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審判番号(事件番号) データベース 権利
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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Z18
管理番号 1124398 
審判番号 不服2002-12099 
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-07-01 
確定日 2005-09-13 
事件の表示 商願2000-117688拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、第18類「ハンドバッグ」を指定商品とし、平成12年10月30日に立体商標として登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「本願商標は、全体として、その指定商品であるハンドバッグの一形状を表示した図形を描いたものであり、同種の商品が採用し得る立体的形状の範囲を超えているものとは認識し得ない形状からなるものと認められるから、このようなものは、単に商品の形状を表したにすぎず、立体商標として識別力を有するものとは認めることができない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審において通知した審尋
当審において、本願について改めて証拠調べを行った結果、本願商標をなお、商標法第3条第1項第3号に該当すべきものとする新たな証拠を発見したので、商標法第56条において準用する特許法第150条の規定により、請求人に対し、期間を指定して意見を述べる機会を与えて通知した審尋書の内容は以下のとおりである。

本件について、すでに提出された各証拠を総合勘案するに、未だ、本願商標が指定商品に使用された結果、需要者間に請求人の業務に係る商品であることを認識させるに至っているものとはいい得ないところである。そして、請求人(出願人)は、審判請求の理由(平成14年10月7日付手続補正書による補正を含む。)において、「本願商標は、商標法第3条第2項の要件を十分に満たすものであることをより詳しく証する予定である。」旨述べるに止まり、その後、相当期間経過したが現在に至るも何ら提出していない。よって、この点について釈明されたい。
ところで、商品等の立体的形状は、本来、その機能を効果的に発揮させる、あるいは優れた美感を看者に与えるとの目的で選択されるものであって、商品の出所を表示し、自他商品を識別する標識として選択されるものではなく、これに接する需要者も、そのように理解し、商品の出所を表示するために選択されたものであるとは理解しないのが一般であるということができるから、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合を除き、基本的に自他商品の識別標識とはならないと解すべきである。
そして、本願指定商品「ハンドバッグ」を取り扱う業界においては、製造、販売に係る商品に、当該製造、販売者に係る平面商標(以下、「販売者商標」という。)を商品タグに表示して付したり、商品の地模様に販売者商標を用いたり、その商品に使用される金具等に販売者商標を直接表示又は販売者商標を模した形状そのものを使用したりして、商品の出所を表示している実情がある。また、特定ブランドの商品のみを販売する専門店において取り引きされている実情がある。
よって、請求人が新たに証拠を提出する際には、本願商標である立体的形状のみによって、指定商品に使用された結果、需要者間に請求人の業務に係る商品であることを認識させるに至っていることを証するものであることを考慮されたい。

4 審尋に対する請求人の回答
本件請求人エルメス・アンテルナショナル(以下、「エルメス」という。)が165年を超える歴史を誇るフランス屈指のファッション総合メーカーである。
エルメスには、他のブランドと異なるポリシーがある。第一には、製品に対する強いブランド力があるにもかかわらず、ブランドにのみ基づいてビジネスを拡大しようとかを考えていない。第二には、上記基本ポリシーの結果、ブランドを他人に貸与して行うライセンスビジネス等に手を染めたことがない。第三には、自らの製品の製品としての完成度・デザインそのものを誇っておりますので、これに“ブランド(文字商標)”を麗々しく飾って販売するということをほとんどしない。勿論“HERMES”の表示は、金具に小さく刻印されたり、バッグであれば内側のファスナー部分等に小さく刻まれたりしているが、エルメスの製品には、例えば“HERMES”の文字や世界的に知られた“馬車マーク(二輪馬車の馬の前に御者が立っている図形)”をバッグ等の表側に大きく表示したり、このような“マーク”を地模様とし重ねて表示したり、特徴的なタグが付されていたりという表示方法は基本的に取られていない。
エルメスは、“文字商標”“平面図形商標”の人気によって商品を他と区別化しようとするのではなく、あくまで商品(本件関連ではバッグ)の優れた製品としての完成度、デザインの優秀さによって、購入して貰いたいというポリシーをはっきり表明している。
以上は、ブランドとしての商号商標、商品商標を大事にしないという意味ではなく、製品の製造及び製品そのものとして販売することに関しての出願人の有名な基本ポリシーについてご説明しているものである。
このように、出願人は、職人として一つ一つの創作・製造した商品に愛着を持ち、新たな創作が完了して製品化されたとき、一つ一つに洗礼名(クリスチャンネーム)と称する“名前”を与えております。これが、後に“商品商標”に発展する“名前”である。
エルメスの各商品について、単に名前だけが宣伝されたのではなく、最初から具体的な製品の形態と名前が一体となって顧客の意識に染みとおっていったという事情がある。当業者・需用者(顧客を含む)は、製品の形態自体をはっきり認識しその形態をもつ商品の“名前”として商品商標を用いており、商品を特定し識別する。そして、当業者・需用者は当該製品の形態・デザインそのものをメルクマールとして商品を購入する。その過程で、勿論その製品の“名前”(商品商標)は当然に用いられるが、その製品が、商品商標や商号商標“エルメス”自体が、“ブランド”として顧客の取捨選択に影響を与えるというファクターは極めて少ないのは事実である。しかし、エルメスの製造した商品特に『バッグ』は、正にその“形態”をもって、顧客の商品の取捨選択に多大な影響を及ぼす状態となっている。
本願商標は、1914年から1919年の第一次世界大戦時、当時のエルメス社副社長が軍属としてカナダに革製品の買い付けに行って“ファスナー”と出会い、これを自社の革製品に用いることを思いついた。以後エルメスの商品の大きな特徴と認識されることとなった。
本願商標によって特定される形態は『世界で初めてファスナーを取り付けた(開口部をファスナーで開け閉めするようにした)バッグ』として知られるバッグの形態を示すものなのです。そして、それは1920年代から2004年の今まで80年余、世界中で販売されてきたバッグの形態である。
エルメスは、本願商標に係る商品について80年余の間、そのデザインを変えておらず、“他の何にも比べようのないデザイン”が他製品との差異を際立たせ、区別化したのであり、当業者・需用者は当該デザインを認識して取引・購入してきたのであるから、正に自他商品識別機能を発揮したものと解するのが相当である。
本願商標を構成する立体商標(バッグの形態)の名称は、上述の通り『BOLIDE/ボリード』であるが、従前は『BUGATTI/ブガッティ』と呼ばれていた。イタリア自動車メーカーのブガッティ社の社長(1920年代)のオーダーで作られた(旅行用バッグを意図されていたと伝え聞く)のがこのバッグであり、以来その最初の依頼者の名を冠した名称が商品商標として用いられてきた。ところが、1993年頃になって、ブガッティ社は突然自分がバッグを製造し始め、これをオリジナルの“ブガッティ”と称するようになり、そこで、エルメスは、1995年に70年近く用いてきたバッグの商品商標を『BOLIDE/ボリード』に変更した。その結果として、ブガッティ社のバッグなるものはいつのまにか市場から消え、現在も市場で残っているのはエルメスの『BOLIDE/ボリード』のみである。この件がはっきり示しているのは、ことエルメスの商品に限って、市場(当業者・需用者)は、個々の商品商標のみをメルクマールとして商品を取引・購入しているのではなく、エルメスの本願商標で示される商品の形態を認識し、ブランドネーム(商品商標)を変更したもかかわらず、現在もそのバッグそのものの受注・需要が絶えない訳である。商品形態、即ち本願商標を構成する立体商標としての商品形態についての認識、というものが前提とならなければ、以上の事象を論理的に説明することは極めて難しいといわざるを得ない。
請求人は、本願商標を構成する商品形態、立体商標が『BOLIDE/ボリード』の名称とともに市場において著名であるという事実を証明するために、第8号証から第17号証を提出する。
近年、ニセモノ商品が横行し、請求人の登録商標『ボリード/BOLIDE』そのものさえ用いて、劣悪な品質で形態だけを似せた商品を販売する業者が横行するようになった。請求人は、日・米・フランス・イタリア等、自己の重要な知的財産を守るための訴訟を継続し、また、各国で立体商標について出願をし、登録を得るのに成功してきているという実情がある。
本願商標を構成する立体的形状を『同種の商品が採用し得る形状』等の見解を示されるとするならば、既に、日本では製品の立体的形状に関する知的財産の侵害は容認されるらしい、との虚言が横行しつつあり、市場で長年十二分な自他商品識別機能を発揮する立体商標として認識・認容されてきた商品形態が、わが国の法制下では何らの保護も得られず、他人による不正競争行為を容認するなどという論は、到底認めることができない。
本件商標は、商品自体の形態に係るものではあるが、現に識別標識として十分な自他商品識別機能を発揮しているものでもあるから、本願商標が法第3条第2項の要件を十分に満たすことを証明するものである。

5 当審の判断
商品等の立体的形状は、本来、その機能を効果的に発揮させる、あるいは優れた美感を看者に与えるとの目的で選択されるものであって、商品の出所を表示し、自他商品を識別する標識として選択されるものではなく、これに接する需要者も、そのように理解し、商品の出所を表示するために選択されたものであるとは理解しないのが一般であるということができるから、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合を除き、基本的に自他商品の識別標識とはならないと解すべきであることは、当審において、請求人に対して通知した前記3の審尋のとおりである。
本願商標は、別掲のとおり、一見して本願指定商品である「ハンドバッグ」の立体形状よりなるものと看取されるものであることは明らかであるから、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状であるということはできない。
しかも、職権をもってハンドバッグの形状について調査するに、別掲2のとおり、本願商標に類似した形状のハンドバッグが、さまざまなブランドにより販売されている実情が認められる。
本願商標と別掲2のハンドバッグとは、子細に見れば、色彩及びそのデザインについて差異があるとしても、(1)横から見たハンドバッグの形状が台形状で、上部の両端が丸みを帯びていること、(2)側面から見た形状が頂点を鋭角とする二等辺三角形のような形状をしていること、(3)ハンドバッグの上端にファスナーを用いていること、(4)ハンドバッグの取手がその側面上部からのびていることにおいて共通する形状であるといい得るものである。
以上よりすれば、本願商標は、一般に普通に使用されているバッグの一形状をあらわしたにすぎないというのが相当である。
また、たとえ本願商標がその需要者に知られているものとしても、同種の形状のバッグが販売されている実情よりすれば、その形状のみによって直ちに請求人に係る商品であると識別されているとみることはできない。
したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとの原査定は妥当であって、取り消すことはできないものであり、かつ、同法第3条第2項の要件を満たすということもできない。
なお、請求人は、他社と異なる企業理念をもち、ブランドの名称(商品商標を含む)等を前面に出すことなく、市場に流通されており、また、本願商標のハンドバッグが世界で初めてファスナーを取り付けたものである旨主張するが、請求人の企業理念等及び本願商標の創作の経緯等の事実は、前記判断を左右するものでないことは明らかである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別 掲
1 本願商標
(図1/3)


(図2/3)


(図3/3)



2 取引の実情
(1)「世界の一流品大図鑑’98」(講談社1998年5月30日発行)
a)「LANVIN」の見出しのもと(53頁)


b)「ウライ株式会社」の広告中(55頁)


c)「サンゼ株式会社」の広告中(59頁)


d)「BARANTANI」の見出しのもと(65頁)


(2)「世界の一流品大図鑑2004年版」(講談社2004年4月22日発行)
e)「ローベルカツタ株式会社」の広告中(80頁)

※なお、色彩については、表記の雑誌を参照されたい。


審理終結日 2005-04-04 
結審通知日 2005-04-11 
審決日 2005-04-25 
出願番号 商願2000-117688(T2000-117688) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (Z18)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 斎 
特許庁審判長 小川 有三
特許庁審判官 矢代 達雄
早川 文宏
代理人 青木 博通 
代理人 中田 和博 
代理人 足立 泉 
代理人 柳生 征男 

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