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審決分類 |
審判 一部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効としない Z03 審判 一部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない Z03 |
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管理番号 | 1136626 |
審判番号 | 無効2005-89074 |
総通号数 | 78 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2006-06-30 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2005-05-20 |
確定日 | 2006-05-08 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4403511号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4403511号商標(以下「本件商標」という。)は、「ルージュクチュール」及び「ROUGE COUTURE」の各文字を上下二段に横書きしてなり、平成11年7月30日に登録出願、第3類「せっけん類,香料類,化粧品」を指定商品として、同12年7月28日に設定登録されたものである。 第2 請求人の主張 請求人は、本件商標の指定商品中、「化粧品」についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第72号証(枝番を含む。)を提出している。 1 請求の理由 本件商標の指定商品中、「化粧品」についての登録は、商標法第4条第1項第11号及び同第16号に違反してなされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とされるべきである。 (1)引用商標 請求人が引用する登録第3358375号商標(以下「引用商標1」という。)は、「アイクチュール」及び「EYE COUTURE」の各文字を上下二段に横書きしてなり、平成7年12月22日に登録出願、第3類「せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き」を指定商品として、同9年11月14日に設定登録されたものである。 同じく登録第4274778号商標(以下「引用商標2」という。)は、「フェイスクチュール」及び「FACE COUTURE」の各文字を上下二段に横書きしてなり、平成10年3月31日に登録出願、第3類「化粧品,せっけん類,歯磨き,香料類,つけまつ毛」を指定商品として、同11年5月21日に設定登録されたものである。 (2)商標法第4条第1項第11号 (ア)商標の類似とは、比較する商標がその外観、称呼又は観念において(又はこれらのいずれかにおいて)相紛らわしく、それぞれを同ー又は類似の商品について使用したときに、その出所の混同を生じさせるおそれがある場合の両商標の状態ないしは関係をいうものとされている。 そこで、これを本件商標と引用商標1及び2とについて比較する。 (イ)本件商標は、その構成中の「ROUGE」と「COUTURE」の各文字が間隔を置いて表されているから、「ROUGE」と「COUTURE」の文字及びこれらの発音を表記したものとみるべき「ルージュ」と「クチュール」の文字よりなるものというべきである。 しかるところ、「ROUGE」及び「ルージュ」の文字は、「口紅、ほお紅、紅」を意味するフランス語(外来語)として(甲第4ないし第8号証)、化粧品の取引業界において通用しているものである。 そうすると、本件商標は、商品の普通名称を表す「ROUGE」及び「ルージュ」の文字と「COUTURE」及び「クチュール」の文字よりなるものというべきものであって、他に「ROUGE COUTURE」及び「ルージュクチュール」それぞれを常に一連不可分のものとしてのみに把握しなければならないとする特段の事情(例えば、これらはそれぞれ全体として一般に馴染みのある意味を表現するに至っている、といったような)は見出せない。 ちなみに、請求人において調査したところ、その構成中に「ROUGE」又は「ルージュ」の文字を有する多くの登録商標が存在するが、これら商標の指定商品は、いずれも「口紅」「紅」「ほお紅」であるところ(甲第9ないし第41号証)、これらの事実は、「ROUGE」及び「ルージュ」の語を巡る上記の化粧品業界における実情を反映しているものである。 そうすると、本件商標がその指定商品中の「口紅、ほお紅、紅」について使用されたとき、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「ROUGE」及び「ルージュ」の文字は、その商品が「口紅」「ほお紅」「紅」のいずれかであることを表示しているものと理解するに止まり、その構成中の「COUTURE」及び「クチュール」の文字を自他商品の識別力を有する部分と把握して、これらより生ずる称呼あるいはこれらから記憶したもの(すなわち、両者は上記の綴り字からなるものとして記憶された、いわば観念というべきもの)によって取引きに当たる場合も決して少なくないとみるのが相当である。 してみれば、本件商標は、「クチュール」の称呼並びに「COUTURE」及び「クチュール」の観念を生ずるものといわざるを得ない。 (ウ)次に、引用商標1は、「アイクチュール」及び「EYE COUTURE」の文字を二段に表してなるものであるところ、これらそれぞれを常に一連不可分のものとしてのみに把握しなければならないとする特段の事情(例えば、これらはそれぞれ全体として一般に馴染みのある意味を表現するに至っている、といったような)は見出せないから、引用商標1は、「EYE」と「COUTURE」及びこれらの発音を表示したものというべき「アイ」と「クチュール」の文字よりなるものというべきである。 しかるところ、化粧品業界においては、「アイシャドウ」(eye shadow)、「アイライナー」(eye liner)、「アイメークアップリムーバ一」(eye makeup remover)といった(甲第42及び第43号証)眼のメーキャップ用化粧品(甲第43号証)が多数取引きされている(1997年7月から1998年6月まで一年間に新発売されたものだけでも820品目に達している。:甲第42号証)。 以上の事実に照らすと、これが「アイメーキャップ用化粧品」以外の化粧品であれば格別、こと「アイメーキャップ」との関係に限っては、「EYE」及び「アイ」の文字は、当該化粧品の用途を表示するに止まり、自他商品の識別標識としては機能し得ないというべきである。 ちなみに、審判・審査例も、これらを自他商品の識別力を有するものとはみていない(甲第44ないし第71号証)。 そうすると、引用商標1が、指定商品中の「アイメーキャップ用化粧品」について使用されたとき、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「EYE」及び「アイ」の文字は、その商品が眼のメーキャップ用のものであるという用途を表示しているものと理解し、「COUTURE」及び「クチュール」の部分が自他商品の識別標識たり得るものと把握して、これらより生ずる称呼あるいはこれらから記憶したもの(すなわち、両者は上記の綴り字からなるものとして記憶された、いわば観念というべきもの)によって取引きに当たる場合も決して少なくないとみるのが相当である。 してみれば、引用商標1は、「クチュール」の称呼並びに「COUTURE」及び「クチュール」の観念を生ずるものといわざるを得ない。 (エ)さらに、引用商標2は、「フェイスクチュール」及び「FACE COUTURE」の文字を二段に表してなるものであるところ、これらそれぞれを常に一連不可分のものとしてのみに把握しなければならないとする特段の事情(例えば、これらはそれぞれ全体として一般に馴染みのある意味を表現するに至っている、といったような)は見出せないから、引用商標2は、「FACE」と「COUTURE」及びこれらの発音を表示したものというべき「フェイス」と「クチュール」の文字よりなるものというべきである。 しかるところ、「化粧品」とは、化粧に用いられる品をいうものであることは明らかであり、この「化粧品」という語における「化粧」の語は、「紅、白粉(おしろい)などをつけて顔をよそおい飾ること」をいうものとされており(甲第8号証)、このことは一般世人の間においても広く知られていることであり、また、「FACE」及びこれに通ずる「フェイス」の語が「顔」の意味の英語・外来語として広く一般に親しまれているものであることは顕著といえる事実である。 そうすると、専ら顔の化粧に用いられる化粧品(いわば“顔用化粧品“)に使用されている商標が、引用商標2のように「FACE」あるいは「フェイス」の文字と他の文字よりなるものである場合には、これに、例えば、その商標は「FACE」あるいは「フェイス」の文字と当該他の文字とで、全体として一般に馴染みある意味を表現するに至っている、といったような、その商標を常に一連不可分のものとみるのを相当とする特段の事情がない限り、当該「FACE」あるいは「フェイス」の文字は、その化粧品が顔の化粧用のものであることを表示していると理解されるに止まるとみるのが相当である。 しかるところ、引用商標2にかかる特段の事情が存在しないことは、前述のとおりであるから、引用商標2が指定商品中の専ら顔の化粧に用いられる化粧品について使用されたとき、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「FACE」及び「フェイス」の文字は、その化粧品が顔の化粧用のものであることを表示しているものと理解し、「COUTURE」及び「クチュール」の文字を自他商品の識別標識として機能するものと捉え、これらより生ずる「クチュール」の称呼並びに「COUTURE」及び「クチュール」の観念によって取引きに当たる場合も決して少なくないとみるのが相当である。 そうすると、引用商標2も、「クチュール」の称呼並びに「COUTURE」及び「クチュール」の観念を生ずるものといわざるを得ない。 (オ)以上によると、本件商標と引用商標1及び2とは、「クチュール」の称呼を同じくし、要部として記憶される部分「COUTURE」及び「クチュール」の綴りを全く同じくするものであるから、その称呼及び観念において紛らわしいものというべきである。 また、本件商標の指定商品に含まれている「口紅、ほお紅、紅」といった一群のルージュ(Rouge)と呼ばれている化粧品と、引用商標1の指定商品に含まれている「眼のメーキャップ用の化粧品」及び引用商標2の指定商品に含まれている「顔用の化粧品」とは、互いに類似の商品というべきである。 以上、本件商標と引用商標1及び2とは、その称呼及び観念において紛らわしいものであって、これらを類似の商品について使用するときは、その出所を混同させるおそれがあるというべきである。 したがって、本件商標と引用商標1及び2とは、その称呼及び観念において紛らわしい類似の商標といわざるを得ない。 さらに、引用商標1及び2は、本件商標より先順の商標出願に係る他人の登録商標である。 (カ)以上のとおり、本件商標の指定商品中の「口紅、ほお紅、紅」といった化粧品についての登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものであるから、同法第46条第1項の規定により無効とされるべきである。 (3)商標法第4条第1項第16号 本件商標中の「ROUGE」(ルージュ)の文字が、「口紅、ほお紅、紅」を意味するフランス語(外来語)として通用しているものであることは、上述のとおりであるから、これら両語を含む商標である本件商標が、上記の化粧品以外の化粧品について使用された場合には、取引者、需要者がその商品の品質を誤認することは必定である。 しかるところ、本件商標の指定商品中の「化粧品」は、「口紅、ほお紅、紅」以外の化粧品を含むものである。 そうすると、本件商標の指定商品中の「口紅、ほお紅、紅」以外の化粧品についての本件商標の登録は、商標法第4条第1項第16号に違反してなされたものであるから、同法第46条第1項の規定により無効とされるべきである。 2 弁駁の理由 (1)商標法第4条第1項第11号 (ア)同法第4条第1項第11号にいう商標の類似とは、対比する商標を同一又は類似の商品について使用したときに、その出所について誤認混同を生じさせるおそれがある場合の両商標の状態をいうものとされている。 現に、平成16年8月31日言渡の東京高裁平16(行ケ)168号事件判決も、「商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の役務等に使用された場合に、役務等の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであり、誤認混同を生ずるおそれがあるか否かは、そのような役務等に使用された商標がその外観、観念又は称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を考察し、これらに加え、その役務等についての取引の具体的な実情に照らし、その役務等の取引者及び需要者において通常に払われる注意力を基準として、総合的に判断すべきものと解される」と判示している(甲第72号証)。 以上のように、商標の類否の判断は、商標の外観、称呼又は観念の面からなされるべきであるとされているのである。 (イ)しかるところ、被請求人は、本件商標は、(a)外観上まとまりのよい一体的なものであって、(b)よどみなく一連の称呼が生じ、それも格別冗長なものではなく、(c)「ルージュ」(ROUGE)と「クチュール」(COUTURE)とを切り離す特段の事情は見当たらないから、本件商標は「ルージュクチュール」の称呼のみを生ずるとしていて、本件商標の観念についての判断は示していない。 しかしながら、かかる商標の観察が許されるとすると、例えば、ある商標が他人の登録商標に商品の名称や品質等を表示する文字を付加してなるものであっても、それが外観上、称呼上一体不可分のものでありさえすれば、その商標は、当該他人の登録商標とは非類似のものということに帰着する。 その結果、かかる事態は、当該他人の登録商標の権利者にとっては耐え難いことであり、また、取引者、需要者に両商品の出所を誤認混同させる要因となることは必至である。 このような事態の発生は、商標を観念の面からみた観察がなされていないことに起因しているといわざるを得ないところ、本件商標を観念の面から観察した場合、以下に述べる理由により、本件商標は、「ROUGE」(ルージュ)と「COUTURE」(クチュール)で分離されるべきものである。 すなわち、本件商標の構成中の欧文字部分は、その外観上の構成からみて、容易に「ROUGE」と「COUTURE」に分離されて看取されるものであり、また、片仮名文字部分は、欧文字部分から生ずる称呼に符合するものであるところから、本件商標は、「ROUGE」(ルージュ)と「COUTURE」(クチュール)という文字よりなるものと看取されるものである。 そして、このうちの「ROUGE」(ルージュ)は、「口紅、紅、ほお紅」といった商品の名称を表すものとして化粧品業界において通用しているものである(甲第4ないし第8号証)。 もっとも、「ROUGE」(ルージュ)には、「赤い」という意味もあるが、そうだからといって、これが「赤い」という意味で、「口紅、紅、ほお紅」といった意味を凌駕して一般に親しまれているといった事情はない。 そうすると、本件商標がその指定商品のうちの「口紅、紅、ほお紅」以外の商品についてはともかく、こと「口紅、紅、ほお紅」について使用されたとき、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「ROUGE」(ルージュ)の文字を、これが使用されている商品の名称を表示しているものと理解する場合も決して少なくないとみるのが相当である。 したがって、本件商標は、これを観念の面から観察した場合には、「ROUGE」(ルージュ)及び「COUTURE」(クチュール)の文字よりなるものと把握される場合も、また、決して少なくないというべきである。 しかして、「COUTURE」(クチュール)の文字は、「口紅、紅、ほお紅」といった商品との関係においては、自他商品の識別標識たり得るものであるから、本件商標は、その構成中の要部と認むべき「COUTURE」(クチュール)の部分から、「クチュール」の称呼を生ずるものといわざるを得ない。 (ウ)一方、上記の理由と同様の趣旨で、引用商標1も、これがその指定商品中の「アイメーキャップ用化粧品」(その余の指定商品についてはともかく、こと「アイメーキャップ用化粧品」に限って)について使用されたときは、その構成中の要部と認むべき「COUTURE」(クチュール)の文字部分から、「クチュール」の称呼を生ずるものである。 また、同じく引用商標2も、これがその指定商品中の「顔用の化粧品」(その余の指定商品についてはともかく、こと「顔用の化粧品」に限って)について使用されたときは、その構成中の要部と認むべき「COUTURE」(クチュール)の文字部分から、「クチュール」の称呼を生ずるものである。 したがって、本件商標と引用商標1及び2とは、「クチュール」の称呼を同じくする類似の商標といわざるを得ないところ、両商標がその称呼において同一のものでありながら、なお、両商標を非類似のものとみるのを相当とする特段の事情(例えば、化粧品業界では、取引者、需要者は、商標を常に一連不可分のものとしてのみに把握し、その一部で略称したり記憶するようなことはないとか、口頭による商取引はされていない、といったような)は見出せない。 ところで、本件商標と引用商標1及び2が存在するということは、その要部を共通にする商標を使用した同種商品(すなわち、いずれも「化粧品」という)が同一市場に流通するということになる。 しかして、このような取引場裡において取引者、需要者がこれら商品に接したとき、彼等がこれら化粧品を同一の出所より出たものと誤認、混同することは必至である。 しかるところ、商標法第4条第1項第11号は、このような事態が生ずるのを阻止すべく設けられているものである。 (2)商標法第4条第1項第16号 本件商標を観念の面から観察した場合に、全体として特定の意味を理解させないものであること、また、「ROUGE」(ルージュ)の文字が「口紅、紅、ほお紅」といった商品を指称する語として、化粧品業界の取引者、需要者間において通用しているものであることは、前記したとおりである。 したがって、本件商標がその指定商品のうち、「口紅、ほお紅、紅」といった化粧品以外の化粧品について使用されたとき、これに接する取引者、需要者がその商品を「口紅、ほお紅、紅」ではないかと、その品質を誤認するおそれがあることは明白であるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第16号に違反してなされたものといわざるを得ない。 第3 被請求人の答弁の要点 被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第27号証(枝番を含む。)を提出している。 1 商標法第4条第1項第11号 本件商標と引用商標1及び2との外観、称呼、観念の相違について、以下検討する。 (1)先ず、本件商標と引用商標1及び2とは、外観においてはいうまでもなく非類似であることは明らかである。 (2)次に、本件商標と引用商標1及び2の称呼について比較する。 本件商標は、各文字が同じ大きさ、同じ態様で表示された外観上まとまりのよい一体的なものであって、該商標からはよどみなく一連の「ルージュクチュール」の称呼が生ずる。すなわち、「ルージュクチュール」なる称呼はスムーズに発音され、格別冗長というべきではなく、「ルージュ」と「クチュール」とを切り離す特段の事情はみあたらない。 請求人は、「『ROUGE COUTURE』及び『ルージュクチュール』それぞれを常に一連不可分のものとしてのみに把握しなければならないとする特段の事情(例えば、これらはそれぞれ全体として一般に馴染みのある意味を表現するに至っている、といったような)は見出せない。」と述べている。 しかしながら、本件商標は、以前、請求人より引用商標1及び2の存在を理由とした異議申立を受けており(乙第1号証)、その決定中に「本件商標は、前記のとおり『ルージュクチュール』と『ROUGE COUTURE』の文字を二段に書してなるものであるところ、構成各文字は同書・同大にまとまりよく一体的に表示されていて、かつ、これより生ずると認められる『ルージュクチュール』の称呼も格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものであって、その構成文字中の『クチュール』『COUTURE』の文字のみが独立して認識されるとみるべき格別の事情が存するものとは認め難い」とある。 その結果、特許庁の決定により本件商標を分断して認識される格別な事情が認められないと判断されており、本件商標は一連不可分の称呼のみが生じるものとされている。そのため、請求人の本件審判における主張には先の特許庁の決定を覆すに足る証拠を要するものと思料するが、本件審判請求書中にはそれに該当する証拠を見出すことはできない。 また、請求人は、「その構成中に『ROUGE』又は『ルージュ』の文字を有する多くの登録商標が存在するが、これらの商標の指定商品は、いずれも「口紅」「紅」「ほお紅」であるところ(甲第9ないし第41号証)、これらの事実は、『ROUGE』及び『ルージュ』の語を巡る上記の化粧品業界における実状を反映しているものである」と述べている。 しかしながら、実際は「ROUGE」「ルージュ」の文字を有する登録商標の全てが「口紅」「紅」「ほお紅」を指定商品とするものではなく、他にも多くの「ROUGE」「ルージュ」の文字を有する商標が指定商品を「口紅」「紅」「ほお紅」に減縮・限定することなく登録に至っている(乙第2ないし第24号証)。これらの事実は、化粧品業界において、「ROUGE」及び「ルージュ」の語が商標中に存在したとしても、ただちに「口紅」「紅」「ほお紅」を理解させるものではないことを示していると思料する。 そのことは、前記本件商標についての異議申立中(乙第1号証)に「たとえ、構成中の『ROUGE』『ルージュ』の文字が『赤色、口紅、ほお紅』等の意味を有する語であるとしても、かかる構成においては、商品の品質を具体的に表示したものとして直ちに理解されるものとはいい難い」とあることからも明らかである。 つまり、個々の商標の構成によって「ROUGE」及び「ルージュ」の語の認識のされ方が変化するものである。そのため、本件商標は、前記異議決定のとおり、「ルージュクチュール」の一連の称呼のみを生じるものであり、請求人が主張するように、本件商標の「ROUGE」及び「ルージュ」の部分について「口紅」「紅」「ほお紅」を直ちに理解させるものとして識別力を認めずに、本件商標からは、「クチュール」の称呼が発生するとはいえないものである。 一方、引用商標1は、各文字が同じ大きさ、同じ態様で表示された外観上まとまりのよい一体的なものであって、該商標からはよどみなく一連の「アイクチュール」の称呼が生ずる。すなわち、「アイクチュール」なる称呼はスムーズに発音され、格別冗長というべきではなく、「アイ」と「クチュール」とを切り離す特段の事情は見当たらず、引用商標1からは、「アイクチュール」のみの称呼が生じるものであり、同様に引用商標2からは、「フェイスクチュール」のみの称呼が生じるものである。 ここで、本件商標や引用商標1及び2と同様、「クチュール」又は「COUTURE」と単独では自他商品の識別標識としての機能を有さない語との組合せの商標が登録されている例として、「ヘアクチュール/HAIR COUTURE」(登録第4313286号商標:乙第25号証)を挙げる。 上記登録商標は自他商品の識別標識としての機能を有しない「ヘア」の語と「クチュール」の結合した商標であり、全体で一つの商標として認識されているものである。また、「頭髪用化粧品」といった指定商品の限定もなされていない。また、上記登録商標は、被請求人保有の登録商標であり、請求人より引用商標1の存在を根拠に無効審判(2004-89075)の請求を受けたが、「本件商標は、各文字の全体に相応して『ヘアクチュール』の称呼のみを生ずるものと判断するのが相当であるから、本件商標より『クチュール』の称呼をも生ずるとし、その上で、本件商標と引用商標とが称呼上類似するものであるとする申立人の主張は、採用の限りでない。」等の理由により登録が維持されているものである(乙第26号証)。 さらに、本件同様、請求人により引用商標1の存在を理由として無効審判を請求された例(「COUTURE/クチュール」×「アイ クチュール/EYE COUTURE」、無効2003-35337号:乙第27号証)を挙げる。 上記審決中には、「引用商標は、その構成中の『アイ』、『EYE』の各文字部分からは、『目』の意味を、同じく『クチュール』、『COUTURE』の各文字部分からは、『裁縫』等の意味を理解させるものであるとしても、両語が一体不可分に結合された構成からは、特定の観念は生じないものであって、構成全体をもって、一つの造語を表したと理解されるとみるのが相当である。したがって、引用商標は、その構成文字に相応して『アイクチュール』の一連の称呼のみを生ずるものであって、造語よりなるものといわなければならない」と示されている。 また、「引用商標のように、『アイ』、『EYE』の各文字を含むものでも、その指定商品が目の周辺の化粧品に限定されていないものも存在するところからすれば、商標中に『アイ』若しくは『EYE』又はそのいずれの文字をも含む商標において、これらの文字部分が直ちに商標の用途表示となるものとはいえない。」とあり、結果として引用商標から「クチュール」の称呼が生ずるとした請求人の主張は前提において誤りであると判断されている。 したがって、本件商標と引用商標1及び2からはそれぞれ「ルージュクチュール」、「アイクチュール」、「フェイスクチュール」の称呼のみが発生するため、称呼において互いに非類似の商標であることは明らかである。 (3)さらに、本件商標と引用商標1及び2の観念については、本件商標は特定の観念を有さない造語であり、また、引用商標1及び2も特定の観念を有さない造語である。よって、本件商標と引用商標1及び2とは観念においても非類似である。 (4)以上の如く、本件商標と引用商標1及び2とは、先の認定のとおり明らかに外観、称呼、観念のいずれについても非類似の商標であり、商標法第4条第1項第11号に該当しないものである。 2 請求理由2(商標法第4条第1項第16号) (1)請求人は、「本件商標中の『ROUGE』(ルージュ)の文字が「口紅、ほお紅、紅」を意味するフランス語(外来語)として通用しているものであることは、上述のとおりであるから、これら両語を含む商標である本件商標が上記の化粧品以外の化粧品について使用された場合には、取引者、需要者がその商品の品質を誤認することは必定である。」と主張しているが、上記1で述べたとおり、「ROUGE」(ルージュ)の文字がただちに「口紅、ほお紅、紅」を表すものではないことは明らかであるため、請求人の主張は前提を失っているものである。 (2)さらに、「ヘアクチュール/HAIR COUTURE」に対する商標登録無効審判事件審決中(乙第26号証)にも、「引用商標の指定商品は、目の周辺用の化粧品に限定されていないし、被請求人の挙げる『フェイスクチュール/FACE COUTURE』『ルージュクチュール/ROUGE COUTURE』も同様である。そうすると、『アイ』、『EYE』の文字を含む商標の類否判断に当たっても、個別具体的な商標の構成に基づき、取引の実状を考慮して判断すべきものである」とあり、結果、「アイクチュール/EYE COUTURE」、「フェイスクチュール/FACE COUTURE」、「ルージュクチュール/ROUGE COUTURE」については、全体として特定の観念を生じない造語よりなるものであると判断されている。また、本件商標は、前記1(2)の商標中の1つである「ルージュクチュール/ROUGE COUTURE」である。 したがって、本件商標は商品の品質について誤認を生じさせるものではなく、商標法第4条第1項16号に該当しないものである。 第4 当審の判断 1 商標法第4条第1項第11号について (1)本件商標と引用商標との類否 (ア) 本件商標は、前記第1のとおりの構成からなるところ、その構成中の欧文字部分は、「ROUGE」の文字と「COUTURE」の文字とがやや間隔を置いて配されているとしても、構成各文字は同書、同大で外観上まとまりよく一体的に表されているものである。 また、その欧文字部分の上段に書された「ルージュクチュール」の片仮名文字は、該欧文字の読みを特定したものと認められ、構成各文字は、同書、同大で間隔をあけることなく、まとまりよく一連に表されているものである。そして、本件商標の全体より生ずる「ルージュクチュール」の称呼もさほど冗長なものではなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。 そうすると、本件商標は、その構成中の「ROUGE」及び「ルージュ」の文字が「口紅、紅、ほお紅」を意味する語であるとしても、かかる構成においては特定の商品又は商品の品質、用途等を具体的に表示するものとして直ちに理解できるものともいい難いところであるから、むしろ構成全体をもって一体不可分の一種の造語を表したものと認識し把握されるというのが自然である。 してみれば、本件商標は、その構成文字全体に相応して、「ルージュクチュール」の一連の称呼のみを生ずるものであって、親しまれた既成の観念を有しないものというべきである。 (イ) 引用商標1は、上記第2のとおりの構成からなるところ、その構成中の欧文字部分は「EYE」の文字と「COUTURE」の文字とがやや間隔を置いて配されているとしても、構成各文字は同書、同大で外観上まとまりよく一体的に表されているものである。また、その欧文字部分の上段に書された「アイクチュール」の片仮名文字は、該欧文字の読みを特定したものと認められ、構成各文字は同書、同大で殆ど間隔をあけることなく、まとまりよく一連に表されているものである。そして、本件商標の全体より生ずる「アイクチュール」の称呼もさほど冗長なものではなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。そうすると、引用商標1は、その構成中の「EYE」及び「アイ」の文字が「目」を意味する語であるとしても、かかる構成においては特定の商品又は商品の品質、用途等を具体的に表示するものとして直ちに理解できるものともいい難いところであるから、むしろ構成全体をもって一体不可分の一種の造語を表したものと認識し把握されるというのが自然である。 してみれば、引用商標1は、その構成文字全体に相応して、「アイクチュール」の一連の称呼のみを生ずるものであって、親しまれた既成の観念を有しないものというべきである。 (ウ)引用商標2も、上記(イ)で述べた引用商標1と同様、全体がまとまりよく一体に表されているものであり、これより生ずると認められる「フェイスクチュール」の称呼もさほど冗長なものではなく、よどみなく一連に称呼し得るものであるから、たとえ、その構成中の「FACE」及び「フェイス」の文字が「顔」を意味する語であるとしても、かかる構成においては特定の商品又は商品の品質、用途等を具体的に表示するものとして直ちに理解できるものともいい難いところであるから、むしろ構成全体をもって一体不可分の一種の造語を表したものと認識し把握されるというのが自然である。 してみれば、引用商標2は、その構成文字全体に相応して、「フェイスクチュール」の一連の称呼のみを生ずるものであって、親しまれた既成の観念を有しないものというべきである。 (エ)そこで、本件商標より生ずる「ルージュクチュール」の称呼と引用商標1より生ずる「アイクチュール」の称呼及び引用商標2より生ずる「フェイスクチュール」の称呼とを比較するに、それぞれ後半部の「クチュール」の音を共通にするとしても、前半部における「ルージュ」と「アイ」及び「フェイス」との音の差異により、それぞれを一連に称呼するときは全体の音感音調が明らかに異なることから、相紛れることなく、明瞭に区別し得るものである。 そして、本件商標と引用商標1及び2とは、それぞれの構成に照らし、外観上判然と区別し得る差異を有するものであり、また、いずれも親しまれた既成の観念を有しないものである以上、観念については互いに比較すべくもない。 してみれば、本件商標と引用商標1及び2とは、称呼、外観及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。 (オ)したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。 (2)請求人の主張について (ア)請求人は、「ROUGE」又は「ルージュ」の文字を構成中に有する多くの登録商標が指定商品を「口紅」、「紅」、「ほお紅」に限定していることは、「ROUGE」及び「ルージュ」の語に係る化粧品業界の実情を反映しているものである旨主張している。 しかしながら、請求人が掲げる登録商標以外にも「ROUGE」又は「ルージュ」の文字を構成中に有する登録商標が多く存在しており、それらは指定商品を特に「口紅」、「紅」、「ほお紅」に限定することなく登録されていることからすれば、請求人の掲げる登録例をもって直ちに化粧品業界の実情を反映するものであるとまではいえないから、請求人の主張は採用することができない。 (イ)また、請求人は、引用商標1における「EYE」及び「アイ」の文字に関し、化粧品業界においては「アイシャドウ」、「アイライナー」等の眼のメーキャップ用化粧品が多数取引されており、「EYE」及び「アイ」の文字は化粧品の用途を表示する語にすぎない旨主張し審査例を挙げている。 しかしながら、上記眼のメーキャップ用化粧品は、請求人も掲げるように、「EYE」又は「アイ」の文字と他の語が付されて全体で商品の名称として認識されているものであり、その付される他の語によって別異の商品となっているものであるし、「EYE」又は「アイ」の文字を構成中に有することのみをもって直ちに商品の用途を表示するものとして認識し理解されるものではない。このことは、引用商標1の指定商品が目のメーキャップ用化粧品に限定されていないことからも首肯し得るものである。 同様に、引用商標2も、その構成中の「FACE」及び「フェイス」の文字が顔用の化粧品であることを表示したものとして認識し理解されるものということはできないし、その指定商品も顔用の化粧品に限定されているものではない。 もとより、商標の類否の判断に当たっては、対比されるべき商標の構成に基づき個別具体的に判断すべきものであり、必ずしも過去の審査例等に拘束されるものではない。 よって、請求人の上記主張は採用することができない。 2 商標法第4条第1項第16号について 本件商標は、上述のとおり、一体不可分の一種の造語として認識し把握されるものであるから、ことさら、その構成中の「ROUGE」又は「ルージュ」の文字部分に着目して「口紅、ほお紅、紅」を認識するようなことはないというべきであり、いずれの指定商品について使用しても商品の品質の誤認を生ずるおそれはないというのが相当である。 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第16号に該当するものではない。 3 まとめ 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第16号のいずれにも違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定によりその登録を無効にすべき限りでない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-02-15 |
結審通知日 | 2006-02-20 |
審決日 | 2006-03-22 |
出願番号 | 商願平11-68779 |
審決分類 |
T
1
12・
26-
Y
(Z03)
T 1 12・ 272- Y (Z03) |
最終処分 | 不成立 |
特許庁審判長 |
山田 清治 |
特許庁審判官 |
水茎 弥 久我 敬史 |
登録日 | 2000-07-28 |
登録番号 | 商標登録第4403511号(T4403511) |
商標の称呼 | ルージュクチュール、クチュール |
代理人 | 成合 清 |