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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない Y09
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない Y09
審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない Y09
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y09
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない Y09
管理番号 1155442 
審判番号 無効2006-89022 
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-02-23 
確定日 2007-03-19 
事件の表示 上記当事者間の登録第4677307号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4677307号商標(以下「本件商標」という。)は、「TARZANGIRL」の欧文字及び「ターザンガール」の片仮名文字を上下二段に横書きしてなり、平成14年9月12日に登録出願され、第9類「スロットマシン,業務用テレビゲーム機,家庭用テレビゲームおもちゃ,家庭用テレビゲームおもちゃ用のプログラム(携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを含む。)を記憶させた電子回路・光ディスク・磁気テープ・磁気ディスク・磁気カード・光磁気ディスク・CD-ROM・ROMカートリッジ及びDVD,電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具,レコード,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物」及び第28類「遊園地用機械器具(業務用テレビゲーム機を除く。),遊戯用器具,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ(携帯用液晶画面ゲームおもちゃに接続して用いられる専用イヤホン,その他の付属品を含む。),その他のおもちゃ,人形」を指定商品として平成15年5月30日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が引用する登録商標は、以下の1ないし6である。
1 登録第397487号商標は、「TARZAN」の文字を横書きしてなり、昭和24年10月15日に登録出願、第65類「玩具及び運動遊戯具」を指定商品として昭和26年3月14日に設定登録され、その後、昭和46年11月4日、同56年7月31日、平成3年8月29日及び同12年10月3日の4回に亘り商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、同13年3月21日に指定商品を第8類「水中ナイフ,水中ナイフ保持具,ピッケル」、第9類「ウエイトベルト,ウエットスーツ,浮袋,エアタンク,水泳用浮き板,レギュレーター」、第16類「遊戯用カード」、第20類「スリーピングバッグ」及び第28類「人形,おもちゃ(おもちゃ花火・折り紙・きびがら・千代紙を除く。),囲碁用具,将棋用具,ビリヤード用具,マージャン用具,運動用具(体育用器械器具・体操用器械器具・スケート靴・スターターピストルを除く。)」とする書換登録がされているものである。
2 登録第704840号商標は、「TARZAN」の文字を横書きしてなり、昭和39年7月23日に登録出願、第26類「印刷物、書画、彫刻、写真、ただし、この商標が特定の表題(題号)として使用される場合を除く」を指定商品として昭和41年4月26日に設定登録され、その後、同52年1月18日、同61年7月17日、平成8年5月30日及び同18年1月10日の4回に亘り商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、同18年8月16日に指定商品を第9類「映写フィルム(ただしこの商標が特定の表題(題号)として使用される場合を除く。),スライドフィルム(ただしこの商標が特定の表題(題号)として使用される場合を除く。),スライドフィルム用マウント(ただしこの商標が特定の表題(題号)として使用される場合を除く。),録画済みビデオディスク及びビデオテープ(ただしこの商標が特定の表題(題号)として使用される場合を除く。)」及び第16類「印刷物(ただしこの商標が特定の表題(題号)として使用される場合を除く。),書画(ただしこの商標が特定の表題(題号)として使用される場合を除く。),写真(ただしこの商標が特定の表題(題号)として使用される場合を除く。)」とする書換登録がされているものである。
3 登録第718095号商標は、「ターザン」の文字を横書きしてなり、昭和39年7月23日に登録出願、第26類「印刷物、書画、彫刻、写真、ただし、この商標が特定の表題(題号)として使用される場合を除く」を指定商品として昭和41年8月27日に設定登録され、その後、昭和52年8月3日、同61年9月18日、平成8年9月27日及び同18年4月25日の4回に亘り商標権の存続期間の更新登録がされているものである。
4 登録第1524723号商標は、「TARZAN」の文字を横書きしてなり、昭和49年3月27日に登録出願、第24類「おもちゃ、人形、娯楽用具」を指定商品として昭和57年7月30日に設定登録され、その後、平成4年8月28日及び同14年2月26日の2回に亘り商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、同15年2月5日に指定商品を第9類「家庭用テレビゲームおもちゃ,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,スロットマシン」、第25類「仮装用衣服」及び第28類「おもちゃ,人形,囲碁用具,将棋用具,歌がるた,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,トランプ,花札,マージャン用具,遊戯用器具,ビリヤード用具」とする書換登録がされているものである。
5 登録第1524724号商標は、「ターザン」の文字を横書きしてなり、昭和49年3月27日に登録出願、第24類「おもちゃ、人形、娯楽用具」を指定商品として昭和57年7月30日に設定登録され、その後、平成4年8月28日及び同14年2月26日の2回に亘り商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、同15年3月5日に指定商品を第9類「家庭用テレビゲームおもちゃ,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,スロットマシン」、第25類「仮装用衣服」及び第28類「おもちゃ,人形,囲碁用具,将棋用具,歌がるた,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,トランプ,花札,マージャン用具,遊戯用器具,ビリヤード用具」とする書換登録がされているものである。
6 登録第1855201号商標は、「TARZAN」の文字を横書きしてなり、昭和58年2月3日に登録出願、第11類「コンピューター用ビデオゲームプログラムを記憶させた磁気テープ、磁気デイスク、電子回路、携帯用ステレオレコーダー、その他本類に属する商品」を指定商品として昭和61年4月23日に設定登録され、その後、平成8年7月30日及び同17年12月27日の2回に亘り商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、同18年8月16日に指定商品を第9類「コンピュータ用ビデオゲームプログラムを記憶させた磁気テープ,未記録の磁気ディスク,電子回路,携帯用ステレオカセットテープレコーダー,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,磁心,抵抗線,電極」とする書換登録がされているものである。 以下、これらをまとめて「引用商標」という。

第3 請求人の主張の要点
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第72号証(枝番を含む。)を提出している。
1 請求の利益
請求人エドガー ライス バローズ インコーポレーテッドは、本件商標と抵触する範囲に引用商標を所有する。
また、「TARZAN」を主人公とする一連の物語、すなわち「Tarzan of the Apes(類人猿ターザン)」、「The Return of Tarzan(ターザンの復讐)」、「The Beasts of Tarzan(ターザンの凱歌)」等の作者はEdgar Rice Burroughsであり、請求人は、Edgar Rice Burroughsが1923年に設立した法人であってEdgar Rice Burroughsの知的財産権を管理している。
したがって、請求人は、本件商標の登録無効審判請求人としての請求の利益を有する。
2 請求の理由
(1)商標法第4条第1項第11号について
(ア)引用商標について
引用商標は、「TARZAN」の欧文字又は「ターザン」の片仮名文字からなるものであるから、「ターザン」の称呼を生ずる。
「TARZAN」は、Edgar Rice Burroughsの小説「Tarzan of the Apes(類人猿ターザン)」等の主人公の名称として周知であるので、引用商標からは、当該小説の主人公「ターザン」の観念を生じる。
(イ)本件商標について
本件商標は、「TARZANGIRL」の欧文字及び「ターザンガール」の片仮名文字を横書きに二段並記してなるところ、その構成中の「GIRL/ガール」の部分は「女の子、少女」を意味するものとしてごく身近な英語であるから本件商標は「TARZAN」と「GIRL」の2つの英単語で構成されていると容易に認識されるものである。
また、「TARZAN」の部分は周知・著名であるから、商標「TARZANGIRL」に接した者は、強烈な印象を与える「ターザン」の部分で商標を記憶する。
したがって、本件商標からは、「ターザンガール」の称呼の外「ターザン」の呼称をも生ずるものである。
また、本件商標に接した者は強烈な印象を与える「ターザン」の部分で商標を記憶するため、本件商標からは、「ターザン」の観念を生じる。
(ウ)類否判断
本件商標及び引用商標は、「ターザン」の称呼及び「ターザン」観念を共通にする類似する商標であって、指定商品も同一又は類似するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第10号について
(ア)請求人は、商標「TARZAN」に関し、引用商標を含む43件の登録商標(甲第8ないし第51号証)の商標権者である。
このように、請求人は、日本において長期間にわたり、広大な範囲の商品・役務について商標権を所有し、これらの登録商標の使用を継続してきた。
その結果、商標「TARZAN」は、請求人の業務に係る商品・役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されるに至ったものである。
(イ)Edgar Rice Burroughsは、1912年に、「TARZAN」を主人公とした最初の小説を発表した。
その後、同氏は、30以上の「TARZAN」の小説を雑誌、新聞、書籍等に発表するとともに、1923年に、アメリカ合衆国カリフオルニア州に、エドガー ライス バローズ インコーポレーテッド(Edgar Rice Burroughs, Inc.)を設立した。
以来、「TARZAN」の一連の小説は、同社を通じて、90年以上の間世界30カ国以上の国々で翻訳・出版され、コミック本、新聞、雑誌等にも掲載され、現在も出版・販売が継続されている。
「TARZAN」の小説は、1918年に、初めて映画化され、1932年のワイズミュラーが主演したトーキー映画により世界的に有名なものとなった。
その後、ワイズミュラーが主演した作品だけでも10本以上の「TARZAN」の映画が製作された。
そして、その後も「TARZAN」に関する多数の劇場用映画、ラジオ・テレビ放送番組が制作・上映・放映された(甲第52号証)。
1999年に、ウォルトディズニー社によりアニメーション映画化され、日本を含め、世界中で上映された。
これらの映画作品等は、現在、録画済みビデオディスク・ビデオテープ・DVD等で販売されている(甲第53号証)。
日本においても、ターザンシリーズの書籍は長年にわたり、多数、翻訳・出版が継続されている。
「TARZAN」の映画は、大正8年の初上映以来、長年にわたり、劇場上映・テレビ放映されており、また、録画済みビデオディスク・ビデオテープ・DVD等で継続的に販売されている(甲第54号証)。
また、日本において、株式会社マガジンハウスにより、1983年から「Tarzan」と題する雑誌が刊行され、現在においても広く販売が継続されている(甲第55号証)。
株式会社マガジンハウスは、請求人より商標の使用権を得て、当該使用を行っているものである。
(ウ)「TARZAN」については、広辞苑に掲載され、意味内容が説明されている(甲第56号証)。
(エ)上記(ア)ないし(ウ)で述べたとおり、商標「TARZAN」は、アメリカ合衆国の法人である請求人の業務に係る録画済みビデオディスク・ビデオテープ・DVD等を表示するものとして需要者の間に広く認識されるに至っている。
また、商標「TARZAN」又は商標「ターザン」と商標「TARZANGIRL/ターザンガール」とが類似することについては、上記(1)で述べたとおりである。
(オ)したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標に類似する商標であって、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号について
(ア)商標「TARZAN」は、請求人の業務に係る録画済みビデオディスク・ビデオテープ・DVD等を表示するものとして需要者の間に広く認識されるに至っているものであることは、上記(2)(ア)ないし(ウ)で述べたとおりのとおりである。
(イ)Edgar Rice Burroughsの著述に係る「TARZAN」の小説には、主人公「TARZAN」(ターザン)」の恋人として「JANE(ジェーン)」が登場することもよく知られている。
請求人が商標権者となっている登録第1653127号(甲第17号証 ) 、登録第1673350号(甲第18号証)及び登録第1941457号(甲第20号証)には、「ターザンランド」の文字とともに、ターザンとジェーンの絵が表されている。
また、請求人は、商標「JANE」に関し、登録第2276998号商標(甲第57号証)ほか6件の登録商標(甲第58ないし第63号証)の商標権者である。
このとおり、請求人は、日本において、長期間にわたり、広大な範囲の商品・役務について「JANE」に関する商標権を所有し、使用を継続してきた。
その結果、商標「JANE」は、請求人の業務に係る商品・役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されるに至ったものである。
(ウ)著名な小説「TARZAN」の重要な登場人物に、「ターザン」の恋人の女性「ジェーン」が存することは、小説の主人公「ターザン」が著名であるのと同様、この小説を読んだ誰もが知るところである。
よって、「TARZANGIRL/ターザンガール」なる商標に接する者は、小説「TARZAN」に登場するターザンの恋人の女性を観念する。
そして、その女性とは請求人の業務に係る商品・役務を表示するものとして需要者の間に広く認識された「JANE」である。
(エ)したがって、請求人又はこれに関連する者以外の者が「TARZANGIRL/ターザンガール」を本件指定商品に使用した場合、需要者において、請求人等の業務に係る商品であるとの混同を生ずるおそれがあるので、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第19号について
商標「TARZAN」は、世界的に著名な商標である。
そして、このような著名な商標と類似する商標に関し、著名商標主以外の者が登録を受け、使用した場合には、このような著名な商標の出所表示機能を希釈化させるおそれがある。この点において本件商標は不正の目的をもって使用するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第7号について
(ア)「TARZAN」は、Edgar Rice Burroughsの著作に係る「Tarzan of the Apes(類人猿ターザン)」、「The Return of Tarzan(ターザンの復讐)」、「The Beasts of Tarzan(ターザンの凱歌)」等の小説の主人公の名であり、これらの小説の題号に含まれた語である。
すなわち、「広辞苑第五版」(岩波書店発行)の「ターザン」 の項には「アメリカの作家バローズ(Edgar Rice Burroughs)が1912年から連続して発表した冒険小説の主人公の名。アフリカのジャングルの王者として活躍。たびたび映画化され、32年、水泳選手ワイズミュラーが主演した映画で世界的に有名となる。」とある(甲第56号証)。
また、「ランダムハウス英和大辞典」(小学館発行)には「Tarzan」の項に「ターザン:米国の作家Edgar Rice Burroughs作の一連のジャングル冒険物語の主人公」と記載されている(甲第64号証)。
(イ)一方、本件商標は、その指定商品に、第9類「スロットマシン,業務用テレビゲーム機,家庭用テレビゲームおもちゃ,家庭用テレビゲームおもちゃ用のプログラム(携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを含む。)を記憶させた電子回路・光ディスク・磁気テープ・磁気ディスク.磁気カード・光磁気ディスク・CD-ROM・ROMカートリッジ及びDVD,電子応用機械器具及びその部品や、レコード,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物」、第28類「携帯用液晶画面ゲームおもちゃ」を含んでいる。
これらの指定商品は、動画や静止画像又はストーリー性のあるゲーム等をその中に納めることを前提とする。そのような動画や静止画像又はストーリー性のあるゲームに本件商標を使用することは、著作権法に抵触する事態を招くおそれがあり、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(6)むすび
本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第10号、同第15号、同第19号又は同第7号に該当するにもかかわらず登録されたものであるから、その登録は無効とされるべきである。
3 弁駁の理由
(1)商標法第4条第1項第11号について
(ア)裁判例の参酌
(a)最高裁昭和38年12月5日判決(昭和37年(オ)第953号)
「簡易、迅速をたつとぶ取引の実際においては、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は、常に必らずしもその構成部分全体の名称によって称呼、観念されず、しばしば、その一部だけによって簡略に称呼、観念され、一個の商標から二個以上の称呼、観念の生ずることがあるのは、経験則の教えるところである(昭和三六年六月二三日第二小法廷判決、民集一五巻六号-六八九頁参照)。」旨判断した(甲第65号証)。
(b)東京高裁平成12年10月5日判決(平成12年(行ケ)第155号)
「そうである以上、商標については、各構成要素に上記のような不可分的結合が認められない限り、全体観察に対する修正として、より正確には、全体観察を実態に即して行うための必須の手法として、分離観察が必要となるものというべきである。」旨判断した(甲第66号証)。
(イ)本件商標からは、「ターザン」の観念が生じる。
そして、「ターザン」の観念は、Edgar Rice Burroughsの小説「Tarzan of the Apes(類人猿ターザン)」等の主人公「ターザン」の観念である。
すなわち、乳児の頃からジャングルでゴリラに育てられ、猛獣と会話ができる人間「ターザン」の観念である。
インターネットを用いて簡易なサーチを行ったところ、「ターザンガール」という語の使用例が数点みつかった。
それらの使用例では、いずれも「ターザンガール」のうち「ターザン」の部分は上記小説の主人公の「ターザン」の観念を有するものとして用いられており、「ターザンガール」の観念を形成する際に重要な役割を果たしている。
(a)「ティツピと行く野生の世界」と題するテレビ番組を紹介するインターネット上の情報である。
この番組に登場する少女テイッピが、アフリカの野生動物とともに成長し、猛獣とも会話ができることを紹介し、この少女ティツピを「ターザンガール」と形容している(甲第67ないし第71号証)。
(b)アバターアイテムショップで、動物の毛皮をまとったようなキャラクターの衣装を、「ターザンガール」と称し、ジャングルを背景にして紹介している(甲第72号証)。
(ウ)すなわち、本件商標「ターザンガール」の「ターザン」と「ガール」は「各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標」ではない。
なぜならば、「ターザン」の部分に強力な影響力があるため、本件商標は、「ターザン」の観念、あるいは「ターザン(の女版)」といった観念を有する。
すなわち、この点に関し被請求人の答弁書の用語に即して表現すると、本件商標は軽重があり、「ターザン」の部分にウェイトがかたよっている。
したがって、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められないものである。
よって、本件商標は「ターザン」と「ガール」とに分離し得るものであり、本件商標から「ターザン」の称呼・観念も生じる。
(エ)被請求人は、非類似と判断された判決、審決、決定及び登録例を列挙する。
しかし、いずれの例も、本件商標と引用商標を「非類似である」と判断するための根拠とはなり得ない。なぜならば、請求人は、本件商標には軽重があり「TARZAN」の部分のウェイトが高いために分離して解釈すべきであると述べているのに対し、いずれの例も、「TARZAN+○○○」と「○○○」との類似性を判断しておらず、その是否を判断するのに用いることができないからである。
(2)商標法第4条第1項第10号、第15号及び第19号について
(ア)被請求人は、本件商標の周知・著名性に関し、使用の事実の証明が不十分であるとして、これを否定する。
しかし、広辞苑に掲載されているという事実は、使用の事実を証明する多数の資料の存在に勝るものであると考える(甲第56号証)。
広辞苑は、なるほど特定の編者により選択された言葉を編集したものであるが、掲載される用語は、日本語として所定の観念が形成されておりその意味内容を確立させる必要があるものを選りすぐっている。
そして広辞苑は、極めて広く頒布されており、権威ある辞書として多数の者に利用されている。すなわち、「TARZAN」は、周知・著名な商標である。
(3)商標法第4条第1項第7号について
(ア)特許庁の審査基準では、商標法第4条第1項第7号の該当例として、「他の法律によって、その使用等が禁止されている商標」が挙げられている。
そして、本件指定商品には、動画や静止画像又はストーリー性のあるゲーム等をその中に納めることを前提とするものを含んでいる。
そのような動画や静止画像又はストーリー性のあるゲームに本件商標を使用することは、著作権法に抵触する事態を招くおそれがあり、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

第4 被請求人の答弁の要点
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第89号証を提出している。
1 請求人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、第10号、第15号、第19号及び第7号に違反して登録されたものであるから、本件商標の登録は同法第46条第1項によって無効とされるべきである、と主張しているが、かかる主張は、以下のとおり、何ら根拠がないものである。
なお、請求人は、同様の理由にて商標登録異議の申立て(異議2003-90513)を行っているが、本件商標の商標登録を維持する旨の決定がなされている(乙第1号証)。
2 商標法第4条第1項第11号について
(1)請求人は、本件商標は「ターザンガール」の他に「ターザン」の称呼を生じ、引用商標は「ターザン」の称呼を生じることから、本件商標と引用商標とは類似の商標であると主張している。
このような認定は、全体としての一体性が強い本件商標の構成要素の一部分を摘出比較することにより、引用商標との類否判断をおこなっているものと推認できる。
(2)しかしながら、商標は商品の識別標識であるから、1個の商標は文字・図形・記号・色彩等が組み合わされたものであり、したがって、商標の類否の判断においても原則的にはこれらの部分を総括した全体が識別標識として取引者・需要者の心理にいかに反映し理解されるかという見地からなされなければならず、その意味において、商標類否の判断は対象を全体的に観察した上でなされるべきであって、これを前提とせずにその構成要素の各部分のみを摘出比較するのみでは足りない。
そこで、本件商標を全体観察により考察するに、本件商標の構成は、上段に「TARZANGIRL」、下段に「ターザンガール」を同書、同大、同間隔をもって一連に書されているばかりでなく、称呼も格別冗長とはいえず、「ターザンガール」の一連の称呼のみを生じ、「ターザン」の単独の称呼を生じないというべきである。
そして、本件商標から生ずる「ターザンガール」の称呼と引用商標から生ずる「ターザン」の称呼とを比較すると、語尾における「ガール」の有無により、その構成音数に顕著な相違があり、称呼における全体的語韻・語調についても明らかな差異があるため、本件商標と引用商標は明瞭に聴別しうるものである。
したがって、本件商標と引用商標とは、称呼において互いに相紛れるおそれはない。
さらに、本件商標と引用商標とは、観念、外観においても、明らかに区別できる差異を有するものである。
(3)なお、本件商標の一部を構成する「GIRL/ガール」は、本件商標における指定商品の品質、効能等の特性を記述するものでなく、それ自体としても識別力を有することは、本件商標と引用商標の重複する指定商品において、「GIRL」、(標準文字)「GIRL」及び「GIRL/ガール」が登録となっている例(乙第2ないし第4号証)があることより明らかである。
(4)一般に、それ自体として識別力を有する文字(A)及び(B)の結合が自然で、いずれにもウエイトがかたよらない場合には、このような文字を結合させた商標(A)+(B)は分離して称呼されず、商標(A)又は(B)には類似しないとされるのが原則であることは、過去の判決例、審決例、決定例及び登録例よりみても、否定できない事実である。
(5)そして、過去の判決例、審決例、決定例及び登録例の考え方を本件商標と引用商標に適用して考察すれば、本件商標は、上下段ともに各文字を一連に同書、同大、同間隔に書してなるので、構成上不可分一体の形態であるのみならず、発音に際しても、冗長に亘ることなく淀みなく一連に称呼し得る。
そして、本件商標を構成する「TARZANGIRL」と「ターザンガール」の文字は、特定の観念を生じ得ない一種の造語と判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、その構成文字に相応して「ターザンガール」のみの称呼を生じ、引用商標は「ターザン」の称呼のみ生ずると認められる。
そこで、本件商標と引用商標とを、それぞれより生ずる各称呼を比較するに、両者は5音と3音という音構成の差異に加えて、後半部における「ガール」の音の有無の明確な差異を有するものであるから、称呼における全体的語韻・語調についても明らかな差異があるため、称呼において相紛れるおそれのないものであり、両者は称呼上区別し得るものである。
次に、本件商標が特定の観念を生じ得ない一種の造語と判断されること前記したとおりであるから、両者は観念上比較し得ないものであり、また、それぞれの構成よりみて外観上区別し得るものである。
してみれば、本件商標と引用商標は、その称呼、観念及び外観のいずれからしても十分に区別し得る商標であるから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。
(6)また、請求人は、「TARZAN」部分が周知・著名であることを立証しようとして種々の証拠を提出しているが、それらの証拠は、「TARZAN」が周知・著名な商標に相当するものであることを十分に立証するものではない。
すなわち、請求人は、「TARZAN」又は「ターザン」からなる商標及び「TARZAN」又は「ターザン」を一部に含む商標(甲第8ないし第51号証)について、商標権を有している。
しかしながら、これらの登録商標を使用しているという証拠は提出されていない。
すなわち、商標は、登録したからといって、そのことをもって、その商標が周知・著名になったりするというものではない。その商標の使用により、信用が化体されていくものである。
請求人の立証の仕方には無理があり、甲第8ないし第51号証の登録をもって、「TARZAN」又は「ターザン」 の商標は周知・著名性を有するという事実を裏付けるものとは到底いえない。
(7)請求人は、商標法第4条第1項第10号、同第15号、同第19号及び同第7号の無効理由を主張する理由において、書籍、映画、ビデオディスク等(甲第52ないし第56号証)の証拠を挙げて、「TARZAN」は周知・著名である旨主張している。
しかし、書籍に掲載、映画化されたことのみをもって、周知・著名性を有するとはいえない。これらの書籍、映画、ビデオディスク等が、どの程度販売されて、周知・著名になったかを説明するには、証拠としては不十分である。
甲第54号証は、おそらく「TARZAN」又は「ターザン」をキーワードにして検索した結果を印刷したものと思われるが、このうち、半数以上は、エドガー・ライス・バーローズの小説の主人公「ターザン」とは関係のない書籍、DVD等であり、「ターザン」と関係があるものに関しても、重複していたり、入手不可・絶版になっているものも多数見受けられ、請求人の主張を裏付ける証拠としては、十分ではない。
また、映画に関しても、近年は、公開の頻度も激減し、1999年以降は、映画化されていない。すなわち、人の目に触れる機会が減少しており、周知・著名性は有しないため、証拠として認定するには無理がある。
さらに、広辞苑(甲第56号証)に掲載されたことをもって、周知・著名であると認定するのは不可能である。
すなわち、広辞苑等の辞典は特定の編者により、選択された言葉を編集したものであり、周知・著名性は、具体的な事実をもって判断すべきである。
以上のとおり、「TARZAN」及び「ターザン」 に周知・著名性は認められず、本件商標「TARZANGIRL/ターザンガール」について、「TARZAN」又は「ターザン」のみ抽出して、引用商標と類似するとして商標法第4条第1項第11号に該当するとの請求人の主張は何ら理由がないものである。
3 商標法第4条第1項第10号について
(1)請求人は、請求人の商標「TARZAN」は、需要者の間に広く認識されている商標であるので、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものであると主張しているが、この点も、以下で述べるとおり、何ら理由がない。
(2)請求人は、引用商標が周知商標であることを立証しようとして、種々の証拠を提出しているが、各証拠を精査するに、引用商標(甲第8ないし第51号証)中、本件商標と同一又は類似する商品を指定しているものは、甲第8ないし第10、第12、第13、第17、第19、第20及び第50号証の登録商標である。かかる登録商標の使用を立証するため、甲第52ないし第56号証を挙げている。
それぞれ対比すると、引用商標のうち、甲第17、第20及び第50号証については、その商標「図形+TARZANLAND/ターザンランド」を使用している証拠は、甲第52ないし第56号証には見当たらない。
(3)甲第9及び第10号証の引用商標の使用の立証のため、甲第52及び第54号証に挙げられている証拠は、いずれも、書籍の題号、記録済みビデオテープ等の題号としての使用であり、該題号は、ただちに主人公「ターザン」の物語という特定の内容を表示するものと認められ、品質を表示するものである。
すなわち、これらの証拠は、著作物の題号に該当するものであり、商標として使用されているものではない(乙第74号証参照)。
したがって、甲第9及び第10号証の引用商標が、需要者の間に広く認識されているものではない。
(4)甲第55号証に挙げられている証拠は、定期刊行物であり、かかる題号は自他商品の識別力を有すると解される(乙第74号証参照)。
そこで、かかる証拠を検討すると、「需要者の間に広く認識された」といえるためには、その使用の期間、使用の方法、態様、使用量(商標を付した商品の販売数量等)、取引範囲等各種の事情を証拠にもとづいて調査し、それぞれの取引における実情をも勘案し、社会通念に照らし、客観的に周知であるかどうかが事実問題として判断されるべきである。
定期刊行物のような、全国的に流通する日常使用の一般的商品について、商標法第4条第1項第10号が規定する「需要者の間に広く認識された」といえるためには、全国にわたる主要商圏の同種商品取扱業者の間に、相当程度認識されている必要があると解すべきである(乙第75号証として提出する昭和58年6月16日東高民6判・昭和57年(行ケ)110号[DCC事件])。
しかしながら、甲第55号証について、その商標を付した定期刊行物が、全国的に取り扱われているのか、また、どの程度の販売数量をあげているのかが不明である。
仮に、甲第55号証が周知であったとしても、本件商標は、「TARZANGIRL/ターザンガール」 であり、「TARZAN」と非類似の商標であるため、商標法第4条第1項第10号の適用は不可能である。
(5)甲第56号証の証拠は、国語辞典(広辞苑)であり、その中に記載されている「TARZAN」、「ターザン」は、商標としての使用に該当しないことは明らかである。
したがって、証拠としては不適切である。
(6)甲第8及び第19号証の引用商標については、その指定商品において使用されている事実を示す証拠は提出されていない。したがって、証拠としては不適格である。
4 商標法第4条第1項第15号について
(1)請求人は、請求人の商標である「TARZAN」、「ターザン」は、著名商標であるので、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであると主張しているが、この点も、以下に述べるとおり、何ら理由がない。
(2)請求人は、小説「TARZAN」の登場人物に「ターザン」の恋人の女性「ジェーン」 が存在し、そのため、「TARZANGIRL/ターザンガール」からターザンの恋人「ジェーン」を観念するとし、請求人の登録商標(甲第57ないし第63号証)を挙げて、請求人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがあると主張する。
しかしながら、「TARZAN」、「ターザン」 の商標自体に周知性は認められないことは、前項で述べたとおりであるから、小説「ターザン」の、しかも一登場人物である「ジェーン」は著名でないことは、明らかである。
そもそも、本件商標は「TARZANGIRL/ターザンガール」であり、一定の観念を有しない造語であり、本件商標から「ジェーン」を観念するというのは、かなり飛躍した論法である。また、請求人は、甲第57ないし第63号証の登録商標を有し、使用している旨主張しているが、かかる商標を使用している証拠は、一切提出されていない。
しかも、「ジェーン」、「JANE」を選択したのは、一人請求人に限ったことではなく、請求人のみがなし得る選択事項ではないことが、「ジェーン/JANE」の文字からなる登録第2032719号商標ほかの登録例(乙第76ないし第81号証)からも明らかである。
上記登録例は、請求人以外の者によって出願され、適法に登録を受けている。すなわち、「ジェーン」、「JANE」 は、一般の女性の名前をあらわす語であり(乙第82号証)、需要者が小説「TARZAN」の一登場人物を想起するほど著名でないことは明白である。
また、「TARZAN」と同一又は一部に含む商標が、請求人以外の者により出願され、適法に登録になっている登録第565229号商標ほかの登録例(乙第83ないし第89号証)からも、そもそも「TARZAN」、「ターザン」 自体に著名性がないことが明らかである。
さらに、前記2(4)で挙げている乙第9、第19、第20、第21、第24ないし第29号証の審決例、決定例について、商標の一部分の文字が申立人、請求人の名称等であるため、出所の混同を生じるおそれがあるとの申し立て、請求に対し、いずれもそのおそれはない旨判断している。
したがって、請求人の提出する証拠程度では、商標法第4条第1項第15号の規定の適用は否定されてしかるべきである。
ゆえに、上記請求人の主張も、また何ら理由がない。
5 商標法第4条第1項第19号について
(1)請求人は、「TARZAN」、「ターザン」 は著名な商標であり、本件商標は、不正の目的をもって使用するものであるから、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであると主張している。
(2)しかしながら、「TARZAN」、「ターザン」が著名な商標でないことは、既に述べたとおりであるから、請求人の主張は事実に反するものである。また、本件商標は、「TARZAN」、「ターザン」とは非類似の「TARZANGIRL/ターザンガール」であり、被請求人が商標として選択したのは、全くの独自の選択行為によりなされたものであり、不正の目的をもって使用するものでないことは明らかである。
ゆえに、本件商標が商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであるとの請求人の主張も、また何ら理由がないものである。
6 商標法第4条第1項第7号について
(1)請求人は、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあることから、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであると主張している。
(2)しかしながら、「TARZAN」、「ターザン」 は、著名な商標でないことは、既に述べたとおりであるから、請求人の主張は事実に反するものである。また、本件商標は、「TARZAN」、「ターザン」とは非類似の「TARZANGIRL/ターザンガール」であり、被請求人が商標として選択したのは、全くの独自の選択行為によりなされたものであり、本件商標は、その構成自体が、矯激、卑猥、差別的な印象を与えるような文字からなるものでなく、さらに、本件商標を指定商品について使用することが社会公共の利益・一般道徳観念に反するものとすべき事実は認められない。
また、請求人は、著作権に抵触するおそれがある旨主張しているが、そもそも、本件商標は「TARZAN」、「ターザン」とは非類似であるため、そのおそれがないことは明白である。
ゆえに、本件商標が商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるとの請求人の主張も、また何ら理由がないものである。
7 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、第10号、第15号、第19号及び第7号のいずれの規定にも該当しないこと明らかであるから、本件商標はそれらの規定に違反して登録されたものであり、無効とされるべきであるとの請求人の主張は全く根拠のないものである。
したがって、本件無効審判の請求は成り立たない。

第5 当審の判断
1 請求の利益について
請求人が本件審判請求の利益を有するか否かについては当事者間に争いがなく、かつ、請求人は本件審判の請求人適格を有するものと認められるので、以下、本案に入って審理する。
2 本件商標の商標法第4条第1項第11号について
本件商標と引用商標との類否について検討するに、本件商標は、「TARZANGIRL」の欧文字及び「ターザンガール」の片仮名文字を上下二段に横書きしてなるところ、その構成中の「TARZANGIRL」及び「ターザンガール」の文字は、それぞれ同書、同大、等間隔でまとまりよく表されており、これより生ずる「ターザンガール」の称呼も格別冗長というほどのものでもなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。
そして、「TARZAN」及び「ターザン」の文字が米国の作家Edgar Rice Burroughsの小説に登場する主人公の名称として知られているとしても、そのことのみをもって、本件商標から「GIRL」及び「ガール」の文字部分を捨象すべき理由はなく、「TARZAN」及び「ターザン」の文字部分のみが分離、抽出されて自他商品の識別標識たる要部として認識されるというべきではないから、本件商標は、上記構成に照らし、全体として特定の既成観念を生じ得ない一種の造語よりなるものというのが相当である。
そうすると、本件商標は、「ターザンガール」の一連の称呼のみを生ずるものといわなければならない。
他方、引用商標は、それぞれの構成文字に相応して、いずれも「ターザン」の称呼を生ずるものである。
しかして、本件商標より生ずる「ターザンガール」の称呼と引用商標より生ずる「ターザン」の称呼とは、構成音数が異なり、「ガール」の音の有無という顕著な差異を有することから、明瞭に区別し得るものである。
さらに、本件商標は、上記のとおり、特定の既成観念を生じ得ない一種の造語であることから、観念上、引用商標と比較することはできない。また、それぞれの構成に照らし、両商標は外観上判然と区別し得る差異を有するものである。
してみれば、本件商標と引用商標とは、称呼、観念及び外観のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
3 本件商標の商標法第4条第1項第10号及び同項第15号について
(1)「TARZAN」の著名性について
請求人は、「TARZAN」がEdgar Rice Burroughsの小説に登場する主人公の名称として世界的に有名である旨及び請求人は、我が国において広大な範囲の商品・役務について「TARZAN」の商標権を有し、その使用を継続してきた結果、商標「TARZAN」は請求人の業務に係る商品・役務を表示するものとして需要者間に広く認識されている旨を主張して証拠を提出している。
しかしながら、請求人の提出に係る証拠によっては、「TARZAN」がEdgar Rice Burroughsの小説に登場する主人公の名称として知られていること、また、請求人が我が国において多くの登録商標を所有していることは認められるとしても、我が国において「TARZAN」の文字自体が商標として、商品又は役務について使用された結果、請求人の業務に係る商品・役務を表示するものとして需要者間に広く認識されているものと認めることはできない。
もとより、多数の商標を登録していたとしても、そのことのみで当該商標が需要者間に周知になるものではない。
そして、請求人が商標「TARZAN」を使用しているとする録画済みビデオディスク・ビデオテープ・DVD等(甲第53及び第54号証)についてみれば、「TARZAN」の文字は、録画済みビデオディスク・ビデオテープ・DVD等のタイトルとして使用されているものであり、これらの内容を示すものであって、商品についての商標として使用されているものとは認識され得ないものである。
また、雑誌について使用されている「TARZAN」は商標としての機能を果たし得るものであるとしても、その雑誌について、どの程度の範囲で使用されているのか、その数量、期間、広告宣伝の事実等が一切明らかでなく、雑誌について使用する商標として周知・著名になっているものとは認められない。
その他、「TARZAN」の文字からなる商標が請求人の業務に係る商品、役務を表示するものとして需要者間に広く認識されているものと認めるに足る証拠はない。
また、本件商標と「TARZAN」の文字からなる商標とが類似するものでないことは、上記2(1)で本件商標と引用商標との類否について述べたとおりである。
(2)「JANE」の著名性について
請求人は、Edgar Rice Burroughsの小説の主人公「ターザン」が著名であるのと同様に、ターザンの恋人「ジェーン」もよく知られており、請求人の所有に係る登録商標「JANE」も請求人の業務に係る商品・役務を表示するものとして需要者間に広く認識されている旨主張し、さらに本件商標からターザンの恋人の女性を観念させるものである旨主張して証拠を提出している。
しかしながら、提出に係る証拠によっては、直ちに「ジェーン」ないしは「JANE」がターザンの恋人として知られているものと認めることはできない、まして、「JANE」が商標として使用されている事実を示す証拠もなく、さらに、「JANE」が欧米の女子名であることからすれば、本件商標からターザンの恋人の女性を観念させるものとはいい難いものである。
(3)まとめ
そうとすれば、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が「TARZAN(ターザン)」又は「TARZAN(ターザン)の恋人の女性JANE(ジェーン)」を連想、想起するようなことはなく、該商品が申立人又は同人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第10号及び同項第15号のいずれにも該当しないものである。
4 本件商標の商標法第4条第1項第19号及び同項第7号について
(1)請求人は、引用商標を含め「TARZAN」に係る商標は、世界的に著名な商標であるから、著名商標主以外の者が登録を受け使用した場合には、著名な商標の出所表示機能を希釈化させるおそれがあり、本件商標は不正の目的をもって使用するものである旨主張する。
さらに請求人は、本件商標の指定商品には動画や静止画像又はストーリー性のあるゲーム等を納めることを前提とする商品が含まれており、そのような商品に本件商標を使用することは著作権法に抵触する事態を招くおそれがあり、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある旨主張する。
しかしながら、上記3(1)で述べたとおり、引用商標を含む「TARZAN」に係る商標は、請求人の業務に係る商品・役務を表示する商標として需要者間に広く認識されているものとは認められないし、本件商標と引用商標とは類似するものではない。
また、本件商標が不正の目的をもって使用するものであることを認める証拠もない。
そうすると、たとえ、被請求人が本件商標の登録を受け使用したとしても、引用商標の出所表示機能を希釈化させるおそれがあるものとは認められない。
そして、本件商標をその指定商品に使用しても、引用商標を連想、想起するようなことがないことは前述のとおりであり、直ちに著作権法に抵触するものともいえない。
仮に著作権法に触れることがあるとしても、それは本件無効審判の埒外の
問題であり、本件商標をその指定商品に使用することが、公の秩序又は善良の風俗を害することになるものでもない。
(2)まとめ
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第19号及び同項第7号のいずれにも該当しないものである。
5 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第10号、同項第15号、同項第19号及び同項第7号のいずれの規定にも違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効にすべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2006-10-11 
結審通知日 2006-10-18 
審決日 2006-11-07 
出願番号 商願2002-77880(T2002-77880) 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (Y09)
T 1 11・ 26- Y (Y09)
T 1 11・ 25- Y (Y09)
T 1 11・ 222- Y (Y09)
T 1 11・ 22- Y (Y09)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 高野 義三
特許庁審判官 中村 謙三
井岡 賢一
登録日 2003-05-30 
登録番号 商標登録第4677307号(T4677307) 
商標の称呼 ターザンガール、ターザン 
代理人 穂坂 道子 
代理人 細井 勇 
代理人 河野 昭 

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