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審決分類 |
審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z05 |
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管理番号 | 1129391 |
審判番号 | 取消2004-30917 |
総通号数 | 74 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2006-02-24 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2004-07-15 |
確定日 | 2005-11-17 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第0581624号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第581624号商標(以下「本件商標」という。)は、「ゼン」及び「ZEN」の文字を上下二段に横書きしてなり、昭和32年11月30日に登録出願、第1類「薬剤及び医療補助品」を指定商品として昭和36年11月25日に設定登録され、その後、昭和57年2月26日、平成5年7月29日及び同13年10月23日の3回に亘り商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに平成14年3月27日に指定商品を第5類「薬剤(蚊取線香その他の蚊駆除用の薫料・日本薬局方の薬用せっけん・薬用酒を除く。),ばんそうこう,包帯,綿紗,綿撒糸,脱脂綿,医療用海綿,オブラート」とする書換登録がされているものである。 2 請求人の主張の要点 請求人は、本件商標の指定商品中「薬剤(蚊取線香その他の蚊駆除用の薫料・日本薬局方の薬用せっけん・薬用酒を除く。)」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第3号証を提出している。 (1)請求の理由 本件商標は、商標権者により継続して3年以上、日本国内において、商品「薬剤(蚊取線香その他の蚊駆除用の薫料・日本薬局方の薬用せっけん・薬用酒を除く。)」について使用されていない。また、本件商標の商標権には専用使用権は設定されていない。加えて通常使用権も登録されていないことから、本件商標権者の通常使用権者も存在しないことが推測しうる。 したがって、本件商標の登録は商標法第50条第1項の規定により取消を免れない。 (2)弁駁の理由 被請求人が提出した答弁書における理由及び乙号証のいずれからも、被請求人から使用許諾を得た通常使用権者が本件商標を「かぜ薬」について使用しているとの確証は得られない。以下、各乙号証について反論する。 (ア)乙第1号証について 被請求人は、本件商標の商標登録原簿を示し、「富山県射水郡小杉町戸破69番地の12に本店を構える中部薬品株式会社(以下「中部薬品」という。)に対し、本件商標の指定商品中『かぜ薬、ねつ薬、せき薬』に関する通常使用権の設定を昭和37年5月1日に許諾した」旨述べている。 しかし、本件登録原簿によれば、中部薬品の住所は「富山市山王町37番地」とあるから(甲第2号証、乙第1号証)、被請求人の上記主張と異なる。 また、仮に、登録原簿上の中部薬品が、現在、富山県射水郡小杉町戸破69番地の12に本店を構えるとしても、昭和37年5月1日以降に、通常使用権者の住所、期間について変更登録がされた事実が本件登録原簿から認められない(甲第2号証、乙第1号証)。 よって、本件登録原簿をもって審判請求登録前3年以内に本件商標を「かぜ薬」について使用する使用権者が存在していたことを立証しているとはいえない。 (イ)乙第2号証について 「ゼン/ZEN」という商標が商公昭33-6544として公告された事実は、認める。 しかし、被請求人は、この乙第2号証をも含めて、本件商標が使用された事実を立証する旨主張するが、上記公告がされた事実をもって、審判請求登録前3年以内に本件商標を「かぜ薬」について使用する使用権者が存在していたことを立証しているとはいえない。 (ウ)乙第3号証について 被請求人は、至田卓平氏と中部薬品間において平成13年8月7日に締結された「通常使用権設定契約書」を示し、昭和37年5月1日以降の更新登録時に、両者間で通常使用権設定契約を締結している旨主張している。 しかし、契約締結のわずか2ケ月程後に申請された本件商標に関する書換登録申請手続(書換2001-527268)では、商標法附則第4条第2項による通常使用権者と主張する中部薬品の承諾書が提出されていないのである(甲第3号証)。 上記書換登録申請手続が代理人により手続がされていること、及び、書換登録申請時の指定商品が自然人である商標権者自らが流通過程で扱うとはー般的に考えにくい「薬剤及び医療補助品」であることに鑑みれば、商標権者に上記法条による承諾書が必要である旨の連絡が当然にされているものと考えられる。また、代理人であれば、書換登録申請手続をする際は、事前に登録原簿謄本を閲覧し、指定商品を確認するのが通常であるものであるから、本件商標に関して、過去に通常使用権が設定登録されていた事実については認識していたはずであり、注意を喚起する意味でも、商標権者に通常使用権者の有無を尚更確認しているはずである。因みに、上記法条にいう通常使用権者については、商標法第31条第4項で準用する特許法第99条1項の効力を有する通常使用権を有する者に限られていないことはいうまでもない。 それにもかかわらず、商標法附則第4条第2項による承諾書が提出されていないことは、商標権者が代理人に書換登録申請手続を委任した平成13年8月24日において、通常使用権者がいないことを、商標権者自身が自認していると言わざるを得ない。 即ち、上記「通常使用権設定契約書」の締結日が平成13年8月7日であり、上記委任状の日付が平成13年8月24日(甲第3号証7枚目の委任状参照)であることから、代理人より上記承諾書について連絡を受けていたと思われる商標権者が、通常使用権者の存在を忘れていたとも言い難いものであり、上記委任日である平成13年8月24日において、中部薬品は、本件商標に関して通常使用権の許諾を受けていなかったことを、商標権者自ら自認しているものである。 上記のとおり、書換2001-527268において、商標法附則第4条第2項による承諾書が提出されていない事実、及び、「審判請求の登録の日から3年以内」の期間が、平成13年8月5日から平成16年8月4日までの期間を指すことに鑑みると、上記「通常使用権設定契約書」は証拠としての客観性に欠け、契約締結日として平成13年8月7日と記載してあるのは、平成13年8月5日以降の日付を任意に記載したにすぎないものと解さざるを得ないのである。 よって、上記「通常使用権設定契約書」をもって審判請求登録前3年以内に本件商標を「かぜ薬」について使用する使用権者が存在していたことを立証しているとはいえない。 (エ)乙第4ないし第6号証について 被請求人は、「ゼン」(2包入)、「ゼン」(5包入)、「ゼンソフトカプセル」(6力プセル入)の納品書を示し、中部薬品が「昭和31年3月に厚生省から『ゼン』に係る医薬品製造許可を受けて以来、現在に至るまで継続して『ゼン』(かぜ薬)の販売を行っている」旨主張する。 しかし、長年継続して販売実績があると主張するにもかかわらず、提示された証拠は、わずかに納品書3枚であり、乙第7ないし第9号証に示すケース以外に、これらの納品書の事実を裏付ける相手方企業の受領書、請求書、領収書等の一連の取引書類が明示されていない。 また、提示された納品書においても、乙第6号証、乙第4号証、乙第5号証と、その納品書番号は16020-1、16021-1、16022-1と連番になっており、中部薬品が「ゼン」(かぜ薬)のみを発売していればともかく、通常、他の銘柄の薬も発売しているものと思われることから、平成16年5月7日から平成16年5月14日までの納品において、「ゼン」(かぜ薬)のみを対象として連続して納品書を切ることは不自然である。 よって、当該納品書のみを示したのでは、単に形式的に納品書が作成された事実を示すにすぎないから、当該証拠をもって、審判請求登録前3年以内に本件商標を「かぜ薬」に使用する使用権者が存在していたことを立証しているとはいえない。 (オ)乙第7ないし第9号証について 被請求人は、乙第4ないし第6号証に示す「ゼン」のケースを提出し、中部薬品が「昭和31年3月に厚生省から『ゼン』に係る医薬品製造許可を受けて以来、現在に至るまで継続して『ゼン』(かぜ薬)の販売を行っている」旨主張する。 しかし、乙第7ないし第9号証には、印刷年月日、印刷会社が記載されているのみであり、これらの証拠を裏付ける印刷会社の証明書、納品書、請求書、中部薬品の印刷依頼書等の一連の取引書類が明示されていないので、証拠としての客観性に欠け、これらの証拠をもって、現実に商品「ゼン」について販売取引する目的で、「ケース」を印刷したとはいえない。 また、乙第7ないし第9号証に示すケースには、いずれも配置期限日が記載されていないので、いつの時点でのケースなのかも不明である。 さらに、乙第7号証においては、これを「ケース」と主張するが、乙第8及び第9号証のようにのりしろらしき部分を全く認めることができないので、当該証拠を「ケース」として使用するのは困難である。 よって、当該ケースのみを示したのでは、単にケース又はケースと主張する物が示されたにすぎず、印刷年月日等の記載についても、任意に記載したと解さざるを得ないから、当該証拠をもって、審判請求登録前3年以内に本件商標を「かぜ薬」について使用する使用権者が存在していたことを立証しているとはいえない。 (カ)結び 被請求人は答弁書において縷々述べ乙号証を提出しているが、これをもって、本件商標を通常使用権者が審判請求の登録前3年以内に日本国内において使用していたとする証拠にはならないことが明らかである。また、商標権者本人が、本件商標を上記期間内に使用している事実を示していない。 3 被請求人の答弁の要点 被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第9号証を提出している。 (1)本件商標は、本件審判請求の登録日(平成16年8月4日)の3年前よりも以前から現在に至るまで、継続して「薬剤(蚊取線香その他の蚊駆除用の薫料・日本薬局方の薬用せっけん・薬用酒を除く。)」に使用されており、以下にその事実を立証する。 (2)被請求人は、富山県射水郡小杉町戸破69番地の12に本店を構える中部薬品に対し、本件商標の指定商品中「かぜ薬、ねつ薬、せき薬」に関する通常使用権の設定を昭和37年5月1日に許諾し、その後の更新登録時にも両者の間で通常使用権設定契約を締結している。 また、本件商標の通常使用権者である中部薬品は、昭和31年3月に厚生省から「ゼン」に係る医薬品製造許可を受けて以来、現在に至るまで継続して「ゼン」(かぜ薬)の販売を行っているものである。 また、上記事実は、証拠方法として提出の乙第1ないし第9号証によっても明らかである。 (3)したがって、本件商標は、通常使用権者である中部薬品によって、本件審判請求の登録日の3年前よりも以前から現在に至るまで、継続して「薬剤(蚊取線香その他の蚊駆除用の薫料・日本薬局方の薬用せっけん・薬用酒を除く。)」に属する「かぜ薬」に使用されていることは明らかであるから、本件商標は、商標法第50条第1項の規定には該当せず、請求人の主張は不当なものである。 4 当審の判断 被請求人は、通常使用権者である中部薬品によって、本件審判請求の登録の日前3年よりも以前から現在に至るまで、請求に係る指定商品中の「かぜ薬」に使用されている旨主張し、証拠を提出しているので、その証拠について検討する。 乙第3号証は、通常使用権設定契約書の写しと認められるところ、これによれば、本件商標権者が、平成13年8月7日付けで、中部薬品に対し、商品「かぜ薬、ねつ薬、せき薬」について本件商標の使用を許諾したことが認められる。 もっとも、当庁備え付けの商標登録原簿を徴するに、中部薬品を通常使用権者とし、「地域 全国、期間 本商標権の存続期間中、内容 かぜ薬、ねつ薬、せき薬」を範囲とする通常使用権の設定の登録が昭和37年6月20日にされていることが認められる。 乙第4ないし第6号証は、いずれも中部薬品が発行した納品書の写しと認められるところ、それぞれの発行日は平成16年5月11日、同月14日、同月7日であり、それぞれの品番・品名欄には「売上 ゼン(高島)」、「売上 ゼン・ケース5入」、「売上 ゼンソフトカプセル6P」と記載されている。 乙第7ないし第9号証は、いずれも商品「かぜ薬」のケースないしは包装用箱と認められるところ、乙第7及び第8号証のケース又は包装用箱には、それぞれの表面に、小さく書された「かぜに」の文字の下段に大書された「ゼン」の文字が併記されているほか、裏面又は側面にも「ゼン」又は「かぜに ゼン」の文字が顕著に表されている。乙第9号証の包装用箱には、表面に「液状かぜぐすり」及び「ゼンソフトカプセル」の文字が二段で表され、裏面にも「塩化リゾチーム・ゴオウ配合 ゼンソフトカプセル」の文字が顕著に表されている。これら記載された「ゼン」の文字は、いずれも本件商標と社会通念上同一といい得るものである。そして、いずれのケース又は包装用箱にも発売元として中部薬品が記載されている。 以上を総合勘案すると、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に我が国において、通常使用権者によって、本件請求に係る指定商品中の「かぜ薬」について使用されていたものというのが相当である。 なお、請求人は、本件商標に関する書換登録申請手続きにおいて通常使用権者による承諾書(商標法附則第4条第2項)が添付されていないことをもって、通常使用権設定契約書(乙第3号証)の締結時には通常使用権者が存在していなかった旨主張するが、商標法附則第4条第2項にいう承諾書を欠くことは、書換登録申請手続きに瑕疵があるか否か問われることはあっても、本件商標の使用に関する通常使用権者の有無とは直接関係のないことである。また、請求人は、商標登録原簿に記載された通常使用権者の住所が相違することをもって通常使用権者の存在を否定しているが、通常使用権設定契約書(乙第3号証)をはじめ、納品書(乙第4ないし第6号証)及び商品包装用箱(乙第8及び第9号証)に記載された中部薬品の住所はいずれも同一であり、中部薬品を通常使用権者として特定し得るものである。 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すべき限りでない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-06-16 |
結審通知日 | 2005-06-22 |
審決日 | 2005-07-07 |
出願番号 | 商願昭32-33339 |
審決分類 |
T
1
32・
1-
Y
(Z05)
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最終処分 | 不成立 |
特許庁審判長 |
小林 薫 |
特許庁審判官 |
岩崎 良子 池田 光治 |
登録日 | 1961-11-25 |
登録番号 | 商標登録第581624号(T581624) |
商標の称呼 | 1=ゼン 2=セットイイエヌ |
代理人 | 神田 正紀 |
代理人 | 瀧野 秀雄 |
代理人 | 垣内 勇 |
代理人 | 倉内 義朗 |