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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Z25
審判 査定不服 商4条1項16号品質の誤認 登録しない Z25
管理番号 1123131 
審判番号 不服2002-21320 
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-11-01 
確定日 2005-08-26 
事件の表示 商願2001-53026拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「Titanium」の文字(標準文字による。)を書してなり、願書記載のとおりの商品を指定商品とし、平成13年6月12日に登録出願され、その後、指定商品については、原審における同14年6月3日付け手続補正書をもって、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物」と補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「本願商標は、『Titanium』の文字を書してなるものであるが、該文字は『チタン(灰色の堅い金属元素で、航空機材・耐食材料等として広く用いられ、その化合物は、媒染剤・染料・顔料等に利用される)。』等の意味を持つものであって、これを本願指定商品例えば『被服』に使用しても、『チタニウム(チタン)配合の被服』又は『チタニウム(チタン)配合素材を使用した被服』等の意味を表したものと容易に理解・認識させるものであるから、単に商品の品質を表示してなるものといわざるを得ない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審において通知した審尋
当審において、本願について改めて証拠調べを行った結果、本願商標をなお、商標法第3条第1項第3号に該当すべきものとする新たな証拠を発見したので、商標法第56条において準用する特許法第150条の規定により、請求人に対し、期間を指定して意見を述べる機会を与えて通知した審尋書の内容は以下のとおりである。

審判請求人は、請求の理由において、「本請求人は、本願商標を現実に使用しており、本願商標が商品の品質を表示するものとして認識されたことはない。本請求人は、かかる事実を立証するために現在資料を収集中であり、十分な資料ができ次第ただちに提出する。」旨述べているところ、その後、相当の期間が経過した現在に至るも、何らの状況も説明されていないから、この点について釈明されたい。
なお、当審において職権をもって調査したところ、「チタニウム」(Titanium)の語は、金属元素の一つを意味するものとして一般に「チタン」と省略されて親しまれているものと認められる。
そして、該「チタン」の文字が、本願指定商品、特に「被服,履物」との関係において、体内から出る熱を遮断したり、赤外線を吸収することにより保温性があり、また、蒸れを防ぐことにより保湿性のある素材の名称として使用されている実情については、例えば以下のインターネット上のホームページ情報或いは新聞記事情報からも確認し得るものであるから、この点についても併せて釈明されたい。
(1)「動きやすく暖かい、防寒ゴルフウェア ダンロップ『マックスフライ3Dチタン』の2000年〜2001年モデルを新発売」の見出しの下、「従来、冬場のゴルフでは多くのゴルファーが、動きづらくミスショットがでやすいという悩みを抱えていました。その原因は、1)着ぶくれにより動きづらい、2)寒さにより筋肉が動きにくい、の2点でした。『マックスフライ3Dチタン』は、これらの問題を解決するために、ストレッチ性の良い生地を体に合わせた3D構造で縫製し、さらに裏地に蓄熱効果のあるチタンを蒸着することで、薄手なのに暖かく、スムーズな動きを可能にしました。スイングを妨げること無く、ナイスショットが期待できる防寒ウェアです。」と記載している(http://www.dunlop.co.jp/newsrelease_105.htm)。
(2)「HANDS SELECT ハンズセレクト チタンサウナスーツ」の見出しの下、「◆チタンを配合した新機能素材で実現した高い保温性:チタン配合素材は、もともと海底作業の保温服として開発されたもの。この商品はその保温性をシェイプアップに活かしたいと開発された東洋クロスの 『ジオザイバーTi』を使用。サーモグラフテストでは『ジオザイバーTi』が太陽光120秒間の照射により、未加工生地に比べ約2℃蓄熱したことが実証されています。」と記載されている(http://www.tokyu-hands.co.jp/cgi-bin/select/sel.cgi?page=32)。
(3)「チタン入り温かく蒸れず、デサント(新製品)」の見出しの下、「ウエア内にチタンシートを挟み込んだ、温かくて蒸れないスノーウエア『チタンサーモ』。透湿・保温性に優れた不織布の裏面にチタンを加工した。人体が放つ赤外線をチタンが反射し、その熱を再び衣服内に封じ込めて温かさを生み出す仕組み。表面を樹脂コーティングするのではなく、チタン粒子で覆う技法のため透湿性を損なわず、蒸れにくい。」と記載している(日経流通 新聞 16頁 2000年11月14日)。
(4)「『かかとしっとりサンダル』開発 御所の坂本商店 チタン素材活用 =奈良」の見出しの下、「御所市東寺田の坂本商店(坂本隆好さん経営)で」、「乾燥する冬季にかかとのカサカサに悩む女性が多いことから研究を重ね、ウエットスーツなどに使われる新チタン合金コーティング・ラバー素材に着目。」布地、チタン、ゴムの三層(厚さ計三ミリ)からなり、0.0七ミリのチタン層が、体温を熱を保持する。この素材を、サンダルのかかと部分に応用、体温保持による発汗作用でかかとの湿度を維持できるという。同社はこのチタン素材を履物に応用するアイデアで特許を申請。新製品を『かかとしっとりサンダル』と名付けた。『履いて五分から十分で温かくなり、一週間ほどでかかとのカサカサがなくなる効果が出てきます』とPRしている。」と記載している(読売新聞大阪地方版 35頁 2002年11月29日)。

4 審尋に対する請求人の回答
請求人は、平成17年3月8日付け回答書をもって、当審が示した前記審尋に対し、要旨次のように意見、回答を述べ、反論している。

請求人は、1994年に商標「TITANIUM」の使用を開始し、日本では、1997年12月に使用をはじめ、現在までに世界61カ国において本商標が商品「ジャケット、スラックス、ショーツ、ティーシャツ、履物、アウターウェアー、スキーウェアー」に使用されている。その販売量は、2000年から2004年末までに世界各国合計で275億1千万円(1ドルを105円と換算して)、また、日本国内で3億7千8百万円に及んでいる。
また、この間の広告(テレビ広告を除く)は世界各国で10億円余り、また、テレビ広告は、15億円余りに及ぶ。
また、日本においても、主として市販の雑誌に広告をしている。当該5年間の広告費は、4500万円余りである。
また、その商標の登録も、15カ国、16商標登録に登る。
この事実は、本願商標が、出所表示機能を備えているから、使用されていること、また、何ら品質誤認を生じていないからこそ、請求人は、本願商標を使用し続けることが出来ている、という証明でもある。
このように長年にわたり、広く使用され、また、各国に商標登録されている事実からは、商標「TITANIUM」が出所表示機能を有することを証明していると言えるものですから、本願に対する拒絶の理由とするところには、この事実と齟齬が見られる。
その齟齬は、次に述べるとおり、当該拒絶の理論構成の誤りが原因である。
(1)当該商標「Titanium」は、金属元素の「チタン」を意味する。
(2)市場には、防寒用の素材に「チタン」を配合した商品があり、この素材を「チタン」と表現して、広告、販売している。
(3)「本願商標」をその指定商品について使用しても、単にその商品の素材である「チタン」を表記したにすぎないとみなされる。
(4)従って、本願商標は品質、原材料を表示する標章のみからなる商標である。
この理論構成中上記の(1)および(3)に誤りがある。
まず、「チタン」は、「Titanium/チタニウム」の略語ではなく、日本の教育の中に化学が取り入れられた当時の化学の中心があったヨーロッパ、特にドイツ語、フランス語の「Titan」、「Titane」の片カナ表現である。
「Titanium」は、「チタン」に相当する英単語であるが、我国では、明治時代科学の知識は明治以降、主としてヨーロッパ、特にドイツから輸入されている。従って、我国の化学では、ヨーロッパの影響による「チタン」として学ぶのが一般である。一般の工業、商業の分野に利用されるようになったのは比較的最近のことである。主として、宇宙開発のNASAの関連で開発されたものが、一般に取り入れられ、今では眼鏡フレーム、ゴルフクラブ等にまで使用されるところとなっている。
また、被服などの素材にも使用されている。この素材は、販売広告活動の中で、しばしば引用されているが、いずれも「チタン」として引用されているが、「チタニウム」として引用されている例はない。従って、需要者は、この素材を「チタン」として認識し、チタニウムと認識していることはない。
英語の「Titanium」の単語は、それ程使用頻度が多い単語ではなく、我国の国民が「Titanium」の意味内容を正確に認識していると認められない。
つぎに、市場において、商品の素材に「チタン」の語が用いられていることを検討する。各種広告から、我国国民は、「チタン」という新しい素材が当該商品に用いられていることは認識できても、これが英語の「Titanium」であると認識するに至るまで「Titanium/チタニウム」の意味を理解して商品を購入しているわけではない。
我国国民にとって、市場にある商品の素材としての「チタン」は、英単語の「Titanium」とは全く関連のない単語であるといわざるをえないのが実情である。
以上述べたように、本願の拒絶理由の理論構成(3)において、「Titanium」を市場にある商品の素材の「チタン」を同じに理解するとの認定は誤っている。この誤りが拒絶理由と請求人の本願商標の使用実績と齟齬を生じた原因である。
よって、本願の拒絶理由は請求人の使用実績に照らしても、成り立たないことは明らかである。

5 当審の判断
本願商標について、当審においてした証拠調べ結果に基づく前記3の審尋は妥当なものであって、その認定の不当性を述べる請求人の主張は以下の理由により、いずれも採用の限りでなく、さきの認定を覆すに足りない。
本願商標は、前記1のとおり、「Titanium」の文字を書してなるところ、該文字は、金属元素の一つである「チタニウム」を指称するものである(研究社 新英和大辞典 第6版 2002年3月発行)。
そして、「チタニウム」(Titanium)の語は、一般に「チタン」と省略されて親しまれている実情としては、以下のように書籍において記載が認められる。
(1)「チタン」の見出しのもと、「銀灰色の堅い金属元素。(中略)天然には化合物として地殻中に広く存在。純粋なものは強い耐食性を持ち、可塑性・加工性大で、航空機材・耐食材料・合金成分として広く用いる。その化合物は媒染剤および染料・顔料・発煙剤・ガラス製造などに利用。チタニウム。」と記載している(株式会社岩波書店 広辞苑第五版)。
(2)「チタニウム[titanium]」の見出しのもと「→チタン」と記載し、かつ、「チタン」の見出しのもと、「[化]金属元素の1つ。(中略)強度の大きなこと、耐食性の強いことから、用途が多い。」と記載している(株式会社三省堂 コンサイス外来語辞典第3版 1982年12月1日発行)。
(3)「チタニウム[titanium]」の見出しのもと「→チタン」と記載し、かつ、「チタン」の見出しのもと、「チタン族に属する遷移元素の一。(中略)軽くて強度があり、耐食性も強い。(中略)工業材料として重要。チタニウム。」と記載している(株式会社三省堂 大辞林 1993年12月25日発行)。
(4)「チタン」の見出しのもと、「軽くて強度の大きい金属元素。チタニウム(titanium)。」と記載している(自由国民社 現代用語の基礎知識2005 2005年1月1日発行)。
加えて、「チタン」の語が本願指定商品を取り扱う業界において、取引上普通に使用されている実情としては、前記3の審尋書で示すとおりである。
以上よりすれば、本願商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、その商品が「素材としてチタン(チタニウム)を使用した商品」であると認識し、商品の品質を表示したものと理解するにとどまるものであるから、本願商標は、結局、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものというのが相当である。
また、本願商標を前記に照応する商品以外の商品について使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものというべきである。
したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すべきでない。
なお、請求人は、我が国及び他国における使用の実績並びに他国における登録例をもって、本願商標が登録されるべきである旨主張するが、本願商標は、前記認定を相当とするものであるから、その主張は採用することができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2005-04-07 
結審通知日 2005-04-08 
審決日 2005-04-19 
出願番号 商願2001-53026(T2001-53026) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (Z25)
T 1 8・ 272- Z (Z25)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 千葉 麻里子小川 きみえ 
特許庁審判長 小川 有三
特許庁審判官 早川 文宏
矢代 達雄
商標の称呼 チタニウム、タイテイニアム 
代理人 関根 秀太 

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