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審決分類 審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない Y25
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y25
審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない Y25
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない Y25
管理番号 1123110 
審判番号 無効2003-35530 
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-10-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-12-24 
確定日 2005-08-24 
事件の表示 上記当事者間の登録第4672111号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4672111商標(以下、「本件商標」という。)は、「PICONE」の文字を横書きしてなり、平成14年3月29日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同15年5月16日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が引用する登録商標は、次の(1)ないし(7)のとおりである。
(1)登録第1096501号商標(以下、「引用商標1」という。)は、「PICON」の文字と「ピコン」の文字とを二段に横書きしてなり、昭和46年7月28日に登録出願、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品として、同49年11月14日に設定登録、その後、昭和59年11月26日及び平成7年4月27日の2回にわたり商標権存続期間の更新登録がされたものである。
(2)登録第4355120号商標(以下、「引用商標2」という。)は、「PICONE」の文字と「ピコン」の文字とを二段に横書きしてなり、平成7年9月22日に登録出願、第25類「被服(和服を除く),ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同12年1月28日に設定登録されたものである。
(3)登録第2072870号商標(以下、「引用商標3」という。)は、「EVAN-PICONE」の文字を横書きしてなり、昭和60年8月9日に登録出願、第22類「はき物(運動用特殊靴を除く)かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として、同63年8月29日に設定登録、その後、平成10年3月31日に商標権存続期間の更新登録がされたものである。
(4)登録第693332号商標(以下、「引用商標4」という。)は、「EVAN-PICONE」の文字を横書きしてなり、昭和39年3月13日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、同40年12月21日に設定登録、その後、同51年5月10日、同61年1月20日及び平成8年2月28日の3回にわたり商標権存続期間の更新登録がされたものである。
(5)登録第2160081号商標(以下、「引用商標5」という。)は、「エヴァン ピコン」の文字を横書きしてなり、昭和60年9月11日に登録出願、第22類「はき物(運動用特殊靴を除く)かさ、つえ、これ等の部品及び附属品」を指定商品として、平成元年8月31日に設定登録、その後、同11年5月25日に商標権存続期間の更新登録がされたものである。
(6)登録第2107469号商標(以下、「引用商標6」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、昭和60年8月9日に登録出願、第22類「はき物(運動用特殊靴を除く)かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として、平成元年1月23日に設定登録、その後、同10年11月4日に商標権存続期間の更新登録がされたものである。
(7)登録第2050604号商標(以下、「引用商標7」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、昭和60年8月9日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、同63年5月26日に設定登録、その後、平成10年1月6日に商標権存続期間の更新登録がされたものである。(以下、引用商標1ないし引用商標7を一括していう場合は「引用各商標」と総称する。)

第3 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効にする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第46号証(枝番を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)指定商品について
本件商標及び引用各商標の指定商品は、前記第1及び第2のとおりであるから、両者の指定商品は、同一又は類似のものである。
(2)外観について
本件商標は前記第1のとおり「PICONE」の文字よりなり、引用商標1及び引用商標2は、前記第2(1)及び(2)のとおり「PICON」、「ピコン」の文字を二段に横書きしたもの、「PICONE」、「ピコン」の文字を二段に横書きしたものであるところ、両者の欧文字部分に注目すると、本件商標と引用商標1との違いは、6文字目の「E」の文字の有無のみであり、本件商標と引用商標2には差異がない。
したがって、本件商標と引用商標1及び引用商標2は、外観上類似の商標である。
(3)称呼について
本件商標は、「ピコーン」あるいは「ピコン」の称呼を生じる。
これに対し、引用商標1及び引用商標2は、欧文字「PICON」及び「PICONE」の「ピコン」の下段に片仮名文字「ピコン」が配置されているから、「ピコン」あるいは「ピコーン」と称呼される。
引用商標3ないし引用商標7の文字部分は、「EVAN」若しくは「Evan」又は「エヴァン」と「PICONE」若しくは「Picone」又は「ピコン」の2語が結合したものであることが明らかであり、また、全体として特定の意味を有しないものであるので、常に一体不可分のものとして把握されるべき特段の事情は存せず、「EVAN」若しくは「Evan」又は「エヴァン」と「PICONE」若しくは「Picone」又は「ピコン」の部分に分離して観察され称呼され得るものである。
甲第9号証ないし甲第22号証の審決例においても、「-」を含む商標が分離して観察され、それぞれ類似と判断されており、このことからも前記主張が裏づけられている。
したがって、本件商標と引用各商標は、「ピコン」または「ピコーン」の称呼で類似するから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、無効とされるべきである。
2 商標法第4条第1項第10号について
(1)「EVAN-PICONE」商標(以下、「請求人標章」という。)は、アメリカ合衆国において1949年に創設されたEVAN-PICONE社のブランドとして使用され、請求人が現在の商標権者である。請求人標章は、婦人服業界における商品を指定商品として、各国において登録されている(甲第23号証)。日本においても多数の登録商標を有し(甲第24号証)、一番早いものは、1964年3月13日に登録出願され1965年12月21日に設定登録されている。
(2)本件商標の登録出願時及び現在においても、請求人標章は、日本の婦人服業界における需要者及び取引者の間において、請求人の商品(役務)を表示するものとして、広く認識されるものとなっている。甲第25号証ないし同第37号証は、その販売実績等である。
(3)婦人服等の服飾業界では、例えば、「LUIS VUITTON」(ルイヴィトン)を単に「VUITTON」(ヴィトン)、「HUGO BOSS」(ヒューゴボス)を単に「Boss」(ボス)、「Christian Dior」(クリスチャンディオール)を単に「Dior」(ディオール)等と需要者は認識し、称呼するから、周知・著名な請求人標章についても、これらと同様に単に「PICONE」と認識し「ピコン」と称呼されるものである。
したがって、本件商標は、請求人標章と同一の称呼を生じるものであり、本件商標に係る指定商品と請求人の婦人服産業に係る商品又は役務と類似の商品を含むものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当し、無効とされるべきである。
3 商標法第4条第1項第15号について
請求人標章は、日本国内及び外国において広く知られているから、請求人の商品又は役務並びにそれらと関連する商品又は役務に関して、広い範囲で保護されるべきものである。
本件商標を付した商品又は役務は、請求人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品又は役務であると誤認する可能性があるから、商品又は役務の出所について混同を生じるものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し、無効とされるべきである。
4 商標法第4条第1項第19号に関して
被請求人は、2002年3月29日に、「PICON」及び「PICON/CLUB」の商標登録出願を6件行っている(甲第38号証ないし同第43号証)。これらの出願は、被請求人によって実際に提供する商品又は役務に関連する区分を指定したものであるから、周知・著名な請求人標章のもつ出所表示機能を希釈化させることにより信用及び名声を毀損し、請求人に損害を与える蓋然性がある。
これらの事実からも、本件商標の出願における被請求人の不正の目的が窺えるものである。
したがって、本件商標は、請求人の商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている請求人標章と同一又は類似の商標であり、不正の目的をもって使用するものであるので、商標法第4条第1項第19号に該当し、無効とされるべきである。
5 答弁に対する弁駁
被請求人は、本件商標より「ピコン」及び「ピコーン」の称呼は生じない旨主張するが、本件商標に「ピッコーネ」のふりがなを付しているわけではない。また、被請求人は、「PICONE」の称呼「ピッコーネ」が、我が国市場においても周知、著名性なものとなっており、実際の市場において、本件商標の称呼は、「ピッコーネ」であると主張しているが、本件商標が「ピッコーネ」として認識されて周知・著名であるということは、将来変動する可能性のある個別事情というべきであり、取引の実状を考慮して判断しなければならないとされている(商標審査基準「甲第44号証」参照)。取引の実情とは、主に当該指定商品の取引分野における一般的、恒常的な取引事情であり、個別事情は、商標の類否判断に当たって必ずしも重視することを要しないというべきである(平成13年(行ケ)254号(甲第45号証))。
したがって、本件商標が「ピッコーネ」として認識されて周知・著名であるという事情は、商標の類否判断において必ずしも重要視されるものではないから、本件商標は、「ピッコーネ」の称呼のほかに「ピコン」及び「ピコーン」とも称呼されるものである。
引用商標3ないし引用商標7は、「EVAN-PICONE」部分に「-」を含む以上、婦人服などの服飾業界においてブランド名は省略されるから、外観上必ずしも全体として一個の商標を構成するものではない。したがって、需要者等が引用商標3ないし引用商標7を「PICONE」と認識するものであるから、本件商標と引用商標3ないし引用商標7は、外観上類似する商標である。
6 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第11号、同第15号及び同第19号に該当し、その登録は無効にすべきものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第29号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標の称呼について
本件商標は、前記第1のとおり、欧文字「PICONE」を活字体で左から横書きした構成からなるところ、各音毎に母音を伴うイタリア語特有の構成から、ローマ字風又はイタリア語風に「ピッコーネ」と称呼されるか、または「ピコネ」、「ピコーネ」と称呼され得るとしても、これ以外の称呼は生じない。
我が国服飾業界においては、イタリアファッションが一大潮流であって、実際の市場でイタリア語からなる商標が多数使用されており、ローマ字の発音による称呼方法も我が国において一般的となっている。本件商標を称呼するには、これをローマ字風又はイタリア語風に称呼すべきであって、「ピッコーネ」、「ピコネ」または、「ピコーネ」以外の称呼は生じない。ちなみに、「picone」なる英語がないことから、英語読みはできない。
本件商標の我が国市場における現実の使用例についてみても、本件商標に関する商品広告、取引書類などにおいて、これを「ピッコーネ」と片仮名表記し、「PICONE」とその称呼「ピッコーネ」は、我が国市場においても周知、著名なものとなっている(乙第5号証ないし乙第23号証)。
実際の市場において、本件商標は、「ピッコーネ」として、取引者、需要者に通用しており、本件商標の称呼が「ピッコーネ」であることは、ローマ字からなる構成上の理由及び我が国市場において通用している実際の称呼より明白である。
(2)引用商標の称呼について
引用商標1及び引用商標2は、片仮名文字「ピコン」が併記されているから併記された片仮名文字のとおり「ピコン」の称呼を生ずる。
引用商標3ないし引用商標7は、請求人の主張するとおり、引用商標3ないし引用商標7がいずれも欧文字「EVAN-PICONE」を、共通の書体、同一の大きさで、一体かつ一連に表してなるものであ。そしてハイフン記号が2語を一語とする記号であるから、「EVAN-PICONE」全体で一個の商標を構成するものである。また、「EVAN-PICONE」より生ずる「エヴァンピコン」の一連の称呼も、6音という比較的短い音構成からなるもので、不自然に冗長なものではないから、引用商標1及び引用商標2は、「エヴァンピコン」の称呼を生ずるものである。
(3)本件商標と引用商標の類否について
まず、本件商標の称呼「ピッコーネ」と引用商標1及び引用商標2の称呼「ピコン」について検討するに、両者は、いずれも3音より構成されるとはいえ、第1音において「ピッ」と「ピ」、第2音において「コー」と「コ」の相違を有し、結局、3音からなる構成各音の全てにおいて相違するものである。
しかも、中間に長音を含む本件商標の称呼「ピッコーネ」と引用商標1及び引用商標2の「ピコン」の称呼は、いずれも極めて短く称呼されるところ
であって、両者は、その全体としての語韻語調においても著しく相違する。
よって、本件のごとく極めて短い音構成からなる商標は、その相違が顕著に印象づけられるところであって、本件商標の称呼と引用商標1及び引用商標2の称呼は、非類似である。
次に、本件商標と引用商標3ないし引用商標7について検討するに、本件商標の称呼「ピッコーネ」と引用商標3ないし引用商標7の称呼「エヴァンピコン」は、全体の構成音数の相違から、称呼において非類似である。
また、外観についてみても、本件商標と引用商標1及び引用商標2の語尾「E」の有無は、別異の文字を形成するに至る根本的な相違であり、両者は外観も相違し、引用商標3ないし引用商標7と本件商標の外観の相違についてはいうまでもない。
さらに、観念についてみても、格別の意味を持たない本件商標と引用各商標は、観念上の相違も明白である
(3)本件商標は、旧分類において登録されている被請求人の登録商標(乙第1号証及び乙第2号証)を、国際分類の採用に伴いこれを現行分類下で広く保護すべく新規に出願をしたものであり、被請求人は、この他にも多数の「PICONE」関係商標の登録を被服分野において取得し、既に登録後5年以上の除斥期間を経過している(乙第1号証及び乙第2号証の商標、乙第24号証及び乙第28号証)。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
2 商標法第4条第1項第10号について
請求人は、引用各商標の周知・著名性の根拠として、請求人の概略を示す甲各号証を提出しているが、甲第26号証、甲第37号証を除いては、我が国市場に関するものではない。また、甲第25号証の一部に我に国市場に関係する資料もみられるものの、我が国で引用各商標が流通していることを直接示すものではない。これらの証拠には、我が国おける引用各商標を付した商品の販売額の年度別合計、宣伝広告費についても示されていないから、引用各商標の周知・著名性を示すに充分とは認められない。請求人標章の日本市場での展開は、1994年からと思われ、三越百貨店10数店舗のみの販売であり、売上高も多くはない。
また、甲各号証に示された商標の使用例についてみても、全て「EVAN-PICONE」、「エヴァンピコン」であって、これが「ピコン」、「PICONE」のみで略称されている例は全くなく、常に一体不可分に「EVAN-PICONE」として使用され、認識されていることを示すにすぎない。
したがって、提出された証拠を基礎に引用各商標が我が国において周知・著名であるとする請求人の主張は認められない。
これに対し、被請求人の「PICONE」商標(以下、「被請求人標章」という。)の歴史及び概要についてみると、PICONE(ピッコーネ)は、ナポリの胸芸家 GIUSEPPE PICONE(ジュゼッペ・ピッコーネ)が自己の陶芸作品にペイントした創作キャラクター「ARCH IVIO」(アルチビオ)を衣料、雑貨に拡大したブランドであり、アルチビオのマークと共に世界中の人々に認識されている。1981年、株式会社サン・フレールは、被請求人標章に係る商品の独占輸入契約をジュゼッペが主宰する会社と締結し、日本市場で輸入商品に「PICONE」を現地イタリアの称呼そのままにピッコーネと片仮名表記し販売が開始された。「PICONE」の呼称は、イタリアのみならず、欧州、英国、米国等英語圏もピッコーネであり、この呼称が世界的に統一されているから、日本においてもそれを踏襲し、現在に至っている。そして、被請求人標章は、直営、百貨店、一般卸の専門店で販売しており、請求人標章より、はるかに高い認識度を有している(乙第5号証及び乙第6号証、乙第8号証ないし乙第23号証)。
そして、前記1のとおり、本件商標と引用各商標は、称呼、観念及び外観のいずれにおいても類似するものではない。
他方、本件商標は、被請求人標章として周知・著名となっている。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものではない。
3 商標法第4条第1項第15号及び同第19号について
前述したとおり、引用各商標の周知・著名性は認められないし、請求人の使用に係る商標も不可分一体に構成された「EVAN-PICONE」、「エヴァンピコン」であるから、本件商標と引用各商標は明らかに相違する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号、同第19号に該当するものではない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第10号、同第15号及び同第19号に該当するものではない。
よって、本件商標は商標法第46条第1項第1号により、その登録を無効とされるべきものではなく、本件審判の請求は理由がない。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標の称呼について
本件商標は、「PICONE」の文字よりなるところ、本件商標を付した商品(以下、「使用商品」という。)の輸入は、1983年(昭和58年)から被請求人が開始したものであり、その称呼は、イタリア、欧州、英国、米国などで統一して使用されているイタリア語風の「ピッコーネ」を用いて現在に至っているものである。
そして、我が国における使用商品の販売実績等についてみると、1999年における使用商品の取り扱い店舗数981店舗、売上高が小売りベースで約60億円、2003年における使用商品の取り扱い店舗数1008店舗、売上高が小売りベース約49億円であること。また、使用商品の販売場所についてみても、直営店、阪神百貨店、池袋東武百貨店、日本橋三越百貨店など多数の店舗で使用商品を販売しており、百貨店の売り場表示については、それぞれのフロア案内に「ピッコーネ」とされていることが認められる。
さらに、新聞記事、雑誌の広告、取引先のホームページにおいても、本件商標が「ピッコーネ」と表示されていることを認めることができる(乙第5号証、乙第8号証ないし乙第11号証、乙第17号証、乙第18号証、乙第21号証及び乙第22号証)。
以上よりすると、本件商標は、「被服」等を取り扱う業界において「ピッコーネ」の称呼をもって需要者に広く知られているものであって、特定の観念を生じない造語というのが相当である。
そうとすると、「PICONE」は、これを英語風に発音した場合には「ピコーン(ピコン)」と発音され得るとしても、ファッションブランドとして使用される本件商標は、ローマ字風又はイタリア語風に「ピッコーネ」の称呼を生ずるといいうのが相当である。
この点について、請求人は、本件商標が「ピッコーネ」として認識されて周知著名であるということは、将来変動する可能性のある個別事情というべきである。取引の実情とは、主に当該指定商品の取引分野における一般的な取引実情であり、個別事情は、商標の類否判断に当たって必ずしも重視することを要しないというべきである(平成13年(行ケ)254号)。したがって、本件商標が現在「ピッコーネ」として認識され、周知、著名であるということは、商標の類否判断において必ずしも重要視されるものではない旨主張する。
しかしながら、本件商標が現在「ピッコーネ」と称呼され、広く知られているという取引の実状は、将来的にも予想し得るファッション業界の一般的な取引者、需要者間における共通した認識を反映したものといえるから、本件商標の個別事情にとどまるものということはできない。
したがって、本件商標は、その構成文字より「ピッコーネ」の称呼を生ずるというべきである。
(2)引用各商標の称呼について
引用商標1は、「PICON」の文字及び「ピコン」の文字を二段に書してなり、引用商標2は、「PICONE」及び「ピコン」の文字を二段に書してなるところ、両商標の下段の「ピコン」の片仮名文字が、上段の欧文字部分の称呼を特定したといえるものであるから、引用商標1及び引用商標2は、「ピコン」の称呼のみを生ずるといえるものである。
引用商標3ないし引用商標5は、それぞれ「EVAN-PICONE」、「エヴァン ピコン」の文字よりなるものであり、引用商標6及び引用商標7は、それぞれ図形部分と「Evan-Picone」の文字よりなるものであり、「EVAN」と「PICONE」、「エヴァン」と「ピコン」あるいは「Evan」と「Picone」の各文字がハイフンを介して又は半文字分程度の間隔をもって外観上まとまりよく一体的に書されているものであって、文字全体が一体不可分の構成よりなるものと観察、把握されるものとみるのが自然といえる。また、これより生ずる「エヴァンピコン」の称呼も、全体で6音という格別冗長とはいえない音構成といえるものである。また、請求人標章が「エヴァンピコン」と称呼され一定の著名性を有していることは、請求人の申立のとおりといえるから引用商標3ないし引用商標7は、「エヴァンピコン」の一連の称呼のみを生ずるというのが相当である。
(3)本件商標と引用各商標の称呼について
本件商標と引用各商標は、前記のとおり、本件商標が「ピッコーネ」の称呼を、引用各商標が「ピコン」または「エヴァンピコン」の称呼を生ずるから、称呼における構成音数が明らかに異なり、音感、音調が著しく相違し、互いに聞き誤るおそれはないものである。
(4)外観について
引用商標1及び引用商標2は、二段に表されている片仮名文字「ピコン」が視覚上無視し得る程度の付記的なものとはいえないから、本件商標とその外観において区別し得るものである。
また、引用商標3ないし引用商標7は、本件商標と文字構成等に明らかな差異を有しているから、本件商標とその外観において区別し得るものである。
(5)観念について
本件商標及び引用各商標は、いずれも特定の意味合いを有しない造語といえるものであるから、観念において比較することはできないものである。
(6)以上のとおり、本件商標と引用各商標は、称呼、外観、観念のいずれの点においても相紛れるおそれはないから、本件商標は、商標法第4条第1
項第11号に該当するものということはできない
2 商標法第4条第1項第10号について
本件商標は、前記のとおり、引用各商標とは類似しない商標であるから、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が請求人標章を直ちに想起するものとはいえない。
そうすると、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標またはこれに類似する商標であって、その商品に使用するものということはできないから、商標法第4条第1項第10号に該当しないものである。
3 商標法第4条第1項第15号について
請求人標章が請求人の業務に係る商品「被服」を表示するものとして、一定の著名性を獲得しているとしても、これを「PICONE」あるいは「ピコン」と略称して使用している事実は見出せないものである。
また、引用商標3ないし引用商標7は、前記2認定のとおり、それぞれが構成全体をもって一体のものであるから、本件商標とは商標において別異なものである。
そうとすると、被請求人が本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者が直ちに引用各商標を連想・想起することはないといえるから、本件商標を使用した商品が請求人又は請求人となんらかの関係のある者の業務に係るものであるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれはないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するということはできない。
4 商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、その登録出願前より「ピッコーネ」と称呼され、服飾業界の取引者、需要者の間に広く知られていたこと、及び被請求人が本件商標と同一の構成よりなる商標(第17類及び第22類に属する商品を指定商品としたもの)を、本件商標の登録出願前に登録出願し、商標登録されていた経緯を併せ考慮すれば、被請求人が、本件商標を不正の目的をもって使用するものとはいえないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するということはできない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同第11号、同第15号及び同第19号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別 掲


審理終結日 2005-03-15 
結審通知日 2005-03-18 
審決日 2005-04-14 
出願番号 商願2002-25089(T2002-25089) 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (Y25)
T 1 11・ 26- Y (Y25)
T 1 11・ 222- Y (Y25)
T 1 11・ 25- Y (Y25)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橋本 浩子 
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 茂木 静代
三澤 惠美子
登録日 2003-05-16 
登録番号 商標登録第4672111号(T4672111) 
商標の称呼 ピコーネ、ピコーン、パイコーン 
代理人 高橋 康夫 
代理人 安村 高明 
代理人 山本 秀策 
代理人 市原 俊一 
代理人 森下 夏樹 

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