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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200589039 審決 商標
無効200589076 審決 商標
無効200489106 審決 商標
無効200589025 審決 商標
取消200530509 審決 商標

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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z05
管理番号 1132916 
審判番号 取消2005-30508 
総通号数 76 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-04-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2005-04-27 
確定日 2006-02-27 
事件の表示 上記当事者間の登録第4402624号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4402624号商標(以下「本件商標」という。)は、「KEPPRA」の欧文字を標準文字で表してなり、1999年2月18日ベネルクス商標庁及びベネルクス意匠庁においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、平成11年8月18日に登録出願、第5類「薬剤」を指定商品として、同12年6月29日に登録査定、同年7月21日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第9号証を提出した。
(1)請求の理由
請求人の調査したところによれば、商標権者である被請求人が本件商標をその指定商品について使用している事実は発見できなかった。また、本件商標に係る登録原簿上、専用使用権及び通常使用権の登録もない。
したがって、継続して3年以上、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが上記指定商品について、本件商標の使用をしていないと推認されるものであるから、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
(2)答弁に対する弁駁
被請求人は、本件商標の不使用につき、商標法50条2項但書に規定する「正当理由」がある旨主張しているが、被請求人の主張している理由は、いずれも「正当理由」としての根拠を有しないものである。
(ア)臨床試験中である旨の主張について
商標法50条に規定する不使用取消審判の趣旨は、本来、商標は使用されることによって保護法益が発生するものであり、一定期間(3年間)使用されない商標には保護法益が発生していないから、これに独占排他権としての商標権を存続させるときは、第三者の商標選択の自由を不当に制限することになるという弊害を排除することにある。そのため、法は、商標権者に商標使用の立証責任を転換して、商標権者が自ら商標使用を立証できないときは、その商標登録を取り消すことを原則としているのである。このことは、商標権者が当該商標の使用を意図していたとしても、例えば、商品開発の遅れなどの営業上の理由により当該商標を使用できないときであっても、その登録は取り消されるという厳正な取り扱いを定めているのである。
したがって、この取消の例外事由である不使用の「正当理由」については、厳格に解釈されるべきとされているのである(甲第1号証)。
かかるところから、この「正当理由」に該当すべき事由としては、地震、台風その他の天災地変によるもの、類焼、放火、破壊その他の第三者の故意又は過失によるもの、法令による全面禁止、許認可手続の遅延その他の公権力の発動によるもの、として極めて限定的に解釈・運用されており(旧商標審査基準、甲第2号証の「工業所有権法逐条解説」)、判例も同様の立場である(甲第3号証)。
そして、上記の許認可手続の中には、被請求人も述べているように、医薬品分野においては、製造承認の手続がある。この製造承認手続による場合をより具体的に言えば、当該医薬品の商標を決定し、厚生労働省に許認可の申請を行ったところ、許認可が得られないため、審判請求前3年以内に使用できなかった場合が該当するとされ、医薬品業界においては、それを前提として商標管理が行われているのである(甲第4号証、甲第5号証)。しかし、その場合においても、商標登録後から製造承認申請までに長期間を経過したような場合については、「正当理由」には該当しないとして極めて厳格に運用されているのである(甲第6号証の審判2001一30458)。このことは裁判例においても、化粧品についての製造承認の場合にも同様の解釈・運用が行われている(甲第7号証)。
しかるところ、被請求人の主張する臨床検査の段階とは、例外とされる製造承認申請の前の段階にすぎず(甲第8号証)、単なる研究開発段階にすぎない。つまり、それは私的事情にすぎないのであって、例え、臨床試験を終了したとしても、その対象医薬品が製造承認されるかどうかは未確定の段階にすぎない。したがって、臨床試験中ということを「正当理由」として認めるならば、商標権者の私的事情によって、極めて長期の不確定な期間にわたって、商標の不使用が容認されることになって、不使用取消審判の制度を形骸化させてしまうことになるから、到底容認されるべきではない。また、臨床試験中を正当理由とするならば、臨床試験の前の段階の動物試験の段階までも含めなければならないことになるから、取消審判制度そのものが成り立たなくなるのである。
さらに、製造承認申請の段階では、当該医薬品の商標は決定されているが、臨床試験の段階においては、主観的意図は別として、当該医薬品の商標が確定しているものでもない(被請求人の医薬品は、臨床検査の現段階では、治検成分記号:「L059」、一般名:「Levetiracetam」として特定されているにすぎない。乙第4号証〜乙第8号証)。その意味において、臨床試験の段階では、当該商標がその検査中の医薬品との関係において「不使用」という前提が一義的に成り立たないから、「不使用」を前提とした「正当理由」ということも成り立たないことになる。言い換えれば、当該商標は、単に事実上使用されていないというだけである。
しかも、医薬品の製造承認においては、医薬品の販売名たる商標につき、アルファベットのみで構成される商標は製造承認が認められない不適切な場合とされている(甲第9号証)。したがって、アルファベット文字のみからなる本件商標「KEPPRA」は、製造承認が認められない販売名に該当するから、本件商標との関係で「臨床試験中」ということ自体が成り立たないのである。
以上から明らかなように、臨床試験中ということを理由として「正当理由」に該当する旨の被請求人の主張は何ら根拠を有しないと言うべきである。
(イ)外国での周知性の主張について
仮に、本件商標が外国で周知であるとしても、そのことと、一定期間、我が国での不使用を理由とする法50条の審判とは別異の問題であり、例外扱いすべき理由には該当しない。被請求人の主張は、ストック商標を認めよという主張と同じであって、法50条の審判は、第三者の商標採択の自由の障害・弊害となるストック商標を整理することを目的として設けられているものであるから、被請求人の主張が容認されないのは当然である。
また、被請求人自身が述べているように、外国で周知な商標を他人が出願・登録した場合には、その登録を阻却する手段が設けられているから(商標法4条1項19号等)、それで対処すれば足りるのであって、法50条の取消審判で例外扱いすべき理由はない。
本件商標が外国で周知であるから「正当理由」に該当するという被請求人の主張は、私的な事情論にすぎず、不使用を正当とする理由には到底該当しない。

3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第14号証を提出した。
(1)被請求人は、請求に係る商品「薬剤」につき、本件商標が使用されていないことについては争わない。しかし、請求に係る商品「薬剤」の範疇に属する「抗てんかん薬(一般名称を「Levetiracetam」という)」(以下、本件薬剤という。)につき、本件商標が不使用であることは、以下に述べる「正当な理由」に基づくものであるから、不使用を理由としてその登録が取り消されるべきではない。
(ア)医薬品の製造販売をしようとする者は、品目ごとにその製造販売についての厚生労働大臣の承認を受けなければならず(薬事法第14条第1項)、医薬品を指定商品とする登録商標は、その医薬品の製造販売が承認されない限り、その使用ができない。本件薬剤についても、現在、製造販売の承認を受けるべく、臨床試験がなされている途中にあり、本件商標につき、その使用ができない状態となっている。
したがって、本件商標の不使用は、薬事法に基づく本件薬剤の製造販売の規制を原因とするものであり、正に被請求人の不可抗力によるものであるから、本件商標の不使用については、「正当な理由」が存していると言い得るものである。
この点、特許庁の運用では、医薬品を指定商品とする登録商標に対し、当該医薬品の製造販売承認前に、不使用取消審判が請求された場合には、商標権者が当該医薬品の製造販売の承認申請をしている場合に限り、登録商標の不使用につき、「正当な理由」が認められてきた(特許庁商標課編、「商標審査基準」第5版、84〜85頁)。
かかる運用によると、商標登録後3年以上を経過してもなお承認申請に至らず、その間に不使用取消審判が請求された場合には、登録商標の不使用につき、「正当な理由」が認められないことになる。かかる場合に、「正当な理由」が認められないのは、登録商標の不使用の原因が薬事法による医薬品の製造販売規制にあるとはいえ、その規制は商標権者が予見できたものであるから、不使用の原因は、商標権者の恣意によるものであり、その責任は、商標権者が負うべきと考えられるからである。
しかし、薬事法による規制が予見できたことを根拠に、登録商標の不使用につき、一律に「正当な理由」を認めないのは、商標権者に余りに酷と言う他はない。
なぜなら、近年、臨床試験が長期化し、臨床試験開始から承認申請までに平均して3年から7年かかっているため(乙第3号証)、商標登録後3年以内に承認申請することが極めて困難となってきており、又、商標の事情によっては、登録後3年以内に承認申請できるように、出願時期を調整する(遅らせる)ことが困難な場合があるからである。
前段の点については、本件薬剤の場合も、例外ではなく、乙第2号証、乙第4号証ないし乙第8号証に示すとおり、治験(ブリッジング試験)開始(2000年8月)から現在まで既に5年を経過しているが、製造販売の承認申請(2007年11月予定)には至っていない。なお、治験が本件商標を販売名とする本件薬剤について行なわれたことは、乙第2号証において示されているとおりである。
後段の点についても、本件薬剤の場合、1999年11月に米国で、2000年3月にスイスで、2000年4月にアルゼンチンで、2000年9月に欧州連合で、2000年12月にノールウェーで、それぞれ製造販売の承認がなされているが(乙第9号証)、被請求人としては、これらの承認の前に何としても本件商標を日本で出願しておく必要があった。
すなわち、本件薬剤のような新有効成分に係る医療用医薬品については、特にその承認後に、製薬会社、医師、薬剤師等の医療関係者の関心が集まり、又、各種の医学専門誌にも掲載されるので、第三者による本件商標の不当な盗用を防止するには、各国の承認前に、本件商標を日本に出願しておく必要があったのである。したがって、かかる状況下において、本件商標の出願時期を調整することは、被請求人にとって、不可能であったというべきであるから、商標登録後3年以内に本件薬剤の承認申請ができなかった一因が早期の出願及び登録にあったとしても、その責任を商標権者に負わせることは、商標権者に酷である。
以上、被請求人にとって、本件薬剤の臨床試験が予想外に長引いたこと、さらには、薬事法による本件薬剤の製造販売規制が予見できたとはいえ、各国の本件薬剤の承認前に、本件商標を出願しておかなければならなかったことを考慮すると、本件商標の不使用につき、被請求人にその責任を負わせることは許されるべきでなく、そうとするならば、薬事法による本件薬剤の製造販売規制が唯一原因しているものとみる他はない。
(イ)加えて、本件商標の不使用につき、「正当な理由」が存するかどうかの判断にあたっては、参議院商工委員会において、「『正当な理由』の解釈及びその運用については、産業の実態等を考慮して弾力的におこなうこと。」とする付帯決議がなされている(昭和50年3月27日付議事録11号8頁)ことを踏まえ、以下の事情が特に考慮されるべきである。
(a)現在、本件薬剤の製造販売を承認している国は、世界で40カ国に上っており(乙第9号証)、商標「KEPPRA」の登録国は、110カ国以上に上っている(乙第10号証)。
しかして、本件薬剤の年間売上高は、2001年度においては、米国で約9600万ユーロ、ヨーロッパで約1億2200ユーロ(乙第11号証)、2002年度上半期においては、全世界で約1億ユーロ(乙第2号証)、2003年度においては、米国で約2億900万ユーロ、ヨーロッパで約1億ユーロ(乙第12号証)、2004年度においては、米国で約2億7000万ユーロ、ヨーロッパで約1億3900万ユーロ(乙第13号証)となっている。この結果、米国では、新世代「抗てんかん薬」の中で主導的な地位を確立し、ヨーロッパでは、強力な2番手としてトップとの差を縮めている(乙第13号証)。
さらに、インターネットで、「KEPPRA Levetiracetam」を検索すると、51200件ものサイトが表示され、この中には、日本語による本件薬剤の個人輸入サイトや情報提供サイト等も含まれている(乙第14号証)。
以上の事実は、商標「KEPPRA」が本件薬剤につき、外国において既に周知となっており、日本においても相当程度知られていることを示すものである。
(b)本件薬剤の製造販売の承認を得るべく、必要な臨床試験が長期間粛々と続けられてきていることに鑑みると、被請求人には、本件商標を使用せんとする真摯な意思が認められ、かつ、その使用の可能性についても、外国での本件薬剤の承認状況及び商標「KEPPRA」の使用状況に鑑みれば、極めて高いものがある。
そうとするならば、単なるストック商標と異なり、本件商標に被請求人の業務上の信用が化体する蓋然性は極めて高いから、安易にその登録を取り消せば、登録主義の下で、商標使用者の業務上の信用を保護せんとする商標法の目的に副わないものとなる。
(c)商標「KEPPRA」は、本件薬剤につき、外国において周知な商標であり、かつ、被請求人による完全な造語商標であるから、第三者がそれと同一又は類似の商標を善意で選択し、出願することは、実際問題としてあり得ない。
したがって、商標「KEPPRA」と同一又は類似の商標が第三者に登録される可能性は、極めて低いものであるから、そもそも、本件商標が第三者の商標選択の余地を奪うことにはならず、本件商標の登録を維持しても、商標法第50条第1項の規定の趣旨を何ら没却するものではない。
(ウ)かくして、本件商標の不使用は、被請求人の責に帰すべき理由によるものでなく、唯一薬事法による医薬品の製造販売規制によるものであり、さらに、外国周知商標「KEPPRA」の保護の必要上、商標法の目的上、本件商標の登録は維持されるべきであり、かつ、その登録を維持しても不使用取消審判の趣旨を何ら没却するものでない以上、本件商標の不使用には、正に「正当な理由」が存すると言うべきである。

4 当審の判断
被請求人は、本件商標が請求に係る商品「薬剤」につき使用されていないことについては争わず、本件商標が不使用であることについて正当な理由がある旨主張している。
(1)ところで、商標法第50条第2項ただし書きの登録商標の使用をしていないことについての正当な理由としては、その商標の使用をする予定の商品の生産の準備中に天災地変等によって、工場等が損壊した結果、その使用ができなかったような場合、許認可手続の遅延その他の公権力の発動による場合、時限立法によって一定期間(3年以上)その商標の使用が禁止されたような場合等が事例として挙げられているが、例えば、東京高裁平成9年(行ケ)第53号判決の理由中には、「商標法は本来、登録商標の使用を保護の前提としていること、及び、不使用取消審判制度が設けられている趣旨からすると、登録商標の不使用につき商標法50条2項ただし書にいう『正当な理由』があるといえるためには、登録商標を使用しないことについて当該商標権者の責めに帰すことのできないやむを得ない事情があり、不使用を理由に当該商標登録を取り消すことが、社会通念上商標権者に酷であるような場合をいうものと解するのが相当である。」と判示されている。
(2)そこで、被請求人の主張している理由が本件商標の使用をしていないことについての正当な理由に該当するか否かについて判断する。
被請求人の提出に係る乙各号証によれば、以下の事実を認めることができる。
乙第2号証(ユーシービージャパン株式会社のホームページ中の2002年8月8日付プレスリリース資料)によれば、「ユーシービージャパン株式会社は、ベルギーUCBグループの2002年上半期業績を発表しました。・・・中枢神経系薬市場においては、抗てんかん薬の『Keppra(ケプラ)』(一般名「レベチラセタム」)の売上が2002年上半期において前年同期比2倍を超える1億ユーロ(約115億1,300万円)に到達しました。この大幅な伸長は同薬が医療関係者に広く受け入れられたことを示しています。Keppraは現在もスペイン、メキシコ、ベルギ-など、各国での市場導入が続いており、現在はイタリアとフランスにて薬価、保険適応手続きが行われています。同薬は日本においては現在臨床試験中であり、治療薬が少ない抗てんかん薬市場の画期的新薬として期待されています。」と記載されている。
乙第3号証(新聞記事)によれば、「新薬の投入海外を優先/各社国内の治験手間どり」の見出しのもとに、「治験」の説明として「新薬の安全性や有効性を実証するため人間に投与しデータを収集する臨床試験。仕組みや試験項目に日米欧で基本的な差はないが人種などが異なり国ごとの実施が必要・・・」とあり、「日本の治験は、製薬会社から治験の委託を受けた医療機関が、被験者を確保するのに手間がかかっている。費用は米国の約2・5倍、期間も米国は長くて約6年なのに対し日本は約7年かかる。・・・」旨記載されており、その治験は、第1相から第3相まであり、被験者の数も第1相では約20人以上、第2相の前期が約50人以上、後期が約100人以上、そして、第3相では約200人以上の被験者数が必要である旨記載されている。
乙第4号証(ユーシービージャパン株式会社 2000年9月25日作成、2003年8月7日第4版改訂の「L059(Levetiracetam)ブリッジング試験/てんかんを対象としたプラセボとの二重盲検比較試験/治験実施計画書」には、治験計画の背景及び経緯が記載されており、海外の開発の経緯として、「てんかんは、長年にわたって薬物治療を必要とされる疾患であり、症例によっては生涯にわたることも少なくない。したがって、患者自身や家族さらには社会的に負担を余儀無くされる。現在でもなお、抗てんかん薬物療法は有効性、安全性及び取り扱い面で、完全に満足されるものではない。抗てんかん薬治療は原則として単剤治療を志向する。しかし、てんかん発作やてんかん症候群によっては限界があり、部分てんかんや全般てんかんでは、多剤併用治療を必要とする患者は多い。また、てんかん患者の20〜30%は、抗てんかん薬物治療で治療者と患者が期待する発作抑制を得られない難治性てんかん発作を有している。L059(レベチラセタム)は・・・1980年代初期にUCBSA社(ベルギー)で開発された新規中枢作用物質である。」と記載されている。また、日本における開発の経緯として、「本邦においては、第1相臨床試験として、単回投与試験が1995年12月〜1996年4月に、食事の影響試験が1996年9月〜1997年5月に、反復投与試験が1996年9月〜1997年3月に実施された。」と記載されている。そして、結論の項には、我が国での承認申請のための開発方法が記載されており、「前述したように、L059は既存の抗てんかん薬と異なる作用機序を有する新規の抗てんかん薬であり、外国での非臨床、臨床試験でその有効性と安全性は確認されている。L059は1999年11月に米国のFDA及び2000年3月にスイスの規制当局において承認され、また2000年9月には欧州医薬品庁に承認され、2003年5月6日現在41ヶ国で承認または販売されている。今般、ユ-シービージャパン株式会社はL059を成人のてんかん患者の治療薬として、本邦で開発することを計画した。導入には上述した外国で実施された主要な試験のデー夕を使用し、本邦での承認申請を行う計画である。本邦においては既に実施した健常成人での第I相臨床試験に加えて、本治験実施計画書に従って第2相臨床試験を行い、外国での主要臨床試験を本邦に外挿する開発方法を採用する。つまり、本試験により、外国臨床試験データ(有効性と安全性)をブリッジングする計画である。本試験は治験実施計画書に記載されているように、部分てんかんの確定診断を受け、標準的な抗てんかん薬による治療を受けているが、発作の発現を抑制出来ていないてんかん患者を対象として、L059を既存の抗てんかん薬による治療に上乗せし、有効性と安全性を評価する。本試験で得られた結果と外国人で実施された主要な試験との有効性と安全性(薬物の血中濃度測定を含む)を比較検討し、有効性及び安全性で類似性が示されればブリッジングが成立したと考える。」と記載されている。
乙第5号証は、平成11年(1999年)8月19日に行われた初回治験相談の議事録(医機治発152号)であり、相談申込者であるユーシービージャパン株式会社の担当者と医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構の担当者との間でなされたL059に関する質疑応答が記載されている。
乙第6号証は、2005年1月14日作成の臨床試験の一覧表であり、2000年8月から2003年7月までに行われた臨床試験について、「試験の種類、試験の目的、試験デザイン・対照の種類、被験薬・投与方法・投与経路、被験者数、投与期間」等が一覧表の形に纏められている。
乙第7号証は、平成16年(2004年)9月3日に行われた医薬品第2相試験終了後相談の議事録(薬機審長発113号)であり、相談申込者であるユーシービージャパン株式会社の担当者と独立行政法人医薬品医療機器総合機構の担当者との間でなされたL059に関する質疑応答及び該機構の担当者からの助言事項が記載されている。
乙第8号証は、平成17年(2005年)2月10日に行われた医薬品申請前相談の議事録(薬機審長発0414001号)であり、相談申込者であるユーシービージャパン株式会社の担当者と独立行政法人医薬品医療機器総合機構の担当者との間でなされたL059に関する質疑応答及び該機構の担当者からの助言事項が記載されている。
乙第9号証は、被請求人作成に係る本件薬剤の承認国リストであり、2005年の始め頃までには、本件薬剤は「KEPPRA」の名称をもって、アメリカ合衆国、欧州連合、カナダ、オーストラリア、香港、インドネシア、マレーシア、メキシコ、フィリピン等々40カ国において、製造販売が承認されていたことが記載されている。
乙第10号証は、被請求人作成に係る商標「KEPPRA」の登録国リストであり、「KEPPRA」の商標は、我が国をはじめ110か国以上の国において登録されていたことが記載されている。
乙第11号証(ユーシービージャパン株式会社のホームページ中の2002年2月15日付プレスリリース資料)によれば、「UCBグループ(本社:ベルギーブリュッセル)は、このほど2001年連結決算(未監査)を発表しました。・・・中枢神経系領域において、2000年第2四半期に米国で上市された抗てんかん薬『Keppra(ケプラ)』は当初の予測を上回り、売上高は、9,600万ユーロ(約111億8,688万円)に達しました。また、同薬はスイスをはじめ欧州各国でも上市され、総売上高は1億2,200万ユーロ(約142億1,666万円)に到達しました。」と記載されている。
乙第12号証は、被請求人発行の「UCB Annual Report 04」における本件薬剤の売上高を表した部分の頁であり、2003年度における米国での売上高は2億900万ユーロとなっており、ヨーロッパでの売上高は1億ユーロとなっていることが記載されている。
乙第13号証(ユーシービージャパン株式会社のホームページ中の2005年2月17日付プレスリリース資料)によれば、「バイオ医薬の世界的企業であるUCBグループ(本社:ベルギーブリュッセル)は、このほど2004年予備決算を発表しました。・・・バイオ医薬品事業の2004年売上高は15%増の16億7,900万ユーロとなりました。・・・売上増の大きな原動力となったのは中枢神経系薬分野であり、「Keppra(ケプラ)」の売上高は33%増の4億1,700万ユーロとなりました・・・米国でのKeppraの売上高は29%増の2億7,000万ユーロ、欧州では38%増の1億3,900万ユーロでした。米国では新世代抗てんかん薬の中で主導的な地位を確立し、欧州では強力な2番手としてトップとの差を縮めています。」と記載されている。
(3)上記において認定した事実によれば、被請求人は、本件審判の請求の登録がなされた平成17年5月頃までには、被請求人の使用に係る「KEPPRA」の商標は、我が国をはじめとする110か国以上の国において登録されており、「KEPPRA」の商標に係る抗てんかん薬は、既に、アメリカ合衆国、欧州連合、カナダ等々40カ国において、その製造販売が承認されていたことが認められる。そして、該抗てんかん薬の米国での売上高は2001年における9,600万ユーロが2004年には2億7,000万ユーロに、また、欧州での売上高は2001年における1億2,200万ユーロが2004年には1億3,900万ユーロに拡大していたことを認めることができる。
一方、被請求人の我が国における該抗てんかん薬に関する事業活動の状況をみるに、本件商標「KEPPRA」の出願は、平成11年(1999年)8月18日になされており、これは、被請求人が「KEPPRA」の商標を世界各国へ出願した時期と相前後してなされたものということができる。
そして、被請求人は、我が国においても、被請求人の子会社と推認し得るユーシービージャパン株式会社を通じて、該抗てんかん薬であるL059(レベチラセタム)についての臨床試験を本件商標の我が国への出願前から既に行っており、第1相臨床試験として、単回投与試験を1995年12月から1996年4月に、食事の影響試験を1996年9月から1997年5月に、反復投与試験を1996年9月から1997年3月に行っている。その後、平成11年(1999年)8月19日に、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構との間で初回治験相談が行われ、平成16年(2004年)9月3日に、独立行政法人医薬品医療機器総合機構との間で医薬品第2相試験終了後の治験相談が行われ、平成17年(2005年)2月10日に、同機構との間で医薬品申請前の治験相談が行われたことを認めることができる。
以上の事実を総合してみれば、被請求人は、抗てんかん薬「KEPPRA」の製造・販売を世界的規模で推進していることが認められ、我が国においても、「KEPPRA(ケプラ)」の抗てんかん薬を製造・販売すべく、本件商標の出願以前から、抗てんかん薬L059についての臨床試験を重ね、再三にわたり、治験相談も行ってきたが、平成17年(2005年)2月10日に行われた独立行政法人医薬品医療機器総合機構との間の医薬品申請前の治験相談においても、承認申請の賛同を得られておらず、更なる追加試験を行うことの助言がなされている状況にある。
しかして、医薬品の製造販売をしようとする者は、品目ごとにその製造販売についての厚生労働大臣の承認を受けなければならず(薬事法第14条第1項)、医薬品を指定商品とする登録商標は、その医薬品の製造販売が承認されない限り、その使用ができない。そして、乙第3号証(新聞記事)にもあるように、近年、我が国における臨床試験は長期化し、臨床試験開始から承認申請までに、一般的に約7年も要する実情にある。しかも、抗てんかん薬についての臨床試験の複雑性、困難性については、乙第4号証における「・・・現在でもなお、抗てんかん薬物療法は有効性、安全性及び取り扱い面で、完全に満足されるものではない。抗てんかん薬治療は原則として単剤治療を志向する。しかし、てんかん発作やてんかん症候群によっては限界があり、部分てんかんや全般てんかんでは、多剤併用治療を必要とする患者は多い。また、てんかん患者の20〜30%は、抗てんかん薬物治療で治療者と患者が期待する発作抑制を得られない難治性てんかん発作を有している。」といった記述や乙第5号証ないし乙第8号証の治験相談議事録等の記述からみても容易に推測し得るところである。
そうとすれば、本件商標の出願前から長期間にわたり継続して臨床試験を行い、度重なる治験相談を行ってきたにも拘わらず、我が国においては未だ、医薬品の製造承認申請の段階にまで至らなかったことについての被請求人における上記事情は、本件審判の請求の登録(平成17年5月25日)前3年以内に日本国内において、本件商標の使用をすることができなかったことについての商標権者(被請求人)の責めに帰すことのできないやむを得ない事情とみるのが相当である。
このような場合においても、不使用を理由に当該商標登録を取り消すことは、社会通念上、あまりにも商標権者に酷であるというべきであり、不使用取消審判制度の趣旨に副うものとはいえない。
してみれば、被請求人における上記事情は、本件商標を本件審判の要証期間内に日本国内において使用をすることができなかったことについての正当な理由に該当するものというべきである。
(4)請求人の主な反論について
請求人は、(ア)被請求人の主張する臨床検査の段階とは、単なる研究開発段階にすぎず、臨床試験を終了したとしても、その対象医薬品が製造承認されるかどうかは未確定の段階にすぎないものであるから、臨床試験中ということを「正当理由」として認めるならば、極めて長期の不確定な期間にわたって、商標の不使用が容認されることになり、不使用取消審判制度を形骸化させてしまうこと、(イ)製造承認申請の段階では、当該医薬品の商標は決定されているが、臨床試験の段階においては、主観的意図は別として、当該医薬品の商標が確定しているものでもなく、その意味において、臨床試験の段階では、当該商標がその検査中の医薬品との関係において、「不使用」という前提が一義的に成り立つものではないこと、(ウ)医薬品の製造承認においては、医薬品の販売名たる商標につき、アルファベットのみで構成される商標は製造承認が認められない不適切な場合とされており、アルファベット文字のみからなる本件商標「KEPPRA」は、製造承認が認められない販売名に該当するものであるから、本件商標との関係で、「臨床試験中」ということ自体が成り立たないことを挙げている。
しかしながら、(ア)及び(イ)の点については、採択すべき商標も決まっていない新規の医薬品を開発するというような場合においては、請求人の主張が当てはまる場合も有り得るとしても、本件の場合は、前記したとおり、既に、「KEPPRA」の商標は、110か国以上の国において登録されており、「KEPPRA」の商標に係る抗てんかん薬は、アメリカ合衆国、欧州連合、カナダ等々40カ国において、その製造販売が承認されているものである。そして、米国や欧州での売上は拡大している状況にあり、我が国への進出も被請求人の世界的な事業展開の一環とみるべきものであり、我が国における臨床試験は、乙第4号証にもあるとおり、外国での非臨床、臨床試験でその有効性と安全性は確認されていることから、外国での主要臨床試験成績をブリッジング(日本人へ外挿)する形式の試験であって、単なる研究開発の段階ということはできない。また、商標の点についても、本件のような、世界的な規模で事業展開しようとしている医薬品について、我が国のみ、諸外国とは別異の商標を採択するということは、格別な理由のない限り考え難く、我が国においても、「KEPPRA」の商標が採択されるものとみるのが自然であって、当該てんかん薬が承認された場合の商標は、既に決定されているものとみるべきである。
また、(ウ)の点については、医薬品の承認申請において請求人が主張するような制約があるとしても、それは、あくまでも、医薬品の承認申請における事情であり、医薬品の承認申請における販売名称と登録商標の態様とは、必ずしも、直接的な対応関係にあるものとはいえない。医薬品の承認申請にあたっては、登録商標と社会通念上同一と認められる範囲内において、適宜、変更を加えて申請することは可能であり、本件の場合も、現実の使用態様が想起されるニュースリリース(乙第2号証、乙第11号証及び乙第13号証)においては、「Keppra(ケプラ)」のように、欧文字と片仮名文字とが併記される形で紹介されているところである。
そうしてみると、請求人の主張は、いずれも採用することができない。
(5)まとめ
以上のとおり、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、使用権者のいずれによっても、その請求に係る指定商品について使用されていなかったものではあるが、被請求人は、商標法第50条第2項ただし書きの規定により、その指定商品について本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしたものといわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2005-12-22 
結審通知日 2006-01-05 
審決日 2006-01-17 
出願番号 商願平11-74115 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Z05)
最終処分 不成立 
特許庁審判長 山田 清治
特許庁審判官 寺光 幸子
小林 薫
登録日 2000-07-21 
登録番号 商標登録第4402624号(T4402624) 
商標の称呼 ケプラ、ケップラ 
代理人 佐藤 英二 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 鈴木 礼至 
代理人 石田 昌彦 
代理人 浜田 廣士 
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