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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y29
管理番号 1134462 
審判番号 無効2005-89035 
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-05-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-03-11 
確定日 2006-03-13 
事件の表示 上記当事者間の登録第4815666号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4815666号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4815666号商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲に示す構成からなり、平成16年3月17日に登録出願、第29類「霊芝を主原料として粉状、粒状、顆粒状、錠剤状、液状、カプセル状からなる加工食品」を指定商品として、同年11月12日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第24号証を提出した。
本件商標は、被請求人の業務にかかる商品について使用するものとは認められないから、商標法第3条第1項柱書きの規定に違反して登録され、また、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第7号の規定に違反して登録されたものである。
(1)商標法第3条第1項柱書について
被請求人は、専業主婦であり、現在何らの業務を行っていないし、過去においても何らかの業務を行ったという形跡も見られない。
また、被請求人は、本件商標の他に第29類「豚の胎盤を主成分とする粉状、粒状、顆粒状、錠剤状、液状、カプセル状からなる加工食品」を指定商品として「エスパー」、「煌」および「きらめき」の文字を上中下三段に書した商標(以下、「A商標」)及び第3類「化粧品」を指定商品として「耀」および「かがやき」の文字を上下二段に書した商標(以下、「B商標」)を本件商標の出願と同時にそれぞれ登録出願しているが、所謂「健康食品」のみならず「化粧品」に関する事業をも行うとなれば、想像もつかない多額の資金やリスクを伴なう。
以上のような事情からすれば、一主婦である被請求人が、莫大な資本を投じ、リスクの高い「健康食品」に関する事業を過去に行い、また、現在もその事業を継続して行っているとは到底考えられず、それに関する事業を行ったこともないし、現在も行っていないと見るのが極く自然である。
そうすると、本件商標の出願時、登録査定時には、被請求人は、本件商標を自己の業務にかかる商品について使用する意思を有していなかったと言うべきである。
(2)商標法第4条第1項7号について
ア 請求人は、医薬品の製造販売、化粧品の販売、食料品の販売等を目的として、昭和62年4月18日に設立したもので、親会社である株式会社イー・エス・ピー科学研究所(以下、「本件科学研究所」という。)、総代理店である「株式会社イー・エス・ピー」及び出版会社である「株式会社善文社」と共に所謂「ESPグループ」を構成している。
イ 請求人は、平成7年11月に、「霊芝を主原料とする粉状及び顆粒状の加工食品」に「普芝仙」の商標を付して販売を開始し(甲第7号証)、後に「霊芝を主原料とするカプセル状及び液状の加工食品」を順次追加し、ESP本部、各支所、全国の指導所等において「ESP友の会」(以下、「本件友の会」という。)の会員を中心に、今日まで継続し販売してきたものである(甲第6号証および同第8号証ないし同第13号証)。勿論、需要者一般にも一般の小売店を通じて販売してきたものである。
ウ 上記「普芝仙」の綴り字からなる既成語は辞典類に見出せない語である。該語は請求人が創案・選択したもので、使用を開始した平成7年当時、いずれの商品及び役務の区分にも商標登録出願された例はなく、それ以後今日までを見ても、請求人を除いては被請求人の本件商標が唯一である。
エ 請求人は、平成15年2月に、「豚の胎盤(プラセンタ)を主原料とする錠剤状の加工食品」について、「エスパー」、「煌」および「きらめき」の文字を上中下三段に書した商標(「A商標」と同一の商標(甲第10号証))を付して、また、その翌年の2 月には「化粧品」について、「耀」および「かがやき」の文字を上下二段に書した商標(「B商標」と同一の商標(甲第14号証))を付して販売を開始し、以後、これらの商品を今日まで継続して販売してきたものである(甲第15号証ないし同第21号証)。勿論、これらの商品も上記「普芝仙」の商品と同様、本会の会員が中心ではあるが、一般の需要者にも販売してきたものである。
オ 請求人の親会社である「本件科学研究所」は、上記「本件友の会」を主催している。「本件友の会」の会員は、「本件友の会」の調和を乱したり、社会的体面を汚すような行為をしてはならないことになっている。反面、会員には、「本件科学研究所」が発行する月刊紙「ま心新聞」を毎月無料で配布される等の特典がある。
カ 被請求人は、「本件友の会」に平成3年7月10日に入会し、同10年8月に旧姓「福本」から改姓しているが、同16年6月21日に退会するまでの約13年間「本件友の会」の会員であった。この間、被請求人には「本件科学研究所」より上記の「ま心新聞」が毎月無料で配布されている。
キ 被請求人は、「本件友の会」を退会する約3ヶ月前に本件商標の登録出願をなしたものである。この本件商標は請求人が使用してきた商標と文字構成、書体、配列、商品に至るまで同一のものであり、本件商標と同時に登録出願した「A商標」及び「B商標」も同様である。
なお、請求人をはじめ、その関連会社が、被請求人にこれらの各商標の登録出願を許可した覚えはない。しかも、被請求人の出願に係る「A商標」の指定商品を、「豚の胎盤を主成分とする粉状・・・からなる加工食品」としているが、このような商品は一般の主婦が想到し得ないものである。
ク 以上の事実によれば、「本件友の会」の会員であった被請求人は、被請求人に配布された「ま心新聞」の広告記事から、或いは、会員に販売された商品そのものから、請求人が「霊芝を主原料とする粉状、顆粒状、液状、カプセル状の加工食品」に本件商標と同一の商標を付して販売していることを充分に知得し、該商標をそのまま真似て、請求人の許可を得ることなく先回りして本件商標の登録出願をなしたものであることが明らかである。本件商標が、請求人の使用に係る商標と全く同一であって、しかも、該綴り字からなる既成語は辞典類に見出すことのできないものであることからしても、両者は偶然の一致とは到底考えられない。このような被請求人の行為は、「本件友の会」の会員はもとより、一般人といえどもとってはならない行為であり、しかも、被請求人が本件商標を「霊芝を主原料として粉状、顆粒状、液状、カプセル状からなる加工食品」について商標登録し、これを排他的に使用することは、その出願の約8年も前から使用し、今日まで使用を継続してきている請求人をはじめ、請求人の関連グループ会社の利益を害することになるから、被請求人がこの商標を出願し登録する行為は、明らかに瓢窃行為である。
また、前述のように、被請求人が本件商標の指定商品に関する業務を行っていないこと、請求人の使用に係る商標と同一の「A商標」及び「B商標」までも本件商標と同時に登録出願をなしていることを併せ考えれば、本件商標は、請求人の使用する商標が登録出願されていないことを奇貨とし、請求人に無断でその商標を登録出願したものとも言える。
したがって、本件商標は、公正な競業秩序を阻害するものであり、また、社会の一般的道徳観念に反するものであるから、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と言うべきである。
(3)む す び
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項柱書きの規定に違反して登録されたものであり、また、商標法第4条第1項第7号の規定に違反して登録されたものである。したがって、商標法第46条第1項第1号の規定により、その登録は無効にされるべきである。

3 被請求人の主張
被請求人は、何ら答弁をしていない。

4 当審の判断
(1)本件商標は、別掲のとおりの構成よりなるところ、構成中「普芝仙」の文字は、既成の語とは認められず、固有の語義を有することのない造語というべきものである。そして、「FUSISEN」の文字も同様に造語であり、前記「普芝仙」の読みをローマ文字で表記したものとして把握されるというのが相当である。
(2)甲各号証及び請求人の主張によると、以下の事実が認められる。
ア 請求人は、「本件科学研究所」、「株式会社イー・エス・ピー」及び「株式会社善文社」と共に企業グループを形成する医薬品の製造販売、化粧品及び食品の販売ほかを目的とした法人である(甲第5号証及び同第6号証)。
請求人及び株式会社イー・エス・ピー(以下、「請求人ら」という。)は、「普芝仙」の文字からなる商標(以下、「本件使用商標」という。)を、平成7年11月10日頃から、商品(栄養補助食品)に使用しており(甲第7号証)、当該商標は「フシセン」の称呼を生じ(甲第8号証)、その使用に係る商品は、「霊芝100%そのままを飲みやすい顆粒状にした霊芝加工食品」と認められる(甲第9号証)。
さらに、請求人らは、「A商標」と社会通念上同一の商標を「プランセ(豚の胎盤)を配合した健康補助食品」に本件商標の登録出願日(平成16年3月17日)よりも一年以上前の平成15年2月から使用し、また、「B商標」と社会通念上同一の商標を「化粧品」に平成16年2月から使用している(甲第10号証及び同第14号証)。
イ 「本件科学研究所」が発行する「ま心新聞」が「本件友の会」の会員には毎月無料で配布されることになっており(甲第22号証)、平成15年1月10日付および他の当該新聞には、「本件使用商標」の他、「A商標」及び「B商標」と社会通念上同一の商標の広告が掲載されている(甲第10号証ないし同第21号証)。
ウ 被請求人は、平成3年7月10日に「本件友の会」に入会し、平成16年6月21日に同会を退会するまでの約13年間同会の会員であった(甲第23号証及び同第24号証)。
エ 被請求人は、「A商標」を「豚の胎盤を主成分とする粉状、粒状、顆粒状、錠剤状、液状、カプセル状からなる加工食品」を指定商品として、また、「B商標」を「化粧品(薬剤に属するものを除く)」を指定商品として、本件商標と同日に、登録出願した(甲第3号証及び同第4号証)。
(3)ところで、商標法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、商標自体が公序良俗に反するものが該当するほか、商標自体に公序良俗違反がない場合であっても、出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあるときや剽窃的行為であると評することができる場合も、本号に該当すると解すべきである(東京高裁平成14年7月16日判決(平成14年(行ケ)94号)、同平成15年5月8日判決(平成14年(行ケ)616号)参照)。
(4)そこで、これを本件についてみると、上記(1)(2)によれば、本件商標は、「本件使用商標」と同一の文字綴りを有し、その称呼を共通にすること、当該商標を構成する文字が既成語とは認められないこと、また、指定商品も所謂健康食品の類であって専門的な要素を含むものであるうえ、前記使用商品とほぼ一致することが認められる。そして、被請求人は、「本件友の会」の会員であった期間中、前記「ま心新聞」などを通して、請求人らの商標及びその商品について難なく普通に知り得る立場にあったと推認される。これに加えて、被請求人は、本件商標のほかに、請求人らが使用する商標と社会通念上同一の商標を、ほぼ同じ商品を指定商品として、本件商標と同時に登録出願したことが認められる。
以上を総合してみれば、本件商標が、「本件使用商標」と商標の採択において偶然に一致したものであって、それとは無関係に、たまたま被請求人が先に出願し登録を得たものとみることは、極めて不自然というべきである。
そうとすれば、本件商標についての出願は、請求人の商標及び商品の存在を知悉したうえ、それが商標登録を受けていないことを奇貨として行われた、いわば剽窃的行為といわざるをえないものである。そして、かかる経緯をともなう登録は、著しく社会的妥当性を欠くものがあり、商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
(5)以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものに該当するから、他の理由について判断するまでもなく、商標法第46条第1項に基づき、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 【別掲】本件商標(色彩は、原本を参照されたい)



審理終結日 2006-01-11 
結審通知日 2006-01-16 
審決日 2006-01-27 
出願番号 商願2004-30027(T2004-30027) 
審決分類 T 1 11・ 22- Z (Y29)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 斎 
特許庁審判長 小林 薫
特許庁審判官 山本 良廣
水茎 弥
登録日 2004-11-12 
登録番号 商標登録第4815666号(T4815666) 
商標の称呼 フシセン 
代理人 戸村 隆 

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