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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) Z30
管理番号 1146913 
異議申立番号 異議2004-90771 
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2006-12-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2004-12-14 
確定日 2006-11-13 
異議申立件数
事件の表示 登録第4805177号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4805177号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第4805177号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成12年8月4日に登録出願、第30類「菓子及びパン」を指定商品として、同16年9月24日に設定登録されたものである。

第2 登録異議申立ての理由(要旨)
登録異議申立人 株式会社銀座鈴屋(以下、申立番号01及び02併せて「申立人」という。)は、本件商標の登録は取り消されるべきであるとして、その理由を次のように述べ、証拠方法として、申立番号01には甲第1号証ないし甲第112号証を、申立番号02には甲第1号証ないし甲第83号証を提出している。
1.申立番号01の理由(本件商標に係る指定商品中「和菓子」についての申立ての理由)
(1)本件商標は、自己の業務に係る商品又は役務について使用する目的での適法な商標登録出願ではないから、商標法第3条第1項柱書きの規定により、商標登録を受けることができる商標に該当しない。
(2)本件商標は、商標登録制度を悪用した不正競争目的の出願で、公正な取引秩序及び社会一般道徳に反して登録されたものであるから、同法第4条第1項第7号及び同第19号に該当する。
(3)本件商標は、申立人の著名な略称を含む商標で、その出願、登録にあたり、申立人の承諾も得ていないから、同法第4条第1項第8号に該当する。
(4)本件商標は、需要者の間に広く認識されている商標であり、申立人の業務に係る商品と同じ商品を指定商品とするものであるから、同法第4条第1項第10号に該当する。
(5)本件商標は、申立人所有の登録第3160172号商標と同一の商標であって、この商標登録に係る指定役務と類似する商品を指定商品とするものであるから、同法第4条第1項第11号及び同法第8条第1項に該当する。
(6)本件商標は、申立人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標であるから、同法第4条第1項第15号に該当する。
2.申立番号02の理由(本件商標に係る指定商品中「洋菓子,パン」についての申立ての理由)
(1)本件商標は、自己の業務に係る商品又は役務について使用する目的での適法な商標登録出願ではないから、商標法第3条第1項柱書きの規定により、商標登録を受けることができる商標に該当しない。
(2)本件商標は、商標登録制度を悪用した不正競争目的の出願で、公正な取引秩序及び社会一般道徳に反して登録されたものであるから、同法第4条第1項第7号及び同第19号に該当する。
(3)本件商標は、申立人の著名な略称を含む商標で、その出願、登録にあたり、申立人の承諾も得ていないから、同法第4条第1項第8号に該当する。
(4)本件商標は、需要者の間に広く認識されている商標であり、申立人の業務に係る商品と同じ商品を指定商品とするものであるから、同法第4条第1項第10号に該当する。
(5)本件商標は、申立人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標であるから、同法第4条第1項第15号に該当する。

第3 本件商標に対する取消理由
当審において、平成17年11月9日付けで商標権者に対し通知した取消理由は、次のとおりである。
申立人の引用する商標(以下「引用商標」という。)は、別掲(2)のとおりの構成よりなるものである。
しかして、申立人の提出に係る甲第1号証の会社沿革、甲第3号証ないし甲第8号証の「甘納豆缶詰しおり」の印刷依頼書(昭和44年3月10日発注)、「銀座鈴屋甘納豆本舗創業史」(1977年12月1日発行)等、甲第77号証及び甲第78号証の価格表(昭和56年3月20日改訂、昭和59年12月1日改訂)、その他の甲各号証及び申立の趣旨を総合勘案すれば、引用商標は、本件商標の登録出願時には、甘納豆をはじめとする和菓子を表すものとして、本件商標の指定商品の分野において相当程度知られていたものと認められる。
また、甲第82号証の平成12年7月27日付け履歴事項全部証明書によれば、商標権者は、申立人の監査役として名を連ねていたが、平成12年3月28日をもって辞任している事実が認められる。
そして、商標権者は、前記事実の僅か半年後の平成12年8月4日に本件商標の登録出願を行っていることから、商標権者は、その登録出願時に申立人が引用商標を使用していた事実について知らなかったものとは認められない。
そうすると、本件商標は、特徴のある引用商標と色彩を異にするのみでほぼ同一の構成よりなるものと認められるものであり、本件商標の指定商品は、引用商標の使用に係る商品とは同一又は類似のものであるから、商標権者が本件商標をその指定商品について使用するときは、不正の意図をもって使用するものとみるのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。

第4 商標権者の意見
上記第3の取消理由に対して、商標権者は、次のように意見を述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出している。
1.引用商標の周知、著名性の有無について
取消理由通知は、客観的に周知、著名性が立証されていないものに基づいて、引用商標が周知、著名であると判断されている。
申立人が提出している証拠方法はいずれも客観的な判断材料となり得るものではない。印刷依頼書、創業史等の自叙伝、価格表等はいずれも特定の商業を営んでいる者であれば独自で容易に作成し取得しうるものであり客観性に欠けるものだからである。仮に、引用商標が各種メディア媒体に複数回特集され記事として登場し、また、各種証明が証拠方法として提出されているのであれば格別、このような証拠方法のみをもって引用商標の周知、著名性を認定するのは不当であると言わざるを得ない。このことは甲各号証及び異議申立の趣旨に鑑みた場合であっても同様である。
なお、申立人は、異議申立書の理由中において、岸朝子氏によるガイドブックに掲載されていることを例に挙げ、本件商標は周知、著名性を有すると述べているが、販売地域、販売部数、売上高等が不明である私人によるガイドブックに掲載されたことのみをもってして如何にして周知、著名性を有すると言えるのか、その理由は明確ではなく極めて根拠に乏しいものと言わざるをえない。
このように、客観的に周知、著名性が立証されていないものに基づいて、引用商標が周知、著名であると判断している上記の認定には、到底承服することができない。
また、特許電子図書館中の「日本国周知・著名商標検索」及び「日本有名商標集」を調査したところ、いずれからも引用商標は検出されなかった。このことは、引用商標が周知、著名商標として認知されていないことを証明するものである。
本件商標の出願経過において、2度にわたって引用商標の周知、著名性が否定されているにもかかわらず、引用商標が、現段階で突然、周知、著名であると判断されている。
本件商標は、出願段階において、第1回目の拒絶理由通知は商標法第4条第1項第15号に該当する旨、すなわち、和菓子、日本茶の提供について「鈴屋」の文字が著名性を有する旨の認定がされている。しかし、第2回目の拒絶理由通知に基づき、商標法第4条第1項第11号に該当するとして拒絶査定がなされており、商標法第4条第1項第15号に係る拒絶理由は拒絶査定の理由とはなっていない。そして、審判段階において、申立人から刊行物提出書が提出され、その提出理由中において「本願商標の構成からなる商標」が「周知性を備え」ていることを記述し、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当する旨述べている。しかし、本件商標を登録すべき旨の審決がされている。
この一連の出願経過が意味することは、平成14年1月4日の査定時及び平成16年8月24日の審決時の両時点において、引用商標の周知、著名性は否定されたという事実である。
本件商標の出願時である平成12年8月4日以降、2度にわたって引用商標の周知、著名性が否定されているにもかかわらず、取消理由通知では引用商標の周知、著名性を是認する認定がなされていることになるが、このことは、商標法第4条3項の規定の存在からも到底許されるべきことではなく極めて遺憾であるものと言わざるを得ない。換言すれば、少なくとも平成16年8月24日の時点では、周知、著名でなかった引用商標が、取消理由通知が発送される時点では周知、著名性を獲得していることになる。たった1年弱の期間で引用商標は周知、著名性を獲得したことを意味する。それとも、突然に引用商標が周知、著名性を確立した何らかの理由が存在するのであろうか。そうでなければ、取消理由通知の判断は、まさしく、法的安定性を欠くものと言わざるを得ない。
したがって、本件商標の商標登録出願時である平成12年8月4日及び同じく設定登録時である平成16年8月24日において、引用商標が周知、著名性を獲得しているものではなく、この観点からも、本件商標について商標法第4条第1項第19号が適用されるべきではない。
2.不正の目的の有無について
商標権者は、その登録出願時に申立人が引用商標を使用していた事実について知っていたが、商標権者が本件商標をその指定商品について使用しても不正の意図をもって使用するものではない。したがって、商標権者の本件商標の使用において不正の目的はない。
取消理由通知では、商標権者が、監査役を辞任した事実及び本件商標の商標登録出願を行っている事実とから、不正の目的があったものと認定している。
しかしながら、申立人が申立の理由中で述べている事実は、事実の一片を断片的に論じているにすぎず、申立人が述べている事実のみをもって、商標権者に不正の目的があったものと認めることは妥当ではない。
申立人は、「株式会社銀座鈴屋」は創始者小木曽美好によって現在の「株式会社銀座鈴屋」の母体が設立され、昭和62年9月に社名を現在の名称に変更したことを述べている。そして、商標権者が、平成12年3月28日をもって申立人会社の監査役を辞任し、以後、商標権者が申立人会社の業務に関わることはない旨述べている。これらのこと自体は、まさしく事実であり商標権者においてこれを争うものではない。
しかしながら、これらの事実に隠された真実があることを見落とすべきではない。
まず、申立人が提出した甲第82号証は、申立人会社の会社登記簿謄本の写しであり、その「役員に関する記載」の欄からも明らかなように、申立人会社は同族の会社であることが分かる。
平成12年3月16日に死亡した「小木曽美好」と商標権者である「小木曽清亀」とは婚姻関係にあり、「小木曽洋子」は「小木曽美好」と「小木曽清亀」の長女であり、「小木曽正明」は昭和40年5月11日に「小木曽洋子」の籍に入り、昭和45年11月6日に「小木曽美好」と「小木曽清亀」の養子として縁組を行ったことがわかる。
異議申立書の記載、甲第82号証及び乙第1号証並びに乙第2号証から明らかなのは、昭和26年から平成12年3月16日までは「小木曽美好」が申立人会社の代表者であったこと、その妻が商標権者である「小木曽清亀」であること、「小木曽清亀」は「小木曽美好」の死亡直後に申立人会社の監査役を辞任していること、「小木曽清亀」は申立人会社の代表者である「小木曽正明」の養母であること、である。
この事実から言えることは、商標権者である「小木曽清亀」は、申立人会社の設立当初から約50年間、創立者である「小木曽美好」の影になり日向になって「小木曽美好」が設立した申立人会社を支えてきたことである。事実、申立人会社は、「小木曽美好」及び「小木曽清亀」との協力関係により設立したものであり、上述の約50年にわたり夫婦共に支え合い「株式会社銀座鈴屋」を繁栄させたものである。
このことは、乙第3号証の小木曽美好著の「甘露降 銀座鈴屋甘納豆本舗創業史」(発行日 1977年12月1日 発行所 株式会社文化放送開発センター)という申立人会社の創業史に記載された創立者である「小木曽美好」の結婚後の会社創業・会社発展の軌跡に関する記載からも明らかである。
したがって、本件商標に表彰されている業務上の信用というものは、決して小木曽美好のみの努力によるものではなくその形成過程において小木曽清亀に至っても重要な責務を果たしたものであることは言うまでもない。同族会社であるなら尚更である。にもかわらず、養子である「小木曽正明」が代表者を勤める申立人会社が、あろうことか自らが業務上の信用を勝ち得たかのように主張し、むしろ「小木曽清亀」が不正の目的で使用していると主張すること自体まさしく本末転倒といわざるを得ない。
まして、仮に、引用商標が周知、著名であると言うならば、尚更、その周知、著名性を勝ち得るに至って多大の寄与をなした商標権者にも本件商標を使用する権利があるというべきであって、商標権者が申立人会社の監査役を退任し、その後に本件商標について商標登録出願を行ったという事実のみで、如何にして不正の目的があるといえるのか、甚だ疑問でならない。
また、商標権者である養母が創立者とともに培ってきた信用を維持すべく採った行為をもって、養子が代表者を勤める申立人会社が、養母に対して刑法上の特別背任であると弾劾しようとする行為は、恩を仇で返すものであって人倫にもとる行為と言わずして何と言うべきであろうか。
ところで、特許庁編工業所有権法逐条解説第16版によれば、本規定における「不正の目的」については、図利目的・加害目的をはじめとして取引上の信義則に反するような目的のことをいう、と定義されている。
この点において、上述したように、商標権者が夫婦関係にあった小木曽美好氏と共に協力し「株式会社銀座鈴屋」を設立し繁栄させていったという経緯に鑑みれば、商標権者には、申立人はおろかその他の第三者を害するような図利加害目的を有しないどころか、取引上の信義に反するような目的を有しないことは明らかである。
したがって、商標権者に「不正の目的」が認められないことは明白である。
3.まとめ
以上のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時に、甘納豆をはじめとする和菓子を表すものとして、本件商標の指定商品の分野において相当程度知られていたものではない。また、商標権者は、その登録出願時に申立人が引用商標を使用していた事実について知っていたものの、本件商標を使用するについての正当な権限があるものであり、商標権者が本件商標をその指定商品について使用しても不正の意図をもって使用するものではないから、本件商標が商標法第4条第1項第19号に該当するものとして、その登録が取り消されるべきではない。

第5 当審の判断
1.本件商標は、別掲のとおりの構成よりなるところ、これは、甘納豆をはじめとする和菓子を表すものとして相当程度知られていた特徴のある引用商標と、ほぼ同一の構成よりなるものであって、商標権者は、本件商標の登録出願時に申立人が引用商標を使用していた事実を知っていたものであるから、不正の意図をもって使用するものとみるのが相当である。
したがって、上記3の取消理由は妥当なものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。
2.これに対して、商標権者は意見を述べているが、以下の理由により採用することができない。
(1)商標権者は、引用商標の周知、著名性が、客観性のない証拠に基づいて判断されているばかりでなく、特許電子図書館中の「日本国周知・著名商標検索」及び「日本有名商標集」から、引用商標は検出されなかった。また、本件商標の審査経過において、査定時及び審決時(拒絶査定に対する審判)の2度にわたって引用商標の周知、著名性が否定されている。
さらに、商標権者は、申立人会社の創始者である小木曽美好氏(死亡)と共に申立人会社を設立し繁栄させてきたものであり、本件商標に表彰されている業務上の信用はその形成過程において商標権者も重要な責務を果たしたものであって本件商標を使用する権利があるから、商標権者は不正の目的をもって使用するものではない。旨述べている。
(2)しかしながら、申立人の提出に係る会社沿革(甲第1号証)、「甘納豆缶詰しおり」の印刷依頼書(甲第3号証ないし甲第7号証)、「甘露降 銀座鈴屋甘納豆本舗創業史」(甲第8号証)等、価格表(昭和56年3月20日改訂、昭和59年12月1日改訂、甲第77号証及び甲第78号証)、その他の甲各号証及び申立の趣旨を総合勘案すれば、引用商標は、本件商標の登録出願時には、甘納豆をはじめとする和菓子を表すものとして、本件商標の指定商品の分野において相当程度知られていたものとみて差し支えないものである。また、商標の周知、著名性の判断は、個別具体的に判断されるものであって、「日本国周知・著名商標検索」及び「日本有名商標集」から、引用商標が検出されないことをもって、その周知、著名性が否定されるものではない。さらに、登録後の異議申立制度は、商標登録に対する信頼を高めるために、登録異議の申立てがあった場合に特許庁が自ら登録処分の適否を審理し、瑕疵ある場合にはその是正を図るというものであるから、たとえ査定時及び審決時(拒絶査定に対する審判)において引用商標の周知、著名性を認めなかったとしても、引用商標の周知、著名性の判断が、これら2度の判断に拘束されるものでもない。
(3)また、商標権者は、申立人会社の監査役として名を連ねていたが、監査役を辞任した以後、申立人会社の業務に関わることはないことを認めていること及び商標権者は、本件商標の登録出願時に申立人が引用商標を使用していた事実を知っていたにも関わらず、監査役を辞任した後に、本件商標の登録出願を行ったことから、本件商標を使用する予定がないのに、本件商標を登録出願し、商標権を取得したものであって、不正の目的をもって使用するものと判断せざるを得ない。
したがって、商標権者の主張は採用することができない。
3.以上のように、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲
(1)本件商標



(2)引用商標


(色彩については原本参照)

異議決定日 2006-03-13 
出願番号 商願2000-91948(T2000-91948) 
審決分類 T 1 651・ 222- Z (Z30)
最終処分 取消  
特許庁審判長 柴田 昭夫
特許庁審判官 小川 有三
岩崎 良子
登録日 2004-09-24 
登録番号 商標登録第4805177号(T4805177) 
権利者 小木曽 清亀
商標の称呼 ヤスズ、スズヤ、スズ 
代理人 原島 典孝 
代理人 黒川 恵 
代理人 小田 治親 
代理人 鈴木 知 
代理人 橘 哲男 
代理人 一色 健輔 
代理人 小田 治親 
代理人 一色国際特許業務法人 

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