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審決分類 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y30
管理番号 1165937 
審判番号 無効2006-89060 
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-05-16 
確定日 2007-10-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第4900246号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4900246号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4900246号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)の構成からなり、平成16年9月24日に登録出願、第30類「鯖寿司」を指定商品として、同17年7月22日に登録査定がなされ、同年10月14日に設定登録されたものである。

第2 請求人の引用する商標
請求人が本件商標の登録の無効の理由に引用する商標(以下「引用商標」という。)は、別掲(2)の構成からなり、請求人が「焼き鯖寿司」の製造販売に際し、その「巻き紙」及び「しおり」に表示して使用しているものである。

第3 請求人の主張の要旨
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第14号証(枝番を含む。)を提出した。
1 無効の理由について
本件商標は、引用商標と類似であり、引用商標を使用している請求人の業務に係る商品と同ー又は類似する商品に使用するものである。
そして、引用商標は、本件商標の登録出願時及び設定登録時において、請求人の業務に係る「焼き鯖寿司」を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。
2 引用商標の周知性について
(1)請求人
請求人は、鮮魚及び水産加工品の販売、飲食店業、寿司の製造販売等を目的とする有限会社であり、平成14年9月20日に設立され、「焼き鯖寿司」を主力商品として製造販売を行なっている(甲第1号証)。
(2)引用商標の使用期間及び態様
「焼き鯖寿司」は、平成14年頃に福井県若狭地方の伝統料理「浜焼き鯖」と寿司とを組み合わせて作られたのが始まりであり、歴史の非常に浅い商品である。
請求人は、当該「焼き鯖寿司」の味に工夫を加え、弁当形式(甲第2号証:以下「請求人商品」という。)にして、平成14年12月にその商品の販売を開始し、現在に至っている。
請求人商品には、「大」及び「小」の2種類があり、「紙製折り箱」に真空パックした「焼き鯖寿司」、「しおり」及び「箸セット(箸、醤油等を袋詰めしたもの)」を収容し、「巻き紙」にて折り箱を組立状態になるように保持したものである(甲第3号証及び甲第4号証)。
そして、「巻き紙」及び「しおり」には、引用商標が表示されている。
(3)引用商標の使用地域
(ア)請求人は、本件商標の登録出願日までの間、以下の各社に請求人商品を販売している。
株式会社JALUXの羽田空港支店、羽田食品企画販売、成田空港支店、関西空港支店、大阪空港支店、名古屋空港支店、大分空港支店、ジェイアール西日本商事株式会社金沢支店、株式会社明治屋(東京都)、株式会社ジャパンフーズシステム(東京都)、国分株式会社(東京都)、国分フードクリエイト株式会社(東京)、株式会社みくら東京営業本部、西野商事株式会社(東京都)、株式会社三越多摩センター店(千葉県)、株式会社沼津西部百貨店(静岡県)、株式会社西武百貨店岡崎店(愛知県)、株式会社ヤスサキ(福井県)、福井県漁業協同組合連合会、福井ワシントンホテル、財団法人福井県産業支援センター、福井中央魚市株式会社、株式会社しゃりー(福井県)及びだるまや西武(福井県)(甲第7号証の1ないし24:上記の各社に対する請求書の一部の写し。)。
(イ)上記、株式会社JALUX羽田空港支店など、各空港支店が設けられている各空港は、日本全国の空港と結ばれていることから、請求人商品の需要者は、全国に及ぶということができる
(ウ)上記、ジェイアール西日本商事株式会社金沢支店は、富山県、石川県及び福井県の駅売店にて、請求人商品を販売しており、駅売店は当該地方の住民だけでなく、当該地方を訪れる旅行者なども利用するものである。
(エ)上記、株式会社ジャパンフーズシステム(東京都)は、全国各地で全国駅弁大会、全国物産展等を開催している。
(オ)上記、国分株式会社(東京都)は、東京都、神奈川県及び千葉県の大丸ピーコック店にて請求人商品を販売している。
(カ)上記、国分フードクリエイト株式会社(東京)は、東京都内のザ・ガーデン各店にて請求人商品を販売している。
(キ)上記、西野商事株式会社(東京都)は、全国各地の食料品店に請求人商品を卸しており、福井県漁業協同組合連合会は、秋田県、山形県、岩手県、福島県、新潟県、千葉県、埼玉県、東京都、神奈川県、長野県、石川県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、奈良県、兵庫県、広島県、鳥取県、島根県、高知県、香川県及び愛媛県のサティ店に請求人商品を卸している。
(ク)請求人は、本件商標の登録出願日以降は、上記(ア)の販売各社に加えて、以下の各社にも請求人商品を販売している。
株式会社JALUXの中部空港支店、食品企画販売部大阪、株式会社クイーンズ伊勢丹(東京都)、株式会社旅食(東京都)、エコール流通グループ株式会社(東京都)、株式会社大丸ピーコック関東仕入れ営業部(東京都)、株式会社西武百貨店舟橋店(千葉県)、栄進フーズ株式会社(千葉県)、トーフリック株式会社(愛知県)、株式会社みくら東京営業所(東京都)・札幌営業所(北海道)・仙台営業所(宮城県)・大阪営業所(大阪府)・福岡営業所(福岡県)、株式会社大丸ピーコック関西仕入れ営業部(大阪府)、株式会社グローバル(京都府)、カネショー株式会社(兵庫県)、日通商事株式会社福井支店(福井県)、杉山商店(福井県)、株式会社レストラン三谷(福井県)、株式会社イベール(福井県)、桶川海産物株式会社(石川県)及び株式会社井筒屋小倉店(福岡県)。
(4)請求人商品の販売数
上記(ア)及び(ク)の各社に対する商品代価支払いの請求書が一部散逸しているため、請求人商品の納入実績を正確に示すことはできないので、業者から請求人会社に納められた「浜焼き鯖寿司ケース」、「巻き紙」及び「しおり」の出荷履歴から、請求人商品の販売数を推測する。
(ア)甲第8号証は、「株式会社大鹿印刷所」から納められた「浜焼き鯖寿司ケース」の出荷履歴を示すものであり、甲第9号証は、「株式会社多田商店」から納められた「巻き紙」及び「しおり」の出荷履歴を示すものである。
これらの出荷履歴から、請求人商品の販売数がその販売開始以来漸次増大して現在に至っており、請求人商品の販売開始から本件商標の登録出願日の前月(平成16年8月)までに、「株式会社大鹿印刷所」から請求人会社に出荷されたケースの数は大小合わせて980610ケース(約100万ケース)であることが分かる。
してみれば、販売開始から本件商標の登録出願日までの請求人商品の販売数は、100万食弱と推測され、少なく見積もっても70万食(平成15年及び平成16年1月から8月27日までの「しおり」枚数が70万枚)と推測される。
また、平成16年度のケース出荷数は、大小合わせて約130万ケース、平成17年度のケース出荷数は、大小合わせて約155万ケースであり、本件商標の登録出願日以降も請求人商品の販売数量が伸びていることがわかる。
(5)新聞・雑誌による紹介記事
請求人商品は、平成14年12月の羽田空港での販売開始後、すぐに人気商品となり、これが契機となって空港の弁当を意味する「空弁(そらべん)」の流行語が生まれている(甲第10号証及び甲第11号証)。
甲第12号証は、請求人商品が紹介された新聞の一覧であり、甲第12号証の1ないし22は、新聞記事の写しである。
請求人商品は、引用商標と共に、日本経済新聞、日経流通新聞MJ、読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、日刊工業新聞、産経新聞といった全国紙によって度々紹介されている。
甲第13号証は、請求人商品が紹介された雑誌の一覧であり、甲第13号証の1ないし18は雑誌の写しである。
甲第14号証は、請求人商品が紹介されたテレビ番組の一覧である。
(6)まとめ
以上のとおり、引用商標は、平成14年12月の販売開始から本件商標の出願時までに、請求人商品を表示するものとして需要者に広く知られていたことは明らかである。
また、本件商標の出願時以降も、請求人商品の販売数は増大し、その後もマス・コミに度々取り上げられていることから、本件商標の設定登録時においても、引用商標が請求人商品を表示するものとして需要者に広く知られていたことは明らかである。
3 本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標とは、別紙に記載のとおり、前者は3行縦書きであるのに対して、後者は5行縦書きである点、前者の1行目が「みち子の」であるのに対して、後者の1行目は「みち子が」である点、前者には、「お届けする」及び「若狭の」がない点で相違するものの、いずれも注意を惹きやすく、かつ印象に残り易いやすい1行目に「みち子」の文字があり、かつ、後半2行が同じ態様であり、しかも、商標を構成する文字を複数行に表した点で一致することから、離隔観察するときは、外観的形象において相紛らわしく、また、前者は「みち子の」に、後者は「みち子が」に要部があるものということができるから、両者は、その要部が実質的に同一であり、いずれも「みち子が提供する浜焼き鯖寿司」という観念を生ずることから、観念において相紛らわしい類似の商標である。そして、本件商標の指定商品は、第30類「鯖寿司」であり、引用商標が表示する請求人の業務に係る商品は「焼き鯖寿司」であるから、本件商標の指定商品は、請求人の業務に係る商品に類似するものである。
4 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものであり、その登録は無効とされるべきである。

第4 被請求人の答弁の要旨
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第5号証を提出した。
1 本件商標の創作と出願の経緯について
(1)本件商標「みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司」は、本件商標権者である櫻川愼一が独自に創作したものである。
櫻川愼一は、平成14年9月に、「焼き鯖寿司」の商品化を企画するに際し、当該商品に付する商標として本件商標を創作したのであるが、本件商標を創作するに当たって、この種の商品に付される商標として料理人の名前が多用され、特に、男性の名前が多い傾向があることに鑑みて、新たに商品化する「焼き鯖寿司」を既存の「焼き鯖寿司」と差別化するため、商標に「浜焼き鯖寿司」の文字とともに、女性の名前を冠することとし、具体的には、「みち子」の名前を含めることとしたものである。
(2)櫻川愼一は、本件商標を創作するのと合わせて、平成14年10月22日に商標登録出願(乙第1号証)を行っている。
この商標登録出願は、櫻川愼一が創作した商標「みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司」中の「浜焼き鯖寿司」の文字部分について使用する権利を占有することを目的とし、櫻川愼一が創作した商標から当該文字部分を抽出して出願したものであるが、商標法第3条第1項第3号及び第4条第1項第16号に該当するとして、平成15年12月10日付で拒絶された。
櫻川愼一は、これに対処するため、平成16年9月24日に、本件商標の商標登録出願を行ったのであるが(乙第2号証)、その際、出願人に、矢部みち子を加えて出願を行った(その時の経緯については、乙第3号証及び乙第4号証参照)。
なお、本件商標権者の矢部みち子が本件商標について商標登録を受けることに明確な意志があったことは、本件商標に係る平成17年5月18日付意見書の内容からも明らかである(乙第2号証)。
2 引用商標の周知性について
請求人は、引用商標は本件商標の登録出願時及び設定登録時において、請求人商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている旨主張している。
しかしながら、上記1(2)で述べたとおり、本件商標は、請求人の業務に係る商品「焼き鯖寿司」の販売が開始される平成14年12月より前に、本件商標権者の櫻川愼一によって創作され、商願2002一89254号(乙第1号証)の登録出願日である平成14年10月22日に実質的に商標登録出願されていたものとみなすことができるものである。
これに従えば、引用商標は、本件商標の商標登録出願時において、請求人商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたとはいえず、商標法第4条第1項第10号に該当しないことは明白である。
また、引用商標の周知性についての判断時期を、仮に、本件商標の現実の出願日である平成16年9月24日に置いたとしても、当該時点において、請求人商品は、空港の売店等極めて限られた場所でしか販売されておらず(乙第5号証)、販売数量自体この種の商品(弁当)としては決して多くの量とはいえないこと、さらに、商品の性格上、その場で消費されることが多く、需要者の間に商標が浸透しにくいこと等の点を勘案すると、引用商標が需要者の間に、請求人商品を表示するものとして広く認識されていたとは到底いいえず、商標法第4条第1項第10号及び第46条第1項第1号に規定する無効の要件を満たしていないということができる。
3 商標「みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司」が他人の未登録商標であることについて
商標法第4条第1項第10号の趣旨は、「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして・・・」と規定されていることからも明らかなとおり、一定の信用を蓄積した他人の未登録有名商標の既得の利益を保護することにある。
しかしながら、上記したとおり、本件商標「みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司」は、請求人の業務に係る商品「焼き鯖寿司」の販売が開始される平成14年12月より前に、本件商標権者の櫻川愼一によって創作された櫻川愼一本人の商標であり、請求人は、本件商標の単なる使用者にすぎない。
すなわち、引用商標は、本件商標権者の櫻川愼一によって創作された本件商標そのものであって、他人の未登録商標には該当しない。
したがって、請求人の主張する請求の理由は、商標法第4条第1項第10号及び第46条第1項第1号に規定する無効の要件を満たすものではなく、その前提において失当である。
4 むすび
以上のとおり、請求人の主張する請求の理由及び提出された証拠は、商標法第4条第1項第10号及び第46条第1項第1号に規定する無効の要件を満たすものでないことから、本件審判の請求は成り立たないものである。

第4 当審の判断
請求人は、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当する旨主張しているので、この点について判断する。
1 引用商標の周知性について
(1)甲各号証によれば、以下の事実が認められる。
(ア)請求人は、平成14年9月20日に設立され、「焼き鯖寿司」を主力商品として製造販売している会社であるところ(甲第1号証:履歴事項全部証明書)、請求人商品は、平成14年12月に発売が開始されたものである。
また、請求人商品の開発の経緯は、甲第10号証(日経WOMAN、2005年1月号)から、請求人会社の取締役であった「矢部みち子」が日本航空(JAL)グループの商社JALUX(ジャルックス)へ商談を持ち込んだことに始まり、JALUX(ジャルックス)の担当者と共同して企画・開発を行い、鯖寿司のレシピについては、「矢部みち子」手製のものを踏襲し、ネーミングについてはブランドを意識して、製作者である「矢部みち子」の名前を前面に出して命名されたものであること等を推認することができる。
(イ)請求人は、本件商標の登録出願日前に、株式会社JALUXの羽田空港支店、羽田食品企画販売、成田空港支店、関西空港支店、大阪空港支店、名古屋空港支店、大分空港支店、ジェイアール西日本商事株式会社金沢支店、株式会社明治屋(東京都)、株式会社ジャパンフーズシステム(東京都)、国分株式会社(東京都)、国分フードクリエイト株式会社(東京)、株式会社みくら東京営業本部、西野商事株式会社(東京都)、株式会社三越多摩センター店(千葉県)、株式会社沼津西部百貨店(静岡県)、株式会社西武百貨店岡崎店(愛知県)、株式会社ヤスサキ(福井県)、福井県漁業協同組合連合会、福井ワシントンホテル、財団法人福井県産業支援センター、福井中央魚市株式会社、株式会社しゃりー(福井県)及びだるまや西武(福井県)で、「巻き紙」及び「しおり」に引用商標を付した請求人商品を販売している(甲第7号証の1ないし24)。
(ウ)「株式会社大鹿印刷所」から請求人に納められた「浜焼き鯖寿司ケース」(甲第8号証)及び「株式会社多田商店」から請求人に納められた「巻き紙」及び「しおり」の出荷履歴(甲第9号証)からみれば、請求人商品は、その販売開始から本件商標の登録出願日までに、少なく見積もっても70万食(平成15年及び平成16年1月から8月27日までのしおり枚数が約70万枚)は販売されていたものと推測され、また、平成16年度のケース出荷数が大小合わせて約130万ケースであり、平成17年度のケース出荷数が大小合わせて約155万ケースであることからみれば、本件商標の登録出願日以降も請求人商品の販売数量は引き続き伸張していたものということができる。
そして、このことを裏付けるように、「『みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司(さばずし)』・・・三年前の登場以来、羽田空港など国内主要空港で売られ、『空弁』という言葉さえ生んだ全国区のヒット商品だ。・・・空弁を考案したのは『海の恵み』の矢部みち子社長。『福井のサバ』を一気に全国に知らしめた。・・・」(甲第11号証:日刊県民福井、2006年1月6日号)、「『みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司(さばずし)』(大九百円、小六百円)を販売したところ、『あっさりしてておいしい』と人気爆発。今年十月の月間売り上げは一万二百三十一個を数えた。」(甲第12号証の2:日本経済新聞、2003年12月6日朝刊)、「羽田空港の売店に並ぶ空弁の売れ筋を販売額でランキングした。・・・1位の『みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司』は2002年12月に発売され、空弁ブームの火付け役になった。」(甲第12号証の4:日経流通新聞MJ(日経テレコン21)、2004年1月17日)、「羽田空港のターミナルビル2階。搭乗口近くの売店は昼時になると、人気の弁当を目当てに訪れる客でごった返す。その弁当は、空弁ブームの火付け役『みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司』・・・・1日50個売れればヒットの弁当市場で、400個が午後7時には売り切れる。」(甲第12号証の5:朝日新聞、2004年1月21日朝刊)「驚異的な売り上げの『みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司』」(甲第12号証の7:夕刊フジ、平成16年1月30日)等々のように、請求人商品の好調振りが各種新聞、雑誌において紹介されている(なお、甲号証の中には、本件商標の登録出願日以降に発行された新聞・雑誌も含まれているが、それらにも本件商標の登録出願日以前における引用商標に係る「浜焼き鯖寿司」についての事情が記載されており、その内容は、引用商標の周知性を把握するに十分役立つものである。)。
(2)まとめ
以上の事実を総合してみれば、引用商標は、請求人商品を表す商標として、本件商標の登録出願時(平成16年9月24日)においては既に、我が国におけるこの種商品(弁当、中でも、「空弁」と呼ばれている主に空港で販売される弁当)の取引者・需要者の間において広く知られていたものということができる。
そして、その周知性は、その後、本件商標の登録査定時(平成17年8月24日)まで継続していたものと認められる。
2 本件商標と引用商標商標の類否について
本件商標は、別掲(1)に示したとおり、「みち子の」、「浜焼き」、「鯖寿司」の文字を筆書き風の文字をもって3行に縦書きした構成からなるものであるのに対して、引用商標は、別掲(2)に示したとおり、「みち子が」、「お届けする」、「若狭の」、「浜焼き」、「鯖寿司」の文字を筆書き風の文字をもって5行に縦書きした構成からなるものであるところ、いずれも看者の注意を惹きやすく、かつ印象に残り易いやすい1行目に「みち子」の文字があり、かつ、後半2行が同じ態様であり、しかも、商標を構成する文字を段差を設けて複数行に表した点でも一致していることから、両商標は、外観から受ける印象において相紛らわしいものということができる。
また、「みち子の」と「みち子が/お届けする」の文字からは、いずれも「みち子が提供する」といった程度の意味合いを理解・認識させるものであり、「若狭の」の文字は、サバ文化の発達した福井県の西部地方の旧国名を表したものであって、産地を強調したにすぎないものであるから、両商標は、全体として、「みち子が提供する(若狭の)浜焼き鯖寿司」の観念を共通にするものということができる。
してみれば、本件商標と引用商標とは、その構成の中にあって、看者の注意を最も強く惹き、出所表示力を最も強く発揮するものと認められる「みち子」の文字を共通にし、しかも、全体の外観から受ける印象及び全体の構成から把握される観念を共通にするものであるから、両商標は、互いに彼此相紛らわしい類似の商標といわなければならない。
そして、本件商標の指定商品は「鯖寿司」であり、引用商標の使用に係る商品は「浜焼き鯖寿司」であるから、両者は、同一又は類似の商品について使用するものである。
3 被請求人の主な主張について
(1)本件商標は、本件商標権者の櫻川愼一が独自に創作したものである旨の主張について
請求人商品が開発された当時、櫻川愼一が、請求人の以前の名称である「有限会社ボース・クリエーション」の代表取締役であったことは認めるられる。
しかしながら、甲第10号証には、「みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司」は、平成14年(2002年)10月に、食品加工業社「海の恵み」を経営する「矢部みち子」が日本航空(JAL)グループの商社JALUX(ジャルックス)へ商談を持ち込んだことに始まり、JALUX(ジャルックス)の担当者と共同して企画・開発を行い、ネーミングについては、ブランドを意識して製作者である「矢部みち子」の名前を前面に出して命名されたものである旨記載されている。
当該記事からみれば、該商品の企画・開発を直接担当したのは、取締役の「矢部みち子」であったということができるが、それは、「有限会社ボース・クリエーション」としての行為とみるべきであり、その成果は個人としての矢部みち子に帰属するものでもなければ、代表取締役であった櫻川愼一に帰属するものでもなく、「有限会社ボース・クリエーション」帰属するというべきである。
そして、甲号証及び乙号証のいずれをみても、櫻川愼一が本件商標を創作したものすべき証拠は見当たらない。
したがって、この点についての被請求人の主張は採用できない。
(2)被請求人である櫻川愼一が創作した商標「みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司」中の「浜焼き鯖寿司」の文字部分について、櫻川愼一は平成14年10月22日に商標登録出願(商願2002一89254)をしており、本件商標は、実質的には、上記出願の出願時に商標登録出願されていたものとみなすことができるものであるから、引用商標の周知性は、平成14年10月22日の時点において判断されるべきである旨の主張について
櫻川愼一が平成14年10月22日に出願したのは、「浜焼き鯖寿司」の文字からなる商標であるから、本件商標の登録要件の判断時点を「浜焼き鯖寿司」の文字からなる商標の登録出願日に遡及させる理由は存しない。
したがって、この点についての被請求人の主張は採用できない。
(3)引用商標の周知性についての判断時期を本件商標の現実の出願日である平成16年9月24日においたとしても、請求人の業務に係る「浜焼き鯖寿司」は、空港の売店等極めて限られた場所でしか販売されておらず、販売数量も決して多くはなく、商品の性格上、その場で消費されることが多く、需要者の間に商標が浸透しにくいことから、引用商標が請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたとはいえない旨の主張について
上記したとおり、請求人商品は、その販売開始から本件商標の出願日(平成16年9月24日)までに、少なく見積もっても70万食が販売されたものと推測されるものである。そして、請求人商品は、日本全国の空港と結ばれている株式会社JALUX羽田空港支店を始めとする多くの空港支店において販売されているばかりでなく、全国各地で全国駅弁大会、全国物産展等を開催している株式会社ジャパンフーズシステム(東京都)、全国各地の食料品店に請求人商品を卸している西野商事株式会社(東京都)や秋田県、新潟県、東京都、長野県、石川県、愛知県、京都府、大阪府、広島県、島根県、高知県等々のサティ店に請求人商品を卸している福井県漁業協同組合連合会等々にも販売されており、請求人商品の需要者は、全国に及んでいるものということができる。そして、例えば、前出の甲第12号証の7(夕刊フジ2004年1月30日)には、「・・・『これよ、これこれ』。羽田空港のゲート内にあるJALグループのJALUXが展開するショップ『BLUE SKY』を訪れる人から、しばしばこんな声が聞かれている。お目当ての商品は『みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司』。・・・『職場や家族のお土産に、出張前に10個ぐらいまとめてとりおきを頼んで、戻ってきてから買っていくお客さんも多い』というから、その人気ぶりもうなずける。・・・」旨記載されており、また、甲第13号証の10(女性自身2004年4月27日号)には、「『みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司』一昨年の発売開始以来、空前の大ヒット。現在、1日千個を売り上げる。なかには飛行機に乗る用もないのにわざわざタクシーで買いに来る人も(羽田空港)」と記載されている。
これらの事実からみれば、引用商標が本件商標の出願日において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたとはいえない旨の被請求人の主張は採用できない。
(4)請求人が引用している「みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司」なる商標は、本件商標権者の櫻川愼一によって創作された本件商標そのものであって、他人の未登録商標には該当しないから、商標法第4条第1項第10号違反を理由とする本件審判請求は、その前提において失当である旨の主張について
前記のとおり、「みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司」の商標を櫻川愼一が創作したものであることを認めるに足る証拠はないから、この点についての被請求人の主張は採用できない。
4 むすび
以上を総合勘案してみれば、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間において広く認識されている商標と類似の商標であって、その商品又はこれに類似する商品について使用をするものといわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲


(1)本件商標




(2)引用商標




審理終結日 2006-12-18 
結審通知日 2006-12-22 
審決日 2007-01-18 
出願番号 商願2004-87474(T2004-87474) 
審決分類 T 1 11・ 25- Z (Y30)
最終処分 成立  
前審関与審査官 林 栄二田中 幸一 
特許庁審判長 高野 義三
特許庁審判官 井岡 賢一
山口 烈
登録日 2005-10-14 
登録番号 商標登録第4900246号(T4900246) 
商標の称呼 ミチコノハマヤキサバズシ、ミチコノ、ミチコ、ハマヤキサバズシ、ハマヤキ 
代理人 前田 弘 
代理人 竹内 宏 
代理人 今江 克実 
代理人 竹内 祐二 
代理人 森 治 
代理人 嶋田 高久 

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