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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 109
管理番号 1136619 
審判番号 取消2004-30920 
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-06-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2004-07-15 
確定日 2006-05-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第2702516号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2702516号商標(以下「本件商標」という。)は、後掲のとおりの構成よりなり、平成3年12月16日に登録出願、第9類「産業機械器具、動力機械器具、風水力機械器具、事務用機械器具、その他の機械器具で他の類に属しないもの、これらの部品および附属品」を指定商品として、同7年1月31日に設定登録、その後、同17年2月8日に商標権存続期間の更新登録がなされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品中「化学機械器具及びこれらに類似する商品、半導体製造装置及びこれらに類似する商品」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由、被請求人の答弁並びに審尋についての被請求人の回答に対する弁駁を要旨次のように述べた。
1 請求の理由
請求人が調査したところでは、本件商標は、継続して3年以上日本国内において、その指定商品中「化学機械器具及びこれらに類似する商品、半導体製造装置及びこれらに類似する商品」について商標権者、専用使用権者若しくは通常使用権者によって使用されている事実を見いだすことができない。
したがって、本件商標の登録は、その指定商品中「化学機械器具及びこれらに類似する商品、半導体製造装置及びこれらに類似する商品」について、商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁(第1回)
(1)使用に係る商標について
(A)被請求人の提出に係る証拠中、乙第1号証及び乙第2号証には「ロゴ体の欧文字BL+片仮名文字クイックチェンジ」なる態様の本件商標が表示されている。
確かに、カタログや会社案内等に標章を表示する行為は、商品又は役務に関する広告とされているのであるから、本件商標を乙第1号証及び乙第2号証に表示する行為は、ある一定の条件を満たせば「エンドエフェクタ自動交換装置」の広告に標章を付して頒布する行為とみなし得ることを請求人は、否定するものではない。
しかしながら、乙第1号証及び乙第2号証のいずれについても、印刷年月日、印刷者、配布の時期・部数・配布先が明らかにされていない。これらの事実が一切明らかにされていない状況にあって、「当該製品カタログ(乙第2号証)を大日本スクリーン製造株式会社を始めとする多数の製造業者に頒布」との記載にいかほどの信憑性あるのか、甚だ疑問である。
さらに、使用事実を証明する書類は、商標の使用者、使用に係る商品、使用商標、使用時期等が明確に判別できることが求められているところ、乙第1号証及び乙第2号証のいずれからも「使用時期」を明確に判別することができない。乙第1号証の裏表紙には、「00H0930-03」との(2000年9月の意味か。それならば、本件審判請求の予告登録前3年以内に該当しない。)、乙第2号証の裏表紙には「2003.10」(2003年10月の意味か。)との記載を見ることができる。しかしながら、乙第1号証及び乙第2号証は、いずれも会社案内及びカタログをカラーコピー(乙第1号証の一部は白黒コピー。)したものである。自社の作成に係るカタログ等について、原本ではなく複写したものを取消審判における使用証拠として提出するとは、不可解な行為といわざるを得ない。特に乙第2号証に至っては、パンチ孔を開けてファイルされていたものを複写したのであろうか、孔のあとがはっきり見て取れる。このような証拠をもってしては、使用時期を判別することは、不可能である。
(B)その他の証拠に表示されている標章について検討する。
乙第3号証及び乙第8号証においては、「クイックチェンジ」、乙第6号証においては、「BLクイックチェンジ」の標章が表示されている。しかしながら、本件商標は、「ロゴ体の欧文字BL+片仮名文字クイックチェンジ」であって、「クイックチェンジ」でも「BLクイックチェンジ」でもない。乙第3号証、乙第8号証及び乙第6号証において使用されている標章は、いずれも本件商標ではなく、社会通念上同一の標章でもない。
(C)以上のとおり、本件商標が表示されているのは、乙第1号証及び乙第2号証のみであるところ、いずれも印刷年月日、印刷者、配布の時期・部数・配布先が明らかにされておらず、その上、いずれもカラーコピーされたものであるので、証拠として充分な信頼性があるとは認められない。よって、乙第1号証及び乙第2号証は、採用されるべきではない。
(2)使用に係る商品について
被請求人は、本件商標を「エンドエフェクタ自動交換装置」(型番:QC-20C-S44)に使用していると答弁し、本件商標の使用に係る「エンドエフェクタ自動交換装置」は、「半導体製造装置の部品」であるとしている。そこで、被請求人の主張による使用が、半導体製造装置の部品としての使用に該当するかについて、以下に検討する。
(A)「エンドエフェクタ自動交換装置」とは、乙第1号証及び乙第2号証によると「ロボットや自動機のハンドやツールを自動的に交換するための装置」であって、主な適用分野は、乙第2号証によると「組立て作業、ハンドリング、パレタイジング、バリ取り作業、研磨作業、マテハン溶接、スポット溶接ガン交換」である。したがって、乙第1号証及び乙第2号証に記載の「エンドエフェクタ自動交換装置」は、いずれも汎用的な性格のものであり、具体的には、如何なる用途に使用されるか不明な状態である。つまり、乙第1号証及び乙第2号証は、本件商標がいまだ用途の定まらぬ「エンドエフェクタ自動交換装置」に使用されていることを示すにすぎない。
被請求人は、「クリーンルーム仕様-中略-、といった特殊モデルも製造販売している。」と述べているが、その製造過程においてクリーンルームを要する製品は、半導体のみではない。光学レンズ、精密測定器、時計・カメラの組み立て等、クリーンルームを要する製品は、半導体以外にも数多く存在する。乙第1号証・乙第2号証のいずれも、被請求人の「エンドエフェクタ自動交換装置」が半導体製造装置の部品として使用されていることを示していないのであるから、「クリーンルーム仕様」の商品が被請求人のカタログに表示されていることをもってしては、被請求人の「エンドエフェクタ自動交換装置」が「半導体製造装置」の部品として使用されていることの証拠にはならない。
被請求人が自ら述べるところによると、「半導体製造装置に組み込まれる『エンドエフェクタ自動交換装置』においては、半導体製造装置に要求される厳しい環境条件や半導体製造装置メーカーの仕様等に対処する必然性より、被請求人は、半導体製造装置メーカー毎に個別の特殊モデルを設計し、それらを半導体製造装置の部品として製造販売続けている。」そうである。これら「個別に設計された特殊モデル」と乙第2号証に記載の「エンドエフェクタ自動交換装置」を同一視することはできない。「当該部品(型番:QC-20C-S44)を含む『エンドエフェクタ自動交換装置』の製品カタログに本件商標を明瞭に表示することにより」という結語における記載は、当該カタログには当該部品は一切掲載されていないのであるから不正確である。「個別に設計された特殊モデル」に本件商標を使用していると被請求人は、主張しているのであるから、「個別に設計された特殊モデル」に本件商標を使用していることを立証すべきである。
(B)被請求人は、本件商標の使用に係る「エンドエフェクタ自動交換装置」(型番:QC-20C-S44)は、「半導体製造装置」の部品であり、「大日本スクリーン製造株式会社の要求に基づいて設計した、同社が製造販売する半導体製造装置ウェットステーションFC-3000用の専用品」と述べている。
上記の被請求人の陳述を総合的に判断するならば、その要旨は、被請求人の製造に係る「エンドエフェクタ自動交換装置」(型番:QC-20C-S44)は、「半導体製造装置」の範疇に属する大日本スクリーン製造株式会社製の「半導体洗浄装置ウェットステーションFC-3000」の部品として使用されているということになろうと思われる。
大日本スクリーン製造株式会社の「納入仕様書作成依頼書」の写しであるとされる乙第8号証には、「機種名:FC3000」の記載があり、被請求人の「購入品納入仕様書」の写しであるとされる乙第6号証にも「FC3000」の記載がある。大日本スクリーン製造株式会社の「半導体製造装置 総合カタログ」をカラーコピーした乙第5号証には、「ウェットステーションFC-3000」の記載がある。
大日本スクリーン製造株式会社の注文書の写しとされる乙第3号証と、被請求人発行の納品書・請求書の写しとされる乙第7号証の内容は、数量においても時期においても符合しているようである。これらの証拠に記載された内容をひとまず信じるならば、マスタ・プレート1ケ、ツール・プレート3ケが、被請求人より大日本スクリーン製造株式会社に販売されたことになるが、この数量は、「業として製造・販売」とは、到底言い難い数量である。
被請求人は、上記の乙第8号証、乙第6号証及び乙第5号証において「FC3000」又は「FC-3000」の記載があることを、乙第3号証及び乙第7号証において取引の対象となっている「エンドエフェクタ自動交換装置」(型番:QC-20C-S44)が、大日本スクリーン製造株式会社の「ウェットステーションFC-3000」の専用品であるとの主張の根拠にしているようである。
しかしながら、乙第8号証は、被請求人が保管していた依頼書の写しであり、乙第6号証は、被請求人の作成に係る書類の写しであるから、何らの証明も付されていない現状では、客観的な証拠とはいえない。さらに、乙第5号証は、カタログをカラーコピーしたものであるから、裏表紙の「2002年11月発行」との記載を鵜呑みにすることはできない。「エンドエフェクタ自動交換装置」(型番:QC-20C-S44)は、「ウェットステーションFC-3000」の部品であると主張するからには、信頼性に疑義の生じない証拠に基づくべきである。
(C)「エンドエフェクタ自動交換装置」とは、「ロボットや自動機のハンドやツールを自動的に交換するための装置」であるから、「エンドエフェクタ自動交換装置」(型番:QC-20C-S44)が、「半導体洗浄装置ウェットステーションFC-3000」の部品として使用されているならば、当該「ウェットステーションFC-3000」には、ロボット又は自動機が備わっていなければならない。しかしながら、大日本スクリーン製造株式会社の「半導体製造装置 総合カタログ」をカラーコピーした乙第5号証に掲載された「ウェットステーションFC-3000」の特長には、ロボット又は自動機に関する記載が全くないし、写真を見ても、ロボット又は自動機の存在を確認することはできない。ロボット又は自動機が存在しなければ「エンドエフェクタ自動交換装置」を使用する機会は、ない筈である。
したがって、被請求人は、「ウェットステーションFC-3000」には、ロボット又は自動機が備わっており、そのロボット又は自動機は、ハンド又はツールの交換を必要とする複数の作業をこなすものであり、そのロボット又は自動機に被請求人の製造に係る「エンドエフェクタ自動交換装置」(型番:QC-20C-S44)が使用されていることを立証すべきであるにもかかわらず、これらについて、一切立証することなく、「乙第6号証には『発注品がFC-3000用のロボットのエンドエフェクタ自動交換装置であること-中略-が明確に表示されている』」と片付けている。しかしながら、前記の立証がなされない限り、「エンドエフェクタ自動交換装置」(型番:QC-20C-S44)が、大日本スクリーン製造株式会社製の「半導体洗浄装置ウェットステーションFC-3000の部品」として使用されているとの主張を認めることはできない。
乙第6号証中の「1.概要」には、「半導体洗浄装置FC-3000及びFC-3000有機のロボットのエンドエフェクタ自動交換装置」なる記載がある。これは、提出された乙第1号証ないし乙第8号証において「半導体洗浄装置FC-3000」と「ロボット」を関連付けている唯一の記載であるから、乙第6号証は重要な証拠である筈である。
ところが、乙第6号証は、目次から察するに表紙と目次を別にして少なくとも61ページに及ぶ文書であるにもかかわらず、概要のたった1枚の写ししか提出されていないのは、いかなる理由からであろうか、不可解というべきである。乙第6号証として文書全体を提出せずにごく一部のみが提出されていること、乙第6号証に何らの証明も付されていないことを考えあわせると、これは、本件商標の取消しを免れんがために急遽作成したといって悪ければ調整した文書の写しではないかと疑わざるを得ない。急遽作成なり調整された文書の写しだとすれば、時間不足により目次に記載されたすべての内容を作成又は調整することが困難であったことは、想像に難くない。その結果概要のたった1枚の写しのみを提出したのであれば、前記の不可解さの説明もつくし、何人も乙第6号証に関して証明することは、不可能であるので、何らの証明が付されていないのも当然である。このように信頼性の乏しい乙第6号証において「半導体洗浄装置FC-3000」と「ロボット」が関連付けられていることをもってしては、「エンドエフェクタ自動交換装置」(型番:QC-20C-S44)が、「半導体洗浄装置FC-3000」の専用品であるとの被請求人の主張を受け入れることはできない。
(D)最後に、被請求人の製造販売に係る「エンドエフェクタ自動交換装置」の本質に関して、請求人の意見を述べる。
被請求人の製造販売に係る「エンドエフェクタ自動交換装置」は、「ロボットや自動機のハンドやツールを自動的に交換するための装置」であって、「ロボットを用いたFA生産ラインにおいて汎用的に用いられて」いるものである。
ロボットや自動機のハンドやツールそのものであれば、そのロボットや自動機の用途により、例えば「搬送機械器具」、「金属加工機械器具」の部品として、「搬送機械器具」、「金属加工機械器具」の類似群に属すると考えるのが妥当であろう。これらのハンドやツールは、「搬送」であれ「金属加工」であれ、その本体機械自体の機能を果たすか、少なくも、本体機械自体の機能に本来的に付随する機能を果たすであろうことからも、本体機械と同一の類似群に属するとする考えには充分理由があると思料する。
しかしながら、ハンドやツールを交換するための「エンドエフェクタ自動交換装置」の場合、この装置が使用されるロボットや自動機が例えば「搬送機械器具」、「金属加工機械器具」である場合に、これらの部品とすることは、妥当でないと請求人は、思料する。
例えば、乙第2号証の第18ページに掲載の「Flex-100A」なるモデルは、「マテハン・パレタイジング・バリ取り等さまざまの用途に応じ」とある。これは、つまり、同一の「エンドエフェクタ自動交換装置」が、「搬送機械器具」(マテハン・パレタイジング)用のロボット又は自動機のハンドやツールの交換をし、「金属加工機械器具」(バリ取り)用のロボット又は自動機のハンドやツールの交換をし得るということである。この場合に、「搬送機械器具」のロボット又は自動機に使用されるときには、「搬送機械器具」の部品であり、「金属加工機械器具」のロボット又は自動機に使用されるときには「金属加工機械器具」の部品であるとするのは、妥当であろうか。これを妥当とすると「搬送機械器具用エンドエフェクタ自動交換装置」と「金属加工機械器具用エンドエフェクタ自動交換装置」は、商品の類否を判定する一般的基準である商品の生産部門及び販売部門が同一であり、原材料、品質、用途が同一であるにもかかわらず非類似商品となってしまう。
「エンドエフェクタ自動交換装置」は、使用される機械にかかわらず、その機能はハンドやツールを交換することにあり、その機能は、使用される本体機械の機能とは関係ないものである。このように、既存の機械器具とは異なる用途に使用され、その用途が汎用的である「エンドエフェクタ自動交換装置」のごとき商品を、それが使用される商品の部品として既存の類似商品群に割り振ると、商品の類否を判定する一般的基準との整合性が失われてしまうことを請求人は、危惧するものであり、「エンドエフェクタ自動交換装置」は、それが使用される商品の部品とみなすのではなく、「エンドエフェクタ自動交換装置」という独立した商品であると考えるべきだと確信する。
以上により、仮に、被請求人の「エンドエフェクタ自動交換装置」(型番:QC-20C-S44)が、現実に大日本スクリーン製造株式会社の「ウェットステーションFC-3000」の専用品であり、被請求人がその使用を立証できたとしても、その使用は「半導体製造装置の部品」としての使用に該当するものではないと請求人は、確信する。
(3)まとめ
請求人は、被請求人の提出に係る乙第1号証及び乙第2号証の証拠としての信頼性について前記のごとくいささかの疑義をいただいているものであるが、この疑義を払拭するに足る更なる証拠が提出されたとしても、被請求人が答弁書において立証し得たのは、本件商標が「産業機械器具」の範疇に属し、いまだその用途が定まらない「エンドエフェクタ自動交換装置」に使用されたことのみであることを指摘する。
請求人は、「エンドエフェクタ自動交換装置」は、それが使用されるロボット又は自動機の部品とみなすことは妥当ではないと確信するものではあるが、被請求人は、本件商標の使用商品を「大日本スクリーン製造株式会社の要求に基づいて設計した、同社が製造販売する半導体製造装置ウェットステーションFC-3000用の専用品」であると主張する限りにおいて、使用に係る商品に本件商標が使用されていることを立証すべきである。それにもかかわらず、被請求人は、それを立証する代わりに、汎用品しか掲載されていない乙第1号証及び乙第2号証をもって、本件商標の使用であると主張しているにすぎない。
したがって、被請求人は、本件審判の予告登録日以前3年以内に本件商標「ロゴ体の欧文字BL+片仮名文字クイックチェンジ」を審判請求に係る指定商品「化学機械器具及びこれらに類似する商品、半導体製造装置及びこれらに類似する商品」に日本国内で使用していることを立証していない。
3 回答(審尋)に対する弁駁(第2回)
被請求人が回答書に添付して提出した「大日本スクリーン製造株式会社向け購入品納入仕様書写し」(乙第6号証)の全文を検討したが、全文の提出は、請求人が弁駁書で指摘した疑問点を何ら解消するものではなかった。答弁書において被請求人が述べるところの「『エンドエフェクタ自動交換装置』(型番QC-20C-S44)を大日本スクリーン製造株式会社が製造販売する半導体製造装置ウェットステーション『FC-3000』用の部品として販売した」なる主張は、乙第6号証及び乙第8号証に基づくものであるが、全文が提出された乙第6号証の内容は、疑問点を解消するどころか、被請求人の答弁書における主張と全く相容れないものを含んでいる。乙第6号証に基づく被請求人の主張は、到底、是認できるものではないので、以下にその理由を述べる。
(1)使用商品について
答弁書における被請求人の主張は、「大日本スクリーン製造株式会社が製造販売する半導体製造装置ウェットステーションFC-3000用の部品として『エンドエフェクタ自動交換装置』(型番QC-20C-S44)を販売した」というものである。
「FC-3000」は、乙第5号証によれば、「低コストでハイクリーンの300mm用洗浄装置」であって、幾つかのタイプがある半導体洗浄装置の中にあって、「ウェットステーション」と位置付けられている。「ウェットステーンョン」とは、大日本スクリーン製造株式会社のウェブサイト内の「洗浄工程」(甲第1号証)において、「ウェットステーションとは、薬液の入った槽や純水の入った槽が並んだ装置で、これらの槽にウェーハを浸して、汚染物を溶かしたり、中和したり、洗い流したのち、乾燥させる。通常のウェットステーションではひとつの槽で使える薬液が1種類なので、複数の汚染を取り除くときにはたくさんの薬液槽が並ぶ。また、異なる種類の薬液が混じるのを防ぐため、槽の構成は『薬液A-純水-薬液B-純水-薬液C-純水』となる。」と説明されている。
前記「洗浄工程」の項の説明によれば、半導体の製造工程において、洗浄で取り除く汚れとは、「ゴミ(1ミクロンメートル以下の小さなゴミ)、金属分の汚れ、炭素分(=有機汚染)、油脂、その他」であって、半導体の製造工程においては、大日本スクリーン製造株式会社の言葉を借りれば「目で見てわかるような汚れがあるウェーハは商品にならない!」 レベルの清浄度が要求されていることが理解できる。
そして、回答書に添付されて提出された乙第6号証中の第17ページの「作業要領書」との表題の文書には、「個別仕様品QC-20C-S44 に使用する部品の洗浄に適用する。」との記載があり、この個別仕様品「QC-20C-S44」とは、被請求人が「ウェットステーションFC-3000用の専用品」と主張するものである。
しかし、この「作業要領書」においては、洗浄対象部品を「水道水をいれたバケツで水洗する」(第20ページ)、「エアガンで水分を飛ばす」(第20ページ及び第22ページ)、「ウエスでくるみ、次工程におくる」(第21ページ及び第22ページ)(「ウエス」とは機械用の雑巾である)と記載されている。このような洗浄方法では、半導体製造に要求される上記の如き「清浄度」を達成することは、到底、不可能であるが、単に不可能というよりもレベルが違いすぎて論外である。
さらに、乙第6号証中の「モデル:QC-20C-S44」と明記されている「取扱説明書」(第24ページ)によると、「 7.1日常点検(始動前点検)」(第41ページ)として「電気接点部に汚れ、粉塵がついていないか確認してください。汚れや粉塵がついているときは、きれいな歯ブラシなどで清掃してください」(第41ページ)、「指で鋼球を動かし、粉塵などが付いて鋼球の動きが硬くなっていないかを、また目視で鋼球にAFEグリスが付いているかを確認ください。動きが硬いときにはきれいな歯ブラシやウエスなどで清掃し、鋼球をまわしながらAFEグリスを鋼球に塗布してください」(第42ページ)、「最低1年に一回AFEグリスを鋼球に綿棒又はハケなどで塗布ください」(第42ページ)等の点検を実施するようにとの記載があり、「7.7トラブルシューティング」(第45ページ)においては、対策処置として「エアブロー又はきれいな布などで清掃してください。ツールプレート置台にふたを付けるなどの防塵対策をしてください」(第45ページ)、「きれいな布などで鋼球を清掃してグリスを塗布してください。定期的に汚れを清掃してください」(第46ページ)、「エアブロー又はきれいな布などで清掃してください。ツールスタンドの置台にふたを付けるなど防塵対策をしてください」(第47ページ)、「きれいな歯ブラシなどで清掃してください」(第47ページ)とある。このような点検又は処置では、半導体製造に要求される上記の如き「清浄度」を達成することは、到底不可能であるが、単に不可能というよりもレベルが違いすぎて論外である。
そしてさらに、「2.5使用環境」(第30ページ)においては、「(1)暴発ガス、腐食性ガス、化学薬品溶液、海水の飛散、水、水蒸気のかかる場所では使用しないでください」、「粉塵、切粉、スパッタなどの発生や水滴、油の飛散がある場所での使用は避けてください」、「寿命が短くなったり、電気信号の導通不良をおこすことがあります」とある。ウェットステーション「FC-3000」は、上に引用したとおり、槽の構成が『薬液A-純水-薬液B-純水-薬液C-純水』となるものであって、薬液とは化学薬品溶液にほかならず、純水は水であるから、「FC-3000」が半導体洗浄装置である以上、「QC-20C-S44」は、その部品としてこの上なく不適であると結論付けざるを得ない。
大日本スクリーン製造株式会社の製造販売に係る型番「FC-3000」により特定される機械が「ウェットステーション」と称される半導体洗浄装置の範疇に入るものであることは、乙第5号証の記載及び同社のウェブサイト内の記載から、客観的事実として是認し得るものである。そして、これが事実であるかぎりにおいて、高レベルの清浄度が要求される半導体洗浄装置であって、薬液と純水を使用して半導体ウェーハを洗浄する「FC-3000」の部品として「エンドエフェクタ自動交換装置」(型番:QC-20C-S44)を使用することはありえない。
先にも述べたとおり、「エンドエフェクタ自動交換装置」(型番:QC-20C-S44)が半導体洗浄装置「FC-3000」専用品であるとの被請求人の主張は、乙第6号証及び乙第8号証をよりどころとしている。自己の商標登録の取消しを免れんためとはいえ、他社の作成に係る文書である乙第8号証を改変することは考えにくい。すると、本件審判請求の予告登録後に、被請求人が乙第6号証の「1.概要」(第1ページ)を創作し、それを証拠として提出したと考えた方がむしろ合理的である。
(2)時系列について
被請求人は、「半導体製造装置に要求される厳しい環境条件や半導体製造装置メーカーの仕様等に対処する必然性により、被請求人は、半導体装置メーカー毎に個別の特殊モデルを設計し、それらを半導体製造装置の部品として製造販売続けている。」と、更に「型番:QC-20C-S44」に関して「この型番の末枝S44は、被請求人が大日本スクリーン製造株式会社の要求に基づいて設計した、同社が製造販売する半導体製造装置ウェットステーションFC-3000用の専用品であることを意味する。」と答弁書において述べている。全文が提出された乙第6号証中の「作業要領書」(第17ページ)にも、「個別仕様品QC-20C-S44 」との記載があることは、前記のとおりである。
しかしながら、乙第8号証として提出された大日本スクリーン製造株式会社の作成に係る納入仕様書作成依頼書」は、「2003/01/27」付けの文書ではあるが、そこに押印された大日本スクリーン製造株式会社の関係者の印を見ると、最も遅い日付けは、「’03.9.04」である。したがって、この文書が作成されたのは、2003年1月27日だとしても、被請求人の入手日は、最も早くても2003年9月4日である。ところが「作業要領書」中には「実施日 西暦2003年2月16日」(第23ページ)との記載がある。2003年9月4日以降に納入仕様書作成依頼書を入手した筈の被請求人が、その納入仕様書作成依頼書に基づいて専用品として設計したと主張する「エンドエフェクタ自動交換装置」(型番:QC-20C-S44)の作業要領書を、納入仕様書作成依頼書を入手する6ヶ月以上も前である2003年2月16日に実施することは不可能である。自己の商標登録の取消しを免れんためとはいえ、他者の作成に係る文書である乙第8号証を改変することは考えにくい。すると、乙第6号証として提出された証拠は、「1.概要」(第1ページ)に創作の疑いがあるのみならず、その他の箇所においても何らかの調整がなされた可能性があり、証拠としての信憑性に疑義を抱かざるを得ない。
(4)結び
以上のとおり、全文が提出された乙第6号証に記載された事項は、被請求人の「エンドエフェクタ自動交換装置」(型番:QC-20C-S44)が大日本スクリーン製造株式会社が製造販売する半導体洗浄装置「FC-3000」の部品として使用されたという被請求人の主張を立証するどころか、その主張とは相容れないものを含んでいる。乙第6号証の一部には創作されたものではないかと疑うべき部分があり、その他の点においても何らかの調整がなされた可能性があり、証拠としての信憑性には、疑義を抱かざるを得ない。結局のところ、「『エンドエフェクタ自動交換装置』(型番:QC-20C-S44)を大日本スクリーン製造株式会社が製造販売する半導体製造装置ウェットステーションFC-3000用の部品として販売した」との被請求人の主張は、回答書とともに提出された証拠によって立証されるどころか、むしろ疑わしいものとなった。

第3 被請求人の答弁及び審尋に対する回答
1 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第8号証(乙第2号証及び乙第6号証においては、審尋に対する回答書と同時に提出されたものをいう。)を提出した。
(1)被請求人
被請求人ビー・エル・オートテック株式会社は、主に産業用のロボットや自動機械の関連機器等の設計製造販売を行う営業主体である(乙第1号証)。
1987年5月15日に設立以来、国内外の多数の製造業者向けに生産設備のFA(ファクトリーオートメーション、以下同じ)化に貢献する力覚センサ、エンドエフェクタ自動交換装置、位置誤差修正装置、ロボット手首軸用回転継手、過負荷保護装置等の独自の開発製品やこれらを備えた取扱機器を納入し続けており、我が国においては産業用オートメーション関連機器メーカーとしての地位を築いている。
(2)本件商標が付される商品の説明
本件商標は、被請求人が設計製造販売を行う商品「スポット溶接ロボット用ガンチェンジャ」及び「エンドエフェクタ自動交換装置」について使用するものである(乙第1号証「会社案内」の3頁目及び4頁目「BLクイックチェンジ」の欄)。
商品「スポット溶接ロボット用ガンチェンジャ」とは、ロボットによるスポット溶接工程でのマテハン溶接及びトランス内蔵スポットガンの自動交換用デバイスであるが、本件取消審判請求に係る指定商品「第9類 化学機械器具及びこれらに類似する商品、半導体製造装置及びこれらに類似する商品」のいずれかについての本件商標の使用をしていることを証明すれば足りることから、本答弁書においては、商品「エンドエフェクタ自動交換装置」に限定して、請求に係る指定商品についての本件商標の使用事実を以下に証明することとする。
商品「エンドエフェクタ自動交換装置」とは、ロボットや自動機のハンドやツールを自動的に交換するための装置である(乙第1号証「会社案内」の3頁目「BLクイックチェンジ」の欄、乙第2号証「エンドエフェクタ自動交換装置」の製品カタログ第2頁及び第3頁)。この「エンドエフェクタ自動交換装置」を用いると、生産ラインに置かれたロボットは、「エンドエフェクタ自動交換装置」を介してロボットの手先に取り付けられたエンドエフェクタ(通称ハンド・ツール)を作業内容に応じて各種のハンド・ツールに適時取り替えることで、より複数化かつ多機能的な作業を遂行することができるため、生産ラインの効率化や時間短縮によるコストダウンを図ることができる。更には、多数のハンド・ツールを備えることで、生産ラインを流れる対象物の種類に応じたハンド・ツール・チェンジにより、一層フレキシブルな作業にも対処できるため、消費者ニーズの多様性に伴い生産業者に求められる多品種少量生産体制に応える最適の装置として、その重要性は、ますます高まっている。
この「エンドエフェクタ自動交換装置」は、乙第2号証の第2頁及び第3頁の説明書きより明らかなとおり、ロボットの手首部分に取り付けられるマスタ・プレートと、生産ラインを流れる対象物に加工等の処置を施すハンド・ツールを取り付けるツール・プレートにより構成され、マスタ・プレートとツール・プレートとは、マスタ・プレートに備えられた空気圧ポートの作用によって相互に着脱するようになっている(同号証の第28頁及び第29頁)。マスタ・プレートとツール・プレートが締結している状態において、ロボットからの空気圧や電気信号がツール・プレートを介してハンド・ツールに伝わることにより、対象物に対して加工等の処置が迅速かつ確実に施される。所定の処置が完了すると、マスタ・プレートは、次の処置に必要となるハンド・ツールを取り付けた別のツール・プレートに取り替わるよう、一連のツール・プレート着脱動作を行う。
「エンドエフェクタ自動交換装置」は、このような機能を発揮する商品であるため、ロボットを用いたFA生産工程において、主に組立て作業やハンドリング、パレタイジング、バリ取り作業、研磨作業、マハテン溶接、といった分野において適用されており(乙第2号証の第3頁)、生産設備のFA化が普及している昨今においては、様々な分野の産業用ロボットや、これらの機能を内蔵する製造装置等の中枢部品として頻繁に使われている。
このように、「エンドエフェクタ自動交換装置」は、様々な用途に使われることから、可搬重量や許容モーメントといった負荷条件レベルに応じて型番の異なる標準モデル(例:Light-5A、QC-10A、QC-20C、Flex-40A、他)をそろえており(乙第2号証の第4頁ないし第21頁)、更に個別の客先ニーズを反映した耐モーメント特性アップ仕様や非接触式電気信号仕様、クリーンルーム仕様、大誤差修正仕様、といった特殊モデルも製造販売している(乙第2号証の第31頁)。
(3)半導体製造装置の部品としての本件商標の使用について
以上に示すように、「エンドエフェクタ自動交換装置」は、ロボットを用いたFA生産ラインにおいて汎用的に用いられており、完全無人化された超クリーンなFA生産ラインを必要とする半導体製造工程に供する各装置に関しても、半導体の品質確保及びロボットの作業効率化の観点より、「エンドエフェクタ自動交換装置」は、必要不可欠な中枢部品として使用されている。
この半導体製造装置に組み込まれる「エンドエフェクタ自動交換装置」においては、半導体製造装置に要求される厳しい環境条件や半導体製造装置メーカの仕様等に対処する必然性より、被請求人は、半導体製造装置メーカ毎に個別の特殊モデルを設計し、それらを半導体製造装置の部品として製造販売続けている。
ここで、請求に係る指定商品「半導体製造装置及びこれらに類似する商品」に該当する「半導体製造装置の部品」について、被請求人が本件商標の使用をしていることを証明する製造販売実績の一例を、以下に挙げる。
被請求人は、本件取消審判請求日の6ヶ月前にあたる平成16年1月14日に、半導体機器カンパニーである大日本スクリーン製造株式会社より、「半導体製造装置の部品」として商品「エンドエフェクタ自動交換装置」(型番:QC-20C-S44)の発注を受けた(乙第3号証)。なお、乙第3号証は、電子データにより入力された発注情報を紙出力したものである関係上、紙面では型番の末枝S44のうち末尾の数字4が欠落している。
この型番の末枝S44は、被請求人が大日本スクリーン製造株式会社の要求に基づいて設計した、同社が製造販売する半導体製造装置ウェットステーションFC-3000用の専用品であることを意味する。
大日本スクリーン製造株式会社は、1943年の創業以来、画像処理技術をコアとして発展してきた国内製造メーカーであり、最近では印刷工程のデジタル化を促進する印刷製版関連機器から半導体やフラットパネルディスプレー、プリント配線版製造装置等のエレクトロニクス産業機器を開発・製造しており、2003年度の連結売上高1,919億円に占める半導体・フラットパネルディスプレー製造装置の割合は、62%に達している(乙第4号証)。
大日本スクリーン製造株式会社が製造するウェットスクリーンFC-3000とは、「洗浄→成膜→レジストコーティング→露光→現像→エッチング→不純物注入→レジスト剥離→組立・検査」という半導体製造工程において、洗浄工程やエッチング工程、レジスト剥離工程を担う300ミリメートル用洗浄装置である(乙第5号証「半導体製造装置総合カタログ」の第9頁)。
大日本スクリーン製造株式会社からの発注を受けて、被請求人が大日本スクリーン製造株式会社に提出した平成16年1月28日付けの購入品納入仕様書(乙第6号証)には、発注品がFC-3000用のロボットのエンドエフェクタ自動交換装置であること、及び、製品名「BLクイックチェンジ」、型番「QC-20C-S44」が明確に表示されている。本発注に対して、被請求人が製造を行い、平成16年2月6日に半導体製造装置の部品として販売したことは、乙第7号証により明らかである。
なお、上記商品が半導体製造装置の部品であることを証明するものとして、大日本スクリーン製造株式会社による納入仕様書作成依頼書(乙第8号証)を提出する。当該書類には、ウェットステーションFC-3000の型番であるFC3000が対象製品の機種名として記載されていることから、品名に記載された「QC-20C-S44」が半導体製造装置ウェットステーションFC-3000の部品であることは、明らかである。
上記商品を販売するために被請求人が作成した商品「エンドエフェクタ自動交換装置」の製品カタログ(乙第2号証)には、表紙上部並びに各頁の頁上端部に本件商標が明瞭に表示されており、2頁の本文中においても、本件商標の表示に続いて「(エンドエフェクタ自動交換装置)は、ロボットや自動機のハンドやツールを自動的に交換するための装置」との記載がある。
被請求人は、当該製品カタログ(乙第2号証)を大日本スクリーン製造株式会社を始めとする多数の製造業者に頒布しており、商品「エンドエフェクタ自動交換装置」の購入を希望する製造業者は、製品カタログ(乙第2号証)に記載された本件商標から、その称呼である「ビー・エル・クイックチェンジ」又は「クイックチェンジ」を用いて被請求人に購入の意思表示を行い、上述の実績例からも明らかなように、用途に応じた型番を最終的に決定した上で、被請求人に商品を発注するのである。
(4)結語
以上を要するに、被請求人は、半導体製造装置の部品である「エンドエフェクタ自動交換装置」(型番:QC-20C-S44)を、本件取消審判請求の登録前3年以内に製造販売を行っており、当該部品(型番:QC-20C-S44)を含む「エンドエフェクタ自動交換装置」の製品カタログに本件商標を明瞭に表示することにより、本件商標をその指定商品中「半導体製造装置及びこれらに類似する商品」に関する広告又は取引書類に付して頒布することにより、使用している。
したがって、本件商標は、商標法第50条第2項の規定により、その登録を取り消されるべきものではない。
2 審尋に対する回答
乙第2号証「エンドエフェクタ自動交換装置」の製品カタログについて、2003年10月付け製品カタログを本書にて再度提出する。
乙第6号証「大日本スクリーン製造株式会社向け購入品納入仕様書写し」について、全文の写しを本書にて提出する。

第4 審尋
当審は、職権により平成17年6月24日付けで以下の内容の審尋を発した。
答弁書副本に添付提出された乙第2号証「エンドエフェクタ自動交換装置」の製品カタログ(写し)は、答弁書正本に添付提出された乙第2号証「エンドエフェクタ自動交換装置」の製品カタログと異なり(裏表紙に2004.6とあるのに対し、副本のそれは、2003.10となっています。)ます。正しいものを再度提出してください。
答弁書(正・副)に添付提出された乙第6号証「大日本スクリーン製造株式会社向け購入品納入仕様書写し」は、全文の写しを提出すると共に、原本を提示してください。

第5 当審の判断
商標法第50条第1項の商標登録取消しの審判にあっては、同法第2項において、その審判の請求の登録(本件の場合、平成16年8月4日)前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを証明し、又は、使用していないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、商標権者は、その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れない。
そこで、被請求人の提出に係る答弁書を徴するに、乙第1号証は 被請求人の2003年5月6日現在とする会社案内パンフレットであり、これによれば、被請求人は、1987年5月15日に設立されたロボット・自動機械の関連機器の設計製造販売を業とする神戸市に所在する株式会社であること、及び、商品の納入先も多数の企業にわたっていることが認められ、また、被請求人の「エンドエフェクタ交換装置」「スポット溶接ロボット溶岩チェンジ」なる製品を表すものとして本件商標と社会通念上同一の商標を使用していることが認められる。
乙第2号証は、2003年10月発行の被請求人の「エンドエフェクタ交換装置」の商品カタログであるが、これによれば、社会通念上同一の商標の下に様々なモデルが取り扱われていることが認められ、被請求人の「エンドエフェクタ自動交換装置」は、様々な用途に使われることから、可搬重量や許容モーメントといった負荷条件レベルに応じて型番の異なる標準モデル(例:Light-5A、QC-10A、QC-20C、Flex-40A、他)がそろえられており、更に個別の客先ニーズを反映した耐モーメント特性アップ仕様や非接触式電気信号仕様、クリーンルーム仕様、大誤差修正仕様、といった特殊モデルも製造販売しているとの主張を裏付けている。
乙第3号証は、請求外「大日本スクリーン製造株式会社」(以下「大日本スクリーン」という。)からの被請求人に対する2004年1月14日付けの商品の注文書写しであるが、そこには、品名として「クイックチェンジ QC-20C-S4」の文字が三段にわたって記載されている。
乙第4号証は、大日本スクリーンのインターネットホームページ掲載記事写しであるが、これよりは、大日本スクリーンが「半導体製造装置」を取り扱っていることが認められる。
乙第5号証は、大日本スクリーンの取り扱いに係る半導体製造装置 総合カタログの写しであるが、その9頁には、半導体製造工程で使用される洗浄装置の機種として「ウェットステーション FC-3000」があることが認められる(この点は、請求人提出の甲第1号証とも符合する。)。
乙第6号証は、2004年1月28日付けの大日本スクリーン向け被請求人の購入品納入仕様書写しであるが、これには、製品名として「BLクイックチェンジ」「QC-20C-S44」との記載があり、「概要」として「半導体製造装置FC-3000及びFC-3000有機のロボットのエンドエフェクタ自動交換装置。」の記載が認められる。
乙第7号証は、2004年2月6日付け大日本スクリーン向け被請求人の納品書及び請求書(控えを含む)写しであるが、これには、売り上げ品名として「QC-20C-S44-M」及び「QC-20C-S44-T」の記載が認められる。
乙第8号証は、2003年1月27日付け大日本スクリーンの被請求人向け納入仕様書作成依頼書写しであるが、これには、品名として「BLクイックチェンジ QC-20C-S44」、及び、機種名として「FC-3000」の記載が認められる。
そして、被請求人は、「この半導体製造装置に組み込まれる『エンドエフェクタ自動交換装置』においては、半導体製造装置に要求される厳しい環境条件や半導体製造装置メーカーの仕様等に対処する必然性より、被請求人は半導体製造装置メーカ毎に個別の特殊モデルを設計し、」と述べ、また、「この型番の末枝S44は、被請求人が大日本スクリーン製造株式会社の要求に基づいて設計した、同社が製造販売する半導体製造装置ウェットステーションFC-3000用の専用品であることを意味する。」と述べているが、商品の性格から見れば、妥当なところであり、また、特に、型番の末枝S44に関する主張は、乙第3号証、乙第6号証、乙第7号証及び乙第8号証の取引関係書類に符合している。
以上の事実からは、被請求人は、ロボット・自動機械の関連機器の設計製造販売に係る製造メーカーであり、ロボットや自動機のハンドやツールを自動的に交換するための装置「エンドエフェクタ自動交換装置」に本件商標と社会通念上同一の商標を付し(乙第1号証及び乙第2号証)、2003年1月27日に大日本スクリーンから納入仕様書作成依頼を受け(乙第8号証)、2004年1月28日にこれを作成し(乙第6号証)、これに先立つ2004年1月14日に当該商品の注文を受け(乙第3号証)、2004年2月6日に当該商品を納品した(乙第7号証)ことが認められ、これらは、すべて本件審判請求の登録前3年以内に該当する。
また、当該商品は、相手方である大日本スクリーンが製造販売する半導体製造過程で使用する洗浄装置の機種「ウェットステーション FC-3000」の専用部品として発注を受け、製造し、納品したものであるから、「ウェットステーション FC-3000」が半導体製造過程で用いられる商品であってみれば、これは、半導体製造装置の部品といい得るものである。
してみれば、本件商標と社会通念上同一の商標を本件取消請求に係る商品中の「半導体製造装置の部品」について、被請求人によって、本件審判請求の登録前3年以内に使用されたことが推認できる。
なお、請求人は、審尋回答書に添付して提出された乙第6号証の「作業要領書」について、るる述べるところがあるが、本作業は、納品された上記部品「QC-20C-S44」についての洗浄作業要領であって、半導体製造そのものに係る作業要領のことではなく、これをもって、格別不自然といい得るものではない。
したがって、本件商標の登録は、請求に係る指定商品について、商標法第50条の規定により、取り消すべきではない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 本件商標



審理終結日 2005-11-29 
結審通知日 2005-12-05 
審決日 2005-12-19 
出願番号 商願平3-131128 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (109)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田辺 秀三青木 俊司 
特許庁審判長 大場 義則
特許庁審判官 鈴木 新五
柳原 雪身
登録日 1995-01-31 
登録番号 商標登録第2702516号(T2702516) 
商標の称呼 クイックチェンジ 
代理人 川口 義雄 
代理人 小野 誠 
代理人 坪倉 道明 
代理人 一入 章夫 
代理人 角田 嘉宏 
代理人 大崎 勝真 

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