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審決分類 審判 一部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) Y25
審判 一部無効 称呼類似 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) Y25
審判 一部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) Y25
管理番号 1150259 
審判番号 無効2005-89160 
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-02-23 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-12-12 
確定日 2007-01-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第4866741号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4866741号の指定商品中、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物(ただし、「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),運動用特殊衣服,運動用特殊靴(ただし、「乗馬靴」を除く。)」についての登録を無効とする。 その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4866741号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおり、淡い黄土色の如き色彩で着色された筆記体風の「timeless」の文字とゴシック体の「audrey」の文字とを結合した構成からなり、平成16年6月3日に登録出願され、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」並びに第3類、第9類、第12類、第16類、第18類、第21類、第24類及び第28類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、平成17年5月27日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が引用する登録第3111126号商標(以下「引用商標」という。)は、「タイムレス」及び「TIMELESS」の文字を上下二段に横書きしてなり、平成4年12月2日に登録出願、第25類「被服,ガ?タ?,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),げた,草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品として、平成7年12月26日に設定登録され、その後、平成18年1月10日に商標権の存続期間の更新登録がされているものである。

第3 請求人の主張の要点
請求人は、本件商標の指定商品中第25類についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第6号証を提出している。
1 請求の理由
(1)本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び第7号に該当するものであるから、同法第46条の規定により無効とされるべきである。
以下、詳述する。
(2)本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性について
(ア)本件商標中「audrey」の語は、本件商標出願に対する拒絶理由通知書にも記されているとおり、世界的に活躍した女優として著名な故Audrey Hepburn(1929?1993)を認識させる語である。また、前半部の「timeless」の語は「audrey」の語とは区別して、玉虫色に着色し、ややデザイン化した筆記体を用いて記されている。
したがって、本件商標は、「time1essaudrey」と一連に記されてはいるが、必ずしも一体的に構成された商標とのみ認識されるわけではなく、「time1ess」と「audrey」の2語が個別に看取され、それぞれの語がそれぞれの立場で商品を識別していると考えるのが相当である。
よって、本件商標は、「タイムレスオードリー」と一連にのみ称呼される訳ではなく、「time1ess」の語に着目して「タイムレス」とのみ称呼される場合もあり、「audrey」の語に着目して「オードリー」とのみ称呼される場合もある。
また、「audrey」の語は、上記のとおり、世界的に活躍した女優として著名な故Audrey Hepburnを認識させるが、「time1ess」の語は、Audrey Hepburnを形容する語という訳のものではない。
したがって、本件商標から、全体としてまとまりのある意味合いを観念することはなく、本件商標の使用される時と場所に応じ、その構成語に応じて「タイムレス」と称呼されるときには「time1ess」が観念され、「オードリー」と称呼される時には「世界的に活躍した女優として著名な故Audrey Hepburn」が観念される。
(イ)請求人の所有に係る引用商標は、平成13年から請求人の100%子会社である東レ・ディプロモード株式会社によって、婦人用の被服に使用されていて、遅くとも本件商標の出願時点においては、需要者間に周知されるに至っていた(甲第2ないし第4号証)。
(ウ)引用商標は、「タイムレス」と称呼され、英語の「time1ess」即ち「特定の時間を示さない、超時的な」等の意味合いが観念される。
本件商標が「タイムレス」と称呼され、英語の「time1ess」が観念されるときは、引用商標と称呼及び観念において同一となる。
本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品と同一ないし類似する。
(エ)したがって、本件商標は、称呼、観念において引用商標に類似し、引用商標の指定商品と同一ないし類似する商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(3)本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
前記のとおり、本件商標は、玉虫色に着色し、ややデザイン化した筆記体を用いて記された「time1ess」の語と、黒色に着色し普通の書体で書した故Audrey Hepburn(1929?1993)を認識させる「audrey」の語との結合商標であるが、「time1ess」の語はその構成から「audrey」の語から分離して観察され、認識される。
「time1ess」の語は、引用商標と同一ないし類似するから、本件商標がその指定商品に使用されるときは、請求人の「タイムレス/TIMELESS」商品の派生商品であるかの如き、ないしは請求人の「タイムレス/TIMELESS」商品と何らかの関連を有する商品であるかの如き混同を生じさせるおそれがある。
したがって、本件商標が、商標法第4条第1項第11号に該当しないとすれば、同項第15号に該当する。
(4)本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、引用商標がそっくりそのまま、しかも「audrey」の語から明瞭に分離して観察される態様で包含され、表現されている商標であるから、引用商標と無関係に使用されるときは、引用商標の識別性を著しく希釈化するおそれがあるばかりでなく、もし本件商標の使用される商品が請求人の商品に比し品質粗悪であるときは、引用商標の著名性、高級品というイメージを著しく汚損するおそれがある。
自分の商標を使用することにより、正当な理由無くして、他人の商標の識別性を希釈化したり、著名性、高級品というイメージを汚損することにより、他人の貴重な知的財産権を毀損する行為は不法行為を構成し、公の秩序を害する行為である。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。
2 弁駁の理由
(1)本件商標について
(ア)本件商標の構成・外観
被請求人は、「timeless」と「audrey」が色彩及び文字の種類を異にすると認めた上で、ほぼ同一の大きさで表示され、「timeless」と「audrey」を隙間なく表示していることを理由に、本件商標は外観上一体としてのみ把握すべきであると主張する。
しかしながら、被請求人は、答弁書において、本件商標中「audrey」部分が女優・故オードリー・ヘップバーンを意味すると陳述している。もし本件商標をすべて同一の色彩・同一の文字で「timelessaudrey」と表示したならば、「timelsee」と「audrey」の結合商標であるとは認識し難く、このため、「timeless」と「audrey」について色彩並びに文字の種類に変化をもたせることによって、外観上、「timeless」と「audrey」に区別可能な構成にしたと思われる。本件商標は外観上一体としてのみ把握すべきであるとの被請求人の主張は失当である。
本件商標は、その構成上、「timeless」と「audrey」のそれぞれ異なる意味合いを有する2つの語について、色彩と文字の種類を異にして表示している。すなわち、「timeless」部分は玉虫色に着色され、他方、「audrey」部分は黒色で着色されており、色彩が異なることにより、両者は明確に区別し得る。さらに、「timeless」部分はややデザイン化した筆記体で表示され、他方、「audrey」部分は普通の活字体で表示されており、文字の種類を異にすることにより、両者は明確に区別し得る。かような次第で、本件商標は、「timeless」と「audrey」に視覚上分離して観察し得るものである。
したがって、これに接した需要者・取引者の中には、全体構成ばかりでなく、本件商標の一部、すなわち「timeless」あるいは「audrey」に着目する者も少なくないというべきである。
(イ)本件商標の称呼
本件商標中「timeless」は「タイムレス」と発音され、また、「audrey」は「オードリー」と発音される。したがって、本件商標は、その全体から「タイムレスオードリー」の称呼を生ずる。
この全体称呼は、8音とやや冗長である。しかも、8音のうち2音は長音を伴って発音されるために、冗長感をさらに助長させている。そして、上記のように、本件商標は、その構成上、異なる意味合いの2つの語について、これらの語の間に隙間を設けない代わりに、色彩を異にすることによって、かつ、文字の種類に変化をつけることによって、「timeless」と「audrey」の2つの語を視覚上分離可能に表示してなる。かような次第で、本件商標に接した需要者・取引者の中には、本件商標について、「タイムレスオードリー」の一連称呼のほか、「タイムレス」ないし「オードリー」の称呼をもって取引に資する者も少なくないというべきである。
(ウ)本件商標の観念
本件商標を構成する2つの語「timeless」と「audrey」のうち、前者は、「特定の時間を示さない、超時的な」等の意味合いを有する英語であり、また、後者は、欧米系の女子名と認識される語である。そして、「audrey」は、ごくありふれた名前であり、この名前を有する人々の中に、女優・故オードリー・ヘップバーン(Audrey Hepburn)が含まれる他、フランス出身の女優・オードリー・トートゥー(Audrey Tautou)も映画「アメリ」(2001年)の主演女優として有名である。
かような次第につき、本件商標中「audrey」から女優・故オードリー・ヘッブバーンを認識することがあるとしても、他方、本件商標の使用される時・場所・状況・背景等が異なることにより、本件商標中「audrey」から、女優・故オードリー・ペップバーン以外の「audrey」の名前を有する者を想起したり、あるいは、特定の者を認識することなく単に「audrey」という女子の名前を想起したりすることも少なくないというべきである。
被請求人は、本件商標が「オードリー・ヘップバーン展Timeless Audrey」において使用されるものであるとの事情を述べ、本願商標から「時代を超えた(timeless)Audrey(故Audrey Hepburn)」という意味合いが全体として生ずると主張する。この陳述・主張に対する請求人の反論の詳細は後述するが、本件商標は、「オードリー・ヘップバーン展」なる語と結合した構成のものではなく、単に、英文字「timeless audrey」と表示してなるにすぎない。「audrey」は、欧米系の女子の名前としてはありふれたものであり、また、女優・故オードリー・ヘップバーン以外にも「audrey」の女子名を有する著名人は多数存在するのであり、さらに、需要者・取引者は被請求人による本件商標の採択理由を知る由もないのであるから、必ずしも、本件商標に接した需要者・取引者が被請求人の主張する観念を想起するとは限らない。そして、これら2つの語「timeless」と「audrey」が有するそれぞれの意味合いは、基本的には、互いに密接な関連性を認められないものである。
したがって、本件商標から、その構成文字中「timeless」のみに着目し、「特定の時間を示さない、超時的な」等の観念を想起することも少なくないというべきである。
(エ)全体観察と分離観察
複数の語から構成される結合商標について、これを観察・把握するには、単にその全体構成を観るのみでは足らず、時に、個々の構成要素についても検討する必要がある。本件商標においては、「timeless」と「audrey」の2つの語を異なる色彩と異なる種類の文字で外観上明確に識別可能に表示してなり、また、その全体称呼「タイムレスオードリー」が冗長であって、さらに、「timeless」と「audrey」の各々の語に基本的には密接な関連性が認められないのであるから、本件商標の全体ばかりでなく、各構成要素「timeless」と「audrey」についても商標の類否判断上注意が払われるべきである。
(2)被請求人の主張する本件商標の事情について
(ア)被請求人の陳述・主張
被請求人は、本件商標が故オードリー・ヘップバーンの人生やキャリア、人道的軌跡を紹介する展覧会及びこの展覧会で販売される商品について使用されるものであり、日本において同展覧会が2004年5月の東京を最初に、その後、7都市(京都、名古屋、熊本、福岡、横浜、大阪、札幌を巡回し、2005年10月には広島県福山市で開催されたと述べる。そのうえで、本件商標から「時代を超えた(timeless)Audrey(故Audrey Hepburn)」という意味合いが全体として生ずると主張する。
(イ)展覧会の周知著名性
しかしながら、被請求人の陳述によれば、上記展覧会は、2004年5月(東京)から 2005年10月(広島県福山市)までの間に、わずか9都市で開催されたにすぎない。同展覧会の入場者数に関する被請求人の陳述はないが、同展覧会の開催場所がザ・ミュージアム(東京)、美術館「えき」(京都)、松坂屋(名古屋)、鶴屋百貨店(熊本)、小倉井筒屋(北九州)、高島屋(横浜)、なんば高島屋(大阪)、大丸(札幌)、ふくやま美術館(広島県福山市)であって、比較的小規模の美術館や百貨店(その一部のスペース)であることから、この展覧会が大規模なものではないこと、したがって、入場者数もそれほど多くはなかったことが容易に推測される。また、この展覧会に関する被請求人提出の資料は乙第4号証(すなわち、ウェブサイト抜粋)のみであり、展覧会の宣伝広告・プロモーション資料は一切提出されていない。
したがって、本件商標の登録時(平成17年5月27日)に、同展覧会そのものが周知著名であったとは到底認められない。
(ウ)展覧会の副タイトルの著名性
上記展覧会のタイトルは、甲第5号証及び被請求人提出の乙第4号証に示されるように、「オードリー・ヘップバーン展Timeless Audrey」である。「Timeless Audrey」ではない。
「オードリー・ヘップバーン展Timeless Audrey」のタイトルは、主タイトル「オードリー・ヘップバーン展」の語に基づき、展覧会がオードリー・ヘップバーンに関するものであることを展覧会に関心を抱くであろう者に理解させ、その結果として、副タイトル「Timeless Audrey」の語のうち「Audrey」がオードリー・ヘップバーンを意味することを認識させる構成をとっている。
もし、主タイトル「オードリー・ヘップバーン展」の語を伴うことなく、また、オードリー・ヘップバーンの展覧会であることを示す何らの周辺情報を伴うことなく、単に「Timeless Audrey」の語が用いられた場合には、この語に接した者の中には、この語が「オードリー・ヘッブバーンの展覧会」の副タイトルであると認識することができない者も少なからずいるものと考えられる。
ちなみに、子供に基礎教育を受ける機会を与えるための基金「オードリー・ヘップバーン子供基金(Audrey Hepbum Children's Fund)」の名称においても、故オードリー・ヘップバーンの氏名・「オードリー・ヘップバーン(Audrey Hepburn)」が用いられており、「オードリー子供基金(Audrey Children's Fund)」とは称していない。略称「オードリー(Audrey)」と「子供基金(Children's Fund)」の語を結合させただけでは、オードリー・ヘップバーンに由来する基金であるとは容易に認識し得ない。
(エ)本件商標と展覧会
上述のように、展覧会「オードリー・ヘップバーン展Timeless Audrey」そのものが周知著名とはいえない。ましてや、同展覧会のタイトル中、副タイトル「Timeless Audrey」が周知著名とはいえない。したがって、主タイトル「オードリー・ヘップバーン展」の語を伴うことなく、また、女優・オードリー・ヘップバーンの展覧会であることを示す何らの情報を伴うことなく、「Timeless Audrey」のみが展覧会のタイトルとして用いられた場合には、同展覧会が故オードリー・ヘップバーンに関するものであることを認識することができない者が少なくないというべきである。
そして、本件審判は、展覧会のタイトルではなく、無効審判請求に係る商品に使用される商標に関する事案である。
本件商標は、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」その他の商品について登録が認められたが、法律上本件商標の使用時期・場所・状況・背景等を上記展覧会と関連するものに限定されている訳ではない。また、本件商標に接する需要者・取引者は、被請求人による本件商標の採択理由を知る由もない。
さらに、被請求人は、本件商標が上記展覧会との関連で頻繁に使用され、宣伝広告された結果、需要者・取引者をして常に被請求人の主張する観念を想起させるに至ったことを示す事実・証拠を何ら提示していない。
したがって、本件商標に接する需要者・取引者が、本件商標から被請求人の主張する観念を必ず想起するとはいえない。むしろ、これと異なるものとして認識する場合も少なからずあるというべきである。
(3)商標法第4条第1項第11号該当性について
(ア)本件商標は、「timeless」と「audrey」の2つの語からなる結合商標であるが、外観上「timeless」と「audrey」に区別可能な構成からなり、商標の全体から生ずる称呼が冗長であり、さらに、「timeless」と「audrey」の各々の語の意味合いに基本的かつ密接な関連性が認められない。さらに、被請求人の指摘・主張する事情をもってしては、本件商標から被請求人が主張する観念を常に生ずるとは認められない。
かような次第につき、本件商標は、需要者・取引者をして「timeless」と「audrey」に分離して把握・認識される場合も少なくない。
他方、引用商標は、片仮名「タイムレス」と欧文字「TIMELESS」からなる。
したがって、両商標は、「timeless」と「タイムレス」「TIMELESS」とを共通にする類似商標というべきである。
引用商標は、「被服,ガー夕ー,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),げた,草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品とする。
したがって、本件商標は、その指定商品中第25類に属する商品については、商標法第4条第1項第11号に反して登録されたものである。
(イ)被請求人の行う展覧会活動の目的の崇高さと本件商標の登録の是非とは区別して判断しなければならない。商標の類否判断を、一般的・抽象的な基準に基づいて行う場合に、仮に、本件商標が引用商標とは非類似であると認定するならば、畢竟、「timeless」ないし「タイムレス」の語と個人の名前との結合商標は、すべて、引用商標と非類似であるとの結論を招来するおそれがある。すなわち、本件商標「timeless audrey」が引用商標と非類似であるならば、「timeless」と「audrey」以外の他の名前が結合した商標、例えば、「timeless mary」、「timeless marlene」、「timeless grace」、「timeless hiroko」、「timeless pierre」、「timeless youji」、「timeless jun」、「timeless christian」、「timeless louis」、「timeless jean」等も、引用商標と非類似と認定されるおそれがあり、請求人には到底容認できない事態である。
上記例示の名前、すなわち、「mary」、「marlene」、「grace」、「hiroko」、「pierre」、「jouji」、「jun」、「christian」、「louis」及び「jean」は、いずれも著名人のものである。しかしながら、これらの人物について関連情報を何ら付与されることなく、かつ、氏名の全体ではなく、単に名前のみが提示されただけでは、請求人が意図する人物を当てることは極めて困難である。仮に当てることができたとしても偶然に過ぎない。ちなみに、これらの名前は、書籍「ファッション辞典」(発行所:文化出版局)(2000年1月7日第2版第1刷)の「ファッション・データ・ファイル」中「デザイナー、クリエーター、ブランド」欄に記載の人物から抜粋した。デザイナーの他、女優や様々な分野において顕著な活躍をしファッションに影響を与えた者として同書籍にリストアップされた人々である(甲第6号証)。かかる情報があっても、なおかつ、氏名の全体を伏せ、単に名前のみが提示されただけでは、請求人が意図する人物を、直ちに、的確かつ迷いなく挙げることはそれほど容易ではない筈である。名前によっては、複数の人物が想定される。いかに著名人といえども、名前のみではその人物を特定することができず、したがって、「timeless」の語とこれらの名前とを結合させた場合、被請求人が本件商標について主張する観念(すなわち、「時代を超えた(timeless) Audrey(故Audrey Hepburn)」)と同様の観念を生ずるとは認められない。「audrey」についても、同様である。故オードリー・ヘップバーンは、元々は映画女優であって、被服等の商品について直接的な関与があった人ではない。故オードリー・ヘップバーンの愛用したファッションに着目するファンが一部に存在するとしても、一般的には、何らの関連情報なしに、被服等について使用される本件商標に接した多数の需要者・取引者は、本件商標が故オードリー・ヘップバーンと関連があるとは認識しないというべきである。
そして、上述のように、本件商標は、外観上「timeless」と「audrey」に区別可能な構成からなり、商標の全体から生ずる称呼が冗長であり、「timeless」と「audrey」の各々の語の意味合いに基本的かつ密接な関連性が認められないので、「timeless」と「audrey」に分離して把握・認識される場合も少なくない。
かような次第につき、本件商標と引用商標について、抽象的・一般的な基準を下に、商標の類否を判断するに、本件商標は、その外観・称呼・観念において、引用商標と出所混同のおそれがある類似商標と認められるべきである。
被請求人は、本件商標に関する事情として、本件商標が故オードリー・ヘップバーンの人生やキャリア、人道的軌跡を紹介する展覧会及びこの展覧会で販売される商品について使用されるものであると述べる。
しかしながら、上述のように、同展覧会は周知著名とはいえず、また、同展覧会のタイトルは「オードリー・ヘップバーン展Timeless Audrey」 であって「Timeless Audrey」ではなく、「Timeless Audrey」のみでは同展覧会の名称として周知著名とはいえず、さらに、本件商標そのものも「被服」等に使用される商標として周知著名ではない。
したがって、商標の類否の判断について、単に抽象的・一般的な基準ばかりでなく、被請求人のいう上記事情を勘案したとしても、本件商標は、その外観・称呼・観念において、引用商標と出所混同のおそれがある類似商標と認められるべきである。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標は、婦人用の被服について使用され、本件商標の出願時以前から今日に至るまで周知著名なものである。需要者・取引者への浸透の度合いは、本件商標を格段に上回る。
本件商標を第25類に属する商品について使用した場合には、引用商標の使用に係る商品とその製造業者・取引者が資本関係等何らかの密接な関係があるかの如く誤認させるおそれがある。
したがって、本件商標は、その指定商品中第25類に属する商品については、商標法第4条第1項第15号に反して登録されたものである。

第4 被請求人の答弁の要点
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第5号証(枝番を含む。)を提出している。
1 請求人による本件商標の認定について
請求人は、本件商標が「玉虫色に着色し、ややデザイン化した筆記体の英文字で書した『timeless』の語と、これに続けて、黒色の普通の筆記体の英文字で書した『audrey』の語とを結合してなる商標である」とし、本件商標の「audrey」部分は「世界的に活躍した女優として著名な故Audrey Hepburn(1923ー1993)を認識させる語である」とし、「本件商標が必ずしも一体に構成された商標とのみ認識されるわけがなく、『timeless』と『audrey』の2語が個別に看取され、それぞれの語がそれぞれの立場で商品を識別していると考えるのが相当」と主張する。そして「本件商標は『タイムレスオードリー』と一連にのみ称呼されるわけではなく、『timeless』の語に着目して『タイムレス』とのみ称呼される場合もあり、また『audrey』の語に着目して『オードリー』とのみ称呼される場合もある。」と主張する。
本件商標は、「timeless」と「audrey」の文字の形態と色は異なるものの、「timeless」も「audrey」も纏まりよく同じ大きさで書されてなり、また、「timeless」と「audrey」の間にも隙間なく、一連一体で「タイムレスオードリー」として称呼され、認識される商標である。請求人が主張するように、本件商標の「timeless」と「audrey」の文字の形態は異なるが、ほぼ同じ大きさでしかも商標全体として纏まりよく一体に構成されてなる本件商標は、一体でのみ把握される商標というべきであり、請求人が主張するような「timeless」若しくは「audrey」が個別に看取されることはない。
特許庁のこれまでの審決等においても、2語以上から構成されてなる商標が、それぞれ異なる字体で書されている場合であっても、商標全体を見て、視覚上一体的に看取し得る構成については、構成された語それぞれが単独に把握されるというよりは、商標全体から一つの称呼が生じ、商標を構成する一部の語とは類似するものではないとの判断がなされている(乙第1ないし第3号証)。
したがって、これら審決例等を鑑みても、本件商標を全体でのみ把握される商標と考えるのが妥当である。すなわち、文字の大きさが異なり、二段書きに書されてなるような商標であっても、全体で纏まりよく構成されている場合は、商標全体でのみ把握されるという判断がされているのだから、本件商標のような、横一連に同大で書された文字から構成されている場合は、なおさら一連一体として商標全体で把握されるべきである。つまり、本件商標を構成する「timeless」と「audrey」の文字の形態が異なるものであっても、互いに同じ大きさで、横一連に隙間なく書された一体的なその外観から、本件商標は常に一体で把握されるものであり、「timeless」若しくは「audrey」の一方のみで把握される商標でないというべきである。
さらに、本件商標には、登録異議申立て事件(異議2005-90150:乙第3号証)においても認められているように、その構成全体をもって一体不可分の標章として取引者や需要者に把握されているものというべき事情があるので、この点について以下、詳述する。
本件商標を構成する文字部分のうち「audrey」については、請求人も認めているように、世界的に活躍した女優として著名な故Audrey Hepburnを認識させるものである。本件商標は、この世界的に著名な故Audrey Hepburnの二人の息子が、故Audrey Hepburnの人生やキャリア、そして人道的活動の軌跡を展覧会形式で紹介し、この展覧会は、世界中を巡回するものである。そしてこの展覧会及び展覧会で販売される商品等からなる収益の一部を、世界中の子供達に質の高い基礎教育を受けさせることを目的としたユニセフとの合同事業として行われる「オードリー・ヘップバーン子供基金」を支援するために使われるものである。
よって、本件商標を「audrey」の部分のみで把握されては、単に、著名な故Audrey Hepburnを認識させるものであるので、当該展覧会及びその商品についての商標としては機能しないのであって、「timelessaudrey」と一体で把握されてこそ、Audrey Hepburnの巡回展に纏わる商品の商標として出所表示機能を発揮するものである。
したがって、本件商標が 「timeless」若しくは「audrey」の一方のみで認識されるということはない。
日本において、当該展覧会は、2004年5月に東京で行われ、その後、京都、名古屋、熊本、福岡、横浜、大阪、札幌を巡回し、2005年10月には広島県福山市において開催されたものであるが、それらを紹介する記事を見ても、「オードリー・ヘップバーン展Timeless Audreyの内覧会を訪れました」等の記載があり、本件商標は、「timelessaudrey」と一体で把握されていることがわかる(乙第4号証)。
また、請求人は、本件商標について、「『audrey』は世界的に活躍した女優として著名な故Audrey Hepburnを認識させる。しかし『timeless』の語は、Audrey Hepburnを形容する語というわけのものではない。」したがって「本件商標から全体としてまとまりのある意味合いを観念することはない」と主張する。
しかし、「timeless」は「永久の、永遠の、(芸術作品などの素晴らしさが)時代を超えた[超越した]、不朽の」という意味合いの英語であり(乙第5号証)、本件商標は、上述したような故Audrey Hepburnの人生やキャリア、そして人道的活動の軌跡を展示した趣旨の展覧会及びそれに関連する商品についての商標として採択されたものであって、「時代を超えた(timeless) Audrey(故Audrey Hepburn)」という意味合いが全体で生じるのであって、「本件商標から全体としてまとまりのある意味合いを観念することはない」というようなことはない。
したがって、本件商標は、全体をもって、「時代を超えた(timeless) Audrey (故Audrey Hepburn)」という観念が生じ、「timelessaudrey」と認識されている商標であって、そこから「タイムレスオードリー」の称呼のみが生じる商標である。
(2)本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性について
引用商標と本件商標との類否について検討すると、引用商標は、カタカナ「タイムレス」の文字と欧文字「Timeless」を二段書きに構成してなる商標であり、そのカタカナ文字部分に対応して「タイムレス」の称呼が生じ、英語「Timeless」の意味合いから「特定の時間を示さない」等の観念が生じる商標である。そして、引用商標は「被服」等の第25類の商品を指定商品とする商標である。
本件商標は、上記のとおり、欧文字「timelessaudrey」からなる商標であり、「タイムレスオードリー」の称呼が生じ、全体で「時代を超えた(timeless) Audrey(故Audrey Hepburn)」との観念を生じるものである。そして、上述したように、本件商標は「timelessaudrey(タイムレスオードリー)」と一体でのみ把握されている商標であるので、本件商標から「timeless」部分のみを称呼されたり、認識されるという事情はなく、引用商標とは、外観、観念及び称呼と、取引の実情を考慮しても、類似しない商標である。
したがって、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとの請求人の主張は、失当であるといわざるを得ない。
(3)本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
請求人は、「本件商標がその指定商品に使用されるときは、請求人の『タイムレスtimeless』商品の派生商品であるかの如き、ないしは請求人の『タイムレスtimeless』商品と何らかの関連を有するかの如き混同を生じさせるおそれがある」と主張する。
そして、請求人は、引用商標が周知性を有すると主張するその根拠として、請求人の100%子会社である東レ・ディプロモード社の報告書(甲第2号証)、平成13年3月8日付日本繊維新聞記事(甲第3号証)及び平成13年10月24日繊研新聞記事(甲第4号証)を添付する。
商標法第4条第1項第15号の「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」であるか否かの判断にあたっては、その他人の標章の周知度が考慮されるが、その周知度の立証方法については、実際に使用している商標ならびに商品、使用開始時期、使用期間、使用地域、生産等の数量又は営業の規模、広告宣伝の方法、回数及び内容などの事実を総合勘案して判断するものとされている(商標審査基準)。
この点について検討すると、請求人が添付した報告書(甲第2号証)は、請求人の関連会社の販売担当が作成したものであって、2001年秋より引用商標を婦人服に使用していると述べている。また、2001年以降、半年ごとに二億円程度の売上げを上げていると述べているが、それを証明するものは何も添付されておらず、報告書で述べられているのみである。
そして、同報告書上で、「『TIMELESS』商品は、『H・L』、『GIVENCHY』、『CARVEN』等のアイテムとともに、当社直営店の他、全国の有名専門店、百貨店の約150店舗において販売されている」と述べているが、その事実を裏付ける証拠は何も提出されていない。唯一、添付されている「販売先である『フタバ』の店舗」における商品の陳列状態を示す写真においては、「Timeless」の商標を付した商品が見られるが、この甲第2号証の資料1として添付された写真のみでは、「世界的に著名な『GIVENCHY』等とともに、全国の有名専門店・百貨店等約150店舗で販売されている」と請求人が主張する引用商標の周知性を立証するには足り得ないものであると思わざるを得ない。
さらに、引用商標の周知性を主張する証拠として提出された広告宣伝の内容についても、甲第2号証の資料2として添付されたパンフレット写しは、「商品のPR用に2001年秋冬用及び2002年春夏用として10,000部作成し、名古屋三越及び全国の専門店に配布した」と報告書内において陳述しているが、2001年秋冬から2002年春夏の1年間用の商品としてのPR用パンフレットが10,000部作成されたという事実のみをもっては、引用商標が他人の商標の登録を排除することができるほどの周知性を有するとの立証をするには足りないものと考える。
また、甲第3及び第4号証として添付された2件の新聞記事は、専門誌である新聞に2回掲載されたという事実にすぎず、いずれも2001年(甲第4号証については請求人の記載による)のものである。これらは、「タイムレス」というブランドがこれからスタートするという記事(甲第3号証)、及び「タイムレス」のブランドの紹介と新製品の紹介記事(甲第4号証)であって、引用商標が周知性を獲得している事実はここから読み取れないし、また、この2件の記事のみでは請求人が主張するような、「本件商標の出願時点(2004年6月3日)においては需要者間に周知されるに至っていた」という事実を、到底認めることはできない。
したがって、引用商標は、本件商標と類似するものでもないし、本件商標の出願時において周知性を獲得していた商標とも認められず、さらに、その他、商品の出所につき混同を生ずるおそれがあると認めるに足りる特段の理由も存在しない。よって、本件商標が引用商標を理由として商標法第4条第1項第15号に該当するとする請求人の主張は失当であるといわざるを得ない。
(4)本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について
請求人は、「本件商標には、請求人の引用商標をそっくりそのまま、しかも『audrey』の語から明瞭に分離して観察される態様で包含され、表現されている商標」であるとし、「本件商標が請求人の商標(引用商標)と無関係に使用されるときは、引用商標の識別性を著しく希釈化するおそれがあるばかりでなく、引用商標の著名性、高級品というイメージを著しく汚損するおそれがある」と主張し、本件商標が使用されることにより「他人の商標の識別性を希釈化したり、著名性、高級品というイメージを汚損することにより、他人の貴重な知的財産権を毀損する行為は不法行為を構成し、公の秩序を害する行為である」として、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当すると主張する。
そもそも、本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性については、本件商標の査定時において判断されるが、当該査定時の引用商標の著名性が疑わしいことは上述のとおりである。請求人によって提出された新聞記事は、査定時である2005年のものはないばかりか、2001年のものが2件にすぎない。被請求人は、今般請求人により提出された甲第2ないし第4号証のみによっては、引用商標の著名性を肯定することはできない。
そして、上述のとおり、本件商標と引用商標が互いに類似しない商標であることから、本件商標の使用が、引用商標の自他商品識別機能を希釈化することは到底考えられず、また、引用商標が仮に、著名性及び高級品というイメージを有するとしても、世界的に著名な故Audrey Hepburnの時代を超えたその功績を紹介する展示会及びその商品について使用されている本件商標が、引用商標の有するイメージを汚損するという状況は想像しえないものである。
そもそも、本件商標と引用商標は互いに類似しない商標であるから、本件商標の使用が、引用商標の権利を毀損するということは何らありえず、本件商標が商標法第4条第1項第7号に規定される「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するとは考えられない。
したがって、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当するという無効理由を有するという請求人の主張は失当であるといわざるを得ない。
(5)結び
以上述べたとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び第7号のいずれの規定にも該当しないものである。

第5 当審の判断
1 本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標と引用商標との類否について検討するに、本件商標は、別掲のとおり、淡い黄土色の如き色彩で着色された筆記体風の「timeless」の文字とゴシック体の「audrey」の文字という、異なった形態の文字を結合した構成からなるものであって、「timeless」の文字部分と「audrey」の文字部分とは視覚上明らかに分離して看取されるものであり、「timeless」及び「audrey」の2語からなるものと容易に認識し把握されるものである。加えて、「timeless」の語は、「永久の、時代を超越した」の意味を有する英語であるのに対し、「audrey」の語は、世界的な女優として知られる故オードリー・ヘップバーン(Audrey Hepburn)に代表される欧米の女性名であることからすると、両者間に観念上の密接な関連性があるものともいい難く、また、両者を結合することによって親しまれた熟語を形成するものといえないから、両者は常に不可分一体のものとしてのみ認識し把握されるものではない。
そうして、本件商標の全体から生ずると認められる「タイムレスオードリー」の称呼もやや冗長であることも併せ考慮すると、本件商標に接する取引者、需要者は「timeless」又は「audrey」の語に着目し、それぞれから生ずる「タイムレス」又は「オードリー」の称呼をもって取引に資する場合も少なくないというべきであるから、本件商標は「タイムレスオードリー」の一連の称呼のほか、単に「タイムレス」の称呼をも生ずるものといわなければならない。
この点に関し、被請求人は、本件商標が故オードリー・ヘップバーンの人生やキャリア、人道的活動の軌跡を紹介する展覧会及びそれに関連する商品について使用されるものであり、一体にのみ把握され、全体をもって「時代を超えたAudrey(故Audrey Hepburn)」という観念が生じ、「タイムレスオードリー」の称呼のみが生ずる旨主張し、証拠を提出している。
しかしながら、提出された乙号証によれば、上記展覧会が我が国においても開催されたことは認められるものの、その規模もそれ程大きなものではないし、その開催について宣伝広告された事実や報道された事実もあまり見当たらないことからすると、上記展覧会自体について我が国において広く知られていたとまではいえない。まして、上記展覧会においては、本件商標は単独ではなく、常に「オードリー・ヘップバーン展」の文字と一緒に用いられているのであり、本件商標が単独で使用された場合に被請求人の主張するような観念を有するものとして取引者・需要者間に広く認識されているものとは認められない。
そうすると、上記展覧会の存在をもって本件商標が一連一体のものとしてのみ認識し把握されるということはできないばかりでなく、本件商標については前示のように判断するのが相当であるから、被請求人の主張は採用することができない。
他方、引用商標は、その構成文字に相応して、「タイムレス」の称呼を生ずること明らかである。
してみると、本件商標と引用商標とは、「タイムレス」の称呼を共通にする類似の商標といわなければならない。
(2)次に、本件商標及び引用商標の指定商品の類否についてみるに、本件商標の指定商品中の第25類に属する商品「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物(ただし、「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),運動用特殊衣服,運動用特殊靴(ただし、「乗馬靴」を除く。)」は、引用商標の指定商品と同一又は類似といえるものである。
(3)以上のとおりであるから、本件商標は、その指定商品中上記(2)の商品については、商標法第4条第1項第11号に該当するものというべきである。
2 本件商標の商標法第4条第1項第15号及び同項第7号該当性について
(1)本件審判は、本件商標の指定商品中第25類に属する商品についての登録の無効を求めるものであるところ、本件商標は、上記1(2)に掲げる商品については、既に述べたとおり、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものであるが、進んで、引用商標の指定商品とは非類似の商品と認められる第25類中の残余の商品、すなわち、「靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具,仮装用衣服,乗馬靴」について、本件商標が同項第15号及び同項第7号に該当するものであるか否かについて検討する。
(2)請求人は、引用商標が婦人用被服に使用する商標として本件商標の登録出願前から周知著名になっている旨主張し、証拠を提出している。
しかしながら、提出に係る甲号証によれば、婦人用被服について引用商標が使用されていることが認められるものの、その周知性を立証する証拠は、請求人の子会社の担当者による「報告書」(乙第2号証)及び新ブランドないしは新製品を紹介する「新聞記事」(乙第3及び第4号証)のみであり、宣伝広告、取引数量、市場占有率等の事実も明らかでなく、これらの証拠をもって引用商標が取引者・需要者間に広く認識されていたものと認めることはできない。
そして、本件商標の指定商品中の「靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具,仮装用衣服,乗馬靴」と引用商標が使用されている婦人用被服とは、その用途、材質、流通系統、需要者等が異なる別異の商品といえるものである。
(3)そうすると、たとえ本件商標と引用商標とが類似するものであるとしても、本件商標をその指定商品中の「靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具,仮装用衣服,乗馬靴」について使用した場合、これに接する取引者・需要者が引用商標を想起、連想するようなことはないというべきであり、該商品が申立人又は同人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
(4)また、引用商標の周知性が認められず、かつ、引用商標が使用されている商品と本件商標の指定商品中の上記商品とは関連性のない別異の商品である以上、本件商標をその指定商品中の上記商品について使用することが、直ちに引用商標の識別性を希釈化したり、引用商標の著名性ないしは高級品のイメージを汚損することになるとはいえないし、不法行為を構成し公の秩序を害するものともいえない。
(5)したがって、本件商標は、その指定商品中の「靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具,仮装用衣服,乗馬靴」については、商標法第4条第1項第15号及び同項第7号のいずれにも該当するものではない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、その指定商品中の第25類に属する商品のうち、「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物(ただし、「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),運動用特殊衣服,運動用特殊靴(ただし、「乗馬靴」を除く。)」については、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものであるから、その登録を無効にすべきものであるが、「靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具,仮装用衣服,乗馬靴」については、同法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第7号のいずれの規定にも違反して登録されたものではないから、本件審判の請求は成り立たない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
別掲 本件商標(色彩については、原本参照のこと。)


審理終結日 2006-11-02 
結審通知日 2006-11-08 
審決日 2006-11-22 
出願番号 商願2004-51252(T2004-51252) 
審決分類 T 1 12・ 271- ZC (Y25)
T 1 12・ 22- ZC (Y25)
T 1 12・ 262- ZC (Y25)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 米重 洋和岩本 明訓 
特許庁審判長 高野 義三
特許庁審判官 井岡 賢一
中村 謙三
登録日 2005-05-27 
登録番号 商標登録第4866741号(T4866741) 
商標の称呼 タイムレスオードリー、タイムレス、オードリー 
代理人 高梨 範夫 
代理人 佐藤 俊司 
代理人 安島 清 
代理人 伊藤 亮介 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 石田 良子 
代理人 大村 昇 
代理人 田中 克郎 
代理人 小林 久夫 
代理人 伊藤 亮介 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 田中 克郎 
代理人 木村 三朗 
代理人 石田 良子 
代理人 佐藤 俊司 

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