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審決分類 |
審判 一部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z0105 |
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管理番号 | 1144965 |
審判番号 | 無効2005-89120 |
総通号数 | 83 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2006-11-24 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2005-09-07 |
確定日 | 2006-09-18 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4415346号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第4415346号商標の指定商品中、第1類「植物成長調整剤類」及び第5類「薬剤」についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第4415346号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成11年7月30日に登録出願、第1類「植物成長調整剤類」及び第5類「薬剤」ほか、第1類ないし第34類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成12年9月8日に設定登録されたものである。 2 引用商標 請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第2368832号商標(以下「引用商標」という。)は、「快」の文字を書してなり、昭和49年4月30日に登録出願、第1類「化学品、薬剤及び医療補助品」を指定商品として、平成4年1月31日に設定登録され、その後、平成14年1月29日に存続期間の更新登録、及び指定商品を第5類「薬剤」ほか、第5類及び第10類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録が平成15年6月18日にされたものである。 3 請求人の主張(要点) 請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。 (1)請求の利益について (ア)請求人は、「KAI」の文字を横書きしてなる国際登録番号第823679号に基づく我が国を指定国とする国際登録出願(以下「本件国際登録出願」という。)の名義人である。 本件国際登録出願は、本件商標が引用され、商標法第4条第1項第11号に該当するとして、2005年5月19日付けで拒絶査定がされた(甲第1号証)。請求人は、上記拒絶査定に対する審判を請求しており、該審判は現在係属中である。 したがって、請求人は、本件審判を請求することについて利害関係を有する者である。 (2)請求の理由について (ア)本件商標は、装飾化された「KAI」の文字を書してなるから、これより「カイ」の称呼が生じるものである。 一方、引用商標は、「快」の文字を書してなるから、これより「カイ」の称呼が生じるものである。 してみると、両商標は、「カイ」の称呼を同じくする同一又は類似の商標である。 (イ)本件商標と引用商標とが互いに同一又は類似の商標であることは、本件国際登録出願の審査において、本件商標と引用商標が共に引用されたことからも明らかである。 すなわち、前記(1)(ア)のとおり、本件国際登録出願に係る商標は、「KAI」の文字を書してなるから、「カイ」の称呼が生じることは明らかであり、これに対して、本件商標と引用商標が引用されたということは、本件商標と引用商標は、いずれも「カイ」の称呼が生じることを示すものである。 (ウ)また、本件商標の指定商品中、「植物成長調整剤類」及び「薬剤」は、引用商標の指定商品中の「薬剤」と同一又は類似の商品である。 (3)むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものであるから、無効とされるべきである。 4 被請求人の答弁(要点) 被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第8号証を提出した。 (1)商標法第4条第1項第11号について (ア)商標の類否判断については、「商標の外観、観念または称呼の類似は、その商標を使用した商品につき出所の混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず、したがって、前記3点のうちその1において類似するものでも、他の2点において著しく相違することその他取引の実情等によって、なんら商品の出所に誤認混同をきたすおそれの認めがたいものについては、これを類似商標と解すべきではなく、対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする。」(昭和43年2月27日最高裁第3小法廷判決)とされている。 (イ)これを本件についてみると、本件商標は、極めて装飾化された「KAI」の文字からなるのに対し、引用商標は、普通の書体で書された漢字「快」の文字のみからなる商標であるから、両者が外観を著しく異にすることは明白である。 また、引用商標からは、その漢字の意味に相応する「気持ちがよい・こと(さま)」との観念が生じる(乙第3号証)のに対し、本件商標は、その極めて装飾化された態様から、特定の観念が生じない造語ないし記号と認識されるものである。また、観念が生じるとしても、後記する本件商標の著名性から、「貝印」、「カミソリで有名な貝印」の観念が生じるものであり、両者は観念においても著しく相違することは明らかである。 してみると、本件商標と引用商標は、「カイ」の称呼を同じくするとしても、これが外観及び観念の著しい相違を凌駕するほどのものとはいえず、商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両商標はその構成上、商品の出所の誤認混同を生ずるおそれはなく、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標であるといえる。 (ウ)本件指定商品である「植物成長調整剤類」「薬剤」は、用途・効能が重視される専門性の高い商品に属し、比較的高度の注意力をもって取引される商品といえる。 したがって、上記商品の取引者の注意力は高いといえる。 (エ)本件商標は、被請求人のハウスマークとして、遅くとも昭和63年ころより、その業務全般に広く継続的に使用されているものである。被請求人の売上高は、平成16年3月期の実績で、266億8,000万円に達し、ディスポーザブル用のカミソリ用具については、シェアNo.1を誇っている。さらに、現在では、被請求人又はその関連会社は、刃物製造にとどまらず、広く生活全般に及ぶ様々な日用品から事業者向けの専門的な商品の製造・販売を行っており、これらの商品には全て本件商標が付され、宣伝広告についても継続的かつ大量に行われている(乙第4号証)。 したがって、本件商標は、その査定時において、被請求人の業務に係る商品を表示するものとして周知・著名になっていたものである。 ちなみに、通常、本件商標と併記ないし併行して使用され、本件商標と同一の文字を普通に書してなる標章「kai」が、IPDLの日本国周知・著名商標に掲載されている(乙第5号証)。これは、本件商標がその査定時において周知・著名になっていたことを強く推認させるものである。 以上のとおり、本件商標の指定商品の取引者の注意力及び具体的取引状況に基づいて判断すると、本件商標と引用商標とは、なおさら出所の誤認混同を生ずるおそれはなく、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標であることは明らかである。 (オ)請求人は、本件国際登録出願について、本件商標と引用商標が共に引用されたことをもって、本件商標と引用商標とが類似すると主張する(但し、その根拠は、称呼を同じくすることをいうのみである。)。 しかし、商標の類否は、対比される商標ごとに、それぞれ上記判断基準及び各事例の具体的状況に基づいて、それぞれ商品の出所混同のおそれがあるか否かが検討されるべきであるから、請求人の主張は、その前提において失当である。 なお、付言すると、引用商標は、被請求人を商標権者とし、本件商標と同一構成からなる登録第2382297号商標(2002年2月28日に存続期間満了、乙第6号証)と併存して登録されていたものである。これは、本件商標と引用商標は、過去の審査においても非類似と判断されていたことを示すものである。 さらに、現在においても「カイ」の称呼が生ずる商標が、少なくとも4件併存して登録されている(乙第7号証)。これらの例は、特許庁の審査においても、商標の類否は、単に形式的に称呼を抽出して比較するのではなく、対比される商標ごとにそれぞれ上記判断基準及び各事案の具体的状況に基づいて判断されていることを示すものである。 (2)請求の利益について 本件国際登録出願に係る商標は、「KAI」の文字を横書きしてなる(乙第8号証)から、本件商標及び標章「kai」とは明らかに類似する。 そして、本件商標及び標章「kai」は、前記のとおり、被請求人の業務に係る商品を表示するものとして著名となっているから、請求人が本件国際登録出願に係る商標を使用した場合には、被請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある。よって、本件国際登録出願は、本件商標の登録の有無にかかわらず、商標法第4条第1項第10号又は同第15号に該当し、いずれにしても拒絶又は無効理由を含むものである。 したがって、本件審判の請求は無意味であり、請求の利益を有しないものである。 (3)むすび 以上のように、本件商標は、請求人主張の無効理由に該当しないことが明白であり、また、本件審判は、請求の利益を有しないものである。 5 当審の判断 (1)請求の利益について 甲第1号証及び職権による調査によれば、本件国際登録出願は、本件商標を引用した拒絶理由を受け、現在審判に係属していることが認められる。 そうすると、請求人は、本件国際登録出願の登録の障害となる本件商標の存在によって、直接不利益を受ける者ということができるから、本件審判を請求するについて、法律上正当な利益を有する者といわなければならない。 この点に関し、被請求人は、本件商標や標章「kai」は、被請求人の業務に係る商品を表示するものとして著名であるから、本件国際登録出願は、本件商標の登録の有無にかかわらず、商標法第4条第1項第10号又は同第15号に該当するものであり、本件審判は、請求の利益を有しない旨主張する。しかし、本件国際登録出願が被請求人の主張する条文に該当するか否かは、係属している審判等の審理において判断されるべき事項であり、本件審判についての請求の利益は、上記理由をもって足りるというべきである。 したがって、被請求人の上記主張は失当である。 (2)商標法第4条第1項第11号について (ア)本件商標は、別掲のとおりの構成よりなるものであるところ、その構成は、図案化されたローマ文字の「K」、「A」、「I」を横に並べたものと理解されるものである。そして、本件商標は、これを構成する「KAI」の文字より、「カイ」の称呼を生ずるものであることは、当事者間に争いがなく、かつ、「KAI」の文字からは想起される観念が全くないとはいい得ないが、その構成全体としては、特定の観念を有しないものというのが相当である。 一方、引用商標は、前記のとおり、「快」の文字を書してなるものであるから、これより「カイ」の称呼及び「こころよいこと」などの観念を生ずるものである。 そうすると、本件商標と引用商標とは、「カイ」の称呼を同じくする商標といわなければならない。 してみると、本件商標と引用商標は、外観において異なり、また、観念上も互いに比較することができない商標であるとしても、「カイ」の称呼を同じくするものであるから、本件商標を本件請求に係る指定商品について使用するときは、引用商標を使用した商品との間に商品の出所について誤認、混同を生ずるおそれがあるものというのが相当であって、かつ、取引の実際にあって両者間にその実情を考慮しなければならないような点は見出せない。 したがって、本件商標は、引用商標と類似する商標であって、その指定商品中に、本件商標の設定登録時(平成12年9月8日)にあって、引用商標の指定商品の書換登録前(平成15年6月18日)の指定商品と同一又は類似する本件請求に係る指定商品である第1類「植物成長調整剤類」及び第5類「薬剤」を含むものである。 (イ)被請求人の主張について 被請求人は、本件商標と引用商標とは、称呼を共通にするとしても、外観及び観念上の顕著な相違を有するものであるから、両商標を全体的に考察すれば、相紛れるおそれのない非類似の商標である旨主張する。 しかし、本件請求に係る指定商品は、薬剤及び植物成長調整剤類であり、これら商品の需要者は、医師や薬剤師、あるいは農業従事者等の専門家のみならず、一般の消費者も多く含まれるといい得るところ、本件商標と引用商標を使用した商品が同一の販売場所で販売された場合、両商標が「カイ」の称呼を同じくするが故に、本件商標に接する需要者は、本件商標について、引用商標をローマ文字に変更して使用したものであると理解し、本件商標を使用した商品と引用商標を使用した商品とが同一の製造者から生産された商品であると誤認する場合も決して少なくないものとみるのが相当である。また、上記商品の流通経路の中間段階においては、商品に使用される商標から生ずる称呼を記憶し、それによって、商品の取引に当たる場合も少なくないものというべきである。したがって、本件請求に係る指定商品の取引の実情に照らせば、本件商標と引用商標は、商品の出所に混同をきたすおそれのある商標といわざるを得ないから、被請求人の上記主張は理由がない。 また、被請求人は、本件商標は被請求人の業務に係る様々な日用品から事業者向けの専門的な商品について使用され、その査定時には著名となっていたものであるから、本件商標と引用商標とは、出所の誤認混同を生ずるおそれはなく、非類似の商標である旨主張する。 しかし、本件商標が被請求人の業務に係る日用品ないし事業者向けの専門的な商品をはじめ、本件請求に係る指定商品について使用され、その査定時において、需要者の間に広く認識されていた事実を認めるに足る的確な証拠は見出せない。したがって、被請求人の上記主張は理由がない。 さらに、被請求人は、本件商標と同一構成からなる登録第2382297号商標(乙第6号証)が引用商標と併存して登録されていたから、本件商標と引用商標は、非類似の商標である旨主張する。 しかしながら、商標の類否は、対比される商標ごとに個別具体的に、かつ、商標が使用される取引の実情に照らして判断されるべきであり、被請求人のいう併存登録の存在自体が、当該取引の実情を考慮したものであることや、或いは過誤登録などの可能性を否定することになるものでなく、直ちに前記認定を覆す理由といい得ないものであるから、被請求人の上記主張は採用できない。 (3)むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品中の「第1類 植物成長調整剤類」及び「第5類 薬剤」について、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものと認められるから、同法第46条第1項の規定により無効とすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 本件商標 |
審理終結日 | 2006-07-11 |
結審通知日 | 2006-07-18 |
審決日 | 2006-08-07 |
出願番号 | 商願平11-68973 |
審決分類 |
T
1
12・
26-
Z
(Z0105)
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最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
高野 義三 |
特許庁審判官 |
中村 謙三 井岡 賢一 |
登録日 | 2000-09-08 |
登録番号 | 商標登録第4415346号(T4415346) |
商標の称呼 | カイ、ケイエイアイ、ケーエーアイ |
代理人 | 恩田 博宣 |
代理人 | 野田 久登 |
代理人 | 恩田 誠 |
代理人 | 深見 久郎 |
代理人 | 竹内 耕三 |
代理人 | 森田 俊雄 |