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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) 034
管理番号 1134893 
異議申立番号 異議1999-90202 
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2006-05-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-02-12 
確定日 2006-03-14 
異議申立件数
事件の表示 登録第4201407号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4201407号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第4201407号商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲(1)に示すとおり、上段にアルファベット文字の「G」と「V」と思しき文字を組み合わせたモノグラムで表し、下段に欧文字で「GIOVANNI VALENTINO」と横書きしてなり、平成8年10月9日に登録出願、第34類「たばこ,紙巻きたばこ用紙,喫煙用具(貴金属製のものを除く。),マッチ」を指定商品として、同10年10月16日に設定登録されたものである。

第2 登録異議申立の理由の要旨
登録異議申立人(以下、「申立人」という。)は、本件商標の登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第62号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 本件商標は「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)氏の氏名の著名な略称を含むものであり、その者(他人)の承諾を得ずに登録出願されたこと明らかであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号に違反してなされたものである。
2 本件商標は、登録第1564446号商標、同第2290253号商標、同第1315877号商標及び同第1402916号商標(以下、これらの登録商標を一括して「引用商標1」という。)と類似するものであって、かつ、本件商標の指定商品は引用商標1の指定商品と抵触するものであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものである。
3 申立人は、引用商標1の指定商品以外の商品についても、多数の登録商標を使用しているところ、これらのうち、例えば、別掲(2)に示すとおり、幾何学的図形からなる登録第2072497号商標であり、また、「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を横書きしてなる登録第1415314号商標(以下、これらの登録商標を一括して「引用商標2」という。)であり、何れも(旧)第17類被服等を指定商品とするものであるが、引用商標1及び引用商標2が婦人服、紳士服、ネクタイ等の被服、バンド、バッグ類、靴、ライター等に使用され、しかも、本件商標の登録出願の日前より全世界に著名になっていることは、各書証に照らして明らかである。
しかして、本件商標はこれを商標権者がその指定商品に使用した場合、その商品が恰も申立人の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してなされたものである。

第3 当審における取消理由の通知
当審においける平成13年9月26日付けで取消理由の通知は、概ね下記のとおりである。

申立人の主張の趣旨及び甲第7号証ないし甲第62号証(枝番を含む。)によれば、次の事実が認められる。
(1)「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァニ)は1932年イタリア国ボグヘラで誕生、17才の時パリに行き、パリ洋裁学院でデザインの勉強を開始し、その後フランスの有名なデザイナー「ジーン・デシス、ギ・ラ・ロシュ」の助手として働き、1959年ローマで自分のファッションハウスを開設した。1967年にはデザイナーとして最も栄誉ある賞といわれる「ファッションオスカー(Fashionoscar)」を受賞し、ライフ誌、ニューヨークタイムズ誌、ニューズウィーク誌など著名な新聞、雑誌に同氏の作品が掲載された。これ以来同氏は、イタリア・ファッションの第1人者としての地位を確立し、フランスのサンローランなどと並んで世界三大デザイナーと呼ばれ国際的なトップデザイナーとして知られている。
我が国においても、ヴァレンティノ ガラヴァニの名前は1967年(昭和42年)のファッションオスカー受賞以来知られるようになり、その作品はファッション雑誌「世界の一流品図鑑」、「ヴァンサンカン」、「ミス家庭画報」、「jj」及び新聞等により継続的に日本国内にも紹介されている。
昭和49年には三井物産株式会社の出資により同氏の日本及び極東地区総代理店として株式会社ヴァレンティノヴティックジャパンが設立され、ヴァレンティノ製品を輸入、販売するに至り、同氏の作品は我が国のファッション雑誌にもより数多く掲載されるようになり、同氏は我が国においても著名なデザイナーとして一層注目されるに至っている。
以上のとおり、ヴァレンティノ・ガラヴァニは、世界のトップデザイナーとして本件商標が出願された平成8年10月当時には、既に我が国においても著名であったものと認められる。
同氏の名前は「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンテイノ・ガラヴァニ」とフルネームで表示され、このフルネームをもって紹介されることが多いが、同時に雑誌、新聞の記事や見出し中には、単に「VALENTINO」、「ヴァレンティノ」と略称されてとりあげられており、ファッションに関して「VALENTINO」、「ヴァレンティノ」といえば同氏を指すものと広く認識されるに至っていることも認められる。
(2)さらに、当審において調査するに、「ヴァレンティノ ガラヴァニ」、「VLENTINO GARAVANI」は、我が国においては、「ヴアレンチノ」、「ヴァレンティーノ」あるいは「VALENTINO」とも略されて表示されていることは、田中千代「服飾辞典」同文書院1981年p550、山田政美「英和商品名辞典」(株)研究社1990年p447、金子雄司外「世界人名辞典」岩波書店1997年p84)において裏付けられるばかりでなく、雑誌における表現においても、たとえば、「marie claire」1996年2月1日号、「non‐no」1989年No23号等からも認められる。
以上の事実よりすると、申立人は、「VALENTINO」又は「VALENTINO GARAVANI」よりなる商標を婦人服を始めとし、紳士服、アクセサリー、バッグ、香水等の商品に使用しており、その結果、これら商標は、本件商標の登録出願の時には、既に我が国において、取引者、需要者間に広く認識されていたものであり、登録査定時においても、その著名性は継続していたものと認められる。
(3)そこで、本件商標をみると、本件商標は、その構成文字中に「VALENTINO」の文字を有するものである。また、申立人の使用する商品「紳士服、アクセサリー、バッグ」等と本件商標の指定商品である「喫煙用具」は、いずれもファッション性を重視する商品である。
以上を総合すると、本件商標を、商標権者がその指定商品について使用した場合、取引者、需要者をして、申立人の商標を容易に想起し、その商品があたかも上記デザイナーあるいは、同人と何らかの関係にある者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものと認める。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。

第4 商標権者の意見の要旨
商標権者は、上記「第3」の取消理由に対する意見を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし同第53号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 デザイナー「ジョヴァンニ・ヴァレンティーノ」について
本件商標権者のデザイナー「GIOVANNI VALENTINO」(ジョヴァンニ・ヴァレンティーノ)は、ヴァレンテイーノファミリーとしての由緒ある血筋を引くデザイナーで、その歴史は1908年から始まる。
同氏は、父である「Mario Valentino(マリオ・ヴァレンティーノ)」の下で働き、「VALENTINO」の伝統を習得していった。
そして、父の死後、1991年に、同氏は自分の名前のもとで洋服やかばん類を作成することを決意し、父が蓄積させた「マリオ・ヴァレンティーノ」のブランドから脱退し、イギリス人妻である「Annabella」(アナベラ)と共に「ジョヴァンニ・ヴァレンティーノ」のブランドを新たに構築した。
わが国でも1990年に商標出願を開始して以来、現在に至るま20以上の出願を行い、商標権も30件以上取得(乙第8号証)しているばかりか、乙第12号証ないし同第28号証に示すように、同氏のデザインした商品は、確実に流通しており、わが国でブランドとして確立しているものである。
2 「VALENTINO」の文字について
この「VALENTINO」という名称は、イタリアではそれ程珍しい名称ではない。インターネットでイタリア国の主な町での氏「VALENTINO」を含んだ名称を、オンライン電話帳で検索すると、以下の通り存在することがわかる。
(ア)「MILANO」(ミラノ)…87の地域に332世帯存在(乙第2 9号証)
(イ)「TORINO」(トリノ)…69の地域に305世帯存在(乙第3 0号証)
(ウ)「ROMA」(ローマ)………29の地域に291世帯存在(乙第3 1号証)
これは、東京都の各区において、ハローページで「ササキ」「ワタナベ」「タナカ」の氏を検索すると、以上と同じぐらい存在していることがわかる。これらの氏はわが国では有触れており、その名前自体には個人を識別する機能は殆ど備えていない。このことはイタリア国でも同様で、「VALENTINO」は有触れた氏で個人を識別する力が非常に弱い。
3 「VALENTINO GARAVANI」について
甲第7号証に添付した資料をみてもどれも最初に「ヴァレンティノ・ガラバーニ」と説明して、以後「バレンチノ」と略されている。これらを根拠に、「バレンチノ」でも有名と理由付けしているが、「ヴァレンテイノ・ガラバーニ」では冗長であるため、最初「ヴァレンテイノ・ガラバーニ」と示しておいて、以下「バレンチノ」と略しているのである。これは文字数制限のある雑誌等の記事では当然のことであり、このように省略することで文字数の省エネを図っているのである。また、雑誌の購買者は、仕事をする女性や主婦等であるため、文章の最初に「ヴァレンテイノ・ガラバーニ」と謳っておけば、読み手は「バレンチノ」と略しても意味を取り間違えることはないことに基づいている。
4 「VALENTINO GARAVANI」との混同について
「VALENTINO GARAVANI」の需要者層は、非常に生活水準の高い者、即ち、極めて限られた一部の人であると考えることは、自然解釈である。甲第44号証の2では、91年度にある店舗を紹介しているが、「そごう」や「三越」「西武百貨店」等の有名百貨店にある。百貨店の中には「特選街」と呼ばれる高級ブランドの店舗が並んでいる場所があり、「VALENTINO GARAVANI」等はこのような場所に配置されているのが通常である。
そして、「VALENTINO GARAVANI」のような高価な商品を購入する需要者は、値段に糸目をつけないことは明々白々で、実際に手にとって、試着してデザイン性・フィット感を確認して気に入ったものを購入するのである。
一方、ジョヴァンニ・ヴァレンティーノ氏のデザインした商品は、主にカタログ販売を行っており、需要者層は主婦や社会人となっている。
そして、カタログ販売を行っているジョヴァンニ・ヴァレンティーノ氏のデザインを行った商品、カタログ販売方式をとり、値段もそれ程高価ではないため、需要者は、値段と品質に基づいて商品を購入する。このような需要者は、生活水準が最も一般的な需要者といえ、ここには値段と品質に、明確な主従の関係がない。
また、本件商標は「VALENTINO」が目立つような構成ではなく、語頭に「GIOVANNI」がきて、文字全体が同大同書で書かれている。「GIOVANNI」と「VALENTINO」は一体不可分であり、「VALENTINO」の言葉がありふれた氏で、「VALENTINO GARAVANI」の略称としては未だに十分認識されていない現況では、本件商標より、「VALENTINO GARAVANI」との関連性を想起させるおそれがあると考えることは、現実の市場では考えられない。この程度の差異があれば、需要者は商品を区別することはできる。

第5 当審の判断
平成13年9月26日付けで通知した前記「第3」の取消理由は、妥当なものであり、これに対する商標権者の意見は、以下の理由により採用できない。
1 デザイナー「GIOVANNI VALENTINO」(ジョヴァンニ・ヴァレンティノ)について
商標権者は、デザイナー「GIOVANNI VALENTINO」(ジョヴァンニ・ヴァレンティノ)は、ヴァレンティノファミリーとして由緒ある血を引くデザイナーであって、「VALENTINO」の名称をファミリーネームとして引き継いだものであり、わが国でブランドとして確立しているものである旨主張する。
しかしながら、本件商標中の「VALENTINO」の文字は、ヴァレンティノファミリーネームとして正当な後継者として引き継いだ名であるとしても、混同のおそれが認められるかどうかは、本件商標の指定商品に係る需要者が普通に払われる注意力を基準に決せられるのものであるから、商標権者の採択の意図に影響することはないというべきである。そして、わが国において、本件商標は、カタログ販売方式によって商品「紳士靴」「時計」「ベルト・革製品」等について使用している事実を認めることができるものの、これら商品の売上げ実績(乙第12号証ないし同第24号証)は、本件商標出願の平成8年10月以降のものばかりで、既に「VALENTINO」がデザイナー「GIOVANNI VALENTINO」「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」に係る商品に使用されているブランド表示として周知著名性を獲得した後のものであるから、これら証拠によって取引秩序が確立されているものと認めることができない。
2「VALENTINO」の文字について
商標権者は、「VALENTINO」は、イタリア国において、ありふれた氏識別力が希薄である旨主張する。
しかしながら、「VALENTINO」が、イタリア国において、ありふれた氏であるとしても、少なくともわが国においては、ありふれた氏ではなく、一定程度の独創性を備えた自他商品識別機能を果たし得るものであり、それに反する証左は見出せない。
3 「VALENTINO GARAVANI」の略称として周知、著名な「VALENTINO」、「バレンチノ」 について
商標権者は、雑誌などで「ヴァレンティノ・ガラバーニ」の表記を単に「バレンチノ」と表記するのは、文字制限のある雑誌等の記事では当然であり、このように省略することで文字数の省エネを図っているだけのものである旨主張する。
しかしながら、「バレンチノ」の語は、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティーノ・ガラバーニ)の略称として、新聞、雑誌の見出しに、また、辞典類にそれ自体単独で用いられている事実に鑑みれば、ただ単に簡略に表現することだけでなく、それ自体特定のデザイナーブランドを示すものとして周知、著名性を獲得するに至った結果によるものとみるのが相当である。
4 商品の出所の混同のおそれについて
商標権者は、本件商標と「VALENTINO GARAVANI」の需要者層及びその販売方法も異なる上、両商標は全体を一連一体に称呼されるものであって商標において別異なものであるから、商品の出所について混同の生ずるおそれはない旨主張する。
しかしながら、本件商標は、別掲(1)のとおりなるところ、上段のモノグラムで表示された部分と下段の「GIOVANNI VALENTINO」の文字部分とは、常に一体不可分のものとしてのみ把握、理解しなければならない格別の事情も見出すことができないから、それぞれの部分は独立して自他商品識別機能を果たすものである。
しかして、「GIOVANNI VALENTINO」の文字は、「GIOVANNI」と「VALENTINO」と間に約1字程度の間隔を置いてなるものであるから、両文字部分は視覚上分離して看取し得るばかりか、「GIOVANNI VALENTINO」全体の称呼も比較的冗長に亘るものと言える。更に、該文字全体を以て親しまれた観念を生ずるとも認められない。
加えて、「VALENTINO GARAVANI」の略称「VALENTINO」は、「婦人服,紳士服,アクセサリー,バッグ,香水」等に使用して、取引者、需要者の間でデザイナーブランドとして広く一般に認識され、かつ、これらの商品と本件商標の指定商品中、例えば「喫煙用具(貴金属製のものを除く。)とは、トータルファッションのアイテムの一つとして密接な関係を有することも否定し得ない商品であることから、需要者を共通にする場合も少なくないことを併せ考えれば、「GIOVANNI VALENTINO」と「VALENTINO GARAVANI」とに係る商品の販売方法に差異があるとしても、本件商標に接する取引者、需要者は、本件商標構成中の「VALENTINO」の文字部分に強い注意力が注がれ、「VALENTINO GARAVANI」を想起、連想するとともに、申立人に係る一連のデザイナーブランド、兄弟ブランドであるかの如く誤認し、或いは、申立人と資本上、経営上等何らかの関係にある商品であるかの如く商品の出所について混同(広義の混同)を生ずるおそれがあるものと言わなければならない。
なお、商標権者は、本件商標に係る諸外国の判例及びわが国における登録例を挙げて本件商標登録の正当性について述べているが、本件異議申立の決定に当たっては、諸外国の判例及びわが国の既登録例に何ら拘束されることなく客観的証拠に基づき個別具体的に審理、判断するものである。
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 【別掲】
(1)本件商標(登録第4201407号商標)

(2)登録第2072497号商標


異議決定日 2005-10-25 
出願番号 商願平8-113501 
審決分類 T 1 651・ 271- Z (034)
最終処分 取消  
前審関与審査官 柳 紀子木村 幸一 
特許庁審判長 佐藤 正雄
特許庁審判官 池田 光治
山本 良廣
登録日 1998-10-16 
登録番号 商標登録第4201407号(T4201407) 
権利者 フローレンス ファッションズ (ジャージー) リミテッド
商標の称呼 ジョバンニバレンチノ、ジョバンニバレンティノ 
代理人 小出 俊實 
代理人 鈴江 武彦 
代理人 石川 義雄 
代理人 杉村 興作 
代理人 末野 徳郎 

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