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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y30
審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効としない Y30
審判 全部無効 称呼類似 無効としない Y30
管理番号 1165939 
審判番号 無効2006-89155 
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-10-26 
確定日 2007-10-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第4904030号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4904030号商標(以下「本件商標」という。)は、「和光殿」の文字を縦書きしてなり、平成17年2月15日に登録出願、第30類「菓子及びパン」を指定商品として、同年10月28日に設定登録されたものである。

2 引用商標
請求人が引用する登録第1923130号商標(以下「引用商標」という。)は、「和光」の文字を横書きしてなり、昭和59年8月9日に登録出願、第30類「菓子、パン」を指定商品として同61年12月24日に設定登録され、その後、指定商品については、平成19年1月17日、第30類「菓子,パン」に書換登録がなされたものである。

3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第58号証を提出した。
(1)請求の利益について
本件商標がその指定商品に使用された場合、請求人が商品「チョコレート、その他の菓子及びパン」等について使用する商標「和光」に化体した業務上の信用が侵されることは明らかであるから、請求人は本件審判を請求することについて利害関係を有するものである。
(2)無効理由について
ア 「和光」の文字は、請求人の取り扱いに係る商品あるいは提供に係る役務を表示する代表的出所標識として、あるいは、請求人の商号の略称を表示するものである。
イ 引用に係る登録商標の概要については、2のとおりである。
ウ 引用商標及び商号の略称の周知著名性について
(ア)請求人の概要
請求人は、昭和7年に時計塔のある建物を建築し、服部時計店(現セイコー株式会社)の小売部門として営業を開始した。その後、昭和22年より、銀座を代表する高級専門店「(株)和光」として小売部門が独立して本格的に営業を開始し、本館においては「室内装飾品・食卓用品・銀器・クロック・ベビー用品」、「ウオッチ・ハンドバック・時計サービスカウンター」、「婦人服・服飾品・婦人靴・香水・化粧品」、「紳士服・服飾品・ワイシャツ・靴・紳士靴・商品券・ロータリー用品」、「ジュエリー・アートサロン」、「和光ホール」、別館においては、「レストラン アルペッジオ」、「グルメ&ケーキシップ」、「ティーサロン」、「メガネショップ」、「ギフトショップ」、「インテリアショップ」、「チョコレートショップ」のほか、「ブティック」の「和光」店として、東京の「広尾店」、「羽田空港店」、「ホテルオークラ店」」、大阪の「大阪店」、「名古屋観光ホテル店」、「ホテルオークラ新潟店」、「札幌パークホテル店」、「松坂屋名古屋店」、「大丸福岡天神店」等において、販売業務を継続し、今日に至る。
(イ)周知・著名性について
(a)請求人は、昭和22年に小売部門を独立し、「(株)和光」として小売業務を開始すると同時に、商品の販売・商品案内及び和光ホールでの企画展示等に、「和光」、「WAKO」の文字からなる商標を、取扱いに係る商品あるいは提供に係る役務を表示する代表的出所標識として、あるいは、商号の略称として、永年に亘り継続して使用してきた結果、本件商標の登録出願前より取引者、需要者間に広く知られ周知、著名になり現在に至っている。
請求人は、小売業務を開始した後、世界の一流品を輸入し、販売するにあたり、「WAKO」の商標を昭和26年8月2日に登録出願をし、昭和27年9月17日に、登録番号第415989号として設定登録された後、指定商品「宝玉およびその模造品、身飾品」に「和光」の商標と共に使用している「WAKO」の商標が防護標章として認められ、本件商標に係る指定商品「第30類 菓子、パン」においても、商標登録第415989号の防護標章登録第29号として認められたものである(甲第32号証、甲第57号証)。
その間、「冊子月刊誌」の発刊及び刊行物、テレビジョンの媒体を通じて広告宣伝に努めてきた。
「WAKO 特集WAKO時計サロン’72」(甲第16号証)創刊した後、「冊子月刊 Chime Ginza」を発行させ、「冊子月刊 Chime Ginza 4月号(昭和55年3月15日発行 第1巻第4号)」(甲第17号証)に続いて、「冊子月刊 チャイム 銀座1985 4月号(昭和60年3月15日発行 第6巻第4号 通巻59号 発行所K&Dコーポレーション(株))」(甲第18号証)、「冊子月刊 チャイム 銀座 1990 4月号(1990年3月15日発行第11巻第4号 通巻114号 発行所K&Dコーポレーション(株)」(甲第19号証)、「冊子月刊 チャイム 銀座 4月号 1995(1995年(平成7年)4月1日発行 第16巻第3号 通巻167号)発行所(株)和光」(甲第20号証)、「冊子月刊 チャイム 銀座 4月号 2000(2000年(平成12年)4月1日発行 第21巻第3号 通巻217号)発行所(株)和光」(甲第21号証)を発行している。
その結果、本件商標の登録出願時、既に日本国内において、「冊子月刊 チャイム 銀座」の雑誌は、通巻260号に達していたこと明らかである。 その後も、「冊子月刊 チャイム銀座2005 4月号(2005年4月1日発行 第26巻第3号 通巻268号)発行所(株)和光」(甲第22号証)、「冊子月刊チャイム 銀座 2005 12月号(2005年12月1日発行 第26巻第10号 通巻275号)発行所(株)和光」(甲第23号証)、「冊子月刊チャイム1・2月号(2006年1月1日発行 第27巻第1号 通巻276号)発行所(株)和光」(甲第24号証)を継続発行している。
「冊子月刊 チャイム銀座」は、和光が「高級専門店」として、商品の販売促進のみならず、「和光ホール」での「絵画、陶芸、版画、写真、伝統工芸」など多岐にわたる分野の日本を代表する作家の作品群を企画展示し、日本文化の発祥基地としての役割を果たしている。
(b)上述したように、請求人が永年その業務に係る商品及び役務、あるいは商号の略称として、「和光」「WAKO」の文字を使用して今日に及んでいる結果、請求人の取扱いに係る商品、提供に係る役務を表示する代表的出所標識として、あるいは、商号の略称として、本件商標の登録出願前より取引者、需要者間に広く知られ周知、著名になり現在に至っているものである。
また、「和光ホール」での日本を代表する作家の作品群を企画展示等に使用してきた結果、一般世人に広く知られるように至っていたものである。
すなわち、請求人は、昭和22年に、「和光」として小売業務を開始し、婦人服、紳士服、ネクタイ、靴、アクセサリー、宝飾品、食器、食品等の商品を扱う高級専門店としての老舗百貨店および和光ホールとして日本においても、世界的にもその名前を知られるようになっていた。
請求人は、「和光」商標の知名度を高めるとともに、商標保護のために、「和光」の文字からなる商標を、昭和59年8月9日に登録出願し、昭和61年12月24日に登録第1923130号として登録設定されたのである。
登録後は、請求人の業務に係る「チョコレート・ケーキ菓子」等の商品に「和光」「WAKO」を使用し販売しているところ、それらの商品に使用されている「和光」「WAKO」の表示は請求人の出所に係る商品を表示するものとして、一般世間の人々に広く知られているばかりか、取引者、需要者間においても、周知著名な商標となっていたものと認識し得るに至っている。
ところで、本件商標の出願日は、平成17年5月15日であるから、引用商標の登録日の昭和61年12月24日より、約19年も後の出願で、わが国において、昭和22年に、「(株)和光」が、「和光」「WAKO」の文字からなるの商標を、取扱いに係る商品、提供に係る役務を表示する代表的出所標識として、あるいは、商号の略称として使用し、また、昭和61年登録以降今日まで、請求人及びその関係者が使用し、請求人の出所に係る商品を表示するものとして広く知られ、識別されているものであることは明らかである。
(c)冊子「月刊 チャイム 銀座」発刊について
甲第16号証の雑誌「WAKO」No.1特集 WAKO時計サロン72 初夏の装い」を発行し、「和光が日本及びヨーロッパ各国の一流宝飾品、工芸品アトリエの協力を得て、独自のアイデアにより創作した時計?」の「WAKO時計サロン 7」特設展示を行っているほか、ハンドバッグ、高級婦人服等のご案内の記事紹介を掲載したのをはじめとして、毎月1回発行させ今日まで継続してきた雑誌を、以下に抜粋したものである。
甲第17号証の「冊子月刊 Chime Ginza 4月号」(昭和55年3月15日発行 第1巻第4号)
甲第18号証の「冊子月刊チャイム 銀座 1985 4月号」(昭和 60年3月15日発行 第6巻台号 通巻59号)
甲第19号証の「冊子月刊 チャイム 銀座 4月号1990」(平成2年3月15日発行 第11巻第4号 通巻114号)
甲第20号証の「冊子月刊 チャイム銀座 4月号1995」(平成7年4月1日発行 第16巻第3号 通巻167号)
甲第21号証の「冊子月刊 チャイム銀座4月号2000」(平成12年4月1日発行 第21巻第3号 通巻217号)
甲第22号証の「月刊チャイム銀座 2005 4月号」(平成17年4月1日発行 第26巻第3号 通巻268号)
甲第23号証の「冊子月刊 チャイム銀座 2005 12月号」(平成17年12月1日発行 第26巻第10号 通巻275号)
甲第24号証の「冊子月刊 チャイム 銀座2006 1-2」(1-2月号 平成18年1月1日発行 第27巻第1号 通巻276号)
(d)請求人は、昭和22年に「(株)和光」として小売業を開始すると同時に、「和光」「WAKO」の文字からなる商標を、取扱い係る商品、提供に係る役務、あるいは、商号の略称として使用し、商品の販売・案内及び役務に係る「和光ホール」の催し等の営業の案内を掲載させた「WAKO No.1特集 時計サロン’72」を創刊させた後に、「冊子月刊 チャイム 銀座」シリーズを毎月1回継続発行させてきた結果、本件商標の登録出願日までには、通巻260号を超えており、30年以上にわたり発刊されている事実からみても、請求人の取扱いに係る商品、提供に係る役務、あるいは、商号の略称として、取引者、需要者間に広く知られ、著名性を獲得しているとみるのが自然である。
(e)本館館内、別館およびブテック所在その他の案内
甲第6号証による「和光 館内ご案内」と「ジャンマリア・プチエラッテイの宝飾品」、「スチューペングラス」、「WAKOブランド時計」、「和光の服飾品」等の案内。
甲第7号証による「和光本館、別館、チョコレートショップ」の案内。
甲第8号証による「和光本館、別館(ティーサロン、グルメ&ケーキショップ、レストラン アルペッジオ、ギフトショップ、メガネショップ)、チョコレートショップ、インテリアショップ」等の案内。
甲第9号証、甲第10号証による「チョコレートショップ」と「チョコレート菓子」の案内。
甲第11号証による 珠ロ光チョコレートサロン」、「和光チョコレートショップ」、「和光グルメ&ケーキショップ」、「和光オンラインストア」と「チョコレート菓子」の案内。
甲第12号証による「和光 2005年ギフトカタログ」の案内。
甲第13号証による「見本カタログ」の案内。
甲第14号証による「掲載商品の申込みハガキ『和光お客様サービス部行』」。
甲第15号証による「和光ダイナースクラブカード」ご入会キャンペーンのご案内。
甲第25号証による「払込取扱票『株式会社和光「チャイム銀座」購読申込書』」。
甲第58号証は、商品包装紙に表わされている「和光」「WAKO」の文字(一部分拡大したもの)。
(f)新聞・雑誌等の記事掲載について
甲第26号証の「サライ 新緑特大号 2003 6/5」(平成15年6月5日発行)には、「銀座大特集 第1部」において、「銀座4丁目の交差点は日本人には憧れの十字路、外国人にとっては世界の銀座のシンボルだ。『和光』の建物の緩い弧を描いた優美な周囲が、?」・・・、「銀座のファッションと和光」また、「銀座大特集 第2部 銀座の老舗巡り」において、「和光 昭和22年創業 眺めるだけでも価値がある万人が認める品揃え」、「『和光』は、明治14年創業の服部時計店(現セイコー)の、小売部門を継承する形で設立された。今では時計はもちろんのこと、宝石、紳士用品、婦人用品、ハンドバッグ、室内装飾品、銀器、食卓用品まで手がける。別館には食品売り場やレストランもある。高級品専門店の代表格である。老舗や、世界的な名店が並ぶ銀座にあって、『和光で買い物をする』ことに格別の意味を感じる人は多い。消費者の憧憬や信頼感は、商品を厳選する、同店の真摯な姿勢から生まれてくるのだろう。」等の写真や記事掲載がされている。
甲第27号証の「サライ 初夏特大号 2004 6/17」(平成16年6月17日発行)には、「銀座 2004年版 丸ごと1冊大特集」の写真に、「銀座4丁目交差点にそびえる、高級品専門店『和光』の建物、銀座のシンボルとして?」、15頁に、小田島「先ほど話した銀ブラ族の友人が和光で腕時計を買うのを見て、自分も時計を買うのなら和光だと。今使っている時計やキーホルダーは和光で買いました。」。
「銀座大特集 第2部 銀ブラで逸品を手に入れる」。「日本を代表する高級品専門店 銀座のシンボル『和光』の歩き方」の項には、「創業以来、『和光』は高級品専門店の姿勢を貫いてきた。」、「本館1階は、『和光』の顔ともいうべきウォッチ(腕時計、懐中時計)売り場。地下1階にはクロック(置き時計、掛け時計)が揃っている。」、本館3階は、「紳士服・紳士用小物・筆記具・男性用化粧品」などの紳士用品売り場、本館地下1階は、「ガラス製品のほか、置き・掛け時計、銀器、食器、写真たてなど、室内やテーブル回りを飾る商品が展示されている。」、本館以外での取扱い商品は、「家具からチョコレートまで、世界の一級品が揃う」とあり、「チョコレートショップ」では、「自家製チョコレート、洋菓子(チョコレートを含む)、和光オリジナルのスープなど販売」、「和光別館ギフト&メガネサロン」では、頂善答品やメガネを扱い」、「並木通売場」では、「家具を中心に、オーダー・カーテンなどを扱う」等の記事・写真が掲載されている。
甲第28号証の「サライ 2004年版 丸ごと1冊大特集 銀座 サライは、こう歩く」別冊付録 携帯版には、「和光本館・和光別館ギフト&メガネサロン・和光並木通売場・和光チョコレートショップ」等の案内記事掲載。
甲第29号証の「サライ 初夏特大号 2005 7/7」(平成17年7月7日発行)には、巻頭対談の中で、服部「服部時計店の創業は、明治14年。当時は、主に時計の販売と修理を行っていました。今は服飾品から食品まで、売り場で扱っている商品が広範囲にわたっていますから、厳密にいえば、ひとつの家業を守る「老舗」の枠には当てはまらないかもしれません。」、 三枝「昔も今も、和光の時計塔は銀座のシンボルですね。」。「銀座大特集 第2部 銀座通11人が案内する」「私が贔屓の『あの店、この逸品』」の項の「案内人・平野次郎・公子さん」ご夫妻の「和光」の食器、服飾品、筆記具などの売場めぐりをされておられるなかで、夫人の公子さんも、銀座は幼い時分からの馴染みの街だ。「母が銀座好きで、私も連れられて、よく買い物に来ていました。そのとき、必ず立ち寄っていたのが、『和光』でした」、「?馴染みの店は、時計塔で有名な『和光』である。」等の記事をも掲載されている。
甲第30号証の「サライ 清夏特大号 2006 8/3」(2006年8月3日発行)には、索引 旧くて新しい街 サライの銀座散歩の「百貨店・高級品専門店で選ぶ『和光 銀座4丁目』が「銀座三越、銀座松坂屋、松屋銀座」百貨店等と並んで記載されている。
巻頭対談「和洋の音が聞こえる街」の中に、「昭和25年、有楽町から銀座、築地を望む。?左上に「和光の時計塔が見える。」の記事と和光の建物が写真で掲載されている。
銀座地区の項に、「高く讐える時計塔は、今も昔も銀座の象徴だ。」といわれている「服部時計店時計塔」の写真と「服部時計店は創業明治14年(1881)。現在、銀座4丁目にある『和光』は、服部時計店(現・セイコー)の小売部門を継承する店。和光蔵」との記事が掲載されている。
「百貨店・高級品専門店で選ぶ」項の「和光」は、「今も昔も銀座で時を刻み続ける『和光』の時計塔。昭和7年、服部時計店(現・セイコー)の本社ビルとして完成した名建築だ。」等の記事、写真が掲載されている。
甲第31号証の2006年版「携帯版 銀座美味処と味土産44軒」に、「和光レストラン アルペッジオ」が、「開業は、昭和63年。」等の記事が掲載されている。
甲第32号証には、「世界の一流品大図鑑」(昭和53年5月20日発行 発行所(株)講談社)の最新世界の一流ショップガイドに、「和光」が「ピュイフォルカ、ラリック、スチューベングラス、ロド」等の高級ブランドを扱っていることが記載されている。
甲第33号証の「世界の一流品大図鑑’78」(昭和53年5月10日発行発行所(株)講談社)、甲第34号証の「世界の一流品大図鑑’81年版」には、「一流品掲載に協力いただいた会社とお店」の項に「和光」が記載されている。
甲第35号証の「文藝春秋 十二月号」(平成17年12月1日発行)には、「エッセイストの阿川佐和子」さんの「銀座和光にて」の文筆には、「子供の頃、和光のことを「服部時計店」と呼んでいた。・・・時計は機能的でシンプルなものにかぎる。?時計以外の和光の品々に目を向けるようをこなったのはそれからずっとあとのことである。?和光の店内には、いつも同じ空気が流れている。?和光でお買い物。」等の記事が掲載されている。
甲第4号証の「貿易乃日本別冊 ‘81/9 SEIKOグループ 世界最強の時計、メカトロ集団めざす」(昭和56年9月1日発行)には、「編集後記」の「セイコーグループ特集」のなかで、「■また一面、セイコーのイメージは銀座の時計台と密接につながっている。いまあの建物は高級専門店「和光」が使っているが、ある意味では百年の伝統によって、もっとふさわしい存在といえるかも知れない。」と記事が掲載されている。
甲第36号証の「銀座の60年」(平成17年12月26日発行 朝日新聞)には、「恐らく日本で一番有名な交差点といえば、和光の大きな時計台が見下ろす東京・銀座4丁目だろう。?シャネルのリシャール・コラス社長は「日本に物件持つなら、銀座4丁目に近い表通りしか考えなかった。文化の伝統を持つ日本で最も価値の高い場所。しかも、アジアから日本を旅する人の多くは銀座に来ます。この地に本拠を置くメッセージは、アジアにも届きますから。」、?エルメスジャポンの斎藤峰明社長も「?文化的伝統と商文化が根付いた地はどこか。それは、銀座しかなかった。」等の記事と「和光本館建物」の写真が掲載されている。
甲第37号証の「和光本館、装い一新へ 75年ぶり全面改修」(平成18年2月15日発行 朝日新聞)には、「東京・銀座の名所の一つで銀座4丁目交差点に面した『和光本館』が、1932(昭和7)年建てられて以来、75年ぶりに全面改修される。?本館の場所には、1895(明治28)年に服部時計店(現セイコー)が初代の時計台を建て、32年に現在の建物になった。47年には同社の小売り部門から和光が独立し、この建物で営業してきた。セイコーは本館近くに『和光並木ビル』を07年9月に新築し、和光が仮移転する。本館の改修は08年10月までに終え、和光が戻る予定。」との記事と和光本館の建物写真が掲載されている。
甲第38号証の朝日新聞(平成18年5月25日発行)には、「和光 ピエール・クンツ ウオッチコレクション」の全面広告が掲載されている。 甲第39号証の朝日新聞(平成18年6月10日発行)には、「和光 グランドセイコー ウオッチコレクション」の広告が掲載されている。
(g)広告等の掲載について
甲第40号証の「銀座百点 1997 No.506号」(平成9年1月1日発行 発行 銀座百店会)に、「麩焼煎餅¥2.000」商品広告掲載。
甲第41号証の「銀座百点 1 2006 No.614」(平成18年1月1日発行 発行 銀座百店会)に、「ぜんざい詰合せ ¥3.150」商品と「和光eLIOカード」広告掲載。
甲第42号証の「百味 1995 1 JAN」(平成7年1月1日発行 発行 東京有名百味会)に、「粒うに(120g)冬期限定品¥5.000」商品広告掲載。
甲第43号証の「百味 2 2006」(平成18年2月1日発行 発行東京有名百味会)に、「チョコレート菓子」商品と「和光」のレストラン広告掲載。
甲第44号証の「婦人画報 2004 11月号」(平成16年11月1日発行 発行所(株)アシエット婦人画報社)に、「『和光』と『ジャンマリア・プチェラッティ』が奏でる二重奏 至福の宝石芸術」の『ジャンマリア・プチェラッティ宝飾展』の開催の「和光ホール」、「ザ・リッツ・カールトン大阪」、「ブティック和光 名古屋観光ホテル店」、「ブティック和光 ホテルオークラ新潟店」の開催予定表記事広告掲載。
甲第45号証の「婦人画報 2005 5月号」(平成17年5月1日発行 発行所(株)アシェット婦人画報社)に、「ハンドバッグ・服飾品」記事広告掲載。
甲第46号証の「婦人画報 2005 12月号」(平成17年12月1日発行 発行所(株)アシェット婦人画報社)に、「銀座『和光』のインテリアショップがオープン」案内と、「バロッサ・バレンティ」の家具展示記事と広告掲載。
甲第47号証の「ミセス 2005 12月号」(平成17年12月7日発行 ミセス通巻第611号)に、「ワイン?シャンパン?オレンジジュース?」商品広告掲載。
(h)上記周知・著名性に関する(a)ないし(g)による資料からも明らかなように、和光における業務内容は、「時計、宝飾品、服飾品、室内用品、美術工芸品、眼鏡、食品」等の販売業務と、「和光ホール」での「絵画、胸芸、版画、写真、伝統工芸」などの多岐にわたる分野の日本を代表する作家群の作品の企画展示を行い、今日に至っている。この間、長年の信用を背景に、そのセンスの良さは高い評価を受けている。
「和光」のショーウインドウ・ディスプレイは、昭和28年から始まり、銀座の顔とまで言われているばかりか、「時計は勿論のこと、宝石、紳士用品、婦人用品、ハンドバッグ、室内装飾品、銀器、食卓用品、食品(チョコレートは専門ショップを設けている。)、レストランもある」高級専門店の代表格とまで認められている。このことは特に、甲第26号証ないし甲第30号証の雑誌「サライ」に、日本を代表する高級専門店、銀座のシンボル「和光」としての周知性・著名性を評価しているものであり、甲第36号証、甲第37号証の朝日新聞の報道においても「東京・銀座の名所の一つで銀座4丁目14交差点に面した『和光本館』が、?」、「1947年には同社の小売り部門から独立し、この建物で営業してきた。」と永年営業を継続してきたことを明らかにしている。
提出の証拠をみれば、「和光」の文字からなる商標は、請求人の取扱いに係る商品、提供に係る役務を表示する代表的出所標識として、あるいは、商号の略称として取引者、需要者間に広く知られ周知、著名になり現在に至っているものとみるのが自然である。
すなわち、株式会社和光は、「和光」と略称され、著名な銀座の高級専門店であることは一般に良く知られているところであり、老舗の商品及び和光ホールの役務を表わすものとして、我が国の取引関係者はもとより、一般需要者の間に広く定着し、愛好されていた事実がみられる。
請求人が取扱商品「時計、宝石類、紳士用品、婦人用品、室内用品、美術工芸品、眼鏡、食品」および 和光ホール」などに使用している代表的商標「和光」又はその商号の略称としても使用している「和光」は、本件商標の登録出願前には、周知著名性を獲得しているものである。
エ 商標法第4条第1項第8号について
本件商標は、甲第1号証に示した構成よりなるところ、不可分一体の既成観念を表わす語として一般に知られ親しまれているとはいい難いもので、これを常に、一連の語としてのみみなければならないという特段の事情はない。
「和光」の文字は、請求人により昭和22年から現在に至るまで50年以上に亘り継続して請求人が取扱商品「時計、宝石類、紳士用品、婦人用品、室内用品、美術工芸品、眼鏡、食品」および「和光ホール」などに使用してきた結果、「和光」が請求人の著名な略称として、また、請求人が販売する商品および提供する役務についての商標として、本件商標の登録出願日以前から、我が国において広く知られ、著名性を獲得している。
しかして、本件商標は、請求人の著名な略称「和光」を含む「和光殿」の文字よりなるものであり、かつ、請求人の承諾を得たものではない。
判決例について
甲第52号証 判決「最高裁平成16年(行ヒ)第343号」判例時報1908。
甲第53号証 判決「東京高裁平成元年(行ケ)第37号」判例時報1338。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものというべきである。
オ 商標法第4条第1項第11号について
(ア)本件商標について
本件商標は、甲第1号証に示した構成よりなるところ、構成中の「殿」の文字は、「他人の氏名・宮名の下に添えて敬意を表わす語、あるいは、人名や官職名などに付けて、敬意を添える語は、「様、殿」などの1つである「殿」として親しまれている語であることは、下記の証拠により明らかである。
甲第48号証「広辞苑 第三版」の「殿」の項に、「他人の氏名・宮名の下に添えて敬意を表わす語」、甲第50号証 「大辞林 第二版 机上版」の「殿」の項に、「人名や官職名などに付けて、敬意を添える。『山田太郎殿』、『部隊長殿』」等の記載例がある。
甲第49号証「誰にも聞けない手紙の書き方」の敬称の項に、「相手に敬意を表わして、名前の下に敬称をつけます。一般の場合は、様、目下の人には、殿、公用には、殿・様」が記載されている。
そうとすれば、本件商標の「和光殿」の文字からは、敬意を表わした「殿」の語を、銀座の高級専門店「和光」の文字に付加したものとして把握し理解される場合も少なくないというべきである。
そして、請求人においても、甲第14号証の「掲載商品の申込みハガキ「和光お客様サービス部行」のほか、「お問い合わせ 和光お客様サービス部」宛に、しばしば「和光」に「殿」、「様」等が見受けられる場合も少なくないのである。
また、一般に商標の構成部分中にこうした敬称の類が使用されている場合に、当該部分は、独立した一語としての機能を有しない接尾語として、識別力を欠くか又は希薄であることが明らかである。
そうすると、取引者・需要者がこれに接するときは、その構成中「和光」の文字部分に最も注意を引かれ、これが「和光」を意味するものと理解するとみるのが自然であるから、本件商標の構成部分中の中心的な自他商品の識別機能を有する要部は、「和光」の文字部分であって、「ワコー」の称呼を生じ、本件商標は、要部において、「ワコー」の称呼、「銀座の高級専門店和光」の観念を生ずるというべきである。
さらに、本件商標の指定商品「菓子及びパン」との関係においては、請求人が、並木通に「和光チョコレートショップ」、別館に「和光グルメ&ケーキショップ」で展示販売を行っていることは、チョコレート・ケーキ菓子に関心を有する需要者ならば、請求人の製造販売に係るものであることを充分に認識することができ、したがって、チョコレート・ケーキ菓子関係業者の間のみならず、チョコレート・ケーキ菓子に関心を有する需要者の間においても、遅くとも本件商標の登録出願日前には請求人の商品であることを示す表示として広く認識されていたと理解するのが自然であるから、本件商標に接する取引者、需要者は、チョコレート・ケーキ菓子の分野において強い商品識別力を有する「和光」の部分に注目して、取引することもあり、その結果、「ワコー」の称呼をも生じ得るものである。
そうとすると、本件商標は、「和光」の文字部分から「ワコー」の称呼及び「銀座の高級専門店和光」の観念を生ずるものである。
(イ)引用商標について
引用商標は、「和光」の文字に相応して、「ワコー」の称呼、「銀座の高級専門店和光」の観念を生ずるものである。
(ウ)本件商標と引用商標との類否についてみるに、本件商標と引用商標とは、「ワコー」の称呼及び「銀座の高級専門店和光」の観念において、類似する商標である。そして、両者の指定商品も同一または類似するものであり、本件商標の登録出願日は、引用商標のそれより後のものであること明らかである。
審決例においても、「?構成中の「さま」の文字は、人名や官職名の下につけて敬意を表す呼び方である接尾語の敬語(様、殿、氏など)の一つである(甲第51号証 審決 平成1年審判第7298号)」とされている。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものというべきである。
カ 商標法第4条第1項第15号について
「チョコレート・ケーキ」に使用する「和光」の商標は、遅くとも本件商標の出願日前には、請求人の業務に係る商品「チョコレート・ケーキ」を表わす商標として取引者・需要者間に広く認識されるに至っていたものである。
本件商標は、不可分一体の既成観念を表わす語として一般に知られ親しまれているとはいい難いものであるから、「和光」と「殿」の二語を結合したものとして把握し認識される場合も少なくない。しかも、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは、同一又は類似する商品である。
そうとすれば、その構成中に「和光」の文字を含んでいる本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「和光」の文字部分に着目して、周知著名となっている引用商標を連想、想起し、該商品が請求人又は請求人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同するおそれがあるものといわざるを得ないものである。
また、甲第54号証ないし甲第56号証の審決も著名な商標を含むものとして、商標法第4条第1項第15号に該当するとしたものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものというべきである。
(4)むすび
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第11号及び同第15号に違反してなされたものであるから、同法第46条第1項の規定によりその登録を無効とすべきである。

4 被請求人の主張
被請求人は、結論と同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べた。
(1)本件商標について
本件商標は、同書同大の漢字「和光殿」を一連に縦書きにして構成したものであり、「ワコーデン」の一連の自然な称呼を生じるものである。また、本件商標は造語であり、特定の意味を意図したものではないが、あえて言えば、神社、仏閣、宮殿等の建物を連想するものである。本件商標は、漢字3文字の少ない語数から構成されており、しかも前述のように同書同大で一連に構成されているため、「和光殿」の商標構成は一体不可分であり、「和光」と「殿」 を分離する格段の理由はない。
(2)商標「和光」の周知・著名性について
ア 請求人は、「和光」の標章が、請求人の名称の略称ないし業務を表示するものとして周知著名である旨を主張するので、まずこの点について反論をする。
イ 請求人は、甲第3号証ないし同第47号証の雑誌、カタログ等を提出して「和光」の商標の著名性を主張している。確かに甲第8号証の解説文中、甲第13号証の挨拶葉書中、甲第14号証、甲第17号証、甲第19号証等の申し込み葉書の宛先、甲第26号証、甲第27号証等の解説文中などに「和光」単独の用語も見られるが、これらは出所識別表示としての使用ではなく、単なる記述表示としての略語にすぎない。
出所識別表示としては「WAKO」単独、「WAKO」と時計塔の図柄の組み合わせ、「和光」と時計塔の組み合わせ等が使用されており、「和光」単独の使用ではない。
仮に「和光」が請求人の名称の略称ないし業務を表示しているとしても、「和光」の文字単独から直ちに請求人の名称を認識させるものではなく、「銀座」という地名ないし景観(例えば請求人の建築物として知られている時計塔)と結びついて、はじめて請求人の略称ないし業務を連想させるものである。
ウ もとより「和光」は「1.自分の知得の光をやわらげ隠して現さぬこと。2.和光同塵の略。3.おだやかな威光」(新村出編 広辞苑第2版)などの意味があり、その訓戒的な意味合いから、多数の会社名、学校名、自治体名等の組織名に使用されている。ちなみに、インターネットで「和光」を検索すると、「和光大学」「和光高校」「和光小学校」「和光市」「和光純薬工業株式会社」「和光設備」「和光メガネ」「和光建設株式会社」「和光株式会社(試験片、精密機械加工、治具製作業)」「和光株式会社(家具製作業)」等々、枚挙に遑がない。これらは、請求人の会社と何ら組織的、経済的関係がなく、また業務上の混同を生じている事実もない。また、これらは組織や業種の一般名称である「大学」「高校」「小学校」「市」「純薬工業株式会社」「設備」「メガネ」「建設株式会社」「株式会社」 を省略し、通常の取引や日常的な称呼として「和光」と略称されることも経験的に知られているところである。
エ このように、「和光」の文字を使用した組織名は全国に多数存在し、単に「和光」だけでは何れの組織を指すのか不明であり、その傾向は首都圏を離れた地方において顕著である。換言すれば、「和光」の文字は、これら多数の他の「和光」の付く組織名を凌駕して、直ちに請求人の名称を連想させるほどには著名性は獲得しておらず、例外的に東京の代表的繁華街である銀座の地名ないし銀座の景観と結びついてはじめて需要者は請求人の名称ないし業務を想起するにすぎないものである。
事実、請求人の提出した上記証拠は、銀座周辺の地図を表示したり(甲第8号証等)、「東京銀座」を付記的に表示したり(甲第13号等)、住所が銀座であったり(甲第14号証、甲第17号証、甲第19号証等)、雑誌に「銀座」の文字や銀座の風景写真を掲載したり(甲第26号証、甲第27号証等)、することにより、「和光」の文字と共に「銀座」の地名や景観を併用するなどして「銀座」をイメージ付ける表示がなされている。また、甲第58号証の包装紙は、使用期間、「和光」の全体の配置位置等が不明であるが、「和光」の文字のほかに、後述の「WAKO」の文字を併用することによって請求人の略称ないし業務を印象付けているものであり、「和光」単独の使用ではない。
オ なお、請求人は、「WAKO」の商標が「菓子、パン」について防護標章登録が認められていることを理由に、あたかも「和光」も著名性を有するかの如く主張をしている。しかし、たとえ「WAKO」が著名性を有するとしても、称呼において類似する「和光」までも著名性を獲得していることにはならない。
カ ちなみに、請求人以外の権利者が所有する「和光」の文字を含む登録商標を検索すると、「和光堂」(登録第4718996号)、「和光食品」 (登録第1725488号)、「和光試薬」(登録第1273031号)、「和光化学」(登録第1311370号)、「和光」(登録第1009288号)、「和光/「WAKO」(登録第0387627号)、「和光機」(登録第1613243号)、等々が多数存在し、「和光」の標章が何ら周知著名性を有しないことを裏付けるものである。
キ 以上のような理由から、「和光」の標章は、それ単独では請求人の名称の略称ないし業務を表すものとして周知著名性を獲得していないことは明らかであり、請求人の主張は理由がない。
(3)商標法第4条第1項第8号について
ア 請求人は、本件商標が請求人の名称の著名な略称「和光」を含んでいる旨を主張する。しかし、本件商標と請求人の略称「和光」とは、後述するように外観、称呼、観念が相違するため同一性がなく、請求人の略称を含むという関係にはない。
たとえ請求人の略称「和光」を含むとしても、上述のように「和光」の文字単独で直ちに請求人の名称の略称であると認識されるほどに需要者間で著名であったという事実はない。
イ なお、甲第52号証、甲第53号証の判例は、いずれの略称も単独で広域的な著名性を獲得しており、また著名な略称と同一か、同一性を失わない一般的な文字を付加した事例であり、本件とは事案が異なるものである。 ウ 以上のような理由から、本件商標は、略称「和光」と同一性はなく、また「和光」の文字単独では請求人の名称である「株式会社和光」の略称として広域的な著名性は獲得していないものであるから、商標法第4条第1項第8号の規定に該当しないことは明らかである。
(4)商標法第4条第1項第11号について
ア 請求人は、本件商標は引用商標と類似し、引用商標の指定商品と同一又は類似するから商標法第4条第1項第11号に該当する旨を主張する。しかし、本件商標と引用商標は、以下の理由により非類似であり、請求人の主張は理由がない。
イ 本件商標は、「和光殿」の漢字3文字を同書同大に一連に縦書きしてなり、「ワコーデン」の一連の称呼を生じるものである。また、「殿」の漢字には「広壮な家屋。高貴な人の住む家または社寺などの建物」(広辞苑 第2版)という意味があることから、「和光殿」全体として神社、仏閣、宮殿等の主として日本の中世の建物を連想するものである。
これに対し、引用商標は「和光」の漢字2文字を同書同大に横書きしてなり、「ワコー」の称呼を生じるものである。また、「和光」は上述したような意味を有するものである。
ウ そこで、本件商標と引用商標を対比すると、本件商標は「和光殿」の漢字3文字が同書同大で一体不可分に構成されているのに対し、引用商標は「和光」の漢字2文字だけから構成されており、両者は構成文字が相違し、字数も少ないことから、需要者が外観上、容易に区別できることは明らかである。また、本件商標は「ワコーデン」の一連の称呼を生じ、「デン」が比較的強く発音されるのに対し、引用商標は「ワコー」の平坦な発音の称呼が生じるだけであり、両者は音数、音質等が相違するため、称呼においても容易に区別することができ、さらに本件商標と引用商標から想起する意味合い、イメージはまったく相違するため、観念的にも容易に区別することができることは明らかである。
エ 請求人は、本件商標の「殿」の文字は敬意を表す語であり、要部は「和光」の文字部分にあるから、引用商標に類似する旨を主張する。
しかし、これは本件商標の文字構成を「和光」と「殿」に強引に分離しての主張であり、明らかに類否判断の手法に誤りがある。すなわち、請求人の主張するように「殿」が敬称であり、「ドノ」と称呼する場合は、名称(略称)と敬称を区分するため、「和光」と「殿」の間に1字程度のスペースを空けるのが一般的である。これに対し、本件商標は「和光殿」の文字が一体不可分に構成されたものであり、「殿」の文字を分離する余地はない。また、その文字構成から「ワコーデン」と一連に称呼されるのが自然であって、「殿」を「和光」と切り離して「ドノ」と称呼するにはあまりにも不自然である。したがって「和光」と「殿」を分離し、「殿」が敬称である旨の請求人の主張は失当である。なお、「和光」の文字単独からは直ちに「銀座の高級専門店和光」を連想するものではなく、せいぜい「銀座」の文字、風景等と結びついてはじめて請求人の経営する店舗等を連想するにすぎない。
オ 甲第51号証の審決例は、「女王」の漢字と「さま」の平仮名から構成されており、両者を明確に分離することができ、しかも「さま」は敬称であることが明らかであるから、本件商標と異なる事例である。
カ 以上のような理由から、本件商標と引用商標は、外観、称呼及び観念が相違しており、非類似商標であるから商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(5)商標法第4条第1項第15号について
ア 請求人は、「和光」の商標が請求人の業務に係る「チョコレート・ケーキ」を表す商標として取引者、需要者間に広く認識されており、「和光」を含む本件商標を指定商品「菓子、パン」に使用するときは、請求人の業務であるかの如く、商品の出所について混同するおそれがある旨を主張する。 しかし、「和光」 はそれ単独で請求人の業務に係る商標として周知著名性を獲得しておらず、また本件商標とは非類似であって、何ら出所の混同を生じないことは明らかであるから、請求人の主張は失当である。
イ すなわち、請求人が提示した証拠の中で、「チョコレート・ケーキ」について掲載された甲第9号証ないし同第12号証、甲第24号証、甲第43号証等を見ても、使用している商標は「WAKO」又は「和光」と時計塔の図柄の組み合わせであり、「和光」の商標を単独で使用したものはない。したがって「和光」単独では周知著名性を獲得するに至っていない。また、本件商標は「和光殿」の文字が一体不可分に構成され、「和光」と「殿」に分離する格段の理由がないこと、したがって商標「和光」と本件商標はまったく非類似であり、本件商標が請求人の略称である「和光」を含むという関係にない。
ウ 以上の理由から、本件商標は、請求人の業務に係る商品と何ら混同を生じるおそれがないから、商標法第4条第1項第15号に該当しないことは明らかである。
(6)結語
以上述べたように本件商標は、商標法第4条第1項第8号、第11号及び第15号の何れにも該当せず、何らの無効理由を有していない。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第8号該当性について
(1)本号の著名性について
他人の名称等の略称が本号にいう「著名な略称」に該当するか否かを判断するにあたっては、常に、問題とされる指定商品又は指定役務の需要者のみを基準とすることは相当でなく、その略称が本人を指し示すものとして一般に受け入れられているか否かを基準として判断されるべきものと解される(参照:平成17年7月22日最高裁判所判決、平成16年(行ヒ)第343号)。
(2)略称「和光」の著名性について
ア 請求人の名称は「株式会社和光」であるから、法人格を表す「株式会社」を除いた「和光」が、請求人の名称との関係で、その略称にあたることは明らかである。
イ 請求人提出の証拠によれば、以下の事実が認められる。
(ア)請求人は、服部時計店(現セイコー株式会社)の小売部門が独立した会社であり、昭和22年より株式会社和光として営業を開始し、東京の銀座4丁目の交差点の店舗において、現在に至るも販売業務を継続していること。
店舗として、東京銀座の「和光本店」のほか、「和光大阪店」、「ブテック和光 名古屋観光ホテル店」、「ブテック和光 ホテルオークラ新潟店」、「ブテック和光 札幌パークホテル店」、「ブテック和光 松坂屋名古屋本店」、「ブテック和光 博多大丸店」等があること(甲第8号証)。
(イ)請求人に係るカタログ「偲ぶ草」(甲第13号証)には、「謹んでお悔やみ申し上げます。」と題した文の文末に「東京銀座」「和光」との表示があり、また、同人に係る商品の申込書(甲第14号証)や同人に係る「チャイム ブティツク申込書」(甲第18号証)には、はがきの宛名を請求人の住所記載とともに「和光」と表示した例があること、また、「和光ダイナーズクラブカード入会案内」(甲第15号証)には、「和光に関する・・」といった表記があること。
なお、「偲ぶ草」(甲第13号証)には、「WAKO」の文字と時計塔のある建物の図とを結合した商標が付されたチョコレートケーキ等の商品が掲載されており、末尾頁に「和光」の文字と時計塔のある建物の図とを結合した商標が表示されていること。
(ウ)請求人に係る商品カタログ(甲第9号証)には、「WAKO」の文字と時計塔のある建物の図とを結合した商標が付されたチョコレートが掲載されていること、同人に係る「和光グルメ&ケーキショップ」のカタログ(甲第10号証)には、「和光」の文字と時計塔のある建物の図とを結合した商標が表示されていること、同人の「和光チョコレートサロン」「和光チョコレートショップ」等に係るカタログ(甲第11号証)には、「和光」の文字と時計塔のある建物の図とを結合した商標が表示され、「WAKO」の文字と時計塔のある建物の図とを結合した商標が付されたチョコレートが掲載されていること。
(エ)請求人に係るカタログ「WAKO 2005 WINTER GIFT CATALOG」(甲第12号証)の裏表紙に、「和光」の文字と時計塔のある建物の図とを結合した商標が表示されていること、また、「WAKO時計サロン’72」(甲第16号証)には、目次の頁に「和光」の文字と時計塔のある建物の図とを結合した商標が表示されていること。
(オ)請求人は、昭和55年3月15日発行のものを始めとして月刊の冊子「チャイム 銀座」を継続して刊行したこと(甲第17号証ないし同第25号証)、そして、その各冊子の中に、請求人の取り扱う各種商品や企画等の紹介を掲載しており、当該冊子には、「WAKO」あるいは「和光ホール」の表示があるが、「和光」自体の表示は見いだせず、ただ、記述中に「和光」の文字が僅かにみられること、また、各冊子の中に、「和光」の文字と時計塔のある建物の図とを結合した商標が表示されていること。
(カ)本件商標の出願前発行の雑誌「サライ」(甲第26号証及び同第29号証)において、「銀座 サライはこう歩く」の特集記事の中で、東京・銀座4丁目にある銀座のシンボルとして、時計塔のある建物とともに「和光」が取り上げられたこと、その中(甲第27号証)において、「銀座のシンボル『和光』の歩き方」という特集項目が組まれたこと、ショップがあることの紹介がされていること、また、本件商標の登録後発行の雑誌「サライ」(甲第27号証及び同第30号証)における特集「サライの銀座散歩」の中でも、「和光」が取り上げられたこと。
(キ)世界の一流品大図鑑(甲第32号証)において、銀座の項に「和光」が挙げられ、これとともに時計塔のある建物の写真が掲載されたこと、また、同図鑑(甲第33号証及び同第34号証)には、「(同図鑑に)ご協力いただいた会社とお店」として他の会社名と同列に「和光」が挙げられたこと。
(ク)文藝春秋(甲第35号証)は、本件商標の登録出願後の発行ではあるが、「銀座和光にて」と題し、銀座和光に絡む子供の頃の想い出話を綴った阿川佐和子の文章が掲載されたこと。
(ケ)朝日新聞(甲第36号証)には、「銀座の60年」という記事の中に「恐らく日本で一番有名な交差点といえば、和光の大きな時計台が見下ろす東京・銀座4丁目だろう。・・」と記載され、併せて同交差点の夜景写真が掲載されたこと、また、同新聞(甲第37号証)には、「和光本館、装い一新へ」との見出しのもと、「東京・銀座の名所の一つで銀座4丁目交差点に面した『和光本館』が、1932(昭和7)年に建てられて以来、75年ぶりに全面改修される。・・・」との記事とともに、時計塔のある建物の写真が掲載されたこと。
(コ)「銀座百点(平成9年1月号)」(甲第40号証)に、「麩煎餅」について「WAKO」及び「和光」の文字と時計塔のある建物の図とを結合した商標を表示した広告が掲載されたこと、「百味(平成7年1月号)」(甲第42号証)に、「粒うに」について「和光」の文字と時計塔のある建物の図とを結合した商標を表示した広告が掲載されたこと、雑誌「婦人画報(2004年11月号)」(甲第44号証)に、「宝石」について「和光」の文字を表示した広告が掲載されたこと、雑誌「婦人画報(2005年5月号)」(甲第45号証)に、ハンドバッグについて「WAKO」及び「和光」の文字と時計塔のある建物の図とを結合した商標を表示した広告が掲載されたこと(なお、広告が掲載されているとして提出された甲第38号証、甲第39号証、甲第41号証、甲第43号証、甲第46号証及び甲第47号証は、いずれも、本件商標の登録時以降に係るものであるから、本件において周知性や著名性を検討するうえで参酌されるべき資料とはなり得ない。)。
ウ 以上のとおり、「和光」は、業務上の宛名等として請求人を指称するために使用されていること、請求人の業務に係る商品や役務を表示する商標として用いられているのは、「和光」と時計塔のある建物の図形と結合した標章であること、さらに、上記の雑誌や新聞の記事において、「和光」として取り上げられているものの、「銀座和光」や「東京銀座の和光」等と紹介され、銀座の地名あるいは時計塔のある建物の写真等と結びついて、「和光」は、場所(銀座の名所)や建物を特定する語(あるいは呼び名)として、一定程度の周知性を具備したものと認め得るが、「和光」自体が請求人を特定し得る固有の略称として一般に受け入れられているとまでは言い得ないというのが相当である。
(3)本号該当について
本件商標は、「和」、「光」及び「殿」の三つの漢字を一連に縦書きし「和光殿」とした構成のものであり、三つの漢字が軽重の差なく表されたその構成態様から、不可分一体の標章として看取されるものというのが相当である。
そして、さらに、「和光」の文字が請求人を指称する略称として一般において受け入れられているか否かについてみると、上記(2)のとおり、証拠を総合しても、「銀座和光」や「東京銀座の和光」として、すなわち、東京・銀座の地名と結合され、あるいは時計塔のある建物の写真や図等と結びつけられて、はじめて請求人に係る名称等として特定がされ得るものとみるのが相当であり、「和光」のみをもって、極めて容易に請求人が判別されるといえる程度に、一般に認識される知名度を有しているとは言い難いものである。
してみれば、本件商標は、その構成中に「和」「光」の文字を有するとしても、他人(請求人)の著名な略称を含む商標には該当しないと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当するものとはいえない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標は、「和光殿」の文字を一連に縦書きした構成のものであるところ、その構成各文字は同じ書体、同じ大きさ、等間隔をもって軽重の差なく一体的に表されている。そして、かかる構成態様の本件商標にあって、これを「和光」部分と「殿」部分とに分離したうえ、「和光」部分において生じる称呼や観念、あるいは印象をもって取引に資されるとすべき格別の理由は見いだせない。
また、構成文字全体から生じる「ワコーデン」の称呼も格別冗長とはいえず、一気に称呼し得るものであるから、本件商標は、構成文字に相応して「ワコーデン」のみの称呼を生じ、一連の造語からなるものとして看取されるというのが相当である。
(2)請求人は、「殿」の文字が他人の氏名・官名の下に添えて敬意を表わす語あり、識別力を欠くか又は希薄であるとして、本件商標は、敬意を表わす「殿」の語を「和光」に付加したに過ぎず、要部たる「和光」から「ワコー」の称呼、「銀座の高級専門店和光」の観念も生ずる旨主張する。
しかしながら、「殿」が「どの」の読みをもって、宛名等において敬意を表すものとして使用される文字(語)ではあるけれども、本件商標は、上記の構成態様からして、構成中の「殿」が「和光」を敬称化する文字として把握されることが決して少なくなく自然であるとみるべき格別の理由はなく、むしろ、各文字が軽重の差なく結合した不可分一体の造語として看取されるのが自然というべきである。そして、「和光」と「殿」とが一体的に結合された「和光殿」からは、「和光殿(ワコーデン)という名称の建造物」を連想させる場合があるというのが相当であって、単に「ワコー」の称呼、「銀座の高級専門店和光」の観念が生ずるとの請求人の主張は、採用することができない。
(3)一方、引用商標は、「和光」の文字を横書きにしてなるものであるから、「ワコー」の称呼が生じるものであり、また、当該構成文字「和光」は既成の語として我が国において一般に用いられる語であるから、その語意により「和光(自分の知徳の光をやわらげ隠して現さないこと。和光同塵の略。おだやかな威光)」の観念を生じるものというのが相当である。
(4)しかして、本件商標の称呼「ワコーデン」と引用商標の称呼「ワコー」とを対比すると、前半で「ワコー」の音を共通にするけれども、後半の「デン」の音の有無の顕著な差異を有しているから、かかる差異により、両者は、それぞれ一連に称呼するときには、判然と区別し得るものである。
また、本件商標と引用商標とは、外観構成において、「殿」の文字の有無という明らかな差異を有しており、両者の外観から受ける印象は全く相違するものというべきである。
さらに、本件商標と引用商標とは、観念において相紛らわしいものと認めることはできない。
(5)したがって、本件商標は、外観、称呼及び観念のいずれからみても、引用商標に類似する商標と判断することはできないから、商標法第4条第1項第11号には該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
証拠によれば、商品「チョコレート、ケーキ」に「WAKO」や「和光」の文字と時計塔のある建物の図を結合した商標が使用されていることを窺い知ることはできるが、その具体的取引の実績等は明らかでなく、標章「和光」が請求人の業務に係る商品「チョコレート、ケーキ」を表わす商標として、本件商標の登録出願時において、取引者・需要者間に広く認識されるに至っていたとまで認めることはできないものである。
また、本件に提出された全証拠によっても、本件商標の登録出願時において、標章「和光」が、請求人の商品や役務を表示する商標として、本件商標の指定商品の需要者の間に周知あるいは著名なものとなっていたと認めるのに充分な証左は見いだせない。そして、「和光」が請求人の著名な略称と認められないのは上記のとおりである。
しかして、本件商標の構成中には、「和」「光」の文字を有するものであるとしても、本件商標が引用商標と類似するものとはいえないこと前記2のとおりであり、本件商標と引用商標あるいは標章「和光」とを更に関連づけてみなければならない特段の理由は見いだせないから、結局、両商標は別異の出所を示すものとして看取されるというべきである。
してみると、本件商標をその登録出願時に指定商品について使用したとしても、需要者が本件商標中の「和光」から引用商標あるいは請求人を想起し連想して、当該商品を請求人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係のある者の業務に係る商品であるかの如くに誤信するとはいえず、その出所を混同するおそれがあったと判断することはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 結語
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第11号及び同第15号のいずれにも該当するものとは認められない。
したがって、本件商標の登録は、前記の各規定に違反してなされたものではないから、同法第46条第1項により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2007-08-03 
結審通知日 2007-08-09 
審決日 2007-08-21 
出願番号 商願2005-11930(T2005-11930) 
審決分類 T 1 11・ 23- Y (Y30)
T 1 11・ 262- Y (Y30)
T 1 11・ 271- Y (Y30)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 真鍋 恵美 
特許庁審判長 田代 茂夫
特許庁審判官 伊藤 三男
岩崎 良子
登録日 2005-10-28 
登録番号 商標登録第4904030号(T4904030) 
商標の称呼 ワコードノ、ワコー、ワコーデン 
代理人 西野 茂美 
代理人 鹿谷 俊夫 
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