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審決分類 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない Y2528
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y2528
管理番号 1164163 
審判番号 無効2006-89079 
総通号数 94 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-10-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-06-02 
確定日 2007-09-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第4854632号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4854632号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成14年11月8日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」及び第28類「スキーワックス,愛玩動物用おもちゃ,運動用具,釣り具,昆虫採集用具」を指定商品として、同17年2月15日に登録をすべき旨の審決がなされ、同年4月8日に設定登録されたものである。

2 請求人の引用する商標
請求人は、本件商標の登録の無効の理由として、請求人が「被服」について使用している「MOSS」の欧文字からなる商標(以下「引用商標A」という。)及び「被服、履物類及びかばん類」について使用している「Mossimo」の欧文字からなる商標(以下「引用商標B」という。)を引用している(以下、一括していうときは「引用各商標」という。)。

3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第20号証を提出した。
本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当するものであるから、無効とされるべきである。
(1)「MOSS」及び「MOSSIMO」の周知・著名性について
甲第3号証ないし甲第20号証に示すように、請求人商標「MOSS」または「MOSSIMO」は、被服、履物類及びかばん類について、日本を含む世界において周知、著名となっている。ここで、「MOSS」は「MOSSIMO」の略称として需要者、取引者に広く知られている。以下、具体的に説明する。
(ア)雑誌等での使用例
甲第3号証は、雑誌「InStyle」2003年10月号の表紙及び関連頁写であり、靴について「Mossimo」商標が使用されている。
甲第4号証は、雑誌「Lucky」2003年4月号の表紙及び関連頁写であり、靴について「Mossimo」商標が使用されている。
甲第5号証は、雑誌「ym」2003年9月号の表紙及び関連頁写であり、被服について「Mossimo」商標が使用されている。
甲第6号証は、雑誌「Good Housekeeping」2003年11月号の表紙及び関連頁写であり、被服について「Mossimo」商標が使用されている。
甲第7号証は、雑誌「GLAMOUR」2004年1月号の表紙及び関連頁写であり、かばん類について「Mossimo」商標が使用されている。
甲第8号証は、雑誌「NEW YORK」2004年3月号の表紙及び関連頁写であり、靴について「Mossimo」商標が使用されている。
甲第9号証は、雑誌「GO」2004年3月号の表紙及び関連頁写であり、被服について「Mossimo」商標が使用されている。
甲第10号証は、雑誌「Teen People」2004年4月号の表紙及び関連頁写であり、かばん類について「Mossimo」商標が使用されている。
このように、雑誌において頻繁に使用されている「Mossimo」は、特に被服、履物類及びかばん類について、請求人の製品に係る商標として需要者・取引者の間で広く知られているといえる。
(イ)インターネットでの使用例
甲第11号証及び甲第12号証は、インターネットウェブサイトでのオンラインショッピング画面のプリントアウト写であり、被服について「Mossimo」商標が使用されている。
甲第13号証ないし甲第15号証は、インターネットウェブサイトでのオンラインショッピング画面のプリントアウト写であり、被服について「MOSS」商標が使用されている。このことからも、「MOSS」は「Mossimo」の略称として一般に親しまれ、広く知られていることがわかる。
(ウ)世界各国での登録例
甲第16号証及び甲第17号証は、請求人所有のメキシコでの「MOSS」商標登録の登録証写である。
甲第18号証ないし甲第20号証は、請求人所有の米国での「MOSS」商標登録の登録証写である。
このような登録例は、「MOSS」商標が請求人所有の商標として世界的に広く知られていることを強く推認されるものである。
(2)請求人商標「MOSS」及び「MOSSIMO」と本件商標の類似性について
本件商標は、やや装飾化した「MOSS」の文字からなるところ、請求人商標の一つ「MOSS」も同じ文字から構成されている。
したがって、請求人商標と本件商標とは、少なくとも称呼の点で互いに同一又は類似である。
(3)むすび
以上のように、請求人商標「MOSS」及び「MOSSIMO」は、需要者の間に広く認識されている。本件商標は、このような請求人商標「MOSS」または「MOSSIMO」と同一又は類似であり、かつ、請求人の使用する商品と同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
また、本件商標は、需要者の間に広く認識されている請求人商標「MOSS」または「MOSSIMO」と同-又は類似であり、本件商標を使用すれば、請求人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。
よって、本件商標の登録は、商標法第46条第1項の規定により無効とされるべきである。

4 被請求人の答弁の要旨
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第11号証を提出した。
(1)請求人商標の著名性について
甲第3号証ないし甲第10号証は、商標「Mossimo」が付された商品「靴・被服・かばん類」が8種類の雑誌に各1回掲載されたことを示しているにすぎず、各雑誌の頒布国、発行部数すら明らかにされていない。このような極く限られた証拠をもって、「Mossimo」が請求人の業務に係る商品を示すものとして世界的に周知・著名となっているとは到底考えられない。
そもそも商標が周知性を有しているとするためには、「当該商標の使用開始時期、使用期間、使用地域、譲渡数量又は営業の規模(店舗数、営業地域、売上高等)、広告宣伝の方法・回数及び内容、一般紙・業界紙・雑誌又はインターネット等における記事掲載の回数及び内容」等を立証する必要があるところ、請求人はこれらの点についての立証責任を果たしていない。
したがって、「Mossimo」が請求人の商標として周知、著名であるとの請求人の主張は失当である。
(2)「Mossimo」と「MOSS」の関係について
(ア)「Mossimo」と「MOSS」の外観上の違いは明らかである。また、前者からは「モッシモ」なる称呼が生ずるのに対し、後者からは「モス」の称呼が生ずるため、両者は称呼上非類似である。更に、前者と後者とは混同を惹起させる程に共通の事柄を想起させることもないので、両者は観念上も非類似である。
以上のとおり、「Mossimo」と「MOSS」とは、互いに非類似の商標であるから、仮に、「Mossimo」について周知性が認められたとしても、そのことから「MOSS」の周知性が導かれるわけではない。したがって、本件において、「Mossimo」の周知・著名性を主張することは、全く無意味なことである。
(イ)請求人は、「MOSS」は「Mossimo」の略称として一般に親しまれ、広く知られていることがわかる旨主張している。
しかし、「Mossimo」は、「Moss」と「imo」の間にスペースはなく、頭文字を除き各字の太さ大きさが均一であり、その称呼も冗長にすぎることもないといったその構成態様からして、「Moss」と「imo」とを分離すべき合理的理由は見出し得ない。また、「Mossimo」と「MOSS」とは全くイメージを異にしており、「Mossimo」から直ちに、かつ、明確に「MOSS」を想起することはなく、「MOSS」が「Mossimo」の略称であると理解するには無理がある。
(3)外国登録商標とその著名性について
メキシコ及び米国において、「MOSS」が商標登録されているという事実をもって、当該商標が日本国内において周知・著名であるということは到底できない。
(4)被請求人の本件商標の使用
乙第1号証ないし乙第6号証は、商標「MOSS」に関して、被請求人が有している又は有していた登録例を示すものであり、本件商標の登録は、その後の商品区分の改正に応じ、これらの古い登録を整理するためになされたものである。
そして、被請求人は、乙第7号証ないし乙第11号証の商品カタログのとおり、本件商標「MOSS」をTシャツやスノーボードについて長年にわたって使用し続けてきているものである。乙第7号証によって示される使用時期は、請求人の1998年の米国商標登録及び1997年のメキシコ商標登録よりも古いことも明らかである。
(5)まとめ
以上のとおり、請求人商標「Mossimo」及び「MOSS」は、日本国内において周知・著名でないばかりか、外国においても周知・著名であるか否か不明な商標であることから、本件商標を本件指定商品について使用しても、請求人との間に、出所の混同が生ずるおそれはない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当するものではない。

5 当審の判断
請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第10号及び同第15号に違反して登録されたものである旨主張しているので、この点について判断する。
(1)商標の類否について
本件商標は、別掲に示したとおり、やゝデザイン化された「MOSS」の欧文字からなるものである。
他方、引用商標Aは、前記したとおり、「MOSS」の欧文字からなり、また、引用商標Bは、「Mossimo」の欧文字からなるものである。
そこで、本件商標と引用各商標との類否についてみるに、まず、本件商標と引用商標Aは、いずれも、同じ「MOSS」の綴り字からなるものであるから、少なくとも、「モス」の称呼を共通にする類似の商標ということができる。
次に、本件商標と引用商標Bとの類否についてみるに、引用商標Bは、上記したとおりの構成からなるところ、これを構成する各文字は、外観上まとまりよく一体的に表現されており、これより生ずるものと認められる「モッシモ」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものであって、他に構成中の「Moss」の文字部分のみが独立して認識されるとみるべき特段の事情は見い出せない。してみれば、引用商標Bは、該構成文字全体に相応して、「モッシモ」の称呼のみを生ずる一体不可分の造語を表したものと認識し把握されるとみるのが自然である。
そうとすれば、本件商標から生ずる「モス」の称呼と引用商標Bから生ずる「モッシモ」の称呼とは、その音構成、構成音数において明らかな差異を有するものである。また、両者は、外観においても明らかな差異があり、観念については比較すべくもない。
したがって、本件商標と引用商標Bとは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
(2)引用各商標の周知・著名性について
(ア)甲各号証に請求人の主張をも併せみれば、以下の事実を認めることができる。
甲第3号証(「InStyle」2003年10月号)、甲第4号証(「Lucky」2003年4月号)及び甲第8号証(「NEW YORK」2004年3月号)には、「Mossimo」の商標が付された「靴」が掲載されている。
甲第5号証(雑誌「ym」2003年9月号)、甲第6号証(「Good Housekeeping」2003年11月号)及び甲第9号証(「GO」2004年3月号)には、「Mossimo」の商標が付された「被服」が掲載されている。
甲第7号証(「GLAMOUR」2004年1月号)及び甲第10号証(「Teen People」2004年4月号)には、「Mossimo」の商標が付された「かばん類」が掲載されている。
甲第11号証及び甲第12号証のインターネットウェブサイトでのオンラインショッピング画面には、「Mossimo」の商標が付された「被服」が掲載されている。
甲第13号証ないし甲第15号証のインターネットウェブサイトでのオンラインショッピング画面には、「MOSS」の商標が付された「被服」が掲載されている。
甲第16号証及び甲第17号証によれば、請求人は、1997年7月に、メキシコにおいて、「MOSS」の商標について商標登録を受けており、また、甲第18号証ないし甲第20号証によれば、1998年から2004年にかけて、米国において、「MOSS」の商標について商標登録を受けていたことを認めることができる。
(イ)上記において認定した事実によれば、請求人は、「Mossimo」の商標を「靴、被服、かばん類」に使用し、また、「MOSS」の商標を「被服」に使用していた事実を認めることができる。
ところで、ある商標が周知・著名性を有していたものと認められるためには、当該商標の使用開始時期、使用期間、使用地域、営業の規模(店舗数、営業地域)、商品の譲渡数量・売上高等、更には、広告宣伝の方法・回数及び内容、一般紙・業界紙・雑誌又はインターネット等における記事掲載の回数及び内容等をもって立証する必要があるところ、請求人が周知・著名性を立証するものとして提出しているのは、8種類の雑誌とインターネットウェブサイトのオンラインショッピング画面と外国における商標登録例のみである。
そして、上記各雑誌は、奥付の頁が添付されていないことから、その詳細は明らかではないが、全てが英文で書かれていることからみれば、外国で発行された雑誌と推認されるものであり、しかも、僅か8種類の雑誌に各1回掲載されたことを示しているに過ぎず、雑誌の頒布国、発行部数等も明らかにされていない。また、インターネットウェブサイトの情報にしても、その内容はすべて英語で表されたものであり、価格もドル表示であるところから、請求人の住所地である米国におけるサーバーに設けられたものと推認されるものであり、日本からもアクセスが可能であり、日本の検索エンジンによっても検索可能であるとしても、日本の需要者を対象としたものとは認め難い。
更に、外国における商標登録の事実にしても、メキシコ及び米国の2カ国において、「MOSS」の商標が商標登録されていたにすぎない。
そうとすれば、このような極く限られた証拠をもってしては、引用各商標が本件商標の登録出願時(平成14年11月8日)において、請求人の業務に係る商品「靴、被服、かばん類」の商標として、我が国の取引者・需要者間において、広く認識されていたものとは認められない。
(3)商標法第4条第1項第10号について
前記したとおり、本件商標と引用商標Aとは、称呼において類似する商標であり、本件商標の指定商品中には、請求人が引用商標Aを使用している商品である「被服」を含んでいるものではあるが、引用商標Aは、本件商標の登録出願時において、請求人の業務に係る商品の商標として、取引者・需要者の間において、広く認識されていた商標とは認められないものである。
また、本件商標と引用商標Bとは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても類似しない非類似の商標というべきものであり、しかも、引用商標Bも、本件商標の登録出願時において、請求人の業務に係る商品の商標として、取引者・需要者の間において、広く認識されていた商標とは認められないものである。
なお、請求人は、「MOSS」は「Mossimo」の略称として一般に親しまれ、広く知られている旨主張しているが、甲各号証によるも、そのような事実を認めるに足る証拠は見当たらない。
してみれば、本件商標と引用商標Aに関しては、商標の類似性は認められるにしても、引用商標Aの周知性が認められず、また、本件商標と引用商標Bに関しては、商標の類似性も、引用商標Bの周知性も認められないものであるから、いずれにしても、本件商標の登録が商標法第4条第1項第10号に違反してされたものということはできない。
(4)商標法第4条第1項第15号について
上記のとおり、引用各商標は、本件商標の登録出願時において、請求人の業務に係る商品の商標として、取引者・需要者の間において、広く認識されていた商標とは認められないものである。
してみれば、被請求人が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者をして、引用各商標を連想又は想起させるものとは認められず、その商品が請求人又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。
したがって、本件商標の登録が商標法第4条第1項第15号に違反してされたものということはできない。
(5)まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に違反してされたものではないから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲 本件商標

審理終結日 2007-04-09 
結審通知日 2007-04-12 
審決日 2007-04-24 
出願番号 商願2002-94794(T2002-94794) 
審決分類 T 1 11・ 25- Y (Y2528)
T 1 11・ 271- Y (Y2528)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 八木橋 正雄 
特許庁審判長 山田 清治
特許庁審判官 鈴木 新五
山口 烈
登録日 2005-04-08 
登録番号 商標登録第4854632号(T4854632) 
商標の称呼 モス 
代理人 野田 久登 
代理人 竹内 耕三 
代理人 齋藤 晴男 
代理人 深見 久郎 
代理人 森田 俊雄 

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