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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y07
審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効としない Y07
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない Y07
管理番号 1160882 
審判番号 無効2006-89083 
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-06-19 
確定日 2007-07-02 
事件の表示 上記当事者間の登録第4874321号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4874321号商標(以下「本件商標」という。)は、「MTR」の文字を標準文字により表してなり、平成16年11月1日に登録出願され、第7類「パルプ製造用・製紙用又は紙工用の機械器具」を指定商品として、平成17年6月24日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張の要点
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第10号証を提出している。
(1)本件商標は、請求人の使用に係る商標「MTR」(以下「引用商標」という。)との関連において、商標法第4条第1項第7号、同第8号又は同第15号に違反して登録されたものであり、その登録は無効とされるべきであるので、その理由について以下に詳述する。
(2)商標法第4条第1項第15号違反について
(ア)請求人たるエムティアール コーポレーション リミテッド(MTR Corporation Limited)は、旧大量輸送鉄道会社に関する法令(Mass Transit Railway Corporation ordinance)に基づいて香港における大量輸送鉄道システムの構築・運営を目的として設立されたMass Transit Railway Corporationを前身とし、Mass Transmit Railway Corporationの業務・資産等を承継しており、2000年6月30日に香港特別行政区の行政府によって一部民営化がなされた法人である(甲第2号証)。このような請求人において、引用商標「MTR」は、請求人会社の略称として位置付けられる商標であるのは勿論のこと、請求人を指称するいわゆるハウスマークとしても機能している商標である。
上述のように、請求人は、香港の大量輸送鉄道システムの構築・運営を目的として設立されたMass Transit Railway Corporationから業務等を承継していることからも分かるように、その主たる業務は、鉄道システムの構築・運営を中心とした鉄道輸送システムの計画・設計・操業・保全及びこれらの継続的な改良等の鉄道輸送に関するサービス全般の提供又はこれに付随した製品の製造等にあるといえるが、これらのサービス・製品については、請求人によって積極的な宣伝広告がなされている。
そして、このような宣伝広告活動、サービスの優秀性及び高度な技術力と相まって、請求人の提供に係る鉄道輸送に関するサービスは、その安全性・信頼性・効率性等の面で高い評価を受け、現在では、一日の平均総乗降客数が200万人を超え、香港の公共的な旅客輸送機関の中でトップシェアを獲得するに至っているのは勿論のこと、世界有数規模の地下鉄の一つとしての地位を既に確立していること(甲第3号証)にかんがみると、その本国たる香港で請求人が広く認識されていることは、容易に推察できるところである。
上述のように、鉄道輸送の分野においてトップシェアを獲得することにより、請求人は、その本国たる香港の代表的な交通機関として成長を遂げ、「MTR」なる欧文字が、香港で請求人を指称するものとして広く認識されている訳であるが、請求人に係る鉄道輸送サービス、特に、地下鉄による輸送サービスがより大きく発展したことに伴って、現在では、当該欧文字は、その鉄道輸送サービスを提供する請求人を指称するのみならず、香港における地下鉄そのものを示す略語としても用いられるようになっている(甲第3号証ないし甲第5号証)。
また、請求人は、本国たる香港のみならず他の諸外国においても、鉄道輸送に関するサービス・製品を含む幅広い指定役務又は指定商品について、多数の商標登録を取得しており(甲第6号証)、これらの登録商標と共に、ハウスマークたる引用商標を付した請求人に係る多様なサービス・製品は、請求人が積極的な事業展開を行っている中国本土やイギリス(甲第2号証)を中心とした国々で広く提供されている。
したがって、上述の宣伝広告等による市場の獲得、鉄道輸送の分野における世界的な地位の確立、諸外国での積極的な事業展開及び多数の国々でのハウスマークの使用を通じて、請求人の略称たる「MTR」は、香港で十分な著名性を獲得するに至っていると共に、「MTR」なる商標を付して提供されるサービス・製品は、請求人の本国たる香港は勿論のこと、中国・イギリスを中心とした他の諸外国においても、請求人の提供に係るサービス・製品を示すものとして広く認識されており、また、「MTR」なる欧文字は、請求人のみならず、香港の地下鉄そのものを示す略称としても広く認識されているといい得るものである。
(イ)そして、鉄道による輸送が発達している我が国においても、請求人に係る地下鉄は、香港の代表的な交通機関として紹介されており(甲第4号証及び甲第5号証)、このことからも、我が国の鉄道輸送に関連する分野の事業者・取引者の間に、世界有数の規模を誇る請求人の名声及び請求人に係る地下鉄による鉄道輸送サービスが広く知れわたっていることは、容易に推察できるところである。
また、請求人にあっては、その業務に係る鉄道輸送サービスの提供に際して利用される車両等の鉄道施設や設備の建造・敷設・改修に関して、我が国の複数の事業者に製造・工事等を発注していること(甲第7号証及び甲第8号証)をも考慮すると、請求人が世界有数の規模を誇る鉄道輸送サービスを提供するものであるという事実は、我が国において、鉄道輸送に関連する分野の事業者・取引者のみならず、建設業界等の他の分野の事業者・取引者にも広く認識されていることは、明らかである。
更には、請求人の本国たる香港において観光事業をより一層充実させるべく、1998年にチェックラップコック島に新国際空港が開港されたのは周知の事実であるが、当該新空港と香港の中心部とを結ぶエアポートエクスプレスを敷設し、現在も管理・運営しているのが請求人である(甲第9号証)。
また、請求人は、2005年に開園した香港ディズニーランドに通じる路線であるディズニーリゾートラインの敷設・管理・運営も行っており(甲第10号証)、香港の中心産業たる観光事業の一翼を担っていることは明白であるが、香港には、毎年200万人以上の外国人観光客が訪れ、その内の約半数の100万人以上を日本人観光客が占めているという現状(甲第9号証)にかんがみると、多数の日本人が、直接的に請求人に係る地下鉄による旅客輸送等のサービスの提供を受けていることは想像に難くないものである。
このような状況にかんがみると、請求人の略称たる「MTR」は、十分な著名性を獲得するに至っているものであると共に、「MTR」なる商標を付して提供されるサービス・製品は、請求人の提供に係るサービス・製品を示すものであるということは、我が国においても、旅客輸送業や建設業等の特定の分野の事業者・取引者のみに限られることはなく、広く一般の需要者・取引者に認識されているといい得るものである。
したがって、前述の請求人の提供に係る鉄道輸送サービスが、世界でも有数の規模を誇るものと我が国で紹介され、また、請求人が香港の観光事業の一翼を担うに至ったのは、本件商標の登録出願前であることをも考慮すると、本件商標の登録出願前に日本においても、請求人のハウスマークたる引用商標が、請求人の業務に係る鉄道輸送に関するサービスを表示するものとして、鉄道輸送に関与する需要者・取引者のみならず、一般の需要者・取引者の間で広く認識されていたことは容易に推察できるところである。
(ウ)このように、鉄道輸送サービス及びその関連する分野において、諸外国及び日本国内で広く認識されている引用商標「MTR」からは、その周知性及びハウスマークとしての機能性より「エムティアール」なる称呼が生じるが、「MTR」の標準文字から構成されてなる本件商標からも、「エムティアール」なる称呼が自然に生じると考えられることから、本件商標と引用商標は、称呼上同一であると共に、外観上も極めて近似するものであることからすると、本件商標と引用商標とは、称呼・外観において同一又は類似する商標として認識されることは、明らかである。
(エ)以上、本件商標と引用商標との類似性について述べたが、次に、本件商標に係る指定商品と請求人の提供に係るサービス及びその製造等に係る製品との関連について述べることとする。
まず、請求人に係る業務に本件指定商品第7類「パルプ製造用・製紙用又は細工用の機械器具」の製造・販売が直接的に含まれていないという点は、請求人においても認めるところである。しかしながら、請求人にあっては、近年の事業の多角化に伴いその事業活動の範囲を急速に広めており、その主たる業務である鉄道輸送サービスに加えて、広告・商業施設の貸与・通信・駅構内におけるATMの設置・事業コンサルタント・不動産開発及び販売等の多種多様なサービス及びこれらに関連する製品の提供をも行っている(甲第2号証)。
このような状況にかんがみると、需要者・取引者にあっては、請求人を、単に、鉄道輸送に関するサービス・製品のみを提供するものと認識している可能性は極めて低く、むしろ、請求人の主たる業務の内容は、鉄道輸送に関するサービス・製品の提供にあるといえるが、鉄道輸送とは関連性を有しない他の広範な分野でも多様なサービス・製品を提供し、事業活動を行っていると認識していると考えられるものである。
(オ)上述の状況を総合的に勘案すると、請求人が本件指定商品たる「パルプ製造用・製紙用又は紙工用の機械器具」を直接的に取り扱っているか否かにかかわらず、本件商標が付された本件指定商品が、市場に供給され又はこれらの商品について宣伝広告がされたときには、引用商標の周知著名性及び請求人の広範な事業活動から、あたかも請求人又は請求人と組織的・経済的に何らかの関連性を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生ずるおそれがあることは明らかであり、故に、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、その登録は無効にされるべきものである。
(3)商標法第4条第1項第8号違反について
前述のように、「MTR」なる欧文字は、請求人を示す著名な略称として認識されていることからすると、本件商標は、その構成中に「他人の著名な略称」を含む商標に該当するものであり、故に、商標法第4条第1項第8号にも違反して登録されたものであるから、その登録は無効にされるべきものである。
(4)商標法第4条第1項第7号違反について
前述のとおり、請求人のハウスマークたる「MTR」は、香港において著名であると共に、当該欧文字は、香港の地下鉄自体をも示す略称として、我が国でも需要者・取引者に周知な商標として認識されており、本件商標は、このような請求人の周知著名性に乗じて商標登録出願をされ、登録を取得したと考えられるものである。
このような行為は、もはや公正な商取引の範ちゅうにあるものとはいえず、国際的な商品・サービスの流通秩序をも混乱させ、著しく社会的妥当性を欠くものである。特に、「MTR」なる欧文字が、公共性の極めて高い外国の交通機関の一つを示す略語としても広く紹介され、用いられていることを考慮すると、本件商標が公序良俗に関するものであることは、明らかである。
したがって、本件商標は、「公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標」に該当する(商標法第4条第1項第7号)にもかかわらず、登録が認められたものであるので、その登録は無効にされるべきものである。

3 被請求人の答弁の要点
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第7号証を提出している。
(1)被請求人は、本件商標は、請求人の主張に係る法条に違反して登録されたものでないと確信するので、その理由を以下に述べる。
(2)商標法第4条第1項第15号違反との主張について
(ア)請求人の商号が、「MTR Corporation Limited」であることは認められるとしても、その商号の略称が請求人の略称として、我が国で広く知られているとはいえない。
すなわち、請求人は、香港において、地下鉄による輸送の業務を行っており、香港における地下鉄路線の略称(名称)として「MTR」の文字が使用されていると見られる(甲第2号証ないし甲第5号証及び甲第7号証ないし甲第10号証)ところであり、請求人の商号の略称として用いているのは、「地鐵公司」又は「MTR Corporation」であると見られるところである(甲第2号証ないし甲第4号証及び甲第8号証)。
なお、甲第4号証(3枚目中段)の一部において、請求人を指称すると見られる「MTR」の記載もあるが、これをもって、「MTR」が請求人の商号の略称として広く知られているとはいえない。
そうしてみると、「MTR」の文字は、請求人の商号の略称に相当するとはいえず、かつ、それが請求人の略称として広く知られているとは、到底いえないものである。
(イ)また、請求人は、「本国たる香港のみならず、他の諸外国においても、鉄道輸送に関するサービス・製品を含む幅広い指定商品又は指定役務について、多数の商標登録を取得し、これらの登録商標と共にハウスマークたる引用商標を付した多様なサービス・製品は、請求人が積極的な事業展開を行っている中国本土やイギリスを中心とした国々で広く提供されている。」と主張している。
しかるところ、複数の国で、請求人が各種登録商標を取得しているとしても、香港以外の国での使用状況が示されておらず、しかも、商標権を取得した国での事業の状況も明らかにされていないことから見ても、その主張は認められない。
(ウ)「MTR」の文字は、各種国語辞典、国語大辞典に掲載がなく、英和大辞典(乙第1及び乙第2号証)にも掲載がなく、略語辞典には、「材料試験炉」「material testing reactor」(原子炉に用いる材料を試験する原子炉)と記載され(乙第3号証及び乙第4号証)、インターネットで検索すると、我が国で人気の高い商品「マルチトラックレコーダー(Multi track recorder)」の略称として数多く掲載されている(乙第5号証及び乙第6号証)ことからすれば、「MTR」が、請求人若しくは請求人の事業に係る香港地下鉄の略称として広く知られていた(周知、著名)とはいえないばかりでなく、直ちに、請求人若しくは請求人の事業に係る香港の地下鉄の名称としては、理解、認識されないというのが相当である。
(エ)請求人が香港において地下鉄による輸送事業を行い、その事業に係り、広告、鉄道建設、鉄道に係る通信等の事業をも多角的に行っているであろうことは想像されるとしても、地下鉄による輸送事業に係る事業以外の業務を行っているとはいえないところであり、その証拠も示されていない。
(オ)本件の指定商品は、請求人の事業に係るサービス、商品とは、全く関連性を有しない商品であり、世界広しといえども、地下鉄輸送業者、鉄道輸送業者が、本件の指定商品を製造、販売している事例など皆無である。
(カ)以上のとおり、「MTR」が、請求人の略称に相当せず、請求人若しくは香港地下鉄の略称として知られているとはいえず、請求人が地下鉄輸送以外の業務について、多角経営を行っているとは認められず、「MTR」の文字が他の意味で知られていること、請求人の行っている業務に係るサービス、商品と本件商標の指定商品とは何ら関連性を有しないものであること等を総合して見れば、本件商標をその指定商品について使用しても、請求人の業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所について誤認を生じるおそれなどないというべきものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたとはいえない。
(3)商標法第4条第1項第8号違反との主張について
請求人は、香港において、地下鉄による輸送の業務を行っており、香港における地下鉄路線の略称(名称)として、「MTR」の文字が使用されていると見られる(甲第2号証ないし甲第5号証及び甲第7号証ないし甲第10号証)ところであり、請求人の商号の略称として用いているのは、「地鐵公司」又は「MTR Corporation」であると見られるところである(甲第2号証ないし甲第4号証及び甲第8号証)。
なお、甲第4号証(3枚目中段)の一部において、請求人を指称すると見られる「MTR」の記載もあるが、これをもって、「MTR」が請求人の商号の略称として広く知られているとはいえない。
そうしてみると、「MTR」の文字は、請求人の商号の略称に相当するとはいえず、かつ、それが請求人の略称として広く知られているとは、到底いえないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものでない。
(4)商標法第4条第1項第7号違反との主張について
被請求人は、本件の指定商品中の「段ボール用自動平盤打抜機」を三和製作株式会社と共同開発したもので、開発した商品に商標を付すに当たり、被請求人の商号の主要部の英文表記「Mitsubishi」の頭文字「M」と、共同開発者の商号の主要部「三和」の英文表記(「三」は「Trip1e」、「和」は「Ring」)の頭文字「TR」とを結合した「MTR」の商標を考案し、共同開発者と協議の上、被請求人が商標を出願し、登録を得たものであって、請求人又は香港地下鉄の略称として我が国では広く知られているとはいえない「MTR」を利用しようなどという意図など全くないといい得るところである。
また、「MTR」が、請求人若しくは請求人の事業に係る香港の地下鉄の名称として我が国において周知、著名とはいえず、また、直ちに、請求人若しくは請求人の事業に係る香港の地下鉄の名称としては理解、認識されないことは、上述のとおりである。
そして、被請求人は、共同開発者と共に「段ボール用自動平盤打抜機」を発売し、これに本件商標と社会通念上同一性を有する商標「MTRー600」を製造、販売しているところであるが、これまで請求人若しくは請求人の事業に係る香港の地下鉄の名称と混同されるというような事例は皆無である(乙第7号証)。
したがって、本件商標は、「公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある」とはいえず、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものでないこと明白である。

4 当審の判断
(1)本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
(ア)請求人の提出に係る証拠によれば、請求人は、香港において「鉄道による輸送」の役務を提供しており、その提供に係る鉄道路線の一つは、都心部では地下を走行するため地下鉄と呼ばれ、その地下鉄路線は、「MTR」とも略称されていることが認められる(甲第2号証ないし甲第5号証及び甲第7号証ないし甲第10号証)。そして、請求人の名称(商号)は、「エムティアール・コーポレーション・リミテッド(MTR Corporation Limited)」であるところ、これを省略して、「MTRコーポレーション」、「MTR Corporation」又は「地鐵公司」として使用されていることが認められる(甲第2号証ないし甲第4号証、甲第7号証及び甲第8号証)。
そうすると、「MTR」の文字が、地下鉄路線の名称の略称として使用されているとはいえても、請求人の名称の略称としては、「MTRコーポレーション」、「MTR Corporation」又は「地鐵公司」が用いられているのであり、「MTR」の文字自体が、請求人の商号の略称として使用されているものとはいえない。
もとより、「MTR」の文字は、各種国語辞典、国語大辞典に掲載がなく、英和辞典にも掲載がなく(乙第1号証及び乙第2号証)、略語辞典には、「材料試験炉」を意味する「material testing reactor」の略語として掲載されていること(乙第3号証及び乙第4号証)などからすると、これに接する取引者、需要者が、請求人の商号の略称を表したものとして直ちに認識し、理解するとはいい難いから、「MTR」の文字が、請求人の商号の略称として、我が国において著名になっているものとは認められない。また、香港における地下鉄ないし鉄道路線について、我が国において広く宣伝広告されたり、報道されている事実は、見当たらないところからすると、一部鉄道マニアを除き、その存在自体が、我が国において広く一般に知られているとまではいい得ないし、まして、それが「MTR」と称され、かつ、引用商標が請求人の業務に係る旅客輸送等を表示する商標として、我が国において取引者、需要者間に広く認識されているということはできない。
(イ)請求人は、近年の事業の多角化に伴いその事業活動の範囲を急速に広めており、その主たる業務である鉄道輸送サービスに加え、多種多様なサービス・製品の提供も行っているので、取引者・需要者は、請求人が鉄道輸送とは関連性を有しない他の広範な分野でも多様なサービス・製品を提供していると認識している旨主張するが、その主張を裏付ける具体的な証左はなく、請求人の主張を直ちに認めることはできない。
(ウ)他方、本件の指定商品は、「パルプ製造用・製紙用又は紙工用の機械器具」であって、請求人の業務に係る鉄道輸送とはおよそ関連性のない商品であり、一般に、請求人を含む鉄道輸送業者が、上記商品を取り扱うものと認識される可能性は極めて少ないといわざるを得ない。
(エ)かかる事情の下において、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が、引用商標ないしは請求人を連想、想起するようなことはないというべきであり、該商品が、請求人又は同人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、その出所について混同を生ずるおそれはないと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
(2)本件商標の商標法第4条第1項第8号該当性について
請求人の名称は、「エムティアール・コーポレーション・リミテッド(MTR Corporation Limited)」であり、上記1のとおりの構成からなる本件商標が、請求人の名称を含むものでないことは明らかである。また、「MTR」の文字が、請求人の略称として著名になっているものとはいえないことは、上記(1)のとおりであるから、本件商標は、請求人の著名な略称を含むものでもない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当するものではない。
(3)本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について
上記(1)のとおり、引用商標は、請求人の業務に係る旅客輸送等を表示する商標として、我が国において取引者、需要者間に広く認識されているとはいえないし、「MTR」の文字が、請求人の著名な略称とも認められないところであるから、本件商標は、引用商標ないしは請求人の周知著名性に便乗して登録出願され、登録を受けたものというべきではなく、かかる行為が、国際的な商品・役務の流通秩序を乱し、著しく社会的妥当性を欠くものとはいえない。そして、本件商標の構成自体は、きょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではないし、その使用が法律等によって禁止されているものでもない。
したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標ではないから、商標法第4条第1項第7号に該当するものではない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第8号及び同項第15号のいずれにも違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効にすべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2007-01-31 
結審通知日 2007-02-06 
審決日 2007-02-20 
出願番号 商願2004-99995(T2004-99995) 
審決分類 T 1 11・ 22- Y (Y07)
T 1 11・ 271- Y (Y07)
T 1 11・ 23- Y (Y07)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 山田 正樹 
特許庁審判長 田代 茂夫
特許庁審判官 柳原 雪身
小林 由美子
登録日 2005-06-24 
登録番号 商標登録第4874321号(T4874321) 
商標の称呼 エムテイアアル 
代理人 本宮 照久 
代理人 高見 香織 
代理人 加藤 伸晃 
代理人 矢崎 和彦 
代理人 宮嶋 学 
代理人 越智 隆夫 
代理人 吉武 賢次 
代理人 臼井 伸一 
代理人 小泉 勝義 
代理人 岡部 正夫 
代理人 岡部 讓 
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