• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Z32
管理番号 1155615 
審判番号 不服2003-19635 
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-10-07 
確定日 2007-04-11 
事件の表示 商願2000-135077拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第32類に属する願書記載の商品を指定商品として、平成12年12月15日に登録出願されたものであるが、その後、指定商品については、同15年12月22日付けの手続補正書によって、第32類「ビール風味の麦芽発泡酒」と補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『ほんとうの、火を入れていない商品』程の意味合いを表したものと認識し理解する『本生』の文字を普通に用いられる方法で書してなるものであるところ、本願商標をその指定商品中の火入れをしないで造った商品又は熱処理をしていない商品に使用しても、単に商品の品質を表示したものとして認識されるにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 請求人の主張
(1)本願商標中の「本」の語は、「本当の」といった意味のほかに「書籍。書物。」「もとからあるもの。」「中心となるもの。」等々、広範な意味合いのある語であるから、特定の意味に限定的に解釈することは一般取引の実情からして不自然である。
また、「生」についても、「火を入れていない商品」との意味合いに思いが至るのは、「生」という語が有している「動植物を採取したままで、煮たり、焼いたり、乾かしたりしないもの。また、その状態。」「材料に手を加えないこと。作為をほどこさないこと。」といった本来の直接的な意味と本願の指定商品との関係を考察した上ではじめて導き出されるところの思考結果である。
したがって、本願商標「本生」に接する需要者等は、「ほんとうの、火を入れていない商品」の意味と直接的に想起することはあり得ず、間接的にしか想起し得ないから、本願商標は商標法第3条第1項第3号の規定に該当しないばかりでなく、同法第4条第1項第16号の規定にも該当しない。
(2)平成13年(2001年)2月21日に発泡酒「本生」を発売したものであるが、販売促進の結果、発売後5ヶ月で2000万箱を突破する売上げとなり、その後も販売促進を強化し続け、パッケージデザインもブラッシュアップし、同14年6月からは全国47都道府県、のべ約100会場でのプロモーションをも実施した。更に、「本生」が新聞紙上等に取り上げられた回数は、平成13年(2001年)1月11日から同15年(2003年)12月13日まで611回に亘る。本生は発泡酒としての優秀性及び盛大な販売促進の結果、発売以来のわずかな期間に発泡酒の著名ブランドとしての地位を獲得して今日に至るものである。
請求人の著名な略称「アサヒ」等をもって宣伝広告がなされることが多いことは何等否定するものではないが、商品自体に「本生」と明記されていれば当該商標の使用と認識できるものである。
したがって、本願商標は盛大な使用実績により、商標法第3条第2項の規定に該当するものである。

4 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号について
本願商標は、別掲のとおり、白塗りの袋文字で表した「本生」の文字に影を付けて表示してなるものであるところ、この程度の書体は、一般的な文字飾りとして使用されているものであるから、普通に用いられる方法の域を脱したものとは認められないものである。
また、該文字は、「正しい。正式の。にせや、仮でない。」等を意味する語である「本」の文字と「天然のままで、手を加えてないもの。加熱殺菌してないこと。また、『生ビール』の略。」を意味する語である「生」(「岩波国語辞典 第4版」株式会社岩波書店発行)の各文字を結合したものと容易に理解されるものであるから、これよりは、全体として「加熱殺菌していない本格的なもの。」ほどの意味合いを認識させるというのが相当である。
そして、「本生」の文字は、食品業界において、「防腐剤や添加物等を加えていない無添加の商品、火入れしていない商品、天然素材を使用した本格的仕様の商品」等を表す語として普通に使用されていることは、例えば、新聞記事情報、各種商品を紹介するインターネットのホームページにおいて、以下の記事があることからも十分に裏付けられるところである。
(ア)1991.2.8「流通サービス新聞」9頁
「味を仕上げるスパイス/家庭ではチューブ入りタイプが人気、業務用も伸び続く ・・・チューブ入り製品の半分はワサビだ。そのワサビが二〇%近い伸びを示したのは『高級製品を投入し、本物志向にこたえた』(ハウス食品工業)ため。各社は本ワサビ一〇〇%の『本生わさび』などの新製品を相次いで投入した。」
(イ)1992.1.24「日本食糧新聞」
「日清食品、生タイプカップうどん『日清の本生うどん』の販売地域を拡大へ 日清食品(東京本社‐東京都新宿区新宿六‐二八‐一、03・3205・5252)は生タイプカップうどん『日清の本生うどん』の“きつね”“天ぷら”を21日から宮城県、福島県、2月12日から九州地区で新発売する。・・・同商品は九〇年8月に関東地区を皮切りに拡売、品質、パッケージの改良を行いながら着実にシェアアップを図っており、今回の地区拡大を合わせて、今期中に五五億円の売上げを目標にしている。」
(ウ)1999.12.6「日本食糧新聞」
「仙禽酒造、生酒『霧降』をグレードアップ 仙禽酒造(株)(栃木県氏家町、028・682・3411)は、『吟醸生酒・霧降』(容量三〇〇ミリリットル・写真)のびんとラベルのデザインを一新した。・・・同商品は一二年前、一切熱処理しない本生酒として栃木県内で他社に先駆けて発売。基本的コンセプトは変えずに、時代に合わせるように味わいを微妙に変化させ、ロングラン商品として成長した。」
(エ)1996.9.30「日本食糧新聞」
「スーパー各社の九六年度上期の『味噌』の売れ行きは、物量、金額ベースとも堅調に推移した。・・・タイプ別の構成比は、ピロータイプはカップ味噌への移行により全体的に低下傾向で二〇%、ガセットは市場は下降しているが、特徴のある味噌は伸長し一五%となった。特に伸びた味噌は『上高地みそ・本生』(一キログラム)、『マルモ青木味噌・善光寺平』(同)。」
(オ)2000.3.8「日本食糧新聞」
「大関(株)(兵庫県西宮市、0798・32・3015)は、3月上旬から全国で『本生300ミリリットルびん詰』(写真)を一斉発売した。『本生』とは、製造工程で熱処理を一切していないものをいい、一方『生貯蔵酒』はびん詰の際に熱処理したものを指す。大関『本生』は製造工程で一切の熱処理をしていないので、新鮮な生まれたての風味がそのままいきている。」
(カ)2000.6.7「読売新聞 東京朝刊」26頁
「・・・地ビールの醸造所は二百五十か所を超え、ブランドは五百種以上とか。地元の名水を使ったり、ラベルや瓶にも趣を凝らしていて楽しい。ミカン、茶、カキなどの特産をブレンドした発泡酒も登場している。
【地ビール・発泡酒名】〈1〉所在市町村〈2〉特徴〈3〉連絡先・電話番号
■宮崎 宮崎ひでじビール 〈1〉延岡市〈2〉各国の有名ビールをモデルにした本生吟醸ビール。いのしし、きつね、もぐら、むささびの4種類〈3〉ニシダひでじビール」
(キ)2000.11.20「日本食糧新聞」
「【大阪】黄桜酒造(株)(京都市伏見区、075・611・8115)は今歳暮期も、好評を得ている蔵元直送便で出来たての京都地ビール&吟醸ヌーヴォ・吟醸生酒を届けるギフトセット二品を発売する。・・・『吟醸生酒』は、名水伏水で仕込んだフルーティーな香りの期間限定本生酒。『吟醸ヌーヴォ』は今年度収穫米で仕込んだ新酒初しぼりの、フルーティーな香りとフレッシュな味わいの酒。」
(ク)2001.4.28「毎日新聞 地方版/佐賀」18頁
「◇無加熱の本生原酒--純米大吟醸『生☆蛍川』 天山酒造(小城町)はこのほど、純米大吟醸『生☆蛍川』を発売した。火入れをしていない本生の原酒で『味も香りもフレッシュ』とPRしている。最近は純米吟醸系の生酒が料飲市場で人気を呼んでおり、同社にも純米大吟醸『蛍川』の生バージョンがほしいとの要望が寄せられたため、開発した。」
(ケ)2002.2.22「読売新聞」33頁
「日立市川尻町の森島酒造は、鑑評会用の大吟醸『大観』の原酒の予約販売を始めた。搾りたての原酒は濁っているため『かすみ酒』と呼ばれ、通常は酒造関係者が口にするだけ。しかし、一般の日本酒ファンにも味わってもらおうと、初めて限定予約販売に乗り出した。『大吟醸原酒・本生かすみ酒』で、七百二十ミリ・リットル三千円(税別)。」
(コ)「神奈川県横浜市旭区中希望が丘151-3 寿屋酒店のホームページより 島根ビール:新鮮な酵母入りの健康にも良い本生ビールです。熱処理を行わないで酵母を生きたまま瓶詰めした地ビールです。」
(http://www16.ocn.ne.jp/~osake151/jibeer.html)
(サ)「愛知県岡崎市板屋町180-1城岩酒店のホームページより こだわりの地ビール 岡崎地区 当店のみ取り扱いの地ビールです!・・・『本物志向の無ろ過 本生ビールオゼノユキドケ』」
(http://www.shiroiwa.co.jp/4.html)
(シ)「あいけんドットねっとのホームページより 品名 無農薬"本生"しょうゆ<濃口/淡口> 原材料 無農薬大豆、無農薬小麦、原塩 内容量 720ml/1.8L 製造元 株式会社ヤマヒサ 香川県小豆郡内海町安田甲243・・・ - こいくちしょうゆ -醤油の島『小豆島』で国内産無農薬の原料にこだわって作られた天然醸造醤油です。杉の木の大樽を用い、昔ながらの醸造方法で仕込んだ風味豊かなもろみを絞り、火入れせずに仕上げました。
(http://www.ai-ken.net/shizen/shyoyu_miso/y_munohon.shtml)
(ス)「ケンコーコムのホームページより キダチアロエ液 本生しぼり ストレートタイプ 720ml『キダチアロエ液 本生しぼり ストレートタイプ』は、静岡県の温暖な気候と太陽を浴びて栽培された、良質の国産キダチアロエ生葉を朝取りし、丸ごとしぼった原液100%エキスです。」
(http://www.kenko.com/product/item/itm_7521417072.html)
(セ)「楽天市場のホームページより 創業135年 リピーター率No.1を誇る酒造・・・お陰様でランキング初登場 第5位達成!・・日本じゃ飲めない“本生”マッコリ 720ml 3本セット・・・韓国の本場『釜山』から蔵詰め急速冷凍の徹底管理により、日本で初めて純米本生マッコリ(マッカリ)をご家庭の食卓に提供できるようになりました。酵母、酵素が生きているので フレッシュ&フルーティーな味わいです!」
(http://www.rakuten.co.jp/nanyo/658095/658208/)
(ソ)「有限会社 伴野のホームページより 信州発、日本の四季を彩る 伴野の本生麺 創業以来60年、信州佐久平にて麺作り一筋の『生麺』の専門工房です。『製麺技能士』長野県第一号を取得し、合成保存料、化学調味料を一切使わない『安全で本当に美味しい』本物の麺を作っています。・・・信州本生 桜そば367円(税込み)」
(http://www.kawakamisoba.com/)
そうすると、上記本願商標の認定及び食品業界における商取引の実情を勘案すれば、本願商標は、これを本願指定商品中「熱処理をしていないビール風味の麦芽発泡酒」に使用しても、これに接する需要者をして、単に商品の品質を表示したものと認識させるにすぎず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものであり、また、上記以外のビール風味の麦芽発泡酒に使用するときには、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。
(2)商標法第3条第2項について
請求人は、本願商標が、商標法第3条第2項の規定に該当する旨主張し、同条項に該当することの証拠方法として甲第3号証ないし同第9号証(枝番号を含む。)を提出している。
そこで、本願商標が請求人の主張する前記法条に該当するか否かについて検討する。
(ア)甲第3号証の1ないし22は、平成12年12月19日付けから同17年1月13日付けの請求人のホームページのニュースリリースであって、その各ニューリリースの見出し中には、例えば「発売1周年を記念して『アサヒ本生ご愛飲感謝キャンペーン』を実施」(甲第3号証の6)のように「アサヒ本生」の文字が使用されている。そして、各見出しの右下部には、「アサヒビール株式会社」の文字が表示されている。また、同記事中には、商品の紹介キャンペーン情報等の中で「アサヒ本生」及び「本生」の文字が使用されている。甲第3号証の7ほかには、「本生ブランド」を強化し、確立するといった関連記事が掲載されている。
(イ)甲第4号証の1ないし4及び甲第5号証の1ないし4は、それぞれ、2001年から2004年の請求人の会社案内と商品案内であって、各カタログ中には、「商品(発泡酒)」(多少図案化した「Asahi」及び「本生」の文字が付されている。以下、同じ。)が掲載されているとともに、商品の紹介記事中等に「アサヒ本生」の文字が使用されているほか、甲第4号証の3及び4には、「『本生のブランド施策』、『本生』ブランドトータル」といった文言が掲載されている。
(ウ)甲第6号証の1ないし8は、2001年(平成13年)から2004年(平成16年)の請求人の事業報告書であるが、同報告書中には、商品(発泡酒)が掲載されており、業績に関する記事若しくは商品の紹介記事中に「アサヒ本生」の文字が使用されているほか、甲第6号証の4及び7には「本生」及び「本生ブランド」の文字が、数カ所で使用されている。
(エ)甲第7号証の1ないし7は、販促ツール、商品パンフレット等であって、商品(発泡酒)の写真とともにその見出し等に「アサヒ本生」、「アサヒ本生 アクアブルー」、「アサヒ本生 オフタイム」、「アサヒ本生 ゴールド」の記載がある。
(オ)甲第8号証は、2001年から2003年までの商品(発泡酒)のCM集であるが、そのCM中に、「うまい、本生」、「もっとうまい本生」等の言葉がでてくるが、全てCMの最後には、当該商品の製造販売者である「アサヒ」の名前がでてくる。
(カ)甲第9号証の1ないし43は、平成13年1月11日から同16年12月31日付けの日刊新聞(毎日新聞、日経マーケティングジャーナル、フィナンシャル・タイムズ、日経産業新聞、日本経済新聞、福島民反新聞、読売新聞、朝日新聞、日本工業新聞及びぴあ)の記事抜粋であって、その記事中に「アサヒビールが・・・発泡酒『本生』・・」、「アサヒビールが・・・『アサヒ本生』のCM・・」、「アサヒの『本生』」、「アサヒ本生」、「アサヒの発泡酒『本生』」、「アサヒビール『本生』」、「アサヒビールは『本生』ブランドの新製品を投入・・」等の各記載がある。
上記提出書類によれば、請求人のニュースリリースにおいては、その見出し中に「アサヒ本生」の文字が常に使用されており、日刊新聞、テレビの広告宣伝の中では「本生」の文字が使用されているものの、それらは、当然のことながら、製造・販売者である請求人名「アサヒビール株式会社」、「アサヒビール」又は「アサヒ」等の文字とともに使用されているものである。また、請求人の各カタログ、事業報告書等の商品(発泡酒)写真においては、「本生」の文字は、当該商品の正面に付された赤ラベル、青ラベル、緑ラベル上の五角形様の図形内に書されているが、その上段には、多少図案化した「Asahi」の文字が大きく併記して使用されている。さらに、商品のパッケージ上にも商品写真とともに、その側面に、「アサヒ本生」の文字のほか、五角形様の図形内に書された「本生」とその近くに多少図案化した「Asahi」の文字が大きく併記して使用されている。
してみると、請求人による上記本件商標の使用の実際を総合して勘案すれば、請求人(出願人)の取り扱いに係る商品(ビール風味の麦芽発泡酒)は、「Asahi(アサヒ)の本生」として知られているとまではいい得るとしても、使用の結果、「本生」の文字のみにより、当該商品が何人かの業務に係るものであることを認識できるほど、取引者・需要者間に広く知られるに至ったものとまでは認めることができない。
他に、上記認定を覆すに足りる証拠は見当たらない。
そうとすれば、本願商標が商標法第3条第2項に該当するものであるとする請求人の主張は、これを採用することができない。
(3)したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとした原査定は、妥当であって、取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本願商標


審理終結日 2006-05-24 
結審通知日 2006-05-29 
審決日 2006-06-30 
出願番号 商願2000-135077(T2000-135077) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (Z32)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀内 仁子 
特許庁審判長 柴田 昭夫
特許庁審判官 山本 敦子
岩崎 良子
商標の称呼 ホンナマ 
代理人 村越 祐輔 
代理人 萼 経夫 
代理人 舘石 光雄 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ