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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 025
管理番号 1160683 
審判番号 無効2006-89102 
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-07-25 
確定日 2007-06-18 
事件の表示 上記当事者間の登録第3246877号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第3246877号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第3246877号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成5年11月2日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同9年1月31日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第16号証を提出した。
(1)請求の利益について
本件商標は、請求人が米国において使用し、商標登録している商標である「笑いサル」と同一の図柄に、腕及び足を書き加え、シャツを着て、頭に帽子をかぶり2本足で立ち、ズボンのポケットに両手を突っ込んだ姿が描かれており、上記全身像の下には、請求人が米国において使用し、商標登録している欧文字「BEN DAVIS」の文字が書されているところ、請求人が製造・販売する商品には、「笑いサル」の図柄及び欧文字「BEN DAVIS」の商標が付され、日本国に輸入されている。
そうすると、後記するように、本件商標をその指定商品に使用した場合、需要者は、該商品が請求人の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所について混同するおそれがあるから、請求人は、本件商標の存在によって直接不利益を被る関係にあり、本件商標の登録を無効にする審判を請求することにつき、利害関係を有する者に該当する。
(2)請求人商標について
請求人は、1935年にアメリカ合衆国において、Benjamin Franklin Davis(ベンジャミン フランクリン デイビス)が自分の名前にちなんで設立した作業着(ワークウェア)を製造・販売する衣料品メーカーである(甲第3号証及び甲第4号証)。現在は、シャツ、ズボン、帽子、上着、バッグ等(以下「請求人商品」という。)を製造・販売している(甲第5号証ないし甲第7号証)。
そして、請求人は、請求人商品について、設立当初から、別掲(2)のとおり、欧文字「BEN DAVIS」及び「笑いサル」の図柄よりなる商標(以下「請求人商標」という。)を使用しており(甲第3号証、甲第9号証ないし甲第11号証)、本件商標の出願時には、米国において著名になっていた。また、請求人商標は、日本国においても絶大な人気を博するブランドになっているものである(甲第8号証)。
(3)商標法第4条第1項第7号について
(ア)請求人は、請求人商標と同一の構成よりなる商標を商標登録出願をした(甲第12号証)ところ、本件商標が引用され拒絶理由通知を受けた(甲第13号証)ので、被請求人との間で本件商標の譲渡交渉を進めてきたが、被請求人は、請求人の申し出を拒絶し、本件商標を所有し続けたい旨を回答している。さらに、被請求人は、請求人が日本のマーケットに進出する計画があれば「そのヘルプを我々にさせていただきたい」という申し出をしている(甲第14号証)。
上記事実は、請求人が米国において使用し、著名となっている請求人商標が日本国で登録されていないことを奇貨として、請求人の国内参入を阻止又は代理店契約締結を強制する目的で、被請求人が本件商標の登録出願をしたものと強く推察される。
なお、被請求人は、本件商標の商標登録につき、「BEN DAVIS社の了解を取って日本での商標登録をしたものです。ただし、文章で契約したわけではありません。また、先方から依頼されて登録したのか、こちらから登録をしておく旨申し出たものなのかも不明です。」と述べている(甲第14号証)が、請求人は、被請求人が本件商標を登録出願することに承諾を与えた事実はないし、また、被請求人が請求人の許諾を得て、本件商標を登録出願したことは証明されていない(甲第3号証)。
(イ)請求人商標は、別掲(2)のとおりの構成よりなるものであるところ、その構成中の「笑いサル」は、Benjamin Franklin Davis(ベンジャミン フランクリン デイビス)が、請求人を設立した当時にデザイナーに依頼して製作させた標章であり、また、欧文字「BEN DAVIS」は、請求人が米国において商標登録及び使用している商標と同一であり、同商標は、Benjamin Franklin Davis(ベンジャミン フランクリン デイビス)が自分の名前にちなんで決定したものであり、いずれも造語商標である(甲第4号証及び甲第15号証)。したがって、このような構成を含む本件商標が偶然採択されるとは考えられず、しかも、請求人商標は、米国において著名であるから、本件商標の出願は、不正の利益を得る目的、又は、他人に損害を与える目的をもってなされたことが強く窺われるものである。
(ウ)以上のとおり、本件商標は、著名な請求人商標を剽窃的に出願し、登録された商標に該当することは明らかであるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第15号について
(ア)請求人商品は、被請求人によって昭和52年ころから輸入されている(甲第14号証)。米国から輸入される商品には、本件商標を構成する欧文字「BEN DAVIS」及び「笑いサル」の図柄から構成される商標が付されている(甲第9号証)。また、昭和52年ころ、請求人に係る小冊子及び紙製の看板のようなものが日本国内に大量に存在していた(甲第14号証)。したがって、本件商標の出願時において、欧文字「BEN DAVIS」及び「笑いサル」の図柄からなる商標は、日本国内で著名となっていたものである。
(イ)商標法第4条第1項第15号における「出所の混同を生じるおそれ」とは、他人の業務に係る商品であると誤認し、その商品の出所について混同するおそれがある場合のみならず、その他人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、その商品の出所について混同するおそれがある場合をもいい、「混同を生じるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである。」と判示されている(甲第16号証)。
これを本件商標についてみると、本件商標は、造語商標を組み合わせた独創性が極めて高い請求人商標を含む商標であって、請求人商標と極めて類似している。また、本件商標の出願時及び査定時において、請求人商品は、日本国内に輸入・販売されており、日本国において周知・著名になっていた。さらに、本件商標の指定商品の需要者は、一般消費者であるから、商品の流通経路等の取引実情に関する知識を十分持ち合わせていないのが通常である。
以上の事実を総合して判断すると、本件商標を付した商品に接する需要者は、その商品が請求人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
(5)商標法第4条第1項第10号について
本件商標は、請求人が米国において使用・登録している商標と同一の商標を含むものであり、請求人が製造・販売している商品「シャツ,ズボン,帽子」と同ー又は類似の商品を指定商品としている。そして、上述のとおり、請求人商品は、本件商標の出願時及び査定時において、日本国の需要者の間において広く認識されているものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものである。
(6)以上のとおり、本件商標の登録は、無効とされるべきである。

3 被請求人の答弁
被請求人は、請求人の上記2の主張に対し、何ら答弁していない。

4 当審の判断
(1)甲第3号証、甲第4号証、甲第9号証、甲第10号証、甲第11号証、甲第14号証及び甲第15号証並びに請求の理由によれば、以下の事実が認められる。
(ア)請求人は、1935年(昭和10年)に米国で、作業着の製造、販売をする会社として設立され、その後、シャツ、ズボン、帽子、上着、バッグ等(請求人商品)の製造、販売をする会社として、営業活動を行っていること、請求人は、設立当初からその業務に係る商品に、別掲(2)のとおりの構成よりなる商標(請求人商標)を継続して使用していたこと、請求人は、米国において、請求人商標と同一の構成よりなる商標を1993年(平成5年)4月19日に、「BEN DAVIS」の文字よりなる商標を1996年(平成8年)4月2日にそれぞれ登録出願し、いずれも商標登録を受けたこと。また、請求人の創設者(Benjamin Franklin Davis)は、1995年(平成7年)に雑誌「Grand Royal Magazine」のインタビューを受け、請求人商標中の「サルのロゴ」は、請求人の創設者の依頼によりプロの画家が描いたものの一つであると答えたこと。
(イ)請求人の代表者は、請求人商品を1987年(昭和62年)からトップウィン コーポレーション、2002年(平成14年)から大協産業株式会社、2004年(平成16年)からMAGOUILLEなどの日本の企業を介して日本の市場に流通させるために、その承諾を多くの日本企業に与えていた旨述べたこと。
(ウ)本件商標を含めた「BEN DAVIS」の文字を有する商標についての請求人と被請求人との間における譲渡交渉において、被請求人は、請求人に対し、2005年(平成17年)10月14日に概略以下のように回答したこと。
「被請求人は、株式会社聖林公司(以下「聖林公司」という。)の出資で平成6年に設立された会社であり、聖林公司は、カジュアルウエアの生産、販売、輸出入を行っているアパレル会社である。BEN DAVIS商標は、聖林公司が昭和55年ころに出願して登録を受け、平成6年に被請求人に譲渡された。請求人商品については、昭和52年ころから輸入をしており、現在も継続している。その輸入をはじめた初期のころに、被請求人の代表者が請求人の了解を取って日本での商標登録をしたものであるが、文書で契約したものではない。商標登録については、請求人から依頼されたのか、あるいは被請求人が登録をしておく旨申し出たものなのか不明であるが、その当時、聖林公司には、大量のBEN DAVISの小冊子や紙製の看板のようなものがあり、両者は非常に良好な関係にあったと推測される。被請求人は、商標権に関し、約10年前と5、6年前に、請求人と接触を持とうとしたが、いずれも回答を得ることができなかった経緯があり、約25年間放置していた日本の商標権について、請求人は、なぜ今回のような申し出をしたのか請求人の考えを聞きたい。仮に請求人が日本の市場に進出する計画があるのなら、被請求人はその手助けをする意思がある。」
(2)前記(1)で認定した事実によれば、請求人商標は、請求人商品を表示するためのものとして、本件商標の登録出願前より使用され、本件商標の登録査定時には、米国の衣料品分野における需要者の間において、周知性を獲得していたものと認めることができる。そして、請求人商品は、本件商標の登録出願前には、複数の日本企業により輸入され、日本の市場で販売されていたと推認されるところである。
一方、被請求人は、カジュアルウエアの生産、販売、輸出入を行っているアパレル会社である聖林公司の出資で平成6年に設立された会社であり、本件商標の当初の出願人である聖林公司及び出願により生じた権利を譲り受けた被請求人は、昭和52年から請求人商品を輸入していたところであり、本件商標の登録出願前より、請求人商品及びこれに使用される請求人商標の存在について十分知っていたものと認められる。
(3)本件商標は、別掲(1)のとおり、サル科と思しき動物の姿の図形と該図形の下に「BEN DAVIS」の文字を表した構成よりなるものであるところ、サルの姿態は、頭に帽子を被り、シャツを着て、ズボンをはき、2本足で立ってズボンのポケットに両手を突っ込んだ姿をもって描かれているが、その構成中のサルの顔は、請求人が米国において使用し、商標登録している商標である「笑いサル」と同一の顔からなるものであり、該全身像の下に書されている欧文字も請求人が米国において使用し、商標登録している「BEN DAVIS」の欧文字と同一のものである。そして、該サルの顔は、極めて特徴のある表情をもって描かれているものであり、文字部分とともに、看者の注意を強く惹くものである。
そうすると、本件商標は、その登録査定前には、米国の衣料品分野における需要者の間に広く認識されていた請求人商標である「笑いサル」の図柄及び「BEN DAVIS」の欧文字をその構成中に含むものであって、請求人商標は、極めて独創性の高いものであり、また、「BEN DAVIS」の文字部分にしても、わが国において、ありふれた氏名や既成語として、一般に熟知されているものでもない。
(4)以上によれば、被請求人及びその関連会社である聖林公司は、請求人商品及びこれに使用される請求人商標の存在を知りながら、請求人商標が日本において商標登録がなされていないことを奇貨として、商標中に請求人商標である「笑いサル」の図柄等を取り込んだ本件商標を、請求人の承諾を得ずに商標登録出願し、登録を受けたものといわざるを得ず、本件商標の登録出願の経緯には著しく社会的妥当性を欠くものがあり、その商標登録を認めることは、商取引の秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものであって、公の秩序を害するものであることは明らかである。
この点に関し、被請求人は、請求人に対する2005年10月14日付け回答書において、本件商標の登録出願につき、被請求人の代表者が請求人の了解を得て登録出願をしたものであるが、文書で契約したものではない旨述べているが、そもそも、被請求人は、本件審判の請求に対し、何ら答弁するところがなく、本件商標の登録出願をするについて、請求人の承諾を得ていたとの被請求人の陳述は、極めて信憑性に乏しいものといわざるを得ない。そして、他に被請求人が請求人の承諾を得て、本件商標の登録出願をしたと窺わせる客観的な証拠は見出せない。したがって、上記被請求人の回答書における陳述は、前記認定を左右するものではない。
(5)以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により無効とする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(1)本件商標(色彩は原本参照)


別掲(2)請求人使用商標


審理終結日 2007-04-12 
結審通知日 2007-04-17 
審決日 2007-05-07 
出願番号 商願平5-110686 
審決分類 T 1 11・ 22- Z (025)
最終処分 成立  
前審関与審査官 加園 英明 
特許庁審判長 山田 清治
特許庁審判官 鈴木 新五
山口 烈
登録日 1997-01-31 
登録番号 商標登録第3246877号(T3246877) 
商標の称呼 ベンデービス 
代理人 森下 夏樹 
代理人 山本 秀策 
代理人 安村 高明 

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