使う言葉であって、特別の語感を持つ言葉であるから他の言葉と明確に区別されるなどと述べ、「本件商標の『マイ…』と紛れることなど絶対にありえない」と主張している。
しかしながら、引用商標と同様に「ハイ」の称呼を語頭に有する「HIPRO\ハイプロ」と「IPRO\アイプロ」は類似すると判断されている(甲第15号証)。「I(アイ)」は25文字のアルファベットの一つであるとともに、英語教育の当初において第一人称「私」の観念を有する語として学習する英単語であり、またその称呼は日本語の「愛」にも通じ、「MY」と同様に親しまれた語であるが、それにもかかわらず上記2商標が類似すると判断されているという事実に照らせば、「HI」や「ハイ」で始まるからといって「本件商標の『マイ…』と紛れることなど絶対にありえない」との被請求人の主張が誤りであることは明らかである。
(エ)小括
以上の次第で、答弁書における被請求人の主張及び被請求人が提出した証拠は、本件商標が引用商標に類似するものである事実を何ら左右するものではない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
(ア)被請求人は、本件商標と引用商標とは、商標それ自体非類似のものであることを前提として、混同の恐れがある商標ではないと断定しているが、(1)で述べたとおり、本件商標は引用商標に類似するものであるから、被請求人の主張はその前提において誤っている。
(イ)仮に、百歩譲って、本件商標と引用商標が商標それ自体非類似であるとしても、本件商標が商標法第4条第1項第15号に規定する「他人の業務にかかる商品又は役務と混同を生ずる恐れがある商標」に該当するか否かは、商標が類似するか否かによってのみ決せられるものではない。本件商標が商標法第4条第1項第15号に規定する「他人の業務にかかる商品又は役務と混同を生ずる恐れがある商標」に該当するか否かは、甲第45号証において判示された判断基準に基づいて判断されなければならないのである。
そして、かかる判断基準に基づいて、本件商標が請求人が商品「ソフトキャンデー」について永年使用している著名商標である引用商標との間で出所の混同を生ずる恐れがあることは請求書に記載した通りである。請求人は商標法第4条第1項第15号の判断基準を示した判例として前記最高裁判例を提出したものである。被請求人の主張は、請求人の主張及び甲第45号証の立証趣旨を正しく理解しないままになされたものといわざるを得ない。
また、前掲最高裁判例は商標法第4条第1項第15号に規定する「他人の業務にかかる商品又は役務と混同を生ずる恐れがある商標」の該当性についての一般的判断基準を明らかにしたものであって、かかる判断基準は、被請求人が主張するように商標自体が同一の場合についてのみ適用されるものではない。商標法第4条第1項第15号にいう混同の恐れを肯定する上で、商標が類似することが絶対的に必要なものではないことは学説上及び裁判例上も明らかである。(甲第48号証及び甲第49号証)。この点においても被請求人の主張は誤っている。
(3)商標法第4条第1項第19号について
(ア)被請求人は、本件商標と引用商標が「相紛れることのない非類似の商標である」ことを前提として、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当しないと主張するが、(1)で述べたとおり、本件商標は引用商標に類似するものであるから、被請求人の主張はその前提において誤っている。
(イ)本件商標について、もともと引用商標に類似することは請求書及び(1)において述べたとおりである上、引用商標の高い著名性と、本件商標が、引用商標が使用される商品「ソフトキャンデー」と同種の商品に使用されるものであることを考慮すれば、商標法第4条第1項第19号の各要件を充足するものであり、その登録が無効とされるべきことは明白である。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を平成18年11月24日付け答弁書(以下「第1答弁書」という。)及び平成19年6月26日付け答弁書(以下「第2答弁書」という。)で要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証及び乙第2号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 第1答弁の要旨
(1)商標法第4条第1号第11号に該当する旨の主張に対して
本件商標は、籠字で「MYCHEW」と一連に書してなるものである。
これに対し、引用A商標は、ゴシック体で「HICHEW」の文字を一連に書してなるものであり、引用B商標は、ローマン体で書された「HI」と「CHEW」の各文字をハイフンで連結してなるものである。
そうすると、本件商標と引用A商標及び引用B商標とは、「MY」と「HI」の文字部分の差異に加え、書体においても大きく異なるものであるから、外観上十分に区別し得るものであるのみならず、前記のとおりの構成より引用C商標ないし引用E商標とも、外観上類似するものではない。
また、本件商標は、その構成文字に相応して、「マイチュー」の称呼を生ずるものであり、一方、引用商標は、その構成文字より、「ハイチュー」の称呼を生ずるものであって、両称呼は、第1音において、「マ」と「ハ」の音の差異を有するものであるところ、「マ」の音は、両唇を閉じておいて、有声の気息を鼻に抜いて出す子音「m」と母音「a」との結合した音節であり、「ハ」の音は、両声帯を接近させ、その隙間から出す無声子音「h」と母音「a」との結合した音節であるから、両音は、音質、音感において明らかに相違するものであり、称呼における識別上最も重要な要素を占める語頭に位置し、両商標が共に4音(長音を含む)という比較的短い称呼であることを考慮すれば、それぞれの商標を全体として称呼した場合には称呼上互いに紛れるおそれのない非類似の商標といわざるを得ない。
このように、本件商標の「マイチュー」と引用商標の「ハイチュウ(ー)」のアクセントは、語頭音である「マ」及び「ハ」にかかるものと認識され、この音を強く発音することから、なお一層その音感は明らかに相違するが、この点、「HANSEL(ヘンゼル)」と「ANGEL(エンゼル)」との称呼について、乙第2号証の1、2で、子音「h」によって相当程度「工」と異なる音感で発声され、母音が同じ「へ」であっても語感、語調がかなりの程度異なる旨を判示しており、被請求人の主張は妥当なものと思料する。
また、この第1音の「ハ」の音について、乙第1号証の1、2でも、「ハニーベル」と「ファニーベル」との称呼において、本件商標と同じわずか4音からなる称呼において、「ハ」の子音「h」は声門を調音点とする弱い無声摩擦音であり、「ファ」は両唇を調音点とする無声両唇摩擦音であるとして非類似とする旨判示しており、この判示からも、引用商標の無声摩擦音「ハ」(h)と、本件商標の有声の気息を鼻に抜いて出す子音「m」と母音「a」との結合した発声とは明らかに相違するものと思料する。
さらに、観念について述べれば、本件商標と引用商標は、いずれも特定の観念を有しない造語よりなるものであるから、観念上比較することはできないが、敢えて付言すれば、本件商標の「MY…」「マイ…」は、英語で「私の…」を意味するのに対して、引用商標の「HI…」「ハイ…」は、英語の「HIGH」に由来する「高級な、上手な」等の意味する外来語として理解され、商品の品質を表示するものとして普通に使用されており、なおかつ、「ハイ」は返事に使う言葉であって、特別の語感をもつ言葉であるから他の言葉と明確に区別される。従って、本件商標の「マイ…」と紛れることなど絶対にあり得ず、この接頭語の違いによっても、両商標は全く異なるものである。
以上のように、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのなく、総合すればなおのこと非類似の商標であることは明瞭であり、商標法第4条第1号第11号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
前記(1)で認定したとおり、本件商標と引用商標とは、商標それ自体非類似のものであるから、たとえ引用商標が請求人の業務に係るキヤンデー等の菓子について使用され、本件商標の登録出願前より、日本国内において著名となっていたものであるとしても、本件商標に接する需要者は、引用商標を想起又は連想するようなことはないから、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、該商品が請求人又はこれと営業上何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがある商標ではない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第19号について
本号の規定に該当するものは、日本国内において需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であるところ、前記(1)で認定したとおり、本件商標と引用商標とは、相紛れることのない非類似商標である。
よって、本件商標に本号の規定に該当しないことは明らかである。
また、請求人は、甲第43号証を提出して、請求人が韓国において、請求人の「HICHEW」商標と類似するものであり、需要者の間に混同を生じるおそれがあることを通知した。したがって、引用商標の高い著名性に便乗して、その顧客吸収力を不当に利用する目的をもって本件商標を出願したことは明らかとしている。
しかし、請求人は、本件商標が引用A商標と類似するとした誤った判断を前提としているのであり結論も当然誤りである。すなわち、本件商標を使用しても、非類似の商標であるから、出所について混同を生ずるおそれはなく、引用商標の高い著名性に便乗してその顧客吸収力を利用できるものではない。
なお、請求人は、韓国において商標権侵害差止請求権を提起したのに対して、被請求人が自発的にデザインを変更し、本件商標の標章を中止したことを以って、商標権その他の権利を侵害する可能性があることを認識していた旨主張するが、被請求人は無用の争いを避けただけで、権利を侵害する可能性があるとは認識したものではなく、現に、本件商標を出願して登録を維持する旨の異議の決定を受けているのである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当しない。
2 第2答弁の要旨
(1)商標法第4条第1項第11号に該当する旨の主張に対して
(ア)請求人は、商標の類似判断に当たっては取引の実情を考慮しなければならず、本願と登録商標と引用商標を対比すると、外観において紛らわしく、称呼において類似し、観念において対比することができないとし、総合において相互に類似するものであると主張する。
しかしながら、外観において紛らわしいものではない。
すなわち、本件商標は、籠字で「MYCHEW」と一連に書してなるものであり、これに対して、引用商標1は、ゴシック体で「HICHEW」の文字を一連に書してなるものであり、引用商標2は、ローマン体で書された「HI」と「CHEW」の各文字をハイフンで連結してなるものであって、本件商標と引用商標1及び2とは、「MY」と「HI」の文字部分の差異に加え、書体においても大きく異なるものであるから、外観上十分に区別し得るものであり、引用商標3ないし5とも、外観上類似するものではなことは明らかである。
また、称呼においても非類似である。
すなわち、本件商標は、「マイチュー」の称呼を生ずるものであり、これに対して、引用商標は、「ハイチュー」の称呼を生ずるものであって、両称呼は、第1音において、「マ」と「ハ」の音の差異を有するものであり、「マ」の音は、両唇を閉じておいて、有声の気息を鼻に抜いて出す子音「m」と母音「a」との結合した音節であり、「ハ」の音は、両声帯を接近させ、その隙間から出す無声子音「h」と母音「a」との結合した音節であるから、両音は、音質、音感において明らかに相違するものであり、称呼における識別上最も重要な要素を占める語頭に位置し、両商標が共に4音(長音を含む)という比較的短い称呼であることを考慮すれば、それぞれの商標を全体として称呼した場合には称呼上互いに紛れるおそれはない非類似の商標であることも明らかである。
さらに、観念について述べれば、確かに、本件商標と引用商標は、いずれも特定の観念を有しない造語よりなるもので観念の比較はできないが、本件商標の「MY…」「マイ…」は、「私の…」を意味するのに対して、各引用商標の「HI…」「ハイ…」は、「高級な、上手な」等の意味で、それぞれ区別して日常ごく普通に使用されており、この接頭語の意味の違いによってもその相違は明白であるから両商標は全く異なるものである。
したがって、請求人が外観において紛らわしく、称呼において類似するとの主張に根拠はなく、当然のことながら、総合して比較しても非類似である。
(イ)請求人は、本件登録商標が使用される商品の主たる需要者に幼児や年少者が含まれる取引の実情を考慮すべきであると主張するが、引用商標の「HI・・・」「ハイ…」は、幼児や年少者の日常会話において、返事として頻繁に使用する言葉であって、この「ハイ」と本件商標の「マイ」とは、幼児や年少者が含まれる取引の実情を考慮しても相互に紛れることはない。
(ウ)請求人は、東京高裁平成7年(行ケ)第161号について、「HIPRO\ハイプロ」と「IPRO\アイプロ」とが類似であると判断したことを根拠に、被請求人の主張が誤りである旨主張するが、本件商標での「マイ」と引用商標の「ハイ」とを対比した場合とは事情を異にする。
すなわち、本件商標の「マ」の音は、両唇を閉じておいて、有声の気息を鼻に抜いて出す子音「m」と母音「a」との結合した音節であり、一方、判例の「ア」の音は両唇を開いたまま発音する母音「a」であるから、上記判決における、それぞれ接頭語を両唇を開いたまま発音する「ハイ」と「アイ」の対比判断と、「ハイ」と、両唇を閉じておいて有声の気息を鼻に抜いて出す子音「m」と母音「a」との結合した音節「マイ」との対比判断とは全く異なるものである。
したがって、前記判決の判示によっても、本件の場合において、各引用商標との非類似を否定することにはならない。
(エ)以上のように、弁駁書の請求人の主張及び請求人の提出した証拠によって、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれはなく、総合すればなおのこと非類似の商標であることは明瞭であり、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
(ア)請求人は、本件商標と引用商標とが類似であるから、被請求人の主張はその前提において誤っている旨主張する。
しかしながら、被請求人が再三主張し、異議の決定での認定・判断でも明らかなように、本件商標と引用商標とは非類似であるから、誤った前提に基づいた請求人の主張は明らかに誤りである。
(イ)被請求人が前回答弁書でも主張し、前記(1)でも述たように、本件商標と引用商標とは、商標それ自体非類似のものであり、引用商標が請求人の業務に係るキヤンデー等の菓子について使用され、本件商標の登録出願前より日本国内において著名となっていたものであるとしても、本件商標に接する需要者は、引用商標を想起又は連想するようなことはないから、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、該商品が請求人又はこれと営業上何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがある商標ではない。
また、請求人は、甲第45号証の最高裁判所第三小法廷平成12年7月11日判決(最高裁10(行ヒ)第85号判決)を拡大解釈し、非類似であっても同条同項15号が適用される旨主張するが、同判決は、本件商標が著名商標と商標自体が同一である場合に、非類似の指定商品にも及ぶとしたのであって、本件のように商標それ自体が非類似の場合に、適用したものではない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第19号について
(ア)請求人は、前項と同様に、本件商標と引用商標とが類似であるから、被請求人の非類似とする主張はその前提において誤っている旨主張するが、被請求人が再三主張しているように、本件商標は非類似であり、誤った前提に基づいた請求人の主張は明らかに誤りである。
(イ)本号の規定に該当するものは、不正の目的をもって使用する日本国内において需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であるが、本件商標は、前記(1)、前回答弁書で被請求人が主張し、異議の決定での認定・判断でも明らかなように、本件商標と引用商標とは、相紛れることのない非類似商標であり、しかも不正の目的をもって使用するものではない。
したがって、本件商標に、不正目的使用及び同一又は類似について規定した本号の適用を主張すること自体誤りである。
なお、請求人は、「PRO-KEDS」と「PRORED」とが明白に類似とは言い得ないなどと主張しているが、この場合は、異なる発音の「KE/ケ」と「RE/レ」とが、「プロケーズ」と「プロレッズ」の5音の中位で発音するもので、これらの発音を聞き取る場合の印象は、接頭語である「プロ」に記して格段に薄く、両者は類似商標である。
したがって、本件商標のように、引用商標と非類似の場合に適用することは適当ではなく、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当しない。
なお、平成18年12月6日付け上申書で上申したように、本被請求人の大韓民国での「MYCHEW」と同一の商標に係る韓国登録商標ついて、大韓民国において請求された、それぞれ差し止め等請求事件及び権利確認請求事件において、ソウル中央地方法院は差し止め等の請求を棄却する決定をなし、権利確認請求においても、韓国特許審判院は、確認対象商標「MYCHEW」は登録商標「HICHEW」の権利範囲に属さない旨の審決を行っている。
(4)結論
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同第15号、及び、同第19号のいずれの規定にも違反してなされたものではないことを確信するものである。
以上のように、請求人が主張する理由及び提出した証拠方法によって、本件商標を無効とすることはできない。

第5 当審の判断
(1)引用商標の著名性の程度について
甲第26号証によれば、請求人は、ソフトキャンデー「ハイチュウ」のストロベリー味を昭和50年から、アップル味を同52年から、オレンジ味を同54年から、グリーアップル・グレープフルーツ味を同61年、ピーチ味を平成2年から次々にシリーズ商品を開発され、引用商標が継続使用されている。
甲第27号証ないし甲第28号証、並びに、甲第33号証の2ないし甲第37号証の181によれば、平成7年から平成18年の刊行物などに「ハイチュウ」が宣伝・広告されている。
甲第29号証の52ないし57によれば、平成14年から16年の請求人の製品一覧表であり、「ハイチュウ」が販売されている。
甲第30号証によれば、請求人のソフトキャンディーの市場占有率が約34%であることが記載されている。
甲第31号証によれば、平成13年から平成17年において、ハイチュウが飴・キャラメル・キャンディ・ドロップ・のど飴の国内における分野でトップシェアを有している。
以上の証拠によれば、請求人が引用商標「ハイチュウ」「HICHEW」などを「ソフトキャンディー」に使用して、キャンディー・キャラメル・チューインガムの分野において本件の出願時はもとより査定時においても、取引者、需要者において広く認識されているものと認められる。
(2)本件商標と引用商標の類似性の程度について
本件商標は、別掲(1)のとおり籠字で「MYCHEW」と書してなるものであるから、その構成文字に相応して「マイチュウ」の称呼を生ずるものと認められる。
これに対して、引用A商標は、ゴチック体で「HICHEW」の文字を書してなるものであり、引用B商標は、ローマン体で書された「HI」と「CHEW」の各文字をハイフンで連結してなり、その他引用C商標及び引用E商標は、「ハイチュウ」の文字を書してなり、引用D商標は「ハイチュー」の文字を書してなるから、その構成文字に相応して「ハイチュウ」の称呼を生ずるものと認められる。
したがって、本件商標より生ずると認められる「マイチュウ」の称呼と引用商標より生ずると認められる「ハイチュウ」の称呼とを比較するに、両称呼は、語頭において「マ」と「ハ」の音の差異を有するものであるが、母音(a)を同じくし、比較的短い音構成において、これに続く「チュウ」の音が強く発音されることからそれぞれを全体として一連に称呼した場合、彼此聞き誤るおそれがある称呼上類似性を有する商標といわなければならない。
(3)商品の類似関係について
本件商標に係る指定商品は、「キャンデー,キャラメル,チューインガム(医療用のものを除く。),その他の洋菓子」であり、引用商標の指定商品「菓子,パン」等とは、同一又は類似の商品を含むものである。また、引用商標の使用に係る商品「ソフトキャンディー」は、本件商標の指定商品「キャンデー,キャラメル,チューインガム(医療用のものを除く。)」と類似するものと認められる。
(4)商品の出所の混同のおそれについて
本件商標と引用商標とは、上記(3)のとおり指定商品においては、同一又は類似のものであって、上記(2)のとおり称呼において類似性を有するものであるところ、さらに、引用商標は上記(1)のとおり請求人の取り扱いに係る商品「ソフトキャンディー」において著名性が認められる。
次に、提出された各証拠について検討するに、甲第31号証によれば、平成13年から平成17年において、ソフトキャンディーなどの購入者には10代の購入者が多く、商品を購入する際の注意力がさほど高くないことが認められる。
甲第43号証によれば、被請求人の本件商標を付したソフトキャンディーと請求人の引用商標を付したソフトキャンディーが韓国市場において係争事件があったことが認められる。
また、被請求人が提出する平成18年12月6日付け上申書には、韓国の特許審判院が「MYCHEW」(使用商品:チューインキャンデー)は登録商標「HICHEW」の権利範囲に属しないとの審決がなされている旨が記載されている。該審決では、確認対象標章と本件登録商標の類似の可否について述べられているが、「HICHEW」の著名性を考慮し、判断されていないことから、本件とは事案を異にするといわざるを得ない。
甲第44号証によれば、平成18年3月14日から17日にかけて、「幕張メッセ」で開催された「フーデックス2006」において、被請求人は、商品「MYCHEW」を出展し、商品カタログを頒布したことが認められ、また、検甲第1号証ないし検甲第3号証によっても、本件商標の使用方法、包装形態(包装箱のサイズ、配色、内容表示など)が引用商標のものと酷似していることが認められる。
以上のことを総合的に判断すれば、請求人は引用商標を請求人の業務に係るソフトキャンデー等の菓子について永年使用された結果、本件商標の査定時はもとより、その登録出願前より、日本国内において取引者、需要者において広く知られるに至ったものと認められる。
そうとすると、本件商標に接する取引者、需要者をして、引用商標を想起又は連想し、該商品が請求人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品、シリーズ商品であるかのように誤信し、商品の出所について混同を生ずるおそれがある商標といわざるを得ない。
(5)結論
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第19号について検討するまでもなく、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(1)
(本件商標)


別掲(2)
(引用E商標)

審理終結日 2007-07-04 
結審通知日 2007-07-09 
審決日 2007-07-20 
出願番号 商願2004-68448(T2004-68448) 
審決分類 T 1 11・ 26- Z (Y30)
T 1 11・ 271- Z (Y30)
T 1 11・ 222- Z (Y30)
最終処分 成立 
前審関与審査官 田中 幸一 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 鈴木 修
渡邉 健司
登録日 2005-02-18 
登録番号 商標登録第4839256号(T4839256) 
商標の称呼 マイチュー、ミチュー 
代理人 廣中 健 
代理人 根本 恵司 
代理人 小原 英一 
代理人 鳥海 哲郎 
代理人 白石 弘美 
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