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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(一部取消、一部維持) Y2425
管理番号 1162669 
異議申立番号 異議2006-90225 
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2007-09-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2006-05-19 
確定日 2007-07-26 
異議申立件数
事件の表示 登録第4929226号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4929226号商標の指定商品中第24類「織物」及び第25類 「被服」についての商標登録を取り消す。 本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品についての商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第4929226号商標(以下「本件商標」という。)は、「Power Stretch」の欧文字を横書きしてなり、平成14年5月28日に登録出願、第24類「織物,メリヤス生地,フェルト及び不織布,オイルクロス,ゴム引防水布,ビニルクロス,ラバークロス,レザークロス,ろ過布,布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製いすカバー,織物製壁掛け,カーテン,テーブル掛け,どん帳,遺体覆い,経かたびら,黒白幕,紅白幕,ビリヤードクロス,布製ラベル」及び第25類「被服」を指定商品として、同18年2月17日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由の要点
本件登録異議申立人は(以下「申立人」という。)、本件商標は、商標法3条1項3号に違反して登録されたものであるから、その登録は取り消されるべきものであると申立て、証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証(枝番を含む。)を提出している。

3 本件商標に対する取消理由の要点
当合議体は、商標権者に対して、平成18年11月7日付で下記内容の取消理由を通知した。

(1)申立人の提出に係る甲第2号証ないし甲第4号証によれば、以下の事実を認めることができる。
(ア)甲第3号証(「ストレッチ素材(快適衣料設計のために)」株式会社東レリサーチセンター、1996年3月1日第1刷発行)には、「ストレッチ性素材とは」の項目(1頁)に、「ストレッチ素材の開発は、まさしく衣服に皮膚と同じような、無負荷で伸縮自在の機能をもたせ『快適』衣料を作りたいという望みの実現努力に始まったものであろう。快適衣料素材と言う観点から見たストレッチ素材の位置づけは、2つの面にわけて考えることができる。すなわち皮膚の動きに応じて自由に抵抗感なく変化する第2の皮膚的身体保護装飾衣料として利用しようとする面と、もう一つは、スポーツ用途や医療分野での運動機能補助衣料ないしは整形保持衣料としての利用の面である。前者が伸長収縮の動きに対して抵抗感を感じさせないことを中心に設計を考えており、Comfort Stretchと呼ばれるのに対し、後者は目的上多少締め付け感を伴うことが多い。後者は直接的な身体適応性からみた快適衣料とはやや異なり、人体の運動機能をサポートしたり身体の整形をサポートする間接的快適衣料といえよう。このような性格から、Power StretchとかAction Stretchと呼ばれる。」とあり、さらに、「このような経過で、無負荷で伸縮自在の機能を満たすComfort Stretchに、適度な緊迫感を与える特性を要求する分野のPower Stretchが加わって、動きの激しいスノウウェアなどのアクション・スポーツや、皮膚と密着してボディの美しさを保つファウンデーションの分野から、ストレッチ・ファブリックの使用が広まり、ついでソックスからパンティストッキングへと用途拡大され、このころからComfort Stretch、Performance Stretch、Power Stretchの3区分にわける分類が主流となった。(2頁)」との記載がある。
(イ)甲第2号証(「スパンデックス繊維およびストレッチ性素材の新展開」(株)大阪ケミカルマーケティングセンター、1990年10月30日発行)には、「ストレッチ性素材の種類と用途」の項目(1頁)に、「ストレッチ率によるストレッチファブリックの分類」として、「ストレッチ率10?20%」のものを「Regular Stretch、Comfort Stretch」、「ストレッチ率20?40%」のものを「High Stretch、Performance Stretch」、また、「ストレッチ率40%以上」のものを「Power Stretch」に分類される旨の記載があり、また、「ストレッチ素材の種類」(2頁)として、「ストレッチ素材は、改良・改質された原料ポリマーやエラストマーを紡糸したストレッチ繊維と、加工糸の段階でストレッチ性を付与する伸縮性加工糸に大別されるであろう。ストレッチ繊維としては、スパンデックス、PBT繊維、ポリエーテル・エステル系繊維、複合繊維などが代表として挙げられる。・・・スパンデックスはストレッチ率40%以上のパワーストレッチファブリックに適し、衣料用途ではタイトフィット、マイルドフィットの分野で多用されている。PBT繊維の伸度は40%前後と低いが、PET繊維に比べて弾性回復に優れ、・・・40%以上のパワーストレッチファブリックも可能であり、スクール水着を中心としたスポーツウェアに用いられている。(2頁)・・・クラレはスパンデックスを代替するパワーストレッチ素材の開発を意図して、1982年からPBT繊維『アートロン』の生産を開始した。(143頁)・・・アートロンの主力用途はスクール水着であり、生産の70%がスクール水着に投入されている。年間50?60万枚の販売量である。(147頁)・・・帝人はポリエーテル・エステル系の高弾性素材『レクセ』を91年春夏物から本格展開する予定であり、同社のパワーストレッチ素材はレクセ主体になることが予想される。(149頁)・・・レクセは、・・スポーツウェアだけではなく、婦人・紳士アウターへの進出も可能になる。(159頁)」などの記載がある。
(ウ)甲第4号証(「繊維総合辞典」繊研新聞社、2002年10月10日初版第1刷発行)の「パワーストレッチ素材/power stretch fabric」の項目(529頁)には、「⇒ストレッチファブリック」との記載があり、「ストレッチファブリック/stretch fabric」の項目(333頁)には、「伸縮性のある織編物。エラスティックファブリックともいう。・・伸縮率が10?20%のものはコンフォートストレッチ、20?40%のものはパフォーマンスストレッチ、40%以上のものはパワーストレッチなどという。・・用途は水着、スキーウエアなどのスポーツウエア、カジュアルウエア、ファンデーション、下着、ジーンズなど。」などの記載がある。
(2)商標法第43条の8において準用する特許法第150条第5項に基づいてした職権による証拠調べによれば、以下の事実が認められる。
(ア)「商品大辞典」(東洋経済新報社、1996年4月15日第13刷発行)の「織物」の「ポリウレタン織物」の項目(909頁)には、「大きな伸縮性をもつ織物をストレッチ織物(stretch fabric)と称するが、スパンデックスのほかナイロンやポリエステルのストレッチ加工糸を用いてもつくられる。伸縮性が30%以上のパワーストレッチ織物はファウンデーション、水着、スポーツウエアに用いられ、伸縮性20?30%の快適ストレッチ織物はスラックス、スポーツシャツ、スカート、ワーキングウエアなど応用範囲も広い。」との記載がある。
(イ)2000年2月17日付け朝日新聞(東京夕刊、8頁)には、「雪の日も欠かさぬトレーニング 木村東吉(湖畔に暮らす)マリオン」の見出しのもと、「・・・そして伸縮性抜群のパワーストレッチのフリース素材のタイツは、零下の山道で、強風が吹いても寒さを感じないし、汗がタイツの表面に霧状の水滴として浮いてくるので、さっと手で払えばいつもドライな状態を保っていられる。」との記載がある。
(ウ)2000年9月5日付け繊研新聞(4面)には、「連載 スパンデックス・世界競争時代(広がる需要)-3」の見出しのもと、「・・・この繊維は製法(乾式、湿式、溶融紡糸)、原料(ポリエステル系、ポリエーテル系)が幅広い。製法が違い、原料が違うと製品の個性も違う。そういう商品特性があるが、メーカーごとの幅出しも最近の特徴だ。湿式(パワーストレッチが特徴)の富士紡が乾式を、溶融紡糸(ソフトパワー)の日清紡が乾式を、乾式(生産合理性の高い普及型の生産)の東洋紡が溶融紡糸を手掛け、強化するといった生産方式の複合化が進んだ。」との記載がある。
(エ)インターネット「alic/独立行政法人農畜産業振興機構/シルク情報ホームページ/今月の話題[2002.9.1.号]/無撚シルクを中心としたシルク新素材」(http://sugar.lin.go.jp/silk/info/wadai/0209wa1.htm)の「2.無撚シルクの狙いとその試作品 」の「(1)インナーウェア&スポーツウェア」の項目には、「・・また、無撚シルク(27d×2)とポリウレタンの交撚糸を丸編地としてパワーストレッチ(強い伸縮力)をもたせ、スポーツウェアに仕立ててみた。ファンデーションへの利用も考えられる。」との記載がある。
(3)上記(1)及び(2)で認定した事実を総合すると、織物等を取り扱う分野において、伸縮性のある織編物のうち、おおむね伸縮率40%以上のものを「パワーストレッチ/Power Stretch」と称している実情にあること、パワーストレッチ素材は、スクール水着をはじめ、スキーウエア等のスポーツウエア、ファンデーション、ジーンズ等様々な被服の素材として、普通に使用されていることなどが認められる。
してみると、「Power Stretch」の文字を書してなる本件商標をその指定商品中「織物」について使用した場合、「伸縮率40%以上の織物」の意味合いを、また、「被服」について使用した場合は、「伸縮率40%以上の織物を使用した商品」の意味合いを表したものと認識されるにとどまるものといわなければならない。
したがって、本件商標は、これをその指定商品中、「織物,被服」について使用しても、単に商品の品質を表示するにすぎないものと認められる。
以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品中、第24類「織物」及び第25類「被服」について、商標法第3条第1項第3号に違反してされたものである。

4 商標権者の意見
当合議体は、前記3の取消理由の通知について、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、商標権者からは何らの応答もない。

5 当審の判断
本件商標は、その指定商品中の第24類「織物」及び第25類「被服」については、前記3の取消理由により、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。
しかしながら、本件商標は、その余の指定商品については、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたということができないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2007-03-09 
出願番号 商願2002-43742(T2002-43742) 
審決分類 T 1 651・ 13- ZC (Y2425)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 富田 領一郎 
特許庁審判長 澁谷 良雄
特許庁審判官 石田 清
山本 良廣
登録日 2006-02-17 
登録番号 商標登録第4929226号(T4929226) 
権利者 エイイーエス・プロパティーズ・コーポレイション
商標の称呼 パワーストレッチ、パワー 
代理人 島田 義勝 
代理人 水谷 安男 

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