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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2007890102 審決 商標

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審決分類 審判 全部取消 商53条使用権者の不正使用による取消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 005
管理番号 1167659 
審判番号 取消2005-30991 
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2005-08-11 
確定日 2007-10-29 
事件の表示 上記当事者間の登録第3260011号商標の商標登録取消審判事件についてされた平成18年7月10日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成18年(行ケ)第10375号、平成19年2月28日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 登録第3260011号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第3260011号商標(以下「本件商標」という。)は,平成6年4月26日に登録出願,「イブペイン」の片仮名文字を横書きしてなり,第5類「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,耳帯,眼帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液」を指定商品として、同9年2月24日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第20号証(枝番号を含む。)及び資料1ないし資料4を提出した。
1 請求の理由
(1)本件審判請求の背景
(ア)本件商標は、カタカナ文字「イブペイン」よりなり、第5類「薬剤」等を指定して登録されたものである(甲第1号証の1及び同号証の2)。
本件商標は、被請求人の使用権者(販売元、ラクール薬品販売株式会社、東京都足立区鹿浜1丁目9番14号、製造元、三友薬品株式会社、大阪市東淀川区南江口3丁目1番51号。以下、両者を合わせて「本件通常使用権者」という。)により、「鎮痛・解熱剤」(イブペイン)について使用されている。
しかしながら、その使用の実態を見ると、製品パッケージの表示において請求人が「鎮痛・解熱剤」に使用する著名登録商標「EVE」に類似させる不正使用が行われている。
その詳細は、後述するとおりであるが、製品パッケージにおいて、登録商標「イブペイン」は、小さく表示する一方、登録商標とは同一性を欠いた「EVEPAIN」を製品パッケージ正面等に一段と大きく顕著に表示するなどし、請求人が「薬剤」に用いている著名商標に不当に近づけた使用をしている(甲第2号証の1「EVEPAIN」の写真参照。)。
なお、不正使用を行っている本件通常使用権者は、何れも被請求人の同一グループ企業体(ラクールグループ)に属するものであり、いずれも、その会社の代表者を同一人(小林洋一)とする(甲第2号証の2、グループ会社に記載の代表者名を参照。)。
よって、仮に明示的な使用許諾契約が締結されていないとしても、本件商標の使用に関しては、互いに十分に了知し合う関係、すなわち、商標権者対使用権者の関係にあることは明らかであり、商標権者としての、かかる不正使用に対する責任は免れないところである。
(イ)請求人は、「鎮痛・解熱剤」、「総合感冒薬」等の「薬剤」に長年「イブ」、「EVE」等を使用した結果、今日では、これら薬剤に関し、「イブ」、「EVE」といえば、直ちに請求人の上記商標及び商品を指すものとして取引者、需要者に認識されるまでに著名となっている。
したがって、本件使用権者等による、かかる類似商標の使用は、請求人の著名登録商標の信用に不当に乗じ、これとの類似性、関連性等を需要者に与えるものであり、著名商標(商品)に対する不当な混同惹起行為にほかならない。かかる不正使用は、正に商標法第53条第1項が規定する登録取消事由に該当するものである。
(ウ)以上のことから、本件通常使用権者による不正使用は、請求人が長年の営業努力により築き上げた著名商標の信用に不正に乗じるばかりか、当該不正使用がなされている商品が「薬剤」であることから、需要者が請求人の著名商標(商品)と関連性を想起し、これと誤認・混同することの危険性にかんがみ、本件審判請求に及んだものである。
(2)本件商標の構成及び不正使用に係る商標の構成
(ア)本件商標の構成
前記第1のとおり(甲第1号証の1及び2)。
(イ)不正使用に係る商標の構成
商標:「EVEPAIN」(ローマ字)
本件通常使用権者が不正使用しているのは、ローマ字からなる「EVEPAIN」である。これは、登録商標と同一の称呼「イブペイン」を生ずることがあるにしても、登録商標との同一性はない。
したがって、本件通常使用権者が使用する「EVEPAIN」は、本件商標と同一性を欠く類似商標の使用と認められる。
(3)本件商標に対する不正使用の実態
(ア)本件通常使用権者は、製品パッケージに登録商標を小さく表示し、登録商標と類似する「EVEPAIN」を圧倒的に大きく、かつ、目立つように表示し、製品パッケージ正面の略上半分を占めるほどの大きさで強調している(甲第2号証の1:「EVEPAIN」の写真参照。)。
本件通常使用権者は、「EVEPAIN」の使用につき、登録商標「イブペイン」をローマ字表示したものと主張するかもしれないが、「EVEPAIN」のうち、「PAIN」は、「頭痛、痛み、苦痛」等の意味を有する言葉であることから、「頭痛、歯痛」等の疼痛緩和を目的とする本件商品に使用される場合には、自他商品の識別力がない言葉である。
よって、「EVEPAIN」の表示は、実質的にみれば、請求人の所有する著名商標「EVE」を使用しているのと同じである。
本件通常使用権者のかかる行為は、請求人が長年の営業努力により著名とした「イブ」、「EVE」と極めて類似させることにより、需要者に対し、これを単に「イブ」と認識させ、これをもって、請求人の著名商標(商品)との関連性を印象付けることをねらった不正使用行為であるといわねばならない。
請求人の「イブ」、「EVE」が「鎮痛・解熱剤」及び「総合感冒薬」において、いかに著名であるかは、一般大衆も認識するところであり、かつ、特許庁の異議決定、あるいは無効審判でも認められているところである(後述の(4)及び(5)で述べるとおり。)。
したがって、本件のように、カタカナで登録を受けておきながら、実際の使用において、あえて、「EVE」のローマ字を用いて表示するなどの行為は、正に、商標法第53条第1項の禁止する登録商標の不正使用行為といわねばならない。
さらに、本件不正使用は、請求人の著名登録商標に対する侵害行為(商標法第37条)でもあり、他人の著名な商品等表示と同一、類似の表示を用い、他人の商品との営業上の混同を与える不正競争行為(不正競争防止法第2条第1項第1号及び2号)でもある。
(イ)「薬剤」等の医薬品は、その開発から需要者に認識され、定着するまでには、極めて多大な投資と営業努力が必要である。
それ故、日本国内のみならず、世界的にも模倣品等から保護されることの重要性が叫ばれている(甲第20号証、日本経済新聞、平17.6.11付社説)。
これによれば、政府の知的財産戦略本部がまとめた「知的財産推進計画2005」において、最大の目玉は、「医薬品」や「ブランド品」などの模倣品や海賊版の拡大を防ぐための条約作りを日本から世界に対し、提唱したことであるとしている。
このような状況下において、もし、日本国内において、このような不正使用が登録商標の使用として許されるとするならば、外国にて行われる模倣品、類似品の危険から日本の製薬メーカーの利益を守ることはおろか、日本国内での著名商標の保護も不可能である。
よって、本件不正使用については、厳格に対処する必要があり、本件の他へ及ぼす影響は、極めて重大であるといわねばならない。
(4)請求人の著名商標とその実績
(ア)請求人が「鎮痛・解熱剤」に使用する著名登録商標及びこれに関連して所有する登録商標で、本件審判の基礎として引用するのは、以下のとおりである。
1.甲第3号証・・・・・・「イブ/EVE」
商標登録第1598640号 旧第1類
2.甲第4号証・・・・・・「イブ」
商標登録第3065022号 第5類
3.甲第5号証・・・・・・「EVE」
商標登録第3065023号 第5類
4.甲第6号証・・・・・・「イブ/IB」
商標登録第3065024号 第5類
5.甲第7号証・・・・・・「イブエース」
商標登録第2468015号 旧第1類
6.甲第8号証・・・・・・「EVE ACE」
商標登録第2468016号 旧第1類
7.甲第9号証・・・・・・「EV/イブ」
商標登録第4570909号 第5類
8.甲第10号証・・・・・「EVE及び図形」
商標登録第4570908号 第5類
9.甲第11号証・・・・・「エスタックイブ/S.TAC EVE」
商標登録第1598641号 旧第1類
(イ)上記各登録商標に示す「イブ/EVE」を使用する商品は、請求人により「鎮痛・解熱剤」について、昭和60年(1985年)12月に販売開始(甲第12号証の1及び同号証の2、藥事日報)がされて以来、需要者より好評を得ている。
その商品形態は、請求人製品目録抜粋(甲第14号証の1及び同号証の2)に示すとおりであり、これらは、今日においては、同業他社により多数販売されている「鎮痛・解熱剤」の中でも日本のトップ4番に入る商品となっており、2003年現在におけるシェアは11.9%で、かかる商品の年商は、2003年度で約59億円(小売価格ベース)に上っている(甲第13号証、店頭向医薬品市場の販売動向2003年度、SDIアニュアルレポート、株式会社インテージ)。
(ウ)「イブ」「EVE」の宣伝広告に費やした費用は、以下のとおりである。
平成10年度・・・1億円、平成11年度・・・7300万円、平成12年度・・・1億2500万円、平成13年度・・・1億100万円、平成14年度・・・5500万円、平成15年度・・・5400万円(甲第15号証)
(エ)さらに、請求人は、「総合感冒薬」に関して「エスタックイブ/S.TAC EVE」(商標登録第1598641号 旧第1類、甲第11号証)を有している。請求人の当該「総合感冒薬」の商品形態は、請求人製品目録抜粋の甲第16号証及び甲第17号証に示されるとおりである。当該総合感冒薬は、多数販売されている風邪薬の中でも、需要者に対し、最も人気ある商品として知られていることは、誰もが認めるところである。
したがって、風邪薬について、単に「イブ」といえば、請求人の上記総合感冒薬を指すものとして認識されており、現実に、薬局等で「『イブ』を下さい」といえば、何らの説明も要せず、直ちに請求人の「鎮痛・解熱剤」としての「イブ」、「EVE」、あるいは「総合感冒薬」の「エスタックイブ/S.TAC EVE」を示すものとして理解される状況となっているのである。
(オ)以上のことから、本件のごとく請求人の著名商標・商品との関連性を想起せしめるような表示が「鎮痛・解熱剤」等の「薬剤」に使用されるときは、需要者に対し、あたかも請求人の商品との関連商品であるか、あるいは、請求人と何らかの業務上の関連を有する者により提供される商品であるかのごとく誤認、混同を生じることは明らかである。
(カ)本来、登録商標は、登録された形態と同一(性)を保って適正に使用されるべきであり、これは、商標法の根本精神である。
したがって、本件商標のごとく登録商標としての同一性を超え、不当に著名商標に類似させ、著名商標の信用に乗じるような使用がなされた商標に対しては、商標法が保護すべき適格性が否定されて当然である。
(5)特許庁における著名商標の認定
(ア)請求人の「イブ」、「EVE」等が「薬剤」について著名となっていることから、「薬剤」に関して「イブ」の発音を含む商標が数多く出願される状況にある。
そして、一見「イブ/EVE」とは非類似と思われるような構成をとることにより登録されることがあるが、登録後、実際に使用されるのは、「薬剤」の中でも請求人の著名商標が用いられるのと同一又は同種の商品であることが多く、請求人としては、その対処に苦慮しているのが実情である。
本件不正使用に係る商標「EVEPAIN」について見てみると、「PAIN」の語は、「痛み、苦痛、頭痛」の意味を有するものであり、これが使用される商品は、「鎮痛・解熱剤」である。
したがって、商標的要部は、「EVE」であり、請求人の著名登録商標「EVE」が用いられているのと同様の効果を生じ、本件使用は、明らかに不正の意図によって、使用されているものと見ることができる。
(イ)以下に述べるのは、「イブ/Ibu」等の語を含む商標が一旦登録された後において、請求人の著名商標と類似し、混同のおそれがあると認定され、登録取消し、あるいは無効とされた事例である。
本件商標も本来ならば、請求人の著名登録商標に類似するものとして登録されるべきでなかったものである。
(a)甲第18号証は、「薬剤」を含む指定商品として登録された商標「恵快イブ」に対し、異議申立てをしたところ、特許庁は、請求人の引用商標「イブ/EVE」は、「鎮痛・解熱剤」に関し、著名であることを認定し、当該登録を取り消した事案である。
(b)同じく、甲第19号証は、「ホワイトイブ/WHITEIBU」として構成された商標が「薬剤」を指定商品として登録されたが、これに対する無効審判において、特許庁は、請求人の引用商標「イブ/EVE」の著名性を認め、当該登録を無効とした審決である。
(6)最高裁判決、高裁判決にみる「混同のおそれ」の認定
(ア)最高裁は、平成10年(行ヒ)第85号に関する判決(平成12年7月11日言渡し、「資料1」)にて、商標法第4条第1項第15号(著名商標の保護)にいう「混同のおそれ」の解釈について判示している。
この判決の趣旨は、他人の著名な商標と同一又は類似の商標をその著名な商標が使用されている商品又は役務(以下「商品等」という。)に使用した場合に、その著名な商標権者の商品等との間で現実に混同が生じるおそれがある場合(狭義の混同)のみならず、著名商標の商標権者との間に何らかの営業上の関係(親子関係であるとか関連企業であるとか)があるかのように誤信されるおそれがある場合(広義の混同)をも含むというものである。
要するに、商標法第4条第1項第15号(著名商標の保護)は、上記の「狭義の混同」及び「広義の混同」の両方について規定していると見なければならないという趣旨である。
(イ)これを本件についていうならば、請求人の「イブ」、「EVE」は、「鎮痛・解熱剤」等について、すでに著名商標となっていることは、客観的事実であるから、これと類似する商標を著名となった上記「鎮痛・解熱剤」及び「総合感冒薬」について使用する場合(狭義の混同)のみならず、著名商標が用いられている他の関連する「薬剤」について使用するときにも、請求人の業務との関係で関連を想起せしめるおそれ(広義の混同)があるという趣旨に解釈できるものである。
(ウ)実際問題として、「薬剤」に関して「イブ/EVE」といえば、請求人の「薬剤」を指すものとして著名となっている状況からすれば、本件に見られるような登録商標の不正使用が「鎮痛・解熱剤」については、「狭義の混同」を生じるおそれが明らかであり、それ以外の「薬剤」についても混同のおそれ(広義の混同)があることは否定できない。
本件通常使用権者によってなされている不正使用は、正に、請求人の著名商標が用いられている商品と同種の「鎮痛・解熱剤」についてであり、請求人の著名商標の信用に不当に乗じ、需要者に対し、著名商標(商品)との関連性を想起せしめるものであり、商標法第53条第1項が想定する不正使用にほかならない。
(7)まとめ
以上述べたところから明らかなように、本件商標は、意図的に著名商標に類似させた使用がなされており、商標権者と本件通常使用権者は、同一の企業グループに属し、代表者も同一人とするものであるから、商標権者、使用権者双方において、かかる不正使用を認識しているものである。
よって、本件通常使用権者による本件商標に対する類似商標の使用行為は、商標法第53条第1項に規定する登録商標の不正使用行為に該当するから、商標法による保護適格性を欠くので、本件商標の登録は、同条に基づき取り消されるべきである。
2 被請求人の答弁に対する弁駁
(1)答弁書に対する一般的反論
以下において、被請求人及びその本件商標使用権者並びにこれらの者による本件商標の使用行為を総称するときは、単に「被請求人等」という。
(ア)被請求人の主張は、全て自己独自の主観に基づく主張である。
被請求人は、請求人の主張に対し、「不知」「否認」「争う」などと述べているが、ここで審理されるべき事実は、被請求人の内心の意図が何であったかを探求するものではなく、被請求人等による登録商標の使用の実際が商標法の求める精神に基づき、正当な使用と解されるか否かである。
しかるに、被請求人の反論は、全く自己の主観に基づく反論であり、登録商標の使用が商標法の精神から見て是認されるべき使用であったか否かの客観的問題からは、かけ離れた主張である。
(イ)被請求人等による使用行為は、「故意」による不正使用行為である。
第1に、被請求人は、カタカナによる「イブペイン」について商標登録を申請しながら、一旦登録されるや、他人の著名登録商標である「EVE」をそっくり含むローマ字とし、これを殊更パッケージに強調して表示し、本件通常使用権者に使用させている。かかる使用は、本来の登録商標として商標法が認める使用ではないし、商標権の行使でもない。
第2に、被請求人は、自ら提出の乙第1号証からも明らかなように、厚生省への医薬品製造承認申請書においては、販売名としてカタカナの「イブペイン」を記載している。
しかるに、承認が下りるや本来の正式に使用すべきカタカナ「イブペイン」は、小さく表示する一方、「EVEPAIN」を圧倒的に大きく、あたかも主たる商標であるかのように商品パッケージに表示し使用している。
被請求人は、この使用行為の不適切について指摘されても、一点の非を認めることもなく、便宜的主張を展開している。
ここに至っては、被請求人の行為は、故意による登録商標の「不正使用」を構成するものであり、商標法に基づく保護適格性を自ら否定しているに等しい。
(2)本件商標の不正使用事実
被請求人等による本件商標の不正使用に関わる客観的事実は、次に示すとおりである。
(ア)被請求人は、カタカナの「イブペイン」について商標登録を申請し、これについて登録を得た。
(イ)被請求人等は、本件商標の使用の実際においては、ローマ字の「EVEPAIN」をパッケージに圧倒的に大きく強調して表示する一方、登録商標「イブペイン」は、小さく目立たなく表示している。
(ウ)商標法上の実務的解釈からしても、カタカナで登録を得た商標をローマ字にて使用することは、類似商標の使用であり、これは、本来の登録商標と同一性を欠き、商標権の行使とは、認められない。
(エ)被請求人等による本件商標は、「解熱鎮痛剤」に使用されているが、「解熱鎮痛剤」については、別途他人(請求人)による著名登録商標「EVE」が存在し、日本国内にて広く販売されている。
(オ)登録商標「EVE」(請求人の登録商標)の下に販売されている「解熱鎮痛剤」は、日本国内ではトップ4番以内にランクされる著名商標(商品)である。
(カ)登録商標「EVE」を使用する者(請求人)も「EVEPAIN」を使用する被請求人等も「薬剤」を販売する同業者であり、お互いの商品を十分に認識できる関係にある。
(キ)カタカナ「イブペイン」をローマ字で表現するにしても、「イブ」の部分を「EVE」と表示すべき必然性はない。通常ならば、「イブ」は、「IBU」と表示されるのが普通である。
(3)被請求人の便宜的主張
被請求人の主張が、いかに便宜的で法律的な根拠を欠くものであるかについて、幾つかの点を指摘すれば、次のとおりである。
(ア)被請求人は、答弁書の第3頁第4行目から8行目にかけて
(a)「EVEPAIN」は、「イブペイン」を欧文字で綴ったもの
(b)社会通念上同一性を有し
(c)包装箱における大きさの差もデザイン処理上の問題
(d)特に顕著に表示したものではない。
と述べている。
上記主張がいかに自己の主観に基づく便宜的なものであるかは、詳述するまでもないが、
(a)については、カタカナ「イブペイン」をローマ字にて表記するにしても、「イブ」の部分を「EVE」と表示すべき必然性はない。日本的にローマ字表示にするならば、むしろ「IBU」とするのが普通である。
よって、カタカナ「イブペイン」がローマ字表示による「EVEPAIN」とイコールであるかのごとき主張は、全くの便宜的主張である。
(b)については、カタカナ文字で登録された商標をローマ字で使用しても社会通念上登録商標と同一と主張するが、かかる使用は、商標法上に基づく実務解釈においても登録商標と同一性がないと見るのが普通である。
よって、この点の主張も、全く独善的主張である。
(c)の主張に至っては、もはや商標法上の主張から離れ、一般的常識でもって解釈してもらう以外にはない。他人の著名登録商標をそっくり含む文字を、その他人の登録商標が使用されているのと同種の商品において大きく表示しながら、「デザイン処理上の問題」との主張は、通常の理解を超える主張である。
(d)における主張も上記(c)と同様、一般常識によって、かかる顕著な表示が「顕著に表示」したものではないといえるかどうかを考える以外にない。
(イ)その他の主張
被請求人は、答弁書のいたるところで、「混同を生じるものではない」、「類似するものではない」及び「『EVE』は、アダムとイブのイブを直感するもの」等の便宜的主張を行っている。
(a)「混同のおそれ」については、請求人が最高裁判決を引用して述べたように、「広義の混同」と「狭義の混同」があり、本件の場合は、同一商品に使用されるから、「広義の混同」は当然として、「狭義の混同」も肯定されるべきである。
(b)請求人の引用商標と被請求人等が使用する本件商標が類似するか否かに関する請求人の主張は、「PAIN」が本件商品との関係で「痛み、苦痛」等を表すものである以上、顕著性が弱いと判断されるのは、一般的商標実務において行われる類否判定の基本の一つであって、請求人は、かかる実務慣行に基づいて、類似であると主張しているのである。
(c)以上のように、請求人は、登録商標の適正使用義務が商標権者に課せられた商標法上の根幹の一つをなすとの観点から論議するのに対し、被請求人は、指定商品との関係を離れ、「EVE」からは、アダムとイブの「イブ」を連想するなどとの空想論を展開している。
このように、被請求人の主張は、すべて自己中心的な主観に基づくものであり、かかる主観に基づき「不知」、「否認」等を主張しても、しょせん、被請求人独特の主観に基づく主張であり、商標法上の論議としては、かみ合わない。
(ウ)要するに、カタカナで登録を受けておきながら、使用の実際においてローマ字を用い、他人の著名登録商標をそっくり取り入れ、しかも、他人の使用している商品と同一の商品に使用し、登録商標と同一性のある商標の使用であるなどの主張が商標法の精神に照らし、許されてよいものかどうかという点である。
商標法により付与された権利につき、商標法の下で権利を主張せんとするならば、商標法の精神に基づいて行われるべきであり、便宜的主張は、通らない。
(エ)被請求人提出の乙号証
(a)乙第1号証
先に述べたとおり、被請求人が医薬品製造承認申請を行った販売名は、カタカナの「イブペイン」であり、これが製造承認を得た正式名称である。
しかしながら、承認が下りるや使用の実際においては、ローマ字「EVEPAIN」を圧倒的顕著に表示し、あたかも、これが正式名称であるかのような使用を行っている。
これは、明らかに登録商標の不正使用というべきであって、被請求人には、初めから不正使用の意図があったものといわざるを得ない。
(b)乙第2号証及び乙第3号証
被請求人提出の乙第2号証及び乙第3号証は、単に市場で販売されている商品及び商品名を掲載しているだけのものであり、ここに記載されていることと、当該商品名の使用が商標法上適正な使用と認められるかどうかは、全く無関係である。
したがって、これら証拠は、何ら被請求人等による本件商標の使用の正当性の主張を裏付けるものではない。
(4)被請求人等の不正使用の意図
以上のことから、被請求人等の使用は、客観的に見て、登録商標の「不正使用」に該当することが明らかである。
少なくとも請求人より通告を受けた日(平成17年9月1日)以降の被請求人等による本件商標の使用継続行為は、「故意」に基づく不正使用に該当するものである。
(5)公衆への誤導の危険
もともと商標の保護に関しては、これを使用する者(商標権者等)の私益の保護のみならず、他の商標権者及びこれらの商標に接する需要者をも保護の対象としているものである。
本件不正使用の取消審判に係る商品は、「薬剤」であり、公衆の衛生、健康に直結するものである。
したがって、本件のような医薬品に係る商標を使用する者は、特に厳正な使用を心がけるべきであり、他人の登録商標(商品)と紛らわしい使用や、公衆を誤導するような使用は、厳に戒めなければならない。
よって、本件商標は、登録商標の不正使用に対する制裁規定を適用し、早急に取り消されるべきである。
(6)被請求人等による故意による使用継続
(ア)請求人は、本件審判と並行して被請求人に対し、内容証明にて不正使用を正すべきことを要求した。
同業であり、他人の登録商標を知るべき立場にある者が自らの登録商標を適切に使用せずに、ローマ字にすることによって他人の著名な登録商標をそっくり取り込み、これを他人の著名な商標が用いられている商品と同種の商品に使用し、それも製品パッケージにおいて、本来の登録商標よりも圧倒的に大きく表示するなど、不正使用以外の何ものでもない。
(イ)審判請求書で述べたように、知的所有権を重んずる我が国国内において、かかる不正使用が許されるならば、我が国の製薬会社が海外で類似品、模倣品から有効な保護がなされることは、到底期待できない。
すなわち、我が国の著名商標が海外で現地語に翻訳されて不正使用され、これによる被害を受けていることも周知の事実である。
(7)むすび
よって、本件商標の登録は、商標法第53条第1項に基づき取り消されるべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
1 被請求人は、「本件審判請求の背景」における本件商標の態様、指定商品についての記載及び「ラクール薬品販売株式会社」並びに「三友薬品株式会社」が本件商標を通常使用権者として「鎮痛・解熱剤」に使用していることは、認めるが、その他は、争う。
請求人は、通常使用権者が本件商標を不正使用している旨述べているが、「イブペイン」は、本件商標と同一であり、欧文字「EVEPAIN」は、「イブペイン」を欧文字で綴ったものであり、社会通念上同一性を有し、かつ、その包装用箱における大きさの差もデザイン上の問題で、特に顕著に表示したものではない。
請求人は、「著名登録商標『EVE』に類似させる不正使用が行われている。」と主張するが、「EVE」が「鎮痛・解熱剤」につき著名であるかどうかは、不知である。
また、「EVEPAIN」の商標は、「EVE」と類似するものではないのは勿論、請求人の「EVE」商標と類似させたものでもない。
請求人は、「イブ」、「EVE」の商標が「鎮痛・解熱剤」、「総合感冒薬」等の薬剤につき著名である旨述べているが、被請求人は、不知である。
特に「今日では」の記載があり、いつから著名であると主張するのか不明である。
また、本件通常使用権者の使用する「EVEPAIN」の商標は、「イブ」、「EVE」の商標とは類似しないものであり、請求人の信用に乗じるものでないのは勿論、混同を惹起するものでもない。
請求人が本件審判請求に及んだ理由については、争う。
特に通常使用権者の「EVEPAIN」商標の使用は、請求人の信用に乗じるものではなく、また、請求人の商品と混同を生ずるものではない。
2 「本件商標の構成及び不正使用に係る商標の構成」については、認める。
本件通常使用権者が「EVEPAIN」の商標を使用していることについては、認める。
しかし、「不正使用している」との主張は、争う。
「EVEPAIN」の商標は、本件商標「イブペイン」を欧文字で表示したもので、社会通念上の同一性を有する。
3 「本件商標に対する不正使用の実態」については、争う。
本件通常使用権者の使用する「EVEPAIN」の商標は、カタカナの「イブペイン」と比較して大きいことは認めるが、その大きさは圧倒的でなく、デザイン処理の問題にすぎない。
請求人は、「EVEPAIN」の「PAIN」を取り出し、「頭痛、痛み、苦痛」の意があるので、識別力を欠くと主張するが、一体不可分に書かれた「EVEPAIN」から「PAIN」が独立して観察されることはない。
請求人は、「EVE」を使用しているのと同じであると主張するが、需要者を基準とした商標の観察ではなく、極めて独善的主張であって、理由はない。
すなわち、「EVEPAIN」は、「イブペイン」の称呼のみを生じ、「イブ」、「EVE」は、「イブ」を生じ、音数も異なり、何ら称呼上類似するところがなく、観念においても、「EVEPAIN」は、意味不明であるのに対し、「イブ」、「EVE」は、「アダムとイブ」の「イブ」を直観するので、観念上明瞭な差があり、両商標は、何ら類似するところがない。
請求人の「イブ」、「EVE」が「鎮痛・解熱剤」及び「総合感冒薬」について著名である旨の主張は、不知である。
異議決定、無効審判についての主張については、後に答弁する。
請求人は、商標法第37条、不正競争防止法第2条第1項第1号及び第2号を示しているが、本件審判についての主張ではないので、答弁しない。
同じく、本件審判についての主張ではないので、医薬模倣品からの保護が叫ばれている状況下で、登録商標の不正使用を許すと、日本の製薬メーカーの利益のみならず著名商標の保護に影響が大きいとの主張に対しては、答弁しない。
4 「請求人の著名商標とその実績」における甲第3号証から甲第9号証に示す登録商標を請求人が有することは認めるが、「著名登録商標」との記載は、不知である。
請求人の登録商標「イブ/EVE」が昭和60年(1985年)12月の販売開始以来、「鎮痛・解熱剤」に使用され、需要者間で好評を博し、今日では同業他社も多数販売している「鎮痛・解熱剤」中のトップクラスであって、2003年現在のシェアが11.9%で、年商も約59億円(小売価格ベース)に及び宣伝広告費も多大であることや、請求人が「総合感冒薬」に使用する登録商標「エスタックイブ/S.TAC EVE」は、風邪薬中で最も人気があり、「イブ」といえば、請求人の総合感冒薬を指すものとして認識されているということについて、被請求人は、不知である。
本件のごとく請求人の著名商標・商品との関連性を想起せしめる表示が「鎮痛・解熱剤」等の「薬剤」に使用されるときは、需要者に対し、あたかも請求人の商品との関連商品であるか、あるいは、請求人と何らかの業務上の関連を有する者により提供される商品であるかのごとく誤認、混同を生じることは明らかであるという請求人の主張については、争う。
本件通常使用権者が使用する「EVEPAIN」の商標は、「イブペイン」の称呼を生じ、文字の配列も、同一間隔、同一態様であり、何ら請求人の「イブ」、「EVE」の商標を使用した商品と混同を生じるものではない。
商標法の精神については、認めるが、本件通常使用権者の「EVEPAIN」商標の使用が商標法第53条第1項に規定する登録の取消理由に該当するとの主張は、争う。
5 「特許庁における著名商標の認定」における「EVEPAIN」商標中の「PAIN」についての請求人の主張については、争う。
繰り返しになるが、「EVEPAIN」から「PAIN」を取り出し、「EVE」が要部であるとする主張は、取引上の需要者を基準としたものではない。
「恵快イブ」の商標から「イブ」が独立して観察されるのは当然である。
なお、甲第18号証の異議決定の当審の判断では、「イブ/EVE」が「鎮痛・解熱剤」につき著名であるとの判断を行っていない。
「ホワイトイブ/WHITEIBU」の商標に関する審決の「第5 当審の判断」において、「平成15年当初には、取引者、需要者間において請求人の取り扱いに係る商品『解熱鎮痛剤』に使用する商標として広く認識され、著名性を獲得し」と記載されていることは、認める。
6 「最高裁判決、高裁判決による『混同のおそれ』の認定」については、認めるが、「EVEPAIN」商標の使用が「イブ」、「EVE」と混同するという主張については、争う。
7 「まとめ」については、争う。
本件通常使用権者の「EVEPAIN」商標の「鎮痛・解熱剤」についての使用は、商標法第53条第1項の規定に該当しない。
8 本件通常使用権者の「EVEPAIN」商標の使用について、
(1)本件商標「イブペイン」と、この「イブペイン」を欧文字で表示した「EVEPAIN」商標は、商品「鎮痛・解熱剤」につき、平成7年1月27日付で被請求人が薬事法上の医薬品製造承認を受け、平成7年9月より被請求人が製造元、発売元として使用を開始したものである(乙第1号証)。
その後、製造元が三友薬品株式会社となり、ラクール薬品株式会社が発売元となったが、前記平成7年9月より現在に至るまで、「EVEPAIN」商標は、本件商標とともに使用されているものである。
(2)「EVEPAIN」商標は、本件商標「イブペイン」を欧文字で表示したものであり、「イブペイン」を欧文字で表わそうとすれば、自然に「EVEPAIN」が選択されるものであり、請求人の「イブ」、「EVE」を意識したものではない。
また、先に述べたように、「EVEPAIN」は、一体不可分に表示されており、本件商標「イブペイン」が「イブ」と類似しないのと同様に、「EVE」とは類似しないものである。
(3)さらに、前記したとおり、本件商標「イブペイン」及び「EVEPAIN」商標を使用した本件通常使用権者の「鎮痛・解熱剤」は、その使用開始日である平成7年以来、需要者間において請求人の商品と混同した事実はなく、また、請求人との間に何の紛争も生じていない。
「一般薬/日本医薬品集1998-99」(財団法人日本医薬情報センター編 平成9年11月10日発行)の第102頁には「イブペインEvepain」が掲載されており、同じ頁には「イブA錠Eve-A」、第98頁には「イブEve」があり(乙第2号証)、「同2000-01」第92頁に「イブEve」、第96頁には「イブA錠Eve-A」とともに「イブペインEvepain」が示されている(乙第3号証)。
このことは、請求人が、被請求人及び通常使用権者が商品「鎮痛・解熱剤」に本件商標及び「EVEPAIN」商標を平成7年から使用していた事実を知っていたこと、及び需要者が両商品を混同していないことを立証できるものである。
(4)商標法第4条第1項第15号の規定による無効審判の請求に除斥期間が存するように、10年近い間、同様の市場において使用されている「EVEPAIN」商標の本件通常使用権者による使用は、その事実のみをもってしても、請求人の商標「EVE」、「イブ」が使用される商品と混同を生じないことが明らかである。
9 むすび
以上のとおり、請求人の主張は、いずれも失当であり、本件通常使用権者による商品「鎮痛・解熱剤」についての「EVEPAIN」商標の使用は、請求人の商品と混同を生じておらず、また、そのおそれもないので、商標法第53条第1項の規定に該当しないものである。

第4 当審の判断
1 本件審判事件についてされた平成18年7月10日付け審決に対し、知的財産高等裁判所により審決取消の判決(平成18年(行ケ)第10375号、平成19年2月28日判決言渡)がなされ、当該判決は既に確定しているため、差戻し後の本件審決に係る判断は、その事件について、当事者たる行政庁である特許庁を拘束することは、行政事件訴訟法第33条第1項の規定から明らかである。
そして、上記判決においては、次の2以下の理由により、本件商標が商標法第53条第1項ただし書所定の事由に該当し、その登録は取り消されるべきものであると判断されている。
なお、上記審決取消訴訟の判決において摘示された証拠番号は、そのままの記載とした。また、同訴訟での別紙番号もそのままの記載とした。
2 商標法第53条第1項は、商標権者からその商標権について通常使用権の許諾を受けた通常使用権者が、指定商品又はこれに類似する商品についての登録商標に類似する商標の使用であって他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたときは、何人も、当該商標登録を取り消すことについて審判の請求をすることができるとして、使用権者の不正使用による商標登録取消審判の制度を定めている。
請求人は、本件商標について商標権者である被請求人から通常使用権の許諾を受けた本件通常使用権者が、指定商品についての登録商標に類似する商標である本件使用商標の使用であって請求人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたとして、上記規定に基づき、本件商標の商標登録を取り消すことについて本件審判の請求をした。
3 本件通常使用権者による本件使用商標の使用について
(1)被請求人は、平成6年4月14日、販売名を「イブペイン」とし、効能又は効果を「頭痛・歯痛・生理痛・咽喉痛・関節痛・筋肉痛・神経痛・腰痛・肩こり痛・抜歯後の疼痛・打撲痛・耳痛・骨折痛・ねんざ痛・外傷痛の鎮痛、悪寒・発熱時の解熱」とする一般用医薬品の医薬品製造承認申請を行い、その後、同製造承認を得た(乙1)。
そして、被請求人は、「イブペイン Evepain」との名称の鎮痛・解熱剤(被請求人商品)を製造販売し、平成14年以降、被請求人商品は、本件商標の通常使用権者である三友薬品(製造元)、ラクール薬品販売(販売元)により、製造販売されている(甲59、60、63、64、乙1)。
(2)本件通常使用権者は、鎮痛・解熱剤である被請求人商品の製品パッケージ正面等に、別紙2のとおり、「EVEPAIN」との欧文字からなる本件使用商標を付して、本件使用商標を使用している(甲2の1、甲32の1)。
本件使用商標は、「EVEPAIN」という欧文字からなり、「イブペイン」との称呼を生じ、「イブペイン」との片仮名からなる本件商標と類似する商標であると認められる。
4 引用商標の周知著名性について
(1)請求人が本件審判の基礎として引用するのは、
(ア)「イブ」の片仮名文字と「EVE」の欧文字とを上下二段に横書きしてなり、指定商品を第1類「化学品、薬剤、医療補助品」として、昭和55年8月4日に登録出願、同58年6月30日に設定登録がされ、その後、平成5年8月30日及び同15年2月12日の二回にわたり商標権存続期間の更新登録がされ、指定商品の書換登録がされた結果、「第5類 薬剤」を含むものとなった商標登録第1598640号商標、
(イ)「イブ」の片仮名文字からなり、指定商品を第5類「薬剤、歯科用材料、医療用油紙、衛生マスク、オブラート、ガーゼ、カプセル、眼帯、耳帯、生理帯、生理用タンポン、生理用ナプキン、生理用パンティ、脱脂綿、ばんそうこう、包帯、包帯液」とする商標登録第3065022号商標(平成4年12月4日商標登録出願)、
(ウ)「EVE」の欧文字からなり、指定商品を上記「イブ」と同一のものとする商標登録第3065023号商標(同日商標登録出願)等、9件の登録商標であり、請求人がその商標権者である(甲3ないし11)。
そのうち、本件使用商標と対比される引用商標は、別紙1(審決取消訴訟においても別紙1と表示)に代表される「イブ」、「EVE」の文字からなる上記(ア)ないし(ウ)の各商標である。
(2)請求人は、鎮痛・解熱剤である請求人商品の製品パッケージ正面等に、別紙1のとおり、「EVE」の欧文字を大きく太字で横書きし、その右横上段に「イブ」との小さな片仮名文字を配した引用商標(「イブ」の直下に「痛み・熱36錠」と付記されている。)及びそれに類似する標章を付して、昭和60年12月から販売を開始し、同61年1月、新聞、テレビ、業界紙において、請求人商品の宣伝広告を行い、その後も、請求人商品を継続的に製造販売するとともに、毎年度、テレビ等で宣伝広告を行った。請求人商品の上記宣伝広告には、ニューヨークのビル街をバックに、引用商標が付された請求人商品の製品パッケージをかざしたり、女性が顔の前に、引用商標が付された請求人商品の製品パーケージをかざすというものなどもあり、これらにおいては、製品パーケージに付された引用商標が強く印象付けられるものである(甲45ないし53、68ないし73)。
(3)昭和61年度から平成15年度までの請求人商品に係る請求人の宣伝広告費は、対応する各年度において、6億7900万円、4億1400万円、2億9700万円、1億4900万円、1億3500万円、1億9500万円、8600万円、3億3000万円、4億2400万円、3億4300万円、2億9800万円、1億0700万円、1億円、7300万円、1億2500万円、1億0100万円、5500万円、5400万円であり、昭和61年度から平成15年度までの宣伝広告費は、合計35億6000万円である(甲15、45ないし53、56、68ないし73、枝番を付したものは各枝番を含む。以下同じ)。
(4)また、鎮痛・解熱剤の分野において、請求人商品の市場シェアは、平成5年度、平成6年度、平成7年度において、それぞれ、7.1%、8.3%、9.0%で、いずれの年度も全国5位であり、平成13年度、平成14年度において、それぞれ12.1%、11.5%で、いずれの年度も全国4位であり、平成15年度、平成16年度、平成17年度において、それぞれ、12.7%、13.0%、13.4%で、いずれの年度も、「バファリン」、「ナロン」に次いで、全国3位である。平成17年度において、鎮痛・解熱剤全体の販売金額は、総額462億9670万円であり、そのうち、請求人商品の販売金額は、62億1740万円である(甲13、55)。
(5)上記のような宣伝広告活動の規模やその態様、請求人商品の市場シェアの比率や販売金額の大きさ、請求人商品における引用商標の表示の態様等を総合すれば、引用商標は、請求人の製造、販売に係る鎮痛・解熱剤である請求人商品を表示するものとして、遅くとも、市場シェアについて証拠上全国5位であることが認められる平成5年ころまでに、すなわち、本件商標の商標登録出願前には、取引者、需要者に広く認識され、周知著名な商標になり、その後も、周知著名性を維持しているものと認められる。
5 本件使用商標と引用商標の類否、出所混同のおそれについて
(1)本件使用商標は、「EVEPAIN」の欧文字からなるものであるところ、被請求人商品における使用態様は、別紙2のとおり、「EVEPAIN」を製品パッケージ正面の上段に白抜きのややデザイン化した欧文字により大きく横書きしているものである。
「EVEPAIN」は、その下に付された片仮名文字からも、「イブペイン」との称呼を生ずるものであるが、それ自体、直ちに一体として特定の観念を生ずるものではない。
他方、「PAIN」ないし「pain」は、「痛み」等を意味する比較的平易な英単語であり、「ペイン」についても、「痛み。苦しみ。」(大辞林第三版)と説明され、「ペインクリニック」は、「神経痛・癌末期の痛みなど、治りにくい痛みの軽減を目的とする診療部門。」(大辞林第三版)、「末梢神経・神経叢・神経節などに局所麻酔薬あるいは神経破壊薬を注射して、各種の痛みをとることを専門とする診療部門。」(広辞苑第五版)であって、古くは、自由国民社発行の1969年(昭和44年)版「現代用語の基礎知識」に「ペインクリニック」の語が掲載され、その他、集英社発行の1987年(昭和62年)版「imidas」、朝日新聞社発行の1990年(平成2年)版「知恵蔵」に「ペインクリニック」の語が掲載されている(甲39ないし41)。
そうすると、「EVEPAIN」のうち、「ペイン」の称呼を生じる「PAIN」の部分は、これに接した取引者、需要者に、「痛み」の観念を生じさせるものと認められ、特に、請求人商品の製品パッケージ正面には、前記4(2)のとおり、「痛み・熱36錠」と付記されているところ、別紙2のとおり、被請求人商品の製品パッケージ正面にも「痛み・熱に」と記載されているように、被請求人商品は、鎮痛・解熱剤であって、「痛み」に関連する商品であり、被請求人商品においては、「痛み」は、商標が付された商品自体の特性に係るものであるから、このことからも、より一層、「EVEPAIN」のうち、「PAIN」の部分は、「痛み」との観念が生じ得るものということができる。
このことに、「EVE」の欧文字と「イブ」の片仮名文字からなる引用商標が、前記4(2)のとおり、鎮痛・解熱剤である請求人商品を表示するものとして、周知著名な商標になっていたこと、被請求人商品も鎮痛・解熱剤であること、被請求人商品は、別紙2のとおり、製品パーケージにおいて、引用商標と同様、欧文字を大きく表示するという使用態様であること、「EVEPAIN」は欧文字の7文字で構成され、それを「EVE」と「PAIN」とに分離することが取引上不自然なほど、不可分に結合しているとまで断定することはできず、被請求人商品に付せられた本件使用商標である「EVEPAIN」に接した取引者、需要者は、それらを「EVE」と「PAIN」とからなるものと理解し、「EVE」の部分においては、周知著名な引用商標を想起するとともに、「PAIN」の部分は、「痛み」との観念を生じ、その商品の特性に係る部分であり、周知著名な引用商標に係る請求人商品の関連商品の特性を示す部分として認識され、それ自体としては自他識別力を欠くものと認めるのが相当である。
そうすると、本件使用商標は、請求人の製造、販売する鎮痛・解熱剤を表示するものとして周知著名である引用商標をその主要な構成部分に含む商標として、当該構成部分が他の部分から分離して認識され得るものであり、引用商標と観念において類似し、外観、称呼の一応の相違をしのぐものと認められる。
そして、本件使用商標を鎮痛・解熱剤である被請求人商品に使用したときは、本件使用商標と請求人の引用商標とが類似することから、これに接した取引者、需要者に対し、その商品が請求人又は請求人と何らかの緊密な営業上の関係にある者の業務に係る商品であるかのように、その出所につき混同を生ずるおそれがあるというべきである。
(2)被請求人は、本件商標「イブペイン」及び「EVEPAIN」との欧文字からなる本件使用商標は、平成7年から使用を継続し、現在では、鎮痛・解熱剤について、被請求人や本件通常使用権者の商標であると広く知られているものであり、引用商標と混同することはない旨主張する。
確かに、被請求人は、販売名「イブペイン」として、頭痛等の鎮痛・解熱を効能又は効果とする一般医薬品につき、平成6年4月14日に医薬品製造承認申請を行い、その後、その製造承認申請を得たこと、被請求人が、製造販売元として、「イブペイン Evepain」との名称の鎮痛・解熱剤(被請求人商品)を発売したこと、「一般薬/日本医薬品集」の1998-99(平成10年-11年)版及び2000-01(平成12年-13年)版には、被請求人の商品として、「イブペイン Evepain」が掲載され、2007-08(平成19-20年)版にも、「三友薬品-ラクール薬品」販売の製品として「イブペイン Evepain」が掲載されていることが認められる(甲59、60、63、乙1)。
しかし、被請求人が「イブペイン」との名称で上記医薬品製造承認申請を行い、同申請が承認されたことは、本件商標及び本件使用商標が広く知られていることを裏付けるものではない。
また、「一般薬/日本医薬品集」に掲載の事実は、そこに掲載された名称の薬品が市場で販売されている医薬品として存在することを超えて、直ちに、そこに記載された商品名が商標として広く知られていることを裏付けるものではないし、そこに記載された各商品についての取引者、需要者における出所の混同のおそれの有無に直接関係するものでもない。
そして、「一般薬/日本医薬品集」の1994-95(平成6年-7年)版、1996-97(平成8年-9年)版、2002-03(平成14年-15年)版及び2004-05(平成16年-17年)版には、被請求人商品は掲載されておらず、また、株式会社インテージ発行「店頭向医薬品市場の販売動向 SDI アニュアルレポート」の1995(平成7年)版、2003(平成15年)版及び2005(平成17年)版には、鎮痛・解熱剤について、主要な商品の販売金額、シェアが記載されるとともに、「主要メーカー手持商品一覧」において、その2005版には、27社78種の薬品が掲載されるなど、多数のメーカーの多数の商品が掲載されているが、いずれの版においても、被請求人商品は、掲載されていないこと(甲13、55、57、58、61、62)に照らせば、被請求人主張のように、本件商標及び本件使用商標が、現在では、鎮痛・解熱剤について、被請求人や本件通常使用権者の商標であると広く知られているものであるとの事実は、これを認めるに足りず、被請求人の主張は、前提を欠くものである。
(3)また、被請求人は、「EVEPAIN」は、一体不可分に表示されており、これから「イブペイン」の称呼が自然に生じ、観念は、需要者には造語として認識され、「イブ」、「EVE」とは、称呼においても観念においても類似しない旨主張する。
しかし、「EVEPAIN」は、それ自体、直ちに一体として特定の観念を生じさせるものではなく、それを分離することが取引上不自然なほど、不可分に結合しているとは認められないことは、前記(1)のとおりであって、被請求人商品と同じ鎮痛・解熱剤において、引用商標が周知著名であること、被請求人商品の性質、「PAIN」の部分から生じ得る観念等に照らし、「EVEPAIN」に接した取引者、需要者は、それらを「EVE」と「PAIN」とからなるものと理解し、「EVE」の部分においては、著名な引用商標を想起するとともに、「PAIN」の部分は、その商品の特性に係る部分として認識され、自他識別力を欠くものであるから、被請求人の主張は、採用することができない。
被請求人は、請求人が、本件商標の登録につき無効審判を請求しなかったのは、請求人自身、引用商標が著名とまではなっていないこと及び請求人商品と誤認混同を生ずるおそれがないことを自認していたからにほかならないと主張するが、本件使用商標と引用商標の類否や出所混同のおそれの判断は、被請求人主張の事由によって左右されるものではないから、主張自体失当である。
その他、被請求人は、引用商標の著名性や著名性を獲得した時期、本件使用商標が出所につき誤認を生じさせることの有無についても争うが、前記4及び5(1)の説示に照らし、いずれも採用することができない。
6 以上によれば、本件通常使用権者による、本件商標に類似する本件使用商標の使用は、請求人又は請求人と何らかの緊密な営業上の関係にある者の業務に係る商品であるかのように、その出所につき混同を生ずるおそれがある。
そして、本件商標の商標権者である被請求人は、商標法第53条第1項ただし書所定の事由、すなわち、本件通常使用権者の上記不正使用の事実を知らず、かつ、相当の注意をしていたことについて、何ら主張・立証していない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第53条第1項の規定により取り消されるべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別紙1
引用商標


別紙2
本件使用商標

注:色彩については原本を参照されたい。

審理終結日 2006-06-20 
結審通知日 2007-09-04 
審決日 2007-09-18 
出願番号 商願平6-42457 
審決分類 T 1 31・ 5- Z (005)
最終処分 成立 
前審関与審査官 池田 光治信永 英孝 
特許庁審判長 山口 烈
特許庁審判官 鈴木 新五
寺光 幸子
登録日 1997-02-24 
登録番号 商標登録第3260011号(T3260011) 
商標の称呼 イブペイン 
代理人 小出 俊實 
代理人 鈴江 武彦 
代理人 稲木 次之 
代理人 加藤 和彦 
代理人 石川 義雄 
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