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審決分類 審判 全部無効 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z30
審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z30
管理番号 1150143 
審判番号 無効2002-35284 
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-02-23 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-07-05 
確定日 2006-10-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第4251949号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4251949号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4251949号(以下「本件商標」という。)は、「紅隼人」の文字を標準文字で表してなり、平成9年8月4日に登録出願、第30類「アイスクリーム」を指定商品として、平成11年3月19日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張の要点
請求人は、結論と同旨の審決を求めると申し立て、請求の理由、答弁に対する弁駁及び審尋に対する回答を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第78号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求の理由
(1)商標法第3条第1項第3号及び同第4条第1項第16号について
本件商標は、「紅隼人」を標準文字で書してなるものであり、その「紅隼人」の文字は、「ベニハヤト」と自然に称呼される。他方、農林水産省(当時)九州農業試験場によって育成された「かんしょ」(「さつまいも」と表記する。)の新種が、昭和61年11月21日に、登録品種の名称を「ベニハヤト」として、品種登録された(登録1207号)。そして、この「ベニハヤト」は、「紅隼人」等とも表記されて、さつまいもの一種であり、本件の登録前より、少なくとも被請求人が住居する鹿児島県下においては良く知られている。
さらに、本件商標の指定商品「アイスクリーム」には、その原材料の一つとしてさつまいもが使用されたものがあり、かつ、さつまいもの「ベニハヤト」もアイスクリームの原材料の一つとして使用されている。
被請求人が住居する鹿児島県においては、本件商標の出願日より遅くとも約10年以上も前である昭和62年1月以降に、アイスクリーム等の菓子類の材料として利用できるさつまいも「ベニハヤト」を原料としたペーストが開発・販売され、話題になった事実があり(甲第57号証)、本件商標の出願日より約9年以上も前である昭和63年4月以降に、同「ベニハヤト」を原料に使用したアイスクリームが開発・販売され、話題になった事実もあり(甲第58号証ないし同第60号証)、平成元年6月には、鹿児島県庁農政課が、さつまいも品種別加工法(シャーベットやアイスクリームのペーストに使えるベニハヤト等の加工方法)をまとめた鹿児島県冊子を作成し配布した事実もある(甲第62号証)。
殊に、昭和62年始め頃に、鹿児島県の喜入町農産加工組合が中心になって、アイスクリームなどの菓子類の材料としても利用できるベニハヤトを原材料としたペースト食品を開発し、同組合が、鹿児島上島珈琲と共同で繊維分とでんぷんを除去、舌ざわりが良く、サツマイモの自然な甘みが乗ったアイスクリームを開発した。そして、東京、大阪の百貨店や農林水産省「消費者の部屋」での試販、試食が好評だったため、そのベニハヤトを原料に使ったアイスクリームを、鹿児島県指宿市の業者が市販している(甲第57号証ないし同第60号証)。
すなわち、本件商標の出願の約9年以上も前に、ベニハヤトを原料に使ったアイスクリームが市販されていたのである。その後も、ベニハヤトを原料に使ったアイスクリームが市販され、新聞の記事に載るほどに人気を得ているのである(甲第63号証ないし同第65号証)。また、アイスクリームの包装の容器や袋にはその原材料のうち、殊にアイスクリームの味覚や栄養等に影響を与える原材料名が大きく表示されていることが多いことが、本件商標の出願前よりよく知られている(甲第66号証ないし甲第71号証)。
そうすると、本件商標「紅隼人」が商品「アイスクリーム」に付された場合、取引者、需要者は、「紅隼人」の文字は該アイスクリームの原材料の一つを表し、該アイスクリームはさつまいもの一種である「ベニハヤト」を原材料の一つに加えたものであると認識するのすぎない。したがって、この場合、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
また、本件商標「紅隼人」が「ベニハヤト」を原材料に加えていないアイスクリームに使用された場合は、取引者、需要者は、該アイスクリームはさつまいもの一種である「ベニハヤト」を原材料の一つに加えたものである誤認するおそれが大きい。したがって、この場合、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。
(2)商標法第3条第1項第6号について
本件商標「紅隼人」がアイスクリームについて使用された場合、取引者、需要者は、その「紅隼人」の文字はさつまいもの「ベニハヤト」を表していると認識し、かつ、そのような認識に止まるものであって、「紅隼人」の文字からは該アイスクリームが何人の業務に係るものであるかを認識することができない。
(3)商標法第4条第1項第7号に該当について
さつまいもは鹿児島県の基幹農作物であり、同県のさつまいもは全国第1位の収穫量を誇っている。そして、鹿児島県は、さつまいもの需要の拡大のための方策として「さつまいも食品コンクール」を開催して(甲第37号証及び同第73号証)、同県が、さつまいもを長年その農業政策の重要な対象の一つとしてきていることは容易に推測できる。現にさつまいも「ベニハヤト」は、昭和60年には鹿児島県の奨励品種に採用されている(甲第20号証)。そして、さつまいも「ベニハヤト」は、本件商標の出願前より「紅隼人」や「紅ハヤト」等とも表示されて、さつまいもの品種名として及びアイスクリームその他の菓子類等の原材料として広く知られていた。このような「さつまいも」であり、かつその重要な一品種「ベニハヤト」を指し示す語として普通に使用されている「紅隼人」の語を「アイスクリーム」において、被請求人という一私人に独占させ、その結果、被請求人あるいは同人が許諾した者以外は「アイスクリーム」において、「紅隼人」の語を使用することができなくなるということは、明らかに公共の利益に反している。
すなわち、被請求人が本件商標の商標権を独占すれば、「ベニハヤト」からなるアイスクリームにおいてはもちろんのこと、アイスクリームに類似する菓子類において、「ベニハヤト」が原材料の一つに使用されている商品に「紅隼人」、「紅ハヤト」、「紅はやと」等の文字を使用することができなくなるおそれが生ずる。このことは、本件商標の指定商品「アイスクリーム」を含む菓子類において、製造者、取引者が当該商品の原材料名を示す文字を表示することを不当に制限することとなり、取引の秩序を乱すものである。
(4)利害関係
被請求人が代表取締役を勤める有限会社カリビアン食品(鹿児島市吉野町817-96番地、以下「被請求人会社」という。)は、請求人が本件商標の出願前より販売している「ベニハヤト」を原材料としたアイスクリームの包装カップにおける原材料名を表す「紅ハヤト」の表示について、請求人及び請求人の当該商品の取引先に対し、「同表示は本件商標の商標権を侵害している」との警告を行ってきている。
このように、請求人は、被請求人会社による本件商標の商標権に基づく上記警告により、請求人は、本件審判を請求するについて、重大な利害関係を有するものである。
(5)まとめ
以上により、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号、同法第3条第1項第6号、同法第4条第1項第7号に該当するものであり、本件商標の登録は、同法第46条第1項第1号の規定によって無効とされるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
被請求人の答弁書における主張の大部分は、本件審判事件の争点とは関係の無いものばかりであり、しかもその主張は理解に苦しむものばかりであるが、請求人の主張と関係があると思われる主張にのみ弁駁するに、(1)本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当すること(2)利害関係について(3)明らかに事実に反する事項等について被請求人の主張は理由が無いか、又は事実に反するものであるので、審判請求の趣旨のとおりの審決を求める。
3 審尋に対する回答書
請求人は、警告が本件登録商標に関するものであり、かつ、実際にその警告が被請求人会社からなされたものであることを主張する。そして、それを証する書面を提出する。

第3 被請求人の答弁の要点
被請求人は、「請求人の請求を棄却する、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第22証を提出した。
1 請求理由への反論
(1)商標出願当時、現在に至っても「カリビアンベースト」は、人参いも、人参かいも、人参唐芋、人参がらいもなどと、当地鹿児島地区においても、人参芋の呼称をカリビアンと呼称されることはあっても、さつま芋の品種名で紅隼人芋と呼称されることはほとんど、現在に至ってもカリビアンベーストのさつま芋が芋の品種名とし紅隼人名で呼称されることはない。芋そのものが生産量が少なく青果市場(鹿児島青果市場)でも販売購入されることはない。現在も、地元鹿児島で「にんじんいも」又は「かぼちゃいも」と呼称されている。
(2)被請求人は、仙巌園、名勝「磯庭園」国史跡「尚古集成館」で、本件商標「紅隼人」の商品「アイスクリーム」を販売している。仙厳園は、鹿児島県共有財産、旧島津邸「磯庭園」で、鹿児島の地元一般市民はもちろんのこと、日本の各地から、歴史、観光地で知られ、全国の学生も修学旅行で、来園鹿児島県最大の観光地で年間何十万人と観光入園の名所地である。そこで商標「紅隼人」は、商標登録後、地元鹿児島、日本各地からの観光客はもちろんのこと、海外からの観光のお客様迄、数多くのたくさんの人に知られ、本件商標指定商品「アイスクリーム」は、数多販売され、既に広く一般需要者に知られている。
(3)請求人は、本件指定商品の需要者とは直接関係のない特殊な業界の新聞情報を基に、特定の意図に基づいて主張しているが、本件商標の出願日以降の情報を意図的に主張しているにすぎない。
(4)代理人である弁理士が審判請求を提起すると、被請求人と商標登録侵害者の紛争挑発する事になりかねない。
(5)請求の理由である商品の品質を誤認するおそれは全くない。被請求人の本件商標販売アイスクリームは、「カリビアンペースト」を使用し、継続製造販売事実から誤認される、誤認するおそれはない。
(6)「商標法」と、農林水産省の管轄の下、植物新品種「種苗法」とは異なる。さつまいも品種名「ベニハヤト」と商標「紅隼人」は無関係である。
2 被請求人の紛争に関する主張
(1)株式会社鹿児島上島脚排(以下「上島珈琲」という。)が商品名「カリビアンアイスクリーム」で、同社に帰属しない登録商標「カリビアン」を不当に無断で使用しているので、被請求人が取引を停止したものである。
なお、請求人提出の甲第61号証、さつまいも加工食品(九州農試、梅村芳樹氏提供)3色のペーストデザートに好評の「ベニハヤト」のアイスクリーム発売元(株)鹿児島上副排と表示は確認すると、故意に削除したものと解明できる。明らかに商品名、一括表示(偽装)の違反行為である。請求人の主張は法的に一切記載のない主張請求である。
(2)上島伽排は、他社権利者に帰属する登録商標「山川紫」、本件商標「紅隼人」を、甲第74号証の「紅ハヤト」、甲第75号証の「山川ムラサキ」で無断で使用販売し、商標侵害行為である。
(3)請求人提出、甲第75号証の商標「おいもアイスクリーム」表示は、被請求人に帰属する登録商標「おいも こいも」に類似する侵害行為である。
(4)中止したのは、本件商標「紅隼人」を販売時、販売ストッカー(冷凍庫)に、被請求人に権利発生する登録商標「おいも こいも」の商標を表示して現在に至っても販売している。商品名「おいもアイスクリーム(紅ハヤト)」と「おいもアイスクリーム(山川ムラサキ)」を商品名「さつまいもアイスクリーム(紫)」で、さつまいもアイスクリーム(紅ハヤト)を(紅)で故意に表示、使用販売し、一度目の警告を無視し、二度目は、被請求人に帰属する登録商標「おいもこいも」の同一商標を、展示、表示販売し、二度目の警告を被請求人から受けたから、侵害者が販売を中止したものである。
(5)平成13年8月30日内容証明で警告後も、さつま「おいもアイスクリーム(紅ハヤト)」を「さつまいもアイスクリーム(紅)」に変更使用し、さつま「おいもアイスクリーム、山川ムラサキ」を、さつまいも「アイスクリーム(紫)」に変更し販売、平成14年8月6日現在に至っても販売中の侵害行為者もある。
(7)「紅ハヤト」を原材料と請求人が認識されるのであれば、包装カップの上蓋に表示せず、本体の、JAS法、一括表示、原材料名で使用すべきである。
(8)株式会社弘乳舎(熊本市)、セイカ食品株式会社(鹿児島市)、雪印乳業株式会社(札幌市)の3社は、社団法人日本アイスクリーム協会会員である。いずれも、さつまいも、アイスクリーム販売製造者、製造元で、協会会員3社も、本件商標「紅隼人」を商標と認識している。事実、株式会社弘乳舎(熊本市)は、被請求人に対し書面で登録商標「紅隼人」を商標と認識し、商品名の変更を約束している。
(9)平成12年11月15日に、株式会社弘乳舎(熊本市高平3丁目43番2号)とさつまいもアイスクリーム販売者(社団法人、日本アイスクリーム協会)会員の企業(会社)で、原材料名を「いもペースト」と表示した事実と、製造元株式会社弘乳舎(熊本市清水町高平1140)が製造したアイスクリーム「カリビアンアイスクリーム」の原材料名を「スイトポテト・ペースト」と表示した事実を見ても、本件商標「紅隼人」を原材料名と認識した請求人は、重大な誤認である。
(10)本件商標「紅隼人」を「紅ハヤト」及び「紅」と表示するのは株式会社弘乳舎が製造者であり、請求人と被請求人は法的に利害関係を有するものでない。請求人の表示は、一括表示にも全くない。
(11)請求人の代理人は、法的な利害関係を詳しく調査して、被請求人に対し、利害関係者、会社名、所在地、法人格、代表者氏名を公開すべきである。
(12)被請求人は、請求人に対して一切侵害警告などしていない。
(13)製造者、販売者、一括表示に記載のない請求人を、被請求人が確定し特定し、請求人に対して警告できるわけがない。
(14)被請求人は、請求人の法人会社所在地、法人格代表者、氏名を確認していない。
(15)被請求人は、本件商標侵害行為者を、確定また、特定してしていない。
(16)被請求人が、侵害者に警告したのは、平成12年11月6日付けの株式会社弘乳舎(熊本市流通団地1丁目46番地)から被請求人宛の案内書面「おいもアイスクリーム商品名変更の件」を受け取っていたからである。

第4 当審の判断
1 利害関係
請求人が本件審判の請求をするについて当事者間に利害関係の争いがあるので検討するに、請求人及び被請求人は同業者であり、また、被請求人が代表取締役を務める有限会社カリビアン食品(鹿児島市吉野町所在)から請求人に対し侵害警告を受けた事実も認められ、しかも、本件商標の商標権の存否によって、請求人はその権利に対する法律的地位に直接の影響を受けるか、又は受ける可能性のあるものとみられるものである(甲第77号証の1、同の3、同の5、同の6)。
したがって、請求人は、本件無効審判を請求するについて利害関係を有しているというべきである。
2 無効の理由
請求人の提出に係る甲各号証及び請求理由の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(1)農林水産省(当時)は、昭和60年6月11日に、さつまいもの新品種「べニハヤト」など、農作物の新品種18種を発表し、このさつまいもの新品種「ベニハヤト」は、種苗法に基づき「ベニハヤト」の名称で昭和61年11月21日に品種登録され、同日付け「官報」により告示された(甲第3号証、同第4号証及び同第7号証)。
(2)さつまいもの新品種「ベニハヤト」について、次のような内容の紹介記事が新聞、雑誌等に掲載された。
(ア)1987年(昭和62年)2月24日「日本経済新聞」
「指宿市にある九州農業試験場の作物第二部作物第一研究室は、サツマイモの新品種づくりで大きな実績を上げている。…その成果は食品加工業にまで影響を及ぼしている。…カロチンポテト『ベニハヤト』は同研究室が生み出した新品種の一つ。」と記載されている(甲第8号証)。
(イ)鹿児島県広報誌「グラフかごしま1987年3月号」
「健康食品ブームのさ中に、本県特産のサツマイモを原料とする新しい加工食品が開発され、”カリビアン・ペースト”の商品名で発売された。これは、地域振興の起爆剤にと南薩一市二町(指宿市、喜入町、山川町)の行政機関、生活改善グループ、農業後継者グループなどがタイアップして共同で開発したもの。原料となるのは、鮮やかなオレンジ色をしたべニハヤトで、カロチンイモといわれるほど多量のカロチンを含む注目の新品種。」、「原料のべニハヤトは…昭和60年に品種登録された。贈答用はふるさと小包便で人気上昇中。」、「カリビアン・ペーストを使った菓子類。色がとても鮮やかに仕上がる。用途は広い」と記載されている(甲第9号証)。
(ウ)1988年(昭和63年)5月24日「日経流通新聞」
「菓子製造販売の九面屋…はサツマイモを使った和菓子だけの店『利エ門』を開店した。…社長は『ベニハヤト、山川紫など新品種が地元で開発されてきた。…和菓子の世界から鹿児島の復権を目指したい』と情熱を燃やす。」と記載されている(甲第11号証)。
(エ)1989年(平成元年)2月6日「朝日新聞(夕刊)」
「お台所メモ うまい焼き芋」の中に、「…ニンジンよりビタミンAが多いベニハヤトも登場。」と記載されている(甲第12号証)。
(オ)1989年6月30日社団法人農山漁村文化協会発行「まるごと楽しむサツマイモ百科」
「…ベニハヤトはカロチンが多く含まれそのビタミンとだいだい色でスナック用として人気が上昇し、…」と記載されている(甲第13号証)。
(力)1991年(平成3年)9月13日「南日本新聞」
特集記事「サツマイモ新世紀第2部 学校給食」の中に、「…つい最近もべニハヤトのペーストを原料にしたクッキーを開発した。」と記載されている(甲第14号証)。
(キ)1991年(平成3年)9月14日「南日本新聞」
「サツマイモ新世紀第2部 高級料理」の中に、「サツマイモの産地鹿屋市の国道沿いに建つレストラン…そのフルコース。…べニハヤトのスープ、…肉の添え物はジャガイモ、ニンジンならぬサツマヒカリとべニハヤト。デザートのケーキ、シャーベットにももちろんイモが使ってある。」と記載されている(甲第15号証)。
(ク)鹿児島県広報誌「グラフかごしま1993年1月号」
「温泉保養館に隣接する構造改善センター。…いまここでは、新しい特産品『カリビアン・ペースト』が注目を集めている。べニハヤトという品種のサツマイモを加工したもので、…調理加工しやすく、しかも健康食品というのがセールスポイントとなっている。現在、県内一円の学校給食のパンの生地にも使われており、今後さらに、用途が広がるものと期待されている。」と記載されている(甲第17号証)。
(ケ)1995年(平成7年)10月5日「南日本新聞」
「秋の味覚に挑戦」の中に、「講師…が、クリやクコ、シメジなど旬のものを使った色鮮やかなピラフやべニハヤトで彩りをよくした菊花あえづくりを実演すると、参加者は『季節感のある料理がこんなに手軽にできるなんて』と感心していた。」と記載されている(甲第19号証)。
(3)さつまいもの新品種「ベニハヤト」は、登録された名称の「ベニハヤト」のほか、「紅隼人」、「紅ハヤト」、「紅はやと」とも表記されて、次のような内容の紹介記事が新聞、雑誌、ホームページ等に掲載された。
(ア)「岡山大農学報(80),61-68(1992)」
「サツマイモ”紅隼人”…高カロテノイド色素生産細胞の選抜」の中に、「本研究は、…サツマイモの栽培品種で比較的多量のカロテノイド色素を含み『カロテンいも』と別称されている”紅隼人”を材料として…」、「1988年5月に九州農業試験場より供試を受けたサツマイモの一品種である”紅隼人”を用いた。」と記載されている(甲第21号証)。
(イ)1992年(平成4年)3月8日「日本経済新聞」
「薩摩きんつば、磯庭園でもヒット、原料足りぬ、うれしい悲鳴」の中に、「サツマ芋を使った和菓子『薩摩きんつば』が、伊勢丹本店(東京・新宿)に続き、鹿児島市の観光名所・磯庭園でも大ヒット商品となっている。」、「薩摩きんつばは、…種子島紫、紅隼人、紅さつまという三品種のサツマ芋を小麦の焼き皮で包んだ和菓子。」と記載されている(甲第22号証)。
(ウ)1992年(平成4年)7月23日「日経流通新聞」
「薩摩藩本店 サツマ芋菓子を旧藩の別邸で」の中に、「『薩摩きんつばの人気が高い』…この商品は、種子島や薩摩半島南部など限られた地域で委託生産した珍品種の種子島紫のほか、紅隼人(はやと)、紅さつまと言う三品種の青果用サツマ芋を素材とした和菓子。」と記載されている(甲第23号証)。
(エ)1995年(平成7年)3月13日「南日本新聞」
「かごしまトップの転機 料理にからいも生かす」の中に、「料理に使うのは『紅はやと』『さつまひかり』『山川むらさき』という色の違つ三種。…市内のサツマイモ農家五軒と契約した。カロチンを豊富に含む紅はやとを一定量引き受け、健康イモとして販路に乗せる。」と記載されている(甲第18号証)。
(オ)1995年(平成7年)10月6日「日経産業新聞」
「関西ルナ 温めてもおいしい 和風デザート2種類発売」の中に、「…和風デザート二種類を発売した。鹿児島県特産のさつまいもを使い、味だけでなく紫や黄色の色も楽しめる。…新製品は『さつまいも山川紫』と『同紅隼人』で、…」と記載されている(甲第24号証)。
(カ)1995年(平成7年)11月15日「南日本新聞」
「食品の新作土産品を対象にした観光土産品コンクール…の菓子部門優秀賞の『トリコロール屋久島』は紅隼人、屋久島幸吉いも、種子島紫の三種類のサツマイモでつくった羊雲(ようかん)で、一本で三種類の味が楽しめる。」と記載されている(甲第25号証)。
(キ)1996年(平成8年)10月19日「日経流通新聞」
「イモ入りウインナ」の中に、「芋の品種によって三種類。…『山川むらさきいも』の紫色、『紅隼人(べにはやと)』のオレンジ色、『こうけい十四号』のクリーム色と見た目にも鮮やか。」と記載されている(甲第26号証)。
(ク)1997年(平成9年)10月20日「経済広報センターカード(第936号)」
「暮らしくらしクラシ さつまいも」の中に、「最近人気の品種は紅あずまと、ビタミンAが普通のさつまいもの20倍もあるといわれる紅隼人」と記載されている(甲第27号証)。
(ケ)以上のほか、インターネット上の各ウェブサイトのホームページでも、さつまいもの品種「ベニハヤト」は、「紅隼人」とも表記して掲載されている。
a さつまいも粉を使った生地にコガネセン、紅隼人、紫いも3種の蜜煮をトッピングし焼き上げた丸ボ一口です(甲第28号証)。
b 本場かごしまの種子島紫・黄金・紅隼人を使用した植物繊維を多く含む体にやさしい唐芋ようかんです(甲第29号証)。
c おすすめは、フレッシュ焼きいもようかんで、紅ことふくき芋、種子島紫芋、紅隼人芋の3種(甲第30号証)。
d オレンジ色のさつまいも、紅隼人いも(甲第31号証)。
e 種子島紫、幸吉いも、紅隼人の3種類のさつまいもが味わえて、紫、黄、オレンジ3色のコントラストが美しいデザート(甲第32号証)。
f サイコロみたいな3色の芋なっとう。高系(黄)、種子島紫(紫)、紅隼人(べにはやと、オレンジ)という3種類の芋を使っている(甲第33号証)。
g [紅さつま][紅隼人]焼いてよし、煮てよし、料理によし(甲第34号証)
(4)さつまいも自体又はさつまいもの品種「ベニハヤト(紅隼人、紅ハヤト、紅はやと)」が、料理の食材、加工食品特に菓子類等の原材料に使用されているとして、次のような内容の紹介記事が新聞、雑誌等に掲載された。
(ア)さつまいもの品種「ベニハヤト(紅隼人、紅ハヤト、紅はやと)」が料理の食材、加工食品特に菓子類等の原材料として使用される旨記載されている(甲第9号証、同第11号証、同第14号証、同第15号証、同第17号証ないし同第19号証、同第22号証ないし同第26号証)。
(イ)鹿児島県広報誌「グラフかごしま1990年3月号」に、「さつまいもを使ったヘルシー食品、新しいおいしさが広がります」と記載されている(甲第36号証)。
(ウ)鹿児島県広報誌「グラフかごしま1997年3月号」に「アングル 全国さつまいも食品コンクール初開催」として、そのコンクール受賞作品等が掲載された(甲第37号証)。
(エ)平成8年1月鹿児島県農政部流通園芸課発行「さつまいも食品コンクール作品集」に、「昭和62年度から『さつまいも食品コンクール』を開催しております。…これまで9回行われ、…」と記載され、さつまいも食品コンクールの平成7年度の入賞作品とそれまでの入賞作品の中から好評を得ている作品が掲載された(甲第38号証)。
(オ)ようかん、水羊羹、ケーキ、クッキーなどの菓子が、原料、原材料等の表示として「唐芋(紅はやと)」、「紅隼人芋」、「紅隼人いも」、「紅はやと」「ベニハヤト芋」などとその包装箱等に表示された(甲第39号証ないし同第45号証)。
(5)さつまいも自体又はさつまいもの品種「ベニハヤト(紅隼人、紅ハヤト、紅はやと)」が、アイスクリームの原材料に使用されているとして、次のような内容の紹介記事が新聞、書籍等に掲載された。
(ア)昭和47年4月25日株式会社光琳書院発行「アイスクリーム・ハンドブック」
「フレーバーによる種類」として「さつまいも」が挙げられている(甲第46号証)。
(イ)昭和62年(1987年)12月20日「日本経済新聞」
「イモづくり付けたい競争力」の中に、「…『ベニハヤト』という品種ができ、ニンジンと同じくらいビタミンAがあるので、学校給食関係でかなり引き合いが増えてきている。それと、『山川紫』という品種からはアイスクリーム、シャーベット、パイ、洋菓子、和菓子が作れる。」と記載されている(甲第47号証)。
(ウ)1989年(平成元年)9月1日「南日本新聞」
「ゴールドマッシュはカンショをふかしてすりつぶし、乾燥して、せんべいようの破片(フレーク)や粉状(グラニコール)にしたもの。普通の菓子のほか、アイスクリームやシャーベットなどの原料にもなる。」と記載されている(甲第48号証)。
(エ)1991年(平成3年)9月9日「朝日新聞」
「サツマイモが表舞台に 見直されるヘルシー食品」の中に、「上品なオレンジ色でビタミンAにかわるカロチン含有量がニンジン並みというべニハヤト、全体に鮮やかな紫色でその色素を抽出しシャーベットやアイスクリームに使われる山川紫などだ。」と記載されている(甲第49号証)。
(オ)鹿児島県広報誌「グラフかごしま1993年2月号」
「さつまいものイメージが変わります。」の中に、「きんつばやアイスクリーム」と記載されている(甲第50号証)。
(カ)1994年(平成6年)11月29日「日経産業新聞」
「サツマイモ復権 パイでケーキでアイスクリームで」の中に、「イモようかん、スイートポテトアップルパイ、アイスクリーム…。さつまいもを使った菓子の人気が急上昇している。」、「浅草・雷門の近く、駒形二丁目にある『おいもやさん』には女子高生からお年寄りまでが『さつまいも菓子』を買い求めに来る。さつまいもアイスクリーム、パイ、スイートポテトに加え、昔ながらの大学いもの量り売りが人気商品だ。」と記載されている(甲第51号証)。
(キ)1995年(平成7年)3月19日「南日本新聞」
「増えるサツマイモ加工品」の中に、「鹿児島の代表的特産物サツマイモ。かつて、その加工品といえば焼酎と菓子類が中心だった。最近はアイスクリーム、ウインナー、めん類なども登場。」と記載されている(甲第52号証)。
(ク)平成8年4月30日株式会社光琳発行「アイスクリームの製造」
「フレーバーによるアイスクリーム類の種類」として「さつまいも」が挙げられている(甲第53号証)。
(ケ)平成8年10月29日社団法人日本アイスクリーム協会発行「アイスクリーム図鑑」「和風素材のアイスクリーム」の中に、「さつまいものアイスクリーム」と記載されている(甲第54号証)。
(コ)1998年12月20日社団法人農山漁村文化協会発行「食品加工シリーズ アイスクリーム」
「いま、アイスクリームが大人気」の中に「サツマイモ」が記載されている(甲第55号証)。
(サ)昭和61年7月31日農林水産省九州農業試験場企画調整部発行「九州農業試験場ニュース NO34」の「カンショ新品種『ベニハヤト』の特性を生かした料理」の中に「アイスクリーム」が挙げられている(甲第56号証)。
(シ)昭和62年(1987年)1月25日「日本経済新聞」
「サツマ芋でペースト食品」の中に、「サツマ芋の新品種べニハヤトを原料としたペースト食品『カリビアン・ペースト』 …ババロア、クッキー、アイスクリームなどの菓子類やグラタンの材料としても利用できる。」と記載されている(甲第57号証)。
(ス)昭和63年(1988年4月6日「日本経済新聞」
「サツマイモにはアイスがにあう」の中に、「サツマイモアイスクリームはいかが…サツマイモの新品種べニハヤトを原料に使ったアイスクリーム…」と記載されている(甲第58号証)。
(セ)昭和63年(1988年)4月6日「南日本新聞」
「サツマイモのアイスクリーム 業務向けから商品化 鹿児島上島伽緋」の中に、「ベニハヤト(サツマイモの新品種)を原料とするアイスクリームを、同社系列の喫茶店、レストランなどで販売すると発表した。」と記載されている(甲第59号証)。
(ソ)昭和63年(1988年)4月7日「日経産業新聞」
「さつまいもアイス カリビアン流通、全国販売」の中に、「サツマイモの新品種べニハヤトを原料に使ったアイスクリーム…」と記載されている(甲第60号証)。
(夕)平成元年3月鹿児島農林統計協会発行「さつまいも現状と課題」
「さつまいも加工食品」に掲載されている写真に「『ベニハヤト』のアイスクリーム」と記載されている(甲第61号証)。
(チ)1989年(平成元年)6月22日「日本経済新聞(夕刊)」
「サツマ芋&サツマ芋 調理法など紹介」の中に、「シャーベットやアイスクリームのペーストに使えるべニハヤト…」と記載されている(甲第62号証)。
(ツ)1992年(平成4年)6月8日「読売新聞(夕刊)」
「川越名物がおしゃれに変身 大人気 イモアイス」の中に、「『イモアイス』が人気を集めています。…意外な好評に市販も始めたら、大手アイスクリーム・メーカーまで目をつけて、よく似たアイスを売り出したほどです。元祖花村さんのオリジナルは紅高系、紅ハヤト、山川紫の三つの異なったイモから製造する黄色、オレンジ、薄紫色の三種類。」と記載されている(甲第63号証)。
(テ)1994年(平成6年)7月31日「南日本新聞」
「喜入町…サツマイモのべニハヤト種から採取されるカリビアンペーストを利用したアイスクリーム・シャーベット、お菓子なども新しい特産品として好評です。」と記載されている(甲第64号証)。
(ト)1996年(平成8年)3月2日「朝日新聞(夕刊)」
「味ごころ旅ごころ 鹿児島 サツマイモ料理」の中に、「アイスクリームには『山川紫』『ベニハヤト』など色鮮やかな品種を使う。『豊富なビタミンと低脂肪』が受けて、女性の指示を集める。」と記載されている(甲第65号証)。
(6)以上、認定した事実によれば、さつまいも(かんしょ)の新品種として昭和61年11月21日に種苗法に基づき品種登録された「ベニハヤト」は、多量のカロチンを含む品種として注目され、「紅隼人」、「紅ハヤト」あるいは「紅はやと」とも記載されて新聞、雑誌等で紹介されている。
また、上記「ベニハヤト」は、きんつば、羊羹などの和菓子、クッキー、ケーキパイ、アイスクリーム、シャーベットなどの洋菓子の原材料として利用されているというべきである。
そして、食品関連の商品の取引者、需要者の間においては、少なくとも「ベニハヤト」及び「紅隼人」の語は、さつまいもの品種の名称であると認識されていると認めるのが相当であり、かつ、上記「ベニハヤト」は「アイスクリーム」の原材料として利用されている事実も取引者、需要者の間に認識されているというべきである。
そうすると、本件商標の「紅隼人」は、本件商標をその指定商品中、「ベニハヤトを使用したアイスクリーム」に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、商品の原材料、品質を表示したものと理解し、商品の識別標識とは認識しないものと判断するのが相当である。
また、上記以外のアイスクリームに使用したときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。
3 被請求人は、本件商標「紅隼人」を付したアイスクリームを数多く販売し、広く一般需要者に知られていると述べる。
しかしながら、「紅隼人」の文字が商品アイスクリームに使用された場合、これに接する取引者、需要者は「紅隼人」の文字を商標と認識するというよりは、アイスクリームの原材料、品質を表示したものと認識するに止まるというべきであること前述のとおりである。しかも、被請求人の提出に係る証拠には、「紅隼人」の文字を付した商品アイスクリームについて、広告宣伝をどの程度の期間、どの程度の回数、どのような媒体を用いて行ったかなど、広告宣伝の実情を示すものはなく、また、販売に関しても、販売数がどの程度あって、どの程度の売上があつたのかなど、販売実績を示すものもない。そうすると、提出された証拠では、被請求人が「紅隼人」の文字を付した商品アイスクリームを販売した事実を伺い知る程度のものといわざるを得ないから、本件商標の登録査定の時に、「紅隼人」の文字からなる商標は、被請求人の業務に係る商品アイスクリームを表示するものとして需要者の間に広く認識され、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができる商標に至っていたものとは到底判断することができない。したがって、被請求人の主張は上記判断を左右するものではない。
4 結語
してみれば、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同第16号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効にすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2006-03-09 
結審通知日 2005-12-02 
審決日 2006-04-07 
出願番号 商願平9-145334 
審決分類 T 1 11・ 272- Z (Z30)
T 1 11・ 13- Z (Z30)
最終処分 成立  
特許庁審判長 山口 烈
特許庁審判官 伊藤 三男
山本 良廣
登録日 1999-03-19 
登録番号 商標登録第4251949号(T4251949) 
商標の称呼 ベニハヤト、クレナイハヤト、ハヤト 
代理人 北村 修一郎 

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