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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 041
管理番号 1129303 
審判番号 取消2002-31464 
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-02-24 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2002-12-17 
確定日 2006-01-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第3183886号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第3183886号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第3183886号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に示すとおり、「SIGNO」の欧文字を籠字で横書きし、そのうちの「NO」の文字の下に「シグノ」の片仮名文字を小書きした構成よりなるものであり、平成4年9月30日に登録出願、第41類「歯科医療技術に関する知識の教授,歯科医療技術に関する録音済み・録画済み磁気テ―プの貸与」を指定役務として、同8年8月30日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁等を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証を提出した。
(1)請求人の知る限り、被請求人は、継続して3年以上日本国内において、本件商標をその指定役務について正当な理由なく使用していない。
また、本件商標について専用使用権は設定されておらず、通常使用権の登録もないから、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消されるべきである。
(2)被請求人の答弁に対する弁駁
被請求人は、請求人に対し、利害関係を明らかにすべき旨反論する一方、同人は、本件商標をその指定役務に使用している旨述べている。
しかしながら、請求人は、その主張に対し、次のように弁駁する。
(ア)利害関係について
現行の商標法第50条は、「何人も」本件取消審判を請求できると明示しており、利害関係の有無を要件としていない。被請求人は、「審判請求が被請求人を害することを目的としてなされた場合には、その請求は、権利濫用として認められない。」などと述べているが、そのような法理は、聞いたこともなく、被請求人独自の考えというほかない。条文上、利害関係が要件となっていないことは、疑問の余地がなく、この点に関する被請求人の主張は、失当である。
(イ)本件商標の指定役務への不使用について
(a)乙第1号証及び乙第2号証
被請求人が本件商標の使用を示す証拠として提出した乙第1号証は、「SIGNO/GRAND/GRAND90」という表題の技術研修資料であるところ、その作成日又は頒布日が立証されていないばかりでなく、仮に、被請求人主張のとおり、これが平成8年3月に頒布されたものであるとしても、本件審判請求の登録日前3年より前であるから、取消しを免れる証拠とはなり得ない。なお、この点については、乙第2号証も同じである。
(b)乙第3号証ないし乙第5号証
乙第3号証は、2002年5月の記載がある「2002年度SFD様 特定修理業責任技術者対象『修理技術研修会』のご案内」と題する書類(写)である。また、乙第4号証は、被請求人の主張によれば、乙第3号証に記載された研修会のカリキュラム(写)、そして、乙第5号証は、同研修会の京都会場における受講者名簿(写)である。
しかして、乙第3号証と乙第4号証の本文中には、被請求人の商品とおぼしき「シグノLX1 HM スウィングモデル」という記載が見られる。
そこで、これが本件商標の使用に該当するか否かについてみるに、乙第3号証には、その「費用」の項に、「会場までの往復旅費は、各自にてご負担お願いします。宿泊費、食事費は、モリタが負担します。」との記載がされている。
しかし、この記載よりすると、当該研修の費用については、何らの記載もないことから、この研修は、被請求人が無償で提供するものと考えられる。
また、同研修の対象者は、「特定修理技術責任者及びサービススタッフの方」と記載されているが、その上段の「平素はモリタ製品のご拡販に格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。」との記載から見ると、当該研修は、被請求人の商品の販売に従事している得意先(販売代理店など)の修理技術者及びサービススタッフを対象にしていることが明らかである。
また、乙第3号証に記載の「スペースラインイムシア TYPE II NTS」(審決注:本審決においては、ローマ数字の2を「II」と表示する。以下同じ。)、「Veraview epocs」及び「シグノLX1 スウィングモデル」は、いずれも被請求人の製造している商品と考えられる。
そうすると、乙第3号証ないし乙第5号証に記載の研修会とは、被請求人が自ら製造・販売した商品について、修理技術を得意先(販売代理店)に無償で教授するためのものというべきであり、一種のアフターサービス、あるいは、商品の販売促進活動の一環にとどまるものというべきである。
いうまでもなく、商標法上の役務は、それ自体独立して提供されるものでなければならない。このことは、平成4年の商標法改正時に「独立したサービス」といえるか否かが議論された際、自己の製造した商品を修理する行為は、対価が無料又は著しく低廉であれば、独立した収支計算に基づくものとは認められないので、独立したサービスとはいえず、製造又は販売に付随する行為であるとされており、その結論は、広く認められ、その後も、この考え方が一般的である。
また、一般人を対象として無料で行う講演会の開催は、業務に関連するテーマであれば、原則として当該業務に付随するサービスであり、他方、業務と無関係のテーマであって、寄付で賄われているなど、収支計算に基づきなされているものは、独立したサービスとなるという考え方も広く受け入れられている。
さらに、商品の小売りが役務に該当するか否かについては、カタログにより商品を通信販売している業者が指定役務の表示を「多数の商品を掲載したカタログを不特定多数人に配布し、家庭にいながらにして商品選択の機会を与えるサービス。」と記載した商標登録出願を拒絶するとした審決が判決において支持された事例もある。
こうしたサービスは、商品の販売に付随する労務又は便益にすぎず、独立しているものではないから、商標法上の役務ではないと判断されている。
乙第3号証ないし乙第5号証から理解し得る被請求人の行為は、これらの例に比べると、なお独立性に乏しく、「歯科医療技術に関する知識の教授」又は「歯科医療機械器具に関する知識の教授」という役務を提供していると見る余地は全くない。
したがって、被請求人の行為は、自己の本業と思われる商品「歯科医療機械器具」の販売に付随する行為であることは明らかである。
乙第3号証ないし乙第5号証に記載された「シグノ」は、被請求人が医療機械器具に使用している商標を表示したものにすぎず、そのことは、乙第3号証ないし乙第5号証に接する者(被請求人の得意先)にとっては、直ちに認識し得るものである。
社会通念上、乙第3号証ないし乙第5号証から、被請求人が「シグノ」という商標を使用して、「歯科医療技術に関する知識の教授」という役務を提供していると理解する者は、およそ皆無であろう。
(c)その他
上述の乙第1号証及び乙第2号証は、表紙のみであり、被請求人は、これらについて、何ら説明していないので、これらが何であるのかは、必ずしも明らかではないが、この研修会で用いられる教材か又は単なる被請求人の製造・販売に係る商品の修理マニュアルと推測される。
そうすると、乙第1号証及び乙第2号証は、本件指定役務についての本件商標の使用を示すものでは、そもそもあり得ない。
このことは、「SIGNO LX-1 TypeHM/修理マニュアル」と題された乙第6号証にも、そのまま妥当する。乙第6号証は、修理マニュアルの表紙(写)のみであるから、本件指定役務との関連性の有無をうかがうことは不可能である。
(ウ)以上のとおり、被請求人の主張及び提出に係る証拠を子細に検討すると、被請求人は、本件商標をその指定役務について、使用をしているということができない。
(3)被請求人の再答弁に対する再弁駁
被請求人は、請求人の弁駁に対する再答弁(平成15年6月19日)においても、請求人の利害関係の有無を争っているだけでなく、答弁書に添付した証拠により、本件商標の使用が立証されている旨述べているので、以下、反論又は一部撤回する。
(ア)まず、利害関係について、被請求人が再答弁した「請求人適格を『何人』とするとしても、当該審判の請求が被請求人を害することを目的としていると認められる場合には、その請求は、権利濫用として認められないこととなる。」との考え方については、請求人も認め、これに反する平成15年4月28日付弁駁書における主張は、撤回する。
しかしながら、そもそも、請求人が本件審判請求をすることに被請求人を害する目的があるか否かについては、被請求人が立証すべきものと解される。そうでなければ、被請求人が利害関係を争う都度、請求人は、審判を請求する目的の正当性を立証しなければならず、「何人」にも認めた商標法第50条に基づく取消審判制度の趣旨が没却される。
もっとも、請求人は、被請求人を害する目的で本件審判請求をしたのではなく、本件商標の存在により、商標選択の幅が狭くなり、迷惑を被っている者のために、本件審判請求に及んでいる次第である。換言すれば、乙第8号証に記載されているように公益目的で行っている。
事実、請求人は、被請求人に対し、金銭その他の利益を一切要求したことなどなく、今後も、そのような意図は全くない。
したがって、この点に関する被請求人の主張は失当である。
(イ)次に、被請求人は、「商標権者による役務の提供が有償か無償か、高いか安いかは、商標の使用かどうかの基準たり得ない。」旨述べている。
しかしながら、独立して取引の対象となる役務でなければ、法律上の保護に値しないことは、広く認められているところであるから(甲第3号証)、被請求人の上記主張は、明らかに誤りである。
このことは、商品について、「一般に商標法上の『商品』とは、その物品がそれ自体交換価値を有し、独立して商取引の対象となる有体物と解されている。つまり、有償取引の目的物であるか否かが、商標法上の『商品』といえるかどうかの重要な基準と考えられている。」という記載(甲第4号証)との均衡からしても当然である。
無償、あるいは、低廉な対価であっても、独立した収支計算の下に役務が提供されていると見ることのできる場合があることは、請求人も否定するものではないが、本件は、そのような事案ではなく、被請求人も、この点について、何ら立証していない。
(a)乙第3号証ないし乙第5号証をもってしては、被請求人が本件指定役務を提供しているということができないことは、弁駁書で述べたとおりであるが、それに加えて、乙第3号証ないし乙第5号証における「シグノ」の表示は、その使用の態様からすると、被請求人の販売に係る商品を表示したものと認識され、本件指定役務「歯科医療技術に関する知識の教授,歯科医療技術に関する録音済み・録画済み磁気テープの貸与」について、自他役務識別標識として使用されているとみる余地はないから、この点においても、使用の証明になっていない。
(b)請求人は、商標法第50条の審判において、指定役務について、登録商標が使用されていないとされた審決例を念のために、以下、列挙する。
(i)第41類「知識の教授」を指定役務とする登録商標の使用について
登録商標と社会通念上同一と認められる標章を付して頒布された「予防医学シンポジウム」のリーフレットは、被請求人の製造に係る商品(家庭用及び業務用活水器)を販売するためのものであり、その販売員に限定して配布されるものと認められるから、これをもって、本件商標をその指定役務中の「知識の教授」に使用していたものとすることはできないとされた事例(甲第5号証)。
(ii)第41類「ビリヤード場の提供」を指定役務とする登録商標の使用について
当該ビリヤード場は、被請求人の経営に係る賃貸マンション内に設置されているところ、商標法上の「役務」は、「他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引の目的足り得べきもの。」と説示したうえで、「マンション内に当該マンションの利用者が利用できる『ビリヤード施設』を備えていることをもってしては、これが独立して商取引の目的たり得べく設置されたものとみることはできない。また、役務として、『ビリヤード場の提供』を行っていると認めることもできない。」とされた事例(甲第6号証)。
(iii)第42類「デザインの考案」を指定役務とする登録商標の使用について
「商標法にいう『役務』とは、他人のためにする労務又は便益であって、付随的でなく独立して市場において取引の対象となり得るものをいう。」とした上で、「被請求人が行っているとする上記各種デザインの考案・設計は、あくまでも自己のビル及びマンションの付加価値を高めることを目的としており、該商品の販売を促進するための手段の一つとみるのが相当である。」とされた事例(甲第7号証)。
以上の事例と比べると、本件審判において、被請求人がその指定役務について、本件商標の使用であると主張している行為は、被請求人の商品の販売に付随することが一層明白であるから、その行為を指定役務についての使用とみる余地はない。
(4)よって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消されるべきである。

3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由及び請求人の弁駁に対する再答弁を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第8号証を提出した。
(1)利害関係について
請求人は、本件審判請求について利害関係を有する旨を明らかにしていないから、被請求人は、この点について争う。請求人は、利害関係を有するというのであれば、それを明らかにすべきであり、利害関係を有しない者がみだりに他人の権利を取り消す請求をすべきでないことは、「利害なければ訴権なし」の原則よりして明らかである。
また、たとえ、平成8年改正法により、「・・・何人も、その・・・指定役務に係る商標登録を取り消すことについて、審判を請求することができる。」とされたからといっても、本件審判請求が被請求人を害することを目的としてなされた場合には、当該請求は、権利濫用として認められない。利害関係の有無については、請求人が最もよく知っているわけであるから、その挙証責任は、請求人にある。
(2)本件商標の使用の事実
被請求人は、本件商標の登録の前後を通じて、本件商標をその指定役務中の「歯科医療技術に関する知識の教授」の範疇に属する「歯科医療器械器具に関する知識の教授」、すなわち「歯科医療器械器具に関する研修の実施」において、使用している。
そのことは、平成8年(1996年)3月の「SIGNO GRAND GRAND90技術研修資料」(乙第1号証)、同年11月15日作成の「シグノ グランド II 修理マニュアル」(乙第2号証)、同14年(2002年)5月の「2002年度SFD様 特定修理業責任技術者対象『修理技術研修会』のご案内」(乙第3号証)、「2002年度SFD様 特定修理業責任技術者対象『修理技術研修会』カリキュラム」(乙第4号証)、「京都会場2002年度SFD様 特定修理業責任技術者対象『修理技術研修会』受講者名簿」(乙第5号証)、上記研修会の教材中の「SIGNO LX-1 TypeHM 修理マニュアル」(乙第6号証)に記載のとおりである。
したがって、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、被請求人がその指定役務について使用していることは明らかである。
(3)請求人による弁駁に対する再答弁
(ア)利害関係について
請求人は、「被請求人も認めているとおり、現行の商標法第50条は、『何人も』審判を請求できると明示しており、利害関係の有無は、要件となっていないし、被請求人は、審判請求が被請求人を害することを目的としてなされた場合には、その請求は、権利濫用として認められないなどと述べているが、そのような法理は、聞いたことがなく、被請求人独自の考えというほかない。条文上、利害関係が要件となっていないことは、疑問の余地がなく、この点に関する被請求人の主張は、失当である。」と弁駁しているにとどまり、本件審判請求について、利害関係を有することを何ら明らかにしていない。
法律の解釈・適用にあたっては、法文のみから行うのではなく、その法律の立法趣旨(立法者の目的とするところ)をも勘案して、合目的性の有無の観点から、行われるべきである。
すなわち、商標法第50条の改正法(平成8年法律第68号)は、不使用商標の取消による整理の一層の促進をするためになされたものであって、立法者は、商標法第50条の改正について、「請求人適格の緩和」との項を立てるとともに、その中で、「不使用取消審判の請求人適格については、これまで明示の規定がないことから、『利益なければ訴権なし』の原則が適用され、『利害関係人』に限られるとされてきた(審判実務上も、被請求人の申立てにより利害関係の存在に争いが生じた場合、又は必要に応じて職権により利害関係の有無について審理されてきた)が、今回の改正においては、『何人』にも認めることとし、不使用商標の取消による整理の一層の促進を図ることとした。なお、請求人適格を『何人』とすることとしても、当該審判の請求が被請求人を害することを目的としていると認められる場合には、その請求は、権利濫用として認められないこととなる。」と説明しており、当該改正に至った理由として、「(A)迅速な審判処理が要請されるにもかかわらず、『利害関係』の有無について争われることにより、審理の結論が出るのが遅れるというケースも存在すること。(B)請求人適格として、『利害関係人』であることを要求したとしても、利害関係を作ろうと思えば、同一又は類似の商標を『出願』又は『使用』をするという形で簡単に作ることが可能であるので、『何人も』請求可能とする場合と事態は、実質的に変わらないこと。」(乙第7号証及び乙第8号証)等を挙げている。
したがって、商標法第50条は、請求人適格を「緩和」したのであって、「撤廃」したのではないこと、すなわち、「利害関係人のみ」であったものを「公益的利害関係人」をも含むように緩和したのであって、「利害関係」が全くない者の取消審判までをも認めることにより、審判請求を増加させ、審理遅延を招くこと、いわんや被請求人を害することを目的とする請求までをも認容すべきでないことは明らかであり、これが被請求人独自の見解などでないことも明らかである。
そして、請求人は、弁駁においても、本件審判請求につき利害関係があることを何ら明らかにしていない。
したがって、本件審判請求は、被請求人を害することを目的としてなされた場合に該当するといわざるを得ず、権利濫用として容認できない。
(イ)商標権者の提供する役務が有償か無償か、高いか安いかということについての請求人の主張は、商標の使用か否かの基準たり得ないので、失当である。
請求人は、平成4年の商標法改正時に、上記の点が議論されたとしているが、どこで誰がした議論であるかを明らかにしていない。
また、カタログによる商品の通信販売業者がサービス業者でないことは、明らかであるから、請求人の主張は、本件に当てはまらず、失当である。
さらに、研修会等で自己の業務に係る商品がテキスト等の題材になっている場合に、これを直ちに自己の業務に係る商品の販売促進あるいはアフターサービスの一環であるとすることは、妥当でない。
(4)以上のとおりであるから、本件審判請求は成り立たないとの審決を求める。

4 当審の判断
(1)商標法第50条による商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、被請求人において、その請求に係る指定役務について当該商標の使用をしていることを証明し、又は使用をしていないことについて正当な理由があることを明確にしない限り、その登録の取消しを免れない。
(2)そこで、本件審判において、被請求人が本件商標をその指定役務について使用をしていると主張して提出した乙第1号証ないし乙第6号証について、以下、検討する。
(ア)乙第1号証ないし乙第3号証について
乙第1号証ないし乙第3号証は、いずれも一枚紙よりなるものであり、乙第1号証は1996(平成8)年3月15日に、また、乙第2号証は1996年(平成8年)11月15日に、さらに、乙第3号証は2002年[平成14年]5月に、いずれも被請求人により作成された「SIGNO GRAND GRAND90 技術研修資料」、「シグノ グランド II 修理マニュアル」及び「被請求人外2社により開催する『2002年SFD様 特定修理業責任技術者対象『修理技術研修会』』への案内通知」というものである。
しかしながら、乙第1号証及び乙第2号証の作成日は、いずれも、本件審判請求の登録日(平成15年1月22日)前3年以内よりも遙かに以前の日付であり、いずれも、頒布年月日、頒布先、頒布数量等を、また、乙第2号証にあっては、その目次、奥付、発行所、定価、全頁数をも客観的に示す証拠の提出がないから、乙第1号証及び乙第2号証の提出をもって、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、被請求人が本件商標をその指定役務について使用をしたものとは認めることはできない。
ところで、商標法上の役務とは、他人のために行う労務又は便益であって、市場において独立して商取引の対象となるものをいうと解される。
そこで、乙第3号証をみるに、これよりは、修理技術研修会の開催という役務の提供を受けた受講者が、当該研修会の開催者の被請求人外2社(以下「モリタ企業グループ」という。)に対して、「当該研修会の受講料を支払ったこと等」のやりとりをうかがわせる証拠は、見当たらず、むしろ、「宿泊費・食事費はモリタが負担します。」というように、無償であったことをうかがわせる記載が見られることや、その文面が「平素はモリタ製品のご拡販に格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。」というお礼の挨拶、すなわちモリタ企業グループの製造する商品を平素販売している者に対する礼状という体裁のものであることよりすると、この「修理技術研修会」は、モリタ企業グループがその製造に係る商品「シグノLX-1タイプHM スウィングモデル」等を販売するに当たり、万一、当該商品に故障が生じた場合でも迅速な修理サービスが行えるようにするための無料の実習講座としての性格を有するものとみるのが相当である。
してみると、この技術研修会は、他人のためにする労務又は便益であって、独立して商取引の対象となる商標法上の役務とは性質を異にするものといわなければならない。
さらに、本件商標と社会通念上同一と認められる「シグノ」の文字が乙第3号証に記載されているとしても、該文字は修理技術研修の対象となる商品の商標を表したにすぎないとみるのが相当であるから、これをもってしては、該「シグノ」の文字が本件指定役務について自他役務の出所識別標識としての機能を果たしたということはできない。
以上を総合すれば、この乙第3号証によっては、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、被請求人が本件商標をその指定役務について使用をしたと認めることができない。
(イ)乙第4号証ないし乙第6号証について
乙第4号証ないし乙第6号証は、いずれも一枚紙よりなる前記修理技術研修会のカリキュラム、申込者名簿、そして、「SIGNO LX-1TypeHM 修理マニュアル」というものであり、乙第4号証のカリキュラム中には、「シグノ LX1 HM スウィングモデル 機能説明 回路説明 組み立て 実習」との記載がされている。
しかしながら、当該乙第4号証における「シグノ LX1 HM スウィングモデル」は、それに続く「機能説明 回路説明 組み立て 実習」という記載よりすると、モリタ企業グループの製造・販売に係る商品の商標と見るのが相当であり、それが商品の商標としての域から脱して、本件指定役務についての商標、すなわち役務の出所表示標識として使用されたことをうかがわせる証拠は、見いだせない。
そして、この乙第4号証の「修理技術研修会」もまた、乙第3号証と同様の理由から、それ自体独立して商取引の対象となっている商標法上の役務であるとは直ちに認められず、また、乙第5号証には、本件商標が見当たらないだけでなく、これは上記「修理技術研修会」への参加を申し込んだ者の名簿の域を出ないものというべきであるので、乙第4号証及び乙第5号証の提出をもってしても、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、被請求人が本件商標をその指定役務について使用をした事実があったものと認めることはできない。
また、乙第6号証である「SIGNO LX-1TypeHM 修理マニュアル」は、本件商標と社会通念上同一と認められる「SIGNO」の文字がそれに記載されているとしても、乙第3号証と同様の理由から、該文字は、修理技術研修の対象となる商品の商標を表したにすぎないとみるのが相当であるので、これをもってしては、該「SIGNO」の文字が本件指定役務について自他役務の出所識別標識としての機能を果たしたということはできない。
さらに、乙第6号証は、モリタ企業グループの製造・販売に係る商品の修理マニュアルの域から脱しておらず、本件指定役務についての使用とはいえないばかりでなく、この乙第6号証が独立して商取引の対象となる商標法上の役務に使用された事実を認めるに足る証拠の提出はないから、この修理マニュアルの一枚紙の提出をもって、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、被請求人が本件商標をその指定役務について使用をした事実があったものと認めることはできない。
(3)ところで、被請求人は、利害が存しないことよりして、請求人による本件審判請求は権利の濫用である旨主張している。
しかしながら、平成8年改正法下の商標法第50条に基づく取消審判は、従来、本案審理(登録商標の使用の認否)の前段において利害関係の有無を争い、本案審理までの期間が遅延又は長期化していたことの弊害を軽減・解消する対策として、本案を重視し、本条の審判につき利害の有無を求めることなく、何人にも請求を認めることとしたものである。
それゆえ、本件審判請求をするにつき、請求人に被請求人を害する目的がないとの立証を求めることは、「何人」にも認めるとした本条の制度趣旨に沿わず、本件審判請求が濫用であるとの立証を被請求人において立証しない限り、請求人は、本件審判請求を行い得るから、この点に関する被請求人の主張は採用できない。
(4)したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その指定役務についての登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本件商標


審理終結日 2005-10-28 
結審通知日 2005-11-02 
審決日 2005-11-15 
出願番号 商願平4-271282 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (041)
最終処分 成立 
前審関与審査官 寺光 幸子 
特許庁審判長 大場 義則
特許庁審判官 末武 久佳
鈴木 新五
登録日 1996-08-30 
登録番号 商標登録第3183886号(T3183886) 
商標の称呼 シグノ 
代理人 村田 幸雄 
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