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審決分類 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない Y43
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y43
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない Y43
審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない Y43
管理番号 1166108 
審判番号 無効2006-89120 
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-08-15 
確定日 2007-10-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第4871853号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4871853号商標(以下「本件商標」という。)は、「COMFORT HILLS」及び「コンフォート ヒルズ」の文字を上下二段に横書きしてなり、平成16年11月17日に登録出願され、第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,会議室の貸与,展示施設の貸与,布団の貸与,業務用加熱調理機械器具の貸与,業務用食器乾燥機の貸与,業務用食器洗浄機の貸与,加熱器の貸与,調理台の貸与,流し台の貸与,カーテンの貸与,家具の貸与,壁掛けの貸与,敷物の貸与,タオルの貸与」を指定役務として平成17年6月17日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が引用する登録第3206548号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(1)に表示するとおりの構成からなり、平成4年9月30日に登録出願され、第42類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」を指定役務として同8年10月31日に設定登録されたものである。同じく登録第3206549号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(2)に表示するとおりの構成からなり、平成4年9月30日に登録出願され、第42類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」を指定役務として同8年10月31日に設定登録されたものである。同じく登録第3228605号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲(3)に表示するとおりの構成からなり、平成4年9月30日に登録出願され、第42類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」を指定役務として同8年11月29日に設定登録されたものである。同じく登録第4751678号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲(4)に表示するとおりの構成からなり、平成13年9月10日に登録出願され、第42類「一時宿泊施設の提供,その他の宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,美容,理容,入浴施設の提供,写真の撮影,オフセット印刷,グラビア印刷,スクリーン印刷,石版印刷,凸版印刷,結婚又は交際を希望する者への異性の紹介,婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供,葬儀の執行,墓地又は納骨堂の提供,あん摩・マッサージ及び指圧,きゅう,柔道整復,はり,医業,医療情報の提供,健康診断,歯科医業,調剤,栄養の指導,家畜の診療,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,衣服の貸与,植木の貸与,カーテンの貸与,家具の貸与,壁掛けの貸与,敷物の貸与,会議室の貸与,展示施設の貸与,その他の会議及び展示会のための施設の提供,祭壇の貸与,タオルの貸与,布団の貸与」を指定役務として同16年2月27日に設定登録されたものである。同じく登録第4702917号商標(以下「引用商標5」という。)は、「COMFORT HOTEL」の文字を標準文字により表してなり、平成13年9月20日に登録出願され、第42類「一時宿泊施設の提供,その他の宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供,栄養の指導,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,衣服の貸与,カーテンの貸与,家具の貸与,壁掛けの貸与,敷物の貸与,会議室の貸与,展示施設の貸与,その他の会議及び展示会のための施設の提供,タオルの貸与,布団の貸与」を指定役務として同15年8月22日に設定登録されたものである。同じく登録第4780442号商標(以下「引用商標6」という。)は、「COMFORT INN」の文字を標準文字により表してなり、平成15年11月14日に登録出願され、第43類「ホテル・モーテルにおける宿泊施設の提供,その他の宿泊施設の提供,コンピュータネットワークを利用した宿泊施設の予約状況に関する情報の提供,コンピュータネットワークを利用した宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,その他の宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」を指定役務として同16年6月18日に設定登録されたものである。

第3 請求人の主張の要点
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第60号証を提出している。
1 請求の利益
商標登録無効審判を請求する利益に関して、「ある商標の登録の存在によって直接不利益を被る関係にある者は、それだけで利害関係人として当該商標の登録を無効にする審判を請求することにつき、利害関係を有する者に該当すると解するのが相当である。」と審決で判断されている(甲第2号証)。そこで、請求人が、本件商標の存在によって直接不利益を被る関係にあることを説明する。
(1)請求人の歴史について
請求人「チヨイス ホテルズ インターナショナル インコーポレーテツド」は、1939年に、クオリティコートユナイテッド社として、貸室を中心とした会社として設立された。その後、社名を数回変更し、1999年より現在の社名であるチョイス ホテルズ インターナショナル(チヨイス ホテルズ インターナショナル)を通称として使用している。請求人は、2002年7月現在、46カ国にホテル総数約5200軒、客室数約41万室、ホテル数では世界第2位のFCホテルチェーン「コンフォート」、「コンフォートスイーツ」等の8ブランドを保有し、世界中で宿泊施設の提供等の役務を提供している(甲第3号証)。
そして、わが国において、請求人は、マスターフランチャイジー会社である株式会社チョイスホテルズジャパン(以下「チョイスジャパン」という。)を通じて、「Comfort」又は「コンフォート」の文字を含む商標を使用して、宿泊施設の提供等の役務を提供している(甲第4号証)。
(2)本件商標は、欧文字の「COMFORT」と「HILLS」との間及びカタカナの「コンフォート」と「ヒルズ」との間に、一文字分のスペースが空いている。これによって、本件商標は、「COMFORT/コンフォート」の文字と「HILLS/ヒルズ」の文字とは分離して認識されるので、本件商標からは、「コンフォート」の自然的称呼が生じる。他方、請求人は、「Comfort」又は「コンフォート」の文字を含む商標を日本を含め世界中で宿泊施設の提供等に使用している。
(3)以上述べたとおり、請求人が宿泊施設の提供に使用している「Comfort」又は「コンフォート」の文字を含む商標と称呼において類似する本件商標を、その指定役務「宿泊施設の提供」に使用すると、本件商標の指定役務の需要者は、被請求人が提供する役務を、請求人と関係を有する者が提供する役務であると誤認し、役務の出所について混同するおそれがある。
(4)以上より、請求人は本件商標の存在によって直接不利益を被る関係にあると認められる。したがって、請求人は、本件商標の登録を無効にする審判を請求することにつき、利害関係を有する者に該当する。
2 無効理由
(1)商標法第4条第1項第11号について
(ア)本件商標は、「COMFORT」及び「コンフォート」の文字と「HILLS」及び「ヒルズ」の文字との間に一文字分のスペースが空いているので、欧文字部分の「COMFORT」と「HILLS」及びカタカナ部分の「コンフォート」と「ヒルズ」とは、分離して認識される。
したがって、本件商標から、「コンフォート」の自然的称呼が生じ、該「コンフォート」の称呼から「快適さ、安楽」という観念が生じる。
(イ)請求人は、上記第2のとおりの引用商標1ないし6を有している。そして、引用商標1ないし6は、それぞれの構成に照らし、いずれも「コンフォート」の自然的称呼が生じ、該「コンフォート」の称呼から「快適さ、安楽」という観念が生じる。
(ウ)以上述べたことから、本件商標と引用商標1ないし6とは類似するものと認められる。また、引用商標1ないし6は、本件商標より先に出願され、かつ、本件商標が登録査定を受ける前に登録されている。
(エ)本件商標の指定役務中の「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」は、引用商標1ないし6の指定役務と同一である。
(オ)以上により、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第10号について
(ア)本件商標の出願時において、請求人が使用する商標が需要者の間に広く認識されていることについて
(i)請求人は、本件商標の出願時(平成16年)において、チョイスジャパンを通じて、商標「Comfort Hotel」又は「コンフォートホテル」を使用して、「コンフォートイン鈴鹿」ほか、各地に所在する12のホテルにおいて宿泊施設の提供をしている(甲第11ないし第24号証)。
なお、甲第11号証に係る書面には「株式会社日本チョイス」と記載されているが、チョイスジャパンと株式会社日本チョイスとは同一の法人でる。
(ii)本件商標の査定日(平成17年4月28日)においても、請求人は、「Comfort」又は「コンフォート」の文字を含む商標を使用して、宿泊施設の提供を行っていた。
ここに、チョイスジャパンが、「Comfort」の文字を含む商標を1999年から日本国内において宿泊施設の提供に使用しており、その結果、「Comfort」の文字を含む商標を使用する宿泊施設は、取引者・需要者をして請求人が提供する宿泊施設であると認識させるほど周知著名な商標であることを証明する書面(甲第25号証)を提出する。
(イ)請求人が使用する商標と本件商標の類似性について
請求人が使用している登録商標は、甲第11ないし第25号証に記載されているものであり、「COMFORT」又は「コンフォート」の文字からなり、同各文字から「コンフォート」の称呼及び「快適さ、安楽」という観念が生じる。
他方、本件商標の外観、称呼及び観念は、上記(1)(ア)で述べたとおりであり、請求人が使用する商標と本件商標とは称呼及び観念が同一である。
したがって、使用商標と本件商標とは類似するものである。
(ウ)請求人が提供する役務と本件商標の指定役務の同一について
請求人は、宿泊施設の提供に「Comfort」又は「コンフォート」の文字を含む商標(審決注:請求人は、その使用に係る商標について、「『Comfort』を含む商標」、「『Comfort』又は『コンフォート』の文字を含む商標」、「『COMFORT』又は『コンフォート』の文字からなる商標」というように、必ずしも明確に特定していないが、以下、「『COMFORT』、『Comfort』又は『コンフォート』の文字を含む商標」という意味で「使用商標」の語を用いる。)を使用している(甲第11ないし第25号証)。
他方、本件商標の指定役務は、宿泊施設の提供であるから、請求人が使用商標を使用して提供する役務と同一である。
(エ)以上から、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号について
(ア)本件商標は、請求人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがある商標である。
請求人は1999年から現在に至るまで日本国内において、使用商標を使用して宿泊施設の提供を行っている。この結果、使用商標を使用して提供される宿泊施設は、請求人が提供する宿泊施設であると取引者・需要者に認識されるほど日本国内において周知著名となっている。
したがって、本件商標の出願時及び査定時において、使用商標は日本国内で著名と認められる。
(イ)商標法第4条第1項第15号における「出所の混同を生ずるおそれ」とは、他人の業務に係る商品であると誤認し、その商品の出所について混同するおそれがある場合のみならず、その他人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、その商品の出所について混同するおそれがある場合をもいう。そして、「混同を生じるおそれ」の有無は、「当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである」と判示されている(甲第26号証)。
これを本件についてみると、本件商標は、請求人が日本をはじめ、世界各国において使用している使用商標と同一の標章を含む商標であり、使用商標と類似している。
本件商標の指定役務と請求人が使用商標を使用して提供している役務とは、「宿泊施設の提供」で同一である。
(ウ)以上の事実に基づき、本件商標の指定役務の取引者・需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すると、本件商標を使用して提供される宿泊施設の提供は、請求人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る役務であると誤認し、その役務の出所について混同するおそれがある。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第19号について
請求人は、使用商標を世界各国において宿泊施設の提供に使用している。この結果、使用商標は世界各国において著名である(甲第25号証)。
そして、請求人が宿泊施設の提供に使用している使用商標と本件商標とは類似しており、かつ、指定役務は同一のものを含む。
このことは、本件商標が、宿泊施設の提供において著名であることにただ乗り(フリーライド)することを意図して出願されたものであり、不正の目的でなされたものと認められる。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する。
(5)むすび
上述のように、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するので、同法第46条第1項の規定によりその登録を無効とすべきものである。
3 弁駁の理由
(1)商標法第4条第1項第11号について
(ア)被請求人は、本件商標を構成する前半の「COMFORT/コンフォート」及び後半の「HILLS/ヒルズ」の各文字は、同じ大きさでかつ同じ書体で表されていて、視覚上一体的に把握し得るものであると述べている。
しかしながら、本件商標は、視覚上一体的に把握し得えない。以下に、その理由を述べる。
本件商標を構成する「HILLS/ヒルズ」の文字は、ホテルの名称として広く用いられている文字であるので(甲第27号証)、本件商標の指定役務第43類「宿泊施設の提供」と密接な関連を有する一般的な文字と認められる。
そうすると、「COMFORT/コンフォート」の文字と「HILLS/ヒルズ」の文字の結合からなる本件商標が、その指定役務である「宿泊施設の提供」に使用された場合には、「COMFORT/コンフォート」の文字部分が取引者・需要者に対して役務の出所の識別標識として強く支配的な印象を与えるから、それとの対比において、「HILLS/ヒルズ」の部分からは、出所の識別標識としての称呼、観念は生じない。
また、本件商標は、その前半の「COMFORT/コンフォート」の文字と後半の「HILLS/ヒルズ」の文字との間に、明らかに1文字分のスペースが空いているので、視覚的に前半の文字と後半の文字に分離されて認識されるものである。この妥当性は、「HILLS」と「COFFEE」の文字とを一文字の間隔を設けて書してなる商標「HILLS COFFEE」について、「視覚的に該各文字よりなるものとしてみられる」と述べている審決からも裏付けられる(甲第28号証)。
したがって、本件商標に接した需要者は、本件商標を「COMFORT/コンフォート」の文字と「HILLS/ヒルズ」の文字とに分離して認識するのが自然である。
(イ)被請求人は、意味上において本件商標の前半の「COMFORT/コンフォート」の語が専ら後半の「HILLS/ヒルズ」の語にかかって、これを修飾する関係にある旨述べ、「COMFORT/コンフォート」の語が従であり、「HILLS/ヒルズ」の語が主であると述べている。
しかしながら、「comfort」は「慰める、元気づける、励ます、慰安、楽しみ」の意味合いをもって世人一般に親しまれている平易な英語であることを被請求人は認めているが、この理解に従えば、世人一般には「COMFORT/コンフォート」は名詞又は動詞として把握されるのであり、「COMFORT/コンフォート」が「HILLS/ヒルズ」を修飾する関係にあるとはいえず、被請求人が述べるように意味上の主従・軽重の差があるとは認められない。
また、上記のとおり、「HILLS/ヒルズ」の文字部分は、本件商標の指定役務「宿泊施設の提供」との関係においては、出所の識別標識としての称呼、観念は生じないので、この点からもこの部分を意味上における本件商標の主とは認められない。
(ウ)以上述べたことより、本件商標は、その外観、印象及びその意味上においても、「COMFORT/コンフォート」の語と「HILLS/ヒルズ」の語とに分離して認識し把握されるとみるのが至当である。
(エ)被請求人は、引用商標1ないし6は、それら各商標を構成する図形又は他の文字と一体的に認識し把握するとみるのが自然であるので、安直に「Comfort」又は「COMFORT」の文字を抽出し得ない旨を述べている。
しかしながら、被請求人の上記主張は認められない。以下、引用商標1ないし6から、「Comfort」又は「COMFORT」の文字が抽出されることを論じる。
(i)引用商標1ないし3について
上記各商標の外観は、黒塗りの方形の内側に、「Comfort」及び「Suites」の文字、「Comfort」の文字、又は「Comfort」及び「Inn」の文字が、それぞれ白抜きで書されている。このため、上記各商標に接した需要者は、黒い背景に白抜きで書された上記各文字部分に自然に着目し、図形(黒塗りの方形)は白抜きで書された各文字を引き立たせる単なる背景と認識するのが自然である。
また、上記各商標には、円図形も描かれているが、円図形と上記各文字との関連性は特に認められない。したがって、円図形と上記各文字部分とを一体的に認識し把握する特段の理由は存在しない。
そして、「Comfort」と「Suites」の文字、 「Comfort」と「Inn」の文字は、上下二段に書されているので分離して認識し把握されるものである。
したがって、上記各商標に接する需要者は、「Comfort」の文字部分を容易に分離抽出して取引に当たると認められる。
(ii)引用商標4について
上記商標を構成する図形は、方形の線図形であるので、同商標に接した需要者は、方形の線図形を単なる「枠」に過ぎないと認識するのが自然である。
また、上記商標には、モノグラム化した「CS」の欧文字が書されており、その下に「COMFORT」及び「SUITES」の文字が書されていることから、「CS」の文字は、「COMFORT」及び「SUITES」の頭文字と認識される。
しかしながら、このことは、「COMFORT」及び「SUITES」の文字を結合させて一体的に把握しなければならない理由とはならない。むしろ、「COMFORT」及び「SUITES」の文字が上下二段に書されていることから、「COMFORT」 と「SUITES」文字とは、分離して認識し把握されるのが自然である。
したがって、上記商標に接する需要者は、「COMFORT」の文字部分を容易に分離抽出して取引に当たると認められる。
(iii)引用商標5及び6について
上記各商標は、標準文字で「COMFORT HOTEL」又は「COMFORT INN」と書されており、「COMFORT」と「HOTEL」の文字の間、「COMFORT」と「INN」の文字の間には、それぞれ明らかに一文字分のスペースが空いていることから、「COMFORT」と「HOTEL」の文字、「COMFORT」と「INN」の文字は、それぞれ分離して認識される。
したがって、上記各商標に接する需要者は、「COMFORT」の文字部分を容易に分離抽出して取引に当たると認められる。
以上述べたとおり、引用商標1ないし6に接した需要者は、容易に「Comfort(COMFORT)」の文字部分を抽出することが可能であり、引用商標1ないし6から自然に、「コンフォート」の称呼及び「快適さ、安楽」の観念が生じることは明らかである。
(オ)なお、被請求人は、「Comfort(COMFORT)」の語が、「Suites」、「Inn」又は「HOTEL」の語と同様に記述的なものであることを請求人も認めている旨述べているが、請求人は、同内容の言及は全くしていない。
したがって、請求人が「Comfort(COMFORT)」の語は記述的なものであることを認めている旨の被請求人の主張は、全くの誤解によるものである。
(カ)被請求人は、請求人が「Comfort(COMFORT)」の語を含む複数の商標を使い分けていることを指摘して、「この点を看過して述べる請求人の主張は自ら矛盾を露呈するものにほかならない。」と述べている。
しかしながら、請求人が「Comfort(COMFORT)」の語を含む複数の商標を使い分けているのは、ブランド戦略に基づくものであり、同一人が、類似する複数の商標を使い分けることは、よく見られるものである。また、かかるブランド戦略と「Comfort(COMFORT)」の語が記述的であるか否かとは、無関係である。
したがって、被請求人の上記主張は論理性を欠くものといわざるを得ない。
(2)商標法第4条第1項第10号について
(ア)被請求人は、請求人提出の甲号各証によっては、本件商標の出願時及び登録査定時において、使用商標の周知著名性は全く明らかでない旨述べている。
しかしながら、請求人が宿泊施設の提供に使用している使用商標は、取引者・需要者の間に広く認識されているものである。
(イ)被請求人は、請求人が提出したパンフレット(甲第12ないし第24号証)の作成時期は不詳であると述べている。
しかしながら、上記パンフレットに係るホテルは、2004年2月時点で展開中のホテルを掲載する小冊子(甲第11号証)に記載されているか、又は、パンフレットと一体的に用いられる添付の料金表には日付が記載されていることから、上記パンフレットの作成時期は十分特定される。また、料金表自体に「Comfort」及び「コンフォート」の文字が付されているので、使用商標の使用時期は特定される。
(ウ)被請求人は、「コンフォートイン」又は「コンフォートホテル」の名称を使用して営業していたホテル数は、本件商標の出願時及び査定時において、精々10数店舗から20店舗前後に止まること、及び、地方都市を中心としていたことを指摘して、使用商標の周知・著名性は認められないと主張している。
しかしながら、商標法第4条第1項第10号に係る特許庁商標審査基準によると、「本号にいう『需要者の間に広く認識されている商標』には、ある一地方で広く認識されている商標も含む。」と規定されている。
そして、甲第11、第12、第21及び第24号証のホテルのパンフレットによると、東海地方で「コンフォートイン」又は「コンフォートホテル」の名を用いてホテル事業を展開していることは明らかである。また、甲第11、第13及び第15号証のホテルのパンフレットによると、近畿地方で「コンフォートイン」又は「コンフォートホテル」の名を用いて、ホテル事業を展開していることは明らかである。
したがって、東海地方及び近畿地方における、「コンフォートイン」又は「コンフォートホテル」の周知著名性は認められるので、被請求人の反論は認められない。
(エ)「コンフォート」を名称に含むホテルの開業は、各種媒体で紹介されている。チョイスジャパンは、株式会社電通パブリックリレーションズ(甲第29号証)に、「コンフォート」を名称に含むホテルに関する記事の収集を依頼しており、この依頼に基づいて株式会社電通パブリックリレーションズが収集した新聞及び雑誌記事の一部(写し)を甲第30ないし第42号証として提出する。なお、上記新聞及び雑誌の発行部数等についての説明として、甲第43ないし第55号証を提出する。
また、チョイスジャパンは、書籍・雑誌に広告を掲載している。その一部(写し)を甲第56ないし第58号証として提出する。
(オ)以上述べたとおり、「コンフォート」を名称に含むホテルについて、全国新聞、地方有力新聞、業界関係者が購読する新聞、40年にわたる長い歴史を有する旅行・旅館の専門雑誌で頻繁に取り上げられ、また、書籍・雑誌において宣伝広告をしている。
これらのことから、「コンフォート」ホテルの名称は、取引者・需要者の間では周知著名であると認められる。
(カ)被請求人は、乙第3号証を提出し、全国のホテル施設数及び客室数の多さと比較して請求人の店舗数が少ないことから、需要者の関心を集めた事柄が存するなどの特段の事情を有しない限り、請求人の営業規模及び事業活動の状況では、「コンフォート」ホテル(イン)の名称が周知著名性を獲得したとみるのは到底困難であると述べている。
しかしながら、商標法第4条第1項第10号でいう周知著名性は、最終消費者まで広く認識されている商標のみならず、取引者の間に広く認識されている商標も含む(「商標審査基準」参照)。そして、上記のとおり、「コンフォート」ホテル(イン)の名称は、取引者の間では周知著名であると認められるので、被請求人の反論は成り立たない。
また、一般新聞においても、「コンフォート」を名称に含むホテルの開業が紹介されているので、需要者においても「コンフォート」ホテル(イン)の名称は、周知著名である。
(キ)被請求人は、請求人が提出した証明書(甲第25号証)に対して、証明事項について第三者が客観的に判断し得る具体的事柄ないし関連資料がないことを指摘し、同証明書によっては、使用商標の周知著名性は証明されないと述べている。
しかしながら、「コンフォート」を名称に含むホテルは、各種媒体において掲載・宣伝広告されていることから、同証明書の内容は客観的資料に裏づけられている(甲第30ないし第42及び第56ないし第58号証)。
したがって、証明書(甲第25号証)は使用商標の周知著名性の認定にあたり斟酌されるべきものである。
(3)商標法第4条第1項第15号について
(ア)被請求人は、請求人主張の使用商標の周知著名性は客観的に明らかでない旨を述べているが、上記のとおり、使用商標が周知著名であることは明らかである。
(イ)被請求人は使用商標が格別独創的でないことを指摘し、「すでにこの点において上記引用判決の述べる要件に適合しないことは明白であ(る)」と述べ、本件商標の登録は商標法第4条第1項第15号に違反してされたということはできないと結論付けている。
しかしながら、引用判決は、「混同を生じるおそれ」の有無を、「当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである」と判示しており、判断要素の一部(商標の独創性の程度)が認められなければ、即、引用判例が及ばないわけではない。
被請求人は、「このほか各点を総合するに、(中略)、その出所について混同するおそれはない」と述べ、請求人の使用商標と本件商標との類似性、役務の同一性並びに取引者及び需要者の同一性という、被請求人に不利な点については言及していない。
請求人の使用商標と本件商標とは類似し、それらの役務は同一であり、取引者(ホテル・旅館関係者、旅行業者等)及び需要者(ホテルの利用者)も同一である。
(ウ)以上の事実に基づき総合的に判断した場合、本件商標を使用して提供される宿泊施設の提供は、請求人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る役務であると誤認され、その役務の出所について混同するおそれがあると認められる。
(4)商標法第4条第1項第19号について
(ア)被請求人は、本件商標は、被請求人会社がその出願の当時において、老人の養護及び関連サービスに係る事業を企画・設計するに当たり採択したものであること、及び、それらの事業は現在既に実行段階にある等を述べ、請求人らの商標とは全く関係ない旨を述べている。
しかしながら、上記のとおり、使用商標は、本件商標の出願時に日本国において周知著名であり、また、被請求人会社の事業が実行段階にあることと、被請求人の本件商標選択が著名商標にただ乗り(フリーライド)する意図で出願されたこととは別である。
したがって、被請求人の反論は妥当でない。
(イ)被請求人は、請求人が提出した証明書(甲第25号証)の記載中の、世界規模でホテルチェーンを展開していること及び使用商標が世界規模で使用されていることを示す具体的資料の提出がないと述べている。
しかしながら、請求人は米国を中心にホテル「COMFORT SUITES」及びホテル「Comfort Inn」を展開している。その件数は、「2004 Worldwide Hotel Directory and Atlas」によると、ホテル「COMFORT SUITES」、ホテル「Comfort Inn」の件数は1900件を超えている(甲第59号証)。また、「2005 Worldwide Hote1 Directory and Atlas」によると、その件数は前年2004年版の数を超え、2000件以上となっている(甲第60号証)。
ここに、「2005 Worldwide Hote1 Directory and Atlas」から、米国カリフォルニア州、オーストラリア、フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、ノルウェー、ポルトガル、スペイン、スウェーデン及び英国におけるホテル「COMFORT SUITES」及びホテル「Comfort Inn」の掲載ページの抜粋を提出する(甲第60号証)。
この資料により、請求人が世界規模でホテルチェーンを展開していること及び使用商標が世界規模で使用されていることは証明される。
(ウ)被請求人は、「Comfort」、「COMFORT」、「Comforts」又は「コンフォート」を含む標章を用いて、宿泊施設の提供を行う事業者が点在することを示し、「Comfort」等を含む標章は独創性を欠くと述べている。
しかしながら、被請求人が自ら述べているとおり、全国のホテル施設数は8300か所以上もあるので(乙第3号証)、「Comfort」等を含む標章の使用例が複数存在することは不思議ではない。また、被請求人が乙第6号証において指摘している宿泊施設はわずか5件にすぎない。
したがって、わずかな一致をもって、「Comfort」等を含む標章の独創性は直ちに否定されない。
(エ)以上述べたとおり、請求人は世界規模で使用商標を使用してホテルチェーンを展開しており、被請求人はこの使用商標の名声にフリーライドする意図で本件商標を出願していると認められるものである。

第4 被請求人の答弁の要点
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第6号証(枝番を含む。)を提出している。
請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、引用商標1ないし6を引用し、また、本件商標は同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するとして、甲号各証を提出した。
しかしながら、本件商標は、被請求人会社が独自の企画・設計の下に発案し採択した一種固有の商標であって、引用商標1ないし6とは、何らその出所について混同するおそれのない非類似の商標であり、また、使用商標の周知著名性は、提出に係る甲号各証によっては全く明らかでなく、該事実は客観的に証明されないから、その周知著名性を根拠に本件商標の無効理由を述べる請求人の主張は、いずれも失当であって採用されるべきでない。
そして、本件商標は、引用商標1ないし6とは非類似・別個の商標であり、かつ請求人の標章に係る役務とは何ら出所混同を来すおそれはなく、また、不正の目的をもって使用するものではないから、結局、本件商標の登録は、上記各条項の規定のいずれにも違反してされたものとはいえない。
以下、請求人の請求理由の各項について、被請求人の答弁を順次述べる。
1 請求の利益について
(1)請求人は、本件審判の請求について請求の利益を有するとして、甲第2号証審決(平成9年審判第20430号)を挙げ、利害関係を有する旨述べ、さらに請求人の歴史として、甲第3及び第4号証を挙げ、その理由を述べている。
被請求人は、本件審判において、利害関係を有する旨の請求人の主張については、争わない。なお、甲第3及び第4号証については後出各項において述べる。
(2)請求人は、この請求の利益に関連して、本件商標は前半の「COMFORT/コンフォート」と後半の「HILLS/ヒルズ」とに分離されるから「コンフォート」の自然的称呼が生ずる旨述べ、また請求人の標章と称呼において類似する本件商標を被請求人がその指定役務「宿泊施設の提供」に使用すると需要者は請求人に係る役務と誤認混同する旨述べている。
しかし、本件商標から「コンフォート」の称呼が生ずる旨述べるこれら請求人の主張は、何らの根拠もなく到底容認できない。その理由については、後述する。
2 無効理由について
請求人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当すると述べている。
しかし、後述するように、本件商標は同条項の規定のいずれにも該当するものでなく、適法に登録されたものであるから、その無効理由を述べる請求人の主張は失当であって、採用されるべきでない。
(1)商標法第4条第1項第11号について
(ア)請求人は、本件商標は前半の「COMFORT/コンフォート」と後半の「HILLS/ヒルズ」とに分離されるから「コンフォート」の自然的称呼及び「快適さ、安楽」の観念が生ずる旨述べている。
しかし、本件商標を構成する前半の「COMFORT/コンフォート」及び後半の「HILLS/ヒルズ」の各文字は、同じ大きさでかつ同じ書体で表されていて、視覚上一体的に把握し得るものであり、また意味上においてはこれら各語は、それぞれ「慰める、元気づける、励ます、慰安、楽しみ」(comfort)及び「丘、丘陵」(hill(s))の意味合いをもって世人一般に親しまれている平易な英語又は外来語であって(乙第2号証の1及び2)、全体として「快適な丘、癒しの丘陵」との意味合いを容易に想起・認識させるものといえる。そして、これに相応して生ずる「コンフォートヒルズ」の称呼も格別冗長に亘るものでなく、無理なく一連に称呼し得るものであるから、本件商標は、この称呼並びに上記意味合いの下に把握される不可分一体の一種の造語とみるのが至当と考える。
しかも、上記両語の結合は、意味上において前半の「COMFORT/コンフォート」の語が専ら後半の「HILLS/ヒルズ」の語にかかって、これを修飾する関係にあること、すなわち「HILLS/ヒルズ」を主とすれば、「COMFORT/コンフォート」は従たる関係にあるといえるから、この各語の意味上の主従・軽重の差からみて、本件商標が単に「コンフォート」(COMFORT)の称呼・観念をもって取引に資されることはあり得ず、また「HILLS/ヒルズ」の語が捨象されることもあり得ない。
そうすると、本件商標は、その外観印象と上記意味合いの下に常に不可分一体のものとして認識し把握されるとみるのが至当であり、したがって、その全体より生ずる「コンフォートヒルズ」の一連の称呼のみをもって取引に資される固有の商標といわなければならない。
そうすると、本件商標より単に「コンフォート」(快適さ、安楽)の称呼・観念が生ずるとするのは妥当でなく、したがって、これを前提に述べる請求人の主張は失当であって、採用されるべきでない。
(イ)請求人は、本件商標は請求人保有の引用商標1ないし6と類似するとして、その理由を述べている。
しかし、引用商標1ないし6の構成は、上記第2のとおり、黒く塗りつぶした方形図形内上半分・下半分の位置にそれぞれ三つ引き紋風の円図形並びに上下二段にした「Comfort」、「Suites」の各文字を白抜きで表したもの、同様の方形内に同様の円図形と「Comfort」の文字を配したもの、同様の方形内に同様の円図形と上下二段にした「Comfort」、「Inn」の文字を配したもの、或いは方形内上半分・下半分の位置にそれぞれモノグラム化した「CS」の文字及びこれを囲む楕円図形並びに上下二段にした「Comfort」、「Suites」の各文字を線描きで表したもの、さらに、標準文字による 「COMFORT HOTEL」又は「COMFORT INN」とするものであって、請求人が述べるように安直に「Comfort」又は「COMFORT」を抽出し得るものでないことが判る。
すなわち、引用商標1ないし6に接する需要者は、それら図形を含めた構成の全体若しくは他の文字との結合を一体的に認識し把握するとみるのが自然であって、少なくとも文字部分はそれ自体が一つに捉えられるものといえるから、殊更「Comfort」又は「COMFORT」の文字部分を分離抽出して取引に当たるとする合理的理由は存しないものといわなければならない。
蓋し、この「Comfort」又は「COMFORT」の語にしても、他の「Suites」、「Inn」又は「HOTEL」の語と同様に記述的なものであることは、請求人もこれを認めるところであって、こうした一般的・記述的な語(言葉)であっても、それら同士の組合せにより、全体として自他識別力を有するとされる場合がある(商標登録される)所以であり、また、現に請求人もそれら文字の組合せ又はその違い等により、自身の商標(引用商標1ないし6)を使い分けている(区別している)という実情にあるから、この点を看過して述べる請求人の主張は自ら矛盾を露呈するものにほかならない。
このように、引用商標1ないし6から「コンフォート」(快適さ、安楽)の称呼・観念が生ずる旨述べる請求人の主張は、何らの根拠も有しないことが明らかとなった。
そして、仮に引用商標1ないし6から単に「Comfort」又は「COMFORT」(コンフォート)の称呼・観念が生ずるとした場合であっても、本件商標は上記のとおり、視覚上又は意味上において不可分一体に把握される一種固有のものであって、常に「コンフォートヒルズ」の一連の称呼のみを生ずるものであるから、その外観・観念及び称呼の各点とそれらによって取引者に与える印象・記憶・連想等を総合して考察するに、本件商標は、引用商標1ないし6とは何らその出所について混同を生ずるおそれのない非類似・別個の商標といわなければならない。
(ウ)以上述べたとおり、本件商標は引用商標1ないし6とは、その指定役務の類否を論ずるまでもなく、商標において類似のものということはできないから、本件商標について引用商標1ないし6との類似を理由にその無効を述べる請求人の主張は、失当であって、採用されるべきでない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものということはできない。
(2)商標法第4条第1項第10号について
(ア)請求人は、本件商標の出願時において使用商標を請求人関連会社のチョイスジャパンが使用し宿泊施設の提供をしており、本件商標の登録査定時も同様の旨述べ、その使用を示すものとして、甲第11ないし第24号証を提出し、さらに、その著名性を示すものとして株式会社オータパブリケーションズ(以下「オータパブリケーションズ」という。)に係る証明書を甲第25号証として提出した。
しかし、請求人提出の甲号各証によっては、本件商標の出願時を含む登録査定時において、その主張に係る使用商標の周知著名性は全く明らかでなく、該事実は客観的に証明されないから、これを前提に述べる請求人の主張は、失当であって、採用されるべきでない。
すなわち、請求人提出の甲第11号証は、2004年(平成16年)前半頃に作成したものと思われる会社概要に関する印刷物であって、同記載によれば、(a)東海地方を中心にホテル34店舗を展開している請求人及びその関連会社(「株式会社日本チョイス」)は、エコノミータイプのホテルビジネスを企図し、「Comfort Hotel」を含む4つのブランド展開を図っていること、(b)このブランド展開によるホテル数は、2004年(平成16年)2月当時、地方都市ないしは関西圏を中心に全部で13店舗を数え、このうち「コンフォートイン」又は「コンフォートホテル」の名称のものは11店舗あり、これら以外に2004年夏から2005年春にかけて完成予定とするものが4店舗(いずれも「コンフォートホテル」)あること、(c)その他(関連会社の概要ほか)の記載がある。
そして、甲第12ないし第24号証は、上記11店舗から1店舗を除いた10店舗に新たに3店舗を加えた都合13店舗の各ホテルのパンフレット(作成時期不詳)であり、同パンフレットには「Comfort Hotel」(コンフォートホテル)又は「Comfort Inn」(コンフオートイン)の表示がある。
また、甲第4号証(「2005 Hote1 Directory Japan」)7丁のいわゆる店舗展開略図によれば、「コンフォートイン」又は「コンフォートホテル」の名称で営業中のものは当該時期において21店舗あるから、上記13店舗から8店舗増えたことになる。
以上の請求人らによる「コンフォートイン」又は「コンフォートホテル」の名称の下に展開するホテル事業の推移をみると、本件商標の出願時を含む登録査定時において、それら使用商標により営業していたホテル数は、精々10数店舗から20店舗前後に止まり、また当初の国内展開は地方都市を中心としていたもので、その後最近に至って徐々に首都圏ないしは大都市圏へと進出してきたという状況にあることが判る。
そして、提出に係る証拠は、請求人らの会社概要を示す印刷物及びその提供に係る当該宿泊施設のパンフレットのみであって、この間請求人らの提供する当該サービスないしは使用商標について、顧客に対してどのように広告宣伝活動を実施したのかといった客観的状況を示す証拠は一切見出せないから、これら証拠のみでは、需要者一般の使用商標に対する認識の程度を推し量ることは到底困難といわなければならない。
因みに、被請求人の提出する乙第3号証は「ホテル施設数・客室数」に関する厚生労働省統計数値であるところ、平成13年次において、全国のホテル施設数は8,300か所以上、客室数は637,000室以上存在し、さらに増加傾向にある中で、徒でさえ顧客獲得競争の極めて激しい状況にあるこの種サービス分野にあって、請求入らの使用商標に係るサービスがその当時とりわけ需要者の関心を集めた事柄が存するなど特段の事情を有しない限り、上記営業規模及び事業活動の状況では、本件商標の出願時を含む登録査定時において、周知著名性を獲得したとみるのは到底困難といわなければならない。
そして、上記時期において請求人らに係るホテルないしは使用商標について、大々的かつ集中的に広告活動・PR活動を展開し、この種ホテル業界ないしは需要者一般の衆目を集めたというような特段の事情はなく、またこれを推認させるような状況も全く存しないものとすれば、使用商標の周知著名性は客観的に証明されず、むしろそうした事実は存しなかったものといわざるを得ない。
(イ)請求人は、この点に関し、使用商標が周知著名であることを証明するものとして、甲第25号証(オータパブリケーションズによる証明書)を提出している。
しかし、同証明書は請求人からオータパブリケーションズ宛「『別紙1』の各標章は米国を拠点として世界45カ国にバジェットクラスのホテルチェーンを展開している請求人が世界規模で1981年から宿泊施設の提供に使用している標章であり、またこの各標章は1999年から日本国内の『別紙2』の宿泊施設において使用されており、これら各標章は取引者・需要者において、これを使用する宿泊施設は請求人会社の提供しているものと想起させる程に周知著名な標章となっている」旨の証明願に対して、オータパブリケーションズが「相違ないことを証明する」というものであるところ、このような一片の書面による形式的な証明をもって直ちに請求人らに係る使用商標の周知著名性を客観的に証明し得るとは到底考えられないから、該事実は信ずるに足りない。
すなわち、一般にこのような内容について証明するとした場合、証明事項について第三者が客観的に判断し得る具体的事柄ないし関連資料がなくては不可能と考えられるにも拘わらず、本証明書は単に一群の標章並びに当該ホテルリストを添付したに止まり、その周知著名性を客観的に判断するための資料を何ら伴うものではないから、当該証明者が何に基づきこの証明をなし得たのか甚だ疑問であり、したがって、このような一片の書面による形式の証明ではその証明内容が真実存在したとは俄かに信じ難く、このほか証明の対象である標章自体も特定されておらず、また証明者の会社代表者氏名及び代表者印の記載もなく、さらに証明に係る文言も脈絡がなく不適切というほかはないから、結局、甲第25号証によっては、使用商標の周知著名性は客観的に証明されない。
なお、甲第25号証(証明書)文中、『別紙1』は上述(ア)(a)に述べた国内4ブランドに加え請求人が外国で使用しているとする8標章(「Comfort Inn」 、「Comfort SUITES」ほか6標章)を一覧表形式で表示したものであり、また『別紙2』は甲第4号証「店舗展開略図」中の当該21店舗をリスト化したものであり、さらに、当該証明者は雑誌「週刊ホテルレストラン」(甲第3号証)の発行会社名と符合するが、詳細は不詳である。
(ウ)以上述べたとおり、請求人主張の使用商標の周知著名性が全く明らかでないとすれば、その事実は存在しなかったものとみて差し支えなく、また上記(1)において被請求人が述べたとおり、本件商標は商標自体において引用商標とは、非類似・別個のものであり、したがって周知要件・類似要件のいずれからしても、本件商標について、その出願時を含む登録査定時において、他人の周知商標又はこれに類似する商標に該当するものということはできない。
このように、請求人提出の甲号各証によっては、その主張事実は明らかでなく、これに基づく請求人の主張は単に意見を述べたにすぎず客観性を欠くものであるから、失当であって、採用されるべきでない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号に違反してされたものということはできない。
(3)商標法第4条第1項第15号について
請求人は、甲第26号証(最高裁判決)を引用して商標法第4条第1項第15号の解釈論を述べると共に、使用商標は、請求人の宿泊施設の提供に係る役務について使用された結果、本件商標の出願時を含む登録査定時において著名性を獲得していたとし、また請求人の宿泊施設の提供の役務と競合する本件商標をその指定役務について使用すると請求人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る役務の如く誤認しその出所について混同するおそれがある旨述べている。
しかし、被請求人が上記(2)において述べたとおり、本件商標の出願時を含む登録査定時において、請求人主張の使用商標の周知著名性は客観的に明らかでなくその事実は存しなかったものといわざるを得ないから、その周知著名性を前提に本件商標について出所混同のおそれを述べる請求人の主張は、失当であって、採用されるべきでない。
すなわち、請求人が述べる商標法第4条第1項第15号の解釈論について被請求人は争うものではないが、しかし引用判決が述べている趣旨は、それまでの同条項の解釈論をさらに拡げていわゆる広義の混同をも含めるとした点に意義があるのであって、この判示の趣旨が本件事案とどのように関わりを持つのかといった点について、請求人は何ら言及するところがないから、これに基づく請求人主張は趣旨不明というほかはない。
したがって、本判決は、本件事案において述べる被請求人主張に何ら影響を及ぼすものではない。
そして、同判決が一方で判示した「『混同を生ずるおそれ』の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである」との趣旨に照らして、請求人らの使用商標に関する取引事情をみると、その主張の根拠が如何に脆弱であるかという点が判る。
すなわち、本件商標の出願時を含む登録査定時において、請求人らに係る使用商標の周知著名性は存しなかったことはすでに上記したとおりであって、かつ使用商標自体も格別独創的なものでないとすれば、すでにこの点において上記引用判決の述べる要件に適合しないことは明白であって、このほか各点を総合するに、本件商標をその指定役務について使用した場合、需要者が請求人らの使用商標に係る役務の如くその出所について混同するおそれはないというべきであるから、本判決を引用して述べる請求人主張は、何ら根拠を有しないものといわなければならない。
以上のとおり、請求人の主張は証拠に基づき事実を述べるものでなく、単に意見を述べたにすぎないから、失当であって、採用されるべきでない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものということはできない。
(4)商標法第4条第1項第19号について
請求人は、甲第25号証(オータパブリケーションズによる証明書)に基づき、請求人は使用商標を世界各国において宿泊施設の提供に使用し世界各国において著名であると述べ、また、本件商標は、これと類似し、使用商標の著名性にただ乗り(フリーライド)することを意図して出願されたものであり、不正の目的で使用するものである旨述べている。
しかし、本件商標は、被請求人会社がその出願の当時において、老人の養護及び関連サービスに係る事業を企画・設計するに当たり、当該サービスのイメージを表象するものという独自の発想の下に採択した固有のものであって、それら事業は現在すでに実行段階にある等の事情は、被請求人提出の当該カタログ・パンフレット類及び新聞・雑誌記事等(乙第5号証)により客観的に明らかであって、元々請求人の使用商標とは全く関係のないことは、商標自体とこれら事情よりして明白といわなければならない。
また、本件商標の出願時を含む登録査定時において、使用商標の周知著名性は客観的に明らかでないから、何ら根拠もなく本件商標について他人の商標標の著名性にただ乗り(フリーライド)し又は不正の目的を意図して出願したなどと述べる請求人の主張は、甚だ不穏当であって到底容認することができない。
そして、甲第25号証証明書が信憑力を欠くものであることは上述のとおりであって、同証明書文中の「世界規模でホテルチェーンを展開している」、「各標章(使用商標を含む8標章)を世界規模で使用している」とする内容についても、その具体的な使用状況等を示す資料は一切見出せず、またどの標章がどこで使用されどの程度著名であるのかといった点も全く明らかでなく、単に証明者が主観的にその旨を述べているに止まるものであるから、甲第25号証をもって請求人に係る使用商標が本件商標の出願時を含む登録査定時において世界各国において周知であったとする点は、客観的に証明されない。
これに関連して、請求人主張の「請求人の歴史について」の項及びその提出に係る甲第3号証(雑誌:週刊ホテルレストラン/HOTERESの表紙及び当該記事)によれば、僅かに請求人の外国における事業展開の様子又は上記8標章を保有している状況が窺えるとしても、上記同様にその具体的な状況は全く触れられておらず、またその証拠もないから、請求人主張の使用商標の周知事情は依然として明らかでない。
また、商標法第4条第1項第19号は、「他人の周知な商標と同一又は類似の商標」が要件とされているところ(請求人主張の商品又は役務の類似要件は含まれない)、本件商標は、商標自体において引用商標とは何らその出所について混同を来すおそれのない非類似・別個のものであることは、すでに上述のとおりであって、使用商標と対比した場合も全く同様であるから、結局本件商標は請求人の使用商標とは何ら紛れるおそれのない非類似・別個の商標といわなければならない。
さらに、請求人主張の商標(「Comfort/INN」、「Comfort/SUITES」)は、それ自体、一般的・記述的な語の結合であって独創性の弱いものであることはすでに述べた。
これに関連して、請求人の使用商標と同様に「Comfort」、「COMFORT」又は「Comforts」ないし「コンフォート」を含む商標を用いて、ホテル等の宿泊施設の提供を行う第三者に係る事業者が国内各地に点在する事情について、当該事業者に係るウェブページ(乙第6号証)により、明らかにしておきたい。なお、この点は、被請求人が上述各項において、それら標章を記述的とし又は独創性を欠くとした理由の根拠ともなる。
そうすると、「その商標が造語であるか若しくは構成上顕著な特徴を有するものか」を本条項の適用における判断基準の一つとして挙げる特許庁編集「商標審査基準」(乙第4号証)の趣旨よりすれば、請求人ら商標がこの要件に適合するものとは到底考えられず、したがって、上記採択事情とこの視点を併せ考慮するに、本件商標について不正目的を推認させる事由は全く存しないものといわなければならない。
以上のとおり、本件商標について、他人の商標の著名性にただ乗り(フリーライド)し又は不正の目的を意図した旨述べる請求人の主張は、請求人ら商標の周知要件、類似要件の欠如並びに本件商標の不正目的の不存在により、全く根拠を有しないことが明らかとなった。
このように、請求人の主張は、証拠に基づき事実を述べるものでなく、単に意見を述べたにすぎないから、失当であって、採用されるべきでない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第19号に違反してされたものということはできない。
(5)まとめ
以上のとおり、本件商標が商標法第4条第1項第11号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するとして、その登録無効を述べる請求人の主張は、いずれも根拠を欠くものであるから、失当であって、採用されるべきでない。
そして、事実に基づきその理由を具体的に述べる被請求人の答弁は正当であって、これを否定するに足りる証拠はない。
したがって、本件商標は上記いずれの法条の規定にも違反して登録されたものではないから、これを無効とすべきでない。

第5 当審の判断
請求人が本件審判を請求することの利益については、当事者間に争いがないので、本案に入って審理する。
1 本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標と引用商標1ないし6との類否について
(ア)本件商標は、上記第1のとおりの構成からなるところ、構成各文字は同書同大であって、外観上まとまりよく一体的に表され、また、これより生ずると認められる「コンフォートヒルズ」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものである。そして、「COMFORT」及び「コンフォート」の文字部分と「HILLS」及び「ヒルズ」の文字部分との間に1文字分ほどの間隔があるとしても、そのことのみにより、両文字部分が分離して認識され、かつ、本件商標から「コンフォート」の称呼及び「快適さ、安楽」の観念が生ずるということはできない。もとより、本件商標を構成する「COMFORT」の文字は「慰める、安楽、快適」等の意味を有する英語であり、「HILLS」の文字は「小山、丘」を意味する英語「hill」の複数形であって、「コンフォート」及び「ヒルズ」の文字はこれらの表音といえるものではあるが、本件商標全体としては、親しまれた既成の観念を有する熟語を形成するものではなく、一連の一種の造語として認識し把握されるものとみるのが自然である。
そうすると、本件商標は、「コンフォートヒルズ」の一連の称呼のみを生ずるものであり、親しまれた既成の観念を生じ得ないものというべきである。
(イ)この点に関し、請求人は、本件商標中の「HILLS」及び「ヒルズ」の文字がホテルの名称として広く用いられ、役務「宿泊施設の提供」との関係においては出所の識別標識としての称呼及び観念は生じないから、「COMFORT」及び「コンフォート」の文字部分が役務の出所の識別標識として強く支配的な印象を与える旨主張し、証拠を提出している。
しかしながら、提出された証拠を徴しても、「HILLS」及び「ヒルズ」の文字自体が、ホテルの名称として広く一般に用いられているとまでは認めることができないし、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないということはできない。そして、本件商標については、上記のとおり判断するのが相当であるから、請求人の主張は採用することができない。
(ウ)他方、引用商標1ないし4は、別掲(1)ないし(4)のとおり、図形と文字の組合せからなるところ、いずれも、図形部分と文字部分とが常に不可分一体にのみ認識し把握されて親しまれた既成観念が生ずるものとすべき格別の理由は見出し難いものであるから、読み易い文字部分を捉え、これより生ずる称呼をもって取引に資される場合が決して少なくないものとみるのが相当である。そうすると、それぞれの構成文字に相応して、引用商標1は「コンフォートスイーツ」の、引用商標2及び4は「コンフォート」の、引用商標3は「コンフォートイン」又は「コンフォート」の各称呼を生ずるものというべきである。
また、引用商標5の構成中の「HOTEL」の文字は「旅館、ホテル」を意味し、引用商標6の構成中の「INN」の文字は「小旅館、小ホテル」を意味する、いずれも英語であって、指定役務との関係において自他役務の識別力がないか極めて弱いものであることから、引用商標5及び6は、「COMFORT」の文字部分が自他役務の識別標識として機能を果たすものというべきであり、全体として「コンフォートホテル」又は「コンフォートイン」の称呼を生ずるほか、単に「コンフォート」の称呼をも生ずるものといえる。
(エ)しかして、本件商標から生ずる「コンフォートヒルズ」の称呼と、引用商標1ないし6から生ずる「コンフォート」、「コンフォートスイーツ」、「コンフォートイン」又は「コンフォートホテル」の各称呼とは、音構成の差、相違する各音の音質の差等により明瞭に区別することができるものである。
また、本件商標と引用商標1ないし6とは、それぞれの構成に照らし、外観上判然と区別し得る差異を有するものであり、本件商標からは親しまれた既成の観念を生じない以上、観念上両者を比較することもできない。
したがって、本件商標と引用商標1ないし6とは、称呼、外観及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
(2)以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
2 本件商標の商標法第4条第1項第10号該当性について
(1)請求人は、請求人の使用に係る使用商標が需要者間に広く認識されているとして証拠を提出している。
確かに、提出に係る証拠によれば、使用商標がホテルにおける宿泊施設の提供について使用され、ある程度知られていることが認められる。
しかしながら、提出に係る証拠のうち、甲第11号証は、チョイスジャパン(株式会社日本チョイス)の会社概要であり、甲第12ないし第24号証は、その営業に係る各ホテルのパンフレット、甲第4号証は各ホテルの所在地等を示すパンフレットにすぎないし、使用商標が周知著名である旨証明する甲第25号証は、一群の標章及びそれを使用する宿泊施設の一覧を添付するに止まる、形式的なものであって、証明者が如何なる根拠に基づき使用商標の周知著名性を証明しているのか必ずしも明らかでなく、いずれも客観性に乏しいものである。また、甲第3及び第30ないし第42号証は、新聞、雑誌等に取り上げられた記事であるものの、その内容の多くは新規開業等を報道するに止まるものであり、広告宣伝の事実を示すものは数誌に1回掲載された甲第56ないし第58号証のみである。なお、甲第29及び第43ないし第55号証は、上記記事が掲載された新聞、雑誌等について説明するものであり、使用商標に直接関わるものではない。さらに、甲第59及び第60号証は、世界各地に所在する請求人に係るホテルを紹介する英文のパンフレットと認められるものの、これらがどの程度印刷頒布され、宣伝広告等されたかは明らかでない。
そうすると、かかる証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、使用商標が取引者、需要者間に広く認識されていたものということはできない。
その他、使用商標が取引者、需要者間に広く認識されていることを認めるに足る証拠はない。
(2)加えるに、使用商標は、引用商標1ないし6とほぼ同一といい得るものであり、引用商標1ないし6と本件商標とは、上記1(1)のとおり、相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、使用商標も本件商標と類似するものとはいい難い。
(3)以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものではない。
3 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
上述のとおり、本件商標と引用商標1ないし6及び使用商標とは類似することのない別異の商標であって、しかも、使用商標は取引者、需要者間に広く認識されていたものといえないことからすると、本件商標をその指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者が使用商標ないしは申立人を連想、想起するようなことはないというべきであり、該役務が申立人又は同人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれはないものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
4 本件商標の商標法第4条第1項第19号該当性について
請求人は、使用商標が周知著名であること及び使用商標と本件商標が類似することを前提に、本件商標が使用商標の著名性にただ乗り(フリーライド)することを意図し、不正の目的で出願されたものである旨主張するが、使用商標の周知著名性及び使用商標と本件商標との類似性は、上述のとおり、いずれも認められないところであるから、請求人の主張は前提を欠くものであって採用することができない。しかも、請求人は、本件商標の登録出願に関し、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的があることについて具体的に主張立証するところがない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものではない。
5 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効にすべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(1)引用商標1


別掲(2)引用商標2


別掲(3)引用商標3


別掲(4)引用商標4


審理終結日 2007-05-15 
結審通知日 2007-05-18 
審決日 2007-05-30 
出願番号 商願2004-109458(T2004-109458) 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (Y43)
T 1 11・ 25- Y (Y43)
T 1 11・ 222- Y (Y43)
T 1 11・ 26- Y (Y43)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 きみえ 
特許庁審判長 小林 和男
特許庁審判官 津金 純子
石田 清
登録日 2005-06-17 
登録番号 商標登録第4871853号(T4871853) 
商標の称呼 コンフォートヒルズ 
代理人 安村 高明 
代理人 森下 夏樹 
代理人 山本 秀策 
代理人 青木 篤 

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