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審決分類 審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y30
管理番号 1123243 
審判番号 無効2003-35511 
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-10-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-12-08 
確定日 2005-09-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第4670926号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4670926号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4670926商標(以下「本件商標」という。)は、「ずぼら焼」の文字を標準文字により横書きしてなり、平成14年5月24日に登録出願、第30類「焼饅頭,その他の焼菓子,焼餅菓子,焼餅」を指定商品として、同15年3月26日に登録査定がされ、同年5月16日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
本件商標の登録無効の理由に引用する登録第608546号商標(以下「引用商標」という。)は、「ずぼら焼」の文字を縦書きしてなり、昭和35年10月27日に登録出願、第30類「焼饅頭、焼餅及び他類に属しない焼菓子」を指定商品として、同38年4月9日に設定登録、その後、同48年12月25日、同58年5月20日及び平成5年10月28日の3回にわたり商標権存続期間の更新登録がされたが、平成15年4月9日に商標権の存続期間満了により消滅し、その抹消の登録が同15年12月10日にされているものである。

第3 請求人の主張(要旨)
請求人である浜辺敏子及び堀田徹(両者をまとめていうときは、以下「請求人ら」という。)は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第9号証及び参考文書を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、商標権が消滅した日から1年を経過していない他人の商標又はこれに類似する商標であって、その商標権に係る指定商品又はこれらに類似する商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第13号に該当し、同法第46条第1項第1号により、無効とされるべきものである。
(1)商標及び商品の類似について
本件商標は、引用商標と同一又は類似する商標であることは、それぞれの構成より明らかである。
本件商標及び引用商標の指定商品は、それぞれ前記のとおりであるので、一部商品については同一、その他の商品については類似である。
(2)引用商標の商標権について
引用商標は、平成15年4月9日に商標権が消滅しているが、その消滅日からまだ1年を経過していない(本件審判の請求日:平成15年12月8日)。
(3)引用商標の商標権者について
(ア)引用商標の商標権者は、「海南市名高51番地 堀田弘」、「海南市日方210番地 浜辺一実」及び「和歌山市加納318番地の1 堀田徹」の3人であり、本件商標の商標権者である「和歌山県海南市名高555番地の9 堀田弘」とは異なる。つまり、引用商標の商標権者の1人である「堀田弘」と本件商標の商標権者の「堀田弘」なる人物が同一人としても、引用商標は、商標法第4条第1項第13号にいう他人の商標である。
(イ)引用商標の当初の商標権者であった堀田繁一は、昭和34年ころ焼饅頭などの焼菓子の製造、販売の事業を開始したが、その際「ずぼら焼」なる商標を、その取扱い商品である焼菓子に付した。その後、堀田繁一の存命中はもとより、堀田繁一の店舗にて事業を引き継いだ浜辺一実(堀田繁一の長女であり、請求人の1人である浜辺(旧姓堀田)敏子の夫、既に死亡)、さらには、堀田繁一の事業と同じような内容の事業をその後始めた請求人の1人である堀田徹(堀田繁一の次男であり、営業場所は和歌山市加納318番地の1である。)が引用商標を使用し、現在に至っている(甲第5号証ないし甲第9号証)。
その後、昭和58年5月10日、引用商標の商標権が堀田弘(被請求人)、浜辺一実、堀田徹の3人に譲渡され、昭和58年12月19日に商標登録原簿に移転登録がされた。
(ウ)引用商標の商標権が3人に譲渡された後、3回目の存続期間の更新手続が行われたが、4回目の同更新手続については、請求人らは更新手続希望を強く持っていたが、3人の合意に至らず同更新手続は結局行われなかった。そういう中にあって、被請求人は、自己の名義で本件商標の登録出願を、引用商標の商標権存続期間満了日(平成15年4月9日)前の平成14年5月24日にしたのである。そして、本件商標の登録査定時(平成15年3月26日)には、引用商標は未だ消滅していなかった。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標は、本来拒絶されるべきところ誤って登録されたものである。

第4 当審において通知した登録無効の理由(要旨)
当審において、平成16年9月14日付けで被請求人に通知した本件商標の登録無効通知(以下「当審無効理由」という。)は、次のとおりである。
1 登録無効の理由
本件商標は、その登録査定時において、有効に存続していた他人の商標権である引用商標(登録第608546号商標)と同一又は類似の商標であって、その指定商品も同一又は類似するにもかかわらず、登録されたものであるから、その登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。
2 本件商標と引用商標の類否について
本件商標は、「ずぼら焼」の文字を横書きしてなるものであるのに対し、引用商標は、「ずぼら焼」の文字を縦書きしてなるものであるから、両商標は、「ズボラヤキ」の称呼を共通にするものであり、同一の文字構成よりなるものであるところからすれば、外観及び観念においても類似するものというべきである。
したがって、本件商標と引用商標は、称呼、外観及び観念のいずれの点においても類似する商標というべきであって、これらの指定商品は、同一又は類似の商品である。

第5 被請求人の意見(要旨)
1 当審無効理由の手続違反等について
(1)当審無効理由として、突如、「本件商標は、その登録査定時において有効に存続していた他人の引用商標と商標及び商品において類似するものであるから、その登録は無効である」とした。
しかし、当審無効理由は、請求人らの請求理由と異なる独自の理由であり、審判官が何らの手続きなく独自の理由を付して、被請求人に不利な判断をするのは認め得ず、判断対象が特許庁の行為で被請求人でないとしても、少なくとも被請求人の意見を聴取すべきは公平な手続であり、当審無効理由の騙し討ち的判断は手続的に違法で許されない。
当審無効理由において、請求人らの請求理由と異なる理由を付したのは、請求人らの請求理由では、本件商標の登録を無効とできないため、請求理由にない「登録査定時期」を独自に持ち出したものである。
(2)当審無効理由によれば、「登録査定時期」は、平成15年3月26日であるとするが、該平成15年3月26日は、単に登録査定を公表するために内部的な予備査定をした日であって、法律上にいう「登録査定時」とは外部的に登録査定を公表した日、すなわち商標登録をした平成15年5月16日である。特許庁内部手続の「登録査定時」は、被請求人に公表されず、被請求人が関与するものではない故、請求人らも外部に不明な「登録査定時」の問題とせずに、登録査定が公表された日を基準とした、商標の他人性の問題としたのである。
したがって、当審無効理由は、登録査定日についての法律解釈を誤ったものである。
仮に平成15年3月26日の登録査定日が事実で、違法な登録査定とすれば、特許庁は未だ有効な登録査定をせず、被請求人に対する登録査定義務を放置していることになり、有効な登録査定をすべき義務が存し、早急に被請求人の求める有効な登録査定をし、有効な商標登録をすべきものとなる。また、当審無効理由の「登録査定」無効判断を認めても、単に被請求人に対する特許庁の有効な登録査定義務を確認するにとどまるもので、今後、特許庁は被請求人に対して、引き続き有効な登録査定をし、再度有効な商標登録をすることになるにすぎず、本件商標が終局的に無効となるものではない。
また、特許庁の「登録査定」手続きが時期的に違法で無効とするならば、当審無効理由により、被請求人の行為ではなく、特許庁の行為に対する判断をしたこととなり、判断対象者が被請求人でなく、特許庁とするべきもので、判断対象となる当事者が法律上相当でなく、被請求人に対する判断としては判断自体が不相当であり、認め得ない。
2 商標の他人性
(1)当審無効理由は、被請求人にとって引用商標は他人の商標と判断するが、もともと引用商標は、請求人らの主張のとおり、被請求人の実父堀田繁一が使用を始め、その後、堀田弘(被請求人)、堀田徹及び亡浜辺一実が権利譲渡を受け、共有して使用していたもので、被請求人にとっては他人の商標ではなく自己の商標である。
(2)請求人らは、引用商標について更新手続をせず、被請求人までが放置すれば期間満了により、その商標権が消滅するので、被請求人が使用を継続するとして、単独で本件商標の登録出願手続きをしたものである。
他の共有者が更新手続をせずとも、被申請人までが同調して権利を消滅させる必要は無く、権利者として自己の権利存続を図るのは相当である。
被請求人が引用商標の共有者であるのは請求人らも認めるところであり、被請求人は、引用商標を自己の商標として本件商標の登録出願をしたものである。
当審無効理由において、本件商標は、その登録査定時において、有効に存続していた他人の引用商標と商標及び商品において類似するとし、登録査定は無効と判断するが、登録査定時においても本件商標と引用商標の間には他人性なく、引用商標もまた被請求人の商標である。すなわち、被請求人の共有持分は引用商標の商標権全体に及んでいるのであり、部分的な問題ではなく、単に他の共有者の持分が重畳しているのみである。引用商標の共有持分を有する被請求人について、引用商標が他人の商標とするのは法律の解釈を誤るものである。
請求人ら共有者が引用商標の更新手続をせず(争いのない事実)、権利を消滅させるのは自由であるが、権利の存続を望む被請求人が他の共有者の同意がなければ何らの手続もできず、期間満了により権利を消滅させる他ないとの解釈は認め得ない。引用商標が従来、被請求人ら3人の共有であっても、他の2人が権利を行使せず放置すれば、権利存続を望む被請求人が自己の権利を行使し得るのは権利の存続性からすれば、理の当然である。
被請求人は、引用商標の権利者として、本件商標の登録出願を申請している者であり、当審無効理由のいう権利の他人性の判断は理由がなく、認め得ない。

第6 当審の判断
1 本件商標は、前記第4(当審無効理由)で認定したとおり、引用商標と商標において類似するものであって、かつ、その指定商品も引用商標の指定商品と同一又は類似するものであるから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものといわなければならない。
2 被請求人の意見について
(1)被請求人は、当審無効理由は請求の理由と異なる独自の理由であり、騙し討ち的なものであるから、手続的に違法性がある旨主張する。
商標法第56条第1項で準用する特許法第153条は、第1項において、「審判においては、当事者又は参加人が申し立てない理由についても、審理することができる。」とし、同第2項において、「審判長は、前項の規定により当事者又は参加人が申し立てない理由について審理したときは、その審理の結果を当事者及び参加人に通知し、相当の期間を指定して、意見を申し立てる機会を与えなければならない。」と規定しているところ、審判請求の適否に関する事項は、審判官において職権により審理をしなければならないことは明らかである。そして、当事者等の申し立てない無効理由について審理した場合は、上記規定に基づき、当事者等に意見を申し立てる機会を与え、当事者等に対して、不意打ちを防止し、十分に意見を述べさせることにあると解される。
そうすると、本件審判において、前記第4のとおり、審判長は、被請求人に対し、請求人らが申し立てない理由についてした審理結果を通知し、相当の期間を指定して、意見を申し立てる機会を与えたものであり、被請求人は、当審無効理由に対し、前記第5のとおり、意見を述べているのであるから、その手続に何ら違法性は有しない。
(2)被請求人は、本件商標の登録査定日(平成15年3月26日)は、単に登録査定を公表するために内部的な予備査定をした日であって、法律上にいう「登録査定時」とは外部的に登録査定を公表した日、すなわち商標登録をした平成15年5月16日であるから、当審無効理由は、登録査定日についての法律解釈を誤ったものである旨主張し、さらに、仮に本件商標の登録査定が平成15年3月26日であり、これが違法な登録査定とすれば、特許庁は、被請求人に対し、未だ有効な登録査定をしておらず、当審無効理由の「登録査定」無効判断を認めても、単に被請求人に対する特許庁の有効な登録査定義務を確認するにとどまるもので、今後、特許庁は被請求人に対して、引き続き有効な登録査定をすることになるにすぎず、本件商標が終局的に無効となるものではないし、また、特許庁の「登録査定」手続きが時期的に違法で無効とするならば、当審無効理由により、被請求人の行為ではなく、特許庁の行為に対する判断をしたことになるから、判断対象となる当事者が法律上相当でない旨主張する。
しかし、商標法第4条第1項第11号の判断時期が査定時又は審決時であると解されることは、同条第3項が例外的規定を設けていることからも明らかである。そして、商標法施行規則第22条第5項において準用する特許法施行規則第35条によれば、査定には、商標登録出願番号、査定の結論及び理由等のほか、査定の年月日を記載しなければならないとされており、このことは本件商標の査定においても例外ではなく、したがって、被請求人は、本件商標の査定の記載から、その査定の年月日を容易に把握し得るとみるべきである。加えて、「査定日」と「設定の登録日」とが異なる意味を有することはいうまでもない。
一方、登録無効の審判制度の目的は、過誤による商標登録を存続させておくことは本来権利として存在することができないものに排他独占的な権利の行使を認める結果となるので妥当ではないという点にあると解される。
したがって、本件商標がその査定時において、商標法第4条第1項第11号に該当するにもかかわらず、これを登録したことは、その処分に誤りがあったというべきであるから、本件審判の請求によりその登録を無効にするということになるのである。
(3)被請求人は、同人は引用商標の商標権者の一人であるから、本件商標を登録出願することは正当の権利に基づくものであり、被請求人は引用商標の商標権者とは他人であるとする当審無効理由は認めることができない旨主張する。
しかしながら、商標登録原簿によれば、引用商標の商標権者は、当初「海南市船尾179番地 堀田繁一」であったが、昭和58年5月10日に商標権の譲渡により、「海南市名高51番地 堀田弘」、「海南市日方210番地 浜辺一実」及び「和歌山市加納318番地の1 堀田徹」に移転され、その登録が同年12月19日にされたものである。
これに対し、本件商標の商標権者は、「海南市名高555番地の9 堀田弘」である。
そして、引用商標の商標権者中の「堀田弘」と本件商標の商標権者が同一人であることは当事者間に争いがない。
そうすると、引用商標の商標権者の1人に被請求人が含まれていたとしても、両商標の権利の主体が異なることは明らかであるから、被請求人にとって引用商標は、商標法第4条第1項第11号でいう「他人」とみるべきであり、この点に関する被請求人の主張は、その根拠となる証拠を何ら示しておらず、自己に都合のよい独断の解釈に基づくものといわざるを得ない。
(4)したがって、被請求人の主張はいずれも理由がなく、他に被請求人の主張に理由があると客観的に認められる証拠の提出はない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものであるから、商標法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2004-11-08 
結審通知日 2004-11-10 
審決日 2004-11-24 
出願番号 商願2002-48127(T2002-48127) 
審決分類 T 1 11・ 26- Z (Y30)
最終処分 成立  
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 三澤 惠美子
茂木 静代
登録日 2003-05-16 
登録番号 商標登録第4670926号(T4670926) 
商標の称呼 ズボラヤキ、ズボラ 
代理人 瀬戸 康富 
代理人 滝本 智之 
代理人 滝本 智之 

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