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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効としない Z33
管理番号 1149906 
審判番号 無効2005-89137 
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-02-23 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-10-19 
確定日 2006-12-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第4557961号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4557961号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成13年5月30日に登録出願、第33類「日本酒」を指定商品として、平成14年4月5日に設定登録されたものである。

2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第2109420号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、昭和61年12月12日に登録出願、第28類「酒類(薬用酒を除く)」を指定商品として、平成1年1月23日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

3 請求人の主張の要点
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第13号証を提出した。
(1)本件商標と引用商標の類似について
(ア)本件商標は、その構成文字より、「スイヨウ」又は「スイヨー」の称呼を生ずる(甲第1号証)。
他方、引用商標は、その構成文字より、「ズイヨウ」又は「ズイヨー」の称呼を生ずる(甲第5号証)。
そうすると、本件商標より生ずる「スイヨウ」又は「スイヨー」の称呼と引用商標より生ずる「ズイヨウ」又は「ズイヨー」の称呼は、共に4音構成からなり、第1音において、「ス」と「ズ」の清音と濁音の徴差を有するにすぎない。そして、この差異音がたとえ称呼の識別上重要な要素を占める語頭音であるとしても、両者は、それぞれ一連に称呼するものであり、その差異が商標全体に及ぼす影響は小さく、全体として語韻語調が極めて近似しており、聞き誤るおそれが十分にあるから、外観及び観念の類否を待つまでもなく、称呼上類似する商標というべきである。
また、本件商標に係る指定商品「日本酒」と引用商標に係る指定商品「酒類(薬味酒を除く)」は、同一又は類似の商品である。
(イ)特許庁の過去の判断
請求人の調査によると、4音構成の商標で接頭語のみが清音と濁音の違いだけを有する商標の類否に関し、特許庁の過去の判断は、類似商標としている事例が多い(甲第6号証ないし甲第11号証)。
(2)答弁に対する弁駁
被請求人が提出した資料の殆どは審査例である。審査においては、登録例は公報として残るが、拒絶査定となったものは、一定期間経過後には廃棄処分され、知ることはできない。確かに、被請求人が提出したように、登録されたものもあることは認められるが、それ以上の件数で拒絶となったものがあることも推測される。
したがって、拒絶例を示すことなく、登録例のみを提示するのは片手落ちである。
このような観点から、評価するには審決例によるものが妥当である。審決の場合には登録されたものも、拒絶されたものも共に審決公報としてデータ化されるので、公平な判断ができるものと思料する。
商標研修会「最近の商標の類否判断について」(資料編、甲第12号証)の特許庁の過去30年分の審決資料によれば、「ス」と「ズ」の1音違いによる非類似審決例は2件であったのに対し、類似審決例は15件である。
「ス」と「ズ」は、審査時等に用いられる表(甲第13号証)には、酷似音として記載されており、拒絶例が多いことは納得できるものである。
したがって、本件商標と引用商標より生ずる称呼は、その差異は第1音において、「ス」と「ズ」の清音と濁音の徴差にすぎず、外観類似、観念類似を待つまでもなく、称呼的に類似商標というべきである。
(3)むすび
以上の理由により、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきである。

4 被請求人の答弁の要点
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第24号証を提出した。
(1)商標の類否判断に関しては、「両者の称呼がよし比較的近似するものであるとしても、その外観および観念の差異を考慮すべく、単に両者の抽出された語音を対比して称呼の類似を決定して足れりとすべきでない」とされ、さらに、東京高等裁判所の判決においても、「今日のように情報媒体が多様化し、国内的国際的情報量が飛躍的に増大した社会において、人々は多量の情報を識別認識することに慣れ、個々の情報間の差異に敏感に反応する習性が培われていることは当裁判所に顕著な事実である。このことからすると、商標の類否の判断において、商標の外観、観念、称呼の各要素は、あくまでも、総合的全体的な考察の一要素にすぎず、たまたま一要素が近似するからといって、他の要素との関連を無視して直ちに商標そのものが類似するとの判断に至ることは許されず、常に、情報社会といわれる今日の社会情勢に即した総合的全体的な考察を心掛けなければならないことはいうまでもない。」(平成4年(行ケ)第93号、乙第1号証)としている。
そして、特許庁における審決でも、称呼のみならず、外観・観念の類否と併せて総合的に判断がされている(乙第2号証及び乙第3号証)。
(2)本件商標と引用商標との類否について
(ア)観念
「酔」は、「酒・薬・乗物などによう。ものごとに夢中になり、酒によったように、心がうっとりする。」(乙第4号証)を意味する漢字であるのに対し、「瑞」は、「天子が諸侯を任命したしるしの玉。めでたいしるし。みずみずしい。」(乙第5号証)を意味する漢字である。このように「酔」と「瑞」は、全く異なった言葉であり、商品「酒類」の主たる需要者であれば、容易にその観念の差異を直感するものである。
そして、本件商標中の漢字部分からは、「酔った鷹」などの観念が生ずるのに対し、引用商標からは、「めでたいしるしの鷹」あるいは「みずみずしい鷹」などの観念が生ずるものであるから、両者は、観念上明確な差異を有するものである。
(イ)外観
本件商標は、標準的な書体で「酔鷹」の漢字と「すいよう」の平仮名をまとまりよく二段に横書きしてなるものである。
一方、引用商標は、筆先が粗くなったような筆で筆の入りと出に力を加えて書かれた髭文字の書体で「瑞鷹」と縦書きに書してなるものである。
このように両商標は、その文字態様、構成文字数、配置などを著しく異にし、看者に与える印象は全く異なったものである。さらに「酔」と「瑞」の漢字は、共通する偏やつくりもない。
してみれば、本件商標と引用商標は、外観上相紛れるおそれはない。
(ウ)称呼
本件商標は、その構成文字より、「スイヨウ」の称呼が生じるものである。
それに対し、引用商標は、「ズイヨウ」のみならず、「ミズタカ」、「ズイオー」との称呼も生じ得る(乙第6号証)が、「ミズタカ」、「ズイオー」は、本件商標から生じる称呼とは明らかに類似しない。
そして、本件商標から生じる「スイヨウ」と引用商標から生じる「ズイヨウ」の称呼上の差異は、清音「ス」と濁音「ズ」であるが、該差異音は、称呼の識別上最も重要な語頭に位置し、しかも語頭の「ズ」は、破裂音を伴う有声破擦音で比較的強く聴覚される(乙第7号証)のに対し、「ス」は、無声摩擦音で弱音である(乙第8号証)。また、「ズイヨウ」は、語頭の比較的強く発音される濁音「ズ」にアクセントをおいて発音されるのに対し、「スイヨウ」は、全て清音のみで構成され、軽く滑らかに発音されるから、両者は、発音方法を異にし、聴感において明確な差異を有する。さらに、「スイヨウ」と「ズイヨウ」は、4音と比較的短いため、「ス」と「ズ」の差異が称呼全体に及ぼす影響は大きいものと思料する。
したがって、「スイヨウ」あるいは「ズイヨウ」と一連に称呼した場合、それぞれ語調語感において明らかに相違するものであるから、本件商標と引用商標は、称呼上相紛れるおそれはない。
このことは、「瑞湶(称呼:ズイセン)」と「翠撰(称呼:スイセン)」とを称呼上非類似とした審決(乙第9号証)からも明らかである。また、商品区分「酒類」において、「酔夢」と「瑞夢」(乙第10号証及び乙第11号証)のように、称呼上、「ス」と「ズ」の差異を有する登録商標がそれぞれ併存していることからも明らかである(乙第12号証ないし乙第21号証)。
なお、甲第10号証(審決)では、「翠鳳」と「瑞鳳」は類似とされたが、その後、上記各商標は、共に登録され併存している(乙第22号証及び乙第23号証)。
(エ)本件商標及び引用商標を付した商品「酒類」の主たる需要者は20歳以上の大人であり、称呼のみならず観念あるいは外観によって購買するのが通常である。ましてや、日本酒を選ぶ際、需要者は、商品の出所の異同、つまり蔵元(酒造者)、産地などについての関心が非常に高く、また、商品の出所を表示する商標の異同についても相当の注意を払うものであるから、本件商標と引用商標は、誤認混同を生ずるおそれはないものとするのが相当である。
(オ)請求人は、特許庁の過去の判断として6件の審決を挙げているが、甲第10号証については、上述のとおり、現在「翌鳳」も「瑞鳳」も共に登録されている。その他の審決も、明確な観念のない商標相互の類似関係についてであり、いずれも称呼のみについて検討されたものばかりである。したがって、外観上明確な差異を有し、また、それぞれ明確な観念を有する本件商標と引用商標との類否関係には該当しないものである。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、無効とされるべきでない。

5 当審の判断
(1)本件商標と引用商標の類否について
(ア)外観
本件商標は、別掲(1)のとおり、活字体で表した「酔鷹」の漢字と「すいよう」の平仮名を二段に横書きしてなるものである。
これに対し、引用商標は、別掲(2)のとおり、毛筆書きした「瑞鷹」の漢字を縦書きにしてなるものである。
そうすると、本件商標と引用商標は、これらを構成する文字の態様、配置等において、大きく相違するものであるから、外観上明らかに区別し得るものである。
(イ)観念
本件商標及び引用商標は、いずれも構成全体から親しまれた観念が生ずるものではないが、本件商標中の「酔」の文字部分は、「酒・薬・乗物などによう。ものごとに夢中になり、酒によったように、心がうっとりする。」(乙第4号証)を意味する語として、指定商品との関係においては、慣れ親しまれた語であり、一方、引用商標中の「瑞」は、「天子が諸侯を任命したしるしの玉。めでたいしるし。みずみずしい。」(乙第5号証)を意味するものとして一般によく知られている語であるところからすると、これらの文字に「鷹」の文字を結合した両商標からは、全体から生ずる意味合いにおいて、まったく異なった印象を与えるものといえる。
してみると、本件商標と引用商標は、構成全体から生ずる意味合いにおいて、著しく異なるものであるから、観念上の差は大きいということができる。
(ウ)称呼
本件商標は、その構成文字に相応して、「スイヨウ」の称呼を生ずるものであるのに対し、引用商標は、「瑞鷹」の文字よりなるものであるから、これより生ずる自然の称呼は、「ズイヨウ」とみるのが相当である。
そこで、本件商標より生ずる「スイヨウ」の称呼と引用商標より生ずる「ズイヨウ」の称呼を比較するに、両称呼は、第1音において、「ス」と「ズ」の音の差異を有し、他の3音を共通にするものであるところ、差異音「ス」と「ズ」は、前者が舌端を前口腔蓋に寄せて発する無声摩擦音「s」と母音「u」との結合した音節であり、後者が舌端を前口腔蓋に寄せて発する有声摩擦音「z」と母音「u」との結合した音節であるから、発音の方法等において近似するところはあるとしても、前者は、澄んだ音として発音され、聴取されるのに対し、後者は、重く濁った音として発音され、聴取されるから、音感、音質において異なるものであり、これらの差異音が称呼における識別上重要な要素を占める語頭に位置すること、両称呼は、いずれも4音よりなり比較的短い音構成よりなるものであることなどを併せ考慮すると、それぞれの称呼を一連に称呼した場合においても、互いに聞き誤られるおそれはないものとみるのが相当である。
(エ)総合的判断
前記(ア)ないし(ウ)で認定したとおり、本件商標と引用商標とは、その外観及び観念において、大きく異なるばかりでなく、その称呼においても互いに紛れるおそれはないものであるから、需要者が両商標を時と所を異にして離隔的に観察した場合においても、それぞれの商標から全く異なった印象を受け、別異の商標として認識し、記憶するというのが相当である。
したがって、本件商標と引用商標は、これらを同一又は類似の商品について使用しても、商品の出所について誤認、混同を生ずるおそれはないといわなければならない。
(2)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものではないから、同法第46条第1項の規定により無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
別掲(1) 本件商標


別掲(2) 引用商標

審理終結日 2006-10-10 
結審通知日 2006-10-13 
審決日 2006-10-25 
出願番号 商願2001-48669(T2001-48669) 
審決分類 T 1 11・ 262- Y (Z33)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 高野 義三
特許庁審判官 中村 謙三
井岡 賢一
登録日 2002-04-05 
登録番号 商標登録第4557961号(T4557961) 
商標の称呼 スイヨウ、スイヨー 
代理人 日比谷 征彦 
代理人 榎本 一郎 

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