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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 025
管理番号 1136511 
審判番号 無効2004-89049 
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-06-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-07-23 
確定日 2006-04-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第4152621号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4152621号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4152621号商標(以下「本件商標」という。)は、「Hobie SURFBOARDS」の欧文字を横書きしてなり、平成8年12月12日に登録出願され、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同10年6月5日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張の要旨
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1ないし第19号証(枝番を含む。)を提出している。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第19号、第7号、第10号及び第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき無効とされるべきである。
2 請求の利益について
請求人は、本件商標の出願・登録以前から、本件商標と同一又は類似の商標を使用し既に周知・著名性を獲得しているものである。
したがって、請求人は、本件商標の登録を無効とすることについて法律上の利益を有するものである。
3 無効原因
(1)請求人の略称及び使用商標の周知・著名性について
請求人は、米国カリフォルニア州を本拠として、関連会社やライセンシー及び販売店を通し、米国はもとより日本を含む世界各国において、サーフボードやカタマラン等のヨットその他のマリンスポーツ用具やウエットスーツ等のマリンスポーツ用被服及びTシャツ・サングラス等の商品の製造及び販売に携わっているものである。
請求人は、創立者である「Hobart Alter」が1950年(昭和25年)米国南カリフォルニアにおいてサーフボードの製造を開始したことに端を発し、その後、カリフォルニア州ダナポイントに最初のサーフボードショップを開いた。そして、請求人が1958年(昭和33年)に製造したサーフボードは、発砲スチロールとファイバーグラスを使用したもので、従来のバルサ材から作られたものに比べ、大変軽量で機能的にも優れていたためサーファー間で爆発的な人気を博した。因みに、現代のサーフボードの原型ともなったものである。そして、このサーフボードを考案した「Hobart Alter」は一躍カリスマ的存在となり、英米の一般的男性名である「Hobart」が「Hobie」の愛称で呼ばれるところから、「Hobie Alter」の通称名で呼ばれるようになり、現在でもサーファーの間で「Hobie Alter」の名を知らない者はいないほど周知となっている。
その後、請求人は、1967年(昭和42年)に、「Hobie Cat(ホビーキャット)」の名で世界的に知られるカタマラン(双胴の小舟)を考案し、その製造・販売を開始した。「Hobie Cat」の「Hobie」は、「Hobie Alter」の「Hobie」であり、「Cat」は「catamaran(双胴の小舟)」の略語である。「Hobie Cat」は、1972年(昭和47年)には世界で最も売れたカタマランとなる程まで成長し、現在ではカタマランの代名詞ともなっている。マリンスポーツの愛好家の間では「Hobie Cat」「ホビーキャット」といえば、請求人が製造・販売するカタマランを指すのが自明の事柄であり、ビーチ施設やリゾートホテルのアクティビティメニューでも「双胴の小舟」を意味する一般名詞「catamaran」「カタマラン」の代わりに「Hobie Cat」「ホビーキャット」と記されている程である(甲第3号証)。
また、請求人は、1960年代からボディボード、スノーボード、水上スキー等の製造を開始するとともに、マリンスポーツ用のスポーツウエアやサングラス等多岐にわたるマリンスポーツ用具やその関連商品の製造・販売にも携わる(甲第2号証)など、マリンスポーツ用品全般の製造・販売に携わり、マリンスポーツに新ジャンルを開拓したといわれる商品開発力、機能性を加えたデザインの優秀性などによって、マリンスポーツ分野における請求人及びその略称である「Hobie」の周知・著名性は不動のものとなっている。
そして、請求人が製造・販売する商品には、甲第2ないし第8号証で示すとおり、「H」を特殊態様で表した「Hobie」の文字、又はその文字とサーフボードの図形を組み合わせた商標、又はダイヤ型図形内にそれらを表示する商標(以下、これらの商標を「Hobie商標」という。)のいずれか又は特殊態様で表した「H」のロゴマークを使用している。そして、上述のとおり、請求人の取扱いに係る商品に付されている「Hobie商標」は、米国はもとより世界各国において、本件商標の登録出願日前から既に周知・著名性を獲得しているものである。
請求人の商品は、我が国においても早くから紹介され、サーフボードやカタマランをはじめとする商品が輸入・販売されている。即ち、カタマランについては、遅くとも昭和55年(1980年)以降には日本コールマン株式会社(甲第9号証)、信成貿易株式会社等(甲第10号証)が輸入・販売しており、これらの輸入販売会社によって製品のカタログも国内において頒布されていた。また、サーフボードについても平成4年(1992年)以降、徳島県所在のデイケードサーフファクトリーに関連会社であるスチュワートサーフボードから請求人のサーフボードが輸入されている(甲第11号証)。
ところで、請求人は、マリンスポーツの振興に大きく関与している。
即ち、「International Hobie Class Association」(以下「IHCA」と略称する。)という愛好家団体を組織し、レガッタ(ヨットレース)の主催をしている。そして、IHCAは「Hobie HOT LINE」というタイトルの隔月発行の機関紙を発行しており、その機関紙には毎週のように日本を含む世界各地で開催されるホビーキャットのレガッタ情報が記載されている(例えば甲第6号証)。また、IHCAのホームページには、「Hobie」のタイトルにより1981年以降のワールドチャンピオンシップの結果が掲載されている(甲第7号証)。さらに、請求人は、日本を含む世界各地でフリート(fleet)と呼ばれるホビーキャットの愛好家団体を組織し、ホビーキャットを楽しむ機会を提供している(甲第8及び第9号証)。我が国においては、昭和55年にIHCAの日本支部である日本ホビークラス協会が設立され、機関紙「HOBIE HOT LINE」を隔月発行するとともに毎年のようにレガッタが開催されている。また、材木座・逗子・坂の下・葉山・芦名・三戸浜・三浦・浜名湖・銚子・新潟・岩手等の各地でホビーキャットの愛好家団体であるフリートが活動している(甲第12ないし第14号証)。
これらの事実から、我が国においても本件商標の登録出願日以前から「Hobie商標」がサーフボード、カタマラン及び上記マリンスポーツ関連商品の商標として需要者の間に広く認識されており、また「Hobie」は、請求人の略称としてその周知性・著名性が確立されていたといい得るものである。
(2)本件商標と「Hobie商標」との類似性および混同可能性について
本件商標は、「Hobie SURFBOARDS」の文字からなるが、「Hobie」の文字部分が大文字と小文字を取り混ぜて表されているのに対し、「SURFBOARDS」の文字部分は大文字のみで表されていることから、視覚的に「Hobie」と「SURFBOARDS」の組み合わせからなる商標と理解・認識されるものである。
そして、本件商標の指定商品には、「サーフィン用のウエットスーツ」「サーフィン用の靴」等のサーフィン用の商品が含まれ、本件商標がこれらの商品に使用された場合、「SURFBOARDS」の文字部分は商品の用途を表示するものにすぎない。
したがって、本件商標は、「Hobie」の文字部分のみが識別力を有するものとして独立して認識される商標である。よって、本件商標と請求人の使用する「Hobie商標」は類似するものである。
なお、我が国において、請求人は、「サーフィン用のウエットスーツ」「サーフィン用の靴」等を含む「運動具」を指定商品とする登録商標「HOBIE」(登録第2235575号商標)を所有している。
さらに、サーフィンをする際に着用するTシャツやトランクス、トレーナー、ウインドブレーカー、帽子等の被服は、サーフボードその他のサーフィン用具やサーフィン用ウエットスーツ等のマリンスポーツ用品と同一のブランド名の下で販売され、また同一の店舗で販売されることが一般に行われている(甲第4及び第5号証)。
このような関係にあるマリンスポーツ用具・用品と関連商品の取引市場にあって、上述のとおり、「Hobie」は請求人の略称として、また、「Hobie商標」はサーフボード、カタマラン及びそれらに関連する商品の商標として、米国はもとより我が国においても周知・著名であるところ、「Hobie」が独立して認識される本件商標を使用した商品に接した取引者・需要者は、本件商標から「ホビー社の商品」又は「ホビー社のサーフボード用の商品」を想起・連想すること明らかである。
したがって、本件商標は、請求人の業務に係る商品と商品の出所の誤認を生ずることは明白である。
(3)被請求人の「不正の目的」ないしは「不正競争の目的」について
被請求人は、甲第15号証の1に示すとおり、米国カリフォルニア州所在のU.S.United(以下「U.S.U.」と略称する。)の代表取締役である。したがって、以下甲第15号証の各号に示す「U.S.U.」の言動は被請求人の言動といいえる。なお、甲第15号証の7及び13は被請求人自身の書簡である。
「U.S.U.」は、請求人のマリンスポーツ用品メーカーとしての伝統及び名声、またHobieブランドの価値に着眼し、請求人と被服に関する「Hobie商標」使用のライセンス契約を締結することを希望して、1996年(平成8年)11月に請求人との契約交渉を開始した(甲第15号証の1、2及び4)。
交渉開始当初は、請求人も関心をもって「U.S.U.」との交渉に応じていたが、ロイヤルティーや商標の使用権等に関するライセンス契約の内容についての意見の食い違い、強引かつ性急に契約締結を進めようとする「U.S.U.」の態度に対する不満等から交渉は決裂し、1997年(平成9年)2月下旬、請求人は「U.S.U.」に対し、ライセンスを与えないこと、そして交渉打ち切りを伝えたのである(甲第15号証の9及び11)。
甲第15号証の1に示す「U.S.U.」から請求人に宛てられたファックスの文面からわかるように、被請求人は、請求人が「Hobie商標」を使用していることを承知しており、また、「Hobie商標」の周知性について認識していたと推認できるものである(甲第15号証の1及び10)。
しかるに、被請求人は、ライセンス契約要請直後、交渉の帰趨が未だ決せられていないにもかかわらず、当該交渉が実質的に開始されてもいない平成8年(1996年)12月12日に、本件商標を商標登録出願したものである。後述のとおり、請求人が被服に関して「Hobie商標」の権利化にハードルがあり、そのことを知っていたと推認できる被請求人が「Hobie」の文字を有する本件商標を商標登録出願したのは、請求人にライセンス契約の締結を強要するという不正の目的ないしは不正競争の目的をもっていたことは明らかである。
また、被請求人は、甲第5号証に示す請求人のハウスマークであるダイヤ型図形内に「H」を特殊態様で表した「Hobie」の文字とサーフボードの図形を組み合わせた商標と同一の商標も、請求人のハウスマークとして周知であることを知りながら、これまた我が国において、未だ登録されていなかったことを奇貨として商標登録出願をした(平成9年(1997年)1月17日登録出願、平成9年商標登録願第3000号。甲第17号証)。独創的態様である「H」ロゴの請求人ハウスマークと同一の当該商標登録出願が偶然の一致などということは有り得ず、当該商標登録出願も請求人に対しライセンス契約の締結を強要するために行ったものであること明白である。なお、当該商標登録出願は、請求人提出の甲第15号証と同一証拠からなる刊行物等提出書により平成13年11月9日(起案日)付で拒絶査定となっている(甲第18及び第19号証)。
また、請求人から同社の顧問弁護士に送付したファックス(甲第15号証の15)の中で、請求人の副社長Bennett氏は、「U.S.U.」による請求人と株式会社三越との商標権譲渡交渉の妨害に対する懸念について言及しているが、請求人は、日本において被服に関し「Hobie商標」の商標登録取得に株式会社三越の所有する登録第571726号商標「ホビー」が障害となることを事前に知ったので、その譲受交渉を進め、両者の間では該登録商標の譲渡合意が成立していた(甲第16号証(原証拠番号-乙第13号証))。そして、移転登録申請のための書類を準備していたところ、株式会社三越との交渉がある旨請求人から聞きつけた被請求人が、該登録商標に対し不使用による取消審判を請求し(甲第16号証)、該登録商標を取消すことにより請求人による「Hobie商標」の登録を妨害し、自己の本件商標及び平成9年商標登録願第3000号の商標権取得を図ったのである。
かかる事実に照らしても、被請求人が、本件商標の登録出願に際し請求人とのライセンス契約を強要するという不正の目的ないしは不正競争の目的を有していたことは明らかである。
(4)本件商標は、その登録出願時において、以下の条項に該当していたものである。
(ア)商標法第4条第1項第19号について
上記(1)で述べたとおり、「Hoble商標」は、請求人のハウスマーク及び請求人の製造・販売に係るサーフボード、カタマランなどのマリンスポーツ関連の商品に使用して需要者の間に広く認識されている商標である。
そして、上記(2)で述べたとおり、本件商標は、請求人の使用する商標と類似するものである。
そして、上記(3)で述べたとおり、被請求人は、本件商標の登録出願に際し、請求人とのライセンス契約を強要するという不正の目的ないしは不正競争の目的を有していたことは明らかである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものであるから、その登録は無効とされるべきである。
(イ)商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、上記(1)で述べたとおり、請求人が同社の略称・ハウスマーク及び商品商標として長年にわたり継続して使用し、本件商標の登録出願日以前に、日本を含め世界各国で周知・著名となっていた略称及び商標と類似の商標である。
被請求人は、該事実を認識していたにもかかわらず、請求人の商標を剽窃して本件商標を登録出願したのである。このような被請求人の行為は、公正な商取引慣習に著しく反するものであって、かかる登録出願により登録された商標をその指定商品に使用することは社会公共の利益に反する。また、米国はもとより諸外国においても周知・著名となっている請求人の略称及び商標を劇窃してなされた本件商標は、著しく国際信義に反するものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものであるから、その登録は無効とされるべきである。
(ウ)商標法第4条第1項第10号について
上記(1)で述べたとおり、「Hoble商標」は、請求人が商品サーフボード、ボディボード、水上スキーなどの運動用具(本件指定商品である「運動用特殊衣服」と類似する。)、及びサーフボード用ウエットスーツ等の「運動用特殊衣服」について使用し周知となっているものである。
また、上記(2)で述べたとおり、本件商標中の「SURFBOARDS」の部分は商品の品質の表示(用途)と理解される。その場合、本件商標中の識別力がある部分は「Hobie」であって、請求人の業務に係る商品を表示するものして需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似である。
したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものして需要者間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、その商品と同一又は類似の商品に使用するものであるといえる。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものであるから、その登録は無効とされるべきである。
なお、被請求人は、上記(3)で述べたとおり、「不正の目的」で本件商標を登録出願し登録を受けたものであるから、商標法第47条には該当しない。
(エ)商標法第4条第1項第15号について
上記(1)で述べたとおり、「Hobie」及び「Hobie商標」は、請求人の略称・ハウスマーク並びに請求人商品、とりわけサーフボード、カタマランの商標として世界的に周知である。そして、「Hobie」と請求人の取扱商品としても周知な商品の普通名称である「SURFBOARDS」の語を組み合わせてなる本件商標をその指定商品に使用した場合には、当該商品が請求人の業務に係る商品であるとの商品の出所の混同を生ずることは明白である。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、その登録は無効とされるべきである。
なお、被請求人は、上記(3)で述べたとおり、「不正の目的」で本件商標を登録出願し登録を受けたものであるから、商標法第47条には該当しない。

第3 被請求人の答弁の要旨
被請求人は、本件審判請求は却下する、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べている。
1 請求人によれば、本件商標は、商標法第4条第1項第19号、第7号、第10号及び第15号に違反して登録されたものであり、同法第46条第1項の規定によりその登録は無効とされるべきであると主張するが、被請求人としては、以下に述べる理由により請求人の主張事実を認めることはできない。
2 請求人の主張に対する反論
(1)本件審判請求は、不適法であり却下されるべきである。
本件審判請求は、商標法第4条第1項第19号、第7号、第10号及び第15号を根拠としてなされている。
ア 商標法第4条第1項第10号については、商標権の設定登録の日から5年を経過したときは請求することができない(商標法第47条)。したがって、その主張について検討するまでもなく、本件審判請求は不適法であり、却下されるべきものである。
請求人は、本件商標の登録は「不正競争の目的」でなされたものであると主張するが、本件商標は「不正競争の目的」でなされたものではないし、その具体的な主張、立証もない。
請求人は、請求の理由において、被請求人の「不正の目的」ないしは「不正競争の目的」なる項目で、概括的な主張を行っているが、「不正競争の目的」は、より広い概念である「不正の目的」とは相違する概念であって、より限定的な概念であるところ、いかなる行為が「不正競争の目的」でなされたものであるか、何ら具体的に主張していないし、立証もされていない。
不正競争の目的」という場合には、競業者であることが必要とされるが、請求人の商品と商標権者の商品は相違し競業関係はない。
請求人は、件外取消2003-31419号により、本件商標に対する不使用取消審判を行い、理由なしとされている。本件審判請求は、これをふまえてなされたものと思料されるが、除斥期間経過後に、無理な理由を重ねてなされた本件審判請求は、登録に対する法的安定性の見地よりしても、速やかに却下されるべきものである。
イ 請求人は、本件審判請求の理由として、商標法第4条第1項第19号に該当することを主張している。
しかしながら、商標法第4条第1項第19号は、平成8年法律第68条により追加された規定であって、同法律の施行は平成9年4月1日であり、施行日前になされた本件商標について適用がない。
商標法第4条第3項は、上記第19号などの規定は商標登録出願の時にこれに該当しないものについては適用されないとしている。本件商標は、平成8年12月12日付出願にかかるものであり、この施行日より先であるから、本件商標の登録出願時に該当するものではなかったことは当然であって本号適用の余地はなく、請求人の主張の内容について検討するまでもなく本号に該当しないことは明らかである。
ウ 商標法第4条第1項第15号について、同号における「不正の目的で商標登録を受けたものであるとき」の除斥期間の適用除外も平成8年法律第68条により初めて追加された規定である。平成8年法律第68条施行以前になされた本件商標については適用されない。
(2)「Hobie商標」の周知・著名性を示す充分な資料は提出されておらず、実際の使用例、我が国における使用の概要についての説明もなく、請求人の主張は認められない。
ア 甲第3号証、第9号証、第10号証、第12ないし第14号証を除き、我が国市場に関するものではない。甲第3及び第9号証は、わが国において「ホビー・キャット」がヨットの形式名を表す一般名称として用いられていることを示すにすぎないし、甲第10号証は、「HOBIE CAT COMPANY」のインボイスと思料されるものの、10数回の取引にすぎず、その価額を合計しても1万ドルにも達せずその金額も少ない。そもそも、そこに示される「HOBIE CAT COMPANY」は請求人とは別であり、その関係も不明である。
甲第11号証は、いかなる書類か不明であり、請求人の名称や商標も示されていない。
甲第12ないし第14号証は、「日本ホビークラス協会」に関する資料であって、同じく「ホビークラス」、「ホビー」が、この種、スポーツや競技の一範疇であり一般名称として使用されていることを示す資料であるにすぎない。
以上のとおり、請求人提出の証拠資料をもって、我が国における「Hobie商標」の周知・著名性を認定することはできない。甲第10号証中に一部我が国市場に関係するごとき資料もみられるものの、これが我が国において流通していることを直接に示すものでもない。
さらに、我が国における販売額の年度別合計、宣伝広告費についても示されておらず、「Hobie商標」の周知・著名性は立証されていない。
イ 甲第2号証、第4ないし第8号証には、「Hobie」の標章が付されているものの、単なるカタログにすぎず、その販売を示すものではない。その作成日、配布数等も示されておらず、これらをもってしては、我が国における事情は勿論のこと、アメリカにおける周知・著名性も立証されてはいない。これら資料について、訳文も付されておらず、証拠としての意味はない。
ウ 請求人が周知・著名になっていると主張する内容も、その考案者であるとする「Hobie Alter」の名前、双胴の小船「Hobie Cat」に関するものであって「Hobie」自体ではない。
エ 請求人は、甲各号証により、その我が国または外国における周知・著名になっていると主張しているが、「Hobie Alter」の存在、「Hobie Cat」、「ホビー・キャット」の存在は認めれるとしても、これらの周知・著名性は認められないし、特に、商標「Hobie」の周知・著名性は認められない。「ホビー」は、一般的用語であることを示すにすぎない。
(3)「Hobie商標」と本件商標は非類似で混同可能性はない。
ア 本件商標と「Hobie商標」の外観について比較すると、本件商標は、欧文字「Hobie SURFBOARDS」より構成され、構成各文字を同一の書体で、間隔を同じくし、一体として表わしたものであって、これが全体で一個の商標を構成することは、その構成外観上明らかである。本件商標は、「Hobie」と「SURFBOARDS」がまとまって一個の商標を構成することは、その外観、構成より明らかである。一連、一体に構成されてなる本件商標について、これが分離して認識されることはない。 そうすると、本件商標と「Hobie商標」とは構成各文字及びその基本的態様において相違し、これらがその外観構成において顕著に区別しうる非類似商標であることは明白である。
イ 本件商標と「Hobie商標」の称呼上の類否について検討すると、本件商標からは、その構成文字に相応して「ホビーサーフボード」の称呼が生ずるものであり、全体としての発音も自然かつリズミカルであって不自然なものではない。本件商標は全体としての発音が冗長な音構成からなるというものではなく、これを略称すべき必然性もない。いかに、現実の取引市場における取引が簡易、迅速を旨とするといっても、音数が短く、全体としての発音も自然な本件商標を略称することはありえず、本件商標と「ホビー」の称呼を生じる「Hobie商標」とは、音数において相違する称呼上も非類似の商標である。
ウ 本件商標は、「Hobie」の部分のみで特定されるものではなく、本件商標と「Hobie商標」とは、その意味を相違するものであり、これらが観念上も非類似の商標であることは明らかであって類似するものではない。
エ 「Hobie」は、請求人の商標として固有、あるいは、特に顕著なものではなく、強い自他商品識別力を有する要素ではない。一般的な愛称であって、他の用語と容易に結合しやすい特質を有する。よって、本件商標を特定するに、ことさらに、識別力の弱いあるいは、容易に他の用語と結合しうる特質を有する「Hobie」の部分のみで略称することはないし、これが要部として独立の称呼を生ずるものではない。
(4)本件商標の採択の適法性
ア 本件商標「Hobie SURFBOARDS」は、請求人が引用する「Hobie商標」と、同一ではなく、類似するものでもない。したがって、その採択が適法であることは当然であって、請求人の主張は不当なものである。自ら、その経過を知っていながら無効審判請求の理由はないとして途過した除斥期間経過を免れるべくなされた無理な主張であって、妥当な主張ではない。
「Hobie商標」と同一でないことは勿論、類似するものでもない本件商標の採択は、本質的に何らの問題はない。「Hobie」は男性名の愛称であって、特定人のものとして顕著に認識されるものではなく、これを含むことをもってその採択が不適切となるものではない。
イ 被請求人、人物Aは、昭和35年1月神奈川県にて誕生、同56年、「ジーンズハウスドルフィン」を創業し、平成11年12月より、「株式会社アローズ」と提携して各種被服の企画開発を営んでおり、被請求人自ら及び被請求人がその使用を許諾した通常使用権者である「株式会社アローズ」により、若い男性向きのヤングカジュアル、サーフカジュルのアイテムとして提供する夏物のTシャツについて、本件商標を付して販売している。
本件商標は、大分以前にYAMAHA(ヤマハ)の小型ヨット「ホビーキャット」が若者に人気であったことから、海のイメージをもつ商標として本件商標権者及びその顧客により案出されたものである。そして、商品開発を独自に勧めていたところ、米国には「Hobie」があることを知り、興味をもって調査し、紹介を受けて交渉を開始したのが請求人との連絡の発端である。
当時は、サーフィンブームで「TOWN AND COUNTRY」「DICK BREWER」「BEN AIPA」「G&S」等が知られていたが、請求人やその商標は全く知られていなかったのが実情であった。商標権者は請求人との連絡を開始し、交渉は順調に進展して、甲第15号証の3において、「Hobie Designは、US Unitedにライセンスすることに関心がある。このAgreementは、US Unitedを商品のマスターライセンシーとせんとするものである」と言及しているように(この点に関する請求人の同訳文は、上記後半部を省略し正確ではない)、その商標の使用についても了解の状況になり、我が国における状況や被請求人の取引に関する状況も提示したところ、わが国市場の魅力を知りまた他の会社からのアプローチもあって、「Hobie」に関する最終的な契約調印には至らなかったものである。最終調印に至らなかったとしても、ここに示される実質合意はなされ、口頭での了解は得ていたものであって、これを基礎に本件商標権者は、必要な情報を提供し、わが国における市場開発など多大の経費を費やしたものであり、この違約に関する法的な主張をなし得る立場にある。以上のような事情を基礎に請求人が言及する「Hobie」の出願を行ったものであって、当該出願自体は何ら違法なものではなかった。しかし、その後最終合意に至らなかったこともあり、被請求人も「Hobie」自体の展開は行なわず登録も維持していない。
しかしながら、被請求人が当初から意図し、自らが案出した本件商標は、特許庁も認めるとおり「Hobie商標」とは同一でないことは勿論、類似するものでもなく、その登録及び使用は、何ら不適切なものではない。本件商標は、請求人の商標ではなく、その採択、使用について問題がないことは当然である。
ウ 本件商標の出願当時は、請求人との関係は良好であり、請求人より日本における商標問題はないと言われていたが、自らの調査により第3者の登録の存在も知り、必要な手配を行ったのが経緯である。請求人との交渉の過程で、多大の費用及び無償の提供を継続していたところ、他方では第3者との交渉をも背信的に行なっていた経緯もあり、被請求人は、本件無効審判請求を甘受する義務、立場にはなく、その正当な登録取得を主張する者である。
3 被請求人の主張
(1)商標法第4条第1項第19号に関して
本号は、平成8年法律第68条により追加され平成9年4月1日付で施行された。本件商標は、この施行日より前の出願であって、本号適用の余地はない。
請求人は、本号以外の条項をも指摘しているが、本件審判請求は、本号の主張を基本としてなされているものであって、本件審判請求は全体として却下され、その理由がないことが明らかである。
(2)商標法第4条第1項第7号に関して
本件商標は、請求人商標と相違し、類似するものでもなく、混同のおそれなど全くない。本件商標は、請求人商標を剽窃的になされた出願ではなく、商標法の法目的に反するものでもない。
被請求人が本件商標を採択する過程は、何ら不穏当なものではなく、勿論、本件商標は、卑猥な図形や、他人の商標の取得を図るといった違法、不当なものではなく、何ら公序良俗に反するものでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものではい。
(3)商標法第4条第1項第10号に関して
請求人は、「Hobie商標」は、周知・著名になっていると主張しているが、上述したとおり、提出された証拠資料を基礎に「Hobie商標」が我が国において周知・著名であることは認められない。仮に、「Hobie商標」の我が国における使用があるとしても周知でなかったことは明白である。
甲各号証として提出された不十分な資料についてみたとしても、請求人が主張する商標と本件商標は類似するものではない。
その商品についてみても、請求人の商品である舟艇ホビーキャットやウインドサーフィン用具と第25類に属する本件商標の指定商品は類似するものではない。
よって、本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当するものではないことはいうまでもない。
(4)商標法第4条第1項第15号に関して
「Hobie商標」の周知・著名性は認められないし、本件商標は不可分一体に構成された「Hobie SURFBOARDS」であって、本件商標との相違は明らかである。よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものでもない。
4 むすび
以上詳述したとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第19号、第7号、第10号及び第15号に該当するものではない。
よって、本件商標は商標法第46条第1項第1号により、その登録を無効とされるべきものではなく、本件審判請求は、商標法第46条の規定により却下されるべきものであり、また、本件審判請求は理由がない。

第4 当審の判断
1 被請求人は、請求人の本件商標に対する商標法第4条第1項第10号、第15号及び第19号の請求は、不適法であり、却下されるべきものである旨主張しているので、まず、この点について判断する。
(1)商標法第4条第1項第10号について
請求人は、上記条項について、「不正競争の目的」であることを主張しているのであるから、そうとすれば、商標法第47条第1項で規定する5年の除斥期間は適用されないというべきであり、よって、この点の被請求人の主張は採用できない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
上記条項に基づく商標法第47条第1項の規定は、不正の目的で商標登録を受けた場合は、括弧書きをもって、除斥期間の適用除外とされているが、上記の「括弧書き」が改正されたのは、平成8年改正商標法によるものである。しかして、平成8年法律第68号の附則第8条第2項の規定によれば、この法律の施行の際(平成9年4月1日)、現に存する商標権についての上記条項の適用は、なお従前の例によるが、本件商標の登録は、それ以降であり、除斥期間の適用除外となるから、この点についての被請求人の主張も採用できない。
(3)商標法第4条第1項第19号について
同号は、平成8年法律第68号により追加された規定であって、同法律の施行は平成9年4月1日であり、施行日前になされた本件商標について適用はないと解されるので、この点に関する請求人の主張は採用できない。
2 本件商標は、上記第1のとおり、「Hobie SURFBOARDS」の文字よりなるところ、請求人である「ホビー デザインズ インコーポレイテッド」の本件無効審判請求に係る「請求の理由」及び提出された証拠によれば、以下のことが認められる。
(1)請求人は、創始者である米国人「Hobart Alter」が、1950年に米国南カリフォルニアで開始したサーフボードの製造・販売に端を発し、最初の店舗は1955年にカリフォルニア州のダナポイントに開店され、同人の製造したサーフボードは、従来のものと異なりポリウレタンを原料としたため、軽量で現代のサーフボードの原型となったものであり、このサーフボードを考案した「Hobart Alter」は一躍有名となって、「Hobie Alter(ホビーオルター)」の通称名(愛称)で呼ばれるようになり、現在でもサーファーの間では彼の名前を知らない者はいない程になっている。
(2)その後、請求人は、サーフボードのみならずスノーボード、水上スキー等の製造を開始するとともに、マリンスポーツ用の関連商品、スポーツウエア、スポーツシューズ、Tシャツ、水着、サングラス、帽子等の製造・販売をし、マリンスポーツ分野における請求人及びその略称ともいえる「Hobie」商標は、広く使用され相当程度知られるに至ったものである。
(3)請求人は、我が国において本件商標の登録出願前より「HOBIE」商標(登録第2235575号商標)を「運動用具」に所有している。
(4)昭和55年(1980年)には請求人の製品が「日本コールマンINC.」により「The Hobie Cat」と題するカタログで紹介され、そこには図案化された「Hobie」の文字と図が表示されている。
(5)同年発行の「HOBIE HOT LINE」(発行所「日本ホビークラス協会」には、上記「日本コールマンINC.」の商品が紹介され、そこにも「Hobie」の文字と図が表示されている。
(6)被請求人は、請求人に対し、1996年12月9日に日本のアパレル市場で「Hobie」(ブランド)のアパレル製品についてのライセンス契約を申し込んでから(その後、1997年2月14日に請求人は被請求人に対して契約へのサインや合意はできない旨を回答している。)、間もない平成8年(1996年)12月12日には本件商標を登録出願している(甲第15号証)。
(7)被請求人は、本件商標の後にも、請求人が使用する商標(「Hobie」の「H」のロゴと酷似した文字及びダイヤ型の図形等との結合)と酷似した商標を第25類の指定商品「被服、履物ほか」(本件商標と同一)に登録出願(商願平9-3000)し、請求人より刊行物等提出書の提出があった結果(商標法第4条第1項第7号)、拒絶査定となっている(甲第17ないし第19号証)。
(8)請求人が使用する商標を構成する「Hobie」の文字は、特定の意味合いを表す語(既製語)とはいえず、むしろ、請求人が採用した一種の造語といえるものである。
3 ところで、商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標は、商標登録を受けることができない」旨を規定しており、その趣旨は、商標の構成自体が公序良俗に反する場合だけでなく、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反する場合、その他、他の法律によって、その使用等が禁止されている商標、特定の国若しくはその国民を侮辱する商標又は一般に国際信義に反する商標等が本号の規定に該当するものと解されるものである。
しかして、本件商標は、前記したとおり、「Hobie SURFBOARDS」の文字からなるところ、これに接する看者には、容易に「ボビー(Hobie)のサーフボード」との意味合いを看取させるものであるが、被請求人は、請求人又は「Hobie Alter」等とは何らの関係もない立場の者であって、かつ、請求人等の承諾を得たものとは認められない。
してみれば、被請求人は、請求人とアパレル市場(衣料産業)への「Hobie」(ブランド)のライセンス契約を申し込んでおきながら(請求人の「Hobie」商標を知悉していた。)、請求人が我が国において第25類の指定商品(被服など)に登録されていないことを奇貨として、請求人が長年にわたり使用してきた商標「Hobie」を出願人が自己の商標として採択し独占的に使用しようとすることは、請求人等の名声を冒涜しようと推認し得るものであるから、本件商標は、商取引秩序を乱すものであり、ひいては国際信義に反するものといわざるを得ず、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標といわなければならない。
4 したがって、本件商標は、他の請求人の主張について判断するまでもなく、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2006-02-21 
結審通知日 2006-02-27 
審決日 2006-03-17 
出願番号 商願平8-139299 
審決分類 T 1 11・ 22- Z (025)
最終処分 成立 
特許庁審判長 山田 清治
特許庁審判官 井岡 賢一
久我 敬史
登録日 1998-06-05 
登録番号 商標登録第4152621号(T4152621) 
商標の称呼 ホビーサーフボーズ、ホビー、ホービー、サーフボーズ 
代理人 岡田 稔 
代理人 曾我 道照 
代理人 曾我 道治 
代理人 高橋 康夫 
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