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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y05
審判 全部無効 称呼類似 無効としない Y05
管理番号 1139683 
審判番号 無効2005-89078 
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-08-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-06-01 
確定日 2006-06-26 
事件の表示 上記当事者間の登録第4836515号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4836515商標(以下「本件商標」という。)は、「MORA」の文字を標準文字で書してなり、平成16年5月25日に登録出願、第5類「医療用試薬,その他の薬剤」を指定商品として、同17年1月28日に設定登録されたものである。

2 請求人の引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用した登録商標は、次の(a)ないし(e)に示した5件である。
(a)登録第1220004号商標(以下「引用商標1」という。)は、「モーラス」の文字を書してなり、昭和47年2月29日に登録出願、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)薬剤、医療補助品」を指定商品として、同51年9月20日に設定登録され、その後、同61年11月13日及び平成8年7月30日の2回にわたり商標権存続期間の更新登録がされたものである。
(b)登録第4470871号商標(以下「引用商標2」という。)は、「モーラス」の文字を書してなり、平成12年5月19日に登録出願、第5類「薬剤,歯科用材料,医療用腕環,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,失禁用おしめ,人工受精用精液,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,乳児用粉乳,乳糖,はえ取り紙,ばんそうこう,包帯,包帯液,防虫紙,胸当てパッド」を指定商品として、同13年4月27日に設定登録されたものである。
(c)登録第2397568号商標(以下「引用商標3」という。)は、「MOHRUS」の文字を書してなり、昭和61年3月19日に登録出願、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)薬剤、医療補助品」を指定商品として、平成4年4月30日に設定登録され、その後、同13年11月13日に商標権存続期間の更新登録がされ、同14年9月18日に指定商品を、第1類「化学品,のり及び接着剤(事務用又は家庭用のものを除く。),植物成長調整剤類」、第2類「カナダバルサム,壁紙剥離剤,コパール,サンダラック,シェラック,松根油,ダンマール,媒染剤,マスチック,松脂,木材保存剤」、第3類「家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟材,洗濯用漂白剤,かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用海草のり,洗濯用コンニャクのり,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり」、第4類「固形潤滑剤」、第5類「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,歯科用材料」、第8類「ピンセット」、第10類「氷まくら,三角きん,支持包帯,手術用キャットガット,吸い飲み,スポイト,乳首,氷のう,氷のうつり,ほ乳用具,魔法ほ乳器,綿棒,指サック,避妊用具,人工鼓膜用材料,補綴充てん用材料(歯科用のものを除く。),耳栓」、第16類「事務用又は家庭用ののり及び接着剤」、第19類「タール類及びピッチ類」、第21類「デンタルフロス」、第30類「アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化材,ホイップクリーム用安定剤」とする指定商品の書換登録がされたものである。
(d)登録第4470872号商標(以下「引用商標4」という。)は、「MOHRUS」の文字を書してなり、平成12年5月19日に登録出願、第5類「薬剤,歯科用材料,医療用腕環,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,失禁用おしめ,人工受精用精液,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,乳児用粉乳,乳糖,はえ取り紙,ばんそうこう,包帯,包帯液,防虫紙,胸当てパッド」を指定商品として、同13年4月27日に設定登録されたものである。
(e)登録第2397565号商標(以下「引用商標5」という。)は、「MORUS」の文字を書してなり、昭和61年2月4日に登録出願、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)薬剤、医療補助品」を指定商品として、平成4年4月30日に設定登録され、その後、同13年11月13日に商標権存続期間の更新登録がされ、同13年11月28日に指定商品を、第5類「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,歯科用材料」とする指定商品の書換登録がされたものである(以下、一括していうときは「引用各商標」という。)。

3 請求人の主張の要点
請求人は、「本件商標の登録は、これを無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第201号証を提出した。
本件商標は、商標法第4条第1項第11号又は同法第4条第1項第15号の規定に該当するにもかかわらず商標登録されたものであるから、商標法第46条第1項の規定によりその登録を無効とされるべきである。
(1)審判請求の利益
請求人は、「経皮鎮痛消炎剤」の商品について、商標「モーラス」及び「MOHRUS」並びに後述の引用各商標ほかの「モーラス/MOHRUS」商標を使用し、取引者又は需要者に周知・著名な商標となっている。かかる状況下において、本件商標がその指定商品に使用された場合には、本件商標は、請求人の「モーラス/MOHRUS」商標に類似するから、その商品の出所につき混同を生じるおそれがある。よって、請求人は本件審判を請求することにつき利害関係を有する。
(2)本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当することについて
ア.本件商標と引用各商標の類否について
(ア)指定商品の抵触
本件商標は、その指定商品を前記のとおり第5類「医療用試薬,その他の薬剤」とするものである。他方、引用各商標は、そのいずれについても指定商品に「薬剤」を含むものである。よって、本件商標は、その指定商品について、引用各商標の指定商品に抵触する。
(イ)本件商標から生じる称呼
本件商標の構成態様は、ローマ字で「MORA」と表してなるものである。しかるところ、わが国でも親しまれた英単語において、語頭に「MO」の文字部分を有する英単語(外来語)においては、例えば、「mobi1e」(モービル)、「mode」(モード)、「mo1d」(モールド)、「moment」(モーメント)、「most」(モースト)のように、語頭音が長音化されて「モー」と発音されることがしばしばである(甲第8号証)。したがって、本件商標の自然称呼は、「モラ」又は「モーラ」である。
(ウ)引用各商標から生じる称呼
引用商標1及び引用商標2は、いずれも片仮名文字の「モーラ」を構成文字とするものであるから、「モーラス」の称呼を生じる。
引用商標3及び4については、ローマ字の「MOHRUS」を構成文字とするものであるから「モーラス」の称呼を生じる。
引用商標5は、ローマ字で「MORUS」と表してなるものであるから「モラス」の称呼を生じる。
(エ)称呼の比較
a.本件商標と引用商標1ないし4の称呼における比較
まず、本件商標の称呼のうちの「モーラ」と引用商標1ないし4の称呼である「モーラス」の称呼を比較すると、第1音から第3音までの「モーラ」の音を共通にし、相違するのは語尾音の「ス」のみである。
しかして、この「ス」の音は、摩擦音で、かつ、無声化する音であり、この差異音の「ス」は、それが語尾に位置することもあって、無声音化された弱音としてしか発音されない。したがって、全体の称呼に与える影響は弱いものである。
しかも、「モーラス」の称呼においては、第1音の「モ」は、母音の[o]を帯有し、かつ第2音で長音化されているから強い音感を有する。それに続く第3音の「ラ」の音も明瞭な響きをもった弾き音であって強い音感を有する。したがって、「モーラス」の称呼においては「モーラ」の部分が強い響きで聴取されるものである。加えて、アクセント上も「モーラ」の「モ」と「ラ」の音に強いアクセントが置かれる。してみると、引用商標1ないし4における「モーラス」の称呼においては、語尾音の「ス」の音は極めて弱い印象しか与えない。
してみれば、本件商標の称呼「モーラ」と引用商標1ないし4の称呼「モーラス」をそれぞれ一連に称呼した場合においては、「ス」の音の有無は微弱な違いでしかなく、両者は全体の音感音調が近似するから、特に、時と所を異にした場合において相紛らわしいことは明らかである。
よって、本件商標と引用商標1ないし4は称呼上類似するというべきである(甲第9号証ないし同第13号証の審決例参照)。
b.本件商標と引用商標5の称呼における比較
本件商標の称呼「モラ」と引用商標5の称呼「モラス」においては、語尾音の「ス」の音が相違するのみである。
しかして、この「ス」の音は、前記したとおり弱く発音される無声摩擦音であって、全体称呼への影響が微弱な語尾に位置するものである。しかも、「ス」の音の前音である「ラ」は、明瞭で強い響きの弾き音「ラ」であるから、「ス」の音は、前音の「ラ」の音に吸収されるかの如き印象を与えるところである。
してみれば、「モラ」の称呼と「モラス」の称呼を一連に称呼した場合には、その音感音調が共通し、称呼上相紛らわしいから類似するというべきである。
よって、本件商標は、引用商標5にも称呼上類似するものである。
(オ)結論
以上のとおりであって、本件商標は、引用商標1ないし5に類似する。そして、その指定商品も抵触するので、本件商標は、引用商標1ないし5との関係において商標法第4条第1項第11号の規定に該当するものである。
(3)本件商標が商標法4条1項15号に該当することについて
ア.請求人の「モーラス/MOHRUS」商標の著名性
(ア)「モーラス/MOHRUS」商標に係る商品とその使用の経緯、市場おけるシェアの実態
請求人は、引用商標1から4と同じ構成文字からなる商標「モーラス」及び商標「MOHRUS」、さらにこれらの商標に商品の普通名称たる「テープ」又は「TAPE」の文字を付加した商標(以下、これらを総称して「モーラス/MOHRUS」商標という。)を薬剤に属する「経皮鎮痛消炎剤」に使用し、著名な商標となっている。「経皮鎮痛消炎剤」は、塗布剤と貼付剤に分けられ、貼付剤にはパップ剤とテープ剤が含まれる。
請求人の「モーラス/MOHRUS」商標に係る「経皮鎮痛消炎剤」は、貼付剤のパップ剤とテープ剤であり、3つの商品がある(甲第14号証ないし同第21号証)。
そして、これらの経皮鎮痛消炎剤は、指定医薬品であり、医師・薬剤師等によって使用されることを目的として供給されている医療用医薬品である。
これらの商品の発売開始は、「モーラス/MOHRUS」(パップ剤)については、1988年5月であり、「モーラス テープ/MOHRUS TAPE」(テープ剤)については1995年12月、「モーラス テープ L/MOHRUS TAPE L」(テープ剤)については、2002年12月であるが、これらの商品は、その極めて優良な薬効効果によって医療業界で好評を博し、そのため、その販売当初から現在に至るまで、業界第1位の圧倒的シェアを誇っているものである(甲第23号証ないし同第25号証)。すなわち、「モーラス/MOHRUS」商標のパップ剤やテープ剤全体の売上総計は、発売時から2004年までの累計で5,500億円を超えている(甲第22号証)。
(イ)「モーラス/MOHRUS」商品(パップ剤、テープ剤)に対する市場の評価
「モーラス/MOHRUS」商標のパップ剤やテープ剤が、経皮鎮痛消炎剤の市場において、その品質の優良性によって高い評価を受け、その結果、驚異的な売上とシェアを獲得していることは、医薬品の分野における権威ある刊行物にも記載されているところであり(甲第26号証ないし同第39号証)、さらに、国際商業出版のホームページにおいても紹介されている(甲第40号証)。
(ウ)「モーラス/MOHRUS」商標についての宣伝広告の実績
まず、膨大な量の販売促進用パンフレットを作成し、医師や薬剤師などの医療関係者に対して、発売当初から現在に至るまで継続的に配布している。 その一覧は、甲第41号証に示すとおりであり、それらのパンフレットには、各「モーラス/MOHRUS」商標を表示している(甲第42号証ないし同第167号証)。
さらに、「日本医師会雑誌」において広告を継続的に掲載してきている(甲第168号証ないし同第178号証)。
商品の包装箱にも各「モーラス/MOHRUS」商標を表示している(甲第179号証ないし同第181号証)ほか、商品自体や商品の包装袋にもこれらの商標を表示している(甲第182号証)。
このように、「モーラス/MOHRUS」商標が膨大な媒体物や商品包装等に使用された結果、本件商標の出願前から現在に至るまで、その取引者又は需要者に周知・著名な商標となっているものである。
そして、ローマ字の「MOHRUS」商標が「日本有名商標集」に掲載されているとともに(甲第183号証)、片仮名文字の「モーラス」商標について防護標章登録を受けているものである(甲第184号証)。
(エ)「モーラス/MOHRUS」商標の造語性、独創性
請求人の「モーラス/MOHRUS」商標は、「市場を網羅する」ということにネーミングの由来を有する独創性の高い造語の商標である。そして、実際にも市場占有率が第1位の「市場を網羅(MORA)する」商標として、独創性が高い著名商標となっているものである。
(オ)本件商標と「モーラス/MOHRUS」商標との類似性
本件商標「MORA」が、請求人の「モーラス/MOHRUS」の商標と称呼上類似することは前述したとおりである。
そして、前記のとおり「モーラス/MOHRUS」商標が独創性の高い商標であり、また、外観においても、本件商標と「MOHRUS」商標の構成文字の共通性を考慮すると、本件商標「MORA」と請求人の「モーラス/MOHRUS」商標とは類似性が高いというべきである(甲第185号証ないし同第186号証の判決例参照)。
(カ)混同のおそれ
以上のとおり、請求人の「モーラス/MOHRUS」商標の著名性及び独創性、本件商標と「モーラス/MOHRUS」商標の類似性を踏まえて、「モーラス/MOHRUS」商標が使用されている商品が経皮鎮痛消炎剤という薬剤であって、本件商標の指定商品である薬剤と共通することを考慮すれば、本件商標がその指定商品に使用された場合には、それがあたかも請求人の「モーラス/MOHRUS」商標に係る商品のシリーズ商品であるか、又は、何らかの関連性のある商品であるかの如く誤認され、あるいは、その商品提供者(出所)について、何らかの営業上の関連性や資本の関連性があるかの如く混同されるおそれがあるといわねばならない。
また、医療用医薬品の分野においては、需要者である患者の身体の安全性に深くかかわっているが故に、混同のおそれは厳格に判断されるべきである。それは、医療品の分野において、近時、薬剤の取り替え事故や取り替え事例が存在することが現実に指摘されているところである(甲第187号証)。
かつ、本件商標の使用は、請求人の著名商標「モーラス/MOHRUS」の信用力(ブランド価値)にただ乗りするものであって、かかる信用力(ブランド価値)を希釈化させるものであるから、競業秩序の維持の観点からも容認され難いものである。
(キ)結論
以上のとおりであって、本件商標は、請求人の著名な「モーラス/MOHRUS」商標との間で出所の混同を生じるおそれのある商標であるから、商標法第4条第1項第15号の規定に該当するものである。
(4)むすび
以上から明らかなように、本件商標は、商標法第4条第1項第11号又は同第15号の規定に該当するにもかかわらず商標登録されたものであるから、その登録は商標法第46条第1項の規定により無効とされるべきである。
(5)被請求人の答弁に対する弁駁の理由
ア.商標法第4条第1項第11号に関する被請求人の主張について
(ア)本件商標の称呼について
被請求人は、本件商標「MORA」からは「モラ」の称呼を生じ、「モーラ」の称呼は生じないと主張する。しかし、請求人が審判請求書において述べたように、語頭に「MO」の文字部分を有する英単語は、しばしば「モー〜」と称呼されるものである。そして、このことは、有名な音楽ダウンロードサイトの商標について「mora」が使用され、「モーラ」の読み(称呼)が明示されている(甲第188号証)。また、ショッピングサイトの商標としても「mora」が使用され、「モーラ」の読み(称呼)が明示されている(甲第189号証)。このことは本件商標から「モーラ」の称呼が生じることの何よりの証左である。
さらに、被請求人が遺伝子検査用の「医療用試薬」に本件商標を使用していると述べて提出した乙第23号証及び同第24号証によれば、被請求人が「網羅的微生物検査法」という方法を確立し、その遺伝子検査の試薬キットに本件商標「MORA」を使用していることが示され、これらに「網羅的微生物検査法」などと大きく表示されており、被請求人の使用商品においては「網羅的」という言葉が重要なキーワードである。さらに、被請求人のインターネット資料(甲第190号証)においても「網羅的感染症診断キット」としてアピールされている。
してみれば、本件商標「MORA」は、その使用商品との関係において「網羅的検査法」の「網羅」を暗示するものと認識され、あるいは、本件商標から「網羅的」というキーワードを容易に想起することになるから、本件商標をもって「モーラ」と称呼するは極めて自然なことといわねばならない。
したがって、本件商標からは「モーラ」の称呼を生じないとする被請求人の主張には何ら根拠がない。
(イ)引用商標3ないし5から生じる称呼について
被請求人は、引用商標3及び4からは「モウルス」、「モオウルス」の称呼は生じるが「モーラス」の称呼は生じないと主張する。
引用商標3及び4の「MOHRUS」は、審判請求書で詳述したように、著名となっている商標であって、常にその称呼を表す片仮名文字の「モーラス」と共に使用され、「モーラス」としか称呼されていないのである。
また、被請求人は、引用商標5は「モルス」と称呼され、「モラス」と称呼されないと主張する。しかし、英語風の読み方からすれば「MORUS」は「モラス」と称呼されるものである。このことは、同様に「RUS」の文字部分を含む引用商標3及び4が「モーラス」と称呼されていることからも自然なことである。
(ウ)「モーラ」の称呼と「モーラス」の称呼が類似しないとする被請求人の主張について
両称呼が相紛らわしく類似することについては、審判請求書において詳述したところである。
(エ)以上のように、商標法第4条第1項第11号についての被請求人の主張は当を得ないものである。
イ.商標法第4条第1項第15号に関する被請求人の主張について
被請求人は、出所の混同を生じない理由の一つに、本件商標が「モーラス/MOHRUS」商標と類似しないということを挙げているが、その点については、前述のとおり、本件商標は「モーラス/MOHRUS」商標と類似するものである。2つ目の理由は、本件商標の使用に係る商品と著名商標「モーラス/MOHRUS」の使用に係る商品とは、取引者・需要者が異なるという主張である。しかしながら、かかる被請求人の主張には大きな誤りがある。
第1に、本件商標の指定商品は、「医療用試薬、その他の薬剤」であって、著名商標「モーラス/MOHRUS」の使用に係る商品である「経皮鎮痛消炎剤」が含まれているということである。
第2に、商標法第4条第1項第15号の適用判断に当たっては、標章の使用主体の「企業における多角経営の可能性」が考慮されるべきである(甲第192号証)。
請求人会社を含む久光グループは、総合製薬産業であり、その事業分野は広範囲に及んでいる。そして、その事業分野には、被請求人が本件商標を使用している遺伝子検査の試薬キットに密接に関連する遺伝子関連事業が含まれているものである。すなわち、請求人は、遺伝子関連事業を行う会社を設立してこれらの事業を行っており(甲第193号証ないし同第201号証)、これらの会社の営業種目には、遺伝子解析の試薬やそのキットの製造、輸入、販売も含まれているものである。
してみれば、本件商標がその指定商品について使用された場合には、請求人及びそのグループの営業及び商品との関係において、何らかの営業上及び資本の関連性があるかの如く誤認混同させることとなるものである。
よって、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当しないとする被請求人の主張もまた当を得ないものである。

4 被請求人の答弁の要点
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第24号証を提出した。
(1)本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当しない理由について
ア.本件商標と引用商標1及び2との類否について
(ア)本件商標は、欧文字に相応して「モラ」の称呼を生ずる。一方、引用商標1及び2は、片仮名に相応して「モーラス」の称呼を生ずる。
両称呼を比較すると、前者は2音で構成されるところ、後者は長音を含めて4音で構成されるものであるから、両者は構成音数において顕著な差異を有する。
また、両者は長音「ー」の有無及び語尾音「ス」の有無において4音中2音も相違するものであるから、通常の注意力をもってすれば、これらを混同することは決してない。
よって、本件商標と引用商標1及び2とは、称呼において全く非類似の商標である。
(イ)次に、外観類似を検討するに、本件商標は、欧文字で「MORA」と表してなるものである。一方、引用商標1及び2は、片仮名で「モーラス」と表してなるものである。つまり、本件商標と引用商標1及び2とは、構成文字種において顕著な差異を有する。
よって、本件商標と引用商標1及び2とは、時と場所を異にしても相紛れるおそれがないから、外観において明らかに非類似の商標である。
(ウ)最後に、観念類似を検討するに、両者はいずれも辞書・辞典等に記載のみられない文字の羅列であるため、何ら特定の観念を生ずることがない。
よって、本願商標と引用商標1及び2とは、何ら共通した観念を有しておらず、観念においても明らかに非類似の商標である。
(エ)したがって、本件商標と引用商標1及び2とは、称呼・外観・観念のすべてにおいて非類似の商標である。
イ.本件商標と引用商標3及び4との類否について
(ア)本件商標と引用商標3及び4との称呼類似を検討するに、本件商標は、欧文字に相応して「モラ」の称呼を生ずる。一方、引用商標3及び4は、欧文字に相応して「モオルス」「モオウルス」の称呼を生ずる。
請求人は、引用商標3及び4より「モーラス」の称呼を生ずると考えているが、自然語として存在しない、全く親しみのない文字列についてはローマ字読みするのが一般的であるから、これらの商標からはローマ字読みの「モオルス」「モオウルス」の称呼を生ずると考えるのが自然であり、「モーラス」の称呼は生じない。
それを踏まえて、本件商標と引用商標3及び4とを比較すると、本件商標は2音で構成されるところ、引用商標3及び4は4音「モオルス」あるいは5音「モオウルス」で構成されるものであるから、両者は構成音数において顕著な差異を有する。
また、両者は、「オ」(「ウ」)「ル」「ス」の有無において相違するものであり、4音中3音あるいは5音中4音も相違するものである。
よって、詳細に検討するまでもなく、本件商標と引用商標3及び4とは、称呼において全く非類似の商標である。
(イ)次に、外観類似を検討するに、本件商標は、欧文字で「MORA」と表してなるものであり、合計4文字からなるものである。一方、引用商標3及び4は、欧文字で「MOHRUS」と表してなるものであり、合計6文字からなるものである。つまり、本件商標と引用商標3及び4とは、構成文字数、構成各文字において顕著な差異を有するものであるから、その違いは明らかである。
よって、本件商標と引用商標3及び4とは、外観において明らかに非類似の商標である。
(ウ)最後に、観念類似を検討するに、両者は、いずれも辞書・辞典等に記載のみられない文字の羅列であるため、特定の観念を生ずることがない。
よって、本願商標と引用商標3及び4とは何ら共通した観念を有しておらず、観念においても明らかに非類似の商標である。
(エ)したがって、本件商標と引用商標3及び4とは、称呼・外観・観念のすべてにおいて非類似の商標である。
ウ.本件商標と引用商標5との類否について
(ア)本件商標と引用商標5との称呼類似を検討するに、本件商標は、欧文字に相応して「モラ」の称呼を生ずる。一方、引用商標5は、欧文字に相応して「モルス」の称呼を生ずる。
請求人は、引用商標5より「モラス」の称呼を生ずると考えているが、自然語として存在しない、全く親しみのない文字列についてはローマ字読みするのが一般的であるから、この商標からはローマ字読みの「モルス」の称呼を生ずると考えるのが自然であり、「モラス」の称呼は生じない。
それを踏まえて、本件商標と引用商標5とを比較すると、前者は2音で構成されるところ、後者は3音で構成されるものであるから、両者は構成音数において顕著な差異を有する。
また、両者は2音目の「ラ」と「ル」の差異、語尾の「ス」の有無において相違するものであり、3音中2音も相違するものである。
よって、通常の注意力をもってすれば、これらを混同することは決してなく、本件商標と引用商標5とは、称呼において全く非類似の商標である。
(イ)次に、外観類似を検討するに、本件商標は、欧文字で「MORA」と表してなるものであり、合計4文字からなるものである。一方、引用商標5は、欧文字で「MORUS」と表してなるものであり、合計5文字からなるものである。つまり、本件商標と引用商標5とは、構成文字数、構成各文字において顕著な差異を有するものであるから、その違いは明らかである。
よって、本件商標と引用商標5とは、外観において明らかに非類似の商標である。
(ウ)最後に、観念類似を検討するに、両者はいずれも辞書・辞典等に記載のみられない文字の羅列であるため、何ら特定の観念を生ずることがない。
よって、本願商標と引用商標5とは、何ら共通した観念を有しておらず、観念においても明らかに非類似の商標である。
(エ)したがって、本件商標と引用商標5とは、称呼・外観・観念のすべておいて非類似の商標である。
エ.審決例
(ア)請求人によれば、本件商標からは「モラ」のみならず「モーラ」の称呼をも生ずるとのことである。そして、本件商標と引用商標1ないし5とは互いに相紛らわしく類似すると主張している。
しかし、本件商標を構成する「MORA」の文字列は、特定の意味を想起させる言葉として一般に慣れ親しまれたものではなく、むしろ単なる文字の羅列としか認識し得ないものであるから、そのような場合は単純に子音と母音を組み合わせて1音ずつ発音するのが自然である。よって、本件商標は、「MO」の「モ」と、「RA」の「ラ」を組み合わせて、「モラ」と読むのが自然であり、引用商標1ないし5とは何ら類似することがない。
このことは、「MORA」を語頭に有する英単語「MORAL(モラル)」や「MORATORIUM(モラトリアム)」が、「MO」の部分を「モー」とは発音されないことからも明白である。
よって、請求人の主張はこの点においても理由がない。
(イ)「モーラ」と「モーラス」とを比較するにしても、これらは明確に区別することができ、決して混同することがない。
「モーラ」は、長音を含めて3音で構成されるところ、「モーラス」は長音を含めて4音で構成されるものであるから、両者は構成音数において顕著な差異がある。
また、差異音についていえば、両者は語尾の「ス」の有無において相違するものであるが、差異音「ス」の子音[s]は、摩擦音の中でもその響きが長くなる傾向が強いという構音特性を有するから、「ス」の音は、それ自体明瞭な音である。
してみれば、これを含め全体の各音は、一音-音が明瞭に、並列的に発音され、かつ聴取されるものであるから、「ス」の音を有しない「モーラ」とは決して混同することがない。
さらに、発音方法についていえば、「モーラ」は、長音を含めて3音で構成されるところ、「モーラ」と一息で簡潔に発音される。一方、引用商標1及び2は、長音を含めて4音で構成されるところ、一息では発音し難いため、「モー・ラス」と間に1拍を入れて、やや間延びして発音される。
特に、「モーラ」と「モーラス」とはいずれも構成音数が極めて少ないものであるから、このような短い称呼においてはわずか1音が相違するだけであっても、全体の語調・語感に及ぼす影響は大きいといえるから、差異音となる「ス」の1音の有無によってこれらは明確に区別することができて当然である。
よって、「モーラ」と「モーラス」とは明らかに非類似であり、決して混同することがない。
このことは、乙第1号証ないし同第13号証の審決例からも明らかである。これらの審決例は、いずれも3音対4音という音構成からなる商標について、語尾の「ス」の音の有無において十分に区別できるとして、互いに類似しないと判断されたものである。
(ウ)また、「モラ」と「モラス」とを比較するにしても、両者は「ス」の1音の有無によって明確に区別することができるから、これらを混同することは決してない。
このことは、乙第14号証ないし同第22号証の審決例からも明らかである。
これらの審決例は、いずれも2音対3音という音構成からなる商標について、やはり、語尾の「ス」の音の有無において十分に区別できるとして、互いに類似しないと判断されたものである。
(エ)これらに示す審決例からも明らかなように、「モーラ」と「モーラス」、「モラ」と「モラス」の比較においても同様に非類似と判断されてしかるべきである。
もちろん、本件商標は「モーラ」ではなく「モラ」の称呼を生ずるものであるから、「モーラス」「モオルス」「モオウルス」「モルス」など、明らかに異質の称呼を生ずる引用商標1ないし5と非類似であることはいうまでもない。
オ.結論
以上のとおり、本件商標と引用商標1ないし5とは、その称呼のみならず、外観・観念のいずれにおいても互いに相紛れることのない非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第11号の規定に該当するものでないことは明らかである。
(2)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当しない理由について
ア.混同のおそれについて
たとえ「モーラス/MOHRUS」商標が周知・著名な商標であるとしても、取引者・需要者が、本件商標を使用した商品について、その商品の出所について混同を生ずるおそれはない。
(ア)第1の理由としては、そもそも商標そのものが類似しないということが挙げられる。
請求人は、本件商標と「モーラス/MOHRUS」商標との類似性を説明し、混同のおそれがあることを主張するが、両者が非類似の商標であることは既に述べたとおりであり、上記した審決例からも明らかであるから、請求人の主張には理由がない。
また、請求人は、商標「メバスロリン」(その他「メバロカット」「メバラチオン」)が「メバロチン」と類似すると判断した高裁判決(甲第185号証)を引き合いに出しているが、これらはいずれも5音対6音という比較的冗長な称呼からなる商標であるから、3音対4音という簡潔な称呼からなる商標の場合には全く採用できない事例である。
また、請求人は、商標「ZIPPY」が「ZIPPO」との関係で商標法第4条第1項第15号に該当すると判断された例(甲第186号証)を紹介しているが、これは、共に長音を含めて4音からなる商標が、子音が共通する半濁音「ピ」と「ポ」の差異において相違する程度であるから、互いに類似すると判断されても不思議ではなく、やはり本件とは全く異なる事例であり、採用できない。
よって、本件商標と「モーラス/MOHRUS」商標とが類似するという請求人の主張は理由がない。
(イ)第2の理由としては、本件商標の使用に係る商品と、「モーラス/MOHRUS」商標の使用に係る商品とは、取引者・需要者が異なるということが挙げられる。
請求人によれば、「モーラス/MOHRUS」商標は「経皮鎮痛消炎剤」であるとのことであるから、その取引者・需要者は、外科医や接骨院の医師、看護師、薬剤師など、患者に対して直接医薬品を処方・投与する者である。
一方、本件商標の使用に係る商品は、遺伝子検査用の「医療用試薬」である。これは、検体から遺伝子増幅を行うためのDNAを抽出するものであって、病原菌の同定を行うために用いられるものである。また、関連商品として、検査目的にあった個々の遺伝子を増幅させるためのキットや、病原体の同定を行うためのチップなどがある(乙第23号証及び同第24号証)。
本件商品の取引者・需要者は、医薬品の開発者・研究者、あるいは感染症を調べる検査技師などであって、患者に対して直接医薬品を処方・投与する者ではない。
請求人は、薬剤の取り違え事故を懸念して、本件商標の使用を容認することが危険であると指摘しているが、共に「薬剤」のカテゴリーに属する商品であるとはいえ、このように商品の性質だけでなく、取引者・需要者も大きく異なるとなれば、「取り違え」など起きようはずもない。
よって、本件商標と「モーラス/MOHRUS」商標とは、その商品の性質が全く異なるものであり、取引者・需要者もまた大きく異なるものであるから、これらを混同するということは決してない。
イ.結論
以上のとおり、本件商標は、請求人の「モーラス/MOHRUS」商標とは商標そのものが異なるのみならず、その取引者・需要者もまた異なるものであるから、当該商標との間で出所の混同を生ずることは決してなく、商標法第4条第1項第15号の規定に該当することもない。
(3)むすび
以上述べたとおり、本件商標は、引用商標1ないし5とは類似しないものであり、かつ、本件商標をその指定商品について使用した場合、その商品が請求人又は請求人と関係のある者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について、取引者・需要者に誤認・混同を生じさせるおそれもない。
本件商標は、何ら無効理由に該当しないことが明白である。

5 当審の判断
(1)本件商標は、前記のとおり「MORA」の文字よりなるものであるところ、この文字は、容易にローマ字読みで「モラ」と称呼し得るものであって、これを英語風に発音しても「モラ」と発音できるものであり、これを第1音を長音化させて「モーラ」と称呼すべき必然性に乏しい文字構成のものというべきである。
請求人は、英単語の「mobi1e」(モービル)、「mode」(モード)、「mo1d」(モールド)、「moment」(モーメント)、「most」(モースト)が第1音が長音化されて発音される例を挙げ(甲第8号証)、また、有名な音楽ダウンロードサイトの商標「mora」が「モーラ」の読み(称呼)が明示され(甲第188号証)、あるいは、ショッピングサイトの商標としても「mora」が使用され、「モーラ」の読み(称呼)が明示されているとして(甲第189号証)、本件商標の自然称呼は「モラ」又は「モーラ」である旨主張する。
しかしながら、我が国においては、地名や駅名、あるいは公共施設、宿泊施設の名称、観光地の地名等にローマ字が併記されることが少なくなく、また、外国語の中で英語が最も普及している実情に照らせば、特定の観念を有しない造語と認識させる欧文字商標の場合には、これをローマ字読み又は英語風読みにより称呼されるのが一般的であるといえる。そうすると、本件商標を構成する「MORA」の文字は、特定の観念を有しない造語と認識させるものであるから、ローマ字読み又は英語風読みすべきところ、ローマ字読みしたときは「モラ」と発音され、また、英語風に発音しても多くの英単語の発音例にならい「モラ」と自然に発音し得るものである。しかも、長音化させる文字の表記方法として、ローマ字の場合には、母音の上部に長音である旨の記号を付す方法があり、また、英語においては、母音に続いて「r」の文字や「h」の文字を含むことにより長音化して発音される英単語も多く存在することは一般に広く知られているところである。その上、本件商標の構成からみれば、請求人の挙げる英単語のように「モーラ」と長音を伴って発音しなければならない格別の事由は見出せないというべきである。また、請求人の挙げる「mora」に「モーラ」の読み(称呼)が明示された事例は、かえって、仮名文字を併記しない場合には、長音を伴って発音されないことを示すものともみることができる。
これに対し、引用商標1ないし4は、「モーラス」又は「MOHRUS」の文字よりなるものであり、これらの構成文字に相応して「モーラス」の称呼を生ずるものといえる。また、引用商標5は、「MORUS」の文字よりなるものであり、これよりは、英語風読みで「モラス」の称呼を生ずる他に、後述する「モーラス/MOHRUS」商標が請求人の経皮鎮痛消炎剤の商標として周知・著名であるという取引の実情に照らせば、取引者、需要者は引用商標5を「モーラス/MOHRUS」商標の1バリエーションと認識し、「モーラス」の称呼をもって取引にあたる場合もあるとみるのが相当であるから、「モーラス」の称呼も生ずるものというのが相当である。
そこで、本件商標より生ずる「モラ」の称呼と引用各商標より生ずる「モーラス」の称呼及び引用商標5より生ずる「モラス」の称呼とを比較すると、前者の「モラ」の称呼は、2音構成であるのに対し、後者の「モーラス」の称呼は、長音を含めると4音構成、「モラス」の称呼は、3音構成ということができるから、両者は構成音数において顕著な差異を有する。
また、両者は、第2音における長音「ー」の有無及び語尾音において「ス」の音の有無の差異を有するものであって、4音中2音又は3音中1音の相違を有するものである。そして、長音「ー」はその前音「モ」に吸収されがちであるため全体の称呼は平滑な印象を受けるものであり、「ス」の音にしても、無声の摩擦音で語尾に位置するとはいえ、全体として称呼する場合にはその音構成上他の音とともに明瞭に発音され、聴取されるといえるものであり、かつ、いずれも短い音構成で簡潔な称呼であるから、長音「ー」の有無及び「ス」の音の有無がそれぞれの全体の称呼に与える影響は大きいといわざるを得ないものであり、両称呼をそれぞれ一連に称呼した場合、語調、語感が異なるものとして聴取され、彼此聞き誤るおそれはないものといわなければならない。
してみれば、本件商標は、引用各商標と称呼において類似するものではないと認められる。
また、両商標は、それぞれの構成よりして外観において判然と区別し得るものであり、観念については、特定の観念を有しない造語と認識させるものであるから、比較すべくもない。
したがって、本件商標と引用各商標とは、称呼、外観及び観念のいずれの点においても類似しないものである。
(2)請求人の主張及び提出に係る証拠によれば、1988年5月に発売開始したパップ剤及び1995年12月及び2002年12月に発売開始したテープ剤の医療用「経皮鎮痛消炎剤」「モーラス/MOHRUS」は、請求人の主力商品の一つであって、請求人は、大量の販売促進用パンフレット(甲第42号証ないし同第167号証)を作成して医師や薬剤師などの医療関係者に配布し、また、日本医師会が発行する「日本医師会雑誌」(甲第168号証ないし同第178号証)に広告を継続的に掲載するなどして、宣伝広告を発売当初から継続的に行っていること、「モーラス/MOHRUS」商標を使用した腰痛等の治療に用いられる医療用「経皮鎮痛消炎剤」は、発売以来医療業界で好評を博し、その販売当初から現在に至るまで、業界第1位のシェア(甲第23号証ないし同第25号証)を誇っており、その全体の売上総計は、発売時から2004年までの累計で、5,500億円を超え(甲第22号証)、薬事ハンドブック(甲第26号証ないし同第30号証)に、消炎外用剤市場において「モーラス/MOHRUS」商品の売上高が断然トップであることが紹介され、また、国際医薬品情報(甲第31号証ないし同第39号証)においても、「モーラス/MOHRUS」商品が増収増益を続け、トップの売上を達成してきたこと等が紹介されている。
以上の事実に照らせば、「モーラス/MOHRUS」商標は、本件商標の登録出願時には、請求人の医療用「経皮鎮痛消炎剤」の商標として、取引者、需要者の間に広く認識され、周知著名性を獲得し、その周知著名性は、現在も継続しているものと認められる。
しかしながら、上記(1)における類否判断における理由と同様の理由により、本件商標は、請求人の商標「モーラス/MOHRUS」とは非類似の商標であって、請求人の挙げる判決例、本件商標の指定商品が需要者である看者の身体の安全性に深くかかわっている医薬品の商標であること等を考慮しても、これら両商標間に誤認混同を生ずる事由は見出せないといわざるを得ないから、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接した取引者、需要者がこれより直ちに「モーラス/MOHRUS」商標を連想、想起するものとは認められず、該商品が請求人又は請求人と組織的、経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について誤認、混同を生ずるおそれはないものといわなければならない。
(3)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号のいずれの規定にも違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2006-04-25 
結審通知日 2006-05-01 
審決日 2006-05-16 
出願番号 商願2004-48014(T2004-48014) 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (Y05)
T 1 11・ 262- Y (Y05)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 正和 
特許庁審判長 山口 烈
特許庁審判官 山本 良廣
伊藤 三男
登録日 2005-01-28 
登録番号 商標登録第4836515号(T4836515) 
商標の称呼 モーラ、モラ 
代理人 浜田 廣士 
代理人 恩田 博宣 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 恩田 誠 
代理人 佐藤 英二 

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