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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z30
管理番号 1132716 
審判番号 無効2004-89008 
総通号数 76 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-04-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-04-12 
確定日 2006-02-13 
事件の表示 上記当事者間の登録第4637732号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4637732号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4637732号商標(以下「本件商標」という。)は、「NEAL’S YARD」及び「ニールズヤード」の文字を上下二段に横書きしてなり、平成12年8月25日に登録出願、第30類「菓子及びパン,コーヒー及びココア,サンドイッチ,ホットドッグ」を指定商品として、平成15年1月17日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第97号証(枝番号を含む。ただし、甲第12号証は、欠号。)を提出した。
(1)請求人の商標・商号・商品の周知・著名性
(ア)請求人は、昭和63年9月頃から代理店などを通じて、「NEAL’S YARD」又は/及び「ニールズヤード」という商標(以下、これらをまとめて、「請求人引用商標」という。)を使用し、請求人の製造に係る商品を日本において販売してきた。請求人の商号の略称あるいは商標である請求人引用商標を使用した商品は、平成2年(1990年)以後、次々に我が国の雑誌等のメディアにとりあげられ、広く我が国の一般需要者に紹介された結果(甲第3号証ないし甲第58号証)、請求人引用商標は、遅くとも平成12年8月初めには、請求人の商号の略称あるいは商標として、我が国の一般需要者に広く認識され、周知・著名となった。
(イ)平成7年9月12日に、請求人は、「ニールズヤード ジャパン有限会社」に対し、商号使用の禁止等を求めて裁判(2件)を提起した(甲第93号証)。上記2件の訴訟、すなわち平成7年(ワ)第18041号商号使用禁止等請求事件と平成8年(ワ)第24671号商品の継続的供給等請求事件においては、判決に至る前に被告が原告の請求を受け入れた結果、原告完全勝訴の内容での和解が成立し、終結した(甲第95号証ないし甲第97号証)。上記2件の訴訟とは別の仮処分申請事件においても、原告完全勝訴の内容での和解が成立し、終結した(平成9年12月19日)ことは、その時点において、「ニールズヤード」が我が国において、請求人の営業表示として周知・著名になっていたことを如実に物語っている。
(ウ)自由国民社2000年(平成12年)1月1日発行の「現代用語の基礎知識2000」(甲第92号証:171頁)の「ニールズヤード」の項には、「Neal’s Yard エッセンシャルオイルやエッセンシャルオイルを使ったヘアコンディショナーや化粧品を扱う店。1981年、ロンドンのコベントガーデンにロミー・フレイザーという女性が第一号店を開店。日本は青山などに店がある。」との記述があり、このことは、2000年(平成12年)1月1日以前に、「ニールズヤード」が著名であったことを示す証左以外の何ものでもない。
(エ)2001年(平成13年)以後においても、請求人引用商標は、請求人の商号の略称あるいは商標として、我が国の一般需要者に広く認識され、周知・著名であり続けている(甲第59号証ないし甲第91号証)。
(2)混同の有無
商品の出所の混同を生ずるおそれがある商標か否かの判断に当たっては、最高裁判所(第三小法廷)平成12年7月11日判決(平成10年(行ヒ)第85号)を参酌し、総合的に判断すべきである。
上記判決の認定事項:上記判決は、「商標法第4条第1項第15号にいう『他人の業務に係る商品又は役務(以下『商品等』という。)と混同を生ずるおそれがある商標』は、当該商標をその指定商品又は指定役務(以下『指定商品等』という。)に使用したときに、当該商品等が、他人の商品等に係るものであると誤信されるおそれがある商標のみならず、当該商品等が右他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれ(以下『広義の混同を生ずるおそれ』という。)がある商標を含むものと解するのが相当である。けだし、同号の規定は、周知表示又は著名表示へのただ乗り(いわゆるフリーライド)及び当該表示の希釈化(いわゆるダイリューション)を防止し、商標の自他識別機能を保護することによって、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護することを目的とするものであるところ、その趣旨からすれば、企業経営の多角化、同一の表示による商品化事業を通して結束する企業グループの形成、有名ブランドの成立等、企業や市場の変化に応じて周知又は著名な商品等の表示を使用する者の正当な利益を保護するために、広義の混同を生ずるおそれがある商標をも商標登録を受けることができないものとすべきであるからである。そして、『混同を生ずるおそれ』の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知・著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである。」と認定している。
すなわち、被請求人の本件商標は、請求人が使用してきた請求人引用商標と同一であることから、上記判決にいう類似性の程度は極めて高い。
本件商標の指定商品は、「菓子及びパン,コーヒー及びココア,サンドイッチ,ホットドッグ」(以下「本件指定商品(菓子等)」という。)であり、企業間取引の対象となる商品ではなく、いずれも若い女性を需要者層に含む一般消費者が直接購入する商品である。
一方、請求人の取扱商品である「化粧品・アロマセラピーに関する商品等」(以下「請求人の商品(化粧品等)」という。)も、若い女性を需要者層に含む一般消費者が直接購入する商品であり、両商品は、取引者及び需要者を共通にするところ多とするものである。企業経営が多角化する現在、有名ブランド、すなわち、著名な商品等の表示を使用する者の正当な利益を保護するためには、商品等の類似の範囲を超えて、いわゆる「広義の混同」を生ずるおそれがある商標についても、商標登録を受けることができないものとすべきである。
この点において、本件商標と著名な請求人引用商標とは、取引者及び需要者が共通していることから、本件商標に接した取引者及び需要者は、請求人の著名商標である請求人引用商標を連想し、商品の出所につき誤認を生ずるものであり、その商標登録を認めた場合には(審決注:本件商標の登録の無効審判請求を不成立とした場合には)、請求人の著名商標の持つ顧客吸引力へのただ乗り(いわゆるフリーライド)やその希釈化(いわゆるダイリューション)を招来する結果を生じかねないから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にいう「混同を生ずるおそれがある商標」に該当する。
(3)「ニールズヤード」の使用状況
甲第91号証は、本件審判請求前の2004年(平成16年)3月17日にインターネットの検索サイトで、「ニールズヤード」を検索した結果を示すものであり、ここに表示された検索結果496件中、4件のサイトは、請求人の商号の略称あるいは商標と無関係のものである。そのうちの3件のサイトは、被請求人のサイトであり、他の1件は、「ニールズヤード」をフリーライドしたアダルトビデオのサイトである。
このことは、「ニールズヤード」といえば、請求人の商号の略称あるいは商標ということが、我が国において広く知れわたっていること、すなわち、「ニールズヤード」が請求人の著名な商標であることを示すものにほかならない。このように、請求人の著名な商標「ニールズヤード」にフリーライドする者は、被請求人とアダルトビデオの制作会社以外にない。
(4)むすび
以上述べたとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録は無効とされるべきである。

3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、と答弁し、その理由及び答弁の補足を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第28号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録は無効とされるべきであると主張するが、この主張は失当であり、本件商標は、同第15号に該当するものではない。
(ア)請求人は、請求人引用商標が遅くとも平成12年8月初めには、請求人の商号の略称あるいは商標として、我が国の一般需要者に広く認識され、周知・著名となっていた旨主張するが、これは事実に反しており、本件商標の出願時(平成12月8月25日)に、請求人引用商標が請求人の商号の略称あるいは商標として、我が国の一般需要者に周知・著名であったとは、到底いえない。
(イ)請求人は、甲第3号証ないし甲第58号証において、請求人の商品が雑誌等のメディアに掲載された結果、請求人引用商標が請求人の商号の略称あるいは商標として、周知・著名となった旨主張するが、甲第3号証の記事が1990年(平成2年)発行であるのに対して、甲第4号証の記事は、1995年(平成7年)発行と5年もとんでおり、また、甲第5号証ないし甲第21号証は、全て1995年(平成7年)発行の雑誌等の記事であり、これらに掲載された商品の出所表示の多くが、「NEAL’S YARD FAR EAST」又は「ニールズヤード ファーイースト」(以下、これらをまとめて、「ニールズヤード ファーイースト商標」という。)あるいは「ニールズヤード リメディ社」もしくは「ニールズヤード レメディーズ」であり、請求人引用商標ではない。
また、甲第22号証ないし甲第56号証は、全て1996年(平成8年)発行の雑誌等の記事であり、その商品の出所表示の多くは、請求人引用商標ではなく、「ニールズヤード ファーイースト商標」や「ニールズヤード レメディーズ」である。
そして、1997年(平成9年)ないし2000年(平成12年)の4年間に記事掲載された雑誌等は一切なく、それ以降は、甲第59号証で2001年(平成13年)発行にとび、また、甲第60号証ないし甲第90号証は、2001年(平成13年)ないし2004年(平成16年)発行の雑誌等への掲載記事であり、それらの商品の出所表示も「ニールズヤード レメディーズ」が圧倒的に多い。
さらに、全て1996年(平成8年)発行の甲第22号証ないし甲第55号証のうち、甲第23号証、甲第26号証ないし甲第28号証、甲第30号証ないし甲第34号証、甲第36号証及び甲第37号証、甲第40号証、甲第42号証、甲第46号証ないし甲第49号証、甲第51号証ないし甲第53号証及び甲第55号証は、ロンドンの「ニールズヤード レメディーズ」の日本1号店が東京の恵比寿にオープンしたという記事が複数の雑誌に時期をほぼ同じくして掲載されたにすぎず、しかも、その商品の出所表示は、「ニールズヤード レメディーズ」が圧倒的に多い。
したがって、甲第3号証ないし甲第58号証の雑誌等への記事掲載の事実があるとしても、これによって、請求人の商品表示として請求人引用商標が周知・著名であったとは、到底いえない。
(ウ)そもそも、こうした雑誌等への記事掲載(実際には、依頼による雑誌への記事掲載が多い。)は、一般に非周知・非著名な会社でも日常的に行っていることであり、これをもって、請求人引用商標が周知・著名であるというのであれば、多くの会社、名称は、全て周知・著名ということになり、それが不合理なことは明白である。
(エ)また、請求人自身が自己の商品を積極的に宣伝広告した事実を示す証拠は、ほとんどなく、請求人がそうした宣伝広告活動を継続して、請求人の商号や商標を周知・著名にしたとはとてもいえない。
請求人は、請求人の商品の宣伝広告や販売促進活動のなかで、若い女性向け雑誌に、その紹介記事を書いてもらうために、雑誌社への積極的なPR活動を行ったと主張しており、被請求人には、そうした事実は不知であるが、仮に、それが事実であったとすれば、請求人が周知・著名性の根拠として挙げている雑誌への記事掲載は、結局のところ、請求人が雑誌社に頼み込んで紹介記事を書いてもらったことにほかならず、そのようなことは、雑誌社に対し、多くの会社が広く一般に行っていることであるから、この点よりしても、周知・著名性獲得の根拠とすることはできない。
(オ)請求人は、甲第93号証等を挙げ、請求人会社のエッセンシャルオイル等の請求人の商品をイギリスから並行輸入して無断販売していた「ニールズヤード ジャパン有限会社」に対し、その商号使用禁止等を求めた訴訟が和解で決着したことを「ニールズヤード」が我が国において請求人の営業表示として周知・著名になっていたことを如実に物語っている旨主張する。
被請求人には、その事実は不知であるが、仮に、それが事実であったとしても、菓子等を指定商品として適法に登録された被請求人の本件商標と、請求人の商品そのものである「エッセンシャルオイル」を無断販売しているとして訴えられた「ニールズヤード ジャパン有限会社」の商号とでは、混同の判断その他の事情が全く異なっているので、「ニールズヤード」が請求人の営業表示として周知・著名であったことの証拠には、到底ならない。
(カ)また、請求人は、当該訴訟で原告(すなわち、請求人)の商品の日本における販売実績につき、平成元年から平成5年までの販売額の合計が5,728万円であるとしているが、これが事実であるとしても、1年平均わずか1,145万円であり、この程度の販売額では、原告(請求人)の商品が日本で周知・著名であったといえないことは明らかである。
請求人は、平成元年から平成5年上半期までの宣伝広告や販売促進のために支出された費用の総額が3,343万円である旨主張しているところ、被請求人には、その事実は不知であるが、仮に、それが事実であったとしても、1年平均で約670万円にすぎず、この程度の額であれば、一般の中小・零細会社でも支出する程度のものであり、この金額からして、請求人の商品が我が国で周知・著名性を獲得していたとはいい難い。
(キ)しかも、請求人は、請求人の商品の取り扱い店舗が平成元年の6店舗から、平成5年には16店舗に増加した旨主張しているところ、その事実は不知であるが、全国で16の店舗において、請求人の商品を取り扱っている事実が仮にあったとしても、その程度では、当該商品が我が国で周知・著名性を獲得していたといえるものではない。
(ク)請求人は、2000年版「現代用語の基礎知識」に「ニールズヤード」がエッセンシャルオイルに関して記載されているので、2000年1月1日以前から、「ニールズヤード」が著名であったことを示す証左以外の何ものでもない旨主張するが、当該主張は明らかに失当であり、そうした雑誌に1回掲載された程度では、周知・著名性の証左にならないことは明らかである。
(ケ)請求人は、甲第91号証を挙げて、2004年(平成16)年3月7日現在のインターネットのホームページ(ウェブサイト)を「ニールズヤード」で検索したリストを示し、多くの検索結果が存在することは、「ニールズヤード」が請求人の著名な商標であることを示すものにほかならない旨主張するが、これも失当である。今日、インターネットには、無名であっても多くの会社や個人がホームページを自由に作成することができ、また、雑誌等の記事もインターネット上に雑多に掲載されており、検索エンジンは、リンク機能をもち、ある名称の入力に対して、ホームページ、雑誌の掲載、広告、個人的なチャットの書き込み等、種々雑多なあらゆる検索リストを一括して出力するのが普通であるところ、その検索結果が多いから、その名称が周知・著名であるなどと結論付けられるはずはない。また、検索結果のうちのかなりのものは、「ニールズヤード レメディーズ」であり、「ニールズヤード」の著名性を示す証拠になじまない。
(2)請求人は、混同の有無に関して、本件商標が請求人の使用に係る請求人引用商標と同一であるから、前記2(2)の最高裁判所判決にいう類似性は極めて高い旨主張するが、この主張は、以下の理由により失当である。
(ア)請求人が自認する甲第1号証ないし甲第90号証から明らかなように、請求人がエッセンシャルオイル等に使用している商標のほとんどは、「NEAL’S YARD REMEDIES」又は/及び「ニールズヤード レメディーズ」(以下、これらをまとめて、「ニールズヤード レメディーズ商標」という。)あるいは「ニールズヤード リメディーズ」社(「ニールズヤード ファーイースト商標」もある。)であり、請求人引用商標ではない。
(イ)「ニールズヤード レメディーズ商標」は、一連一体で称呼し、認識されるものであり、これを分断して「NEAL’S YARD」又は「ニールズヤード」のみ取り出して称呼し、認識しなければならない特段の事情は存在しないから、両商標の類似性の程度は低く、これだけでも混同のおそれは存在しない。
(ウ)請求人は、請求人の商品(化粧品等)が、若い女性の需要者を含む一般消費者が直接購入する商品で、被請求人の本件指定商品(菓子等)も若い女性を含む需要者を対象とするから、取引者・需要者を共通にする旨主張するが、この主張が失当であることは明白である。すなわち、いずれも若い女性購買者を共通にするとの主張であるが、請求人の商品(化粧品等)はともかく、本件指定商品(菓子等)と若い女性との相関関係はなく、「化粧品等」と「菓子等の食品」とは需要者はもちろん、その流通・取引関係、商品の形態、目的、性状等を著しく異にするものであり、この点からも混同のおそれはない。
(3)商標法第4条第1項第15号の適用については、同法第4条第3項で規定するように、同第15号に該当する商標であっても、出願時に同号に該当しないものについては、同第15号の規定は、適用しないとされている。(ア)上記2004年3月7日の検索リスト(甲第91号証)は、本件商標の出願日(2000年[平成12年]8月25日)より、はるかに後のものであって、本件商標がその出願時に同第15号に該当する商標であったか否かを立証する証拠にはならない。
(イ)このことは、甲第59号証ないし甲第90号証についても同様にいえ、甲第59号証及び甲第60号証(いずれも2001年[平成13年]発行)、甲第61号証及び甲第62号証(いずれも2002年[平成14年]発行)、甲第64号証ないし甲第76号証(全て2003年[平成15年]発行)、甲第77号証ないし90号証(全て2004年[平成16年]発行)は、全て本件商標の出願日(2000年[平成12年]8月25日)以後の雑誌等であって、本件商標が同第15号に該当する商標であったか否かを立証する証拠にならない。
(ウ)甲第59号証ないし甲第91号証は、本件商標が現在において同第15号に該当することを立証する趣旨で提出されたものであるとしても、前述のとおり、雑誌への単なる複数記事の掲載や、一般に普通の現象であるインターネットの検索結果をもって、本件商標が現在において、同第15号に該当する商標であるといえないことはいうまでもない。すなわち、本件商標は、その出願時ないし現在においても、同第15号に該当する商標ではないので、同第15号が適用される余地は、全く存在しないといわなければならない。
(エ)このような判断は、本件商標について、被請求人が請求人として請求した拒絶査定不服審判(不服2001-4777)の審決においても、同様に認定されており、まさに、妥当な判断である。
[被請求人の答弁の補足]
被請求人は、本件商標がその出願時に商標法第4条第1項第15号に該当していなかったことについて、以下、答弁の補足をする。
(4)請求人の業務に係る商標
(ア)被請求人は、その代理人を通じて、平成13年(2001年)8月14日ないし18日にかけて、「イギリス国ロンドン ダブリュシー2 エッチ9デーピー コベント ガーデン ニールズヤード15」に所在する「NEAL’S YARD REMEDIES」(片仮名表記すれば、「ニールズヤード レメディーズ」)という請求人の店舗の現地調査を実施し、その存在と様子、規模、取扱商品、来客の程度等を確認してきた(乙第24号証)。また、その間の同18日に同店舗に赴き、そのカタログ、パンフレット、商品、領収書等を入手してきた(乙第25号証)。
(イ)一方、被請求人は、その代理人を通じて、日本(東京)にも、「NEAL’S YARD REMEDIES(ニールズヤード レメディーズ)」の直営店舗があること及びそこで、かつ、インターネットのホームページで使用されている商標が、「NEAL’S YARD REMEDIES」及び同社のマーク(乙第24号証の10及び11、乙第25号証の2)並びに日本語の片仮名表記の「ニールズヤード レメディーズ」であることを確認した(乙第26号証及び乙第27号証)。
(ウ)これらの調査結果によれば、請求人の商品「エッセンシャルオイル等」に使用されている請求人の業務に係る商標は、英国では、あくまでも「NEAL’S YARD REMEDIES」であり、日本では、時として「ニールズヤード」の略称が使用されることがあり得るとしても、上述の商標の使用形態からして、基本的に請求人の商標は、「ニールズヤード レメディーズ商標」及び図形を含む円形のマーク(以下「請求人ラベル1」という。)ということができる(以下、これらをまとめていうときには、単に「ニールズヤード レメディーズ商標等」という。)。
このように、第1に、請求人の業務に係る商標は、「ニールズヤード レメディーズ商標等」である。
(5)「ニールズヤード」が周知・著名であるとの請求人の主張に対する反論
(ア)請求人が業務に使用している「ニールズヤード レメディーズ商標等」は、本件商標の出願時点において著名ではなかった。また、百歩譲って、仮に、「ニールズヤード」が請求人の業務に使用される商標(略称商標)と判断される場合があるとしても、「ニールズヤード」が著名であるとはいえない。
(イ)請求人が実際に使用している商標は、前述の「ニールズヤード レメディーズ商標等」であり、カタログ等の文章中で「ニールズヤード」と略称されることがあり得るとしても、実際の商標的使用形態としては、「ニールズヤード レメディーズ商標等」である。
(ウ)「ニールズヤード レメディーズ商標等」の使用開始時期は、1991年(平成3年)当時と推測し得る(乙第25号証の4)。1981年(昭和56年)にオープンしたのはパイオニア(試験)ショップで、その地は「ニールズヤード2」にあり、その時は、「Neal’s Yard Apothecary」(ニールズヤード アポセカリ)と呼ばれていたとされ、1990年(平成2年)に最初の商品としてのエッセンシャルオイルが英国で認可されたとある(乙第25号証の4)。そして、1991年(平成3年)に、請求人の店舗は、上述3(4)(ア)の現在地(1981年(昭和56年)当初の店よりも広いスペース。)に移転した。
「ニールズヤード レメディーズ」の名称が請求人によって、いつ商標として使用開始されたかは断定できないが、「remedies(レメディーズ)」が英語で「治療薬」あるいは「治療法」を意味することからすれば、「エッセンシャルオイル」が英国で認可(1990年[平成2年])された後に、「ニールズヤード レメディーズ商標等」により請求人の商品の販売が開始されたと見るのが自然である。
そうとすれば、「ニールズヤード レメディーズ商標等」の使用開始時期は、1991年(平成3年)頃と推定し得る。
(エ)請求人による「ニールズヤード レメディーズ商標等」の使用年数(期間)は、上記前提からすれば、英国における使用開始日(1991年[平成3年])から我が国における被請求人による本件商標の出願日(平成12年8月25日)までの10年程度と考えられる。
「ニールズヤード レメディーズ商標等」の日本での使用年数(期間)は、「海外で初めての店が東京にオープンしたのが1996年(平成8年)」(乙第25号証の4)という記載からすると(ただし、表参道店のオープンは、1998年[平成10年]7月とされる:乙第27号証の4)、本件商標の出願日までの2年ないし4年と推測し得る。
(オ)「ニールズヤード レメディーズ商標等」の使用地域
日本では、1998年(平成10年)7月(乙第27号証の4)に東京の表参道、しばらく後に横浜、1999年(平成11年)3月福岡に、請求人の「ニールズヤード レメディーズ」店が出店されているので、店舗を基準とした我が国におけるごく最近の「ニールズヤード レメディーズ商標等」の使用地域は、東京・横浜・福岡といえる。
「ニールズヤード レメディーズ」の店舗数は、ロンドンで4店舗、英国の他地域で11店舗と記載されている(乙第25号証の9)。日本では、東京(1998年)、それ以降の横浜、福岡、一方、海外では、ごく最近(1998以降)のブラジル・サンパウロ、アメリカ・グリニッジの2店舗がある。
英国でのエッセンシャルオイル、化粧品等の正確な生産量は、定かでないが、店舗数も限られ、店舗面積もごく狭く、また、ロンドン・コベントガーデンの本店での来客数から想定すると、自然療法・アロマテラピー並びに自然療法にまつわる化粧品等という比較的特殊な商品である関係から、販売数量及び販売額は、ともに多くないと予想される。
1998年(平成10年)7月から表参道店において、実際に販売を開始し、その後、横浜店、1999年(平成11年)3月に福岡店を出店しており、店舗数としては、3店舗程度で、店舗面積は、ごく小規模であり、自然療法に興味のある一部の特定の客層が対象であることを考慮すれば、請求人の日本における店舗の販売量や売上高については、小規模な薬局(薬小売店)の販売量、販売額とそう変わるものではなく、そのことから、日本の「ニールズヤード レメディーズ」店の販売量等は、小規模な薬局の販売量の3店舗分と同程度と見ることができる。同様に、ブラジル、アメリカでの各1店舗の販売量も少ないと推定し得る。
このように、「ニールズヤード レメディーズ」の店舗があるのは、英国のほかは、日本、ブラジル、アメリカだけである(乙第25号証の9及び10)。
(カ)以上のほかに、請求人は、日本に2、3の直営店を有するというが、およそ、ある程度の商品を販売する会社であれば、日本国内に店舗を有するのは、普通の会社において、ごく一般的なことであり、また、商品をある程度海外でも販売することは、ごく普通の会社において、通常の企業活動として行っていることである。もし、日本の販売拠点が2、3ヶ所あり、海外においても販売されている商品であることをもって、著名であるというのであれば、多くの会社や商品名は、全て著名ということになる。
(キ)「ニールズヤード レメディーズ商標等」の広告宣伝の方法、回数
「ニールズヤード レメディーズ商標等」の広告宣伝の方法、回数については、店舗で客に配布するカタログ・パンフレット、商品及び包装箱、商品を入れて客に提供する包装袋、店舗の看板、領収書等を広告媒体として、これらに「ニールズヤード レメディーズ商標等」を付す方法が主であり、回数は、客の来店に左右される。
また、インターネット上でホームページを開設して、客からのアクセスを待つ方法があり、これには、取扱商品の内容や価格、店舗の情報等が掲載されている。
してみると、「ニールズヤード レメディーズ」社が行ってきた広告宣伝は、客へのパンレット等の配布、店舗の看板、インターネットを利用したホームページの開設といった通常考えられるものの内、ごく最小限のものにすぎず、この程度のことは、およそ会社と名のつくところでは、ごく当たり前に行っており、「ニールズヤード レメディーズ」社の著名性を肯定し得る広告宣伝とは到底いい難い。
(ク)「ニールズヤード レメディーズ商標等」(「ニールズヤード」単独を含む。)は、周知・著名商標リスト(下記)に一切掲載されていない。
日本国特許庁のホームページ中の「日本国周知商標検索」及び「AIPPI/Foreign Well-Known Trademark Unregistered in Japan」等。
(ケ)「ニールズヤード レメディーズ商標等」(「ニールズヤード」単独を含む。)については、防護標章登録がなされた事実は、一切ない。
(コ)エッセンシャルオイル(ハーブ加工品)等を製造又は販売する会社やショップは、海外及び日本に相当数存在するが、「ニールズヤード レメディーズ」社は、そうした群雄割拠の状態にある多くの販売会社の一つにすぎず(乙第26号証の4ないし6)、寡占性は認められないから、この点においても、著名性は否定される。
(サ)請求人は、「ニールズヤード レメディーズ商標等」の著名性の一証拠として、2000年版「現代用語の基礎知識」(甲第92号証、乙第6号証)の記載がある旨指摘する。
しかしながら、これは「特集 日本の課題 どうするどうなる21世紀」という表題下の「新設分野特集」(168頁)の「ライフデザイン」という記事中の「ヒーリング&エコロジーアイテム」に関する一紹介記事にすぎない。事実、2000年以外の1995年ないし2001年の「現代用語の基礎知識」(乙第1号証ないし乙第7号証)には、「ニールズヤード」に関する記載はないし、同様に、「知恵蔵(朝日新聞社)(乙第8号証ないし乙第14号証)や「イミダス(集英社)」(乙第15号証ないし乙第21号証)の各1995年ないし2001年版には、「ニールズヤード」に関する記載は一切ない。よって、上記のような一過性の特殊な記事をもって、著名性を論じること自体失当である。
(シ)本件商標の出願時の拒絶理由においては、「ニールズヤード」の著名性の証拠の一つとして、1997年(平成9年)3月1日付け及び1994年(平成6年)1月11日付けの日経流通新聞11頁又は19頁に「エッセンシャルオイル」や「アロマテラピーに関連した商品」を「ニールズヤード ジャパン有限会社」が輸入しているとの記載があることを挙げている。
しかしながら、現在「ニールズヤード ジャパン有限会社」は存在せず、1994年(平成6年)を起算点としても、6年間にわずか2回だけ前記新聞の記事となった程度では、著名であるとは到底いえるものではない。しかも、同新聞に限らず、一般の新聞も第三者から新聞社に記事の提供があれば、それを広告としてではなく、記事として新聞に掲載することは、一般によく行われていることであって、仮に、それをもって、「ニールズヤード」に著名性があるとすれば、世の中の多くの商品名は、全て著名となる。
したがって、著名性に関しては、新聞広告として、どれだけ多数回継続して掲載されたかのほうが重要である。
(ス)同じく、上記拒絶理由では、インターネットに、「ニールズヤード レメディーズ」のホームページが掲載されていることを著名性の証拠の一つに挙げているが、これは、前述のとおり、小規模な表参道ショップを紹介するものにすぎず、「ニールズヤード レメディーズ」等の名称がインターネットのホームページに、たまたま掲載されているからといって、それが著名であるとは、到底いえない。
今日、多くの会社は、インターネットのホームページを持っており、むしろ、ホームページを持たない会社のほうがまれである。
よって、インターネットのホームページに特定の商品名又は会社名が掲載されているからといって、その名称等が著名であるとは到底いえるものではなく、もし、そのような基準で見るとすれば、ほとんどの会社の名称・商標等が著名なものとなる。
(セ)本件商標に係る拒絶査定においては、毎日新聞東京夕刊(1999年)、同新聞地方版/大阪(1998年)、同新聞大阪夕刊(1996年)、読売新聞東京朝刊(1998年)の記事を著名性の証拠の一つとして挙げている。
しかしながら、これらには、「ニールズヤード レメディーズ」等の名前がわずかに出てくるにすぎず(各1度)、このように断片的でわずかな表示では、著名性が生じるはずはない。
そもそも、このような記事は、比較的物珍しい特殊な内容であるから取り上げられ、記事にされたものであり(新聞記事自体には、ある程度、物珍しさが必要。)、周知・著名性は、一般的な新聞記事になじまない。
また、広告でない新聞記事への掲載は、無名であっても、その内容が新聞社の指向と合えば、広告でなく記事として新聞に掲載されるものであり、それは一般によくあることである。仮に、新聞記事に掲載されたことによって、著名性が生ずるというのであれば、物珍しい名前(新聞記事で取り上げる物珍しさからすれば、マイナーな名前が多い。)等は、みな著名となるので、著名性の根拠には、到底ならない。
(ソ)さらに、上記拒絶査定では、インターネットのホームページに、「ニールズヤード」を掲載したサイトが相当あるとし、これを著名性の証拠としているが、これらのサイトにおいて、「ニールズヤード レメディーズ」(「ニールズヤード」単独を含む。)が検索されるとしても、それらはごく一部に名前が少しだけ出ているものが検索されるという場合がほとんどであるから、インターネットの検索例を著名性の証拠とすること自体、見当はずれというほかにない。
今日のようにインターネットが発達した社会では、無名に近い名前(名称)でも、いったん、そのサイトに掲載された場合には、それが複数の検索エンジンのサイトにまたがって引用され、それに投稿がされる例も枚挙にいとまがなく、こうした検索エンジンによって、検索した名前を含むサイトがリストアップされることは、ごく日常的なことであるので、これらをもって、著名性の根拠とすることはできないし、また、インターネット上にサイトを開設し、ネット販売や広告、情報交換の場として使用することは、今日、営業活動を行っている会社(個人事業も含め。)においては、当たり前に行っていることである。
逆にいえば、周知・著名性のない会社の有力な情報発信手段として、インターネットが存在するといっても過言でないから、インターネットのサイトの検索の多さをもって、著名性の論拠とすることは、明らかな誤りである。
(タ)以上のとおり、周知・著名性の判断に当たり、実際に使用されている「ニールズヤード レメディーズ商標等」が、エッセンシャルオイルや化粧品に使用されている事実があるといい得ても、使用開始時期、使用期間(年数)の短さ、限定される使用地域、営業規模の小ささ(店舗数、売上高等)、継続的かつ相当規模の広告宣伝の欠如(実際行われている広告は、店舗でのカタログ配布やインターネットへの掲載等にすぎず、たまに、新聞に小記事として掲載されていても、それは広告宣伝ではない。)等から、第2の結論として、「ニールズヤード レメディーズ商標等」(仮に、「ニールズヤード」を含めたとしても。)は、著名であるとは、到底いえない。
(6)請求人が実際に使用している「ニールズヤード レメディーズ商標等」と本件商標とは、互いに類似する商標ではない。すなわち、請求人が実際に使用している「ニールズヤード レメディーズ商標等」は、まとまりよく表されているから、一連一体によどみなく「ニールズヤードレメディーズ」と称呼されるものであり、これを「ニールズヤード」と「レメディーズ」とに分離しなければならない特段の事情は存在しない。
しかも、「ニールズヤード レメディーズ商標等」は、「ニールズヤード」の部分に、特に顕著な要部があるわけではなく、むしろ、ロンドンの特定の狭小地区が「ニールズヤード」と称されている事実があることからしても、それと「療法・治療薬」といった意味の「レメディーズ」とが一体不可分に合体した「ニールズヤード レメディーズ商標等」は、一体に把握され、一連に称呼される。
請求人が実際に使用している「ニールズヤード レメディーズ商標等」の「ニールズヤードレメディーズ」という称呼に対し、本件商標の称呼「ニールズヤード」には、「レメディーズ」がないので、音数も印象も大きく異なるから、需要者をして十分に聴別し得る。また、両商標は、外観上明らかに異なり、しかも、「レメディーズ」を有しているか否かの点において、観念上も異なることは明らかである。
よって、第3の結論として、請求人が実際に使用している「ニールズヤード レメディーズ商標等」と本件商標とは、称呼、外観及び観念のいずれの点においても互いに非類似の商標である。
(7)「ニールズヤード レメディーズ商標等」は、ロンドンの特定の狭小地区を意味する「ニールズヤード」と「療法・治療薬」といった意味の「レメディーズ」とが一体不可分に合体したもので、創造商標とはいえず、それ自体特に強い顕著性を有するものではない。「ニールズヤード レメディーズ商標等」は、請求人のハウスマークといえるものと考えられる。
(ア)請求人が企業として多角経営を行う可能性について検討するに、それが英国及び日本における限られた数のごく小さな店舗で、主としてマニア向けに「エッセンシャルオイル」や「化粧品」の販売又は「アロマテラピーの講習」を小規模に行い、業務上の信用がそれに特化している現実からすると、請求人会社が様々な商品等につき汎用的に業務を多角化する可能性は認められず、また、そういった事実も存在しない。
しかも、その可能性を想起させるような広告宣伝の事実もないことからすれば、需要者が請求人の多角化の可能性を想定することは困難であって、むしろ、逆に、現在のエッセンシャルオイルや化粧品等についての特有の商標ないし会社であるという印象を強く持つことになる。
(イ)請求人が「ニールズヤード レメディーズ商標等」を実際に使用している請求人の商品(エッセンシャルオイル等)と、本件指定商品(菓子等)との関連性を見るに、菓子等とエッセンシャルオイル等では、品質、製法、用途が異なることはいうまでもなく、さらに、販売系統、流通市場も全く異なる。つまり、エッセンシャルオイル等と菓子等が同じ問屋系列で流通することはなく、また、小売りの段階で、同一店舗や売り場で販売されることもないし、目的においても、前者が自然療法のためのアロマセラピーに用いられるのに対し、後者は、食するためのものであるので、両者は、関連性を全く有しない。さらに、仮に、エッセンシャルオイルを用いたアロマセラピーの講習の役務と、菓子等の商品とを比較したとしても、関連性は、一層ないといえる。そして、エッセンシャルオイル等と菓子等とでは、商品の取引者に共通性はなく(例えば、ケーキを想定すれば、賞味期限の点で、作ってから早期に販売しなければならず、製造直販かサイクルの早い取引となり、エッセンシャルオイルの取引とは根本的に異なる。)、また、需要者の共通性も特段認められない。
すなわち、第4の結論として、本件商標の指定商品(菓子等)と、請求人の業務に係る請求人の商品(エッセンシャルオイル等)との間には、商品の出所の混同を生じるような関連性、共通性はない。
(ウ)なお、洋菓子の需要者層が特に若い女性であるとはいい得ないし、同様に、化粧品等も若い女性のみならず、中年や年輩の女性が購入する場合もあり、さらに、「癒し・リラクゼーション」という観点からすれば、アロマセラピーを主として若い女性に特有のものとする前提自体、妥当性を欠く。
よって、需要者が若い女性で共通することから、出所の混同を生じるおそれがあるとの見解は、客観性のない独断と偏見に満ちたものであり、妥当ではない。
(8)出所の混同のおそれに関する総合判断
(ア)請求人の挙げた平成12年7月11日最高裁判所(平成10年(行ヒ)第85号)判決に即していえば、本件商標と請求人が実際に使用している表示「ニールズヤード レメディーズ商標等」との類似性は低く(互いに非類似)、請求人の表示「ニールズヤード レメディーズ商標等」に周知・著名性は認められず、かつ、独創性も低く、被請求人の本件商標に係る本件指定商品(菓子等)と請求人の業務に係る請求人の商品(エッセンシャルオイル等)との間の性質、用途又は目的における関連性はなく、本件指定商品(菓子等)と請求人の商品(エッセンシャルオイル等)の取引者及び需要者に特段の共通性は、認められない。
すなわち、第5の結論として、「混同のおそれ」が生じ得るような条件がことごとく否定される実情下で、本件指定商品(菓子等)の需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば、需要者が本件指定商品(菓子等)について、「ニールズヤード レメディーズ商標等」との狭義又は広義の出所の混同を生じるおそれはないといわなければならない。
(イ)我が国の商標法は、基本的に商標権の効力範囲について、商品等の同一又は類似の範囲を単位として判断しており、商品等の同一又は類似の範囲に抵触する先行登録商標が存在しなければ、出願商標を登録し、保護することによって、商品等の同一又は類似の範囲を1つのエリアとして、商標の選択権を認め、その商標に化体した業務上の信用を保護している。
例外として、特定の商標(又は標章)が長年の販売実績、シェア、継続的な宣伝広告等により、特定の商品等につき極めて大きな信用を獲得し、需要者の間に強く認識されるようになった結果、当該商標が商品等の類似の範囲を超えて、需要者に意識されるような著名性を獲得するに至った場合には、本来、商品等の類似の範囲が1つの保護領域となるところを例外的に拡張し、非類似の商品等についてまで、その著名商標の影響が及ぶものとして、これと出所の混同を生ずるような他人の登録を当該他人の商標選択の自由を制約してまで排除する。
このように、第三者の商標選択の自由を奪ってまで、特定の商標(又は標章)につき、商品等の類似範囲を超えて、他人の商標の登録を排除することが許されるのは、当該商標(又は標章)がいわゆる当業者の間に広く知られているといったような周知性では足りず、商品等の類似範囲を超えて、登録排除効が生じるような業務範囲の広さ、販売実績、更には、その販売量、当該商品の市場占有率、宣伝広告の回数やその期間等により、著名性を獲得するために積み上げてきた企業活動が必要であり、これは通常の会社の活動レベルではなく、それを凌駕する圧倒的な企業活動が質及び量ともに必要である。
(a)しかるに、請求人が実際に使用している「ニールズヤード レメディーズ商標等」は、それが継続的に繰り返し宣伝広告活動を通常のレベルをはるかに超えて行われてきたとは、到底認められず(前述の新聞記事は、企業活動で行う宣伝広告ではない。)、何店舗かの販売店を有すること及びホームページに会社案内を掲載することも、ごく普通の会社において、極めて一般的に行っているところであって、他人の商標選択の自由を犠牲にしてまで守るべき周知・著名性を有する程の業務上の信用は、化体していない。
(b)被請求人は、菓子・パン等、主にケーキ(創作的なものを含む。)の製造・販売を行う洋菓子店(ケーキ店)を「ニールズヤード」の名称で名古屋駅直近の百貨店等を拠点として開設し、営業を行っており、かかるケーキ店は、連日多数客の来店で盛況を呈しており、創作的なものを含むケーキの販売店として、その名称「ニールズヤード」には、すでに相当の業務上の信用が化体しており、少なくとも名古屋及びその近郊(岐阜・三重等)において、洋菓子(ケーキ)の分野で、「ニールズヤード」として周知性を獲得している(乙第28号証1ないし4)。
(c)してみると、洋菓子の需要者は、「ニールズヤード」といえば、被請求人の創作的なケーキ等を想起し、「ニールズヤード レメデイーズ」社のエッセンシャルオイル等と混同を生ずるおそれは全くないというのが実情である。
(d)また、被請求人は、本件商標の審査時に拒絶理由通知を受けた際、その理由が不当であることを確認するために、上記ケーキ店に来店する多数客に対し、「ニールズヤード」という名称から、ケーキ以外で他に連想するものがあるか否かを問う調査を無差別に行ったところ、ほぼ全員の客がこのケーキ以外に思い当たるものはない旨回答した。わずかに1人は、たまたまアロマセラピーの愛好者で、「ニールズヤード レメディーズ」社のエッセンシャルオイルは、知っていると答えたが、このケーキの販売系列と何らかの関係があるというような認識は、有していなかった。このように、実際の需要者をして、混同ないし混同のおそれは生じていない。
(9)むすび
以上のとおり、本件商標と請求人が実際に使用している「ニールズヤード レメディーズ商標等」とは非類似であり、請求人が実際に使用している「ニールズヤード レメディーズ商標等」に周知・著名性は認められず(著名性を獲得するほどの業務(営業)の規模・地域・期間・広告宣伝活動等が存在しない。)、また、本件指定商品(菓子等)と請求人の業務に係る請求人の商品(エッセンシャルオイル等)との間の性質、用途又は目的に関連性はなく、さらに、両商品の取引者及び需要者に特段の共通性は認められず、単に「ニールズヤード レメディーズ」等の名称が新聞や雑誌に小記事として掲載されたことや、現在ほとんど全ての会社が営業に利用しているインターネットの幾つかのサイトで「ニールズヤード レメディーズ」等の名称が検索されたということをもって、本件商標が請求人の業務に係る請求人の商品(エッセンシャルオイル等)と混同を生ずるおそれがあるとし、商標法第4条第1項第15号に該当するから、その登録は無効とされるべきであるという請求人の主張は、同号の解釈を著しく誤ったものといわなければならない。

4 当審の判断
(1)本件商標と請求人引用商標の同一又は類似性等について
本件商標は、上記1のとおり、「NEAL’S YARD」及び「ニールズヤード」の文字を上下二段に横書きしてなるものである。
これに対し、請求人引用商標は、「NEAL’S YARD」又は/及び「ニールズヤード」の文字よりなるから、両商標は、その構成態様において、同一又は類似のものと認められる。
また、本件商標の指定商品は、第30類「菓子及びパン,コーヒー及びココア,サンドイッチ,ホットドッグ」(すなわち、本件指定商品(菓子等))であるのに対し、請求人の商品は、「化粧品,エッセンシャルオイル,ハーブティー,アロマセラピーに関する商品等」(すなわち、請求人の商品(化粧品等))と認められるものである。
しかして、両商品が、異なる分野に属する非類似の商品であるとしても、両商品間に密接な関連性があるか否か、請求人引用商標が請求人の商品(化粧品等)に継続して使用された結果、本件商標の出願時(平成12年8月25日)までに、請求人の商号の略称あるいは商標として、我が国の需要者等の間において、広く認識されていたか否か、それによって、本件商標と請求人引用商標とが商品の出所について混同を生ずるおそれがあったか否か等をめぐって、両当事者間に争いがある。
(2)そこで請求人提出の甲第1号証ないし甲第97号証(枝番号を含む:ただし、甲第12号証は欠号。)のうち、主なものについて、以下、検討する。
(ア)甲第1号証は、その発行の月日が定かでないものの、請求書に添付の証拠説明書1頁の記載を参酌すれば、「MAIL ORDER SPRING/SUMMER 1995(平成7年)」(仮訳:請求人のメイルオーダーカタログ1995年春夏号)と認められ、その1頁には、請求人ラベル1が掲載されており、同2頁には、請求人ラベル1の付されたブルーボトルが見られるほか、CONTENTS(仮訳:商品の中身[内容])の39番に、食品の「茶」に属する「Organic Herbal Tea Bags」(仮訳:有機ハーブティーのバッグ[小袋])という文字が掲載されている。
(イ)甲第2号証は、その発行年月日が定かでないものの、請求書に添付の証拠説明書1頁の記載を参酌すれば、1995年(平成7年)当時の請求人の和文商品カタログと認められ、その1頁には、請求人ラベル1の円形内の色彩を白黒反転させた円形ラベル(以下、これをも含めて「請求人ラベル1」という。)が掲載されており、さらに、その13頁(8枚目)には、食品の「茶」に属する「オーガニックハーブティー」「ニールズヤードのハーブティーは英国ソイルアソシエーション認定の高品質オーガニック(有機栽培)ティーです。・・・(各30パック入り)。カモミール、ペパーミント、フェンネル、レモンバーム」といった文字が掲載されている。
(ウ)甲第3号証は、その発行の月日が不明瞭であるものの、請求書に添付の証拠説明書1頁の記載を参酌すれば、株式会社西武百貨店渋谷店1990年(平成2年)発行の「LoFt MONO PRESS/SHIBUYA SEIBU/ロフトモノ・プレス VoL.3 1990年(平成2年)WINTER」(いわゆる1990年[平成2年]冬季商品販売[セール]用パンフレット)であり、甲第3号証の2の9頁には、「〈ニールズヤード〉」の文字のほか、請求人ラベル1の付された数個のブルーボトルの写真及び「ニールズヤード社製の」の文字が掲載されている。
(エ)甲第6号証、甲第9号証及び甲第23号証は、フレグランスジャーナル社1995年(平成7年)5月20日、同年8月20日及び1996年(平成8年)1月25日発行の「aromatopia アロマテラピーとハーブ療法の香りの専門誌 VOL.4 NO.2 1995 第11号、VOL.4 NO.3 1995 第12号及びVOL.5 NO.1 1996 第14号」であり、甲第6号証の2には、請求人の商品「エッセンシャルオイル」等とともに「ニールズヤード基本理念」の文字、請求人会社のの創業に至る経緯や請求人ラベル1が掲載されており、甲第9号証の3の82頁には、「すでにニールズヤードの商品は日本では6年以上の販売の実績がありますが、当初から比べると、ここ数年でかなりの認知度がありました。」、「特にニールズヤードに限っていえば、」、「もともとニールズヤードは自然薬Medical remedies,これにはハーブ、漢方、ホメオパシーも含まれます・・・」「ニールズヤード=ブルーボトルというのはある意味では成り立ちますが、自然薬提供=ニールズヤードのほうが英国では定着しています。」「ここにあるニールズヤードのエッセンシャルオイル・・・」の文字が掲載されており、同83頁には、「ニールズヤードのエッセンシャルオイルは全て有機栽培なのですか?・・・ブルーボトルの化粧品類は、・・・国内260以上の売り場を通しても入手できる。」の文字が掲載されており、甲第23号証の3には、「・・・まずブランドがひとつ・・・ニールズヤード・・・」、同甲第23号証の5には、「英国ニールズヤードの直営店オープンの予定」の文字が掲載されている。
(オ)甲第7号証は、その発行の月日が定かでないものの、株式会社アクシス1995年(平成7年)発行の「AXIS SUMMER SELECTION/AXIS CATALOGUE vol.56 Summer 1995/AXIS DIRECT ORDER SERVICE アクシス・ダイレクトオーダー・サービス」(いわゆる1995年(平成7年)夏季用商品の通信販売カタログ)であり、甲第7号証の2の7頁には、請求人の商品(化粧品等)及び単価のほか、「ニールズヤード社の製品です。」の文字が掲載されている。
(カ)甲第8号証及び甲第37号証は、株式会社マガジンハウス1995年(平成7年)7月20日及び1996年(平成8年)5月5日発行の「CLiQUE クリーク 1995 No.140 7/20及び1996 No.158 5/5」であり、甲第8号証の3の55頁(別掲(4)参照)には、請求人の商品である「オーガニックティー」や「カミモールティー」の文字及び単価のほか、請求人ラベル1が掲載されており、甲第37号証の3には、請求人ラベル1の付された各種商品のほか、「ブルーボトルのスキンケア商品で知られるニールズヤードは、そもそも自然療法の拠点。」の文字が掲載されている。
(キ)甲第10号証、甲第21号証及び甲第43号証は、株式会社ワールドフォトプレス1995年(平成7年)8月16日、同年12月16日及び1996年(平成8年)5月16日発行の「VISIO mono ビジオ・モノ NO.60、NO.65及びNO.71」であり、甲第10号証の3には、請求人ラベル1のほか、「・・・ニールズヤードのポリシーのもとに、統一された数種類の容器でありながら、100余種ものラインナップで展開・・・」「・・・ニールズヤードでは―」の文字が掲載されており、甲第21号証の3には、請求人ラベル1が付されたブルーボトルのほか、「(丸囲みの「さ」の文字)香りの自然療法アロマセラピーに挑戦・・・ニールズヤードのアロマセラピーボックス・・・」の文字が掲載されており、甲第43号証の3には、請求人ラベル1の付された袋形のポーチをはじめとする各種商品のほか、「青いボトルが素敵なニールズヤード。」「日本に上陸して8年、ブルーボトルですっかりおなじみの、ニールズヤード。」「60種ほど揃えたエッセンシャルオイル等・・・48種類のドライハーブ、ベビーケアグッズなど、数々の商品をラインナップ。」の文字が掲載されている。
(ク)甲第14号証は、株式会社サントリーショッピングクラブ1995年(平成7年)10月17日発行の「SUNTORY COLLECTION WINTER ’95 vol.65(サントリーコレクション’95冬号)」であり、甲第14号証の2には、請求人ラベル1のほか、「11.[ニールズヤード]ブルーボトルに込めた107の製品・・・」「・・・ニールズヤードのポリシーのもとに、統一された数種類の容器でありながら、100余種ものラインナップで展開・・・」「・・・ニールズヤードでは」の文字が掲載されている。
(ケ)甲第16号証は、同朋舎出版1995年(平成7年)11月7日発行の「花時間 1995年11月号」であり、甲第16号証の3には、請求人ラベル1が付されたブルーボトルのほか、「6 ロンドンの香りの老舗ニールズヤード。」の文字が掲載されている。
(コ)甲第20号証は、文化出版局1995年(平成7年)12月7日発行の「ミセス 1995年12月号」であり、甲第20号証の3には、請求人ラベル1が付された数個のボトルのほか、「5ないし8・・・天然の製油。ニールズヤード。」「9・・・バスオイル。ニールズヤード」の文字が掲載されている。
(サ)甲第22号証は、株式会社集英社発行の「SPuR シュプール 1996 1月号」であり、甲第22号証の3には、「エッセンシャルオイルで・・・日本でもお馴染みのニールズヤード・・・」の文字が掲載されている。
(シ)甲第27号証及び甲第30号証は、株式会社マガジンハウス1996年(平成8年)3月29日及び同年4月12日発行の「an・an アンアン 3.29 1996 No.1013及び4.12 1996 No.1015」であり、甲第27号証の3(133頁)には、「青いボトルがトレードマークの『ニールズヤード』では・・・全アイテムがフルラインナップ・・・」の文字が掲載されており、甲第30号証の3(35頁)には、「ニールズヤードフットボックス¥6,000 ニールズヤードベビーボックス¥6,000」の文字が掲載されており、甲第30号証の4(123頁)には、請求人ラベル1が付されたブルーボトルのほか、「大人気のイギリスの自然療法ブランド、『ニールズヤード』・・・」「シンプルな青い瓶(ボトル)が日本でもすっかりおなじみとなった、イギリスの自然療法ブランド『ニールズヤード』。・・メディシンハーブが46種揃っていて・・・」の文字が掲載されている。
(ス)甲第28号証は、株式会社マガジンハウス1996年(平成8年)4月4日発行の「Hanako 4月4日号 NO.387 1996」であり、甲第28号証の3(29頁)には、「ロンドンのニールズヤード日本初の直営店が3月1日、恵比寿にオープン。」の文字が掲載されている。
(セ)甲第33号証は、株式会社講談社1996年(平成8年)4月23日発行の「FRau フラウ 4/23 No.110」であり、甲第33号証の3(101頁)には、「6 ブルーボトルの自然化粧品でお馴染みのニールズヤードのショップ・・・」の文字が掲載されている。
(ソ)甲第34号証は、株式会社マガジンハウス1996年(平成8年)4月24日発行の「Tarzan ターザン 4/24 1996 No.233」であり、甲第34号証の3(13頁)には、請求人ラベル1と相似形の大型看板の写真のほか、「自然愛好派の定番ブランド〈ニールズヤード〉・・・」「コバルトブルーのボトルが印象的な〈ニールズヤード〉。日本でのアロマテラピー人気はここから始まったといってもいい草分けブランドである。そんな〈ニールズヤード〉の・・・ハーブは、25g100円から。」の文字が掲載されている。
(タ)甲第36号証は、世界文化社1996年(平成8年)5月1日発行の「Begin ビギン 1996/5 No.91」であり、甲第36号証の3(211頁)には、「ニールズヤード」のオイルもゲット!」「ところであの『ニールズヤード』・・・」「今までなかった『ニールズヤード』ブランドのアロマキャンディなんかもあってナイス。」の文字が掲載されている。
(チ)甲第38号証は、株式会社学習研究社1996年(平成8年)5月5日発行の「新・香水図鑑 MAKE UP MAGAZINE SPECIAL ISSUE 6[’96年度版]」であり、甲第38号証の3(67頁)には、請求人ラベル1の付されたブルーボトルのほか、「ニールズヤード ベースディスパージングバスオイル No.9 1700円」の文字が掲載されている。
(ツ)甲第41号証は、株式会社主婦と生活社1996年(平成8年)5月15日発行の「主婦と生活 生活シリーズ310『美しくなるアロマテラピー』」であり、甲第41号証の3(29頁)には、請求人ラベル1の付されたブルーボトルのほか、「ハーブのエキスがブレンドされたハーバルリップバーム(15g 1,200円)」の文字が掲載されており、甲第41号証の4(72頁)には、「Neal’s Yard(ニールズ・ヤード)・・・67種」の文字が掲載されている。
(テ)甲第42号証は、株式会社集英社1996年(平成8年)5月15日発行の「SEVENTEEN セブンティーン No.12 5/15」であり、甲第42号証の3には、請求人ラベル1の付されたブルーボトルをはじめとする各種商品のほか、「・・・『ニールズヤード』の直営店」「・・・有名な『ニールズヤード』の直営店がオープンしたのだ。・・・」の文字が掲載されている。
(ト)甲第44号証は、株式会社婦人画報社1996年(平成8年)6月1日発行の「La vie de 30ans ラ・ヴィ・ドゥ・トランタンJune 1996 NO.8」であり、甲第44号証の3には、請求人ラベル1の付されたブルーボトルのほか、「ニールズヤード/オレンジフラワーウォーター 180ml ¥1,900」「エッセンシャルオイルで有名なニールズヤード社のローション。」の文字が掲載されている。
(ナ)甲第45号証は、株式会社講談社1996年(平成8年)6月1日発行の「with ウィズ June 1996 NO.177」であり、甲第45号証の3には、請求人ラベル1の付されたブルーボトルのほか、「ベースディスパージングバスオイル/¥2000/ニールズヤード」の文字が掲載されている。
(ニ)甲第46号証は、日之出出版株式会社1996年(平成8年)6月6日発行の「Grand Magasin グラン・マガザン 1996 June NO.91」であり、甲第46号証の4(74頁)には、請求人ラベル1の付されたブルーボトルと袋形のポーチをはじめとする各種商品のほか、「この春、日本では初の商品も続々ニールズヤード」の文字が掲載されている。
(ヌ)甲第47号証は、株式会社小学館1996年(平成8年)6月1日発行の「Oggi オッジ June 1996」であり、甲第47号証の3(331頁)には、請求人ラベル1の付された各種商品のほか、「英国のハーブ専門店ニールズヤードの日本1号店。ブルーのボトルでおなじみの天然化粧品に加え、ドライハーブ、手軽に飲用できるチンキ剤(アルコールで抽出したハーブ)など・・・」の文字が掲載されている。
(ネ)甲第49号証及び甲第56号証は、株式会社世界文化社1996年(平成8年)6月1日及び1997年(平成9年)7月1日発行の「Miss ミス家庭画報 1996 6月号 NO.86及び1997 7月号 NO.99」であり、甲第49号証の3には、「日本でも大人気待望のニールズヤード1号店が日本上陸!」の文字が掲載されており、甲第56号証の3には、請求人ラベル1の付されたブルーボトルのほか、「イギリスの名門、ニールズヤードは・・・天然のエッセンシャルオイル等を使用して定評あるブランド。」「ニールズヤードでは・・・」の文字が掲載されている。
(ノ)甲第50号証は、株式会社光文社1996年(平成8年)6月1日発行の「Gainer ゲイナー 1996 6月号」であり、甲第50号証の3(155頁)には、請求人ラベル1の付されたブルーボトルのほか、「日本にいち早くアロマセラピーオイルを紹介したニールズヤードなら心を癒す香りの贈り物に最適。・・・オイルは、エッセンシャルで¥2,300〜6,500ほど。」の文字が掲載されている。
(ハ)甲第51号証は、株式会社世界文化社1996年(平成8年)6月1日発行の「家庭画報 1996 6月号」であり、甲第51号証の3(16頁)には、請求人ラベル1の付された各種商品のほか、「ニールズヤード直営店で、貴女もアロマセラピー通」「ハーブを使った自然療法を提案する、英国ニールズヤード・・・」の文字が掲載されている。
(ヒ)甲第52号証は、株式会社流行通信社1996年(平成8年)6月1日発行の「流行通信 1996 6月号 NO.395」であり、甲第52号証の3(174頁)には、「あのニールズヤードが遂に恵比寿にオープン!」「ロンドンのコベントガーデンに誕生して以来、自然派化粧品の先駆け的存在となったニールズヤード。そのニールズヤードが日本に上陸して8年経った今、・・・」の文字が掲載されている。
(フ)甲第57号証は、株式会社集英社1996年(平成8年)10月10日発行の「More Natural モア・ナチュラル 1996 AUTUMN 秋の号」であり、甲第57号証の3(166頁)には、「本場イギリスで人気のブランド、アロマテラピーの老舗を徹底研究!『ニールズヤード』『物語』」「・・・日本でもすっかりおなじみになった、『青いボトル』の魅力に迫ります。」の文字が掲載されており、同168頁及び169頁には、「知れば知るほど、共感できる、奥深い植物のパワーと、ニールズヤードの商品づくりの理念」「青いボトル以外に、ニールズヤードには・・・」「ニールズヤードの本 アロマセラピーをはじめ、自然療法の書籍も数多く出版されています。」「色彩と香りに包まれた地上の楽園、ニールズヤードのハーブガーデン」の文字が掲載されており、同170頁及び172頁には、請求人ラベル1の付されたブルーボトルが掲載されており、同174頁には、「歯磨き粉や口臭を防ぐオーラル商品、・・・それぞれの植物が持つ自然の力を最大限に利用。」、同175頁には、「レモン、スペアミント、オレンジなどのエッセンシャルオイルでお口すっきり。プレスフレッシュナー10ml ¥1000」の文字が掲載されている。
(ヘ)なお、本件商標の出願後であるが、登録審決前の証拠の甲第62号証は、その発行の月日が不明瞭なものの、請求書に添付の証拠説明書16頁の記載を参酌すれば、京阪神エルマガジン社2002年(平成14年)6月1日発行の「SAVVY 京阪神を使いきるためのOLライフマガジン 月刊サヴィ 2002 JUNE 6月号 NO.291」であり、甲第62号証の3には、請求人ラベル2(別掲(3)参照)の付されたブルーボトルが掲載されており、また、「ニールズヤードのハーブ濃縮液です。」「・・・ビタミンC豊富なローズヒップなど、特に女性にお勧めの3点をチョイス。お茶に入れると飲みやすいですよ。」「NEAL’S YARD」の文字が掲載されている。
(3)以上の事実よりすれば、請求人提出の上記甲第1号証ないし甲第3号証、甲第6号証ないし甲第10号証、甲第14号証、甲第16号証、甲第20号証ないし甲第23号証、甲第27号証及び甲第28号証、甲第30号証、甲第33号証及び甲第34号証、甲第36号証ないし甲第38号証、甲第41号証ないし甲第47号証、甲第49号証ないし甲第52号証、甲第56号証及び甲第57号証、甲第62号証においては、請求人引用商標が請求人の商品(化粧品等)の出所を表示する自他商品識別標識として、実際に使用されていたことが認められ、また、請求人ラベル1を含む「ニールズヤード レメディーズ商標等」も同様に、請求人の商品(化粧品等)の出所を表示する自他商品識別標識として、実際に使用されていたことが認められる。
しかして、複数の商標がそれぞれ商品の出所を表示する自他商品識別標識として、各々独立して、その機能を果たす場合があることは、経験則の教えるところであって、これを否定すべき格別の理由はない。
また、請求人提出の上記甲第1号証及び甲第2号証並びに被請求人の主張その他によれば、1991年(平成3年)に、請求人は、英国における現在の本店所在地「イギリス ロンドン ダブリュシー2 エッチ9デーピー コベント ガーデン ニールズヤード 15」に移転して以来、商品「エッセンシャルオイル」等の販売を継続して行ってきていることが認められる(甲第57号証の3)。
そして、請求人は、英国において、同年以降、また、我が国においては、遅くとも1995年(平成7年)以降、請求人ラベル1【円形ラベルの内周に沿って、上円周部に「NEAL’S YARD」、下円周部に「REMEDIES」の文字をそれぞれ表示し、両文字の間にあるスペースの中央付近に、請求人の会社所在地等を表す「NEAL’S YARD」、「COVENT GARDEN」及び「LONDON WC2」の各文字を三段に横書きしてなるもの。)(別掲(1)参照)】を貼付した請求人の商品(化粧品等:別掲(2)参照)を、総販売元「ニールズヤード ファーイースト社」を通じて、我が国に輸入・販売していたことが認められる。
また、本件商標の出願(平成12年8月25日)後であって、登録審決時(平成14年12月9日)前の2001年(平成13年)以降、請求人は、請求人ラベル1を請求人ラベル2(別掲(3)参照)に変更し、使用し始めたことが甲第62号証の3その他から認められる。
(4)上記4(2)及び(3)の甲各号証以外の甲号証であって、本件商標の出願前の証拠であり、請求人ラベル1を含む「ニールズヤード レメディーズ商標等」と請求人の商品中の「ハーブティー[小袋]」等との関係や請求人に対する世界的な評判を示す証拠として、例えば、次の(ア)ないし(ウ)がある。
(ア)甲第32号証は、株式会社扶桑社1996年(平成8年)4月23日発行の「CAZ キャズ 4・23 No.182 1996」であり、甲第32号証の3(7頁)には、請求人ラベル1が付されたブルーボトルのほか、「疲れを癒してくれるハーブの商品がぎっしりそろっています。」「バッチのエッセンス(¥2,000)は要チェック。花のパワーが凝縮されたエッセンスを、コーヒーやお水にたらして飲めば、たまったストレスも次第に和らいできます。」の文字が掲載されている。
(イ)甲第35号証及び甲第53号証は、株式会社アシェット フィリパッキ ジャパン1996年(平成8年)5月1日及び同年6月1日発行の「ELLE エル・ジャポン 5月号 No.139及び6月号 No.140」であり、甲第35号証の3(205頁)には、「・・・『旅先にはいつもカミモールのティーバッグを持参します。就寝前にお茶にして飲めばぐっすり安眠できる・・・』」の文字が掲載されており、甲第53号証の3(201頁)には、「アロマセラピーはもはやブームを超えてライフスタイルとして日本人の間にも定着しつつある。・・・」の文字が掲載されている。
(ウ)甲第48号証は、株式会社集英社1996年(平成8年)6月1日発行の「SPuR シュプール 1996 6月号」であり、甲第48号証の3(13頁)には、請求人ラベル1の付されたブルーボトルのほか、「・・・自然療法の拠点として世界的に認められている英国の『ニールズヤード・レメディーズ』・・・」の文字が掲載されている。
(5)以上の4(2)ないし(4)の事実を総合すれば、ハーブを中心とする薬用植物のエッセンスを抽出し、製造した「エッセンシャルオイル」やそれを用いた化粧品をはじめ、自然療法に有用な植物の活用に関する専門的な知識を有する専門店であって、かつ、素肌や体にやさしい、いわゆる癒し系の各種商品を販売する英国の世界的に知られた権威ある老舗である請求人の商号の略称あるいは商標として、請求人引用商標は、本件商標の登録出願前より登録審決時までの間に、英国のみならず、我が国においても、若い女性を中心とする一般需要者、取引者の間において、相当に広く認識されていたことが認められる。
そして、請求人の商品中には、「エッセンシャルオイル」や「エッセンシャルオイルを使った化粧品」等だけでなく、本件指定商品(菓子等)と同じく、食品であるハーブティー等が含まれており、その出所を表示する自他商品識別標識として、実際に使用されていた商標は、請求人引用商標のみならず、請求人ラベル1を含む「ニールズヤード レメディーズ商標等」であったことも認められる。
(6)また、上述の4(2)ないし(5)の事実よりすれば、請求人は、本件商標の出願(平成12年8月25日)前から、請求人引用商標のみならず、請求人ラベル1を含む「ニールズヤード レメディーズ商標等」を請求人の商品(化粧品等)に使用し、各種雑誌等への掲載をするなどして、膨大な広告宣伝を行い、商品の積極的な販売拡布に努めてきたことが認められる。
(7)さらに、上記甲各号証のみならず、甲第93号証ないし甲第97号証よりすれば、請求人は、平成7年9月12日頃に日本国内で請求人の商品中の「エッセンシャルオイル等」の無断輸入物が請求人と相似た名称の日本の会社を通じて出回っている事態に遭遇し、これに対処するために、2件余の訴訟を提起したことが認められる。
こうした事情から、請求人は、我が国における一般の需要者及び取引者の間に、請求人引用商標のみならず、請求人ラベル1を含む「ニールズヤード レメディーズ商標等」をより深く浸透させ、広く認知されることを目指して、これらの商標を使用した請求人の商品(エッセンシャルオイル、ハーブティー、化粧品等)の記事をより一層様々な雑誌等に掲載するなどして、我が国における若い女性層はいうに及ばす、各年代層の需要者等の関心を引くよう地道かつ膨大な広告宣伝に努めてきたことが認められる。
その結果、請求人引用商標のみならず、請求人ラベル1を含む「ニールズヤード レメディーズ商標等」は、本件商標の登録出願(平成12年8月25日)前より登録審決時までには、請求人の商品(化粧品等)に使用される商標として、我が国の取引者、需要者の間において、すでに広く認識され、無断輸入物が出回る程に需要者の間で人気を博していたことが認められる。
(8)そうとすれば、本件商標は、請求人引用商標と同一又は類似であり、かつ、本件商標と請求人ラベル1を含む「ニールズヤード レメディーズ商標等」との関係においても、その構成中の「NEAL’S YARD」「ニールズヤード」の文字部分を共通にすることから、被請求人が本件商標をその指定商品(菓子等)に使用したことによって、これに接した需要者等は、被請求人の指定商品(菓子等)が、請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所について、混同を生ずるおそれがあったものと認められる。
(9)被請求人の主張について
(ア)被請求人は、請求人が請求人引用商標をその商品について使用していないし、請求人引用商標のみならず、請求人が実際にその商品に使用している請求人ラベル1を含む「ニールズヤード レメディーズ商標等」は、いずれも本件商標の出願時には、我が国において、ほとんど知られていなかったから、被請求人が本件商標をその指定商品に使用することによって、請求人の商品との間に混同を生ずることはない旨述べている。
しかしながら、上述の4(1)ないし(8)で認定したとおり、商品の出所について、混同を生ずるおそれがあったものと認められるから、被請求人の主張は、採用することができない。
(イ)また、被請求人は、「請求人ラベル1を含む『ニールズヤード レメディーズ商標等』が、本件商標と『NEAL’S YARD』『ニールズヤード』の文字部分を共通にするとしても、請求人が実際に使用している『ニールズヤード レメディーズ商標等』は、まとまりよく表されているから、一連一体によどみなく『ニールズヤードレメディーズ』と称呼されるものであり、これを『NEAL’S YARD』『ニールズヤード』と『REMEDIES』『レメディーズ』とに分離して、単に『ニールズヤード』と称呼しなければならない特段の事情は存在しない。しかも、本件商標の称呼『ニールズヤード』には、『レメディーズ』がなく、『ニールズヤード レメディーズ』の称呼とは音数も印象も大きく異なるから、需要者をして十分に聴別し得るものである。また、両商標は、外観上明らかに異なっており、『REMEDIES』『レメディーズ』の文字を有しているか否かの点において、観念上も異なることは明らかである。」旨述べている。
しかしながら、本件商標と請求人ラベル1を含む「ニールズヤード レメディーズ商標等」とは、「NEAL’S YARD」「ニールズヤード」の文字部分を共通にしており、上述の4(1)ないし(8)で認定したとおり、被請求人の本件商標は、請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所について、混同を生ずるおそれがあるものと認められるから、被請求人の主張は、採用することができない。
(ウ)さらに、被請求人は、「『ニールズヤード レメディーズ商標等』の『NEAL’S YARD』『ニールズヤード』の文字部分には、特に顕著な要部があるわけではなく、『ニールズヤード レメディーズ商標等』は、ロンドンの特定の狭小地区『NEAL’S YARD』『ニールズヤード』と『療法・治療薬』という意味の『REMEDIES』『レメディーズ』とを一体不可分に合体したものであるから、創造商標とはいえず、それ自体特に強い顕著性を有するものではなく、請求人のハウスマークと考えられ、一体に把握されて、一連に称呼されるので、本件商標とは称呼、外観及び観念のいずれの点においても非類似の商標である。」旨述べている。
しかしながら、需要者等が、本件商標(又は請求人引用商標)と請求人ラベル1を含む「ニールズヤード レメディーズ商標等」のそれぞれに自他商品識別力があると考えること、及び、本件商標の付された本件指定商品(菓子等)が請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所について、誤認混同を生ずるおそれがあることまでも否定し得るものではない。
(エ)確かに、被請求人指摘のように、個々の商品に付されているものとしては、請求人ラベル1を含む「ニールズヤード レメディーズ商標等」が選択されていることが多くあるとしても、上述の4(2)ないし(4)で示した甲各号証中の雑誌広告において、請求人引用商標が単独で又は顕著に大きく表示されている事例も多いことから見ても、請求人がその営業政策上、自己のブランドの中核となる商標として、請求人引用商標を用いていたことは、優に認められるところというべきである。
(オ)また、請求人が自己の製造・販売に係る商品の証明として、請求人の商品に貼付している請求人ラベル1において、その上段に大きく表示されているのは、請求人引用商標の欧文字「NEAL’S YARD」であることも、請求人引用商標のみならず、請求人ラベル1を含む「ニールズヤード レメディーズ商標等」のいずれもが請求人の製造・販売に係る商品の出所を表示する機能を与えられていたものであったことを明らかにしているといえる。よって、被請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。
(カ)さらに、上述の4(2)ないし(5)の認定事実及び同(2)ないし(4)で示した甲各号証より考察すれば、請求人は、請求人ラベル1を含む「ニールズヤード レメディーズ商標等」だけでなく、請求人引用商標そのものを請求人の商品(化粧品、エッセンシャルオイル、ハーブティー等)に使用していたことが明らかであり、しかも、被請求人の本件指定商品(菓子等)と同一である食品の分野において、取引者、需要者、販売場所等を共通にする「ハーブティー等」に請求人引用商標が使用されている例も決して少なくないものである。
しかも、被請求人の商品「ケーキ」と請求人の商品「ハーブティー等」とは、現実に同一の販売店舗で販売し、飲食される可能性が高いものであり、販売場所、需要者層等を共通にすることの決して少なくない密接な関係にある商品と見るのが相当である。
(キ)被請求人は、他人の商標選択の自由を奪ってまで、請求人が商品等の類似範囲を超えて、被請求人の所有に係る本件商標の登録を排除することが許されるのは、請求人引用商標が請求人の商品(化粧品等)に使用されて、登録排除効を生じ得るような業務範囲の広さ、商品の販売実績、販売量、市場占有率、宣伝広告回数・期間等の著名性獲得に至ったことを示す質及び量的証拠が必要である旨述べ、かつ、請求人がそうした証拠を提出していない旨指摘している。
しかしながら、上述のとおり、同じ食品の分野に属する極めて密接な関係を有する商品「ケーキ」と「ハーブティー等」を被請求人と請求人とが販売しており、これに接した需要者等が同一の出所を表示するものと誤認混同するおそれが十分にあると考えられることからすると、周知・著名性獲得の証拠が不足するとの主張をもって、本件商標の登録の無効性を全て否定しなければならない合理的理由は、見いだせない。
(ク)被請求人は、「ニールズヤード」の名称をもって、名古屋駅周辺で洋菓子店(ケーキの製造販売)の営業を行っており、連日来店する多数客で盛況を呈しており、少なくとも名古屋近郊において、被請求人の本件商標は、周知性を獲得しているから、これに接した需要者は、これを請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生ずるおそれはない旨述べている。
しかしながら、本件商標が商品の出所について混同を生ずるおそれがあることは、すでに上述したとおりであり、被請求人の主張は、採用することができない。
この点につき、被請求人が自ら述べているように、ケーキ以外で、「ニールズヤード」という名称から連想するのは何かという被請求人の簡単なアンケート調査に対し、アロマセラピーの愛好者の客が、「『ニールズヤード レメディーズ』社の『エッセンシャルオイル』を知っている。」旨回答したという事実があったということからすれば、被請求人の客のわずか一人ではあっても、請求人引用商標又は/及び請求人ラベル1を含む「ニールズヤード レメディーズ商標等」を付した請求人の商品(ブルーボトルで人気の化粧品・エッセンシャルオイル又はハーブテイー等)を知っていた者が現実にいたことは明らかであり、このことは請求人引用商標と同一又は類似の本件商標を付した被請求人の本件指定商品(菓子等)が、需要者等によって、請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生ずるおそれが全くなかったということにはならない。
(ケ)また、本件商標「NEAL’S YARD」及び「ニールズヤード」は、日本の法人である被請求人が容易に想到し得る程の平易な英語であると解することはできず、それを被請求人がたまたま自己の店舗名称及び商標として偶然に想到し、採択したと認めることもできない。
しかるに、被請求人は、請求人の「ニールズヤード レメディーズ商標」中の「NEAL’S YARD」及び「ニールズヤード」の文字部分を我が国の需要者が英国の地名と認識し、自他商品識別力を有しないものと認識するかのごとき旨述べているが、その主張は妥当でなく、むしろ、請求人を知らない我が国の一般世人であれば、本件商標「NEAL’S YARD」及び「ニールズヤード」から、それが英国の地名であるとまで、そして、自他商品識別力を有しないとまで認識することは困難と見るのが相当である。
他方、被請求人の商品「ケーキ」と請求人の商品「ハーブティー等」とは、極めて密接な関係を有する商品同士であることよりすれば、被請求人は、請求人に関する何らかの情報を知り得る状況にあって、本件商標を採択し、出願して、登録を得たと見るのが自然である。
そうとすれば、被請求人の本件商標の登録に対する本件無効審判事件と、件外「ニールズヤード ジャパン有限会社」が請求人の商品(エッセンシャルオイル等)を英国から並行輸入して無断販売していたことで訴えられた事件とが、判断を含む事情を異にしている旨述べる被請求人のように身びいきな考え方を是とすべき理由はなく、むしろ、周知・著名商標へのただ乗り(フリーライド)及び信用・名声の希釈化(ダイリューション)防止、真正商標使用者の業務上の信用の維持、需要者の利益保護という商標法第4条第1項第15号の趣旨から見て、混同を生ずるおそれがある商標(又は商号)という点等において共通しているものといわなければならない。
(コ)また、たとえ、名古屋周辺で被請求人の本件商標が周知性を獲得しているといい得ても、それが直ちに被請求人の業務上の信用の獲得によるものであると結論付けることまでは困難であり、さらに、インターネットの一般的な普及・利用事情を何度も述べており、商標権者の立場にある被請求人が、本商標権の取得経緯に何らかの懸念があるというのであればともかく、本件審判における本件商標の登録の帰趨を有利に導くためとはいえ、請求人の英国本店へ実態調査に行き、証拠入手をする必要があったと認めるべき合理的理由も見いだせない。
しかも、被請求人が本件商標を採択し、出願して登録を得るに至ったことの正当性を裏付ける主張及び的確な証拠もないから、このような状況下においては、たとえ、被請求人の商標権者としての立場を考慮しても、商標法第4条第1項第15号の混同のおそれの適用を全く否定すべき根拠はないと判断するのが相当である。
(サ)なお、本件商標の出願前の上述の4(2)ないし(5)の認定事実及び同(2)ないし(4)で示した甲各号証よりすると、請求人引用商標及び請求人ラベル1を含む「ニールズヤード レメディーズ商標等」の我が国における周知・著名性を凌ぐ程に、本件商標が被請求人の出所を正当に表示するものとして周知・著名性を獲得していたことを認めるに足りる証拠は見いだせない。
したがって、被請求人は、請求人の請求人引用商標等の業務上の信用のみならず、その顧客吸引力にただ乗り(いわゆるフリーライド)し、その希釈化(いわゆるダイリューション)を招来していたものと解さざるを得ない。
(シ)以上の点を総合すると、実際の需要者をして、商品の出所について誤認混同のおそれが生じているものといわざるを得ないから、無効とすべきであるとの請求人の主張は、商標法第4条第1項第15号の解釈に沿うものといわなければならない。
(ス)被請求人は、本件商標についての拒絶査定不服審判での成立審決の判断こそ妥当である旨述べているが、同審決は、その提出証拠では、請求人の商標が周知・著名であると認定できないと判断しているにすぎず、そのことが、本件審判における以上の判断を左右するものではない。
(10)してみると、被請求人は、請求人が請求人の商品(化粧品等)に使用している請求人引用商標等の存在を知った上で、あえて、これに同一又は類似する本件商標を異なる商品区分である第30類の商品(菓子等)を指定して出願し、登録を得て、それに使用していたものといわざるを得ず、その登録を無効にされてもやむを得ないものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものというべきであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)請求人ラベル1(甲第1号証・・・1頁)


注:色彩については原本を参照されたい。

(2)請求人が実際に使用している商標の態様(甲第1号証・・・2頁)


注:色彩については原本を参照されたい。

(3)請求人ラベル2(甲第62号証の3)


注:色彩については原本を参照されたい。

(4)請求人使用商品「茶」(カミモール オーガニックティー)(甲第8号証の3・・・55頁)


注:色彩については原本を参照されたい。



審理終結日 2005-12-06 
結審通知日 2005-12-12 
審決日 2005-12-26 
出願番号 商願2000-94034(T2000-94034) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (Z30)
最終処分 成立  
特許庁審判長 大場 義則
特許庁審判官 鈴木 新五
柳原 雪身
登録日 2003-01-17 
登録番号 商標登録第4637732号(T4637732) 
商標の称呼 ニールズヤード 
代理人 菅原 正倫 
代理人 日野 修男 

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