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審決分類 審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない Z01
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない Z01
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない Z01
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Z01
管理番号 1143429 
審判番号 無効2005-89038 
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-10-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-03-16 
確定日 2006-03-13 
事件の表示 上記当事者間の登録第4511545号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4511545号商標(以下「本件商標」という。)は、「PSR」の文字を標準文字により表してなり、平成12年8月17日に登録出願され、第1類「プリント配線板用フォトレジスト,プリント配線板用光硬化型レジスト,化学品,植物成長調整剤類,のり及び接着剤(事務用又は家庭用のものを除く。),高級脂肪酸,パルプ,工業用粉類,肥料,写真材料,人工甘味料,陶磁器用釉薬」を指定商品として、同13年10月5日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張の要点
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1ないし第29号証(枝番を含む。)を提出している。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第19号、同第10号及び同第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき無効とされるべきである。その理由は、以下に詳細に述べる。
(1)商標法第4条第1項第10号について
ア 請求人の商標「PSR」の著名性について
請求人は、昭和28年に印刷インキ及び関連資材製品の製造、販売を目的とする会社として設立されたものであるが、同45年頃よりレジストインキの製造、販売を開始し、同51年に電子産業界の「レジストインキ」を主力製品とする事業方向へ転換を図り、爾来プリント配線板用のレジストインキを主力商品としてプリント配線板用の各種資材(化学品)を製造、販売しているものである(甲第2号証)。
そして、昭和59年より「プリント配線板用現像型ソルダーレジストインキ」に「PSR」の商標(以下「引用商標」という。)を付して「PSRシリーズ」として盛大に商品を売り出した(甲第3号証)。
請求人は、レジストインキ等のプリント配線板用の各種資材(化学品)の技術開発に向けて研究を重ね、現在の「ソルダーレジストインキ」の基本となる発明をし、昭和60年4月19日に特許出願をし、特許第1799319号として登録されたものである(甲第4号証)。
この特許における技術の優れていることは、その後、請求人の特許により製造された商品「PSR4000」等がプリント配線板の技術分野における特許出願の明細書において、商品名として記載されていることからみても、他に追随を許さないほどに優れて、広く知られていることが明白である(甲第5号証の1ないし3)。
請求人の商品が特許に支えられ、技術的にも優れていることから、昭和60年には埼玉工業技術大賞に選ばれ受賞した程である(甲第6号証)。
請求人の技術開発に向けて研究の結果、「ソルダーレジストインキ」のみならずプリント配線板用の各種資材(化学品)の技術が優れ、その製品も優秀であることから、「ソルダーレジストインキ」(PSRシリーズの商品)のみならずプリント配線板用の各種資材(化学品)の売り上げは、昭和60年頃より急伸した。
とりわけ、引用商標を付した「プリント配線板用現像型ソルダーレジストインキ」は、請求人の主力製品として多くのプリント配線板製造業、加工業に普及し、その売り上げが急伸した。
請求人は、「ソルダーレジストインキ」(PSRシリーズの商品)を普及するため、会社案内(甲第2及び第7号証)、製品カタログ(甲第8号証の1ないし10)を作成して頒布し、その普及を図るとともに、昭和59年より各種新聞、雑誌に積極的に宣伝広告を行って来たところである(甲第9ないし第18号証)。
そして、引用商標を付した「プリント配線板用現像型ソルダーレジストインキ」は、これらの新聞、雑誌において記事としてしばしば取り上げられる程になった(甲第9号証の8及び20、第10号証の22及び23、第14号証の8、第17号証)。
また、請求人は、社団法人日本プリント回路工業会が開催する「JPCAショー」にも昭和59年より、引用商標を付した「プリント配線板用現像型ソルダーレジストインキ」を主としてプリント配線板用の各種資材(化学品)を毎年出展してその普及を図るとともに、他の展示会にも出展している(甲第19号証の1ないし28)。
このJPCAショーは、プリント配線板用の各種資材(化学品)の製造、販売業及びプリント配線板製造業、加工業、電子産業に携わる多くの者が来場することで知られているものである(甲第20号証)。
上述した請求人のレジストインキ等のプリント配線板用の各種資材(化学品)の技術開発に向けての研究の結果を反映した商品の製造、販売及び宣伝、広告の努力の結果、引用商標を付した「プリント配線板用現像型ソルダーレジストインキ」等の「レジストインキ」は、「エレクトロニクスケミカルス '95」において1991〜1993年のシェア65%、「'98エレクトロニクス実装ニューマテリアル便覧」において1997年のシェア58.9%、「'98ファインエレクトロニクスケミカルス」において1995〜1997年のシェア63%と掲載され、その後も「2004エレクトロニクス実装ニューマテリアル便覧」において2003年のシェア46.9%と掲載されているように極めて高い圧倒的なシェアとなっているものである(甲第21号証の1ないし9)。
このようにして請求人の「プリント配線板用レジストインキ」が業界でトップシェアとなったことから、1990年より会社四季報において、「プリント配線板用レジストインキでトップ」と掲載されている(甲第22号証の1ないし55)。
以上のとおり、請求人が「プリント配線板用現像型ソルダーレジストインキ」に使用する引用商標は、本件商標の登録出願日である平成8年6月25日前には、プリント配線板用の各種資材(化学品)の製造、販売業界及びプリント配線板製造業、加工業、電子産業界において周知、著名となっていたものであり、その周知著名性は、現在まで保持されているところである。
請求人の「プリント配線板用現像型ソルダーレジストインキ」に使用する引用商標が周知著名であることは、大都市の東京商工会議所、大阪商工会議所、名古屋商工会議所、京都商工会議所においても証明されているところであり、かつ、レジストインキの業者の多くが加入している「印刷インキ工業会」においても証明されているものである(甲第23ないし第27号証)。
イ 本件商標と引用商標との類似について
本件商標は、「PSR」の欧文字よりなるものであり、請求人が「プリント配線板用現像型ソルダーレジストインキ」に使用する引用商標も「PSR」の文字よりなるものであるから、本件商標は引用商標と同一というべきものである。
ウ 本件商標の指定商品と引用商標を使用している商品「プリント配線板用現像型ソルダーレジストインキ」との類似について
本件商標の指定商品と引用商標を使用している商品「プリント配線板用現像型ソルダーレジストインキ」とは、ともにプリント配線板に使用するレジストインキといえる商品であり、その品質、用途、需要者を共通にするものであるから、同一又は類似の商品といえるものである。
エ してみると、本件商標は、他人(請求人)の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標と類似する商標であって、その商品と同一又は類似の商品に使用するものというべきものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するにもかかわらず、これに違反して登録されたというべきものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
請求人が商品「プリント配線板用現像型ソルダーレジストインキ」に使用している引用商標は、上述したとおり圧倒的なシェアを有し、かつ、請求人の普及、宣伝広告の努力もあり、本件商標の登録出願日前には、プリント配線板用の各種資材(化学品)の製造、販売業界及びプリント配線板製造業、加工業、電子産業界において周知、著名となっていたこと(甲第2ないし第27号証)、本件商標は引用商標と類似するものであり、本件商標がその構成上、著名な引用商標と同一の「PSR」の文字の部分が独立してみられるものであること及び本件商標の指定商品は請求人の商品とは、ともにプリント配線板に使用するレジストインキといえる商品であり、その品質、用途、需要者を共通にする同ー又は類似の商品であること等を総合してみると、本件商標をその指定商品について使用するときは、該商品があたかも請求人の業務に係る商品であるかの如く混同を生じるおそれがあるといわざるを得ないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するにもかかわらず、これに違反して登録されたものである。
(3)商標法第4条第1項第7号及び同第19号について
ア 請求人は、昭和59年より商品「プリント配線板用現像型ソルダーレジストインキ」に引用商標を使用し、1991〜1993年にはトップシェア(甲第21号証の1)となっていたことで明らかなように、商品「プリント配線板用現像型ソルダーレジストインキ」に使用する引用商標は、プリント配線板用の各種資材(化学品)の製造、販売業界及びプリント配線板製造業、加工業、電子産業界において周知、著名となっていたものである(甲第2ないし第27号証)。
イ 被請求人は、1988年(昭和63年)よりJPCAショーに出展を始め、1994年(平成6年)のJPCAショーのパンフレットの被請求人の欄において「プラスファインPSR(ソルダーレジスト)」と表記し、1995年のJPCAショーのパンフレットの被請求人の欄において「プラスファインPSR-310、エキレジンPSR-550」と表記をしているところからみると、1994年(平成6年)、1995年(平成7年)頃に商品を開発して販売を開始したと推測されるところである。
ウ JPCAショーは、プリント配線板用の各種資材(化学品)の製造、販売業界及びプリント配線板製造業、加工業、電子産業界の各社が同じ会場に出展し、各社の製品、ノウハウの普及、拡大を図る場であることから、各社は、他社の動向に常に注意を向けるのが常であるといえるところである。
また、経済活動の常として、自社の商品と他社の商品の発売状況との比較等も経常的になされるのが一般的であるといえるものである。
そうとすれば、被請求人は、同じ会場に出展しているばかりでなく、各種新聞、雑誌において継続的に広告宣伝され、記事に取り上げられ、かつトップシェアと報じられている請求人の商品「プリント配線板用現像型ソルダーレジストインキ」に使用されている著名な引用商標のあることを知っていたといい得るところである。
してみると、被請求人は、請求人の商品「プリント配線板用現像型ソルダーレジストインキ」に使用されている著名な引用商標のあることを知っていた上で、これが登録されていないことを奇貨として、これにフリーライドして不当な利益を得、かつ、請求人の使用を阻止して不測の損害を加えること等の不正な目的をもって本件商標を登録出願し、登録したといわざるを得ないものである。
エ このような、不正の目的を持った商標の登録及び使用は、公正な取引秩序を乱し、経済社会の混乱を引き起こすおそれがあるから、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるといわなければならないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第19号に該当するにもかかわらず、これに違反して登録されたというべきものである。
2 弁駁の理由
(1)本件商標、商標「EKIRESIN PSR」(登録第4369296号)及び商標「PLAS FINE PSR」(登録第4369299号)について
ア 被請求人は、本件商標、商標「EKIRESIN PSR」及び商標「PLAS FINE PSR」(以下、これらをまとめていうときは「被請求人商標」という。)を昭和56年から現在に至るまで長年にわたり「プリント配線板用光硬化型レジスト」、「プリント配線板用フォトレジスト」等の「レジストインキ」(以下「本件商品」という。)に継続して使用しているとして乙第1ないし第4、第25及び第57号証を提出している。
イ 被請求人の提出した証拠に係る使用商品は、「プリント配線板用光(紫外線)硬化型レジスト」及び「プリント配線板用熱硬化型レジスト」であって、「プリント配線板用フォトレジスト」は一切含まれていないことからすれば、既に主張の前提を誤っている。
乙第1号証は社内資料であって、業として商標が使用されたとする証拠となし得ないばかりでなく、「プラス・ファイン」の文字はあっても、「PSR」の文字のかけらもないことからすれば、被請求人商標を商標として使用しているとする証拠とはなし得ない。
乙第2号証は、社内の試験結果報告にすぎず、これをもって業として商標を使用していたとはいえない。
したがって、その後の報告書等の現物や写真をいくら提出しても、被請求人商標を商標として使用しているとする証拠とはなし得ない。
乙第3ないし第34号証は、需要者であるプリント配線板メーカーに対して、売り込みを図るために作成した「試験結果報告書」と見られるものであるが、日付がないものもあり、また宛先がないものも多くあり信憑性に欠けるものである。
ましてや、開発した商品の売り込みのための資料というべきもので、その結果売り込みが成功して商品として市場に出たものか否かも明確でないことから、本件商品について、商標として使用されたとの証拠とはなし得ないものである。
また、乙第3ないし第34号証は、「紫外線硬化型ソルダーレジスト」のみについての「試験結果報告書」であって、「プリント配線板用フォトレジスト」は一切掲載されていないことからすれば、本件商品に継続して使用しているとの主張の根拠(証拠)とはならないこと明白である。
したがって、これらの証拠をもって周知、著名性を獲得したなどとは到底いえないこと明白である。
ウ 被請求人が「UL」申請をし、登録されたことは認める。
この「UL」とは、シカゴ世界博覧会での大火災発生を契機に米国の火災保険業者によって設立された電気製品、材料等の安全に関する非営利の民間の試験機関であり、「UL」の認証取得は任意であるとされている。
「UL」は、長年の経験と製品安全性証明を発行する能力により、アメリカにおける第一の安全試験及び製品検定証明機関としての位置にあり、米国内で電気製品、材料等を販売するに当たって、事実上認定を受けることが必要な規格となっている。
電気製品の内、セット製品又は電源コードなどの一般に市販する部品のUL認定は、「listing」と呼ばれ、認定品にはUL認定を示すラベルが貼付される。
一方、電気製品に使用される本件商品のような材料や一般に市販されない部品のUL認定は、「Recognition」と呼ばれ、UL申請者は、このUL認定を証明するものとして、認定事項や認定特性値が記入されたイエローカードを購入することができる。
このイエローカードを集大成した通称「イエローブック」は、毎年4月に発行され、「UL」ではセット製品の認定取得の際、既に認定された部品や材料を使用していれば認定が簡略化できるため、セット製品のメーカーが既に認定された部品や材料を選択するために利用するためのものである。
本件商品を例にとると、本件商品のレジストインキは、プリント配線板上の回路以外の部分を絶縁するために塗布する絶縁材料であり、本件商品についてUL認定「Recognition」を得る際は、本件商品を塗布したプリント配線板として申請する。また、プリント配線板については、UL認定を簡略化するために利用できる「CCIL」という制度があり、レジストインキメーカーがレジストインキを塗布したプリント配線板についてUL認定を受けていれば、このプリント配線板を使用するプリント配線板メーカーは、CCIL制度を利用することにより、認定作業を簡略化でき、書類申請のみでUL認定を受けられるメリットがある。
このようなことから、イエローブックを購入して、各社の認定状況を確認する必要性があるのは、被請求人や請求人のような材料メーカーではなく、CCIL制度によるUL認定のメリットを享受できるプリント配線板メーカーである。
被請求人や請求人のような材料メーカーは、「UL」に申請すれば、ある特定の製品分類(カテゴリー)内で、UL申請者に対して「UL」からファイルナンバー(認識番号)が与えられ、このファイルナンバー毎に申請したUL申請名でUL認定が付与されるため、他社のUL申請名の申請、認証状況を把握する必要性はないものである。
「UL」に認定されイエローブックに掲載されたことは、そのUL申請名で登録した製品又は部品、材料を米国で販売する予定であることを示すにすぎず、米国内でそのUL申請名で登録した製品又は部品、材料を現実に販売したことを示すものではなく、ましてや、日本国内でそのUL申請名で登録した製品又は部品、材料を現実に販売したことを示すものでもない。
したがって、請求人は、被請求人のUL申請、登録の事実を知らなかったものであり、知らなかったことについて瑕疵はないといい得るものであり、UL認証を受けたことをもって、本件商品について、被請求人商標を商標として使用したとの証拠とはなし得ないばかりでなく、請求人が認証の事実を知っていたとの証拠とはなし得ないものである。
(2)被請求人商標の周知著名性について
ア 被請求人の提出に係る乙第39及び第40号証の会社案内は、発行年月日が不明であり、しかも本件商標はもとより、被請求人も記載されていないものである。
乙第41号証の会社案内は、本件商標の登録後の2004年5月に発行されたものである。
乙第42及び第43号証の製品カタログは、発行年月日が不明である。
乙第45号証の製品カタログは、本件商標の登録後の2002年6月に発行されたものである。
乙第46ないし第51号証において雑誌広告をしたことが認められるとしても、いずれも本件商標の登録出願後に広告を開始したもので、登録出願前に周知著名性を獲得したとの証拠とはなし得ない。
また、これらの会社案内、製品カタログ、雑誌広告に掲載したとしても、売上高、シェアが全く示されていないことからみても本件商標の登録出願前に周知著名性を獲得したとはいい得ないものである。
イ 乙第52及び第53号証は、「プリント配線板用紫外線硬化型レジスト」であって、「プリント配線板用フオトレジスト」は一切含まれていないことからすれば、本件商品に継続して使用しているとする主張の証拠とはなし得ない。
また、乙第53号証は、執筆者として被請求人の社員が関わっていることからすれば、掲載されたことで周知著名性を獲得しているとは到底いえないものである。
ウ 被請求人は、JPCAショーにも1988年(昭和63年)から参加していると主張しているが、請求人の出展の開始より4年も後発であり、しかも展示スペースも小さい(甲第19号証の17ないし26)ことからみると、請求人の展示による広告効果から見れば遥かに少ないといい得るところである。
エ 被請求人は、被請求人商標を付した本件商品は高いシェアとなっているとして、乙第74号証を提出している。
しかるところ、乙第74号証の商品は、「熱硬化型」と「UV(紫外線)硬化型」のレジストインキで、被請求人が述べる本件商品に包含されているべき「プリント配線板用フォトレジスト」が含まれていないものである。
してみると、本件商品についての高いシェアとなっているとの主張の証拠とはなし得ないというべきである。
プリント配線板用レジストインキは、熱硬化型、紫外線硬化型、現像型のものがあり、一時期は、熱硬化型及び紫外線硬化型が主流であったが、生産時の効率、品質に優れた現像型が主流となっているもので、乙第74号証の商品「熱硬化型」と「UV(紫外線)硬化型」のレジストインキはいわば時代遅れの商品と化したもので、業界全体の生産量からみても僅かに生産されているといい得るもので、このような商品においてシェアが高いと言っても全体からみれば微々たるものである。
これを本件商標が登録出願された直後の1997年でみると現像型が93.4%、その他が6.6%となっているものである(甲第21号証の2)。
そして、熱硬化型、紫外線硬化型、現像型の全体に占めるシェアは、本件商標の登録出願前も出願後も請求人のシェアの比率が圧倒的に高いことは甲第21号証の1ないし9により明白である。
これを本件商標の登録出願前の1991ないし1993年でみても、請求人とタムラ化研で約90%を占め、請求人のシェアは58.9%と圧倒的なシェアであることが明白である(甲第21号証の1)。しかも、乙第74号証は本件商標が登録出願された後のものである。
したがって、被請求人商標を付した本件商品が本件商標の登録出願前に高いシェアとなっているとはいえないものである。
被請求人は、被請求人商標を付した本件商品が周知著名であることを証する書面を提出すると主張しているが、どのような書面を提出しても上記のようなシェアの状況では、被請求人商標を付した本件商品が周知著名であるといえないこと明白である。
(3)商標法第4条第1項第10号該当に対する反論について
ア 被請求人は、請求人の提出した各証拠によっては、引用商標が明確でなかったり、他の文字より小さく表示され、又は品番的使用であるから、認知させる効果は小さいと主張しているが、引用商標は、甲第3号証の商品で明確なとおり、「PSR」の文字を商品上に大きく表示したもので、これを会社案内、新聞、雑誌における広告に使用しており、例えば、甲第8号証においても、他の文字より太い線をもって明確に表示していること明らかであるから、この点に関する被請求人の主張は、単なる言い掛かりといわざるを得ない。
イ 被請求人は、請求人の広告に関する各号証をあげつらって、引用商標が周知であったことを証明する証拠とはなり得ないと主張している。
この点に関しては、答弁書において、「本件商品は、産業用製品として顧客数は国内で数百社に限定され、かつ、ほとんどのユーザーが判明している市場であることから、一般的な新聞広告、雑誌広告は必ずしも必要でないと認識している。」と述べているところではあるが、請求人の会社案内、製品カタログは、限定された数百社に広範に頒布されるもので、広告に係る新聞雑誌は、限定された数百社が購読する経済誌又は専門紙であり、しかも広告の回数は被請求人の広告の回数よりも圧倒的に多いことからすれば、その広告の効果は極めて大きいといわなければならない。
したがって、この点に関する被請求人の主張は、理由がないというべきものである。
ウ 被請求人は、請求人の商品が新聞、雑誌において、記事としてしばしば取り上げられているとの主張に対して、その証拠の一部は、単なる広告であり、登録出願日以後のものもあると主張している。
しかしながら、その証拠の一部が広告に相当するとしても、大部分は記事であり、請求人の主張の証拠として効力があるといえる。
また、登録出願日以後のものは、商標法第4条第1項第10号及び同第15号の適用については、同法第4条第3項の規定によれば、登録出願時にも該当しなければ適用されず、これを文理にしたがって解釈すると、登録出願時に該当しても、登録査定時に該当しなければ適用されないので、登録査定時以後のものも提出したものである。
したがって、登録出願時以後の証拠があることをもって登録出願時に著名でないとはいえないものである。
エ 被請求人は、請求人のシェアはレジストインキ全体のもので、「PSR」を付した商品の売り上げの立証がないから、周知であるとはいえないと主張している。
そこで、請求人は、売上数量及びシェアを明確にする証拠(甲第28号証の1ないし3及び第29号証の1ないし27)を提出する。
甲第28号証によれば、レジストインキ全体でみると、1997年は、請求人の売上数量(kg)は、280万kg、シェア58.3%となっており、1998年は、290万kg、シェア59.2%となっているというように、圧倒的なシェアとなっている(甲第28号証の「1.1998〜2001エレクトロニクス実装ニューマテリアル便覧記録データ」に基づく比較)。これを「2.請求人のソルダーレジスト製品売上数量表(国内)」からみると、現像型のシェアは1994年で68.3%、1995年で76.0%、(1996〜98年省略)、1999年で88.8%、2000年で89.2%となり、請求人の売上数量に占める比率は極めて高いものとなっている。
また、これを「3.請求人のソルダーレジスト製品シェア(国内)(1.公知文献記録データと2.請求人売上数量に基づくもの)」によれば、レジストインキ全体で請求人の売上数量及びシェアは、1995年が1716千kg、45.2%、1996年が1750千kg、43.8%、(1997〜98年省略)、1999年が2460千kg、47.3%、2000年が2766千kg、60.1%と極めて高いシェアとなっている。
さらに、これを「4.請求人の現像型ソルダーレジスト製品(PSR)シェア(国内)(1.公知文献記録データと2.請求人売上数量に基づくもの)」によれば、現像型ソルダーレジスト製品(PSR)シェアは、1995年が34.3%、1996年が35.9%、(1997〜98年省略)、1999年が42.0%、2000年が53.7%となり、現像型ソルダーレジスト製品(PSR)のシェアが極めて高いことが明確である。
また、この請求人の現像型ソルダーレジスト製品(PSR)の売上数量について、請求人がユーザーより現像型ソルダーレジスト製品(PSR)納入の証明書(甲第29号証の1ないし27)を取得し、請求人の売上数量を裏付けている。
そして、甲第21号証により請求人が圧倒的なシェアを有していることは明白であることからすれば、引用商標は充分に著名であるといい得るところである。
オ 被請求人は、甲第23ないし第27号証は画一的な証明書であり、いかなる根拠により証明したものか明らかでなく、証拠としての価値は低いと主張するが、請求人は、本件審判請求において提出した証拠と同等の証拠を添えて甲第23ないし第27号証の証明の申請をし、証明を受けたものである。
したがって、その証明力は充分といい得るものである。
なお、被請求人は、大都市の商工会議所より周知著名であることの証明書を申請するようであるが、上述したとおり、被請求人の主張と証拠とが異なり、しかも使用態様も売上数量も示せないようでは証明されることなどあり得ないというべきものである。
カ 以上述べたとおり、引用商標は、市場において圧倒的なシェアを有し著名といい得るところであり、被請求人の使用している商標は、商品についての使用態様も明確でなく、使用を開始したとする時期において、実際に商品として市場に出たのか否かもわからず、しかも売上数量さえも明らかでないことからすれば、業としての商品について使用されたとはいえないものであるばかりでなく周知といえないものである。
(4)引用商標の独創性について
被請求人は、引用商標は独創性が低いと主張しているが、請求人はそれまで使用されていない「PSR」を独自に考案して採択し、使用しているもので、独創性があるといい得るものである。
請求人の商品の品質の優良性による圧倒的なシェア及び国内の限られたプリント配線板メーカーが目を通すとみられる経済誌、専門誌への効果的な広告により当業者間に周知され、著名となっているものである。
(5)引用商標の悪意の使用について
ア 被請求人は、請求人が、被請求人のUL登録を知っていたはずであり、請求人の使用は悪意の使用であるから、保護されないと主張しているが、この点については、既述のとおり、レジストインキメーカーが他社のUL申請、登録状況を知る必要性はなく、知らなければならない必然性もないものである。
また、UL登録は、単に申請して登録を受けたというに止まり、それが使用されたということに直接結びつくものではない。
そして、被請求人の使用は、前述のとおり、商品についての使用態様も明確でなく、使用を開始したとする時期において、実際に商品として市場に出たのか否かもわからず、しかも売上数量さえも明らかでないことからすれば、業としての商品について使用されたとはいえないものである。
してみると、請求人が被請求人の使用の事実など知りようもなく、知らないことについて瑕疵はなく、したがって悪意の使用などとは到底いえないものである。
イ 我が国の商標法は、基本的には出願・登録主義をとり、登録商標を保護することとしていると解されるところ、例外的に、未登録商標については、先使用であるか否かを問わず周知、著名となったものを保護することとしているものである。このことは、商標法第4条第1項第10号及び同法第32条の規定により明らかである。
してみると、請求人の現像型レジストインキに使用する引用商標は、本件商標の登録出願前に圧倒的なシェアを有し、著名となっていたものであり、被請求人が本件商品に継続して使用していたとする被請求人商標は、レジストインキの分野において微々たる売り上げにすぎず、到底周知とはいえないものであるから、上記商標法の規定に照らせば、当然請求人の引用商標が保護され、被請求人の本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第15号、同第7号及び同第19号に違反して登録されたというべきものである。
(6)商標法第4条第1項第15号該当に対する反論について
請求人の現像型レジストインキに使用する引用商標は、既述のとおり、本件商標の登録出願前に圧倒的なシェアを有し、著名となっていたものであるから、被請求人が本件商標を使用した場合、需要者、取引者をして請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の製造、販売に係る商品であるかの如く混同を生じさせるおそれがあるといわなければならない。
(7)商標法第4条第1項第7号及び同第19号該当に対する反論について
本件商標は、明らかに引用商標が圧倒的なシェアを有し、業界において著名となった後に登録出願されたものであることが明白であり、明らかに著名な商標のあることを承知の上で登録出願したといい得るものであるから、不正の目的を持って登録出願したといわざるを得ない。

第3 被請求人の答弁の要点
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第74号証を提出している。
1 請求人によれば、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第19号、同第10号及び同第15号に違反して登録されたものであり、同法第46条第1項の規定によりその登録は無効とされるべきであると主張するが、被請求人としては、まず、被請求人の商標の使用事実について述べ、以下に述べる理由により請求人の主張事実を認めることはできない。
2 被請求人商標について
(1)被請求人による被請求人商標の使用について
ア 被請求人は、昭和55年からUVインキの検討を開始し、被請求人商標を同56年から現在に至るまで長年にわたり本件商品に継続して使用している。
今回提出する証拠では、被請求人商標中の本件商標は昭和56年9月18日の日付(乙第2ないし第4号証)が、同じく商標「EKIRESIN PSR」は平成1年6月5日の日付(乙第57号証)が、同じく商標「PLAS FINE PSR」は昭和57年4月9日(乙第1号証)や同58年4月11日の日付(乙第25号証)が確認できる。
したがって、被請求人は、昭和59年から引用商標の使用を開始する請求人より3年も前から、被請求人商標を使用しているのであり、「被請求人は1994年(平成6年)、1995年(平成7年)頃に商品を開発して販売を開始した」(即ち、被請求人商標の使用を開始した)という請求人の主張は、全く間違った憶測にすぎない。
イ 乙第2号証は、被請求人の研究員が、本件商品の試験をして、その結果報告書を作成した日付を記載した社内文書であるが、昭和56年9月18日には本件商標を使用しているのが判る。そして、被請求人は、これら試験結果報告書(乙第3ないし第34号証)を添えて本件商品の営業を行ってきたのである。
なお、昭和58年までの試験結果報告書を提出しておくが、その後の報告書は何時でもその写しや現物を提出する用意があることを申し添えておく。
具体的に、昭和57年2月25日には株式会社棚沢八光社に(乙第7号証)、同年7月19日にはブラザー工業株式会社に(乙第13号証)、同58年6月9日には株式会社小糸製作所(乙第28号証)に、同年9月2日には住友電気工業株式会社(乙第32号証)に、商標「PSR」を使用した本件商品の試験結果報告書を添えて営業を行っている。
また、昭和58年4月11日には商標「PLAS FINE PSR」を使用していることが判る(乙第25号証)。
ウ 乙第35号証は、商標「PSR」を使用した本件商品の昭和57年3月18日付けULのテスト結果報告書と同年7月2日付けの部分修正報告書である。
ULについて簡単に説明しておくと、米国においては、ULに登録されている器具、部品、材料の使用を前提にする場合があり、ULの認定品でないとこれらの器具等の販売ができないことがあるため、米国市場へ販売する電子機器の大半はUL認定が必須条件となり、その電子機器に使用される電子部品や本件商品のような部材もUL認定が必要となってくる。電機関係の部材では、ULによる難燃性規格は、国内の顧客のみでもほとんどの場合必須の国際的な規格であり、国内規格と同等に必要となる規格である。
即ち、このUL認定と、その認定証として発行されるイエローカードを集大成したイエローブックへの掲載は、電材関係の製品では販売の基礎となる非常に重要なものである。このことは、本件商品を取り扱う請求人も充分に承知しているはずである。
被請求人は、本件商標を使用した本件商品のUL申請を昭和57年3月18日の約半年ほど前に行い、同年3月18日に正式にUL認定を受けており、このことは1983年(昭和58年)3月発行及び1984年(昭和59年)発行のULイエローブックにも掲載されている(乙第36及び第37号証)。
したがって、被請求人商標を昭和56年から使用しているのは明らかである。
因みに、引用商標は1983年(昭和58年)3月発行及び1984年(昭和59年)のイエローブックには掲載がなく、1985年(昭和60年)3月発行のイエローブック(乙第38号証)に初めて掲載されていることが判るので、請求人の主張のとおり、請求人は昭和59年の遅くに引用商標の使用を開始したことが推論されるが、被請求人商標の使用より後であることは明白である。
エ なお、請求人は「プリント配線板用現像型ソルダーレジストインキ」について引用商標を使用していると主張し、また、上述のとおり、本件商品を取り扱う業界においては、上記UL認定を受ける必要があるということはほぼ常識であることから、請求人は、イエローブックの「コーティング部材」各社の状況を少なくとも見ているはずである。1983年(昭和58年)のイエローブックでは「コーティング部材」を取り扱う会社はわずか36社しか掲載されていなく、その同業他社がどういった商品で如何なる商標を使用しているかはイエローブックを確認すれば直ちに判ることであり、請求人は、被請求人が昭和56年から被請求人商標を使用していたことを知っていたはずである。
このように、請求人は、引用商標の使用開始前にすでにこれと抵触する被請求人商標が被請求人によって使用されていることを知りながら、その使用を開始していたことになる。
(2)被請求人商標の周知著名性について
ア 請求人は、引用商標が周知著名であると主張するが、上述のとおり、被請求人は、被請求人商標を請求人より早く使用していたのであり、被請求人商標こそ本件商品に使用し、周知著名となっていたものである。
イ 被請求人は、昭和56年から本件商標を付して本件商品を特定のユーザーに対して上記試験結果報告書を添え、地味ではあるが活発に足で営業活動を行ってきており、また、被請求人も被請求人商標を使用した本件商品を記載した会社案内(乙第39ないし第41号証)、製品カタログ(乙第42ないし第45号証)等を作成して頒布し、その普及をも図ってきたのである。更に、2000年からは雑誌広告も出している(乙第46ないし第51号証)。
なお、被請求人は、本件商品の性質上、即ち、本件商品は、産業用製品として顧客数は国内で数百社に限定され、かつ、ほとんどのユーザーが判明している市場であることから、一般的な新聞広告、雑誌広告は必ずしも必要でないと認識している。
ウ 被請求人商標を付した本件商品は書籍にも取り上げられ(乙第52号証)、また、被請求人の光硬化型レジストはスクリーン印刷を使うことから、光硬化型レジストの有力なメーカーとして協力を求められた書籍(乙第53号証)においても商標「PSR」を使用し、このスクリーン印刷技術の業界においても、被請求人商標は知られるようになっている。更に、プリント配線板の技術分野においても、日本でトップのプリント配線板メーカーの徳山曹達株式会社の特許出願の明細書(乙第55号証)においても、商品名として記載されており、この分野の研究者や開発者にも本件商品に使用される被請求人商標が認識されており、広く知られていることは明らかである。
エ 被請求人は、JPCAショーにも1988年(昭和63年)から、被請求人商標を付した本件商品を毎年出展してその普及をも図っている(乙第56ないし第72号証)。また、他の展示会にも出展している(乙第73号証)。
JPCAショーの内容については請求人の主張のとおりであるが、「1994年(平成6年)、1995年(平成7年)頃に商品を開発して販売を開始した」(即ち、被請求人商標の使用を開始した)という請求人の主張は全くの誤りであり、被請求人は、1988年(昭和63年)のJPCAショーにも被請求人商標を使用しているのである。請求人は、少し調べれば判ることを憶測で主張するのみである。
オ このように、被請求人の営業活動等の結果、被請求人商標を付した本件商品は高いシェアとなっている(乙第74号証)。
なお、本件商品に使用する被請求人商標が周知著名であることは大都市の商工会議所等や取引者等から証明されるところであるが、準備に日数を要し、わずか40日しかない答弁書提出期間では提出ができないので、証明書が揃い次第速やかに提出する。
このように、被請求人は昭和56年から被請求人商標を使用した本件商品の販売活動等を通じて現在に至っており、被請求人商標には既に被請求人の業務上の信用が化体し、被請求人商標は周知著名な商標となっているものである。
3 商標法第4条第1項第10号に該当する理由についての反論
(1)引用商標の周知著名性及び請求人提出の証拠についての反論
請求人が引用商標を使用していることは認めるが、引用商標が、本件商標の登録出願日前から周知著名であったとは到底認められず、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当するものではない。
ア 請求人は、甲第2及び第6ないし第18号証を提出し、引用商標を普及するため、新聞、雑誌等に積極的に宣伝広告を行ってきたと主張する。
まず、甲第2号証の会社案内であるが、この会社案内では、引用商標は相当注意深く観察しなければ判らない。甲第2号証の4枚目の写真部分に商標「PSR」らしいものが見える程度であり、このような会社案内が頒布されたからといって、引用商標が多くの人々の目に触れたとはいえず、引用商標が周知性を獲得するとは到底考えられない。
次に、これらのうち甲第6、第8号証の1、5、6及び8ないし10、第9号証の1ないし3及び6、第10号証の1ないし4及び6ないし11、第11号証の1ないし3、第14号証の1ないし4、第15号証の1ないし4を見てみると、請求人は「PHOTO FINER」、「フォトファイナー」の表示を、「PSR」より大きく表示したり、「PSR」の上部分あるいは横部分に一連に表示したり、「フォトファイナーシリーズ」といった表示を付したりしていることが判る。このようないわば品番的な使用にあっては、これら広告等に接する取引者等は、通常、「PHOTO FINER」という商標の方により注目し、理解すると考えられ、引用商標「PSR」を認知させる効果は非常に低いものと考えられる。
また、請求人の上記「PHOTO FINER」等と「PSR」を組み合わせた使用は、主に昭和59年から平成4年頃に数多くみられ、製品カタログにあっては、平成10年、同14年、同15年のものまでみられる。
しかも、甲第9号証は年1回程度の広告、甲第10号証は年1回かせいぜい2回程度の広告であり、これら新聞広告は、その他の数多くある広告のうちの一つであることから、宣伝効果がどの程度のものか全く判然としないし、引用商標が特に注目されているとは到底考えられない。
さらに、請求人は引用商標を付した「プリント配線板用現像型ソルダーレジストインキ」は、これらの新聞、雑誌において記事としてしばしば取り上げられる程になったものであると主張し、甲第9号証の8及び20、甲第10号証の22及び23、甲第14号証の8 を示しているが、甲第9号証の8及び20、甲第14号証の8は単なる広告であり、甲第9号証の20、甲第10号証の22及び23は本件商標の登録出願日後のものであり、甲第10号証の23にあっては引用商標「PSR」の表示もみられない。
なお、甲第12及び第13号証は、本件商標の登録出願日後の広告であり、登録出願日前の周知性を立証し得ない。
このように、これら甲号証では、引用商標の使用態様、使用回数などから、その周知性を獲得する効果を発揮していたとは認められにくく、被請求人商標が周知であることからも、引用商標の使用は、せいぜい被請求人又は少なくとも何人かの商標「PSR」と抵触していると取引者・需要者に認識されるだけものであり、引用商標が本件商標の登録出願日前から周知であったことを証明する証拠とはなり得ないといえるものである。
イ 請求人は、甲第5号証の1ないし3を提出し、「PSR-4000」等がプリント配線板の技術分野における特許出願の明細書において商品名として記載されていることから、広く知られていることが明白であると主張するが、被請求人商標のほうが、これら甲号証より先の特許出願の明細書(乙第54号証)に記載されていることから、引用商標の周知性を立証するものとはなり得ない。
ウ 請求人は、甲第19号証を提出し、JPCAショーにも昭和59年より、引用商標を付した「プリント配線板用現像型ソルダーレジストインキ」を毎年出展してその普及を図っている旨主張するが、上記のとおり、被請求人もJPCAショーに昭和63年から被請求人商標を付した本件商品を毎年出展していることから(乙第56ないし第72号証)、これら展示会に出展したからといって、直ちに引用商標が周知となるとは考えられない。被請求人商標を使用した本件商品も展示していたのである。
エ 請求人は、甲第21及び第22号証を提出し、引用商標を付した「プリント配線板用現像型ソルダーレジストインキ」等の「レジストインキ」は、極めて高い圧倒的なシェアとなっているものであるとし、引用商標は、本件商標の登録出願日前には、周知、著名となっていたものであると主張するが、そもそもこれら証拠は「レジストインキ」全体を示しているに過ぎないものであり、そのシェアがトップといっても、引用商標が付された商品がどれだけ売上げたのかといった立証が全くなく、引用商標が周知であったなどといえるものではない。
なお、甲第21号証や乙第74号証はあくまで調査会社の推定値であり、どの程度信頼できるものか定かではないが、乙第74号証をみると、少なくとも請求人は「光硬化型」、「熱硬化型」の「レジストインキ」だけであれば、そのシェアは2001年では13.5%にすぎず、「レジストインキ」は極めて高い圧倒的なシェアとなっているとはいえないはずである。
オ 甲第23ないし第27号証は、画一的な証明書に、請求人に関係のある団体の代表者が署名したものであるが、いかなる根拠により証明したものであるか明らかでなく、証拠としての価値は低いものである。
また、請求人は、甲第27号証の「印刷インキ工業会」は、レジストインキの業者が多く加入していると主張するが、この会は一般のインキを取り扱っている業者が数多く加入しているのであって、レジストインキを取り扱っている業者は請求人のみと理解している。
なお、上述のとおり、被請求人も本件商品に使用する被請求人商標が周知著名であることは大都市の商工会議所から証明されるところであるので、証明書が揃い次第速やかに提出する。
以上詳述したとおり、請求人が提出した甲号証では、引用商標が本件商標の登録出願前から周知著名であったことなど立証されていないものである。
(2)引用商標の独創性について
引用商標の「PSR」は、おそらく「PHOTO SOLDER RESIST」の頭文字をとって「PSR」のアルファベット3文字としたと容易に推論される。そうすると、引用商標は、本件商品を取り扱う業界においては、比較的容易に思いつく商標であり、その独創性の程度は相当程度低いといわざるを得ない。
したがって、引用商標は本来的にはウイークマークであり、請求人が提出した甲号証のようなあまり多くない宣伝広告やいわば品番的な使用程度では、取引者等にそれほど印象に残るものとは考えにくく、引用商標が周知著名性を獲得するとは到底考えられないものである。
(3)引用商標の悪意の使用について
以上述べたように、被請求人は、引用商標は本件商標の登録出願日前には周知著名になっていないものと確信している。
しかしながら、仮に、引用商標が周知であったとしても、請求人は保護されない。
上記2(1)エで述べたとおり、請求人の商品や本件商品はUL認定が必須であるということはほぼ常識であることから、請求人は、イエローブックの「コーティング部材」各社の状況を見ており、同業他社がどういった商品を出しているとか、如何なる商標を使用しているかをも確認しているはずであり、請求人は、被請求人が昭和56年から被引用商標を使用していたことを知っていたはずだからである。
不正競争の目的で使用した場合には先使用権が認められないのと同様に考えられ、「商標を使用する者が、その使用開始前すでにこれと抵触する商標が他人によって使用されておりあるいは周知となっていることを知りながら、その使用を続けることにより周知商標としての既成事実を作りあげた場合、あるいは不正競争の目的で使用することによりこれを周知ならしめたような場合等、周知商標主に故意ないしは不正競争の悪意が存在する場合においては、このような商標は10号の規定により周知商標として保護されないとするのが判例・通説である(網野誠著『商標』[第6版]354頁から抜粋)」という法理からも明らかである。
このように、例え、本件商標と引用商標が類似であり、請求人の商品と本件商品が類似であったとしても、引用商標は、本件商標の登録出願日前は明らかに周知著名でないというべきであり、請求人は保護されないことは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものでないから、請求人の主張には理由がない。
4 商標法第4条第1項第15号に該当する理由についての反論
上記3で述べたとおり、引用商標は、本件商標の登録出願日前には周知著名な商標ではない。また、引用商標の独創性の程度は相当程度低いといわざるを得ない。さらに、被請求人は、本件商標を本件商品に継続して使用し現在に至っており、本件商標には既に被請求人の業務上の信用が化体しているものである。そして、現在に至るまで、請求人との間で商品の出所につき混同を生じさせた事実などない。
したがって、被請求人が本件商標を指定商品に使用した場合に、これに接する需要者取引者が請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の製造販売に係る商品であるかの如く認識して、商品の出所について混同を生じさせるおそれはないから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものでなく、請求人の主張には理由がない。
5 商標法第4条第1項第7号及び同第19号に該当する理由についての反論
まず、請求人は、引用商標が本件商標の登録出願時にはすでに周知著名であると主張するが、上記3のとおり、請求人は、本件商標の登録出願日前における周知性獲得の事実を証明できていない。
また、被請求人は、上記2のとおり、被請求人商標を請求人より早く使用していたのであり、不正の目的があったものとは到底認められない。
さらに、請求人は、JPCAショーについて、各社は他社の動向に常に注意を向けるのが常であるといえ、経済活動の常として自社の商品と他社の商品の発売状況との比較等も経常的になされるのが一般的である旨主張するのであるなら、請求人は、当然、請求人の商品や本件商品の販売の基礎となる非常に重要なUL認定にも注意を向け、比較等もしていたはずである。逆に、請求人のほうこそ、被請求人が被請求人商標を使用しているのを知りながら使用を開始しているので、不正の目的があったと認められる。
以上から、引用商標が本件商標の登録出願時に周知著名であったとは認められず、しかも被請求人は、請求人より早く正当に被請求人商標を採択し使用していたにすぎないのであるから、被請求人は不正の目的をもって使用をするものとして本件商標を登録出願したのではないことは明らかである。請求人の主張はいずれも失当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第19号に違反して登録されたものでないから、請求人の主張には理由がない。
6 むすび
以上のとおり、請求人の主張には全く理由がなく、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同第15号、同第7号及び同第19号に違反したものではないことから、その登録は無効とされるべきものではない。

第4 当審の判断
1 本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当するか否かについて
(1)引用商標の周知著名性について
請求人は、引用商標が商品「プリント配線板用現像型ソルダーレジストインキ」について使用する商標として取引者、需要者間に広く認識されている旨主張し、証拠を提出しているので、この点について検討する。
ア 各甲号証によれば、以下の事実が認められる。
(ア)請求人は、昭和28年に印刷インキと関連資材製品の製造販売を事業目的とする会社として設立されたが、同51年に電子産業界の「レジストインキ」を主力製品とする事業方向に転換を図り、同59年に「プリント配線板用現像型ソルダーレジストインキ」の製造販売を開始し、それには引用商標が使用された(甲第2及び3号証)。
(イ)請求人は、現在の「ソルダーレジストインキ」の基本となる発明をし、昭和60年に特許出願をし特許を受けた(甲第4号証)。請求人の特許により製造された商品「PSR-4000」等は、他社の特許出願の明細書においても商品名として記載され、さらに埼玉工業技術大賞を受賞した(甲第5及び第6号証)。
(ウ)請求人は、引用商標を使用したPSRシリーズの商品を含む「ソルダーレジストインキ」を普及するため、会社案内、製品カタログを作成・頒布するとともに、昭和59年から各種新聞、雑誌に宣伝広告を行い、これら新聞、雑誌においては記事としても取り上げられた(甲第2及び第7ないし第18号証)。
(エ)請求人は、社団法人日本プリント回路工業会が開催する「JPCAショー」に、「プリント配線板用現像型ソルダーレジストインキ」を昭和59年から毎年出展している(甲第19号証の1ないし28)。
(オ)ソルダーレジストインキの業界における請求人のシェアは、「エレクトロニクスケミカルス’95」等の文献によれば、1991〜1993年が65%、1997年が58.9%、1995〜1997年が63%、1998年が59.2%、1999年が40.5%、2000年が48.8%、2001年が48.6%、2002年が48.8%、2003年が46.9%とされている(甲第21号証の1ないし9)。これら文献の一部には、請求人の主要製品一覧として製品欄に「PHOTOFINER PSR-4000シリーズ」等と記載されている(甲第21号証の2及び7)。
カ 東洋経済新報社発行「会社四季報」には、1990年から毎年「プリント配線板用レジストインキでトップ」と記載されている(甲第22号証の1ないし55)。
イ 以上の認定事実によれば、請求人は、プリント配線板用ソルダーレジストインキの分野では業界トップであることが認められ、その製造販売に係る商品は、この種業界においては相当広範に普及しているものと推認される。
しかしながら、引用商標の使用状態について上記証拠を子細にみると、引用商標を構成する「PSR」の文字が単独で用いられているものは見出すことができず、ほとんどが他の文字や数字と共に用いられている。たとえば、実際の取引に用いられると推測される缶容器のラベルには、「二液性現像型ソルダーレジストインキ」の文字の下段に「PSR-4000 G24」と表示され、さらにその下部に図形マークと共に「TAIYO INK MFG.CO.,LTD.」の文字が表示されている(甲第3号証)ほか、甲第8号証の1の製品カタログでは、表紙に「PHOTOFINER 写真現像型レジスト」の表題の下に「PSRソルダーレジスト」及び「PERエッチングレジスト」と表示され、1頁ないし4頁には「現像型ソルダーレジストPHOTO FINERシリーズ」と大きく書し、その下部に「PSR1000・PSR2000・PSR3000・PSR4000」と記載されている。続いて、「PHOTO FINERは高密度プリント配線板用に開発された、高精度で信頼性の高い現像型液状ソルダーレジストです。」との説明がされ、種類として「PSR-1000」・・・・「PSR-4000」の4タイプがあると記載されている。
「PRINTED CIRCUIT RESIST INK」と題する甲第8号証の2の製品カタログでは、2頁及び3頁に「液状現像型ソルダーレジスト PSRシリーズ」として「PSR-1000」・・・「PSR-4000」の4つのタイプの特性が表にまとめられている。甲第8号証の4ないし10の製品カタログもほぼ同様であり、同号証の6及び8ないし10では「PHOTO FINER」の文字と共に表示されている。
各種新聞における広告においても、例えば、甲第9号証の1の新聞広告では、他の製品の表示と共に、「現像型ソルダーレジスト:PHOTO FINER」の表示の下に「PSR-1000シリーズ(接触露光溶剤現像)」、「PSR-2000シリーズ(非接触露光水現像)」、「PSR-3000シリーズ(非接触露光溶剤現像)」と記載されている。同号証の2及び3も同様である。同号証の4、7ないし9、11ないし20では「PHOTO FINER」の表示は見られないものの、「PSR-4000」、「PSR-4000シリーズ」等の表示がされている。甲第10号証の1ないし4の新聞広告では 「現像型ソルダーレジスト:PHOTO FINER」の下に「PSR-1000シリーズ(接触露光溶剤現像)」、「PSR-2000シリーズ(非接触露光水現像)」等が記載されている。同号証の5ないし25もほぼ同様であり、「PHOTO FINER」の表示のないものもあるが、同号証の5、7、8、10は記事中に「フォトファイナーシリーズ」、「PSRシリーズ」等と記載されているのみである。甲第11号証の1ないし3、第12及び第13号証の新聞広告や記事においてもほぼ同様である。
さらに、各種雑誌における広告においても、他の製品の表示と共に「現像型ソルダーレジスト:PHOTO FINER」の表示の下に「PSR1000(接触露光溶剤現像)」・・・「PSR4000(接触露光アルカリ現像)」と表示したもの(甲第14号証の1ないし4、第15号証の2ないし4)、ラベルに「現像型ソルダーレジスト」「PSR-4000」と表示された缶容器の写真を掲げたもの(甲第14号証の5及び6、第15号証の5、第19号証の15)、他の製品の表示と共に「アルカリ現像型ソルダーレジストインキ」等の表題下に「PSR-4000Z24(金メッキ対応品)」等の表示がされたもの(甲第14号証の8ないし19、第15号証の6ないし8、第19号証の16、19ないし28)、営業品目として他の製品の表示と共に「アルカリ現像型ソルダーレジスト(インキ)●PSR-4000シリーズ(マザーボード用、車載用)」等の表示がされたもの(甲第14号証の20ないし23、第15号証の9、第16号証の1ないし9、第18号証の1及び2)がほとんどである。
その他、引用商標が単独で使用されていることを認めるに足る証拠はない。
ウ 以上の引用商標の使用実態によれば、引用商標を構成する「PSR」の文字は、「PHOTO FINER」の表示の下位に位置づけられ、常に数字や他の文字と共に表示されていることから、これに接する取引者・需要者は自他商品の識別標識たる商標として認識するというよりも、むしろ商品の種類、品番等を表示したものとして理解し認識するものとみるのが自然であり、「PSR」の文字自体は自他商品の識別力がないか極めて弱いものであるというべきである。
そうすると、プリント配線板用ソルダーレジストインキの分野においては請求人の商品が相当程度普及していることが推認されるとしても、引用商標自体が、請求人の業務に係る商品を表示する商標として、本件商標の登録出願時において取引者・需要者間に広く認識されていたものということはできない。
エ 請求人は、引用商標が周知著名であることを立証する証拠として東京商工会議所、大阪商工会議所、名古屋商工会議所、京都商工会議所及び印刷インキ工業会による証明書を提出しているが、これらの証明書はほぼ同内容の定型文であるばかりでなく、証明者が如何なる根拠に基づき証明し、かつ、引用商標を自他商品の識別標識としての商標と理解し認識した上で証明したものか必ずしも明らかでないから、これら証明書によって引用商標が取引者・需要者間に広く認識されていたものということはできない。
また、請求人は、請求人からレジストインキ商品名「PSR」の納入があったことの取引関係者による証明書を提出しているが、これら証明書により請求人の商品が取引されたことが認められるとしても、引用商標の使用状況は明らかでないし、証明者が「PSR」の文字を商標として理解し認識した上で証明したものか明らかでないから、これら証明書によっても引用商標が取引者・需要者間に広く認識されていたものということはできない。
(2)上記(1)のとおり、引用商標が本件商標の登録出願時において、取引者・需要者間に広く認識されていたものということができない以上、本件商標は、引用商標との類否について検討するまでもなく、商標法第4条第1項第10号に該当するものではないといわなければならない。
2 本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するか否かについて
(1)請求人は、引用商標が本件商標の登録出願前に周知著名になっていたこと、本件商標と引用商標とが類似するものであること、本件商標の指定商品と引用商標が使用されている商品とは同一又は類似の商品であること等を総合してみると、本件商標をその指定商品に使用するときは、該商品が恰も請求人の業務に係る商品であるかの如く混同を生ずるおそれがある旨主張しているので、この点について検討する。
(2)確かに、請求人が引用商標を使用している「プリント配線板用現像型ソルダーレジストインキ」と本件商標の指定商品とは、共にプリント配線板に使用するレジストインキであって、その品質、用途、需要者を共通にする同一又は類似の商品であることが認められるとしても、上記1(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時において取引者・需要者間に広く認識されていたものとはいえないから、本件商標をその指定商品に使用した場合に、これに接する取引者・需要者がその構成中の「PSR」の文字部分に注目して引用商標を連想、想起するようなことはなく、該商品が請求人又は同人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれはないというのが相当である。
(3)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではないといわなければならない。
3 本件商標が商標法第4条第1項第7号及び同第19号に該当するか否かについて
(1)請求人は、被請求人は著名な引用商標の存在を知っていた上で、これが登録されていないことを奇貨として、これにフリーライドして不当な利益を得、かつ、請求人の使用を阻止して不測の損害を加える等の不正の目的をもって本件商標を登録出願し登録を受けたものであり、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある旨主張しているので、この点について検討する。
(2)被請求人の提出に係る各乙号証によれば、請求人が引用商標の使用を開始したと主張する昭和59年よりも3年前の同56年には既に、被請求人は、その社内文書においてではあるものの、「紫外線硬化型ソルダーレジスト」について「PSR-200G」、「PSR-300G」等の表示を使用し始めていたことが認められ(乙第2ないし第34号証)、さらに、昭和57年3月18日には、該商品について米国のUL認定を受け1983年(昭和58年)3月発行のULの「イエローブック」に搭載され、「PSR-300G」及び「「PSR-400G」の表示がされていることが認められる(乙第36及び第37号証)。
そして、その後も継続して、被請求人は、自己の会社案内、製品カタログ等において「紫外線硬化型ソルダーレジスト」について「PSR-310」、「PSR-400B」等の表示ないしは本件商標を使用し、また雑誌等に広告していることが認められる(乙第40ないし第51号証)。
そうすると、被請求人は、引用商標の存在を知った上で、引用商標にフリーライドする等の不正の目的で本件商標を登録出願し登録を受けたものというべきではない。
その他、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるとすべき理由及び不正の目的をもって使用するものであるとすべき理由を見出すことができない。
(3)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第19号に該当するものではないといわなければならない。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第15号、同第7号及び同第19号のいずれにも違反して登録されたものではないから、その登録を無効にすべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2006-01-12 
結審通知日 2006-01-18 
審決日 2006-01-31 
出願番号 商願2000-90742(T2000-90742) 
審決分類 T 1 11・ 22- Y (Z01)
T 1 11・ 271- Y (Z01)
T 1 11・ 25- Y (Z01)
T 1 11・ 222- Y (Z01)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 高野 義三
久我 敬史
登録日 2001-10-05 
登録番号 商標登録第4511545号(T4511545) 
商標の称呼 ピイエスアアル 
代理人 吉武 賢次 
代理人 西川 惠清 
代理人 田中 康継 
代理人 森 厚夫 
代理人 小泉 勝義 
代理人 宮嶋 学 
代理人 矢崎 和彦 

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