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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) 034
管理番号 1127840 
異議申立番号 異議1998-91925 
総通号数 73 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2006-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-10-05 
確定日 2005-11-14 
異議申立件数
事件の表示 登録第4155178号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4155178号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第4155178号商標(以下「本件商標」という。)は、「PERVALENTINO」の文字を書してなり、平成6年3月24日登録出願、第34類「喫煙用具(貴金属製のものを除く。),マッチ」を指定商品として、同10年6月12日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由(要旨)
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、要旨次のよう述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第61号証(枝番号を含む。枝番号をまとめて引用するときは枝番号を省略する。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第8号について
イタリアの服飾デザイナー「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)の氏名は、単に「ヴァレンティノ」(VALENTINO)と略称されており、この略称も本件商標の登録出願の日前より著名なものとなっているところである。
すなわち、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノガラヴァーニ)は、1932年イタリア国ボグヘラで誕生、17才の時パリに行き、パリ洋裁学院でデザインの勉強を開始し、その後フランスの有名なデザイナー「ジーン・デシス、ギ・ラ・ロシュ」の助手として働き、1959年ローマで自分のファッションハウスを開設した。1967年にはデザイナーとして最も栄誉ある賞といわれる「ファッションオスカー(Fashion Oscar)」を受賞し、ライフ誌、ニューヨークタイムズ誌、ニューズウィーク誌など著名な新聞、雑誌に同氏の作品が掲載された。これ以来同氏は、イタリア・ファッションの第1人者としての地位を確立し、フランスのサンローランなどと並んで世界三大デザイナーと呼ばれ国際的なトップデザイナーとして知られている。
「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)のデザイン活動は、婦人用、紳士用衣服を中心にネクタイ、シャツ、ハンカチーフ、マフラー、ショール、ブラウスなどの衣料用小物、バンド、ベルト、ネックレス、ペンダントなどの装身具、バッグ、さいふ、名刺入れその他のかばん類、その他サングラス、傘、スリッパなどの小物からインテリア装飾にも及んでいる。
我が国においても、ヴァレンティノ ガラヴァーニの名前は、1967年(昭和42年)のファッションオスカー受賞以来知られるようになり、その作品は「Vogue(ヴォーグ)」誌などにより継続的に日本国内にも紹介されている。昭和49年には、三井物産株式会社の出資により同氏の日本及び極東地区総代理店として株式会社ヴァレンティノヴティックジャパンが設立され、ヴァレンティノ製品を輸入、販売するに至り、同氏の作品は我が国のファッション雑誌にも数多く掲載されるようになり、同氏は我が国においても著名なデザイナーとして一層注目されるに至っている。
以上のとおり、ヴァレンティノ・ガラヴァーニは、世界のトップデザイナーとして本件商標が登録出願された当時には、既に我が国においても著名であった。
ヴァレンティノ・ガラヴァーニの名前は、「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンティノ・ガラヴァニ」とフルネームで表示され、このフルネームをもって紹介されることが多いが、同時に新聞、雑誌の記事や見出し中には、単に「VALENTINO」「ヴァレンティノ」と略称されてとりあげられたことの多いことは甲第7号証及び甲第8号証をはじめとして、甲第13号証の2、甲第15号証の2及び同の3、甲第16号証の2、甲第22号証の2、甲第25号証の3、甲第30号証の2、甲第33号証の2、甲第36号証の2、甲第46号証の2、同の3、同の5、甲第48号証(報知新聞)、甲第55号証の2及び同の4によっても明らかである。
しかるところ、本件商標は、その構成中の「VALENTINO」の文字が「ヴァレンティノ」と称呼されることは明らかであるから、本件商標は「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァニ)氏の氏名の著名な略称を含む商標であり、その者(他人)の承諾を得ずに登録出願されていることは明らかである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号に違反してされたものである。
2 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、「VALENTINO GARAVANI」の文字よりなり、第27類「たはこ、喫煙具、マッチ」を指定商品とする登録第1402916号商標(以下「引用A商標」という。)と、「ヴァレンティノ」の称呼を共通にする類似の商標であり、また、本件商標の指定商品は引用A商標の指定商品と抵触するものである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものである。
3 商標法第4条第1項第15号について
申立人は、引用A商標の指定商品以外の商品についても、多数の登録商標を使用しているところであって、例えば、「VALENTINO」又は「VALENTINO GARAVANI」の文字よりなる登録第852071号商標、登録第1415314号商標、登録第972813号商標、登録第1793465号商標及び登録第1786820号商標(甲第3号証ないし甲第6号証)(以下、まとめて「引用BないしF商標」といい、引用A商標と一括していうときは「各引用商標」という。)を使用している。
そして、各引用商標は、婦人服、紳士服、ネクタイ等の被服、バンド、バッグ類、靴、ライター等に使用されていることは明らかであり、しかも、各引用商標も本件商標の登録出願の日前より全世界に著名なものとなっているものである(甲第9号証ないし甲第61号証)。
本件商標は、引用A商標と同一の称呼を生ずる引用BないしF商標と称呼上類似する商標であり、また、本件商標の指定商品と各引用商標が使用されている商品はいずれも服飾品ともいえる密接な関係にある商品である。
してみれば、本件商標は、これを商標権者がその指定商品について使用した場合、その商品があたかも申立人の製造、販売等に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生じさせるおそれのあるものである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものである。

第3 取消理由の通知(要旨)
本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定に基づき取り消すべきものと認めるとして、当審において通知した取消理由の要旨は、以下のとおりである。
オランダ国在の「バレンチノ グローブ ベスローテン フェンノートシャップ」(以下「バレンチノ社」という。)は、登録第852071号商標、登録第1415314号商標、登録第972813号商標及び登録第1793465号商標に係る「VALENTINO」及び「VALENTINO GARAVANI」の商標を使用し、本件商標登録出願の時前はもとより登録査定時において、これらの商標は、ファッション関連業界を含め我が国において、取引者、需要者の間に広く認識され、かつ、著名になっていたものと認められる。
そして、本件商標は、全体として特定の語意を有するものとして親しまれたものとは認め難いもので、その構成文字は「によって」の意味を有する英語の「per」を「VALENTINO」の文字に冠し「PERVALENTINO」と表示したものとして把握、認識され、その構成中にファッション業界において著名な「VALENTINO」の文字を有してなるものであるから、本件商標をファッションに密接な関係を有するその指定商品について使用した場合、これに接する取引者、需要者は、「バレンチノ社」又は同社の関連会社の業務に係るものであるかの如く、その商品の出所について誤認、混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。

第4 商標権者の意見(要旨)
商標権者は、取消理由通知に対し、要旨以下のように意見を述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第7号証(甲号証として表示されていたが、乙号証とした。)を提出した。
1 本件商標の一連不可分性
「PER」を語頭にする語は、多数存在し、それらの言葉の一部を勝手に分離したら、言葉にならないものであり、「PER」が「、、によって」の意味を有するということと、「VALENTINO」とどのような関係があるのか理解できない。本件商標の構成は一連不可分であるとの判断が妥当なものである。
「VALENTINO」(バレンティノ)が、それなりに著名であることについては異議を唱えないが、「VALENTINO」という名前はイタリアにおいてはありふれた名前ということができる。
イタリアの都市ローマの電話帳だけ見ても「VALENTINO Adriana」「VALENTINO Antonio」「VALENTINO Cennaro」等々多数存在している。
日本における例を揚示すると、「三郎」という著名な商標があったとして、それに「栄」を加えた「栄三郎」商標が、「三郎」を含む商標であるとはいわないものである。「一郎」と「正一郎」、「次郎」と「金次郎」、「五郎」と「菊五郎」等々、後半部に同じ言葉が含まれていたとしても、それをもって語頭の「正」、「金」、「菊」を捨象し、「著名な略称を含む」商標とはいわないものである。
上記例や本件商標などはすべて「同書、同大、同間隔」の構成からなるものであり、一般取引者、需要者はそれぞれの語を一連不可分な構成であると認識し、例えば「一郎」と「正一郎」とは別人であると、十分区別できるというのが妥当である。
本件商標は、「PERVALENTINO」全体を同書、同大、同間隔に表記したものであるから、たとえ「VALENTINO」、「VALENTINO GARAVANI」いくつかの商品に使用されていて、有名であったとしても、本件商標はそれらの商標を含むものではないとの判断が妥当といえる。
2 登録例
本件商標と構成を一にする商標が、登録異議申立て後、異議申立の理由がないとの決定を受けて登録された事例として、登録第2716673号商標、登録第3370950号商標、登録第4123193号商標及び登録第2679473号商標があり、また登録第4111370号商標及び登録第4238189号商標等は商標法第4条第1項第15号の該当性を問疑されることなく登録になったものである。
3 本件商標と同様な登録例
「VALENTINO」(バレンティノ)は、人の名前としてはありふれたもので、類を異にする登録例として、登録第2682253号商標、登録第2623355号商標及び登録第2659649号商標がある。
4 本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するか否かの対象は、「VALENTINO GARAVANI/ヴァレンティノ ガラヴァーニ」と「PERVALENTINO/パーヴァレンティノ」であり、両商標の構成語音数の相違とか、誤認混同の判断の重要な位置を占める語頭音部分の相違、一連不可分な本件商標に対し、前後2文節からなる対象商標との相違は、一般取引者、需要者にとって明確に区別することのできる相違であるから、本件商標と各引用商標とは混同を生ずるといえるものではない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。

第5 当審の判断
1 甲各号証及び取消理由(前記第3)を総合すると、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)は、世界的に著名な服飾デザイナーであり、我が国においても、単に「VALENTINO」、「ヴァレンティノ」と略称されて著名となっていた。そして、同デザイナーのデザインに係り、申立人の取扱いに係る商品である「婦人服、紳士服、アクセサリー、バッグ、香水」等に表示される「VALENTINO GARAVANI」、「VALENTINO」、あるいはその片仮名表記である「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」、「ヴァレンティノ」は、本件商標の登録出願の日前より、我が国のファッション関連商品の需要者の間に広く認識されていたものであり、その著名性は、本件商標の登録査定時(平成10年(1998年)2月27日)に至るまで継続していたものであると認めることができる。
そうすると、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)のデザインに係り、申立人の取扱いに係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されている「VALENTINO」の文字を含む本件商標は、これをその指定商品について使用するときは、その需要者をして、該商品があたかも「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)のデザインに係る商品であるかのように、若しくは申立人、又はこれらと何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものとみるのが相当である。
2 商標権者の主張について
商標権者は、概略以下のよう主張している。
(1)本件商標は一連不可分である。
(2)「VALENTINO」(バレンティノ)が、それなりに著名であることについては異議を唱えないが、イタリアにおいてはありふれた名前である。
(3)日本における例を揚示すると、「三郎」という著名な商標があったとして、それに「栄」を加えた「栄三郎」商標が、「三郎」を含む商標であるとはいわないものであり、他に「一郎」と「正一郎」等、語頭の「正」等を捨象し、「著名な略称を含む」商標とはいわないものである。
(4)登録第2716673号商標他のように、本件商標と構成を一にする商標が、登録異議申立て後、異議申立の理由がないとの決定を受けて登録された事例、及び商標法第4条第1項第15号の該当性を問疑されることなく登録になったものが存在する。
(5)登録第2682253号商標他のように、「VALENTINO」(バレンティノ)は、人の名前としてはありふれたもので、類を異にする登録例が存在する。
(6)本件商標と各引用商標とは、構成語音数の相違とか、誤認混同の判断の重要な位置を占める語頭音部分の相違、一連不可分な本件商標に対し、前後2文節からなる対象商標との相違は一般取引者、需要者にとって明確に区別することのできる相違であるから、混同を生ずるといえるものではない。
商標権者は、以上(1)ないし(6)のように主張している。
しかしながら、前記1の認定のとおり、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)は、世界のトップデザイナーとして、本件商標の登録出願時には、既に我が国のファッション関連の業界にとどまらず、一般の消費者の間にも広く認識されていたということができ、そのデザインに係る商品群に使用される「VALENTINO」、「ヴァレンティノ」の表示も、紳士服、婦人服、ベルト、バッグ、サングラス、装身具等を含めたファッション関連商品の需要者の間に広く認識されていたというべきである。
また、本件商標は、前記したとおり、「PERVALENTINO」の文字を同書、同大、同間隔に書してなるものであるとしても、全体として特定の氏名、熟語を表すものとして一般の取引者、需要者に良く知られているというような実情がなく、かつ「VALENTINO」(バレンティノ)が、イタリアにおいてはありふれた氏姓ないし名であるとしても、日本においてはありふれた氏姓ないし名であるとは認め難く、加えて本件商標がファッション関連商品といえる「パイプ」等を包含している「喫煙具」を指定商品としており、取引者、需要者を共通にする場合が少なくないという関係において出所の混同のおそれがないことが明らかでない。
さらに、本件商標「PERVALENTINO」は、12文字と多めの字数で構成され、また、これより生ずる「パーヴァレンティノ」又は「ペルヴァレンティノ」の称呼もやや冗長な7音で構成されており常に一気一連に称呼しなければならない格別な事由も見当たらない。
さらにまた、本件商標と構成を一にする商標の登録事例及び「VALENTINO」を含む登録商標が複数存在している事実は認められるとしても、それらがいわゆる除斥期間を経過している登録商標であるか否か等の事情、また、申立人の「VALENTINO」、「ヴァレンティノ」ブランドとの関係で混同を惹起させるかものかどうかは、両者の指定商品・役務との関係等個別、具体的に決せられるべきであって、本件における混同可能性を否定する根拠とするには適切でない。
以上を総合すると、本件商標は、これに接する需要者はその構成中の著名な「VALENTINO」の文字部分に強く印象づけられるというのが相当であって、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標といわざるを得ず、上記に関する商標権者の主張は、いずれも採用できない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものであるから、商標法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2005-09-27 
出願番号 商願平6-28035 
審決分類 T 1 651・ 271- Z (034)
最終処分 取消  
前審関与審査官 田中 亨子 
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 三澤 惠美子
中村 謙三
登録日 1998-06-12 
登録番号 商標登録第4155178号(T4155178) 
権利者 ペレバレンチノジャパン株式会社
商標の称呼 パーバレンチノ、ペルバレンチノ 
代理人 末野 徳郎 
代理人 杉村 興作 

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