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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z29
管理番号 1160848 
審判番号 無効2006-89065 
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-05-22 
確定日 2007-07-02 
事件の表示 上記当事者間の登録第4476981号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4476981号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4476981号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおり、「ばくりょくげん」の平仮名文字と「麦緑元」の漢字を上下二段に横書きしてなり、平成12年4月7日に登録出願、第29類「大麦の若葉を主原料として顆粒状・粒状・錠剤状・液状にした加工食品」を指定商品として、平成13年5月25日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人の引用する登録第2710510号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲(2)のとおり、「バクリョクソ」の片仮名文字、「麦緑素」の漢字及び「BAKURYOKUSO」の欧文字を上中下三段に横書してなり、昭和58年4月11日に登録出願、第32類「麦の葉またはその青汁を主成分とする加工食料品」を指定商品として、平成7年10月31日に設定登録されたものである。その後、平成17年11月1日に商標権存続期間の更新登録がされ、また、指定商品については、平成18年6月7日に第29類「麦の葉またはその青汁を主成分とする粉末状・錠剤状・粒状・液状・顆粒状・カプセル状加工食品,麦類若葉を主原料とする粉末状・錠剤状・粒状・液状・顆粒状・カプセル状加工食品」に書換登録がなされたものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論と同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第54号証を提出した。

1 請求の理由
(1)本件商標は、引用商標と類似し、かつ、指定商品も類似するものである(甲第1号証及び甲第2号証)。
また、引用商標が周知・著名であることからすれば、本件商標は請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれのある商標である。
さらに、請求人の業務に係る商品が、請求人と被請求人の間で取引されていた経緯があり、その取引関係が終了した後に、被請求人が本件商標を出願・登録したことを考慮すれば、本件商標が不正の目的をもって出願・登録された商標であることは明らかである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第19号の規定に該当し、商標法第46条第1項の規定により、その登録は無効とされるべきである。
(2)請求人及び利害関係について
請求人は、「グリーンマグマ」「麦緑素」等の健康食品、医薬品及び医薬部外品の製造・販売を主たる業務とする企業であり、引用商標の商標権者である。
また、引用商標は、IPDLの日本国周知・著名商標検索によっても検索可能な周知・著名商標であるから、本件商標を指定商品に使用すれば、取引者及び需要者が商品の出所について混同を生ずるおそれがある(甲第3号証)。
よって、これらの事情から判断すれば、請求人が本件登録無効審判を請求することに関し、利害関係を有していることは明らかである。
(3)商標法第4条第1項第11号について
本件商標からは、その平仮名に照らし「バクリョクゲン」の称呼が生ずるものであるが、「バクリョクモト」の称呼も生ずるものである。
すなわち、「麦緑元」の「元」は「まじめ、もとい、もとで」等の意を有する語であるが(甲第4号証)、「家元(いえもと)」「身元(みもと)」「襟元(えりもと)」等の成語をなす語として親しまれている。
したがって、「麦緑元」の文字に接した取引者及び需要者が、上記成語の例に倣い「元」を「モト」と読み、「麦緑元」から「バクリョクモト」の称呼を生じさせたとしても不自然ではない。
また、「麦緑元」を構成する「麦」「緑」「元」が何れも一般に親しまれた漢字であることからすれば、本件商標からは明らかに「麦の緑のはじめ、麦の緑のもと」等の観念が生ずる。
一方、引用商標からは、その片仮名・欧文字に照らし、「バクリョクソ」の称呼が生ずるものであるが、「バクリョクモト」の称呼も生ずるものである。
すなわち、「麦緑素」の「素」は「はじめ、もと、元素」等の意を有する語であるが(甲第5号証)、「味の素(あじのもと)〈味の素株式会社の登録商標:第641075号〉」「素子(もとこ)〈人名〉」「素もと(もともと)」等を構成する語として親しまれており、「麦緑素」の文字に接した取引者及び需要者が、上記の例に倣い「素」を「モト」と読み、「麦緑素」から「バクリョクモト」の称呼を生じさせたとしても不自然ではない。
また、「麦緑素」を構成する「麦」「緑」「素」も一般に親しまれた漢字であることからすれば、引用商標からも明らかに「麦の緑のはじめ、麦の緑のもと」等の観念が生ずる。
したがって、本件商標と引用商標は、同一の称呼「バクリョクモト」を生ずる称呼類似の商標であると共に、同一又は類似の観念の生ずる観念類似の商標である。
このことは、第29類及び第31類の商品を指定して出願された商標「命の元/いのちのもと」(商願2001-10261)が、先登録の商標「命の素」(商公平5-12355号:登録第2603403号)と類似し、商標法第4条第1項第11号の規定に該当することを理由に拒絶査定を受けていることからも明らかである(甲第6号証及び甲第7号証)。
すなわち、当該審査においては、「命の元/いのちのもと」と「命の素」は称呼・観念のいずれか一方(又は両方)が類似すると判断されたのであり、この審査例から類推すれば、「麦緑元」と「麦緑素」も称呼・観念のいずれか一方(又は両方)において類似すると結論づけられる。
よって、引用商標と称呼・観念において類似する本件商標は、明らかに商標法第4条第1項第11号の規定に該当する。
(4)商標法第4条第1項第15号について
出願人「日本薬品開発株式会社」は、創業者であり当時社長であった「萩原義秀」により昭和43年に創業され、同氏が研究・開発した麦の若葉エキスを搾汁して製造する青汁粉末「グリーンマグマ」を主力商品とする、青汁の分野では草分け的な企業である(昭和40年代に「麦類緑葉粉末の製法」の特許を取得している:甲第8号証)。
そして、昭和51年、「萩原義秀」は「グリーンマグマ」を含む同社製造の麦の若葉エキスを「麦緑素」と命名し、引用商標を登録し、商標「麦緑素」の付された商品を市場に提供し続けてきたものである(甲第9号証ないし甲第13号証参照)。
また、「麦緑素」に関する記事や広告は、1970年代より現在に至るまで新聞や雑誌に多数掲載されており(甲第14号証ないし甲第43号証)、「麦緑素」に関する著書も発行されている(甲第44号証ないし甲第46号証)。
その結果、引用商標が既に周知・著名となっていることは、前記したIPDLの日本国周知・著名商標検索で当該商標が検索できることにより明らかである(甲第3号証)。
甲第47号証は、IPDLの日本国周知・著名商標検索の根拠となった審決であり、その理由欄の中で「請求人の使用に係る『麦緑素』は、請求人により案出された一種の造語であって、継続して使用され、宣伝・広告された結果、本件商標出願時には、その使用にかかる商品『麦の葉または青汁を主成分とする加工品』について、請求人の業務に係る商品を表示するものとして取引者、需要者間に広く認識されるに至っていたものと判断するのが相当である。」と明確に指摘されている。
なお、甲第47号証の審決で審判請求人として表示されている「日本自然食品株式会社」は、請求人の関連会社であり、引用商標の前権利者である。また、審決文中の「本件商標出願時」とは、登録第2666163号商標の出願日である平成3年12月2日を指している。
すなわち、上記審決は、本件商標の出願日(平成12年4月7日)には、引用商標が周知・著名性を獲得していたことを明確に示している。
そして、比較する片方の商標が周知・著名である場合、商標の構成態様の一部が同一であれば、両商標は混同するおそれがある、とするのが「東京高裁平成16(行ケ)第129号審決取消請求事件」判決である(甲第48号証)。
当該判決では、商標「メバロチン」を周知であると認定した上で、「メバロ」が一致する商標「メバロカット」を使用した場合、「その取引者・需要者において,これを被告あるいは被告と資本関係ないしは業務提携関係にある会社の業務に係る商品と混同するおそれがある」と考察されている。
この判決の考え方は、周知・著名商標である引用商標と「麦緑」が一致する本件商標にも類推適用されるべきであり、被請求人が、称呼・観念において類似する本件商標を指定商品に使用すれば、取引者及び需要者に商品の出所について混同が生ずるおそれがあることは明らかである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第19号について
上記甲第47号証の審決において認定されているとおり、平成3年12月2日には引用商標は周知・著名性を獲得していたものである。
そして、その様な情況下の平成8・9年頃に、請求人と被請求人は直接取引があり、請求人の取扱商品である入浴剤「マグマ別府菖蒲 HS 15P」を被請求人が販売していたという経緯がある(甲第49号証ないし甲第52号証)。
また、その当時の営業担当者から「麦緑素」等の請求人の取扱商品の紹介を兼ねて会社案内やパンフレット等が提供されている。
つまり、当時既に周知・著名であった商標「麦緑素」及び「麦緑素」の付された商品を被請求人は十分認識していたと推認される。
しかるに、被請求人は、請求人との取引関係の終了後に本件商標を出願し、登録したものである。
したがって、これらの情況から考察すれば、本件商標が、周知・著名な引用商標を意識し、もじった造語商標であることは容易に推認できるものであり、被請求人が不正の目的をもって、本件商標を出願・登録したことは明らかである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(6)結論
「麦緑素」は案出された一種の造語であり、継続して使用され、宣伝・広告された結果、遅くとも平成3年12月2日には周知・著名性を獲得していた商標である。
そして、本件商標は、周知・著名な「バクリョクソ/麦緑素/BAKURYOKUSO」を意識した造語であり、称呼及び観念において「麦緑素」と類似する商標である。
したがって、本件商標を指定商品に使用すれば、取引者及び需要者に商品の出所について混同を生ずるおそれがあり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第19号に該当するにもかかわらず、誤って登録されたものである。

2 答弁に対する弁駁
(1)請求人は自社の営業所を通し市場調査を行ったが、被請求人の「麦緑元」を付した商品を確認することはできず、ただ唯一、ある薬店を通して入手した(店頭に置いていないので注文して取り寄せた)商品で、被請求人の「麦緑源」を見つけたが、これは「元」ではなく「源」と表記された商品である(甲第53号証)。
また、被請求人は、「請求人の商品は量販店では見かけない。」と主張する。
しかし、請求人の商標「麦緑素」を付した商品は、「マツモトキヨシ」では取り扱われていないが、全国の薬局・薬店・健康食品店や百貨店及びいわゆる大型チェーン店形式の量販店(例えば、「キリン堂」「セガミメディックス」「ダイコクドラッグ」等)において広範囲に取り扱われているものであり、被請求人の主張は明らかに事実に反するものである。
なお、被請求人は、「マツモトキヨシ」において、商品を購入しにきたお客10人位に「麦緑素」という名前の健康食品を知っているかと尋ね、ほとんどの人から知らないという答えを得たと主張するが、この調査は明らかに信頼性に欠けるものである。
すなわち、この調査は、被請求人により「麦緑素」を付した商品を取り扱っていないと確認を行った「マツモトキヨシ」で調査されていること、及び調査対象者が僅か10人程であり、統計的な意味をもたないことを考慮すれば、到底「麦緑素」の周知性の判断材料とはなり得ない調査である。
(2)被請求人は、「両商標は漢字の前側2文字『麦緑』は同じであるが、後側1文字が『素』と『元』のように相違し、3文字からなる『麦緑元』『麦緑素』はそれぞれ造語として独特の意味合いを有しており、互いに相違する。」旨主張する。
しかし、「広辞苑第4版」によると、「元」の意味は「もと、みなもと、おこり、事物の根本となるもの、はじめ、最初」、「素」の意味は「物事・物質のもととなるもの」と記載されており、この記載からすれば「麦緑元」「麦緑素」からは「麦の緑のもと」の共通の観念が生ずることは明らかである。
また、一般的に語頭部の音の方が聴者にとっては比較的強い印象となり、記憶に残り易いことは、経験的によく知られているが、両商標から生ずる称呼「バクリョクゲン」「バクリョクソ」は、称呼音数6・7音のうち頭部の5音「バクリョク」を共通にしている。
さらに、実際の市場において、語頭部に「バクリョク」の音を有する健康食品及び「麦緑」の文字を付した健康食品は請求人の知るところでは他に存在していない。このような状況下で、引用商標に類似した本件商標「麦緑元」を付した商品が市場に出回れば、需要者(一般消費者)は、該商品があたかも「麦緑素」シリーズの商品、あるいは「麦緑素」商品の改良品であるかの如く混同するおそれは十分にある。
(3)被請求人は、「『メバロチン』と『メバロカット』に関する甲第48号証の判決は、共通ずる『メバロ』が単に音が共通する表音文字であって、漢字の有する意味を加味しておらず、参考になる事例ではない。」旨主張している。
しかし、甲第48号証の「メバロチン」と引用商標は、共にIPDLによる周知・著名商標であり、無効審判事件において商標の類否及び商品の出所混同の有無が問題になっている点で共通している。
また、本件両商標は頭部音「バクリョク」を共通にする点で「メバロチン」「メバロカット」の事案と同様であり、さらに、漢字の有する意味自体が「素」と「元」、「麦緑素」と「麦緑元」では類似しているのであるから、同一市場に両商標を付した商品が出回った場合に、取引者・需要者(一般消費者)に混同が生じるおそれがあることは明らかである。
甲第54号証は、商標「メバロコール/MEVALOCKOL」と「メバロチン」「MEVALOTIN」の類否を考察した審決であり、この審決の考え方も、本件商標に類推適用されるべきであり、本件商標をその指定商品に使用した場合、取引者・需要者(一般消費者)は、語頭の「麦緑」の文字部分を商標の基幹部分として印象、把握し、請求人の周知・著名商標である「麦緑素」と「麦緑」が一致していることから、観念的な連想を惹き起こし、当該商品が「麦緑素」シリーズの商品であるかのように商品の出所につき混同を生ずるおそれがある。
なお、被請求人が本件商標に適すると主張する乙第4号証の判決は、「滋養強壮変質剤」と「防虫剤・防臭剤」に使用する商標を比較検討した事例であり、本件には全く適さない事例である。
(4)被請求人は、「請求人の商品の宣伝広告の形態は、『麦緑素』だけではなく、『グリーンマグマ』などの語を併記したものが多く、商品の出所の混同を生じるおそれはない。」旨主張する。
しかし、パッケージに複数のブランドを付すのは、業種を問わず一般的に行われている行為であり、表記した商標の数や商標の配列によってブランドとしての価値が定まるものではない。
請求人の商標「麦緑素」は、請求人の大麦若葉エキスの商品群のファミリーネーム(統一ブランド)として位置付けており、そのペットネーム(個別ブランド)として「グリーンマグマ」等を使用している。
つまり、「麦緑素」「グリーンマグマ」は、両方共に、請求人の業務に係る大麦若葉エキス商品群と個別商品を示すブランドであり、請求人がパッケージや広告に「麦緑素」と「グリーンマグマ」を併記していることは、「麦緑素」の商標としての機能を何ら減じるものではなく、また、商品の出所混同を否定する根拠となり得ないことは明らかである。
よって、本件商標が使用されることにより、ファミリーネームである「麦緑素」のペットネームの一つ、又は関連商品であるかのように誤認混同されるおそれがある。
(5)被請求人は、「被請求人と請求人は、平成8年に取り引きを中止した後は取引を行っていないことから、請求人の業務と混同を生するおそれはない。」旨主張する。
しかし、健康食品を扱う薬局・健康食品店・百貨店・量販店であるドラッグストアでは、一般的に健康食品コーナーを設け、青汁関連の商品はまとめて陳列されているのが通常である。
この様な状況下で、漢字3文字のうち頭部2文字「麦緑」が共通する本件商標を付した商品が、請求人の「麦緑素」商品群と並んで陳列された場合に、取引者・需要者(一般消費者)が商品の出所について混同を生ずるおそれは高い。
よって、現時点において請求人と被請求人が取引を中止していることは、両者の混同を何ら否定する根拠となり得ない。
(6)請求人の商標「麦緑素」を付した商品は、「マツモトキヨシ」での取り扱いはないが、全国の薬局・薬店・健康食品店・百貨店や大型チェーン店形式の量販店(「キリン堂」「セガミメディックス」「ダイコクドラッグ」等)において広範囲に取り扱われているものである。
そして、請求人は、その全ての大麦若葉エキス商品に商標「麦緑素」を付している。
この様な状況下で、周知・著名商標である「麦緑素」と類似する「麦緑元」を被請求人が指定商品に使用すれば、取引者・需要者(一般消費者)が誤認・混同を生ずるおそれがあることは明確である。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。

1 本件商標と引用商標との類否についてについて
(1)本件商標と引用商標は、その構成中の漢字が「麦緑元」と「麦緑素」のように互いに相違する。
(2)引用商標が、日本国周知・著名商標リストに掲載されていることは認めるが、本件商標は請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれはない。
引用商標は、昭和60年に審査で拒絶され、審判を請求して平成7年10月3日付けで登録すべき旨の審決を得て登録されたものである。
そして、後記する甲第47号証に記載されているように、「本件商標出願時(即ち、平成3年12月2日)当時には取引者、需要者間に広く認識されるに至っていたものと判断するのが相当である。本件商標は「バクリョクソ」の称呼を生じるものであること明らかである。」と平成10年1月21日付けで認定されたが、その後に出願された本件商標は、平成12年4月7日に出願し、平成13年5月25日付けで登録されたものである。
(3)被請求人と請求人との間で取引をした経緯はあるが、その取引関係を終了した後、被請求人は、種々検討して作成した造語「麦緑元」が商標として登録されるか否かの判断を求めるために特許庁に出願して判断を求め、登録になった後に、本件商標の使用を開始したものであり、平成12年4月17日に出願した本件商標は、審査において、商標法第4条第1項第11号、第15号及び第19号を引用された事実はなく、不正の目的をもって出願・登録されたという主張は認めることができない。
(4)請求人は、インターネット上にホームページを開設している。
しかし、この種商品の購入者は老若男女を問わないものであり、商品購入者がインターネットのwebサイトを見て、購入すべき商品を決めるわけではなく、また、インターネットに掲載されているからといって、商品購入者がそのwebサイトを見るとは限らない。
例えば、高年齢の商品購入者の中には、インターネットを利用せずに、実際に店先の商品を見たり、商品広告している新聞や雑誌などの広告媒体を見たり、商品の価格などを検討して購入する商品を決める者もいる。
また、今日、一般の小売薬局店はどんどん少なくなっており、大型のチェーン店形式の量販店が急増しているところ、例えば、「マツモトキヨシ」などの量販店では、請求人の商品を取り扱っておらず、商品の混同を生じるおそれはない。

2 請求人及び利害関係について
(1)請求人は、本件商標より以前に出願、登録された引用商標の商標権者であり、本件商標に関係なく引用商標を使用することが出来るものであるから、本件商標を無効にする必要は認められない。
ここで、本件商標「麦緑元」と引用商標「葉緑素」とは構成が相違し、後側に位置する漢字が「元」と「素」のように相違し、それぞれ独特の造語を形成しているため、両者の商品が混同し、それに基づくクレームを商品購入者であるお客から受けた事実はない。
(2)なお、被請求人の社員が、量販店の一つである「マツモトキヨシ」において、お店に商品を購入しにきたお客、10人位に「『麦緑素』という名前の健康食品を知っているか。」と尋ねたところ、請求人の商標「麦緑素」を付した商品を取り扱っていないためか、ほとんどの人から、「知らない。」との答えを得ている。

3 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標と引用商標の構成について比較する。
本件商標は、上段に平仮名文字「ばくりよくげん」、下段に漢字「麦緑元」を配して二段に併記して構成したものであるのに対し、引用商標は、上段に片仮名文字「バクリョクソ」、中段に漢字「麦緑素」、下段に欧文字「BAKURYOKUSO」を配して三段に併記して構成したものである。
ここで、両商標を外観上から比較すると、二段構成と三段構成のように構成が相違し、さらに、漢字の前側2文字「麦緑」は同じであるが、後側1文字が「素」と「元」のように相違し、3文字からなる「麦緑元」「麦緑素」はそれぞれ造語として独特の意味合いを有しており、互いに相違するものである。
(2)本件商標と引用商標を称呼上から比較すると、本件商標「麦緑元」は、併記した平仮名文字から「バクリョクゲン」と6音に発音するのが自然であり、他方、引用商標「麦緑素」は、併記した片仮名文字及び欧文字から「バクリョクソ」と5音に発音するのが自然である。
このように、両者の音数が6音と5音のように1音相違している。
しかも、前側4音「バクリョク」は同じであるが、それに続く後側は「ゲン」と「ソ」であってそれぞれ発音が相違し、両者の称呼は明らかに異なるものであり、特に、「ゲン」の場合は、前の発音「ゲ」が濁音であってアクセントが存して強く発音するように聞こえ、さらに、それに続いて「ン」と溌ねるように多発音することから、引用商標の語尾音「ソ」とは、発音及び語調が明らかに相違するものである。
(3)請求人は、「『元』の文字は『モト』と読み、本件商標『麦緑元』から『バクリョクモト』の称呼を生じさせても不自然ではない。また、『素』の文字を『モト』と読み、引用商標『麦緑素』から『バクリョクモト』の称呼を生じさせても不自然ではない。」旨主張するが、これは一方的な主張である。
(4)本件商標に仮名文字、また、引用商標に仮名文字と欧文字とが併記されていることから、この併記した仮名文字を無視した読み方は極めて不自然であって、本件商標および引用商標を、それぞれ「バクリョクモト」と発音できるとする主張は、語調の面からも極めて不自然であり、たとえ、仮名文字が併記されていなくても漢字部分の発音は「バクリョクゲン」「バクリョクソ」と読むのが自然である。
このことは、甲第47号証において、「麦緑素」から「バクリョクソ」の発音が生じること明らかである」と認定されていることからも自然である。
(5)請求人は、甲第6及び7号証に基いて、商標「命の元/いのちのもと」(商願2001一10261号)が、先登録商標「命の素」(登録第2603403号)と類似し、商標法第4条第1項第11号に該当して拒絶査定を受けていると主張している。
しかし、「命の元/いのちのもと」および「命の素」の如く、「の」の文字が組み合わさっていると、「元」でも「素」でも「モト」と発音するのは語調上からは可能である。しかしながら、本件商標及び引用商標は、いずれも「の」の文字を「元」及び「素」の前に有しておらず、漢字3文字で「麦緑元」「麦緑素」と構成されており、共に「バクリョクモト」と発音するとする主張は極めて不自然である。
(6)さらに、本件商標を構成する「麦」「緑」「元」は、何れも一般に親しまれた漢字であることからすれば、本件商標からは明らかに「麦の緑の初め、麦の素」などの観念を生すると主張するが、一方的な主張である。
たしかに、「麦緑」の部分は、「緑色をしている麦」などの意味合いを有し、商品の内容、原材料などを意味するとして、商標法第3条第1項第3号の規定に該当する可能性を有する語であるが、「元」の文字は、「こうべ、首、もと、みなもと、おこり、おさ、首長、事物の根本となるもの、王朝の始まり、年号の第1年、はじめ、さいしょ、人民、方程式の未知数、集合の要素、中国の貨幣の単位」とあり、さらに、「中国の王朝の一つ」(乙第1号証)とあり、一体に組み合わさった「麦緑元」は独特の観念を有する造語である。
これに対し、引用商標も「麦」「緑」「素」は、いずれも一般的に親しまれている漢字であり、3文字とも商品の品質、内容を表す語のためか、商標の構成を、片仮名文字、漢字、欧文字で三段に構成してある。
このように、特殊な構成にしたことや、甲第47号証に示されている事情により、審査で拒絶になった引用商標が審判において登録されたものと思われる。
(7)本件商標と引用商標が類似するとするならば、本件商標は審査において引用商標が引用されて、登録されることはなかったはずである。しかるに、本件商標が審査において引用商標を引用されることなく登録になったということは、本件商標と引用商標とは互いに類似しないと判断されたものである。

4 商標法第4条第1項第15号について
(1)「麦緑素」について
請求人は、昭和44年4月に「麦類緑類粉末の製法」という名称の発明について出願し、昭和47年に特許になったことは認められ、さらに、昭和59年、62年、平成3年、7年に発行された会社案内には「麦緑素」を市場に提供してきたことは認められる。
また、「麦緑素」を長年使用してきた結果、IPDLの日本国、著名商標検索の根拠となった審決(甲第47号証)において、無効にされた商標の出願時である平成3年12月2日当時には、需要者間に広く認識されるに至ったものと判断するのが相当であるとするならば、本件商標は、審査において商標法第4条第1項第15号に該当するとして拒絶されるべきであったはずである。
(2)引用商標が周知、著名であるとするならば、それは、あくまで「麦緑素」からなる商標についてであって、「麦緑」の部分にあるわけではない。 また、両者の前半の「麦緑」が共通し、「麦緑元」「麦緑素」のように漢字3文字が組み合わさった漢字からなる造語の一部を取出して判断する方法は、表音文字ならばともかく、漢字などの表意文字の場合は、造語の有する意味合いを考慮する必要があり、一方的な主張である。
(3)さらに、「メバロチン」と「メバロカット」に関する甲第48号証を提示しているが、本件は上記したように「麦緑元」「麦緑素」のように漢字からなる表意文字であるのに対し、共通する「メバロ」は単に音が共通する表音文字であって、漢字の有する意味を加味しておらず、参考になる事例ではない。
(4)請求人は、甲第47号証における登録第2666163号の「麦緑素」(商公平5-83169号(乙第2号証)の出願時、平成3年12月2日には周知になっていたとするのが相当であるとの判断を、合議体からなる審判官は平成10年1月21日付で行っている。
そして、その後の平成12年4月7日付で出願した本件商標は、商標法第3条第4条第1項第11号、第15号に該当することなく、登録されたものである。
(5)さらにまた、請求人は、平成12年7月27日付けで、商標「麦緑素」を第29類に出願したところ、審査において、商標法第3条1項を引用され、それに対応して意見書及び手続補足書を提出して登録になっていることからも、周知、著名となった商標と略同じ漢字「麦緑素」からなる商標が、商標法第3条1項に該当すると判断されてから登録されている。
(6)商品の販売状態
宣伝広告の形態は、「麦緑素」の他に「グリーンマグマ」の文字を組み合わせて使用している。例えば、甲第22号証ないし甲第24号証、甲第26号証、甲第32号証、甲第36号証ないし甲第40号証、甲第42号証及び甲第43号証及び乙第3号証に示すような形で使用しており、商品の混同を生じるおそれはないものである。
(7)使用状況
請求人は、甲第14号証ないし甲第46号証により、新聞、週刊誌、業界新聞などに広告を掲載した事実を示しているが、その使用形態は、前記したように「グリーンマグマ」「麦緑素」を組合わせて使用しており、商品の宣伝に使用する場合は「麦緑素」だけではなく、「グリーンマグマ」などの語を併記したものが多く、商品の出所の混同を生じるおそれはない。
また、昭和51年は9種類の宣伝広告を行っており、それ以外は広告媒体を種々変更して1年に1、2回程度、または、数年おきに宣伝広告しているが、同じ広告媒体にある一定継続して宣伝広告している事実は見当たらない。
(8)取引関係
被請求人と請求人とは、平成5年に取り引きを開始し、平成8年に取り引きを中止したもので、その間、数回取引を行ったが、その後は取引をおこなっておらず、請求人の業務と混同を生じるおそれはない。
(9)審判決例
本件商標に適する審判決例に、乙第4号証がある。

5 商標法第4条第1項第19号について
請求人は、引用商標を出願し、その後拒絶になり、この査定を不服として査定不服審判の請求中に、商標第2666163号の無効審判請求を行った事件において、この登録商標の出願時、すなわち、平成3年12月2日には、請求人の「麦緑素」は周知、著名になっていたと認めるとして、上記登録商標を無効にし、ついで、その後に出願した引用商標が登録になったものである。
さらに、その後の出願である本件商標は、引用商標と相違し、且つ、不正の目的をもって使用するものではなく、商標法第4条第1項第19号に該当しないものとして登録になったものである。

6 結語
以上のとおり、引用商標と本件商標とは、明らかに構成が相違するもので、たとえ、引用商標が、かって周知、著名であったとしても、現在周知、著名であるかはっきりせず、「麦緑素」と「麦緑元」とは、明らかに構成が相違し、本件商標が不正の目的で出願、登録を受けたものではないものであり、本件商標は商標法第4条第1項第11号、第15号及び第19号に該当するという主張は、認めることはできない。

第5 当審の判断

1 審判請求の利益について
商標登録の無効審判を請求する者は、審判を請求することについて法律上の利益を有することを要すると解されるところ、請求人は、本件商標が類似し、また、本件商標が使用されると商品の出所について混同を生じるおそれがあると同人が思料する引用商標の商標権者であり、また、その使用者と認められる。
してみれば、本件商標の登録の有無は、自己の商標を使用し管理する地位に直接関わることといえるから、請求人は、本件審判を請求することについて利害関係を有する者というべきである。
よって、本案に入り審理する。

2 商標法第4条第1項第15号について
(1)商標法第4条第1項第15号にいう「混同を生ずるおそれ」の有無は、「当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品又は指定役務と他人の業務に係る商品又は役務との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品又は役務の取引者・需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品又は指定役務の取引者・需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである。」(平成10年(行ヒ)第85号、最高裁判所平成12年7月11日判決)。
これを本件について見ると、次のとおりである。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度
(ア)外観構成について
本件商標は、別掲(1)のとおり、「ばくりょくげん」と「麦緑元」の文字からなるものであるところ、漢字部分に比して、ひらがな部分は細く小さく表されたものである。
一方、引用商標は、「バクリョクソ」「麦緑素」「BAKURYOKUSO」の文字からなるものであるが、漢字部分は、これを上下に挟んだ文字に比して、圧倒的に大きく太い線であらわされているものである。
したがって、両商標は、いずれも漢字部分を基本として構成されている商標とみるのが相当である。
そこで、その漢字部分の外観構成についてみると、両者は、「麦緑」の文字を共通にしており、相違する「元」と「素」の文字にしても、それぞれが帯有する「もと、はじめ」の意味合いにおいて相通ずる点があることから、離隔的にみれば、互いに錯綜し取り違えられる余地があるとするのが相当である。
してみると、両商標は、構成上漢字部分が基本となると認められるものであるから、両者の外観における類似の程度は相当に高いというべきである。
(イ)称呼について
称呼についてみると、本件商標と引用商標は、それぞれの構成文字に相応して、本件商標からは「バクリョクゲン」の称呼、引用商標からは「バクリョクソ」の称呼を生ずるというのが相当である。
請求人は、「元」が「もと」、「素」が「もと」と訓読されることから、本件商標は「バクリョクモト」、引用商標は「バクリョクモト」の称呼をも生ずるものであると主張する。
しかしながら、それぞれの構成において、「麦緑」が「バクリョク」と音読されながら、「元」及び「素」の文字(漢字)部分に限って敢えて訓読されるとすべき格別の理由はなく、全体を音読した前記両称呼「バクリョクゲン」及び「バクリョクソ」が、各構成漢字に相応した称呼として自然なものといえるから、請求人の上記主張は採用し難いものである(なお、請求人が参考にすべきとして引用する「命の元」「命の素」の審査例(甲第7号証)は、助詞「の」を有し「命」を訓読する点で本件とは事案が異なるというべきである。)。
しかして、本件商標の称呼「バクリョクゲン」と引用商標の「バクリョクソ」の称呼を比較すると、語頭から5音「バクリョク」が同じであり、語尾で「ゲン」と「ソ」の音の差異を有するものである。そして、差異音それ自体を対比すれば相違は明らかであるけれども、両称呼は、称呼の識別をするうえで最も印象に残る語頭部分から連続する圧倒的に多比率の音を共通にしており、比較的印象の薄い語尾の差異が前記共通点を凌駕する程のものとはいい難いことから、全体の語感、語調は近似しているということができ、両者の類似の程度は決して低いということはできない。
(ウ)観念について
両者の構成文字である漢字に徴すれば、表意文字として各漢字毎に意味を有するけれども、「麦緑元」及び「麦緑素」の全体としては、一義的に定まる特定の観念は生じないというのが相当である。
よって、観念においては比較し得ないけれども、観念上の相違によって、両者を明確に弁別し得ることはないということができる。
(エ)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標の外観及び称呼における共通点と相違点を対比すれば、両商標は相当程度の類似性を有するということができる。
なお、被請求人は本件に適切な事例として乙第4号証の判決例を示しているが、同事案は、「エ」と「ア」及び「E」と「A」という語頭文字部分を異にする事案であって、本件とは事案を異にするというべきである。
(3)引用商標の周知著名性
(ア)請求人の主張及び証拠によれば、請求人は、医薬品の開発製造や化粧品の製造販売、健康食品等の販売をする昭和43年8月1日に設立された法人であり、また、日本自然食品株式会社は、請求人の関連会社であって(甲第9号証ないし甲第13号証)、会社案内(甲第9号証)には両者の名称が併記されている。
日本自然食品株式会社の代表者であった萩原義秀が中心となり、「麦類緑葉粉末の製法」(特公昭46-38548:甲第8号証)を開発し、同人らは、それを製品化した「麦の葉またはその青汁を主成分とする加工品」の名称として「麦緑素」の語(文字)を採択したことが窺える。
(イ)証拠によれば、請求人と日本自然食品株式会社(以下「請求人ら」という。)は、「麦緑素」の文字(「ばくりょくそ」の振り仮名を付したものを含む。)を「麦の葉またはその青汁を主成分とする加工品」(大麦若葉のエキス粉末)に使用し、その宣伝広告を「壮快(昭和51年12月号)」(甲第22号証)、「婦人生活(1987年2月)」(甲第24号証)、「医薬・健康ニュース(平成10年1月1日号)」(甲第32号証)、「朝日新聞(平成12年2月28日)」(甲第35号証)に掲載した事実を認めることができ、さらに、甲第47号証の審決中には、昭和54年から同62年の間における同宣伝広告の掲載事実の摘示があることが認められる。
(ウ)また、「麦緑素」(麦の葉またはその青汁を主成分とする加工品)について、その効果、効能等を紹介する記事が、「女性セブン(昭和51年4月28日・5月5日合併号)」(甲第16号証)、「週刊サンケイ(昭和52年6月2日号)」(甲第23号証)、「アサヒグラフ(平成9年2月21日発行)」(甲第31号証)、「スポーツ報知(平成11年8月28日)」(甲第34号証)等のほか、昭和51年から平成11年の間に、「週刊ポスト」「日本工業新聞」「週刊時代」「みどりと健康」「健康ファミリー」「週刊ダイヤモンド」「健康産業流通新聞」「大阪新聞」といった多数の雑誌・新聞(甲第17号証ないし甲第21号証、甲第25号証ないし甲第30号証)に掲載された事実を認めることができる。
(エ)さらに、「驚異の健康源 麦緑素」と題する著者萩原義秀の書籍が、昭和56年6月15日に初版第1刷が発行され、その後、平成9年1月30日現在で第44刷が発行されたことが認められる(甲第44号証)。
(オ)以上の事実を総合勘案すれば、請求人らの使用に係る「麦緑素」は、請求人らにより案出された造語であって、請求人らにより継続して使用され、宣伝、広告された結果、本件商標の出願時には、請求人の業務に係る商品を表示するものとして取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていたと判断するのが相当である。
そして、その周知性は、本件商標の登録時を含め、それ以降にも継続していたと認められ(甲第36号証ないし甲第43号証)、これを覆すに足りる証拠はない。
(カ)なお、被請求人は、「麦緑素」の使用態様が「グリーンマグマ」とともに使用されていることを指摘するが、そのことによって、「麦緑素」の識別機能が減殺されたり、出所表示力が損なわれることはないというべきであり、前記認定を左右するものとはいえない。
(4)引用商標の独創性の程度
「麦緑素」の語は、国語辞典等には、一連の成語としての掲載はされておらず、請求人により創作された一種の造語と認められる。
(5)本件商標の指定商品と引用商標の所有者の業務に係る商品との間の性質、用途又は目的における関連性の程度
本件商標の指定商品は、「大麦の若葉を主原料として顆粒状・粒状・錠剤状・液状にした加工食品」であり、これに対し、引用商標の指定商品は、「麦の葉またはその青汁を主成分とする粉末状・錠剤状・粒状・液状・顆粒状・カプセル状加工食品,麦類若葉を主原料とする粉末状・錠剤状・粒状・液状・顆粒状・カプセル状加工食品」であって、引用商標は前記指定商品の一に使用されていると認め得るものである。そして、本件商標と引用商標の両商品はいずれも、栄養補助食品等の所謂健康食品と称されるものであり、その製法等に違いがあるとしても、同一の用途を有し、その性格を共通にするものであって、関連性が極めて深い商品である。
(6)商品の取引者・需要者の共通性
また、両者の需要者は、いずれも健康の維持・向上に高い関心を有する一般消費者が主な需要者であり、共通していると認められる。
(7)小活
本件商標と引用商標の類似性の程度、引用商標の周知著名性、商品間の関連性及び需要者の共通性等を総合勘案すれば、本件商標の登録査定時はもとよりその出願時において、本件商標をその指定商品に使用すると、需要者が引用商標の「麦緑素」を想起し連想して、当該商品を請求人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品、関連商品やシリーズ商品であるかのように誤信し、その出所について混同するおそれがあったというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

3 結語
上記のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、その余の理由について論及することなく、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲

(1)本件商標




(2)引用商標






審理終結日 2007-05-07 
結審通知日 2007-05-10 
審決日 2007-05-22 
出願番号 商願2000-36174(T2000-36174) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (Z29)
最終処分 成立  
前審関与審査官 寺光 幸子 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 鈴木 修
渡邉 健司
登録日 2001-05-25 
登録番号 商標登録第4476981号(T4476981) 
商標の称呼 バクリョクゲン 
代理人 神吉 出 
代理人 辻本 希世士 
代理人 辻本 一義 
代理人 田代 和夫 

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