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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Y32
管理番号 1145070 
審判番号 不服2005-9657 
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-05-23 
確定日 2006-09-29 
事件の表示 商願2004-58337拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「大井川」の文字を標準文字で書してなり、第32類「清涼飲料,果実飲料」を指定商品として、平成16年6月24日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶理由
原査定は、「本願商標は、「大井川」の文字を書してなるところ、近時、ミネラルウォーター等飲料水が人気商品となり、その取水源を表す語として名水の産地、山岳名、山脈水系、清流の河川等の名が商品に冠されている実情においては、これに接する取引者・需要者は、「大井川水系の水を原材料とした商品」であると直ちに理解するものとみるのが相当であり、自他商品の識別標識として認識するよりも、商品の産地、原材料、品質を表示した語というべきものと判断するのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)本願商標は、「大井川」の文字を標準文字で書してなるところ、該文字は、「静岡県中部、駿河・遠江の先を流れる川。赤石山脈に発源し、駿河湾に注ぐ。」(広辞苑第五版)を表すものである。
(2)ところで、我が国においては、水道水の品質の低下や消費者の自然志向及び健康志向などの理由から、1990年頃からミネラルウォーターの需要が急増し始め、日本ミネラルウォーター協会のホームページ(http://www.minekyo.jp/sub4.htm)によると、現在、ミネラルウォーターの銘柄は、国産では400社、450銘柄あると推定されており、また、輸入品は約50銘柄あることから、国産品、輸入品を合わせて、500銘柄位が流通しているとされている。
しかして、ミネラルウォーターを含め、容器に入った飲用水は、「ミネラルウォーター類」として、食品衛生法の清涼飲料水の基準が適用され、さらに、商品の多様化に伴い、品質表示の適正化を図るため、1990年、農林水産省は、ミネラルウォーター類(容器入り飲用水)の品質表示のガイドラインを設定した。
この品質表示のガイドラインによれば、ミネラルウォーター類(容器入り飲用水)は、「地下水」や「伏流水」等の原水の違いや処理方法の違いにより、「ナチュラルウォーター」「ナチュラルミネラルウオォーター」「ミネラルウォーター」「ボトルドウォーター」の4つに分類されている。
しかしながら、当該ガイドラインは、製造者に対する指導を目的としたものであり、一般の需要者が、4つに分類されたミネラルウォーター類(容器入り飲用水)の相違点を明確に理解し、把握しているものとは認め難く、また、現実に、「ミネラルウォーターとして売られているものの中には、湧水もあれば、伏流水もある。」(2002/10/12 北海道新聞夕刊 5頁)ことからすれば、むしろ、一般の需要者は、「容器入り飲用水」としての概念をもって「ミネラルウォーター」と認識し、把握しているものというのが自然である。
(3)そして、これらの「ミネラルウォーター類(容器入り飲用水)」には、原審説示の如く、その取水源を表す語として、例えば、「羊蹄のふきだし湧水」「白神山地の水」「蔵王の名水」「飛騨の水」(http://www.axe-millennium.com/japan.html参照)のように、水の産地をうたったものが多いという実情にあり、また、清流の河川等がミネラルウォーター類(容器入り飲用水)の取水源となっていることは、例えば、次の(ア)ないし(オ)の新聞記事やインターネット情報の記載からも窺い知ることができる。
(ア)「駿河湾深層水で飲料、焼津市魚仲組合が発売、静岡県認定の第1号に。」の見出しのもと、「静岡県焼津漁港の仲買人で構成する焼津市魚仲水産加工業協同組合は7月下旬から、焼津沖で採取した海洋深層水「駿河湾深層水」のペットボトル飲料を発売する。脱塩処理した深層水と大井川水系の地下水を半分ずつブレンドし、深層水や地元水産物の知名度向上につなげる。五百ミリリットル入り百九十円で、初年度十二万本の販売を目指す。」との記事(2003/07/09 日本経済新聞地方経済面(静岡)6頁)。
(イ)「災害時備蓄用、水の缶詰製造 島田市/静岡」の見出しのもと、「島田市が、大井川流域の地下水を使った水の缶詰を製造した。地震などの災害時用の飲用水として備蓄するほか、缶詰を「ナチュラルウオーター・島田物語」=写真=と名付け、地元産の茶とセットで市の観光宣伝に活用する考えだ。」との記事(1996/05/15 朝日新聞東京地方版/静岡 静岡版)。
(ウ)「秘水」の見出しのもと、「奥長良川県立自然公園内を流れる長良川の上流水を,磁場処理をして体の新陳代謝を促進する超軟水の水。」の記載(http://www.axe-millennium.com/japan_products/gifu/j-gf-hisui.html)。
(エ)「酸素イン」の見出しのもと、「岐阜県奥長良川の天然水に特殊特許のハニカムミキサー技術で通常の水道水の酸素量(約3〜5mg/l)に比べて約12倍の48mg/lの酸素を充填した。運動時に酸素と水分を同時に吸収出来るし,たばこを良く吸う方,ダイエットのサポートにお勧めの国産初の酸素水 」の記載(http://www.axe-millennium.com/japan_products/gifu/sannsoinn.html)。
(オ)「ミネラルウォーター」の表示に関して、平成3年7月23日付け環境庁水質保全局水質規制課が示した指導内容「ミネラルウォーターと名水について」の文中「1.基本的な考え方」に「ミネラルウォーターの原水となっている河川、湧水等が名水百選に選ばれたことをPRすることは、それが事実に反するものでない限り、問題ない。」との記載(http://www.minekyo.jp/kankyo.pdf)。
(4)さらに、商標法第3条第1項第3号の適用に関しては、「商標登録出願に係る商標が商標法3条1項3号にいう「商品の産地又は販売地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に該当するというためには、必ずしも当該指定商品が当該商標の表示する土地において現実に生産され又は販売されていることを要せず、需要者又は取引者によって、当該指定商品が当該商標の表示する土地において生産され又は販売されているであろうと一般に認識されることをもって足りるというべきである」(昭和61年1月23日 最高裁昭和60年(行ツ)第68号)、「商標法3条1項3号は、取引者、需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る表示態様の商標につき、それ故に登録を受けることができないとしたものであって、該表示態様が、商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、同号の適用において必ずしも要求されないものと解すべきである」(平成12年9月4日 東京高裁平成12年(行ケ)第76号)と判示されている。
(5)上記(1)ないし(4)を併せ考慮するに、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する需要者は、該商品が「大井川水系の水を使用したもの」であること、すなわち、単に商品の産地、品質を表示したにすぎないものと認識するにとどまり、自他商品の識別標識としては認識しないというのが相当である。
(6)なお、請求人(出願人)は、農林水産省による「ミネラルウォーター類(容器入り飲用水)の品質表示ガイドライン」によれば、「ミネラルウォーター」は「地下水」であり、「河川の表流水」は「ボトルドウォーター」として定義されるものであるから、「大井川」から「ミネラルウォーター」が採取されることは、一般論としてあり得ず、また、仮に「大井川」が産地表示として機能するならば、それは「ボトルドウォーター」に限定されることになるから、原査定は、「ミネラルウォーター」と「ボトルドウォーター」とを混同しており、事実認識を大きく誤っている旨主張している。
確かに、農林水産省による「ミネラルウォーター類(容器入り飲用水)の品質表示ガイドライン」によれば、「ミネラルウォーター」と「ボトルドウォーター」は、その定義上、厳密には一致するものではない。
しかしながら、前記(2)で述べたとおり、商取引の実際において、一般の需要者が「ミネラルウォーター」と「ボトルドウォーター」の相違点を正確に把握しているものとは直ちに認め難く、むしろ、「容器入り飲用水」の概念をもって、商品「ミネラルウォーター」を認識しているというのが相当であるから、請求人(出願人)の主張は採用することができない。
(7)したがって、上記認定と同趣旨で、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものとして、本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2006-07-21 
結審通知日 2006-07-28 
審決日 2006-08-10 
出願番号 商願2004-58337(T2004-58337) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (Y32)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 幸一 
特許庁審判長 中村 謙三
特許庁審判官 田村 正明
岡田 美加
商標の称呼 オーイガワ 
代理人 島野 美伊智 

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