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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y05
管理番号 1160783 
審判番号 無効2005-89154 
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-12-02 
確定日 2007-04-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第4791617号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4791617号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4791617号商標(以下「本件商標」という。)は、「ハルンナート」の片仮名文字と「HARNNAT」の欧文字とを上下二段に書してなり、平成15年12月15日に登録出願、第5類「薬剤」を指定商品として、同16年7月30日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第2195341号商標(以下「引用商標」という。)は、「ハルナール」の片仮名文字と「HARNAL」の欧文字とを上下二段に書してなり、昭和62年12月18日に登録出願、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)薬剤、医療補助品」を指定商品として、平成1年12月25日に設定登録され、その後、同11年8月24日に商標権存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のとおりに述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第59号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものであるから、商標法第46条第1項第1号に基づいて、その登録を無効とされるべきである。
(1)商標法第4条第1項第11号該当性
ア 本件商標と引用商標との対比
(ア)外観について
本件商標は、片仮名文字を「ハルンナート」と左横書きし、その下部にアルファベットを「HARNNAT」と左横書きしたものである。
これに対し、引用商標は、片仮名文字を「ハルナール」と左横書きし、その下部にアルファベットを「HARNAL」と左横書きしたものである。
しかして、本件商標は、片仮名文字6文字とアルファベットの7文字を、また、引用商標は、片仮名文字5文字とアルファベットの6文字を、それぞれ上下二段に左横書きした点で構成が類似する。そして、その構成において両商標は、片仮名文字における第一番目の文字「ハ」と第二番目の文字「ル」を同じくすると共に本件商標における第四番目の文字「ナ」及び五番目の長音「ー」と、引用商標における第三番目の文字「ナ」及び第四番目の長音「ー」とを同じくするものであり、また、アルファベットにおける第一番目の文字「H」から第四番目の文字「N」までの「H、A、R、N」までを同じくすると共に本件商標における第六番目の文字「A」と、引用商標における第五番目の文字「A」とを同じくするものである。
したがって、両商標は、片仮名文字おいて、中間の「ン」が有るか無いか及び最後部が「ト」であるか「ル」であるかの微差と、アルファベットにおいて、中間において「N」の文字1字多いか少ないか及び最後部に「T」があるか「L」があるかの微差にすぎないので、両商標間には構成上の共通性が多く、取引者及び一般需要者らが本件商標及び引用商標に接した場合は、外観上容易に両商標の差異を明確に区別することができない類似の商標であり、この外観上の差異は、本件商標及び引用商標を時と所を異にしていわゆる離隔観察においても、容易に区別することができない外観上類似の商標である。
(イ)称呼について
本件商標からは、「ハルンナート」の称呼が、これに対し引用商標からは、「ハルナール」の称呼がそれぞれ生ずる。
しかして、本件商標より生ずる「ハルンナート」の称呼は、「ハ」、「ル」、「ン」、「ナ」、「ー」及び「ト」 の6音構成より成り、一方、引用商標より生ずる「ハルナール」 の称呼は、「ハ」、「ル」、「ナ」、「ー」、「ル」の5音により構成されるものであり、本件商標と引用商標は、「ハ」、「ル」及び「ナ」、「ー」 の4音を共通にするものである。なお、本件商標の第三番目の音「ン」の音は、有声の気息を鼻から洩らして発するところの弱い鼻音であるため、第二番目の音である舌面を上歯茎に接触して発する強い歯茎(弾音)「ル」 の音にほとんど吸収されて弱音となり、「ン」 の音を独立して明確に聴別することができなくなるため、実質的には、5音からなる構成ということができる。そうした場合、本件商標と引用商標は、共に5音から構成され、その中4音を共通にするものであり、構成上の共通性が認められる。
よって、両商標は、称呼上も極めて近似する類似の商標である。
(ウ)観念について
本件商標からも、引用商標からも、特定の観念を生ずることがないので、これを対比することはできない。
イ 以上のとおり、本件商標は、引用商標と外観及び称呼において類似することは明らかであるから、商標法第4条第1項第11号により登録を受けることができないものである。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性
ア はじめに
引用商標は、請求人の業務に係る商品「前立腺肥大症の排尿障害改善剤」(α受容体遮断剤)(以下、「前立腺疾患治療剤」ともいう。)に付されて1993年新発売以来継続して使用されている周知・著名の商標である。「ハルナール」といえば請求人の業務に係る商品との認識が広く定着しているものである。さらに、新発売当時においては語頭部「ハル」 を持つ商品は当該治療領域には存在しなかったのである。
さらに、本件商標と引用商標を比較検討してみるに、本件商標より生ずる「ハルンナート」 の称呼と引用商標より生ずる「ハルナール」の称呼とは、語頭からの「ハ」、「ル」さらに「ナ」、長音の「ー」の4音を全く同じくしているところ、文字により構成された商標における、自他商品を識別するための標識としての機能を果す場合において、最も重要な要素となる語頭部分に存する音であるばかりでなく、語央部における複数の音をも共通にしているものであるから、他の音に吸収され、ほとんど聴別できない「ン」 の有無の差異は、あるものの、両商標が、薬剤について使用される場合には、その構成中の語頭部分の「ハル」 の文字部分は、後半部の「ナール」及び「ンナート」 の文字部分に比して、自他商品の識別力を果す最も重要な部分、いわゆる、商標の要部若しくは商標の基幹部分というべきものである。
さらに、薬剤等の商標として、「ハル」の音で始まるものは、前立腺疾患治療剤としては、引用商標のみであることからも、本件商標をその指定商品である「薬剤」 について使用をするときは、観念的な連想を惹きおこし易い、その基幹部分「ハル」 を共通にし、しかも、引用商標の6音構成中、4音をも共通にしている点、さらに他の音に吸収され、ほとんど聴別できない「ン」の有無の差異からも、請求人の製造・販売する商品「前立腺疾患治療剤」に使用する引用商標を連想させ、これに接する取引者・需要者は、請求人のシリーズ商標若しくは姉妹商品として、請求人の製造・販売に係るものと誤認し、その商品の出所につき、混同を生じさせるおそれの充分にある、彼此相紛らわしい商標である。
イ 引用商標の周知・著名性について
引用商標が周知・著名性な商標であることは、以下に示す甲第5号証及び甲第6号証からも明らかである。
すなわち、甲第5号証に示されるように、引用商標は、請求人の業務に係る商品「前立腺肥大症の排尿障害改善剤」(α受容体遮断剤)に付されて使用され、年間平均約470億円近くを売り上げており、例えば、2003年度( 2003年4月?2004年3月)についていえば、合計して約521億円(前立腺治療剤市場における市場占有率66%)を売り上げており、請求人の業務には極めて重要な商品となっているのである。
また、上記商品の広告宣伝活動は、専門誌、業界誌への広告掲載あるいは病院等の医療機関へのパンフレットの提供等によって全国的に広く行われ、その結果として、引用商標「ハルナール」 は、請求人の業務に係る「前立腺肥大症の排尿障害改善剤」(α受容体遮断剤)を表示するものとして広く認識されるようになったものである。
これら広告宣伝活動の内、広告掲載に要した費用は、甲第6号証の宣伝費用一覧表に示すように、例えば、2001年から2004年についての広告宣伝費用をみると、2001年が約3330万円、2002年が約3121万円、2003年が約2102万円、2004年が約1259万円となっており、各年度によって異なるが、およそ年平均2453万円、上記4年を通算すると合計約1億円を投入しているものである。表中の「FRM」、「DOR」、「Ga-D」、「Hy」及び「Em」の文字は、請求人が製造・販売する他の製品の略語であり、「FRM」は「ファロム」、「DOR」は「ドルナー」、「Ga-D」は「ガスターD錠」、「Hy」は「ヒポカ」、「Em」は「エミレース」をそれぞれ指す。なお、これらの他の製品に関する広告宣伝費用は、上記した各年度の広告宣伝費用及び合計額には含まれていないことを念のため付言する。
このような取引の実情を鑑みるに、引用商標は「前立腺肥大症の排尿障害改善剤」(α受容体遮断剤)を表示するためのものとして、この種商品を取り扱う業界における取引者及び需要者の間において、広く認識されている周知・著名な商標であるというべきである。したがって、これと相紛らわしい本件商標を、その指定商品「薬剤」について使用するときには、これらに接する取引者及び需要者をして、その商品が、請求人の業務に係る商品であるかの如く誤認し、その商品の出所につき混同を生じさせるおそれが充分にあるものといわなければならないところである。
ウ 証拠方法の提出
請求人は、この引用商標が周知・著名であることを立証するために、甲第7号証ないし甲第39号証を提出する。
以上の証拠方法によって明らかなように、請求人の引用商標が斯界における最も有効な媒体(雑誌等)を用いて、継続的、定期的に反復した宣伝広告に努めた結果、請求人の業務に係る商品「前立腺肥大症の排尿障害改善剤」(α受容体遮断剤)を表示するためのものとして、取引者及び需要者の間において、極めて広く認識された周知、著名な商標である。
エ 以上のことから、引用商標は、請求人の業務に係る商品「前立腺肥大症の排尿障害改善剤」(α受容体遮断剤)を表示するためのものとして、取引者及び需要者の間において、極めて広く認識された周知、著名な商標であることは明らかである。
したがって、これと相紛らわしい本件商標を、指定商品「薬剤」について使用するときには、これらに接する取引者及び需要者をして、その商品が、請求人の業務に係る商品であるかの如く誤認し、その商品の出所につき混同を生じさせるおそれが充分にあるものといわなければならない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号により登録を受けることができないものに対して登録されたものである。
(3)医薬品の取り違えに関する問題
ア 以上のように、本件商標と引用商標は、商標法第4条第1項第11号及び商標法第4条第1項第15号により登録を受けることができないものに対して登録されたものであるが、商標が類似するか否かあるいは商品の出所の混同が生じるか否かの判断に際しては、それに止まることなく、それを使用する医療現場の実情を考慮して判断する必要がある。何故ならば、本件商標や引用商標の指定商品である「薬剤」の場合、薬品名を間違って処方した場合、人命に影響するおそれが生じるからである。
イ 医療現場の実情
請求人は、この医療現場の実情を考慮する必要性を説明するために、医療事故その中でも医薬品の取り違えによる投薬ミスの事故を取り上げた新聞記事である甲第40号証ないし甲第45号証を提出する。
これらの新聞記事の情報にもみられるように、全国の病院で、よく似た名称の薬の取り違えによる投薬ミスの医療事故が後を絶たないのが実情である。
このような実情に鑑みても、医薬品を指定商品とする商標の類否の判断に際しては、外観、称呼、観念等の形式的な点についての判断に終始することなく、それを使用する医療現場の実情を考慮して判断する必要性がある。
さらに、請求人は、実際の医薬品の処方の現場において、具体的にどのようなケースで医薬品の取り違えに遭遇するのかを説明するために、甲第46号証及び甲第47号証を提出する。
これらの新聞記事や報告書にもみられるように、実際の医薬品の処方の現場において、薬の取り違えによる投薬ミスの事故には至らないものの、医薬品名を間違って危うく違う薬を処方しようとした、いわゆる、「ヒヤリ・ハット」事例が多発しているのが現状である。これらは、称呼の類似以外にも、語調や語感など、さらには文字の配置など外観においても勘違いが生じるような例を挙げているものであり、本件商標と引用商標は、この記事以上に類似しているといわざるを得ない。
なお、このような問題に対し、医薬品業界では、薬の取り違えによる投薬ミスを起こさないよう警鐘を鳴らすと共に、その原因を追究し、対策を講じ始めている。このことを説明するために、請求人は、「医療事故の防止をテーマに行われたシンポジュウムの内容を報告したニュース」(甲第48号証)、「医療事故の防止をテーマに行われたシンポジュウムにおいて、日本製薬団体連合会安全性委員会委員長の発言」(甲第49号証)、及び「医薬品の名称の類似性を客観的に判定する手法を試みた研究者による論文である『日本人間工学会誌 第43回講演集所収〈2A7 医薬品名称の類似性と混同に関する実験的研究〉』(第424頁及び第425 頁)」(甲第50号証)を提出する。
以上を総合するに、このような医療現場の実情を考慮すれば、尚のこと一層、本件商標の「ハルンナート」と引用商標の「ハルナール」 における誤差は、極めて小さいものであるといわざるを得ない。
ウ 医薬行政について
昨今の医薬行政においても、この医薬品の取り違えの問題は議論の的になっており、その対策に力を注いでいるのが現状である。この医薬行政の現状を説明するために、「事務連絡および新規承認医薬品名称類似回避フローチャート 厚生労働省医薬食品局安全対策課 平成17年10月17日」(甲第51号証の1)及び「医療用後発医薬品の承認申請にあたっての販売名の命名に関する留意事項について」(薬食審査発第0922001号)厚生労働省医薬食品局審査管理課長 平成17年9月22日」(甲第51号証の2)を提出する。
医薬行政においても、医薬品の取り違えに対する対策は重要かつ緊急の課題となっている。このような点に鑑みても、医薬品を指定商品とする商標の類否の判断は極めて慎重に行わなければならないものと思料するものである。
(4)判例及び拒絶査定の援用
請求人は、請求人の上記主張理由の正当性を立証すべく、本件事案と判断の軌を一にする、次の(ア)ないし(オ)の判決例及び拒絶査定例を援用する。
(ア)H17.10.26 知財高裁 平成17年(行ケ)第10418号(甲第52号証)
(イ)H17.2.24 東京高裁 平成16年(行ケ)第256号(甲第53号証)
(ウ)H17.2.24 東京高裁 平成16年(行ケ)第341号(甲第54号証)
(エ)H16.11.25 東京高裁 平成16年(行ケ)第129号(甲第55号証)
(オ)商願2003-93740に対する拒絶査定(甲第56号証)
(5)最後に、先発医薬品の特許権が切れたことを奇貨として、後発医薬品メーカーが先発医薬品の商標を真似て発売することは、いわゆる著名商標への只乗り(フリーライド)行為に外ならず、ひいては、請求人の努力によって著名になった商標を希釈化(ダイリューション)することに繋がるものであるから、請求人はこのような状況を黙視することはできないところである。
2 答弁に対する弁駁
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 観念について
被請求人は、請求人が引用商標から特定の観念が生じないと主張することは、信義則に反する旨主張する。
しかしながら、被請求人が指摘する請求人の上記の一連の行為は、何らの矛盾をはらむものではなく信義則に反するものではない。
一般に、商標の類否の判断において考慮される要素の一つである「観念」は一見して直ちに一定の意義を需要者・取引者に理解させるようなものでなければならない。
確かに、乙第1号証によれば、引用商標の名称の「由来」として「『ハルン(尿)がよく出るようになる薬剤』、『尿の出方が青春(ハル)時代のようになる薬剤』よりハルナールと命名」との記載が認められる。換言すると、そういう気持ちを込めて命名したものである。
このように、乙第1号証に認められる記載は引用商標の名称の「由来」であって、商標の類否の判断において考慮される要素の一つである「観念」の概念、すなわち、一見して直ちに一定の意義を需要者・取引者に理解させるようなものでなければならないとする概念、とは明確に異なるものである。
いかに請求人が引用商標の名称の「由来」を「『ハルン(尿)がよく出るようになる薬剤』、『尿の出方が青春(ハル)時代のようになる薬剤』」と認識していた場合であったとしても、このような語義が需要者・取引者に一見して直ちに把握されなければ、商標の類否について考慮される要素の一つである「観念」とは認められない。
してみれば、引用商標「ハルナール」 は、その語義が国語辞典に掲載されておらず、需要者・取引者が一見して直ちにその語義を把握するものではないから、請求人の創出に係る造語とするのが相当である。
よって、引用商標について特定の観念は生じないとする請求人の主張は何ら信義則に反するものではなく、これを信義則違反であるとする被請求人の主張は失当である。
イ 称呼について
被請求人は、引用商標から特定の観念が生ずるから、引用商標は「ハル」と「ナール」とに分離して称呼される旨を主張する。
しかしながら、上述したように引用商標は請求人の創出に係る造語の商標であるから、引用商標からは特定の観念は生じない。そして、引用商標は5音と比較的短い音数より構成されるものであるから、一気一連に淀みなく「ハルナール」と称呼し得るものである。
よって、引用商標は「ハル」と「ナール」とに分離して称呼されるものではなく、この点においても被請求人の主張は失当である。
一方、本件商標が「ハルンナート」と一体に称呼される点については被請求人も認めるところである。
してみれば、本件商標は、その構成中第3番目の音「ン」弱音であり第2番目の音「ル」にほとんど吸収され聴取されるものであるから、実質的には5音より構成されているものとするのが相当である。
そうした場合、本件商標と引用商標は、共に5音から構成され、その内4音を共通にするものであり、構成上の共通性が認められる。
したがって、本件商標と引用商標とは称呼上極めて類似するものである。また、本件商標と引用商標とは外観においても類似している。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 出所の混同について
上述のとおり、被請求人は、引用商標は特定の観念を有し、本件商標は特定の観念を有しないため、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当しないと主張しているが、出所の混同の有無の主張に際してもこの論理をそのまま適用しようとしている。
しかしながら、前述のとおり、本件商標と引用商標とは称呼および外観において類似しており、観念においてはともに造語であると認められるところから、その論理(観念が相違するという論理)を出所の混同の有無の主張に引きずり込むには、無理がある。
なお、被請求人は、「ハル」を含む他の登録例を挙げて、「ハル」の部分は要部ではないとしているが、ここでは、具体的な出所の混同の有無を論じているのであって、商標の類否を論じているものではない。これらの他の登録例の存在と、出所の混同の有無を論ずるに当たっての「ハル」の部分が要部であるか否かとは、何ら関係がないものである。また、被請求人は、「ハル」を含む医薬品についての登録例は95件あると述べているが、これはあくまでも、「化学品」等を含めたものであり「ハル」を構成文字に含むもの(検索条件:商標;「 ?ハル? 」、類似群;「01?」)を条件として検索抽出された件数であって、「薬剤」のみに関するものではない。「ハル」を語頭に有し、指定商品を「薬剤」に限定して検索すると(検索条件:商標;「ハル? 」、類似群;「01B?」)、65件しか存在していない(甲第57号証参照)。このように、「化学品」等を含む登録例をもって、「ハル」の部分が要部か否かを云々することはそもそも議論の対象にはなり得ないものである。
一方、具体的な出所の混同の有無を論ずるとき、それこそ、厚生労働省の医療用医薬品のデータファイルに記載された他の例の存在が問題となる。
そもそも、出所の混同のおそれは、その商標の使用期間、使用規模(主に売上高)、宣伝広告による浸透度(主にPR方法・広告宣伝費)等の周知・著名性を形成する要件に加え、商品が競合関係にあるか否か(具体的混同のおそれ)や、競合関係にない場合には、一般的混同のおそれの有無(協業関係・資本関係等の一定の関係の存在を類推せしめる事情)等の諸事実を総合して判断すべきである。
薬剤は、一般的に、有効成分が異なると作用機序、効能効果、用法用量、副作用等に違いを生じる。適応症が同一であっても、有効成分が異なると、多くの場合代替不能である。
この観点から、被請求人が提示した治療剤を検討すると、「ハルシオン」、「ハルラック」 は、睡眠導入剤であり、「ハルニン」、「ハルバーン」は、頻尿治療剤であり、引用商標が使用される商品「前立腺肥大症の排尿障害改善剤」(α受容体遮断剤)とは、需要者層・取引者層が異なり、また、治療領域も相違することから、出所の混同のおそれはないというべきである。
「ハルナール」と同じ前立腺肥大症治療剤としては、確かに「ハルブラツセ」「ハルーリン」「ハルスロー」「ハルタム」があるが、このうち、「ハルブラッセ」については、請求人の調査によると、現在は上市されている事実が確認できないし、また、甲第58号証に示すとおり、保険薬事典平成18年4月版(薬業研究会編集、じほう発行:)にも掲載されていないことから、現在販売されていないことが確認できる。また、「ハルーリン」については、審判請求書にて添付した甲第5号証より明らかなとおり、市場占有率で0.1%と、非常に限られたところでしか使用されていないことがわかる。よって、具体的な出所の混同の生じるおそれは比較的低いものと考えられる。「ハルスロー」「ハルタム」については、添付の甲第59号証のとおり、「ハルナール」と同様の成分を有する後発品であり、本請求と同主旨により、請求人が無効審判を請求している。
これらの「ハルスロー」・「ハルタム」と本件商標には、先発医薬品の特許権が切れたことを奇貨として、後発医薬品メーカーが先発医薬品の商標を真似て発売するフリーライドする行為、ひいては、請求人の努力によって著名になった商標を希釈化(ダイリューション)しようとする点において共通するものがあるため、本件商標と同じく無効審判を請求したものである。まして、何ゆえ「前立腺疾患治療剤」に関する医薬品に「ハル」という文字を語頭に配置して命名したのか、その必然性が見いだし得ない。
換言すると、引用商標が使用される商品「前立腺肥大症の排尿障害改善剤」(α受容体遮断剤)と本件商標が使用される商品とは、いみじくも乙第8号証に示されるように、その需要者層・取引者層並びに治療領域を共通にするものである。このため、本件商標を請求人の製造・販売に係る商品と同じ商品に使用した場合には、引用商標とシリーズの商標又は姉妹品であるかの如く認識され、その出所につき具体的な出所の混同のおそれが生じるものである。
したがって、被請求人の出所の混同の可能性についての上記主張は失当である。
イ 引用商標の周知・著名性について
被請求人は、甲第5号証及び甲第6号証について不明な点があると述べた上で、引用商標の周知・著名性について否認している。
しかしながら、請求人は、引用商標の周知・著名性を立証するために甲第5号証及び甲第6号証のみならず、甲第1号証ないし甲第4号証並びに甲第7号証ないし甲第56号証までをも提出している次第である。よって、全ての証拠方法について不明な点が存在するのであれば格別、証拠方法の一部のみついて不明点があるからといって、直ちに引用商標の著名性が否定されるものではない。
ちなみに、甲第5号証については、当然、請求人がその作成名義人であり、甲第6号証については、「出稿計画案」ではなく、広告掲載に要した費用は、引用商標についての宣伝費用一覧表であることを確認しておく。
また、甲各号証の証拠説明からは提出された証拠が該当日時に宣伝広告を行ったことが分かるだけであり、継続、定期的に行ったかどうかは不明であるとしているが、これらの証拠から明らかなように、宣伝広告を継続、定期的に行っていることは明白である。
以上のとおり、引用商標の周知・著名性については、請求人が提出した甲第7号証ないし甲第56号証やその他の商取引の実情を鑑みれば、何ら疑いなく肯定されるべきものであることは明らかである。してみれば、これに接する需要者・取引者が請求人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品と誤認し、その商品につき出所の混同を生ずる蓋然性は極めて高いものといわざるを得ない。
ウ 本件商標の需要者・取引者について
被請求人は、本件商標の需要者・取引者は医薬品について高度な注意義務を有するから、本件商標と引用商標の混同は生じるおそれはない旨を主張する。
しかしながら、医薬の取り扱いについて高度な注意義務を有する医師・薬剤師等が属する医療業界においては、現在「医療現場における医薬の取り違え」 が重大な問題となっており、これを立証すべく請求人は甲第40号証ないし甲第50号証を提出している次第である。これらの証拠方法につき検討すれば容易に理解できるように、この「医療現場における医薬の取り違え」の問題はともすれば人命をもおびやかす由々しき問題であり、到底見過ごすことのできない極めて重大な問題である。とりわけ、医家向けの薬剤は、医師・薬剤師等の専門家がこれを取り扱うものでありながら、そういった専門家でさえも取り違えの問題を惹き起こしているのが現状である。
したがって、「医療現場における医薬の取り違え」という重大な問題の存在、そして、引用商標の著名性を考慮すれば、本件商標と引用商標についての出所の混同が生じる蓋然性は極めて高いものと確信する。
エ このように、被請求人の答弁には何ら理由がない。よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号により登録を受けることができないものに対して登録されたものである。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号に基づいて、その登録を無効とされるべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たないとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のとおりに述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標は、引用商標が特定の観念を有するのに対し、観念を生じない造語であり、両商標は観念が著しく相違し称呼及び外観も異なるから、非類似である。
(2)添付文書と並んで重要な文書であって、医薬品を薬剤師が評価するために製薬企業が日本病院薬剤師会に提供している医薬品インタビューフオームによれば、引用商標「ハルナール」の名称の由来は「『ハルン(尿)がよく出るようになる薬剤』、『尿の出方が青春(ハル)時代のようになる薬剤』よりハルナールと命名」(乙第1号証)とある。したがって、請求人は、引用商標からは、尿が春になるようによく出るという特定の観念が生ずる、と情報提供している。
これに対し、本件商標の医薬品インタビューフォームによれば、「ハルンナート」の名称の由来は「特記すべき由来はない」(乙第2号証)から、特定の観念を生じない造語である(この点は請求人も認めている)。
(3)請求人は、引用商標から「特定の観念を生ずることがない」と主張するが、上記(2)の前段の事実に照らし信義則に反するから、そのような主張は許されない。
(4)商標審査基準によれば、「商標の称呼類否判断にあたっては、比較される両称呼の音質、音量及び音調並びに音節に関する判断要素(…)のそれぞれにおいて、共通し、.近似するところがあるか否かを比較するとともに両商標が特定の観念のない造語であるか(例えば、明らかな観念の違いによってその音調を異にしたり、その称呼に対する注意力が異なることがある。)を考慮し、時と所を異にして、両商標が称呼され、聴覚されるときに聴者に与える称呼の全体的印象(音感)から、互いに相紛れるおそれがあるか否かによって判断するものとする」となっており、「比較する商標の一方がある観念を有し、他方が特定の観念を生じない造語であるときは、称呼のみの観察においては称呼上紛らわしいとする要素があるとしても、明らかな観念上の相違により称呼に影響することがあるので、単に称呼のみを比較すべきでないことを括弧書きで示している」(工藤莞司 実例で見る商標審査基準の解説 第4版 249頁)。
(5)本件商標は、6音から構成され、造語であるから、「ハルンナート」と一体的に称呼される。
これに対し、引用商標は、5音から構成され、特定の観念(尿が春になるようによく出る)が生ずる。「ハル」と「ナール」の部分は、それぞれまとまった感じとしての語の切れ方、分かれ方をするから、「ハル」と「ナール」は分離して称呼される。
また、両商標は、第一に「ン」の有無、第二に「ト」と「ル」の相異という、2音の相違が存在し、相異する音の母音が近似しておらず子音も共通していないから、音質を異にしている。
(6)本件商標は6音から構成されるのに対し、引用商標は5音から構成され、引用商標は、実際には「HARNAL」ではなく、「Harnal」とHのみ大文字他は小文字で使用されており(例えば、甲第28号証等)、欧文字の場合すべて大文字である本件商標の標章「HARNNAT」とは外観上も異なる。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)前述のように、本件商標は、引用商標が特定の観念(尿が春になるようによく出る)を有するのに対し、観念を生じない造語であり、両商標は観念が著しく相違し称呼及び外観も異なり、出所の混同を生じるおそれがない。
(2)請求人は、「両商標が、薬剤について使用される場合には、その構成中の語頭部分の『ハル』の文字部分は、後半部の『ナール』及び『ンナート』の文字部分に比して、自他商品の識別力を果す最も重要な部分、いわゆる、商標の要部若しくは商標の基幹部分というべきである」、「新発売当時においては語頭部『ハル』を持つ商品は当該治療領域には存在しなかった」から、「取引者・需要者は、請求人のシリーズ商標若しくは姉妹商品として、請求人の製造・販売に係るものと誤認し、その商品の出所につき、混同を生じさせるおそれの充分にある、彼此相紛らわしい商標である」と主張する。
しかし、引用商標における「ハル」の部分が要部であるとの請求人の主張は、前述したように、引用商標が特定の観念(尿が春になるようよく出る)を有することから、信義則上、許されない。
両商標は観念が著しく相違し、前述したように、称呼及び外観も異なるから、出所の混同を生じるおそれは存しない。
(3)特許庁のインターネットのホームページによれば、「ハル」が含まれる医薬品についての登録商標は95件あり、その中、引用商標より先に商標登録されているものとして、「ハルゼンブイ」 「ハルシオン」「ハルニン」 「ハルネオン」 「ハルバーン」「ハルモナ」 「ハルナー」 「ハルンアルスター」 「ハルキシン」「ハルナミン」がある。
したがって、「ハル」が要部であるとの請求人の主張は、この点からも失当である。
(4)「ハル」を含む医薬品の登録商標が95件も存在し、その中、厚生労働省の医療用医薬品のデータファイル(乙第3号証)によれば、少くとも10例以上が使用されている。すなわち、本件商標及び引用商標の他に「ハルシオン」「ハルニン」「ハルバーン」「ハルラック」「ハルブラッセ\HARBLASSE」「ハルーリン」「ハルスロー \ HARSUROW」「ハルタム\HALTAM」がある。また、その他使用されている商標として、「ハルシノニド」「ハルトマン」「ハルミゲン」「ハルンウェイ」などがある。したがって、本件商標と引用商標との相異が強調されることになるから、本件商標は引用商標と出所の混同のおそれはない。
(5)請求人及び被請求人の医薬品は、医師の処方箋に基づき投与される医療用医薬品であり、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告宣伝は禁止されている(これに対し、一般用医薬品は、医師の処方なくして通常のドラッグストア、コンビニ等で購入できる医薬品で、マスコミによる広告宣伝は自由である)。
したがって、本件商標及び引用商標に接する取引者・需要者は、医師、薬剤師など医薬品の取引に相当の注意力を有する専門家であり、かつ医師から作成する処方箋には原則として商品名を記載しなければならないのであるから、本件商標と引用商標の混同が生じるおそれはない。
3 請求人は、甲第5号証及び甲第6号証より引用商標が周知・著名であることは明らかであると主張する。
被請求人はこれを否認ないし争う。
甲第5号証は作成名義人が誰であるか不明であり、また甲第6号証はいずれも「出稿計画案」にすぎない。
また、請求人は、甲各号証の証拠説明において、「宣伝広告を継続、定期的に行っていることがわかる」と述べるが、提出された証拠が該当の日時に宣伝広告を行ったことが分かるだけであり、継続、定期的に行ったかどうかは不明である。
4 その他
請求人は、「医薬品の取り違えによる投薬ミスの事故」(甲第40号証ないし甲第45号証を問題にするが、投薬ミスの事故は新薬と後発薬の出所の混同とは別の問題であり、請求人の主張は失当である。
請求人は、医薬行政につき縷々主張するが、甲第51号の1は平成17年10月17日、甲第51号の2は平成17年9月22日付であって被請求人がハルンナートカプセルを販売した(平成17年7月8日販売)後のことである。
請求人は、裁判例を挙げるが、いずれも本件と事案を異にするもので失当である。特に一連のメバロチンの裁判例は、メバロチンが造語であるのに対し、本件の引用商標は特定の観念を生じるものである点が異なる。

第5 当審の判断
1 請求人の使用に係る「ハルナール」、「HARNAL」及び「Harnal」(以下「使用標章」という。)商標の著名性について
(1)甲第5号証ないし甲第8号証、甲第10号証ないし甲第13号証、甲第15号証ないし甲第36号証及び甲第38号証並びに請求の理由によれば、以下の事実を認めることができる。
ア 使用標章は、請求人の業務係る「前立腺肥大症の排尿障害改善剤」(α1受容体遮断剤)に付されて1993年発売以来継続して使用されていること。
イ 被請求人の前身にあたる山之内製薬株式会社(甲第3号証:引用商標の商標登録原簿参照)は、「HARNAL」を商品「前立腺肥大症の排尿障害改善剤」使用し、年間平均約470億円近くを売り上げており、例えば、2003年度に、合計して約521億円(市場占有率62.4%)を売り上げていたこと(甲第5号証)。
ウ 「HARNAL」の各年度の広告宣伝費用の合計額として、2001年が約3330万円、2002年が約3121万円、2003年が約2102万円、2004 年が約1259万円となっていること(甲第6号証)。
エ 専門誌、雑誌及び新聞への掲載
以下の専門誌等に「ハルナール/HARNAL」の紹介、広告が掲載されている。
(ア)1994年版から2005年版の「今日の治療薬」(南江堂発行)に、薬剤名の欄に「『ハルナール/HARNAL』、(山之内)」記載、「組成・剤型・容量」、「用量」及び「備考」の各欄にそれぞれの内容の解説が掲載されていること(甲第7号証)。
(イ)「最近の新薬94/45集」 (薬事日報社発行)の293頁に「ハルナール、0.1mg・0.2mg カプセル/Harnal(山之内製薬)/許可 平5.7.2 発売 5.8.30/組成、効能・効果、使用上の注意」が掲載されていること(甲第8号証)。
(ウ)「産科と婦人科」(診断と治療社 1994年(平成6年)7月1日発行)に「HARNAL/山之内製薬株式会社/前立腺肥大症の排尿障害改善剤(α1受容体遮断剤)/ハルナール/〈塩酸タムスロシン製剤〉」と宣伝広告が掲載されていること(甲第10号証)。
(エ)「JAMA」(毎日新聞社発行)の1994年4月15日発行から2003年2月15日発行の間の23種類のそれぞれに、上記(ウ)ととほぼ同様の「HARNAL/山之内製薬株式会社/前立腺肥大症の排尿障害改善剤(α1受容体遮断剤)/ハルナール/〈塩酸タムスロシン製剤〉」と宣伝広告が掲載されていること(甲第11号証)。
(オ)「Geriatric・Medicine 」(株式会社ライフ・サイエンス発行)の2002年6月1日、2002年7月1日、 2002年8月1日発行の3種類のそれぞれに、上記(ウ)とほぼ同様の「Harnal/前立腺肥大症の排尿障害改善剤(α1受容体遮断剤)/ハルナール/塩酸タムスロシン製剤/製造発売元〔資料請求先〕山之内製薬株式会社」と宣伝広告が掲載されていること(甲第12号証)。
(カ)「腎と透析」(東京医学社発行)の1994年3月25日発行から1997年12月25日発行の間の46種類のそれぞれに、上記(ウ)とほぼ同様の「HARNAL/山之内製薬/前立腺肥大症の排尿障害改善剤(α1受容体遮断剤)/ハルナール/〈塩酸タムスロシン製剤〉/製造発売元〔資料請求先〕山之内製薬株式会社」と宣伝広告が掲載されていること(甲第13号証)。
(キ)「診断と治療」(診断と治療社発行)の1998年2月1日発行及び2002年7月1日発行の2種類のそれぞれに、上記(ウ)とほぼ同様の「Harnal/前立腺肥大症の排尿障害改善剤(α1受容体遮断剤)/ハルナール/塩酸タムスロシン製剤」と宣伝広告が掲載されていること(甲第15号証)。
(ク)「週刊医学のあゆみ」(医歯薬出版株式会社発行)の1998年2月21日発行及び1999年6月5日発行の2種類のそれぞれに、上記(ウ)とほぼ同様の「Harnal/前立腺肥大症の排尿障害改善剤(α1受容体遮断剤)/ハルナール/〈塩酸タムスロシン製剤〉〔資料請求先〕山之内製薬株式会社」と宣伝広告が掲載されていること(甲第16号証)。
(ケ)「総合臨床」(永井書店発行)の1993年11月1日発行に、上記(ウ)とほぼ同様の「HARNAL/前立腺肥大症の排尿障害改善剤(α1受容体遮断剤)/ハルナール/〈塩酸タムスロシン製剤〉」と宣伝広告が掲載されていること(甲第17号証)。
(コ)「調剤と情報」(じほう社発行)の2000年10月1日発行から2001年8月1日発行の間の6種類のそれぞれに、上記(ウ)とほぼ同様の「Harnal/前立腺肥大症の排尿障害改善剤(α1受容体遮断剤)/ハルナール/塩酸タムスロシン製剤/製造発売元〔資料請求先〕山之内製薬株式会社」と宣伝広告が掲載されていること(甲第18号証)。
(サ)「内科」(南江堂発行)の1993年9月1日発行から1995年8月1日発行の間の20種類のそれぞれに、上記(ウ)とほぼ同様の「HARNAL/〔資料請求先〕山之内製薬株式会社/前立腺肥大症の排尿障害改善剤(α1受容体遮断剤)/ハルナール/〈塩酸タムスロシン製剤〉」と宣伝広告が掲載されていること(甲第19号証)。
(シ)「日経メディカル」(日経BP社発行)の1994年1月10日発行から1997年2月10日発行の間の種類のそれぞれに、上記(ウ)とほぼ同様の「HARNAL/〔資料請求先〕山之内製薬株式会社/前立腺肥大症の排尿障害改善剤(α1受容体遮断剤)/ハルナール/〈塩酸タムスロシン製剤〉」と宣伝広告が掲載されていること(甲第20号証)。
(ス)「Nikkei/Medical」(日経BP社発行)の1997年7月10日発行から2002年8月10日発行の間の16種類のそれぞれに、上記(ウ)とほぼ同様の「前立腺肥大症の排尿障害改善剤(α1受容体遮断剤)/ハルナール/〈塩酸タムスロシン製剤〉/山之内製薬」と宣伝広告が掲載されていること(甲第21号証)。
(セ)「日本臨床」(日本臨床社発行)の2003年11月1日発行から2005年7月1日発行の間の20種類のそれぞれに、「Harnal/前立腺肥大症の排尿障害改善剤/ハルナール/(塩酸タムスロシン製剤)/製造発売元〔資料請求先〕山之内製薬株式会社」と宣伝広告が掲載されていること(甲第22号証)。
(ソ)「日本医師会雑誌」(日本医師会発行)の1993年7月15日発行から2005年3月1日発行の間の66種類のそれぞれに、上記(ウ)とほぼ同様の「HARNAL/〔資料請求先〕山之内製薬株式会社/前立腺肥大症の排尿障害改善剤(α1受容体遮断剤)/ハルナール/〈塩酸タムスロシン製剤〉」と宣伝広告が掲載されていること(甲第23号証)。
(タ)「日本泌尿器科学会雑誌」(日本泌尿器科学会発行)の1993年8月20日発行から2005年5月20日発行の間の98種類のそれぞれに、上記(ウ)とほぼ同様の「HARNAL/〔資料請求先〕山之内製薬株式会社/前立腺肥大症の排尿障害改善剤(α1受容体遮断剤)/ハルナール/〈塩酸タムスロシン製剤〉」と宣伝広告が掲載されていること(甲第24号証)。
(チ)「日本医事新報」(日本医事新報社発行)の1993年9月18日発行から2005年6月4日発行の間の40種類のそれぞれに、上記(ウ)とほぼ同様の「HARNAL/前立腺肥大症の排尿障害改善剤(α1受容体遮断剤)/ハルナール/〈塩酸タムスロシン製剤〉」と宣伝広告が掲載されていること(甲第25号証)。
(チ)「日本内科学会雑誌」(社団法人日本内科学会発行)の1995年6月10日から2005年3月10日までの隔月10日発行の間の26種類のそれぞれに、上記(ウ)とほぼ同様の「HARNAL/前立腺肥大症の排尿障害改善剤(α1受容体遮断剤)/ハルナール/〈塩酸タムスロシン製剤〉」と宣伝広告が掲載されていること(甲第26号証)。
(ツ)「排尿障害プラクティス」(メディカルレビュー社発行)の2001年6月10日から2005年3月10日までの隔月10日発行の間の15種類のそれぞれに、上記(ウ)とほぼ同様の「Harnal/前立腺肥大症の排尿障害改善剤(α1受容体遮断剤)/ハルナール/塩酸タムスロシン製剤/製造発売元〔資料請求先〕山之内製薬株式会社」と宣伝広告が掲載されていること(甲第27号証)。
(テ)「泌尿器科紀要」(泌尿器科紀要刊行会発行)の2001年10月31日発行から2005年4月30日までの毎月30日末日発行の42種類のそれぞれに、上記(ウ)とほぼ同様の「Harnal/前立腺肥大症の排尿障害改善剤(α1受容体遮断剤)/ハルナール/塩酸タムスロシン製剤」と宣伝広告が掲載されていること(甲第28号証)。
(ト)「泌尿器外科」(医学図書出版株式会社発行)の1998年1月15日から2005年5月15日までの毎月15日発行の25種類のそれぞれに、上記(ウ)とほぼ同様の「Harnal/前立腺肥大症の排尿障害改善剤(α1受容体遮断剤)/ハルナール/塩酸タムスロシン製剤/〔資料請求先〕山之内製薬株式会社」」と宣伝広告が掲載されていること(甲第29号証)。
(ナ)「ファルマシア」(社団法人日本薬学会発行)の1998年8月1日及び1999年2月1日発行の2種類のそれぞれに、上記(ウ)とほぼ同様の「Harnal/前立腺肥大症の排尿障害改善剤(α1受容体遮断剤)/ハルナール/塩酸タムスロシン製剤/〔資料請求先〕山之内製薬株式会社」と宣伝広告が掲載されていること(甲第30号証)。
(ニ)「メディカル朝日」(朝日新聞社発行)の1996年3月1日から1997年9月1日までの隔月1日発行の6種類のそれぞれに、上記(ウ)とほぼ同様の「Harnal/前立腺肥大症の排尿障害改善剤(α1受容体遮断剤)/ハルナール/〈塩酸タムスロシン製剤〉/〔資料請求先〕山之内製薬株式会社」と宣伝広告が掲載されていること(甲第31号証)。
(ヌ)「medical ASAHI」(朝日新聞社発行)の1998年5月1日発行から2002年11月1日までの隔月1日発行の19種類のそれぞれに、上記(ウ)とほぼ同様の「Harnal/前立腺肥大症の排尿障害改善剤(α1受容体遮断剤)/ハルナール/〈塩酸タムスロシン製剤〉/〔資料請求先〕山之内製薬株式会社」と宣伝広告が掲載されていること(甲第32号証)。
(ネ)「medicina」(医学書院発行)の1994年5月10日、1995年7月10日及び1998年7月10日発行の3種類のそれぞれに、上記(ウ)とほぼ同様の「HARNAL/〔資料請求先〕山之内製薬株式会社/前立腺肥大症の排尿障害改善剤(α1受容体遮断剤)/ハルナール/〈塩酸タムスロシン製剤〉」と宣伝広告が掲載されていること(甲第33号証)。
(ノ)「薬局」(南山堂発行)の1994年6月5日から1998年1月5日までの隔月5日発行10の種類のそれぞれに、上記(ウ)とほぼ同様の「HARNAL/前立腺肥大症の排尿障害改善剤(α1受容体遮断剤)/ハルナール/〈塩酸タムスロシン製剤〉/〔資料請求先〕山之内製薬株式会社」と宣伝広告が掲載されていること(甲第34号証)。
(ハ)「臨床泌尿器科」(医学書院発行)の1993年8月20日発行から2005年4月5日発行の間の種類のそれぞれに、上記(ウ)とほぼ同様の「HARNAL/前立腺肥大症の排尿障害改善剤(α1受容体遮断剤)/ハルナール/〈塩酸タムスロシン製剤〉」と宣伝広告が掲載されていること(甲第35号証)。
(ヒ)「臨床医」(中外医学社発行)の1993年8月10日、1993年10月10日及び1993年12月10日発行の3種類のそれぞれに、上記(ウ)とほぼ同様の「HARNAL/〔資料請求先〕山之内製薬株式会社/前立腺肥大症の排尿障害改善剤(α1受容体遮断剤)/ハルナール/〈塩酸タムスロシン製剤〉」と宣伝広告が掲載されていること(甲第36号証)。
(フ)「治療」(南山堂発行)の1999年9月1日及び2002年11月1日発行の2種類のそれぞれに、上記(ウ)とほぼ同様の「Harnal/前立腺肥大症の排尿障害改善剤(α1受容体遮断剤)/ハルナール/塩酸タムスロシン製剤/製造発売元〔資料請求先〕山之内製薬株式会社」と宣伝広告が掲載されていること(甲第38号証)。
(2)前記(1)で認定した事実を総合すると、「ハルナール」、「HARNAL」、「Harnal」の文字よりなる使用標章は、本件商標の登録出願時には、請求人の前身にあたる山之内製薬株式会社が、商品「前立腺肥大症の排尿障害改善剤」を表示するものとして、少なくとも医療用医薬品を取り扱う業者、前立腺肥大症の排尿障害改善剤に係わる専門医、薬剤師などその取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認められ、その著名性は、本件商標の登録査定時に至るまで継続していたものということができる。
2 出所の混同について
(1)本件商標が使用される商品について
本件商標は、その指定商品を「薬剤」とするものであり、薬剤の範疇には、「前立腺肥大症の排尿障害改善剤」が含まれるものである。
(2)本件商標と引用商標との類似性について
ア 称呼について
本件商標は、「ハルンナート」の片仮名文字と「HARNNAT」の欧文字とを二段に横書きしてなるものであるから、構成文字に相応して「ハルンナート」の称呼を生ずるものである。
他方、使用標章は、「ハルナール」の片仮名文字、「HARNAL」、「Harnal」の欧文字よりなるものであるから、構成文字に相応して「ハルナール」の称呼を生ずるものである。
そこで、本件商標より生ずる「ハルンナート」の称呼と引用商標より生ずる「ハルナール」の称呼を比較すると、両称呼は前者が6音構成であるのに対し、後者が5音構成よりなるものであるが、称呼において印象に強く残る語頭部分において「ハル」の2音と、語尾部の「ナー」の2音の4音を共通にし、中間部の「ン」の有無と末尾部分の「ト」と「ル」差異を有するものである。
そして、中間部における撥音「ン」は、鼻音であって弱い音で、しかも比較的聴取し難い中間部に位置するものであり、また差異音「ト」と「ル」は、比較的聴取し難い語尾に位置し、前音の長音「ー」の母音(a)吸収され一層、不明瞭なものとなる。
してみると、両称呼をそれぞれ全体として称呼するときは、互いに聞き誤られるおそれがあるというのが相当である。
イ 外観について
本件商標と使用標章は、上記のとおり、片仮名文字「ハルンナート」と「ハルナール」、欧文字「HARNNAT」と「HARNAL」を書してなるものである。 そして、本件商標と使用標章は、その構成中の片仮名文字部分においては、中間における「ン」の1文字の有無及び語尾における「ト」と「ル」の文字の差異を有するとしても、印象に残りやすい語頭部の「ハル」と、中間部の「ナー」の文字の併せてを4文字を同じくするものであり、また、欧文字部分においては、同様で印象の薄い中間における「N」の1文字の有無と、語尾における「T」と「L」の文字の差異を有するにすぎないものであるから、両者を時と処を異にして離隔的に観察した場合、外観においても、似かよった印象を与えるものである。
ウ 以上によれば、本件商標と使用標章とは、その称呼及び外観において、相紛れるおそれがある類似性の高い商標といわなければならない。
(3)本件商標の指定商品と請求人の業務に係る使用商品及び取引者・需要者の共通性について
前記認定のとおり、本件商標は、その登録出願時には、請求人の前身にあたる山之内製薬株式会社が、商品「前立腺肥大症の排尿障害改善剤」を表示するものとして、少なくとも医療用医薬品を取り扱う業者、前立腺肥大症の排尿障害改善剤に係わる専門医、薬剤師などその取引者、需要者の間に広く認識されていた使用標章と、称呼及び外観において類似性の高い商標である。
また、本件商標の指定商品「薬剤」中には、請求人の業務に係る使用商品「前立腺肥大症の排尿障害改善剤」が含くまれており、該商品は、使用標章が使用される請求人商品と需要者を共通にするばかりでなく、それ以外の薬剤についても、請求人商品と需要者、生産者、販売系統等を共通にする場合が多い商品というのが相当である。
そうすると、本件商標は、これをその指定商品について使用した場合は、該商品が請求人あるいは同人と経済的又は組織的に関係ある者の業務に係る商品であるかのように、その取引者、需要者をして、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものといわざるを得ない。
(4)被請求人の主張について
ア 本件商標と使用標章との類似性について
被請求人は、本件商標と使用標章(請求人と被請求人は「引用商標」として言及しているが、上記のとおり「使用標章」とした、以下同じ)とは、使用標章が特定の観念(尿が春になるようによく出る)を有するのに対し、本件商標は観念を生じない造語であり、両商標は観念を著しく相違し、称呼及び外観も異なり、出所の混同を生じるおそれはない旨主張する。
しかしながら、上記(2)のとおり、本件商標と使用標章とは、称呼及び外観において、相紛れるおそれがある類似性の高い商標といわなければならないものであり、また、観念については、両商標とも特定の観念を有しないというべきであるから、比較することができないものである。
したがって、この点に関する被請求人の主張は採用できない。
なお、被請求人は、「ハル」を含む医薬品の登録商標が多数存在しているとして、本件商標は使用標章と出所の混同を生じるおそれはない旨も主張しているが、この点に関しても、本件商標と使用標章とは、上記(2)のとおりであるから、被請求人の主張は採用できない。
イ 使用標章の著名性について
被請求人は、使用標章の著名性について提出された甲各号証は日時が分かるだけで、継続、定期的に使用していたか不明である旨主張し、使用標章の著名性を否定しているが、この点についても、上記1のとおりであるから、この点に関する被請求人の主張も採用できない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2006-07-24 
結審通知日 2006-07-31 
審決日 2006-08-17 
出願番号 商願2003-111471(T2003-111471) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (Y05)
最終処分 成立 
前審関与審査官 山田 啓之 
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 小林 薫
山口 烈
登録日 2004-07-30 
登録番号 商標登録第4791617号(T4791617) 
商標の称呼 ハルンナート、ハルンナット、ハーンナット、ハーナット 
代理人 田中 康幸 
代理人 光石 忠敬 
代理人 光石 俊郎 
代理人 橘 哲男 
代理人 松元 洋 
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