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審決分類 審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y28
審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y28
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y28
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y28
審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y28
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y28
管理番号 1148500 
審判番号 無効2006-89031 
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-01-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-03-08 
確定日 2006-11-29 
事件の表示 上記当事者間の登録第4914397号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4914397号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4914397号商標(以下「本件商標」という。)は、「堤人形」の文字と「つつみのおひなっこや」の文字を二段に横書きしてなり、平成17年9月29日に登録出願、平成17年11月25日に登録査定、第28類「土人形および陶器製の人形」を指定商品として、平成17年12月9日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する商標は、以下のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第2354191号商標は、「つゝみ」の文字を横書きしてなり、昭和56年3月2日に登録出願、第24類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成3年11月29日に設定登録され、その後、平成16年4月28日に、指定商品を第28類「土人形」とする指定商品の書換の登録がされたものである。
2 登録第2365147号商標は、「堤」の文字を書してなり、昭和56年3月2日に登録出願、第24類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成3年12月25日に設定登録され、その後、平成16年5月12日に、指定商品を第28類「土人形」とする指定商品の書換の登録がされたものである。
(上記登録商標をまとめて、以下「引用商標」という。)

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第9号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求の理由
(1)引用商標は、商標法第3条第1項第4号普通名称とする拒絶査定に対し、審判において、明治以降、土人形の名称として広く認識されているから、同法第3条第2項の要件を満たす商標であるとの審決がされ、登録されたものである。
したがって、本件商標の「堤人形」は、引用商標の商標権を侵害するものであるから、本件商標は、商標法第8条第1項に該当する。
(2)「堤人形」等の商品表示、「つつみのおひなっこや」の呼称又は雅号及び被請求人の侵害行為の経緯について
ア 引用商標を冠する堤人形は、文献によると江戸期の伊達藩の城下町仙台の堤町界隈に住む足軽が瓶などの生活容器の焼物を造り売りする副業の傍ら造った「おひなっこ」又は「御雛っ子」とも称した土俗的人形に由来する。しかし、江戸期のそれは、度重なる飢餓や明治維新後の西欧化の波に押されて急速に廃れ、大正末期においては、僅かに芳賀家と宇津井家が製作をするのみで、その後、宇津井家も廃絶して請求人の祖父佐四郎だけが創作と改良を重ねて残るうちに、「堤の御雛っ子屋」、「つつみのおひなっこや」といえば芳賀家の代名詞として呼称されてきたことが一様に記述されている。請求人の父佐五郎は、昭和初期に佐四郎より唯一の「堤の御雛っ子屋」を伝承したが、旧来の土型を用いた荒く暗い形状色彩の土俗的人形を完全に廃し、石膏型を用いる精緻な造形と繊細かつ優美な彩色を施した新型の人形を創作考案し、かつ、旧型の人形も刷新させ、これを「堤人形」、「つゝみ人形」、「つつみ人形」(以下「『堤人形』等」という。)の商品表示ないし商標で全国に販売して好評を博した。こうして佐五郎は、「堤人形」等の商品表示ないし商標と「堤の御雛っ子屋」又は「つつみのおひなっこや」の呼称の独占的確立を不動のものとしたのである(甲第2号証の1ないし甲第4号証の10)。
請求人は、そのすべてを父佐五郎から伝承し、昭和59年には、知事より唯一人「宮城県伝統工芸品堤人形」の製作者と指定された。その創作人形が年賀郵便切手にも一度ならず採用され、一品毎の手作業の工芸品である堤人形の製作が折に触れてマスコミにも報道され、上記商品表示と商標登録、そして上記呼称を一段と確立したのであり(甲第5号証の1ないし4(枝番を含む。))、特許庁が引用商標の登録を認めたのも、正にその証左である。
イ 被請求人は、引用商標を普通名称であるかのような言辞で上記事実を虚偽とし、他方、父吉夫とその義父大三郎以来継続して堤人形を製作してきたとして自己の商標登録を得たが、これは虚偽である。上記文献が、堤人形製作の「御雛っ子屋」又は「おひなっこや」が芳賀家だけとなり、被請求人の佐藤家も含めて他に製作する者がなかったことの記述を見れば、被請求人の事実無根の言掛かりが自明である。逆に文献は、佐藤家が大正時代から土管や瓶の製造を専業としたが、昭和40年代以降、土管は廃れ、張子の松川ダルマ製造に活路を見出した記述があるのみであり、堤人形製作継続の記事は何ら見出せない。そして、昭和の終焉でダルマも廃れ、吉夫は、請求人の著名な「おひなっこや」に着目し、著作権と商標権侵害ないし周知商品表示の誤認混同の不正競業の模造品販売に乗り出したのである。また、請求人の製作補助の従業員小野寺哲也を抱き込み、請求人の石膏型や商品を盗み取らせては同人の技術指導で模造品製作にこぎ着けたのである。被請求人父子は、このようにして、引用商標とその周知商品名の「堤人形」等、「宮城県伝統工芸品堤人形」及び「つつみのおひなっこや」の呼称をそのまま盗用して自己の商品表示や包装、看板に用いて販売する誤認混同の不正競業行為の商売を始めたのである(甲第6号証の1ないし甲第7号証の2)。
ウ 請求人は、平成15年に上記侵害行為について、吉夫と小野寺を被告とする著作権と商標権侵害及び不正競争防止法違背の差止請求等の訴訟を提起した(甲第9号証の1及び2)。そして、被請求人父子は、上記訴訟の侵害行為ないしは商標法第37条のみなし侵害行為の明白な該当を潜脱すべく、登録第4798358号商標(以下「被請求人商標」という。)を出願し、その登録を奇貨として、本件商標の出願をして登録を得たものである。
しかし、この被請求人父子の行為は、商標法第4条第1項第8号、同第10号、同第11号、同第15号、同第16号及び同第19号に該当し、商標登録を受けることができない誤認混同の不正競業行為が明らかである。
2 答弁に対する弁駁
(1)前記のとおり、引用商標は、商標法第3条第2項の要件を満たすものとして、登録されたものである。被請求人のいう虚偽なる主張は、芳賀家のみの堤人形製作と「人形の東の横綱」の周知性獲得等を一様に記載した文献に反するものである。
(2)被請求人は、祖父大三郎と父吉夫の堤人形製作を主張するが、これも上記文献等の証拠に反する事実無根であり、土管とだるま製造業が専業であったことが文献上明白である。しかも、引用商標を利用した類似が明白である被請求人商標と本件商標に関する答弁も、請求の理由の記載から全て理由がないことが自明である。
前記文献をみても、堤人形の名称ないし商号は、江戸期から明治大正期までは使われず、請求人の先代佐五郎が使用を始めたのであり、それまでは仙台の堤町界隈では、瓶等の生活容器と土偶や土管などを「堤焼」と称し、そのかたわらに作る土人形は、「お雛っ子」と称していたのである。そして、堤町界隈では、堤人形の創作を唯一の専業とした請求人の先々代と先代に至り「堤のお雛っ子屋」あるいは「おひなっこや」の呼称が与えられたことは上記文献でも明確に証明されるのである。
したがって、被請求人商標及び本件商標は、この著名な呼称、雅号ないしは略称(甲第2号証の1ないし甲第5号証の4(枝番を含む。))に目を付けてこれを侵害して不正競業に及んだ(甲第6号証の1ないし甲第9号証の2)ことは、既に請求の理由で主張したとおりである。
(3)乙各号証は、その殆どが請求人提起の仙台地方裁判所平成15年(ワ)第683号事件の訴訟提起後に取得したことをみれば、被請求人父子が、この訴訟対策のために意図的に体裁を整えたにすぎないものである。そして、何よりも指摘すべきことは、被請求人は、引用商標について、無効審判ないし取消審判を請求していないことであり、それだけでも被請求人の答弁には理由がなく、逆に被請求人が、上記訴訟の裏で、不正競業を正当化させる不正な本件商標の登録を行ったことが明白である。
3 むすび
以上の次第で、本件商標の登録は、商標法第46条により、無効とすべきものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第7号証を提出した。
1 引用商標について
引用商標は、その拒絶査定に対する審判において、「『土人形』の伝統工芸を現在も唯一に継承して」いると虚偽の主張を行った結果(乙第1号証)、商標法第3条第2項により商標登録されたものである。
しかしながら、請求人は、引用商標の出願時・審決時及び現在においても、堤人形を「唯一に継承して」いる者ではない。その出願時には、被請求人の父吉夫、祖父大三郎等も「堤人形」の製作をしており、被請求人と父吉夫は、現在も堤人形を製作し続けている(乙第2号証)。
被請求人は、請求人とともに、仙台市のホームページの「堤人形」の項目で仙台市経済局観光交流課により紹介もされている(乙第3号証)。
祖父大三郎は、昭和56年4月1日から、また、父吉夫は、昭和58年4月1日から、堤人形について、宮城県優良県産品の推奨の認証を受けており(乙第4号証)、さらに、父吉夫は、宮城県伝統工芸品堤人形の製作業者として宮城県に認められている(乙第5号証)。
請求人による「『土人形』の伝統工芸を現在も唯一に継承して」、「つゝみ(堤)人形」を現代まで唯一継承し続けている」との虚偽の主張は、請求人のほか、関善内氏の著作物にも記載されている。関氏は、被請求人の父や祖父が堤人形の製作者であることを知っていたが、請求人の家に弟子入りしていたため(甲第6号証の3の42頁)、虚偽の記載を行ったものである。
このように、引用商標は、過誤登録又は詐欺による登録であるから、その商標権の効力は認められるべきではない。
そもそも「堤人形」等の名称は、堤焼きによる「土人形」の普通名称であり(乙第6号証)、「堤町で生産されてきたのでこの名がある」(甲第2号証の1)ものであって、請求人の商標ではない。仙台市のホームページや宮城県の公文書でも、「堤人形」は、商標ではなく、普通名称として記載されている(乙第3号証ないし乙第5号証)。「堤」の表示は、甲第2号証の1に記載のとおり、「花巻」、「八橋」などの表示と同様に、「堤人形」の略称として使用されている。
2 本件商標と引用商標の類否について
仮に引用商標に商標権の効力が認められたとしても、その指定商品の普通名称及びその略称には、商標権の効力は及ばないため(商標法第26条第1項第2号)、商標の類否判断も、その指定商品の普通名称及びその略称を除外するべきであり、したがって、本件商標の要部は、「おひなっこや」である。
そうすると、本件商標と引用商標は、その外観、観念、称呼のいずれも異なるから類似しない。
なお、仮に引用商標の審決時に、「堤」、「つゝみ」の各文字が普通名称「堤人形」の略称でなかったとしても、商標である旨の主張がなされないまま一般に使用がなされた結果、普通名称化しており、少なくとも本件商標の出願時には既に普通名称であった。
特に、引用商標は、商標法第3条第2項により登録されたものであるから、本来、自他商品識別力を有していないため、同法第3条第1項の規定により登録を受けられないものであるが、使用の結果、その使用態様に限定して例外的に登録を認められたものである。したがって、引用商標に商標権の効力があるとしても、その類似範囲は狭く、商標登録を受けたそのままの態様に限定され、本件商標と類似するものではない。
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。また、本件商標は、商標法第8条第1項、第2項又は第5項にも違反するものでもない。そもそも、引用商標は、本件商標の出願前に既に登録を受けているので、商標法第8条の適用の余地はない。
3 「つつみのおひなっこや」について
「つつみのおひなっこや」は、被請求人の商標である。請求人が現在も過去も「つつみのおひなっこや」を名乗っていた事実はない。過去に「堤のおひなっこ屋」の名称が使用されていたとしても、「この宇津井家は、その後、大正年代まで土人形を作りつづけ、芳賀家と共に最後の二軒として残り、『堤のおひなっこ屋』といえば、当時はこの二軒の代名詞であり、昭和の初期までこの愛称は生きていた。」(甲第3号証の1)とあるように、「堤のおひなっこ屋」は愛称であって、雅号又はその略称ではない。ましてや、著名な雅号又はその略称でもない。さらに、その愛称が用いられていたのは、昭和の初期までである。
被請求人の本家の佐藤家は、宇津井家の最後の継承者から宇津井家に伝わる古型の保存とその再興を託されたものであり、被請求人の曽祖父が佐藤家を分家してからは、被請求人の分家が本家の型を受け継いで、堤人形を製作し続けている。被請求人の父吉夫が所有する堤人形土型(1,759点)は、仙台市指定有形文化財に指定されている(乙第7号証)。そして、「つつみのおひなっこや」の名称は、被請求人の曽祖父大吉の代から屋号として使用してきたものであって、本件商標の出願時には、「つつみのおひなっこや」といえば、被請求人の屋号及び商標として知れわたっている。平成18年5月26日の時点で、インターネットで検索エンジン「Google」により「つつみのおひなっこや」の文字での検索結果は42件であり、同じく検索エンジン「YAHOO!JAPAN」での検索結果は31件である。それらはすべて被請求人を示すものである。また、「堤の御雛っ子屋」の文字で同様に検索した結果では、いずれの検索エンジンでも検索結果は0件である。このように、「つつみのおひなっこや」の名称は、被請求人の屋号及び商標として知られており、請求人の呼称、雅号ないし略称ではない。
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する商標ではない。
4 商標法第4条第1項第10号、同第15号、同第16号、同第19号について
請求人は、過去、現在にわたり、本件商標中の「つつみのおひなっこや」の名称を商標として使用していない。請求人の家が宇津井家と共に、昭和の初期まで、その愛称で呼ばれたことがあったとしても、「つつみのおひなっこや」の名称は、少なくとも本件商標の出願時には請求人の愛称ではなかった。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する商標ではない。
さらに、「つつみのおひなっこや」の名称は、被請求人以外には使用していない商標であるから、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれはなく、本件商標は、商標法第4条第1項第15号又は同第19号に該当する商標でもない。
被請求人は、「つつみのおひなっこや」の商標を商品「堤人形」について使用しており、商品の品質の誤認を生ずるおそれもないから、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する商標でもない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、請求人が主張する無効理由を有していないものである。

第5 当審の判断
1 「堤人形」、「つゝみ人形」、「おひなっこ」、「堤のおひなっこ屋」等の語について
(1)以下に掲げる甲号証及び乙号証によれば、次の事実が認められる。
ア 甲第2号証の1(「郷土玩具辞典」1997年9月25日、株式会社東京堂出版発行)には、「堤の土人形」の発祥に関し、以下の記述がある。
京都の伏見人形、長崎の古賀人形と並ぶ日本の代表的な土人形とされている。昭和16年(1941)刊の「郷土玩具展望」中巻(有坂与太郎)には、東北地方の土人形について、「各々異れる特色と、永き伝統に培はれし点とで、堤、花巻、八橋を東北の代表的土玩とす。・・」と記している。「堤町で生産されてきたのでこの名があるが、堤人形と呼ぶようになったのは昭和期に入ってからで、それまでは「おひなっこ」ともいっていた。さらに古くは松山焼き、または僊台焼きと呼ばれていたが、これはその昔杉山台といわれた付近の瓦山で窯業が行なわれていたことによるもので、それが次第に堤町に移り、堤焼きと呼ばれるようになった。その発生は江戸時代元禄7年(1694)当時の仙台藩主伊達綱村が、領内の陶器の自給自足を計るため、江戸今戸の陶工上村万右衛門を招き、杉山台に窯場と作業場を築いて製陶に従事させた。万右衛門は、当時流行の楽焼き茶器を創り「杉山焼き」と称したが、・・・その他雛人形、稲荷などを作って堤焼き人形の始祖となった。杉山焼きは彼の没後一時廃絶した・・・藩のお抱え瓦師庄子屋勇左衛門(初代勇七)、同二代目勇七親子が復興の先駆者となって現在の堤人形の基礎を築いた。・・・文化・文政(1804?30)のころは、堤町40戸のうち土人形屋が13軒を数えるほどの全盛期を迎えて明治期に至った。・・・明治以降は時勢の変動から次第に廃業が目立ってきて、大正期には宇津井、芳賀両家だけとなった。さらに昭和期に入ると芳賀佐五郎家だけが家業を存続するだけとなったが、昭和3年に新堤人形を発表する他古型の復活に努力。折から郷土人形愛好収集趣味の流行に支えられて命脈を保ち、以後現在に至っている。なお、この土人形は、相良人形(山形県米沢)、花巻人形(岩手県花巻)などの土人形や三春張り子人形(福島県三春)にそれぞれ大きな影響を与え、東北地方におけるその源流としての地位を示している。」
イ 甲第2号証の2(「河北新報」昭和41年5月23日発行)には、「堤人形 うれいを含んだ美 庶民が作った芸術品」の見出しのもと、「『堤人形』は昭和初期からの呼び名である。それ以前は『おひなっこ』『つつみのおひなっこ』の愛称で親しまれてきた。元禄時代からの長い歴史を持ち、文化文政の全盛期には18軒の人形店が陸羽街道に軒を並べ、大いににぎわったという。・・日本の郷土玩具の横綱、堤人形も、いまは製作所の看板をあげているのは、わずかに1軒だけ。やがて堤人形も仙台から姿を消すのではないかと心配されているが、・・『堤人形は日本の貴重な文化遺産である。識者の間で定評のある堤人形が改めて正当な評価を受ける日は近い。・・』仙台市立博物館内に堤人形コーナーを設けようとする計画も持ち上がっている。」との記述があり、「堤人形」の語は、仙台の郷土玩具の名称として扱われていること。
ウ 甲第3号証の1(「堤土人形」昭和42年1月20日、郷土玩具研究会発行)には、「宇津井家は、その後、大正年代まで土人形を作りつづけ、芳賀家と共に最後の2軒として残り、『堤のおひなっこ屋』といえば、当時はこの2軒の代名詞であり、昭和の初期までこの愛称は生きていた。」の記述があること。
エ 甲第3号証の2(「堤焼之史」昭和40年9月9日(発行所・発行日不明))には、「当時は人形の名称なく『堤のお雛っこ』その店を『お雛っこ屋』と呼称せられ、土着の古老達は現在でも時折『おひなっこ』と呼んでいる。随って『おひなっこ屋』と云えば宇津井と芳賀の代名詞になっていた。」旨の記述があり、また、同趣旨の記述は、甲第3号証の3(「河北新報」昭和41年5月25日発行)にもあること。
オ 甲第3号証の4(「仙台市史」平成8年3月31日、仙台市発行)には、「・・・土人形の名品“堤人形”。土人形製作の中心的存在であった宇津井家と庄子家はともに瓦師が本業であり、冬期間の副業として土人形を作っていたのだという。明治末期頃までは4軒の人形屋が存在していたというが、以後芳賀家1軒だけとなり現在に至っている。・・・芳賀佐五郎は精密な石膏型で約150種の新作の堤人形型を作り上げ、中間色を用いた絵付けを行うなど新風を吹き込んだ。」などの記述があること。
カ 甲第4号証の1(「東北の玩具」昭和16年7月25日改訂版、社団法人日本旅行協会発行。なお旧字体は新字体を用いた。)には、「堤人形 土製彩色 北仙台駅 付近堤町」との表題のもと、「伏見人形と並んで堤人形は土人形界にその名をうたわれている」との記述があること。
キ 甲第4号証の2(「堤人形の美」平成元年5月12日、仙台市博物館発行)においても、前掲「郷土玩具辞典」(甲第2号証の1)の記述内容と同様な記述があり、「2.堤人形」の項目には、「明治時代後半以降堤町では人形屋が次々と店を閉じた。そこで仙台市は堤人形の復興を計画、大正時代末期に芳賀佐五郎に土人形の復興を託した。」との記述があり、さらに、「3.堤人形の美」の項目には、「江戸と仙台を往復する参勤交代の制度は、人形の生産のあたった堤町足軽の人々にも課せられた任務であった。江戸で盛んに行われていた歌舞伎を目にする機会は十分あったであろうし、浮世絵を購入して国元へ帰る人もあったことであろう。・・浮世絵などの出版物をもとに彼らは売れる人形、話題になる人形を製作していった。その好例が谷風・小野川である。谷風が横綱の称号をもらうのは寛政3年(1791)のこと、小野川との勝負は6月に、11代将軍徳川家斉の前で行われる。この時の様子を翌4年に堤人形として売り出したことが、その型銘によって知られる。」との記述があること。
ク 甲第4号証の8の1ないし6(昭和28年から同41年の間に芳賀佐五郎に授与された賞状)には、「芳賀佐五郎」の文字と共に「堤人形」(甲第4号証の8の5は「堤土人形」)の文字の記載があるが、該「堤人形」等の文字は、その記載内容から郷土玩具の名称としての表示であること。
ケ 甲第5号証の1(昭和59年2月16日付け指定書)には、「工芸品名 堤人形」の記載があり、また、甲第5号証の2(昭和58年年賀切手発行記念)には、「ししのり金太郎(堤人形)」の記載が、甲第5号証の2の1(昭和57年10月2日付け河北新報)には「年賀切手に仙台の『堤人形』」の記載がある。さらに、甲第5号証の4の1ないし5(平成3年12月16日ないし平成13年4月7日付けの新聞記事)には、仙台伝統の土人形として「堤人形」に関する記事の掲載があること。
コ 乙第4号証(平成15年7月30日付け「宮城県優良県産品の推奨状況について(回答)」)には、「仙台張子面」や「松川ダルマ」などと並んで「堤人形」の記載があること。
サ 乙第5号証(平成15年9月19日付け「宮城県伝統的工芸品堤人形の製作業者について(回答)」)には、「・・昭和57年の制度開始以来、18の工芸品を指定し(国の伝統的工芸品である宮城伝統こけしを併せると19)、堤人形は、昭和58年度に指定しています。」との記載があること。
シ 乙第6号証(広辞苑、昭和42年1月10日第1版第22刷発行)の「堤人形」の項には、「堤焼の人形。→つつみやき(堤焼)」とあり、「堤焼」の項には、「陶器の一種。元禄の頃から仙台の堤町で江戸の陶工上村万右衛門の創製したもの。特に人形は、『堤人形』として有名。」の記載があること。
(2)ア 前記(1)で認定した事実を総合すると、江戸時代元禄のころから仙台の堤町で生産された土人形は、かつては、「おひなっこ」、「つつみのおひなっこ」、「堤のお雛っこ」等と、また、該土人形を取り扱う店舗を「堤のおひなっこ屋」、「おひなっこ屋」等と称していたこと、上記土人形の生産は、文化・文政のころに最盛期を迎えたが、明治以降は、西洋文化の流入等により、衰退の一途をたどり、該人形を取り扱う店舗は、大正期には宇津井、芳賀の2軒だけとなったこと、さらに、昭和期に入ると請求人の父である芳賀佐五郎だけが業として、土人形の製作に携わっていたことなどが認められ、また、芳賀佐五郎は、新作の土人形を発表するなど該人形の保存、発展に大きく貢献したことが窺うことができ、堤町で生産された土人形が、かつて、「おひなっこ」、「つつみのおひなっこ」、「堤のお雛っこ」等と称されていたものを「堤人形」として、一般に広く認識されるようになった背景には、芳賀佐五郎らの努力があったものと推認することができる。
イ しかしながら、「堤人形」の語は、前記(1)で示した証拠にあるとおり、遅くとも昭和16年当時(甲第4号証の1)には、仙台の堤町で生産された土人形を指称するものとして使用され、その後も、仙台市や仙台市博物館などが発行する文献や地方自治体などが発行する賞状や文書において、仙台の郷土玩具である土人形の名称を表すものとして、普通に使用されていたことが認められる。そして、一般世人の郷土玩具ないし土人形のもつ素朴な美しさに対する再認識が高まるにつれ、「堤人形」は、本件商標の登録出願時及びその査定時においても、仙台の堤町で生産された土人形を指称するものとして、需要者の間に広く認識されていたものとみるのが相当である。
したがって、「堤人形」の表示は、仙台の堤町で生産された土人形を表す普通名称といわなければならない。
ウ また、「おひなっこ」、「つつみのおひなっこ」、「堤のお雛っこ」等の語は、堤町で生産された土人形を表すものとして、さらに、「堤のおひなっこ屋」、「おひなっこ屋」等の語は、上記土人形を取り扱う店舗を表すものとして、昭和初期ころまで、仙台の堤町周辺では普通に使用されていたことが認められ、特に、宇津井、芳賀の両家のみが上記土人形の製造、販売に携わっていた当時においては、「堤のおひなっこ屋」、「おひなっこ屋」等の語は、両家の代名詞といわれたことが認められるが、「堤のおひなっこ屋」、「おひなっこ屋」等の語が宇津井、芳賀両家の代名詞といわれた事実があるとしても、その当時、該土人形を取り扱う店舗がたまたま2軒だけであったからであり、本来的には、上記のように、堤人形を取り扱う店舗を表示するものとして使用されていたものであり、一般の需要者が該語を「堤人形を取り扱う店舗」として認識していた当時においては、特定人に帰属する語とはいえなかったというべきである。
しかし、「堤のおひなっこ屋」、「おひなっこ屋」及びこれと同義語と認められる「つつみのおひなっこや」の語は、本件商標の登録出願時及び査定時において、堤人形を取り扱う店舗を表すものとして、普通に使用されていたと認めるに足る証拠は見出すことができない。
2 本件商標について
本件商標は、前記のとおり、「堤人形」の文字と「つつみのおひなっこや」の文字を二段に横書きしてなるものであるところ、前記認定のとおり、その構成中の「堤人形」の文字部分は、仙台の堤町で生産された土人形を表す普通名称である(本件商標中の「堤人形」の文字部分が普通名称であることについては、被請求人も自ら主張するところでもある。)。
してみると、本件商標中の「堤人形」の文字部分は、これを本件商標の指定商品中「堤人形」について使用した場合は、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ない部分である。
一方、本件商標中の「つつみのおひなっこや」の文字部分は、前記認定のとおり、昭和初期ころまで、堤人形を取り扱う店舗を表示するものとして使用されていたと認められるところ、本件商標の登録出願時及び査定時において、堤人形を取り扱う店舗を表すものとして、普通に使用されていたと認めるに足る証拠を見出すことができないから、本件商標に接する需要者は、該「つつみのおひなっこや」の文字部分を捉えて、商品の取引に当たる場合も決して少なくないものとみるのが相当である。
そうすると、本件商標は、その構成中の「つつみのおひなっこや」の文字部分に自他商品の識別機能を有するものといわなければならない。そして、上記「つつみのおひなっこや」の文字部分は、同一の書体で一体的に表してなるものであるから、構成全体をもって、いわゆる一種の造語を表したと理解されるものである。
3 本件商標の商標法第4条第1項第8号、同第10号、同第11号、同第15号、同第16号及び同第19号該当性について(なお、請求人は、本件商標について、商標法第8条1項にも該当する旨主張するが、引用商標は、本件商標の登録出願時には、既に登録されていたものであり、法第8条1項についての判断は、法第4条第1項第11号についての判断をもって足りるものと認められるから、特に判断を要しないものと解される。)
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、前記2で認定したとおり、その構成中、自他商品の識別標識としての機能を有するのは、「つつみのおひなっこや」の文字部分であるから、これより「ツツミノオヒナッコヤ」の称呼を生ずるものであって、造語よりなるものである。
一方、引用商標は、「つゝみ」又は「堤」の文字よりなるものであるから、これより「ツツミ」の称呼を生ずるものであって、「堤(土手)」ないし氏を表したものと理解されるというのが相当である。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観において顕著な差異を有するばかりでなく、称呼及び観念においても互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する商標ということはできない。
(2)商標法第4条第1項第8号、同第10号、同第15号及び同第19号について
「つつみのおひなっこや」の文字が、本件商標の登録出願時すでに、請求人の名称であったとか、あるいは著名な略称等を表示するものであって、これが本件商標の査定時まで継続していたという事実を認めるに足る証拠は見出せない。
さらに、本件において、「つつみのおひなっこや」又は「つゝみ」若しくは「堤」の文字よりなる商標が、請求人の業務に係る商品「堤人形」に使用され、本件商標の登録出願時はいうまでもなく、査定時においても、わが国の需要者の間に広く認識されていたという事実を立証する証拠の提出はない(なお、堤人形について、「堤の土人形」と称している証拠も散見できるが、該「堤の土人形」は、「堤町で生産された土人形」なる意味を表すものであって、全体として、堤人形を指称するものと認められるから、引用商標とは言葉の意味において次元の異なるものというべきである。)。
してみると、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、需要者をして、該商品が請求人又はこれと何らかの関係のある者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれのない商標というべきであり、かつ、不正の目的をもって使用するものということもできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第10号、同第15号及び同第19号に該当する商標ということはできない。
(3)商標法第4条第1項第16号について
ところで、本件商標は、その構成中に、仙台の堤町で生産された土人形を指称する「堤人形」の文字を含むものであるところ、本件商標の指定商品中の「土人形」には、郷土玩具として日本各地で生産されている様々な土人形が存在することは、甲第2号証の1(京都の伏見人形、長崎の古賀人形、山形の相良人形、岩手の花巻人形)からも明らかである。のみならず、「堤人形」は、土人形としてわが国においてよく知られているものである。
そうすると、「堤人形」の文字を含む本件商標をその指定商品中、「堤人形」以外の「土人形」、及び「陶器製の人形」について使用するときは、これに接する需要者は、該商品があたかも堤人形であるかのように、商品の品質について誤認を生ずるおそれがあるものというべきである。
この点に関し、被請求人は、「つつみのおひなっこや」の商標を商品「堤人形」について使用しており、商品の品質の誤認を生ずるおそれはないから、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない旨主張するが、商品の品質の誤認のおそれが生ずるか否かは、指定商品との関係から判断されるべきであり、本件商標の指定商品中には、「堤人形」以外の「土人形および陶器製の人形」が含まれることは、前記認定のとおりであるから、被請求人の上記主張は理由がない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する商標といわざるを得ない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第16号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2006-09-27 
結審通知日 2006-10-04 
審決日 2006-10-18 
出願番号 商願2005-91053(T2005-91053) 
審決分類 T 1 11・ 26- Z (Y28)
T 1 11・ 272- Z (Y28)
T 1 11・ 23- Z (Y28)
T 1 11・ 271- Z (Y28)
T 1 11・ 25- Z (Y28)
T 1 11・ 222- Z (Y28)
最終処分 成立 
前審関与審査官 佐藤 達夫 
特許庁審判長 小林 薫
特許庁審判官 寺光 幸子
長澤 祥子
登録日 2005-12-09 
登録番号 商標登録第4914397号(T4914397) 
商標の称呼 ツツミニンギョー、ツツミノオヒナッコヤ、ツツミノオヒナッコ、ツツミ、オヒナッコヤ、オヒナッコ 
代理人 佐藤 興治郎 
代理人 須田 篤 
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