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審決分類 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) Y02
管理番号 1169026 
審判番号 無効2007-890011 
総通号数 97 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-01-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-02-01 
確定日 2007-11-26 
事件の表示 上記当事者間の登録第4791832号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4791832号の指定商品中、「塗料」についての登録を無効とする。 その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4791832号商標(以下「本件商標」という。)は、「エコシリカ」の文字を横書きしてなり、平成15年10月7日に登録出願、第2類「塗料,塗装用・装飾用・印刷用又は美術用の非鉄金属はく及び粉」を指定商品として、同16年8月6日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張の要点
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第6号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)引用商標の周知性について
(ア)「エコシリカ21C」の文字を横書きにしてなる商標(以下「引用商標」という。)は、請求人により販売されてきた環境対応型水系塗料(以下「請求人商品」という。)を表示する商標として、少なくとも本件商標の出願日前の平成14年に使用が開始された(甲第2号証の1ないし同第2号証の5)。
(イ)請求人商品の広告について
甲第2号証の1に示す広告には、請求人商品が第3回ペイントショーに出展された旨の記事が掲載されている。この「ペイントショー」は、社団法人日本塗料工業会などが主催して4年に1度開催される国内最大級の塗料業界の展示会であり、「第3回ペイントショー」は、平成14年4月4日から同6日に東京ビックサイトにて開催され、3日間で約11万1千人の来場者数を集めた(甲第3号証(審決注:「甲第4号証」の誤記と認める。))。それ故、「ペイントショー」において、請求人商品を展示及びPR等することが、塗料業界及び塗料を扱う他の業界の取引者の間で商品の認知度を向上させるために極めて効果的であることが容易に理解される。
甲第2号証の2は、平成14年7月24日付け「ペイント&コーティングジャ一ナル」へ掲載された広告である。
甲第2号証の3は、平成14年10月号「月刊建築仕上技術」へ掲載された広告である。
甲第2号証の1(審決注:「甲第2号証の4」の誤記と認める。)は、平成15年1月1日付け「塗料報知新聞」へ掲載された広告である。
甲第2号証の5は、平成15年1月8日付け「塗料新報」へ掲載された広告である。
このように請求人商品の広告は、本件商標の出願日前から塗料業界新聞及び業界誌などへ度々掲載され、さらには、平成14年4月に、塗料業界において強い影響力を有する「第3回ペイントショー」において実物の塗料を展示することにより、大々的に宣伝広告がされた。
(ウ)甲第4号証(審決注:「甲第3号証」の誤記と認める。)は、国内を代表する大手ゼネコンの一つである株式会社竹中工務店(以下「竹中工務店」という。)のホームページに掲載された請求人商品のプレスリリースであり、本件商標の出願日前の平成14年8月28日に竹中工務店から発表されたものである。この中では、請求人商品は、竹中工務店と請求人との共同で開発がなされ、従来の水系塗料の問題点であった耐候性、耐汚染性を飛躍的に高めた溶剤系塗料に劣らない性能を有する環境対応型水系塗料であること、及び請求人商品が平成14年9月より請求人から発売されることが記載されている。この結果、請求人商品は、従来の水系塗料の欠点を一挙に克服した環境に優しい画期的な塗料として数多くの業界新聞などで紹介された(甲第5号証の1ないし同第5号証の7)。
(エ)以上のように、引用商標は、平成14年4月から請求人商品を表示するものとして使用され、竹中工務店によるプレスリリース(甲第3号証)により、塗料業界及び塗料を扱う建設業界における取引者等に一気に知られるところとなった。この事実は、甲第5号証の1において、「エコシリカ21Cは、・・・高品質の外装用塗料として注目を集めており、実施工に向けてすでに多くの問い合わせが寄せられている。」と掲載されている事実及び多数の業界新聞に掲載された事実からも明らかである。また、かかる反響に的確に対応するため、請求人は、請求人商品の性能、用途などを解説したカタログ(03.6改訂版)を作成し、少なくとも平成15年6月には問い合わせのあった取引者及び新規ユーザー等へ配布してきた(甲第6号証)。その結果、引用商標は、少なくとも本件商標の出願日までには、請求人商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されるに至っている。
(2)本件商標と引用商標との対比
(ア)商標について
本件商標は、その構成文字から「エコシリカ」の称呼が生じ、また、「エコロジーに関係するシリカ(ケイ素化合物)」であるとの観念が生じる。
これに対し、引用商標は、「エコシリカ」と数字及び欧文字からなる「21C」とが結合した商標である。しかしながら、「21C」の部分は、単なる数字と欧文字の組み合わせ、あるいは「二十一世紀」を表す略号としか解されないから、「21C」の部分に特別な識別力はない。そうすると、引用商標の要部は、「エコシリカ」の部分であり、これより「エコシリカ」の称呼、及び「エコロジーに関係するシリカ(ケイ素化合物)」であるとの観念が生じる。
したがって、本件商標と引用商標とは、明らかに外観が近似し、かつ、称呼及び観念が同一である類似の商標である。
(イ)商品について
本件商標の指定商品は、第2類「塗料,塗装用・装飾用・印刷用又は美術用の非鉄金属はく及び粉」であり、一方、引用商標が使用される商品は、水系塗料である。
したがって、塗料を含む本件商標の指定商品は、引用商標が使用されている商品と同ー又は類似の商品である。
(3)むすび
以上述べたとおり、本件商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、少なくとも本件商標の出願前に需要者の間に広く認識されていた引用商標に類似する商標であって、その商品に類似する商品「塗料」に使用するものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、無効とすべきものである。

3 被請求人の答弁
被請求人は、前記2の請求人の主張に対し、何ら答弁していない。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
甲第2号証ないし同第6号証(枝番号を含む。)を総合すると、請求人の業務に係る商品「環境対応型水系塗料」(請求人商品)は、“高耐久性・低汚染性”の塗料として、その発売(平成14年9月)前より業界紙等に多数取り上げられ、かつ、請求人は、請求人商品についての宣伝、広告をした結果、請求人商品に使用される「エコシリカ21C」の文字よりなる商標(引用商標)は、請求人商品を表示するためのものとして、本件商標の登録出願時には、塗料を取り扱う分野の取引者、需要者の間において、広く認識されていたものと認めることができる。そして、その周知性は、本件商標の査定時(平成16年4月27日)においても継続していたものと認められる。
(2)本件商標と引用商標との対比
(ア)商標について
本件商標は、前記のとおり、「エコシリカ」の文字を書してなるものであるから、その構成文字に相応して、「エコシリカ」の称呼を生ずるものである。
これに対して、引用商標は、前記のとおり、片仮名の「エコシリカ」、数字の「21」及び欧文字の「C」を一連に横書きしてなるものであるところ、数字若しくは欧文字の1字ないし2字又はこれらを結合した標章は、商品の種別、等級、規格等を表示するための記号、符号等として、各種商品を取り扱う分野において一般に使用されている実情にあるところからすると、引用商標中の「21C」の文字部分は、商品の種別、等級、規格等を表示するための記号、符号等を表したと理解される場合が多いとみるのが相当であり、自他商品の識別機能を有しないか、あるいは、きわめて弱い部分であるといえる。
そうすると、引用商標に接する取引者、需要者は、その構成中の「エコシリカ」の文字部分を捉え、これより生ずる称呼のみをもって商品の取引に当たる場合も決して少なくないものとみるのが相当である。
してみれば、引用商標は、「エコシリカ」の文字部分に相応して、単に「エコシリカ」の称呼をも生ずるものといわなければならない。
したがって、本件商標と引用商標は、「エコシリカ」の称呼を同じくするものである。また、両商標は、「エコシリカ」の文字を同じくするものであるから、外観において類似する商標であることはいうまでもなく、さらに、該文字が全体として特定の観念を有しない造語よりなるものであるとしても、「エコ」からは「環境保護」なる意味合いを、「シリカ」から「二酸化珪素の俗称」の意味を想起させる場合も決して少なくなく、全体として観念上の共通性を印象づけるものといえる。
以上によれば、本件商標は、引用商標と称呼、外観及び観念において類似する商標というべきものである。
(イ)商品について
本件商標は、前記のとおり、「塗料,塗装用・装飾用・印刷用又は美術用の非鉄金属はく及び粉」を指定商品とするものであるから、その指定商品中には、引用商標が使用される「環境対応型水系塗料」と同一又は類似の商品である「塗料」を含むものである。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品中「塗料」について、商標法第4条第1項第10号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。
しかしながら、本件商標の指定商品中の上記「塗料」以外の商品については、請求人商品とは、品質のみならず、生産者、取引系統等をも異にする非類似の商品と認められるから、その登録は、商標法第4条第1項第10号に違反してされたものではなく、同法第46条第1項の規定により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2007-09-26 
結審通知日 2007-10-01 
審決日 2007-10-12 
出願番号 商願2003-92148(T2003-92148) 
審決分類 T 1 11・ 25- ZC (Y02)
最終処分 一部成立  
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 鈴木 修
渡邉 健司
登録日 2004-08-06 
登録番号 商標登録第4791832号(T4791832) 
商標の称呼 エコシリカ、エコ 
代理人 赤岡 迪夫 
代理人 赤岡 和夫 

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