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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y25
管理番号 1150009 
審判番号 無効2006-89026 
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-02-23 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-02-28 
確定日 2006-12-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第4875921号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4875921号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4875921号商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲に示すとおりの構成からなり、平成17年2月16日に登録出願、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,下着,寝巻き類,水泳着,靴下,足袋,手袋,Tシャツ,スウェットシャツ,和服,ズボンつり,ガーター,ベルト,エプロン,水泳帽,帽子,ずきん,ヘルメット,耳覆い,ネクタイ,マフラー,スカーフ,バンダナ,ショール,靴類,靴の中敷き,草履類」を指定商品として、平成17年7月1日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論と同旨の審決を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第11号証を提出した。
(1)無効理由について
ア 「Warner Groupワーナーグループ」の周知・著名性について
請求人会社の親会社である「Warner Bros.」を中心とするワーナー・グループは、1923年、ワーナー4人兄弟が映画会社を設立したことから始まった。それから、75年以上を経て、ワーナー・グループは、夕ーナーロターティメントとの合併により6000本の映画、29500本のテレビ番組、11500本のアニメーションタイトルというライブラリーを誇るエンタテインメントカンパニーへと成長した。
現在、「ハリポッター」「Matrix」に代表される毎年20作以上の新作、話題作となる映画をリリースする、ユニヴァーサル、パラマウント、フォックス、コロムビア、MGMと並ぶいわゆるメジャーと呼ばれる映画会社ワーナー・ブラザース(甲第3号証)を中心に、その他、テレビで「ER」等のヒット作を生みだし、ビデオでも「トムとジェリー」が大ヒット、音楽シーンでも常にトップランクのアーチストを抱えてリードし、世界数カ国でテーマパークを持つグループ企業である(甲第4号証)。日本では、1993年に開業し、現在では、45の劇場数を数えるマルチプレックス方式の映画館「ワーナー・マイカル・シネマズ」でも経営母体としても知られている。ワーナー・グループは世界的に知られたエンタテイメントカンパニーであることは、周知の事実である。
イ 「Jason Mask」の周知・著名性について
ワーナーの映画は娯楽性に富み、登場する主人公は個性的で、広く大衆の人気をつかんでいる者が多い。
ここで、請求人が引用する引用商標(登録第2462099号,同第2487954号,同第2487955号,同第2517797号)(甲第2号証)はいずれも映画「13日の金曜日」シリーズの主人公である殺人鬼ジェーソンのイラストである。「13日の金曜日」は1958年にニュージャージー州プレアーズタウンで実際に起きた惨劇を元に映画化されたもので、1980年代のスプラッターホラー映画のブームを巻き起こした代表作とも言うべき作品である(甲第5号証)。ジェイソンは2作目から殺人鬼として登場し、3作目より、おなじみのホッケーマスクを被り、残虐な殺人を繰り返し、暴れまくるというパターンが確立された。
2004年には、「エルム街の悪夢」の“悪魔”「フレディ」と“殺人鬼”「ジェイソン」のアンチヒーロー同士の対決で話題を呼んだ「フレディvsジェイソン」(甲第6号証)でシリーズ11作を数えるに至っている。日本でも、この「13日の金曜日」シリーズは、大ヒットした。この映画は、ホッケーマスクを被った殺人鬼ジェイソンがひたすら殺しまくるという単純なストーリーであるが、それ故、このアンチヒーローの強烈な個性は人気を呼び、そのジェイソンの繰り広げる殺戮シーンがこの映画の売りなので、「13日の金曜日」=ジェイソンという単純な構図ができあがったのである。
このアンチヒーロー“ジェイソン”にたくさんのファンがつき、未だに根強いファンがいることは、上記の証拠(甲第5号証)に示すような個人のサイトが数多く存在することからも明らかである。ホッケーマスク=(イコール)ジェイソンという図式は、わが国でも確立している。
ウ キャラクター図形商標の類否について
本件商標のような図形商標の場合、形象が対象となるので専ら外観を中心に類否判断される。外観類否は、需要者の目を通じた記憶に印象づけられた部分をもって類否の判断がなされるわけで、おのずとある程度おおまかなもので判断されるということになる。対比する図形の基本的な構成をだいたい同じ程度にするものであれば類似と判断される傾向が強いことになる。
上記の類否判断の原則に加えて、具体的な取引状況を勘案して類否判断をすべきであり、この取引の実情には商標の周知、著名性が含まれる。
特徴ある図形商標を特定の者が永年使用することにより著名なものになっている場合には、その特徴点と似通った図形商標は、その特徴点によりただちに特定の者を想起したり、ある特定の者と何等かの関連のあると誤認を生ぜしめる可能性が高いと考えられるので、周知図形商標に外観類似すると判断される傾向が強いということである。
これに加え、映画のキャラクターといった場合には独創性に富んでおり、一瞬にして、その特長が把握できるものが多い。スーパーマン、ET、スパイダーマン、トトロ然りである。キャラクターは、デフォルメして造形されているので、その部分に似通ったものであれば、仔細にみれば他の部分がかなり違っていても、そのキャラクターと類似のものとみて、混同してしまう可能性が大きいといえる。そのデフォルメした部分に着目して、即座にキャラクターを識別するものだからである。
このようなことから、著名なキャラクターの場合には、一般の図形の場合にもまして類似の幅は広いといえるのである。
この点については、特許庁も同様の判断をしている。
エ 本件商標と引用商品等表示(キャラクター、商標、標章)の類否について
「ジェイソン」はキャラクターとして周知であり、世界各国で永年使用され、世界中の人々に親しまれてきている。
本件商標と引用商標の「ジェイソン」とを比較すると、両者はどちらも「ホッケーマスク」をモチーフにしたキャラクターである点で一致する。本件商標の方は黒白のコントラストで表情もまったく窺いしれない態様である。ホッケーマスクを被ったキャラクターものはジェイソン以外にはその存在は知られていないといっていい。単純ではあるが、この特徴部分は創作者のオリジナルであり、同時にジェイソンそのものといっていい部分である。このオリジナリティーの強い部分が共通していれば、両者は需要者をして取り違える程に近似する、すなわち、類似する可能性が高いと考えるのは必然といえよう。そして、ホッケーマスク イコール ジェイソンという図式が確立しているのであるから、このマスク部分が共通していれば、両者は混同するおそれは非常に強いといえる。一般にキャラクターの場合、その表情は多様であるが、ジェイソンの場合には、その例外で目以外はホッケーマスクに覆われているので、その表情は窺い難く、いきおい、マスクのみ定点観察といった形になる。需要者もこのようなキャラクターの場合には、その外観をある種のイメージとして捉えて判断する形になるのである。マスク イコール ジェイソン といった外観把握と観念認識が直結した形となるのである。このようにみた場合、本件商標を引用商標との間で、両者を取り違えることは十分に考えられるのである。
以上の点のように、この両者を間接対比観察した場合には、両者は全体として近似した印象を与えるので、本件商標は引用商標(キャラクター)に類似する商標と考えるのが妥当である。
オ 本件商標の指定商品等との関連における「ジェイソン」の著名性について
「ジェイソン」は有名キャラクターであるから、日本でもこの人気をほっておく訳もなく、種々の商品に用いられている。まず、このジェイソンの被っているホッケーマスクは通称ジェイソンマスクと呼ばれており、全盛期の1980、90年代はもちろんのこと、現在も販売されており(甲第8号証)、その人気は衰えをしらない。また、ジェイソンのフィギュアも未だにかなりいい値段で販売されている(甲第9号証)。
本件商標の指定商品であるアパレルの分野でも、母国アメリカはもとより、日本でご覧のように、ライセンシーにより、Tシャツをはじめ(甲第10号証)、各種アパレル商品が輸入販売され、トータルセールスで、実に55000ドル(日本円にして、約600,000円)を記録している(甲第11号証)。このように、引用商標は、本件商標の指定商品ともかなり密接な関係をもっている。
(2)4条1項15号について
「ジェイソン」は世界的に周知・著名なキャラクターであり、商品等表示としても機能し、広く大衆に親しまれている。また、上述したように、「ジェイソン(マスク)」のキャラクターは独創的なものであり、本件商標は、引用商標とその基本的な構成を同じくするので、両者は相似た印象を需要者に与えるものである。また、キャククター「ジェイソン」は、本件商標の指定商品の「被服」等とも関連が深く、実際にこれらの商品に「ジェイソン」キャラクターが使用されている。
このような状況下において、世界的な商品等表示(キャラクター、商標、標章)である「ジェイソン」と類似の本件商標が指定商品に使用された場合には、これに接した需要者は即座に「ジェイソン」を想起し、請求人と何等かの関係がある者、すなわち、ワーナーグループあるいはそのライセンシーの業務に係る商品であるかのごとく誤認し、商品の出所について混同のおそれが高いといわざるをえないから、本件商標は、商標法第4条第1項15号に該当するものである。
(3)4条1項7号について
本件商標は、請求人が著作権を有する著名なキャラクター「ジェイソン」に類似するものであり、このような商標に登録及び使用を許容することは我が国における法秩序を乱し、公序良俗を害するおそれがあるものであるから、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第15号及び同第7号に違反して登録されたものであるから、その登録は無効にされるべきである。

3 被請求人の主張
被請求人は、何ら答弁していない。

4 当審の判断
(1)請求人の提出に係る証拠(甲5,甲6、甲8)によれば、映画「13日の金曜日(Friday the 13th)」は、請求人の制作・配給に係り、1980年に上映されたのを始め、同映画は、シリーズとして2001年までに10作、2004年の「フレディvsジェイソン」を含めると11作が制作・上映されているものである。
同映画の主人公は「殺人鬼ジェイソン」と呼ばれる人物であり、残虐な殺人を繰り返し、暴れまくるキャラクターとして、ホッケーマスクを被った顔部分に強い印象を留めるその特徴とともに、世界各国において、また、我が国の映画フアンの間においても定着したものといえる。
そのことは、同映画の主人公ジェイソンについて、ホームページ等で多くのフアンがマスク姿とともに書き込みをしたり、マスクやそのマスク姿のフィギアが販売されているなど、いまだにその人気が衰えていないことからも窺い知ることができるものである。
してみると、請求人の配給する映画「13日の金曜日」シリーズの主人公である殺人鬼ジェイソンは、独自のホッケーマスクを被り、マスク姿の映画キャラクターとして、本件商標の出願時には既に、一般の需要者の間で周知となっていたと認め得るものである。
(2)本件商標は、別掲のとおり、陰影のあるマスクを被った頭部の図柄からなるものであり、甲各号証に現れた映画に登場する主人公が被るマスクとはマスクの穴の数等で若干の相違があるとしても、特異性のあるホッケーマスクを被った顔部分の特徴を的確に捉えて描いてなるものであるから、本件商標は、前記映画のジェイソンを象徴するマスク姿を直感させ想起させる図形商標からなるものというのが相当である。
そして、本件商標の指定商品は、流行を反映し易い被服等であり、また、その需要者も一般消費者であって、映画の人気キャラクターに関心を示す者を多く含んでいるといい得るものであるから、需要者には共通性が認められるものである。加えて、請求人は、同人の映画のキャラクター等につき使用許諾事業を行っており、現にTシャツについては、ジェイソンの図柄をプリントしたものが我が国においても市販されているところである(甲10、甲11)。
(3)そうとすれば、本件商標をその指定商品に使用するときには、本件商標の登録時はもとよりその出願時においてみても、これに接する需要者が、前記ジェイソンのマスク姿を想起し、連想して、当該商品が請求人あるいは同人と組織的又は経済的に関係のある者の業務に係る商品であるかの如く誤信し、その出所について混同するおそれがあると判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものというべきである。
(4)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものと認められるから、他の理由について論及するまでもなく、同法第46条第1項に基づき、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲



別掲
本件商標


審理終結日 2006-10-10 
結審通知日 2006-10-16 
審決日 2006-10-31 
出願番号 商願2005-18071(T2005-18071) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (Y25)
最終処分 成立  
前審関与審査官 八木橋 正雄 
特許庁審判長 柴田 昭夫
特許庁審判官 岩崎 良子
小川 有三
登録日 2005-07-01 
登録番号 商標登録第4875921号(T4875921) 
代理人 松原 伸之 
代理人 寺島 正己 
代理人 中山 健一 
代理人 高部 育子 
代理人 松嶋 さやか 
代理人 村木 清司 
代理人 橋本 千賀子 

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