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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y25
管理番号 1148324 
審判番号 無効2005-89117 
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-01-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-09-07 
確定日 2006-11-13 
事件の表示 上記当事者間の登録第4878726号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4878726号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4878726号商標(以下「本件商標」という。)は、平成
17年2月15日に登録出願、「SUZUYA CHINOIS」の欧文字を横書きしてなり、第25類「被服,洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子」を指定商品として同年7月8日に設定登録、現に有効に存続しているものである。

2 請求人の引用商標
(1)引用登録第4252518号商標(以下「引用A商標」という。)は、平成10年2月12日登録出願、「鈴屋」の漢字と「suzuya」の欧文字とを二段に併記してなり、第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として同11年3月19日に設定登録されたものである。
(2)引用登録第4360076号商標(以下「引用B商標」という。)は、平成10年11月24日登録出願、別掲(1)のとおりの構成よりなり、第18類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として同12年2月10日に設定登録されたものである。
(3)引用登録第4317341号商標(以下「引用C商標」という。)は、平成10年9月10日登録出願、「株式会社 鈴屋」の漢字と「SUZUYA CO LTD」の欧文字とを二段に併記してなり、第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として同11年9月24日に設定登録されたものである。
(4)引用登録第1293128号商標は、昭和49年1月16日登録出願、「鈴屋」の漢字を横書きしてなり、第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として同52年8月15日に設定登録されたものである。
(5)引用登録第1728553号商標は、昭和49年12月24日登録出願、別掲(2)のとおりの構成よりなり、第22類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として同59年11月27日に設定登録されたものである。
(6)引用登録第1247031号商標は、昭和49年1月16日登録出願、「鈴屋」の漢字を横書きしてなり、第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として同52年2月7日に設定登録されたものである。
(7)引用登録第1258851号商標は、昭和49年1月16日登録出願、「鈴屋」の漢字を横書きしてなり、第18類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として同52年3月14日に設定登録されたものである。
(8)引用登録第4301647号商標は、平成10年2月12日登録出願、別掲(3)のとおりの構成よりなり、第3類、第14類、第16類、第18類、第21類及び第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として同11年8月6日に設定登録されたものである。
(9)引用登録第3141647号商標は、平成4年4月20日登録出願、別掲(4)のとおりの構成よりなり、第37類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として同8年4月30日に設定登録されたものである。
(10)引用登録第3102824号商標は、平成4年4月20日登録出願、別掲(4)のとおりの構成よりなり、第40類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として同7年12月26日に設定登録されたものである。
(11)引用登録第3096565号商標は、平成4年4月20日登録出願、別掲(4)のとおりの構成よりなり、第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として同7年11月30日に設定登録されたものである。
(12)引用登録第3310953号商標は、平成4年4月20日登録出願、別掲(4)のとおりの構成よりなり、第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として同9年5月23日に設定登録されたものである。

3 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第164号証を提出した。
(1)請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第8号、同第10号、同第11号、同第15号及び同第19号の規定により、無効にすべきものである。
(ア)請求人及び引用各商標の著名性
請求人は、明治42年6月に鈴木房吉により、東京・上野で肌着の仕立て直しや雑貨販売の鈴木屋として創業された。昭和26年3月30日に「株式会社鈴屋」として法人化され、その後、業態を女性用被服、衣料用小物類などのデザイン・企画並びにこれらの商品の製造販売を業とするアパレルメーカーに転換し、商号の一部でもある「鈴屋」及び「SUZUYA」ブランドは、請求人の大手婦人服専門店を表示するものとして、また請求人の業務に係る商品を表示するものとして、日本国内において確固たる地位を築き上げてきた。また日本国内ばかりでなく、昭和46年5月のパリ・シャンゼリゼ店オープンの後、昭和48年のサンジェルマン店、香港店等のオープンにより、海外においても広く知られ、その商品には高い信用が形成されているものである。
昭和51年には、請求人は東京・青山に複数店舗からなるファッションビル「青山ベルコモンズ」を開店(現在は第三者により所有されている。)し、婦人服専門店として、ファッション業界をリードするポジションを維持し続けてきた(甲第15号証ないし甲第65号証)。そして、請求人の動向や請求人の当時代表取締役社長(現会長)であった鈴木義雄氏のコメントは、被服業界において常に注目されるものであり、日本繊維新聞、センイジャアナル、繊研新聞等の業界紙及び一般紙には、「鈴屋」の名称は絶え間なく掲載されていた(甲第30号証ないし甲第65号証)。
最盛期である平成5年の請求人の関連会社(「鈴屋」グループ)の年間売上高は約692億円、平成6年度は約649億円、平成7年度は約507億円である。また、請求人は繊研新聞において毎年公表される衣料専門店ランキング上、第3位の地位を度々獲得する程の婦人服専門店のランキング常連企業であり(甲第15号証ないし甲第17号証)、長年に亘り婦人服専門店業界をリードし続け、請求人、鈴丹(愛知県名古屋市)及び三愛(東京都)の三社を「名門3S」又は「御三家」とする表現が存在するほどであった(甲第65号証及び甲第67号証)。その後、個人消費の低迷と海外製品の輸入増加などによる価格破壊現象と並行する形で、請求人の売上は減少傾向をたどることとなり、業績の悪化により、請求人は平成9年2月和議申請を行った。
婦人服専門店として需要者及び取引者に著名であった請求人が、和議申請を行ったという事実は広く報じられ、また、申請前においても、再建策について新聞記事に取り上げられるほど、請求人は注目を浴び続けた(甲第63号証ないし甲第67号証)。
そして、請求人が和議申請を行った平成9年には、量販店のヤオハンジャパン、婦人服のオオコシ等、大型量販店及び婦人服関連企業の倒産が相次いだことから、平成9年当時の婦人服の企業の業績悪化が相次いだという景気動向について報じられるたびに、その例として、婦人服専門店の老舗として著名であった請求人の和議申請の話題が取り上げられ、「鈴屋」の名前は引き続き注目された。即ち、請求人は、その業績が好調であっても、悪化した場合であっても、常に婦人服業界の老舗として注目を浴びる存在であるといえ、その長い歴史から蓄積された商品に対する信用や、「鈴屋」及び「SUZUYA」ブランドの著名性は顕著なものである。
また、平成9年以降は、老舗大手婦人服専門店の企業再編事例として注目を浴びることとなるが、平成9年以降も繊研新聞の全国専門店ランキングに請求人の名前は掲載され続け(甲第19号証ないし甲第26号証)、営業黒字に転換したことも新聞記事となった(甲第92号証)。そして請求人の継続した企業努力の結果、現在、請求人は日本全国に73店舗の店舗数を有し、売上高が約110億円(平成15年度、甲第24号証)と業績回復の路を辿るものである。すなわち、請求人の「鈴屋」及び「SUZUYA」ブランドは依然、被服業界においてその著名性を失ってはおらず、その商品にも高い信用が形成され続けているものである。
これらの事実は、本件商標出願前に刊行された各種刊行物により、請求人の動向や請求人に関する記事が数多く紹介されていることからも明らかである(甲第15号証ないし甲第94号証)。
以上のことから、婦人服業界においては「鈴屋」若しくは「SUZUYA」関連の商標といえば、請求人を出所とする商品又は役務についての商標であると、需要者及び取引者において広く認識されていたものと言え、本件商標の出願当時の2005(平成17)年においても、すでに請求人が自らのブランドとして婦人服等のファッションに関係する商品に使用する引用各商標「鈴屋」及び「SUZUYA」は、請求人の商標として極めて広く知られていた商標であるというべきである。
(イ)本件商標と引用各商標の類否について
本件商標は、「SUZUYA CHINOIS」というゴシック体の欧文字により構成される外観を持ち、婦人服専門店として著名な請求人の引用各商標「SUZUYA」の文字部分をその構成に含むものである。
また、本件商標を構成する文字のうち「CHINOIS」は、「中国の」という意味を有するフランス語であって、近年の日本においては中華料理について「ヌーベルシノワ」、若しくは中華料理店であることを認識させるよう、店名に「シノワ」という言葉をいれたものが見られる。そして、特に、本件商標の指定商品の分野であるファッション業界においては「シノワ調」「シノワテイスト」などという言葉で、商品のデザインが中国調であることを示すものとして使用されている。すなわち、「CHINOIS」は、被服等を指定商品とする分野においては商品のデザインが中国調であることを示す品質表示にすぎない。
よって、本件商標の指定商品の関連分野においては、「CHINOIS」以外の部分が要部となっているものといわざるを得ないから、本件商標の要部は「SUZUYA」であるというべきである。
そうすると、本件商標の「SUZUYA」部分からは、婦人服業界において著名な請求人若しくは引用各商標を想起させる観念が生ずることが必定であるから、本件商標はその構成中の「SUZUYA」の文字部分より「スズヤ」の称呼をも生じるものである。
一方、引用各商標は、その構成中の「鈴屋」、「SUZUYA」、「suzuya」等の文字部分より「スズヤ」の称呼を生じること明らかである。
してみれば、本件商標と引用各商標は、「スズヤ」の称呼及び「鈴屋」の観念及び外観において類似する。
よって、本件商標が商標権者により、その指定商品に使用された場合、その商品が請求人若しくは請求人と関係のある者の業務に係る商品であるかの如くその出所について混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
(ウ)本件商標は、婦人服専門店の老舗として著名な「株式会社鈴屋」の著名な略称である「鈴屋」の欧文字表記「SUZUYA」を含むものである。
そして、請求人は、本件商標の出願について承諾を得ていない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものである。
(エ)本件商標と引用A商標ないし引用C商標は、上記したとおり「スズヤ」の称呼、「鈴屋」の観念及び外観において類似する商標である。
また、本件商標の指定商品と引用A商標ないし引用C商標の指定商品は、同一又は類似するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(オ)本件商標は、請求人が使用する著名な商標「鈴屋」若しくは「SUZUYA」と類似する商標であり、また、同ー又は類似の指定商品を含むものであるから、本件商標がその指定商品に使用された場合、その商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。
(カ)本件商標は、香港における請求人の子会社であったSuzuya HKが、請求人と組織的及び経済的に何ら関係がなくなったにも拘らず、Directorを共通にするニューベルコモンズ(香港)カンパニーリミテッドの名義で出願、登録されたものである。
したがって、係る事情のもとで出願、登録された本件商標は、請求人の「鈴屋」及び「SUZUYA」の持つ著名性にフリーライドするものである。 よって、本件商標は、公正な取引秩序に反し、社会一般道徳に反する商標というべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。
(キ)本件商標は、請求人の取り扱い業務に係る商品を表示するものとして著名な引用各商標に、商品が中国調であることを示す「CHINOIS」の文字を結合させたにすぎず、著名な請求人の「鈴屋」及び「SUZUYA」を容易に想起させる類似の商標であるから、著名な商標「鈴屋」に化体した業務上の信用にフリーライドするという不正の目的をもって使用するものである
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。
(2)答弁に対する弁駁
(ア)「婦人服大手の鈴屋」を表すものとして広く知られた請求人の引用各商標の要部である「SUZUYA」の文字とともに本件商標が使用されることを考えると、恰も、被服業界において周知・著名な請求人鈴屋の中国調の商品といった観念が想起されることは必定であるといわざるを得ない。
また、被請求人は、請求人と資本関係を有さず、商品を共有している事実がないにもかかわらず、自己のホームページにおいて、請求人である株式会社鈴屋の歴史を紹介し、あたかも請求人と繋がりがあるかのような表示を行っている(甲第151号証)。
そして、被請求人も認めているように、もともと鈴屋国際有限公司は、請求人である株式会社鈴屋の香港法人として設立されたものである。したがって、現在、請求人と鈴屋国際有限公司が資本関係等はなくとも、被請求人のホームページ上の記載や、過去の経緯、及び被請求人が香港法人であることを鑑みると、やはり本件商標の「CHINOIS」部分は、「中国風の」という印象をもたらし、本件商標の要部は「SUZUYA」であるといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、あたかも請求人の業務に係る商品であるかの印象を需要者等に与え、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
(イ)請求人提出に係る記事からは、請求人がアパレルの一企業として、又は婦人服専門店として、取引者及び需要者に広く知れ渡っていることが看取できることは、否定し得ない事実である。
被請求人は、請求人が引用各商標以外の標章を用いて商品を販売している事実をもって、引用各商標の著名性を否定しているが、係る使用は普通に行われている使用である。
(ウ)被請求人は、請求人と経済的にも組織的にも何らかかわりのない第三者が「鈴屋」、「すずや」又は「スズヤ」を含む商号を採用しているとして乙第4号証ないし乙第9号証を提出しているが、これらは小規模な町の衣料品店にすぎないものであり、これらの証拠資料によって、引用各商標の著名性が損なわれるものではない。
さらに、請求人は、請求人の商標が周知・著名なものであることを立証するため、今般、アンケート方式による市場調査を行った(甲第155号証)。
調査を担当した株式会社インテージ・インタラクティブの作成の報告書によれば、請求人の商標を知っていると回答した者が、70.7%おり、そのうち、「具体的製品名」に被服と回答したものが57.0%あった。かかる認知度は、同じアンケートで調査した海外著名ブランドである「フォートナム・メイソン」や「フィスラー」の認知度を大きく上回っており、請求人の出所表示としての「SUZUYAブランド」の著名性は明らかである。
さらに、請求人は、同業者による陳述書を提出する(甲第156号証)。

4 被請求人の答弁の要点
(1)商標法第4条第1項第15号について
(ア)請求人は、本件商標が請求人により使用される商標として著名な引用各商標「SUZUYA」等に、「中国の」という意味を有する仏語「CHINOIS」という語を結合したにすぎないものと認められるから、本件商標の要部は「SUZUYA」であり、本件商標がその指定商品に使用されるときには、これに接する取引者・需要者は、恰も請求人又はその関連会社の取り扱い業務に係る商品であるかの如く認識し、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあると主張する。
その根拠として、請求書において、本件商標と引用各商標との類似性の程度、引用各商標の周知著名性の程度、本件商標の指定商品と請求人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性、その他取引の実情について種々述べているが、何れの主張も認めることができない。
(イ)本件商標を構成する文字部分のうち「CHINOIS」の仏語については、「中国の」といった意味を有する語である。しかしながら、甲第141号証に示されるように、「シノワズリ」「シノワテイスト」といった日本語表記がファッション関係のWebページに掲載されているからといって、何ら商標法上における自他商品識別機能に影響するものではない。
その証拠として、「Chic」、「CHIC/チック」と「CHIC CHINOIS」の文字よりなり、指定商品が同一又は類似する3件の商標の併存登録例を提出する(乙第1号証ないし乙第3号証。)。
また、本件商標は、その審査経緯において、請求人が類似すると主張する引用各商標である「鈴屋」又は「SUZUYA」が存在していたにも関わらず、何ら拒絶理由を送達されることなく登録となっている。つまり、本件商標を構成する「SUZUYA CHINOIS」は、「SUZUYA」或いは「CHINOIS」の夫々の自他商品識別力云々の問題ではなく、一連不可分に構成される商標「SUZUYA CHINOIS」としてはじめて自他商品識別力を発揮するものであると認められたものであり、何れか一方を切り離して、個別的に自他商品識別力について議論するものでないことは明らかである。
そこで、本件商標と引用各商標との類比を検討するに、本件商標からはその構成文字「SUZUYA CHINOIS」から「スズヤシノア」、「スズヤシノワ」又は「スズヤチノイス」の称呼が生じ、引用各商標からは「スズヤ」、「スズヤカブシキカイシャ」、「スズヤ シーオーエルティーディー」の称呼が生じる。また、その外観においては比較するまでもなく一見して相違することが明らかであり、さらに、本件商標からは「中国調のスズヤ」又は「中国風のスズヤ」といった特定の観念が生じるのに対し、引用各商標からは「鈴屋」又は「株式会社鈴屋」といった異なる観念が生じるものと認められる。
したがって、本件商標と引用各商標とは、互いに称呼、外観、観念の何れにおいても相違することが明白であり、時と処を異にする離隔的観察を試みたとしても、両者は彼此相紛らわしく看取されることはなく、互いに非類似の商標である。
よって、本件商標と引用各商標とが互いに類似するという請求人の主張には妥当性がなく、これを認めることができない。
(ウ)請求人は、引用各商標の著名性の証拠として「繊研新聞」に掲載されている全国婦人服専門店ランキング(甲第15号証ないし甲第26号証)、「日経流通新聞」に掲載されている売上げランキング(甲第27号証ないし甲第29号証)、「日本経済新聞」に掲載されている「これからの専門店経営」と題されたコラム(甲第30号証ないし甲第34号証)、「日本繊維新聞」をはじめとする各種新聞紙面又は雑誌等の経済記事(甲第35号証ないし甲第94号証)を引用している。
しかしながら、甲第15号証ないし甲第94号証においては、「株式会社鈴屋」、その略称としての「鈴屋」又はその英文字表記である「SUZUYA」が商号又は商号の略称として使用されていることを証明するにすぎず、引用各商標が本件商標の指定商品の分野における商品の商標として使用されているという事実並びにその商標の著名性を何ら立証するものでなく、単に請求人の商号である「株式会社鈴屋」が取り上げられていることを示すだけである。つまり、甲第15号証ないし甲第94号証に基づいて、商標としての「株式会社鈴屋」、「鈴屋」又は「SUZUYA」の著名性を立証することはできず、単に商号「株式会社鈴屋」又はその略称としての「鈴屋」或いは「SUZUYA」が新聞や雑誌コラム等に掲載されたという事実を述べるに留まるものである。
また、一部において重複掲載されている商号を含むものであるが、乙第4号証の「レディスファッション店名鑑2004〔東日本編〕(ボイス情報株式会社)」には、法人であることを示す「株式会社」又は「有限会社」の表記以外に、「鈴屋」、「スズヤ」又は「すずや」を含む請求人以外の商号が6件掲載され、同様に乙第5号証の「レディスファッション店名鑑2004〔西日本編〕(ボイス情報株式会社)」には4件、乙第6号証の「全国ブティック名鑑2005(ボイス情報株式会社)」には4件、乙第7号証の「メンズファッション店名鑑2005【西日本編】(ボイス情報株式会社)」には1件、乙第8号証の「西日本レディス専門店(株式会社日本繊維経済研究所)」には5件、乙第9号証の 「日本ファッション小売店名簿(株式会社アパレルファッション)」には14件掲載されている。これらに掲載されている商標は、何れも請求人である「株式会社鈴屋」とは経済的にも組織的にも何ら関わりのないものである。
してみると、経済的にも組織的にも何ら関わりのない「鈴屋」、「スズヤ」又は「すずや」を含む請求人以外の商号が日本各地に多数存在することに鑑みれば、必ずしも引用各商標である「鈴屋」若しくは「SUZUYA」が需要者及び取引者において広く認識された商標であるとは言えず、また、「鈴屋」又は「SUZUYA」が一概に被服業界において請求人を指し示すものであるとはいえない。
(エ)上記したとおり、本件商標である「SUZUYA CHINOIS」は、一連不可分にして自他商品識別機能を発揮する商標であり、引用各商標とは称呼、外観、観念の何れにおいても明白に相違するもので、これに接する取引者、需要者が普通に払われる注意力をもってすれば両者は十分に識別可能な互いに非類似の商標であり、かつ、引用各商標は著名商標でもないため、本件商標をその指定商品に使用しても商品の出所について混同を生ずるおそれはない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。
(2)商標法第4条第1項第8号について
そもそも、商標法第4条第1項第8号における「著名な略称」とは、社団法人発明協会発行の「商標審査基準の解説(第三版増補」の第150頁中段以降には、特定の商品の取引者、需要者に広く知られているかどうかではなく、その略称が特定人を表示するものとして世間一般に広く知られているかどうかであることが記載されている(乙第13号証)。
してみると、請求人の主張する著名な略称とは、甲第15号証ないし甲第26号証に基づいて被服業界における請求人の商号である「株式会社鈴屋」及びその略称である「鈴屋」又は「SUZUYA」についての著名性であり、いわゆる特定の取引者間における著名性について言及するものであって、商標法第4条第1項第8号にいうところの世間一般に広く知られている「著名な略称」とはいい得ないものである。
よって、請求人の商号である「株式会社鈴屋」の略称としての「鈴屋」又はその欧文字表記である「SUZUYA」については、商標法4条第1項第8号に規定される「著名な略称」には該当しない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものではない。
(3)商標法第4条第1項第11号について
上記したとおり、本件商標と引用A商標ないし引用C商標は、その称呼、観念及び外観のいずれからしても十分に区別し得る商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。
(4)商標法第4条第1項第10号について
請求人は、本件商標が請求人の使用する著名な商標「SUZUYA」及び「鈴屋」等と類似する商標であると述べている。
しかしながら、本件商標と引用A商標ないし引用C商標が、その称呼、観念及び外観のいずれからしても十分に区別し得る商標であることは上記したとおりである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものではない。
(5)商標法第4条第1項第7号について
鈴屋国際有限公司は、もともと、昭和48年1月、株式会社鈴屋の香港現地法人として成立されたものであるが、現在の鈴屋国際有限公司が株式会社鈴屋と資本関係を有さないことは事実である。請求人である株式会社鈴屋が平成9年2月の和議申請したのと関連して、鈴屋国際有限公司の株主である被請求人ニューベルコモンズ(香港)株式会社(代表者:岡田康司)が、株式会社鈴屋から鈴屋関連商標のアジア地域における一切の権利を譲り受けたためである。被請求人ニューベルコモンズ(香港)株式会社と資本関係にある鈴屋国際有限公司が、アジア地域において「鈴屋国際有限公司」や「SUZUYA INTERNATIONAL」の商号および商標を使用することは正当な行為である。
鈴屋国際有限公司は、昭和48年の設立以来、アジア地域での 「SUZUYA INTERNATIONAL」の商標を継続使用し、特に、平成9年2月に被請求人に譲渡された以降も、そのブランドイメージを維持している。被請求人は、乙第14号証に示すように、香港(直営店35店舗)を拠点とし、マカオ(直営店6店舗)、中国(直営店10店舗、フランチャイズ店15店舗)、シンガポール(直営店2店舗)、マレーシア(直営店5店舗)、タイ(直営店4店舗、フランチャイズ店1店舗)、ベトナム(直営店1店舗、フランチャイズ店1店舗)、インドネシア(フランチャイズ店1店舗)というように、東南アジア地域において精力的に営業活動を行っているものである。また、2004年9月から2005年8月までの売上高も香港の直営店だけで164,470,053.8HKドル(日本円で約25億円)、他の直営店及びフランチャイズ店の売上高の合計が203,369,035.99HKドル(日本円で約31億円)に達するものである。被請求人は過去に請求人との間で特別な関係にあった事実はあるものの、乙第11号証及び乙第12号証をもって示したように、請求人は実際に商標「鈴屋」又は「SUZUYA」を商品に使用しているものではなく、既述したように請求人による引用各商標が著名性を有するに至ったとする何らの根拠もないものである。
よって、本件商標が請求人の「SUZUYA」及び「鈴屋」の持つ著名性にフリーライドすべくなされた出願であり、請求人の商標「鈴屋」及び「SUZUYA」の自他商品識別機能を著しく希釈化させるもので、本件商標の出願の経緯が著しく社会的妥当性を欠くものであるという請求人の主張は、これを認めることができない。
したがって、本件商標は、公正な取引秩序及び社会一般道徳に反するものではなく、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものではない。
(6)商標法第4条第1項第19号について
請求人が提出した証拠資料の甲第15号証ないし甲第94号証には、請求人の商号である「株式会社鈴屋」、その略称としての「鈴屋」又はその英文字表記である「SUZUYA」が商号又は商号の略称として使用されていることを示すものであり、引用各商標が本件商標の指定商品の分野における商標として使用されているという事実並びにその商標の著名性を何ら立証するものでなく、引用各商標である「鈴屋」若しくは「SUZUYA」が需要者及び取引者において広く認識された商標であるとはいえない。
また、本件商標と引用各商標が非類似の商標であること上記したとおりである。
よって、引用各商標が著名であるとはいえず、また、本件商標と引用各商標とは互いに非類似のものであるから、本件商標が請求人の商標である「鈴屋」及び「SUZUYA」に化体した業務上の信用にフリーライドするという不正な目的をもって使用するものではない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものではない。

5 当審の判断
(1)請求人の提出に係る甲第14号証(昭和50年6月10日の「鈴屋65年史」)及び甲第84号証(平成10年7月3日発行の流通サービス新聞)によれば、請求人「株式会社鈴屋」は、明治42年6月に東京・上野で肌着の仕立て直しや雑貨販売の鈴木屋として創業された。昭和26年3月30日に「株式会社鈴屋」として法人化され、その後、業態を女性用被服、衣料用小物類などのデザイン・企画並びにこれらの商品の製造販売を業とするアパレルメーカーに転換したものである。
同じく、前出甲第14号証によれば、請求人は昭和46年にフランスに進出し、「スズヤ インターナショナル」を設立、昭和48年1月には、香港現地法人として「鈴屋国際有限公司」を設立した。
被請求人「ニューベルコモンズ(香港)カンパニーリミテッド」が「鈴屋国際有限公司」の株主であるという事実は被請求人の答弁書においても述べられている。
同じく、甲第15号証ないし甲第17号証(平成6年?平成8年発行の繊研新聞)によれば、「株式会社鈴屋」は、婦人服専門店ランキングの第3位にランクされている事実が認められる。
同じく、甲第19号証ないし甲第23号証(平成10年?平成17年発行の繊研新聞)によれば、「株式会社鈴屋」は、レディス部門の売上高ランキングにおいて第20位前後にランクされている事実が認められる。
同じく、甲第27号証ないし甲第29号証(平成6年?平成8年発行の日経流通新聞)においても、「株式会社鈴屋」は、婦人服専門店ランキングの上位にランクされている事実が認められる。
同じく、甲第30号証ないし甲第79号証(昭和50年11月17日発行の日本経済新聞?平成11年3月3日発行の日本繊維新聞等の各種新聞記事等)には、「株式会社鈴屋」の最盛期から和議申請に至るまでの記事が多数掲載されている。その中の記事(甲第65号証)の一つに、婦人服専門店の「鈴屋」(請求人)、「鈴丹」(愛知県名古屋市)及び「三愛」(東京都)の三社を「名門3S」又は「御三家」と表現していた事実が挙げられている。
同じく、甲第80号証ないし甲第91号証(昭和50年11月17日発行の日本経済新聞?1997年「平成9年」12月27日発行の日経流通新聞等の各種新聞記事等)には、「株式会社鈴屋」の和議申請後から今日に至るまでの記事が掲載されている。
同じく、甲第92号証(1998年「平成10年」年11月12日発行の日経流通新聞)には、「鈴屋」が和議決定後、初の中間決算で営業黒字に転換したとの記事がある。
(2)以上を含め、請求人提出に係る甲第14号証ないし甲第150号証の甲各号証を勘案すれば、請求人である「株式会社鈴屋」の使用する「鈴屋」及び「SUZUYA」の商標は、その使用する商品「婦人服」に永年使用され、取引者、需要者の間に広く認識されている商標である事実を認め得るものである。
被請求人は、「鈴屋」及び「SUZUYA」の商標を使用する者は、他にも多数おり、また、請求人提出に係る甲各号証によっては、当該商標の著名性を十分に証明していないと主張しているが、上記のとおり、少なくともファション関連商品に係る商品「婦人服」の分野においては、請求人の使用する商標である「鈴屋」及び「SUZUYA」は、本件商標の登録出願時ないし査定時には、取引者、需要者の間に広く認識され、著名性を十分に有していたものというべきであり、その状態は現在に至るまで継続しているものとみるのが相当である。
(3)そこで本件商標をみると、本件商標を構成する「SUZUYA CHINOIS」の文字中の「SUZUYA」の文字部分は、「鈴屋」の欧文字表記であると容易に認識されるものであり、また、当該「SUZUYA」の文字部分が、請求人の著名商標であることは上記認定のとおりである。
一方、構成中の「CHINOIS」の文字部分は、「中国(人、語)の」を意味するフランス語であるところ、ファッション業界においてフランス語はよく使用される外国語であり、「中国風」であることを表す語として、少なからず取引者、需要者に認識されていると判断されるから、当該文字は、商品の品質を表し、自他商品の識別力が弱いものというべきである。
そうすると、当該文字に接する取引者、需要者が、これを常に一体不可分の商標として認識するとは到底いえないところであり、他にこれを一体のものとして把握しなければならない特段の事情は見あたらない。
そうとすれば、本件商標「SUZUYA CHINOIS」の文字に接する取引者、需要者は、前半部にあって、かつ、請求人の使用する商標として著名な「SUZUYA」の文字部分に着目し、これより生ずる称呼、観念をもって取引に資する場合が多いものと判断するのが相当である。
加えて、本件商標はその指定商品中に、「被服,洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着……帽子」等、請求人の業務に係る商品「婦人服」を含むファッション関連商品を多く有するものである。
してみれば、本件商標はその商標中に「婦人服」メーカーとして著名な「株式会社鈴屋」が使用する著名な商標「SUZUYA」の文字を含むものであるというべきである。
(4)以上のとおり、被請求人が本件商標をその指定商品について使用するときは、これに接する取引者、需要者は、これより容易に「鈴屋」及び「SUZUYA」を連想、想起し、あたかも該商品が請求人又は請求人と組織的若しくは経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)登録第4360076号商標



(2)登録第1728553号商標



(3)登録第4301647号商標



(4)登録第3141647号商標、登録第3102824号商標
登録第3096565号商標、登録第3310953号商標



審理終結日 2006-06-13 
結審通知日 2006-06-20 
審決日 2006-07-04 
出願番号 商願2005-11941(T2005-11941) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (Y25)
最終処分 成立 
前審関与審査官 有水 玲子 
特許庁審判長 柴田 昭夫
特許庁審判官 小川 有三
岩崎 良子
登録日 2005-07-08 
登録番号 商標登録第4878726号(T4878726) 
商標の称呼 スズヤシノワ、スズヤ、スズヤチノイス、シノワ、チノイス 
代理人 中村 勝彦 
代理人 石田 良子 
代理人 田中 克郎 
代理人 佐藤 真太郎 
代理人 中嶋 伸介 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 奥山 倫行 
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