• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y30
管理番号 1165915 
審判番号 無効2006-89061 
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-05-16 
確定日 2007-10-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第4906987号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4906987号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4906987号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成16年9月24日に登録出願、第30類「鯖寿司」を指定商品として、同17年8月24日に登録査定がなされ、同年11月11日に設定登録されたものである。

第2 請求人の引用する商標
請求人が本件商標の登録の無効の理由に引用する商標は、別掲(2)のとおりの構成からなる商標(以下「引用商標」という。)であり、請求人が「焼き鯖寿司」の製造・販売に際し、その「巻き紙」及び「しおり」等に表示して使用しているものである。

第3 請求人の主張の要旨
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第14号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)本件商標は、引用商標に類似し、引用商標を使用している請求人の業務に係る商品と同ー又は類似する商品に使用するものである。そして、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録時において、請求人の業務に係る商品「焼き鯖寿司」を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。
(2)引用商標の周知性
請求人は、鮮魚及び水産加工品の販売、飲食店業、寿司の製造販売等を目的とする有限会社であり、平成14年9月20日に設立され、焼き鯖寿司を主力商品として製造販売を行っている(甲第1号証;登記簿謄本)。
焼き鯖寿司は、平成14年頃に福井県若狭地方の伝統料理「浜焼き鯖」と寿司とを組み合わせて作られたのが始まりであり、歴史の非常に浅い商品である。
(ア)引用商標の使用態様
請求人は、この焼き鯖寿司の味に工夫を加え、甲第2号証(請求人商品の外観写真:以下「請求人商品」という。)に示すとおり、弁当形式にして販売している。請求人商品には、「大」及び「小」の2種類があり、甲第3号証及び甲第4号証に示すように、紙製折り箱に真空パックした「焼き鯖寿司」、しおり及び箸セット(箸、醤油等を袋詰めしたもの)を収容し、巻き紙にて折り箱を組立状態になるように保持したものである。そして、巻き紙及びしおりには、引用商標「みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司」が表示されている。
(イ)引用商標の使用期間及び使用地域
請求人は、請求人商品の販売を平成14年12月に開始し、その巻き紙及びしおりに引用商標を付して使用して現在に至っている。
請求人は、本件商標の出願日(平成16年9月24日)までの間、以下の各社に請求人商品を販売している。
株式会社JALUXの羽田空港支店、羽田食品企画販売、成田空港支店、関西空港支店、大阪空港支店、名古屋空港支店、大分空港支店、ジェイアール西日本商事株式会社金沢支店、株式会社明治屋(東京都)、株式会社ジャパンフーズシステム(東京都)、国分株式会社(東京都)、国分フードクリエイト株式会社(東京)、株式会社みくら東京営業本部、西野商事株式会社(東京都)、株式会社三越多摩センター店(千葉県)、株式会社沼津西部百貨店(静岡県)、株式会社西武百貨店岡崎店(愛知県)、株式会社ヤスサキ(福井県)、福井県漁業協同組合連合会、福井ワシントンホテル、財団法人福井県産業支援センター、福井中央魚市株式会社、株式会社しゃりー(福井県)及びだるまや西武(福井県)であり、甲第7号証の1ないし24は、上記の各社に対する請求書の一部の写しである。
そして、株式会社JALUX羽田空港支店を始めとする上記の各空港支店が設けられている各空港は、日本全国の空港と結ばれていることから、請求人商品の需要者は、全国に及ぶということができるのであり、ジェイアール西日本商事株式会社金沢支店は、富山県、石川県及び福井県の駅売店にて、請求人商品を販売しており、駅売店は当該地方の住民だけでなく、当該地方を訪れる旅行者等も利用するものである。
また、株式会社ジャパンフーズシステム(東京都)は、全国各地で全国駅弁大会、全国物産展等を開催し、請求人商品を販売している。国分株式会社(東京都)は、東京都、神奈川県及び千葉県の大丸ピーコック店にて請求人商品を販売しており、国分フードクリエイト株式会社(東京)は、東京都内のザ・ガーデン各店にて請求人商品を販売している。西野商事株式会社(東京都)は全国各地の食料品店に請求人商品を卸しており、福井県漁業協同組合連合会は、秋田県、山形県、岩手県、福島県、新潟県、千葉県、埼玉県、東京都、神奈川県、長野県、石川県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、奈良県、兵庫県、広島県、鳥取県、島根県、高知県、香川県及び愛媛県のサティ店に請求人商品を卸している。
更に、請求人は、本件商標の出願日以降は、上記の各社に加えて、以下の各社にも請求人商品を販売している。
株式会社JALUX中部空港支店、株式会社JALUX食品企画販売部大阪、株式会社クイーンズ伊勢丹(東京都)、株式会社旅食(東京都)、エコール流通グループ株式会社(東京都)、株式会社大丸ピーコック関東仕入れ営業部(東京都)、株式会社西武百貨店舟橋店(千葉県)、栄進フーズ株式会社(千葉県)、トーフリック株式会社(愛知県)、株式会社みくら東京営業所(東京都)・札幌営業所(北海道)・仙台営業所(宮城県)・大阪営業所(大阪府)・福岡営業所(福岡県)、株式会社大丸ピーコック関西仕入れ営業部(大阪府)、株式会社グローバル(京都府)、カネショー株式会社(兵庫県)、日通商事株式会社福井支店(福井県)、杉山商店(福井県)、株式会社レストラン三谷(福井県)、株式会社イベール(福井県)、桶川海産物株式会社(石川県)及び株式会社井筒屋小倉店(福岡県)。
(ウ)請求人商品の販売数
上記の各社に対する商品代価支払いの請求書が一部散逸しているため、請求人商品の納入実績を正確に示すことはできないので、業者から請求人会社に納められた浜焼き鯖寿司ケース、巻き紙及びしおりの出荷履歴から、請求人商品の販売数を推測する。
甲第8号証は、株式会社大鹿印刷所から納められた浜焼き鯖寿司ケースの出荷履歴を示すものであり、甲第9号証は、株式会社多田商店から納められた巻き紙及びしおりの出荷履歴を示すものである。
上記ケース、巻き紙及びしおりの出荷履歴から、請求人商品の販売数がその販売開始以来漸次増大して現在に至っており、請求人商品の販売開始から本件商標の出願日(平成16年9月24日)の前月(平成16年8月)までに、株式会社大鹿印刷所から請求人会社に出荷されたケースの数は大小合わせて980610ケース(約100万ケース)である。
以上から、請求人商品の販売開始から本件商標の出願日(平成16年9月24日)までの販売数は、100万食弱と推測され、少なく見積もっても70万食(平成15年及び平成16年1月から8月27日までのしおり枚数が70万枚)と推測される。また、平成16年度のケース出荷数は、大小合わせて約130万ケース、平成17年度のケース出荷数は、大小合わせて約155万ケースであり、本件商標の出願日以降も請求人商品の販売数量が伸びていることがわかる。
(エ)マス・コミによる紹介
請求人商品は、平成14年12月の羽田空港での販売開始後直ぐに人気商品となり、これが契機となって、空港の弁当を意味する「空弁(そらべん)」の流行語が生まれている(甲第10号証:日経ウーマン2005年1月号、甲第11号証:日刊県民福井2006年1月6日号)。
甲第12号証は、請求人商品が紹介された新聞の一覧であり、甲第12号証の1ないし22は、新聞記事の写しである。請求人商品は、引用商標と共に、日本経済新聞、日経流通新聞MJ、読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、日刊工業新聞、産経新聞といった全国紙によって度々紹介されている。
甲第13号証は、請求人商品が紹介された雑誌の一覧であり、甲第13号証の1ないし18は雑誌の写しである。
甲第14号証は、請求人商品が紹介されたテレビ番組の一覧である。
(オ)以上のとおり、平成14年12月の販売開始から本件商標の出願時までに、引用商標は、請求人の業務に係る商品「焼き鯖寿司」を表示するものとして需要者に広く知られていたことは明らかである。
また、本件商標の出願時以降も、請求人商品の販売数は増大し、その後もマス・コミに度々取り上げられていることから、本件商標の登録時においても、引用商標が請求人の業務に係る商品「焼き鯖寿司」を表示するものとして需要者に広く知られていたことは明らかである。
(3)商標の同一・類似性及び商品の同一・類似性
本件商標と引用商標とは、別紙に記載のとおりの構成からなるところ、両商標は、前者の4行目が「昆布〆」であるのに対して、後者の4行目が「浜焼き」である点において相違するのみであり、残る1ないし3?5行目の文字構成が同じであることから、外観的形象において相紛らわしく、また、いずれも、「みち子がお届けする若狭の鯖寿司」という観念を生ずることから、観念においても相紛らわしい類似の商標である。そして、本件商標の指定商品は、第30類「鯖寿司」であり、引用商標が表示する請求人の業務に係る商品は「焼き鯖寿司」であるから、本件商標の指定商品は、請求人の業務に係る商品に類似するものである。
(4)むすび
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものであり、その登録は無効とされるべきである。

第4 被請求人の答弁の要旨
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし同第5号証を提出した。
(1)本件商標の創作と出願の経緯
(ア)本件商標「みち子がお届けする若狭の昆布〆鯖寿司」及び「みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司」の商標は、本件商標権者の櫻川愼一が独自に創作したものである。
櫻川愼一は、平成14年9月に、「焼き鯖寿司」の商品化を企画するに際し、当該商品に付する商標として本件商標及び「みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司」の商標を創作したのであるが、これらの商標を創作するに当たって、この種の商品に付される商標として料理人の名前が多用され、特に、男性の名前が多い傾向があることに鑑みて、新たに商品化する「焼き鯖寿司」を既存の「焼き鯖寿司」と差別化するため、商標に「浜焼き鯖寿司」等の文字とともに、女性の名前を冠することとし、具体的には、「みち子」の名前を含めることとしたものである。
(イ)櫻川愼一は、本件商標及び「みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司」を創作するのと合わせて、平成14年10月22日に商標登録出願(乙第1号証:商願2002-89254号)を行っている。
この商標登録出願は、櫻川愼一が創作した「みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司」の商標中の「浜焼き鯖寿司」の文字部分について使用する権利を占有することを目的とし、上記櫻川愼一が創作した商標から当該文字部分を抽出して出願したものであるが、商標法第3条第1項第3号及び第4条第1項第16号に該当するとして、平成15年12月10日付で拒絶された。
(ウ)これに対処するため、櫻川愼一は、平成16年9月24日に、「みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司」についての商標登録出願(商願2004-87470号 乙第2号証)及び本件商標の商標登録出願を行ったのであるが、その際、出願人に、矢部みち子を加えて出願を行った(その時の経緯については、乙第3号証及び乙第4号証参照)。
なお、本件商標権者の矢部みち子が本件商標について商標登録を受けることに明確な意志があったことは、商願2004-87470号(乙第2号証)の平成17年5月18日付意見書の内容及びこれら2件の商標登録出願の経緯からも明らかである。
(2)引用商標の周知性について
請求人は、引用商標が本件商標の登録出願時及び登録時において、請求人の業務に係る商品「焼き鯖寿司」を表示するものとして需要者の間に広く認識されている旨主張している。
しかしながら、上記のとおり、本件商標及び「みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司」の商標は、請求人の業務に係る商品「焼き鯖寿司」の販売が開始される平成14年12月より前に、本件商標権者の櫻川愼一によって創作され、このうち、特に、「みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司」は、商願2002-89254号の出願日である平成14年10月22日に実質的に商標登録出願されていたものとみなすことができるものである。
これに従えば、引用商標は、本件商標の商標登録出願時において、請求人の業務に係る商品「焼き鯖寿司」を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたとはいえず、商標法第4条第1項第10号に該当しないことは明白である。
また、引用商標の周知性についての判断時期を、仮に、本件商標の現実の出願日である平成16年9月24日に置いたとしても、当該時点において、請求人の業務に係る商品「焼き鯖寿司」は、空港の売店等極めて限られた場所でしか販売されておらず(乙第5号証)、販売数量自体この種の商品(弁当)としては決して多くの量とはいえないこと、更に、商品の性格上、その場で消費されることが多く、需要者の間に商標が浸透しにくいこと等の点を勘案すると、引用商標が需要者の間に、請求人の業務に係る商品「焼き鯖寿司」を表示するものとして広く認識されていたとは到底いいえず、商標法第4条第1項第10号及び第46条第1項第1号に規定する無効の要件を満たしていないということができる。
(3)商標「みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司」が他人の未登録商標であることについて
商標法第4条第1項第10号の趣旨は、「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして・・・」と規定されていることからも明らかなとおり、一定の信用を蓄積した他人の未登録有名商標の既得の利益を保護することにある。
しかしながら、上記したとおり、本件商標「みち子がお届けする若狭の昆布〆鯖寿司」及び請求人が使用する「みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司」の商標は、請求人の業務に係る商品「焼き鯖寿司」の販売が開始される平成14年12月より前に、本件商標権者の櫻川愼一によって創作された櫻川愼一本人の商標であり、請求人は、単なる使用者にすぎない。
すなわち、引用商標は、本件商標権者の櫻川愼一によって創作された登録第4906986号商標「みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司」そのものであって、他人の未登録商標には該当しない。
したがって、請求人の主張する請求の理由は、商標法第4条第1項第10号及び第46条第1項第1号に規定する無効の要件を満たすものではなく、その前提において失当である。
(4)むすび
以上のとおり、請求人の主張する請求の理由及び提出された証拠は、商標法第4条第1項第10号及び第46条第1項第1号に規定する無効の要件を満たすものでないことから、本件審判の請求は成り立たないものである。

4 当審の判断
請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当する旨主張しているので、この点について判断する。
(1)引用商標の周知性について
請求人の提出に係る甲各号証によれば、以下の事実を認めることができる。
(ア)請求人の業務及び引用商標に係る焼き鯖寿司開発の経緯に関して
(a)甲第1号証(履歴事項全部証明書)によれば、請求人は、平成14年9月20日に設立され、鮮魚及び水産加工品の販売業、飲食店業、寿司の製造販売業等を目的とする会社であること。
(b)甲第11号証(日刊県民福井2006年1月6日号)及び甲第13号証の4(小学館発行「DIME」2003年10月16日号)等によれば、焼き鯖寿司は、福井県若狭地方の伝統料理「浜焼き鯖」と寿司とを組み合わせて作られたのが始まりであって、歴史の浅い商品であり、「若狭の浜焼き鯖寿司」は、福井県で鮮魚商を営んでいた矢部みち子が郷土料理の「焼き鯖」を使った創作寿司として物産展に出品していたものであること。
(c)甲第10号証(日経ウーマン2005年1月号)には、「空港で販売される弁当-通称『空弁(そらべん)』。国内線の機内食廃止の影響で需要が高まり、年を追うごとに種類も豊富になってきている。そんな“空弁ブーム”を牽引するのが『みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司』(製造元・海の恵み)。02年12月の発売以降じわじわと売り上げを伸ばし、今は羽田空港だけで1日約1000食を売る。他の空港も含めると、1日の販売数量は3000食。『みち子?』の発売以前、空港で販売される弁当は『1日40食でヒット』といわれていたそうだから、その反響の大きさがうかがえる。・・・鯖寿司のヒット以降、空港の弁当に注目が集まり、“空弁”という呼び名が生まれた。空港弁当の市場全体の拡充にも貢献した象徴的な商品だ。企画・開発を行ったのが日本航空(JAL)グループの商社で空港内の販売店『BLUE SKY』も運営するJALUX(ジャルックス)の中井弘子さん。福井県で食品加工業社『海の恵み』を経営する矢部みち子さんが、・・・商談を持ち込んだのが02年10月のこと。・・・中井さんが引きつけられたのは矢部さんがお土産にと持参した手作りの『鯖寿司』だった。・・・上司の許可も得て開発がスタート。鯖寿司のレシピについては、矢部さん手製のものを踏襲。・・・ネーミングではブランドを意識して、製作者である矢部みち子さんの名前を前面に出した。・・・。」旨記載されていること。
(イ)請求人商品の販売地域及び販売実績に関して
(a)甲第7号証の1ないし同号証の24によれば、請求人は、04年5月から8月にかけて、株式会社JALUXの羽田空港支店、羽田食品企画販売、成田空港支店、関西空港支店、大阪空港支店、名古屋空港支店、大分空港支店、ジェイアール西日本商事株式会社金沢支店、株式会社明治屋(東京都)、株式会社ジャパンフーズシステム(東京都)、国分株式会社(東京都)、国分フードクリエイト株式会社(東京)、株式会社みくら東京営業本部、西野商事株式会社(東京都)、株式会社三越多摩センター店(千葉県)、株式会社沼津西部百貨店(静岡県)、株式会社西武百貨店岡崎店(愛知県)、株式会社ヤスサキ(福井県)、福井県漁業協同組合連合会、福井ワシントンホテル、財団法人福井県産業支援センター、福井中央魚市株式会社、株式会社しゃりー(福井県)及びだるまや西武(福井県)に請求人商品を販売していたこと。
(b)甲第8号証(株式会社大鹿印刷所から請求人に宛てられた焼き鯖寿司ケースの出荷履歴書)によれば、02年11月21日から本件商標の出願日(平成16年9月24日)の前月までに、ケースの大小合わせて、約98万ケースが株式会社大鹿印刷所から請求人に宛てて出荷されており、その後、本件商標の登録査定日(平成17年8月24日)の前月までに、ケースの大小合わせて、約153万ケースが出荷されていたこと。
(c)甲第9号証(株式会社多田商店から請求人に宛てられた巻き紙及びしおりの出荷履歴書)によれば、巻き紙については、平成15年から本件商標の出願日の前月までに、汎用の巻き紙「浜焼き鯖寿司」、株式会社JALUX用の巻き紙「JAL空弁」、株式会社明治屋用の巻き紙「明治屋」及び株式会社ヤスサキ用の巻き紙「ブルー(ヤスサキ)」を合わせて、約86万枚出荷されており、その後、本件商標の登録査定日の前月までに、約196万枚出荷されていたこと、また、しおりについても、鯖寿司のしおりは、平成15年から本件商標の出願日の前月までに、67万枚出荷されており、その後、本件商標の登録査定日の前月までに、約182万枚出荷されていたこと。
(ウ)新聞・雑誌による紹介記事に関して
前記した甲第10号証(日経ウーマン2005年1月号)をはじめ、甲第11号証(日刊県民福井2006年1月6日号)には「3年前の登場以来、羽田空港など国内主要空港で売られ、『空弁』という言葉さえ生んだ全国区のヒット商品だ。・・・空弁を考案したのは『海の恵み』の矢部みち子社長。『福井のサバ』を一気に全国に知らしめた。・・・」とあり、甲第12号証の2(日本経済新聞2003年12月6日)には「『みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司』を販売したところ、あっさりしてておいしいと人気爆発・・・」とあり、甲第12号証の4(日経流通新聞MJ2004年1月17日)には、「羽田空港の売店に並ぶ空弁の売れ筋を販売額でランキングした・・・JULUXは上位10商品中・・・6商品が自主企画のオリジナル商品。1位の『みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司』は2002年12月に発売され、空弁ブームの火付け役になった。・・・『1日10個売れればいいと思って売り始めたが、今では1日400個売れる人気商品に育った。・・』・・浜焼き鯖は福井県の名物で、開いて串に刺して焼いて食べる。海の恵み(福井市)とJALUXが押し寿司として共同開発し、・・・」とあり、甲第12号証の7(夕刊フジ2004年1月30日)には、「空弁/飛ぶようにサバけています」の表題のもとに、請求人商品の写真が「驚異的な売り上げのみち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司」の文言が付けられて表示されており、文中には、「・・・『これまではどんなアイテムでも1日に50個売れれば大ヒットだった』・・・ところが『焼き鯖寿司は実に1日に350?400個。1ヶ月で1万2000個も売れているのです。』というから、まさにオバケ商品だ。・・・」とあり、甲第12号証の12(日経流通新聞MJ2004年上期ヒット商品番付)には、東前頭11枚目に「空弁(そらべん)」がランクされ、その寸評として「空港で売る弁当。土産としても人気。『みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司』が火付け役」とあり、その他にも、同趣旨の記事が読売新聞、朝日新聞、東京新聞、琉球新報、毎日新聞、日刊工業新聞、中国新聞、産経新聞等々に掲載されており(甲第12号各証)、また、JALグループ機内誌winds、ダカーポ、DIME、Yomiuri Weekly、週間朝日、女性自身、Tokyo Walker、日経トレンディ等々の雑誌(甲第13号各証)において掲載されていること。
(エ)上記において認定した甲各号証によれば、請求人は、平成14年9月20日に設立され、焼き鯖寿司を主力商品として製造販売している会社であり、「焼き鯖寿司」は、福井県若狭地方の伝統料理「浜焼き鯖」と「寿司」とを組み合わせて作られたのが始まりであって、歴史の浅い商品であることが認められる。また、「みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司」は、平成14年(2002年)12月に発売が開始されたものであり、その開発の経緯は、請求人会社の取締役であった矢部みち子が日本航空(JAL)グループの商社JALUX(ジャルックス)へ商談を持ち込んだことに始まり、JALUX(ジャルックス)の担当者と共同して企画・開発を行い、鯖寿司のレシピについては、矢部みち子手製のものを踏襲し、ネーミングについては、ブランドを意識して、製作者である矢部みち子の名前を前面に出して命名されたものと認められる。
そして、請求人は、巻き紙及びしおりに引用商標を付して請求人商品を株式会社JALUXの羽田空港支店、羽田食品企画販売、成田空港支店、関西空港支店、大阪空港支店、名古屋空港支店、大分空港支店の外、上記において認定した各社に販売しており、株式会社大鹿印刷所及び株式会社多田商店から請求人に納められた浜焼き鯖寿司ケース(甲第8号証)、巻き紙及びしおり(甲第9号証)の出荷履歴からみれば、請求人商品は、その販売開始から本件商標の出願日(平成16年9月24日)までに、少なく見積もっても70万食(平成15年及び平成16年1月から8月27日までのしおり枚数が約70万枚)は販売されていたものと推測され、また、平成16年度のケース出荷数が大小合わせて約130万ケースであり、平成17年度のケース出荷数が大小合わせて約155万ケースであることからみれば、本件商標の出願日以降も請求人商品の販売数量は引き続き伸張していたものということができる。
そして、このことを裏付けるように、「3年前の登場以来、羽田空港で売られ、『空弁』という言葉さえ生んだ全国区のヒット商品だ。・・・空弁を考案したのは『海の恵み』の矢部みち子社長。『福井のサバ』を一気に全国に知らしめた。・・・」(甲第11号証外)、「羽田空港の売店に並ぶ空弁の売れ筋を販売額でランキング・・1位の『みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司』は2002年12月に発売され、空弁ブームの火付け役になった。」(甲第12号証の4)等々のように、請求人の商品である「みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司」の好調振りが各種新聞雑誌において紹介されている(なお、甲号証の中には、本件商標の出願日以降に発行された新聞・雑誌も含まれているが、それらにも本件商標の出願日以前における引用商標に係る「浜焼き鯖寿司」についての事情が記載されており、その内容は、引用商標の周知性を把握するに十分役立つものである。)。
以上の事実を総合してみれば、引用商標は、請求人の業務に係る商品「浜焼き鯖寿司」を表す商標として、本件商標の登録出願時(平成16年9月24日)においては既に、我が国におけるこの種商品(弁当、中でも、「空弁」と呼ばれている主に空港で販売される弁当)の取引者・需要者の間において広く知られていたものということができる。そして、その周知性は、その後、本件商標の登録査定時(平成17年8月24日)まで継続していたものと認められる。
(2)商標及び商品の類否について
本件商標は、別掲(1)に示したとおり、「みち子が」、「お届けする」、「若狭の」、「昆布〆」、「鯖寿司」の文字を筆書き風の文字をもって5行に縦書きした構成からなるものであるのに対して、引用商標は、別掲(2)に示したとおり、「みち子が」、「お届けする」、「若狭の」、「浜焼き」、「鯖寿司」の文字を筆書き風の文字をもって、5行に縦書きした構成からなるものであるところ、両商標は、1行目から3行目及び5行目の各文字を書体を含めて同じくし、わずかに4行目の文字を異にするのみであり、しかも、商標を構成する文字を段差を設けて複数行に表した点でも一致していることから、両商標は、外観から受ける印象において相紛らわしいものということができる。
また、両商標にあって、構成を異にする4行目の「昆布〆」と「浜焼き」の文字部分にしても、鯖寿司の作り方の差異を表しているにすぎないものであって、全体から看取される「みち子がお届けする若狭の鯖寿司」の観念においては、互いに共通しており、出所を同じくする姉妹商品として理解されるものということができる。
してみれば、本件商標と引用商標とは、その構成の中にあって、看者の注意を最も強く惹き、出所表示力を最も強く発揮するものと認められる「みち子(が)」の文字を共通にし、しかも、全体の外観から受ける印象及び全体の構成から把握される観念を共通にするものであるから、両商標は、互いに彼此相紛らわしい類似の商標といわなければならない。
そして、本件商標の指定商品は「鯖寿司」であり、引用商標の使用に係る商品は「浜焼き鯖寿司」であるから、両者は、同一又は類似の商品について使用するものである。
(3)被請求人の主な主張について
(ア)本件商標及び「みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司」の商標は、本件商標権者の櫻川愼一が独自に創作したものである旨の主張について
確かに、「みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司」の商標に係る商品が開発された当時、櫻川愼一は、請求人が「有限会社海の恵み」に商号を変更する前の「有限会社ボース・クリエーション」の代表取締役であったことは認められる。
しかしながら、前記したとおり、例えば、甲第10号証(日経ウーマン2005年1月号)によれば、「みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司」は、平成14年(2002年)10月に、食品加工業社「海の恵み」を経営する矢部みち子が日本航空(JAL)グループの商社JALUX(ジャルックス)へ商談を持ち込んだことに始まり、JALUX(ジャルックス)の担当者と共同して企画・開発を行い、ネーミングについては、ブランドを意識して製作者である矢部みち子の名前を前面に出して命名されたものである旨記載されている。このような記事からみれば、該商品の企画・開発を直接担当したのは、取締役の矢部みち子であったということができるが、それとても、あくまでも有限会社ボース・クリエーション(後の有限会社海の恵み)としての行為とみるべきであり、その成果が個人としての矢部みち子に帰属するものでもなければ、代表取締役であった櫻川愼一に帰属するものでもない。そして、甲号証及び乙号証のいずれをみても、本件商標及び「みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司」なる商標を櫻川愼一が創作したものである旨の記載は見当たらない。
してみれば、この点についての被請求人の主張は採用できない。
(イ)被請求人である櫻川愼一が創作した「みち子がお届けする若狭の昆布〆鯖寿司」の商標及び「みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司」の商標中の「浜焼き鯖寿司」の文字部分について、櫻川愼一は平成14年10月22日に商標登録出願(商願2002-89254)をしており、本件商標は、実質的には、上記出願の出願時に商標登録出願されていたものとみなすことができるものであるから、引用商標の周知性は、平成14年10月22日の時点において判断されるべきである旨の主張について
上記のとおり、「みち子がお届けする若狭の昆布〆鯖寿司」の商標及び「みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司」の商標を櫻川愼一が創作したものであることを認めるに足る証拠はなく、しかも、櫻川愼一が平成14年10月22日に出願したのは、あくまでも「浜焼き鯖寿司」の文字からなる商標であるから、形式的にも実質的にも、本件商標の登録要件の判断時点を「浜焼き鯖寿司」の文字からなる商標の出願日に遡及させる理由は存しない。
(ウ)引用商標の周知性についての判断時期を本件商標の現実の出願日である平成16年9月24日においたとしても、請求人の業務に係る「浜焼き鯖寿司」は、空港の売店等極めて限られた場所でしか販売されておらず、販売数量も決して多くはなく、商品の性格上、その場で消費されることが多く、需要者の間に商標が浸透しにくいことから、引用商標が請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたとはいえない旨の主張について
前記したとおり、請求人商品は、その販売開始から本件商標の出願日(平成16年9月24日)までに、少なく見積もっても70万食が販売されたものと推測されるものである。そして、請求人商品は、日本全国の空港と結ばれている株式会社JALUX羽田空港支店を始めとする多くの空港支店において販売されているばかりでなく、全国各地で全国駅弁大会、全国物産展等を開催している株式会社ジャパンフーズシステム(東京都)、全国各地の食料品店に請求人商品を卸している西野商事株式会社(東京都)や秋田県、新潟県、東京都、長野県、石川県、愛知県、京都府、大阪府、広島県、島根県、高知県等々のサティ店に請求人商品を卸している福井県漁業協同組合連合会等々にも販売されており、請求人商品の需要者は、全国に及んでいるものということができる。そして、例えば、前出の甲第12号証の7(夕刊フジ2004年1月30日)には、「・・・『これよ、これこれ』。羽田空港のゲート内にあるJALグループのJALUXが展開するショップ『BLUE SKY』を訪れる人から、しばしばこんな声が聞かれている。お目当ての商品は『みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司』。・・・『職場や家族のお土産に、出張前に10個ぐらいまとめてとりおきを頼んで、戻ってきてから買っていくお客さんも多い』というから、その人気ぶりもうなずける。・・・」旨記載されており、また、甲第13号証の10(女性自身2004年4月27日号)には、「『みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司』一昨年の発売開始以来、空前の大ヒット。現在、1日千個を売り上げる。なかには飛行機に乗る用もないのにわざわざタクシーで買いに来る人も(羽田空港)」と記載されている。
これらの事実からみれば、引用商標が本件商標の出願日において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたとはいえない旨の被請求人の主張は採用できない。
(エ)請求人が引用している「みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司」なる商標は、本件商標権者の櫻川愼一によって創作された登録第4906986号商標「みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司」そのものであって、他人の未登録商標には該当しないから、商標法第4条第1項第10号違反を理由とする本件審判請求は、その前提において失当である旨の主張について
前記のとおり、「みち子がお届けする若狭の浜焼き鯖寿司」の商標を櫻川愼一が創作したものであることを認めるに足る証拠はないから、この点についての被請求人の主張も採用できない。
(4)むすび
以上を総合してみれば、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間において広く認識されている商標と類似する商標であって、その商品又はこれに類似する商品について使用をするものといわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本件商標

(2)引用商標

審理終結日 2007-01-24 
結審通知日 2007-04-05 
審決日 2007-02-14 
出願番号 商願2004-87471(T2004-87471) 
審決分類 T 1 11・ 25- Z (Y30)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小川 敏 
特許庁審判長 高野 義三
特許庁審判官 鈴木 新五
山口 烈
登録日 2005-11-11 
登録番号 商標登録第4906987号(T4906987) 
商標の称呼 ミチコガオトドケスルワカサノコブジメサバズシ、ミチコガオトドケスル、ワカサノコブジメサバズシ、コブジメサバズシ、コブジメ、コンブジメ、ミチコ 
代理人 前田 弘 
代理人 森 治 
代理人 嶋田 高久 
代理人 竹内 宏 
代理人 竹内 祐二 
代理人 今江 克実 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ