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審決分類 審判 査定不服 商4条1項15号出所の混同 取り消して登録 Y43
管理番号 1145061 
審判番号 不服2005-14202 
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-07-25 
確定日 2006-10-17 
事件の表示 商願2004-48284拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願商標は,登録すべきものとする。
理由 1 本願商標
本願商標は,「ラムラ」の片仮名を標準文字で表してなり,第43類「飲食物の提供」を指定役務として,平成16年5月26日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定は,「本願商標は,その出願前より,株式会社セントラルプラザ(東京都新宿区所在)がJR飯田橋駅に隣接するショッピングセンターの名称として使用している標章「RAMLA」の文字(以下「引用商標」という。)と類似する「ラムラ」の文字を普通に用いられる方法で書してなるものであるが,同施設内には本願指定役務を初めとする各種の商品・役務を取り扱う店舗が存在し,その販売・提供場所を表すための表示として当該施設名である上記標章が使用されていることよりすれば,このような商標をその指定する役務について使用するときは,あたかも,上記会社と何らかの関係を有する役務であるかのごとく役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるものと認める。したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。」として,本願を拒絶したものである。

3 請求人の主張
(1)商標法第4条第1号第15号
商標法第4条第1号第15号は,混同の元となる「他人」の標章に対し,これに係る商品又は役務及びこれに類似する商品又は役務の範囲を超えて,非類似の商品又は役務にまで,保護を与えるものであるから,その標章の認知度が商標法第4条第1項第10号における周知性と同等以上のものである必要があると解される。
(2)引用商標の周知性
引用商標は,株式会社セントラルプラザにより管理運営されるショッピングセンター(以下SCという。)の名称として,昭和59年より今日に至るまで使用されている。同社が管理運営するビルは,上記のビル一つだけであり,他には,同社が管理運営するビルはない。また,引用商標に係るSCは,JR飯田橋駅に平行する形で隣接して建設された「セントラルプラザビル」の1〜2階,及び,20階の一部に開設されており,その延床面積は6,228平方メートルである。同SCは,平成17年4月にリニューアルが完了し,現在28店舗がテナントとして入居している。なお,同ビルには事務所等からなる事務棟と一般住居からなる住居棟が含まれる(甲第1ないし3号証)。
「ショッピングセンター名鑑‘98」(社団法人日本ショッピングセンター協会)によれば,同SCの立地特徴は「周辺商業地域」型(都市周辺の商業地域であり,最寄品を指向する地域をいう)とある(甲第4号証1頁)。「一般に最寄品を扱う地域密着型の店舗の商圏は,500mから1kmの徒歩圏内といわれている。すなわち,店舗から遠くなるにしたがって知名度が低下し,販促効果がなくなる限界の距離が1kmといわれている。」(甲第5号証)。これに鑑みれば,引用商標に係るSCの利用者は,同ビル住宅棟の入所者・同ビルに入居するオフィスに勤務する者のほか,近隣の住民や近隣に勤務する者,飯田橋駅の乗降客等に限られると推認される。引用商標に係るSCの来店客数が平日13,000人,休日8,000人(甲第4号証2頁)と,休日より平日の方が多い事実からも裏付けることができる。そしてこの来店客数は,下記のSCの中で最も来店客数が少ない「新宿ルミネ1」の来店客数の1/3にも達しないのである。
これを,同SCと同区内にある主要SCと,以下,比較する。
ア 「小田急新宿ミロード」(最寄駅:新宿)
中心商業地域型,SC面積21,325平方メートル,
来店客数(一日平均)平日49,000人,休日65,000人
(甲第4号証2頁)
イ 「MY CITY(新宿ステーションビル)」(最寄駅:新宿)
中心商業地域型,SC面積52,568平方メートル
来店客数(一日平均)平日47,000人,休日52,000人
(甲第4号証3頁)
ウ 「サブナード」(最寄駅:新宿)
中心商業地域型,SC面積6,958平方メートル
来店客数(一日平均)平日60,000人 休日98,000人
(甲第4号証4頁)
エ 「新宿ルミネ1」(最寄駅:新宿)
中心商業地域型,SC面積13,081平方メートル
来店客数(一日平均)平日37,000人,休日35,000人
(甲第4号証5頁)
オ 「新宿ルミネ2」(最寄駅:新宿)
中心商業地域型,SC面積11,985平方メートル
来店客数(一日平均)平日53,000人,休日65,000人
(甲第4号証6頁)
これらのSCに共通するのは,中心商業地域という立地特徴を有することである。中心商業地域とは,「該当SCの立地する地域が,高級買回品を指向する地域で市街地の中心」をいい(甲第4号証1頁),一般に広域の商圏を持っているとされる。このことは,平日より休日の方が来店客数が多い事実からも裏付けることができる。
上記事実にかんがみれば,引用商標に係るSCは,規模,来店客数,商圏,のいずれにおいても,他のSCに優るものでないことは自明である。
さらに,拒絶査定においては,飯田橋駅がJR他,地下鉄4路線が通るターミナル駅であることも,周知性認定の一要素としている。確かに飯田橋駅は,JRのほかに地下鉄4路線が通っているものの,ターミナル駅ではない。ターミナル駅とは,路線の終点駅を指し,東京都内でいえば,東京駅,新宿駅,渋谷駅,池袋駅などがこれにあたる。さらに,飯田橋駅の2002年度の乗降客数は336,671人であり,本来のターミナル駅である新宿駅の3,224,490人,池袋駅の2,643,063人,渋谷駅の2,136,011人,東京駅の888,885人にはるかに及ばない(甲第6号証)。そして,飯田橋駅の乗降客数には,単なる路線の乗り換え客も相当数存在すると推認され,駅に隣接されているとはいえ,駅の外に出なければ,訪れることもできない構造(甲第2号証)となっているSCについての引用商標に接する需要者は,更に少ないと推認される。
なお,出願人においては,引用商標に係るSCの周知性に関するアンケートを行っているが,「ラムラ」「Ramla」の標章から同SCを想起したものは,対象者のうち約9%のみであったことを付言する。
以上にかんがみれば,引用商標は,飯田橋駅利用者及び近隣住民には知られた標章であったとしても,その役務及びこれに類似する役務の範囲を超えて混同を生じさせるほどに周知であるとは,到底認められない。換言すれば,この程度の周知性をもって,第三者の登録を排除するほどの保護を与えなければならないとすれば,第三者の商標登録の機会をいたずらに狭め,商標法の本来の趣旨に反する事態を招来するといわざるを得ない。
(3)狭義の混同のおそれ
まず,審査において,引用商標はSCの名称として使用されている標章と認定されているが,商標法上保護されるべき標章は「一 業として商品を生産し,証明し,又は譲渡する者がその商品について使用をするもの。二 業として役務を提供し,又は証明するものがその役務について使用するもの」と規定されており,(商標法第2条第1項),SC自体が商標法上保護の対象とすべき「商品」又は「役務」に該当するか否かが問題となる。
ここで,商標法の保護対象となる「商品」とは,「市場で金銭又は物と交換される,業務の目的たる有体動産」(「商標法概説第2版」小野昌延 著 株式会社有斐閣 発行)と定義され得,「土地の定着物である「不動産」等は商品でない」(同)と解されている。また,同法の保護対象となる「役務」とは,「他人のためにする労務又は便益であって,独立して商取引の目的たりうるもの」(「商標法概説第2版」小野昌延 著 株式会社有斐閣 発行)と定義され得る。これをSCという商業施設について見るに,これは,「建物の管理,建物の貸与,土地の管理,土地の貸与」という役務に該当するものであると解するのが相当である。審査官のいう,引用商標がSCの名称として使用されている,という認識は,SCを建物ないし土地という不動産としてとらえた結果から生じたものであると思料するが,建物ないし土地という不動産は,商標法の保護対象たり得ない。換言すれば,その名称は商標法の保護の対象とは決してなり得ないものなのである。すなわち,SCに使用されている名称は,「建物の管理,建物の貸与,土地の管理,土地の貸与」たる役務の営業活動の一環として,同役務に付随する役務として使用されているにすぎないと思料する。にもかかわらず,引用商標を商業施設の名称としてとらえ,これに第三者の商標登録を排除する効力を与えることは,建物や土地などの不動産が指定商品に分類されたのと同一の法的効果を容認することになり,商標法の趣旨を没却するのみならず,現行の商標法の文理解釈の域を明らかに越えるものといわざるを得ない。
以上より,引用商標に係る役務は,「建物の管理,建物の貸与,土地の管理,土地の貸与」の範疇に含まれるものと解するのが相当であり,これは本願指定役務である「飲食物の提供」と非類似の役務であり,また,関連性もない役務である。詳細するならば,本願指定役務は「飲食用の処理をした食品又は飲料の提供を本質的業務とする事業所が提供する役務」(「商品及び役務区分解説 改訂第2版」(社団法人発明協会 発行)であり,広く一般消費者を対象とし,その多くがレストラン,居酒屋,食堂,ファーストフード店などの店舗や宅配といった形態を介して提供される。一方,引用商標に係る役務は,不動産たる建物の賃貸及びその管理運営を提供する役務であり,主として,オフィス,商業施設,住居,土地の賃貸を求める法人,団体,ないし個人であり,多くは,不動産仲介を業とするものを介して提供される。したがって,本願指定役務と引用商標に係る役務とは,その本質,用途・目的,需要者・取引者を全く異にするものであるといえる。
したがって,本願商標をその指定役務である「飲食物の提供」に使用しても,引用商標を使用する者の業務に係る役務である「建物の管理,建物の貸与,土地の管理,土地の貸与」と出所の混同を生ずるおそれはないと思料する。
(4)広義の混同のおそれ
本願商標を構成する片仮名文字「ラムラ」は,本願商標の出願人「株式会社ラムラ」の名称中,自他業務の識別に重要な役割を果たす標章の要部「ラムラ」に由来する(甲第8号証ないし同第12号証)。同法人が開業・運営するレストラン全体の売上高は,2002年3月実績で208億円,2003年3月実績で244億円,2004年3月実績265億円であり,年々着実に売上高を伸ばしている。また,2004年1月現在の従業員数は5,000名を数えるに至っている(甲第8号証,同第12号証)。
同法人の開業・運営するレストランの一店あたりの平均年商は2億5000万円であり,この数値は外食産業全体でも例のない好業績である。また,店舗あたりの利益率も業界の平均値を大きく上回っている。これは長期的な視点のもと,大型店(座席数:200〜500)展開に絞った経営戦略と,たゆむことなくメニューを創意工夫し,店舗イメージの向上を図り,また,従業員教育に取り組んできた成果である(甲第9号証)。かかる業績ゆえに同法人に出資する大企業も数多く,その株主には,大手都市銀行,生命保険会社,火災保険会社,信託銀行の他,ビール会社各社が含まれている(甲第8号証)。
なお,出願人が行ったアンケート調査によれば,全体の約28%のものが,本願商標から出願人を想起していることを付言する(甲第7号証)。
以上にかんがみるに,本願商標は,出願人名称ないしはその略称として広く知られた標章であると思料する。
一方で,引用商標の使用者である株式会社セントラルプラザは,先に述べたごとく,引用商標に係るSCのみを管理運営するものであり,そして,そのSCに使用される引用商標の周知性は,否定されるべきものである。
以上の次第であるから,本願商標をその指定役務に使用しても,引用商標の使用者と何らかの関係(例えば,親子会社の関係にあるものか,資本的につながりがあるのではないかと思うなど)にあるものと思い,ひいては,役務の出所について誤認混同を生じさせるおそれは全くないと確信する。

4 当審の判断
本願商標は,「ラムラ」の片仮名文字を標準文字で表してなるものである。
これに対し,引用商標は,後掲に示したとおり,「RAMLA」の欧文字をレタリングした構成よりなるものであって,当該標章は,千代田区飯田橋4丁目25番1号に所在する「セントラルプラザビル」を管理する目的で昭和58年5月に設立された「株式会社セントラルプラザ」が当該ビル内に設けられたSCの名称(標章)として,使用しているものである(甲第1号証ないし同第3号証)。
そして,当該SCは,東日本旅客鉄道のほか地下鉄東京メトロ「有楽町線」「南北線」「東西線」,及び,都営地下鉄「大江戸線」が接する飯田橋駅に隣接し,多くの乗降客が利用できる位置にあるとしても,都内にただの一ヶ所であり,当該SCの利用者は,請求人の述べるように,同ビル住宅棟の入所者・同ビルに入居するオフィスに勤務する者のほか,近隣の住民や近隣に勤務する者,飯田橋駅の乗降客等に限られるというべきである。
したがって,引用商標は,飯田橋駅周辺の住民,あるいは,飯田橋駅を頻繁に利用する者についてはともかく,少なくとも,都内全域に及ぶような周知性を獲得しているということはできないところである。
また,引用商標は,その構成自体が特異な形象よりなるものであるばかりでなく,本願商標が「ラムラ」の片仮名の文字標準文字よりなるものであるから,両商標は,外観上著しい差異を有するものであると認められる。
さらに,本願商標の指定役務は,「飲食物の提供」であるのに対し,引用商標の使用に係る役務は,請求人も述べるように「建物の管理,建物の貸与,土地の管理,土地の貸与」といい得るものであり,役務の関連性が相当に薄いものである。
以上を総合すると,引用商標の使用者の多角経営の一般的可能性を考慮しても,なお,本願商標は,引用商標と役務の出所について,混同を生ずるおそれがないものというを相当とする。
したがって,本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして,本願を拒絶した原査定は,妥当でなく,取り消すべきである。
その他,政令で定める期間内に本件について拒絶の理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 引用商標


審決日 2006-10-03 
出願番号 商願2004-48284(T2004-48284) 
審決分類 T 1 8・ 271- WY (Y43)
最終処分 成立  
前審関与審査官 薩摩 純一 
特許庁審判長 柳原 雪身
特許庁審判官 今田 尊恵
山本 良廣
商標の称呼 ラムラ 
代理人 松井 茂 

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