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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) Y25
管理番号 1131588 
異議申立番号 異議2003-90781 
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2006-03-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-11-27 
確定日 2006-02-15 
異議申立件数
事件の表示 登録第4719620号商標の登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4719620号商標の登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第4719620号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成14年11月1日に登録出願、第25類「ジーンズ製のズボン」を指定商品として、同15年10月17日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
本件商標は、これをその指定商品に使用しても、需要者は、そのジーンズパンツが「脚が長く、美しく見えるパンツ」であることを理解するにとどまり、何人かの業務に係る商品であるかを認識し得るものとは認められない。
したがって、本件商標の登録は取り消されるべきである。

第3 取消理由の通知
当審は、商標権者に対して本件商標を取り消す旨の取消理由を通知した。その要旨は以下のとおりである。
登録異議申立人の提出に係る繊研新聞によれば、ジーンズ製のズボン等の被服を取り扱う業界においては、視覚効果をねらって脚が長く、美しく見える形状の商品について、「美脚パンツ」、「美脚タイプ」、「美脚系」等と称して普通に使用されているものと認められる。
そうすると、本件商標は、別掲のとおり、「美脚」の文字と語頭に「美脚」の文字に比してやや小さく新製品等を表すものとして普通に使用されている「新」の文字を結合してなるものであるから、本件商標に接する取引者、需要者は、これより「脚が長く、美しく見える新製品のパンツ」であることを容易に理解し、認識するにすぎないものとみるのが相当である。
してみれば、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、単にその商品の品質、効能、用途等を表示するというべきであり、自他商品の識別機能を果たし得ないものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものである。

第4 商標権者の意見
上記第3の取消理由に対し、商標権者は、以下のように意見を述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第4号証(枝番を含む。)を提出した。
本件商標中「美脚」の語は、今や生地裁断パターンや縫製を工夫することにより、視覚的効果によって、脚を長く見せることをねらったジーンズなどの機能性ズボン(パンツ)全般を意味する語として慣用されていることは否めない。また、一般に、語頭における「新」の文字は、そのあとに続く語を意味するものの改良品や新商品であることを印象づけるために用いられていることも首肯されるところである。
しかしながら、本件商標「新美脚」については、単に脚が長く見えるジーンズの新製品であるといった意味合いを超えて、乙各号証に示されるように商標権者「株式会社ビッグジョン」が製造販売する、ある特定のジーンズのみを指称する特有の名称として認識されているものであり、需要者・取引者においても、「美脚パンツ」、「美脚タイプ」、「美脚系」等々といった当該カテゴリーに属するジーンズの総称ないし俗称とは明確に区別して使用されているものである。そして、このような需要者等における認識は、本件商標の登録査定時である平成15年9月19日の時点においても確立していた。
したがって、「新美脚」なる文字のみから構成される本件商標をその指定商品であるジーンズ製のズボンに使用した際には、取引者のみならず、一般需要者においても、商標権者が提供する特定種類のジーンズであることが明確に認識される結果、自他商品の識別機能を十分に発揮することができていたので、本件商標は商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものではない。
また、仮に本件商標を構成する文字が本来的に商標法第3条第1項第3号に該当するものであるとしても、すでに登録査定時においては商標権者の提供するジーンズ製のズボンの商標として需要者・取引者間において周知になっていたのであるから、同法第3条第2項の規定が適用されるべきである。
よって、本件商標の登録を維持すべき旨の決定を求める。

第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号の該当性について
商標権者は、本件商標の登録は商標法第3条第1項第3号に違反してされたものではない、旨主張している。その理由とするところは、本件商標は登録査定前から取引者、需要者に商標権者の製造販売する特定のジーンズのみを指称する名称として認識されているものであるという点にあるが、当審の通知した取消理由の違法性又は不当性について具体的に主張、立証していない。
したがって、この点に関する商標権者の主張は、本件商標は、取引者、需要者をして「脚が長く、美しく見える新製品のパンツ」であることを容易に理解し、認識させるにすぎないものであるから、自他商品の識別力を有しない、旨の取消理由を覆すに足りない。
むしろ、商標権者の主張の要旨は、本件商標は商標権者がジーンズに使用した結果自他商品の識別力を有する至ったものであるという点にあると解されるが、この点については、次項において検討する。
2 商標法第3条第2項の適用について
商標権者は、本件商標が登録査定時において商標権者の提供するジーンズ製のズボンの商標として取引者、需要者間において周知となっていたのであるから、商標法第3条第2項の規定が適用されるべきであった、旨主張するので、この点について検討する。
(1) 商標権者による新聞、雑誌への広告及びタイアップ記事(例えば、乙第1号証の3及び乙第3号証の2など。以下「広告等」という。)をみると、「新美脚ジーンズ」「新美脚JEANS」の文字が記載されていることは認められるが、上記広告等中には、商標権者のジーンズパンツのシリーズ商標と認められる図形を冠した「BRAPPERS」の文字からなる商標及び商標権者の名称(例えば、「(株)ビッグジョン」)も記載されているものであり、さらに、該広告等中には上記文字のほか、例えば、乙第1号証の8、乙第3号証の5には、「美脚ポイント」として、当該ジーンズパンツの美脚加工の内容を説明する記載があり、乙第3号証の1、12及び23は、当該ジーンズパンツの美脚加工の解説図が記載されているほか「美脚ストレート」、「美脚ブーツカット」などのように「美脚」の文字が使用されている。乙第3号証の6は、「新美脚JEANS登場!!」の文字のもと、美脚のための研究がされてきた旨の記載があるほか、他の広告等においても広告商品が美脚機能を有するものである説明等とともに記載されているものである。
そうすると、「美脚」の文字が視覚効果をねらって脚が長く美しく見える形状であることを示す語として取引者・需要者の間に広く知られ、需要者が「美脚」に対する関心が高い状況にあり、「美脚」の文字は、「美脚」と単独で用いられるほか、「美脚タイプ」、「美脚系」、「美脚パンツ」、「美脚ブーツ」(13/06/06繊研新聞)、「美脚ジーンズ」(2003/8/25、2003/09/19及び2003/09/24繊研新聞)のごとく使用されていることからすると、上記図形及び「BRAPPERS」の文字や商標権者の名称の記載部分が自他商品の識別標識としての機能を発揮するものであって、上記広告等中の「新美脚ジーンズ」及び「新美脚JEANS」の文字は、「新しいタイプの美脚ジーンズ」の意味合いを認識させるものというべきである。
また、商標権者の提出に係る新聞及び雑誌についてみると、記事及び見出し中に「新美脚ジーンズ」「新美脚JEANS」等の記載が認められるが、これらの記載は、掲載商品が美脚機能を有する商品であることの記載と併せてなされているところであり、特に、業界全体のジーンズパンツに関する特集記事においては、需要者のニーズ及び業界が「美脚」、「美尻」等の機能性を重視しているとして、各社の商品を紹介しているから、個々に記載されている「新美脚ジーンズ」「新美脚JEANS」の文字は、「新しいタイプの美脚ジーンズ」の意味合いを認識させるものというべきである。
このことは、商標権者による宣伝物(申立人のリーフレット(乙第4号証の2及び3)、陳列用ストックトレー(乙第4号証の5)、三角柱ポップ(乙第4号証の7)、ポスター(乙第4号証の9)についても同様と認められる。
(2) 商標権者は、業界紙において、本件商標が記号(「」や””)により括られた形により、特別に意識された表示をもって記載され、商標権者が提供する特定の商品名称として明確に識別されている、旨主張しているが、その業界紙の読者が上記括弧書きによる記載により商標権者に係る固有の商標と理解し、その出所を表示するものとして必ず認識するものとはいえない。そして、記載の多くは、本件商標を構成する「新美脚」の文字のみではなく「新美脚ジーンズ」等のように使用されているから、その業界紙等にある「新美脚ジーンズ」等の表示は、前述のとおり、「新しいタイプの美脚ジーンズ」を容易に認識させるものというべきである。
また、商標権者は、「新美脚」としてのみ表示されている(乙第1号証の20)、旨主張しているが、確かに見出し等で「新美脚」の文字のみを記載しているものが一部見受けられるとしても、見出しでの記載(乙第1号証の20)は、文字数の制限が強いられることから、一部省略して記載されることも多いものであり、記事中での記載もシリーズの一つを指すものとして使用され、他のシリーズ(「新美肌」など)と識別することができるとしても、これをもって、直ちに、自他商品の識別標識としての機能を有するものとはいうことができない。
さらに、商標権者は、インターネットで「新美脚」の文字検索を行うと、本件商標に係る「ブラッパーズ新美脚ジーンズ」に関した記事が多数検索される(乙第2号証の1ないし3)ことから、本件商標が特定商品のブランドであると認識されていることが窺える、旨主張しているが、前述のとおり、「新美脚ジーンズ」の文字からは、「新しいタイプの美脚ジーンズ」の意味合いでまず認識させるものであって、機能表示であることを離れて、商標権者の特定商品の商標として認識されているとまではいうことができない。
その他、商標権者の提出する乙各号証によっては、本件商標は、同人に係る特定のジーンズパンツを表示するものとして明確に認識されているものとは認めることができない。
(3) してみれば、本件商標をその指定商品に使用するときは、これに接する取引者・需要者は、「脚が長く、美しく見える新製品のパンツ」の意味合いを認識するというべきであり、その商品の品質を表すものとして認識されるものであるというべきであるから、商標権者の述べる意見はいずれも是認することはできない。
3 まとめ
したがって、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号に違反してされたものといわざるを得ないから、商標法第43条の3第2項により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 本件商標

異議決定日 2005-03-30 
出願番号 商願2002-93035(T2002-93035) 
審決分類 T 1 651・ 13- Z (Y25)
最終処分 取消  
前審関与審査官 石井 千里 
特許庁審判長 田辺 秀三
特許庁審判官 高野 義三
内山 進
登録日 2003-10-17 
登録番号 商標登録第4719620号(T4719620) 
権利者 株式会社ビッグジョン
商標の称呼 シンビキャク、ビキャク 
代理人 森 寿夫 
代理人 森 廣三郎 
代理人 中務 茂樹 

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