• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Z09
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない Z09
管理番号 1150245 
審判番号 無効2005-89143 
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-02-23 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-11-15 
確定日 2007-01-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第4631566号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4631566号商標(以下「本件商標」という。)は、「MOST」の欧文字と「モスト」の片仮名文字とを二段に横書きしてなり、平成13年11月30日に登録出願、第9類「理化学機械器具,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,眼鏡,加工ガラス(建築用のものを除く。),電気通信機械器具,レコード,メトロノーム,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク及び磁気テープ,その他の電子応用機械器具及びその部品,スロットマシン,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,磁心,抵抗線,電極,ウエイトベルト,ウエットスーツ,浮袋,エアタンク,水泳用浮き板,レギュレーター」を指定商品として、同14年12月20日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張の要点
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証を提出している。
(1)請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第10号若しくは同第15号に該当するから、同法第46条第1項の規定により無効とすべきである。
(2)引用商標
請求人が本件商標の登録の無効の理由として引用している商標は、別掲のとおりの構成よりなる商標及び会社案内や取引書類において使用している「MOST」の欧文字からなる商標である(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)。
(3)引用商標の周知・著名性
請求人は、遅くとも1997年冬までには、OASIS Silicon Systems AG社を設立しており、引用商標をICチップ等に使用していた(甲第2号証ないし甲第4号証)。
また、当時、自動車業界において、請求人の業務に係る引用商標が標準インターフェイス規格の候補に挙げられ熾烈な争いを行っていたことは、「日経エレクトロニクス1999.4.19(no.741)」(甲第5号証ないし甲第7号証)に記載されているとおりである。
そして、かかる記事中、「次世代MOSTを開発中。データ転送速度は、100Mビット/秒。MOSTはMedia Oriented Systems Transportの略。」と記載されていることからも分かるように、引用商標は、「光学機械器具、測定機械器具、電線及びケーブル、電気通信機械器具、電子応用機械器具及びその部品」に使用するものとして需要者の間に広く認識されているものである。
引用商標が「光学機械器具、測定機械器具、電線及びケーブル、電気通信機械器具、電子応用機械器具及びその部品」等について、広く製造・販売されていた事実として、「請求書」(甲第8号証)を添付する。これにより、引用商標は、遅くとも1998年12月14日以降、我が国においては、東京都、神奈川県、福島県、兵庫県等で広く販売されていたことから、需要者の間に広く認識されていたことは明らかである。
更に、請求人は、日本において、2000年6月14日付けで講演会を行っており(甲第9号証)、また、2000年11月6日付けの第3回自動車セミナーにも参加している(甲第10号証及び甲第11号証)。
以上のとおり、引用商標は、請求人が1997年以来、ICチップやシステム開発ツール、ネットサービス等に使用した結果、遅くとも、本件商標の出願日である2001年11月30日以前には、周知・著名商標となっていたことは公知の事実であるといえる。
(2)次に、商標と商品の関係についてみるに、本件商標は「MOST」であり、引用商標も「MOST」であるから、両者は、商標において類似するものである。
そして、本件商標の指定商品中、第9類「光学機械器具,測定機械器具,電線及びケーブル,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」と引用商標の使用する商品「光学機械器具,測定機械器具,電線及びケーブル,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」とは、同一又は類似するものである。
そうすると、引用商標は、上述のように周知・著名商標であることから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号違反の無効理由を有するものである。
また、引用商標は、上述のように周知・著名商標であることから、本件指定商品の分野の需要者は、本件商標が本件に係る指定商品中、上記以外の指定商品について使用されると、請求人の著名な商標であると誤認し、請求人の業務に係る商品と出所の混同を生ずるおそれがあることは明らかであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号違反の無効理由を有するものである。
(3)以上詳述したとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号若しくは同第15号に該当するものであるから、本件商標の登録は、商標法第46条第1項の規定により無効とされるべきものである。

3 被請求人の答弁
被請求人は、請求人の上記主張に対し、答弁していない。

4 当審の判断
本件商標は、前記1のとおり、「MOST」の欧文字と「モスト」の片仮名文字とを二段に横書きしてなるものであるところ、請求人は、本件商標の登録は商標法第4条第1項第10号若しくは同第15号に違反してされたものである旨主張している。
(1)そこでまず、引用商標の周知・著名性についてみるに、甲各号証からは、以下の事実を認めることができる。
(a)甲第2号証ないし甲第4号証は、請求人の会社情報であり、請求人は、1997年にドイツにて設立されたファブレス半導体メーカーであって、MOST規格に基づいたトランシーバ及びプロセッサーLSI、それを動作させるソフトウエアアーキテクチャーを含めたトータルソリューションを提供している企業であり、MOST規格推進の中心となっているMOST Cooperationのコアメンバーでもあること、そして、その製品はMOST規格のトランシーバLSIとして、AUDIO/VIDEO等の車載マルチメディア・ネットワークの用途にて欧州車を中心に幅広く採用されている旨記載されており、取扱い製品についての説明が記載されている。
(b)甲第5号証は、「日経エレクトロニクス1999.4.19(no.741)」であり、これによれば、「期待のIEEE1394/採用は早くて2005年」の見出しのもとに、要旨次のように記載されている。
「さまざまな情報機器をクルマに搭載するためのインタフェース規格の標準化が始まる。家電メーカが注目するのはIEEE1394の行方。採用されるか否か、採用されるのであればいつか・・・。答えは、採用の可能性大。時期は2005年ころ。ただし、2005年までのつなぎとして、自動車メーカは別の規格を順次採用していく。」、「プラスチック光ファイバ(POF:Plastic optical fiber)の採用をキッカケに、これまで自動車メーカごとにバラバラだった情報系LAN(local area network)のインタフェース規格を標準化しようとの機運が高まっている。この標準化の行方を家電メーカが、そしてコンピュータ・メーカが見守る。どのインタフェース規格が標準になるかによって、自動車市場への参入のしやすさが決まるためだ。現在、彼らがもっとも注目しているのは、IEEE1394が標準インタフェースになるのか、なるとすればそれはいつか、ということである。・・・2005年ころから実用化され始め、最終的には多くの自動車メーカが採用に踏み切りそうだ。・・・現在のところ採用実績のあるインタフェース規格は一つしかない。1993年?1995年にかけて英Communication & Control Electronics Ltd.が開発した『D2B』である。・・・『ポストD2B』として、最近注目を集めているのが『MOST(Media Oriented Systems Transport)』である。・・・ドイツを中心とした多くの欧州自動車関連メーカがこのMOSTへの支持を表明しており、欧州では主流になる可能性が高い。・・・ただし、MOSTはいますぐ採用できる段階にはない。実際にクルマが市場に出るのは2001年という。・・・こうした欧州でのインタフェース規格の登場を横目に見ていた米国でも、ここにきて標準化に向けた動きが活発化し始めている。米国の自動車メーカや機器メーカなどは『IDB(Intelligent Transportation Systems Data Bus)Forum』を結成、『IDB-M(Multimedia)』と呼ぶインタフェース規格策定に乗り出した。このIDBForumでは、日米欧の公的機関、トヨタ自動車や米General Motors Corp.、米Ford Motor Co.など自動車メーカ5社が結成した私的標準化団体AMIC(Automotive Multimedia Interface Consortium)とも連携しながら世界標準となるべき規格作りを目指すという。ただし、これから決まるIDB-Mの実用化時期は2005年ころになる見込み。仕様は、実用化に向けて着々と開発が進むMOSTとの勝負を避け、『ポストMOST』の座をねらったものになりそうだ。・・・IDB-Mの具体的な内容については、まだ不透明だ。ただし、既存のインタフェース規格を軸に仕様を策定する公算が高い。候補はいくつかあるが、『IEEE1394が最有力候補である』という。」旨記載されている。
(c)甲第6号証及び甲第7号証は、インターネットによる検索情報であり、「日経エレクトロニクス1999.4.19(no.741)」号も検索されており、甲第5号証の記事の見出し情報が記載されている。
(d)甲第8号証は、1998年2月9日から2003年12月18日にかけて、請求人が我が国の需要者へ宛てた29件の請求書であり、商品の名称欄には「MOST Transceiver OS 8104」、「MOST StarterKit」、「MOST MediaPlayer」、「MOST OS8104」、「MOST Rapid Control」、「MOST Video」等の名称が記載されている。
(e)甲第9号証は、「2000 6 14」の撮影日付のある写真であり、我が国において開催された講演会の写真と推認し得るものであって、講演者の背後には別掲記載の引用商標が表示されているパネルがあり、また、製品が展示されている状態も写されている。
(f)甲第10号証及び甲第11号証は、2001年11月6日に東京コンファレンスセンターで開催された第3回自動車LANセミナーに関する記事であり、請求人も「MOSTとD2Bの最新採用事例と開発動向」のテーマで参加していることを認めることができる。
(2)上記において認定した事実によれば、請求人は、MOST規格に基づいたトランシーバー及びプロセッサーLSI、それを作動させるソフトウエアアーキテクチャーを含めたトータルソリューションを提供している企業であることを認めることができる(甲第2号証ないし甲第4号証)。
しかしながら、請求人の会社案内(甲第2号証)には、請求人に係る製品が車載マルチメディア・ネットワークの用途として欧州車を中心に幅広く採用されている旨の記載はあるものの、他の甲号証によるも、本件商標が登録出願された平成13年(2001年)11月当時、請求人の引用商標に係る製品がヨーロッパ等においてどの程度販売されていたのか、その製造・販売量、売上高、シェア等についての具体的な記載がなく、甲各号証のみをもってしては、引用商標の周知・著名性を判断することができない。
また、「日経エレクトロニクス(no.741)」(甲第5号証)によれば、1999年頃から、さまざまな情報機器を自動車に搭載するためのインタフェース規格の標準化が始まっており、「MOST」も標準インターフェイス規格の候補に挙げられていたことを認めることができる。
しかしながら、甲第5号証の記事によれば、確かに、「MOST」は、ドイツを中心とした多くの欧州自動車関連メーカがMOSTへの支持を表明しており、欧州では主流になる可能性が高い旨の記載はあるが、一方で、「家電メーカーやコンピュータ・メーカーがもっとも注目しているのは、IEEE1394である」とか、「米国でも、標準化に向けた動きが活発化し始めており、具体的な内容については不透明だが、既存のインタフェース規格を軸に仕様を策定する公算が高く、候補はいくつかあるが、IEEE1394が最有力候補である。」旨の記載もある。なお、アスキーデジタル用語辞典によれば、「IEEE1394」とは、1995年に米国電気電子学会(IEEE:the Institute of Electrical and Electronic Engineers)が標準化したものとの説明がなされている。
そうとすれば、「MOST」は、情報系LANの標準インターフェイス規格の候補の一つであり、ドイツを中心とした欧州では主流になる可能性が高いとしても、インターフェイス規格の標準化の流れの中においては、むしろ「IEEE1394」の注目度が高いことが窺われるところであるから、甲第5号証ないし甲第7号証をもってしては、少なくとも、本件商標の登録出願時において、引用商標が周知・著名になっていたものとまでは認められない。
更に、上記以外の我が国における事情をみるに、甲第8号証によれば、請求人は、1998年2月9日から2003年12月18日にかけて、引用商標に係る「Transceiver OS 8104」、「StarterKit」、「MediaPlayer」、「OS8104」、「Rapid Control」、「Video」等の商品を東京都、神奈川県、福島県、兵庫県等に住所地を有する企業に販売しており、甲第9号証によれば、2000年6月14日に我が国において講演会が開催されたことが推認され、甲第10号証及び甲第11号証によれば、2001年11月6日に、東京において開催された第3回自動車LANセミナーに、請求人も「MOSTとD2Bの最新採用事例と開発動向」のテーマで参加していた事実を認めることができる。
しかしながら、我が国の企業に対する製品の販売も本件商標の登録出願前に限ってみれば、僅か19件であり、我が国における2回の講演会の実績を考慮してみても、これらの証拠をもって、引用商標が本件商標の登録出願時において、我が国において(あるいは、東京都、神奈川県、福島県、兵庫県等において)周知になっていたものと認めるに充分なものとはいい難い。
そうとすれば、引用商標は、本件商標の登録出願時において、請求人の取扱いに係る商品の商標として、この種商品の取引者・需要者間において、周知・著名なものとなっていたものと認めることはできない。
(3)商標法第4条第1項第10号について
本件商標は、前記1のとおり、「MOST」の欧文字と「モスト」の片仮名文字とを二段に横書きしてなるものである。
他方、引用商標は、別掲に示したとおり、「MOST」と認められる欧文字の「O」の文字部分を図案化した態様からなるものであり、また、会社案内や取引書類において使用されているのは、通常の態様をもって表されている「MOST」の欧文字からなる商標である。
そこで、本件商標と引用商標との類否についてみるに、本件商標と引用商標とは、少なくとも称呼においては、「モスト」の称呼を共通にする類似の商標ということができる。そして、本件商標の指定商品と請求人が引用商標を使用している商品とは、互いに共通の商品を含んでいるものと認められる。
しかしながら、上記(2)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時において、請求人の取扱いに係る商品の商標として、取引者・需要者間において、広く認識されていた商標とは認められないものである。
してみれば、本件商標と引用商標との類似性は認められるとしても、引用商標の周知性が認められない以上、本件商標の指定商品中の「光学機械器具,測定機械器具,電線及びケーブル,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」についての登録が商標法第4条第1項第10号に違反してされたものであるということはできない。
(4)商標法第4条第1項第15号について
上記(2)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時において、請求人の取扱いに係る商品の商標として、取引者・需要者間において、周知・著名なものとなっていたものとは認められないものである。
加えて、本件商標は、「MOST」の欧文字と「モスト」の片仮名文字とを普通に用いられる態様をもって二段に横書きしてなるものであるところ、「MOST/モスト」の語は、「many、much」の最大級を表す英語として、我が国においても、日常一般において広く知られている英語(外来語)であって、ひとり請求人のみが使用している造語商標であるとか、別掲に示したような特殊な構成態様からなるものではない。
してみれば、被請求人が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者をして、引用商標を連想又は想起させるものとは認められず、その商品が請求人又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。
したがって、本件商標の指定商品中の「光学機械器具,測定機械器具,電線及びケーブル,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」以外の指定商品についての登録が商標法第4条第1項第15号に違反してされたものであるということはできない。
(5)まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に違反してされたものではないから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲


審理終結日 2006-07-28 
結審通知日 2006-08-03 
審決日 2006-08-22 
出願番号 商願2001-107017(T2001-107017) 
審決分類 T 1 11・ 25- Y (Z09)
T 1 11・ 271- Y (Z09)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 山田 清治
特許庁審判官 久我 敬史
澁谷 良雄
登録日 2002-12-20 
登録番号 商標登録第4631566号(T4631566) 
商標の称呼 モスト 
代理人 押田 良隆 
代理人 西山 恵三 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ