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審決分類 審判 査定不服 商3条1項6号 1号から5号以外のもの 登録しない Z09
管理番号 1119716 
審判番号 不服2002-17461 
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-09-10 
確定日 2005-06-22 
事件の表示 商願2001-17525拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本件商標登録出願
本件商標登録出願に係る商標(以下「本願商標」という。)は、「One to One ATM」の欧文字を横書きしてなり、第9類及び第42類に属する願書記載の商品及び役務を指定して、平成13年2月28日に登録出願され、その後、指定商品及び指定役務については同14年3月26日提出の手続補正書をもって、第9類「現金自動受払機」に減縮補正されているものである。

第2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「本願商標は、その指定商品第9類『金銭登録機,硬貨の計算用又は選別用の機械,紙幣入出金機,現金自動受払機』との関係において、構成中の『ATM』の文字が『現金自動預金支払機』を意味する英語『Automated-Teller Machine』の略語として広く認識されており、また、『One to One』の文字が『特定の顧客の嗜好や要求などを詳細に把握し、長期的な関係を維持しようとするマーケティング手法』を意味する『one to one marketing』を表すものとして知られているものであるから、全体として『顧客の特定の要求に個別に(一対一で)応じる機能を有する現金自動預金支払機』程度の意味合いを直感させるにすぎない。したがって、本願商標は、その指定商品中『現金自動受払機械』等について使用するときは、商品の品質、特性を表示する語と理解させるに止まり、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないから、商標法3条1項6号に該当し、上記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、同法4条1項16号に該当する。」旨認定判断して本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断
本願商標は、上記「第1」に記載したとおりの構成からなるところ、その構成中の「One to One」の文字は、元来、「(対応など)1対1の」の意味を有する英語であり(例えば、研究社発行「新英和中辞典」)、その表音である「ワン・ツー・ワン」は「1対1に対応しているさま」を意味する外来語として知られているものである(例えば、三省堂発行「コンサイスカタカナ語辞典」)。
また、「ATM」の文字は、英語「Automated Teller(’s) Machine」の略語であり、「現金自動受払機」を意味する語として広く知られているものである。そして、請求人も述べるように、「現金自動受払機」(ATM)は、通帳やキャッシュカードを使って銀行窓口の金銭出納係を通さずに現金の預け入れ・引き出しや金銭の振り込み等ができるものであって、最近は銀行等の金融機関の店舗のみならずコンビニエンスストアの店舗等にも設置されているものである。
しかして、商品や役務に対する顧客のニーズは、昨今、多様化してきており、これにきめ細かく対応することが求められているところ、これまでの、消費者をひとくくりで扱う「マス・マーケティング」に対して、顧客一人一人のニーズに応えることによって個々の顧客満足の向上を目指す営業手法が「ワン・ツー・ワン・マーケティング(one to one marketing)」(特定の顧客の満足を高めようとするマーケティング。顧客の求めるものがどんどん個別化してきたこと、顧客への継続的アプローチを可能にするデータベース・マーケティングが容易になったことなどが背景になっている。………集英社発行「imidas’03」)と称されているところである。
そして、銀行等の金融機関においても、個々の顧客に応じたきめ細かなサービスを提供するべく様々な手段が講じられ、窓口での対応のみならず、ATMや電話、インターネット等も活用され、そのためのシステムや機器等が開発されているのが実情である。このことは、例えば、以下の新聞記事やインターネット上の表示からも首肯し得るものである。
1 「EDSジャパン、福井銀行のCRMシステムを構築」の表題下における、「銀行の支店窓口やATM、テレホンバンキングなどあらゆるチャンネルから顧客が同行を利用した場合でも、ワン・ツー・ワンのシステムにより顧客に最適の商品・サービスを提供できる。」との記事(2001年3月29日 日刊工業新聞 21頁)。
2 「金融大競争時代・トップに聞く勝ち残り戦略(5)あさひ銀行頭取・○○氏」の表題下における、「個人リテールでは顧客情報管理(CRM)の導入も課題です。」として、「営業店、ATM、コールセンターで顧客分析データベース(MCIF)を活用し、ワンツーワンのマーケティングを実現する。そのための方策の一つである新営業店システムの構築は統合作業で中断したが、統合離脱でようやく本格稼働の準備に入った」との記事(2001年1月16日 日刊工業新聞 23頁)。
3 「深層断面/ネット専業銀行-広がる可能性求め参入相次ぐ」の表題下における、「ネット銀行をつくる金融機関の最終的な狙いは何ですか。」として、「一般的には低コストチャンネルの構築にあるといわれるが、むしろ本質は新規顧客の獲得にある。そこから得られた情報で顧客データベースを構築し、ワンツーワン・マーケティングを展開する。これは米銀に共通した戦略だ。そして最終的には、そうした層に対して本体の商品も売り込んでいくことが目標になる」との記事(2000年5月2日 日刊工業新聞 24頁)。
4 「農業協同組合新聞ニュース」中の「インターネットバンキングやATMの多機能化、CRMなどのIT(情報技術)を使ってお客様とのチャネルの拡充やワン・ツー・ワンマーケティングを行い、サービスを提供するなど、従来の銀行業を金融サービス業に変えてきています。」や「ATMの再構築と多機能化、データベースマーケティングやワン・ツー・ワンマーケティングの導入、カードのIC化への対応などを考えています。」との表示(http://www.jacom.or.jp/tokusyu/010308/01030802.html)。
5 「IBM 株式会社あさひ銀行様」との表示中の「ハブに顧客情報を集約し、ワン・トゥ・ワンの営業体制を確立。」や「ATMや電話、インターネットなどの多様なチャネルへの対応、さらに取り扱い商品の増加に伴いシステムが複雑化するなか、迅速な顧客対応やワン・トゥ・ワン営業体制を目的としたシステム対応力の強化を図る必要がありました。」との表示(http://www-6.ibm.com/jp/servers/eserver/zseries/casestudies/asahibank/)。
6 「SPPS Open House 2004」との表示中の「千葉銀行では、銀行窓口/テレマーケティング/インターネット・バンキング/ATM/ダイレクトメールなどの全チャネル(顧客接点)において、ワン・ツー・ワンでのコミュニケーションによる統合型CRMを実現している。」や「2001年以降、店舗へのCRM導入と、インターネット・バンキングやATM画面でのワン・ツー・ワンメッセージの表示を開始した。」との表示(http://www.atmarkit.co.jp/ad/spss/spss-oh2004/oh02.html)。
7 「NCR サプライ・プロダクト」との表示中の「ATMを単に『現金の引き出し/預入/振込』を行う取引端末としてではなく、他の銀行との差別化を図る為にも、顧客一人一人に合わせた情報やサービスの提供が求められています。NCRは、ATMの明細票への特典サービス情報の印字によりCRM/ワン・ツー・ワン・マーケティングを提案して参ります。」との表示(http://www.ncr.co.jp/products/supply/atmreceipt.html)。
8 「ニュースリリース 2001年 バックナンバー」との表示中の「窓口やATMコーナー、コールセンターなど、お客さまがどのチャネル(取引の窓口)からコンタクトをとられても、そのお客さまが望まれる最適の商品・サービスを提供できるよう...」や「...ライフステージにあわせた金融サービスがご提供できる『ワン・ツー・ワン・マーケティング』が可能となります。」との表示(http://www.fukuibank.co.jp/news/2001/crm.html)。
以上の実情・事実によれば、銀行業界等においては、個々の顧客一人一人のニーズに対応した業務の提供をATM(現金自動受払機)を通じて行うことが計画され、また、実際に行われていることが確認できるところである。
そうであれば、「One to One」及び「ATM」の文字を結合してなる本願商標は、その指定商品である「現金自動受払機」に使用しても、「顧客一人一人に応じて個別化した業務の提供を行うことができる機能等を備えた現金自動受払機」である旨を理解させるにとどまり、これが自他商品を識別する標識であるとは認識されないとみるのが相当である。
してみれば、本願商標は、結局、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものといわなければならない(なお、本願商標は、その指定商品が補正された結果、商標法4条1項16号に該当するとの拒絶の理由は解消した。)。
したがって、本願商標が商標法3条1項6号に該当するとして本願を拒絶した原査定は妥当なものであって、これを取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2005-04-05 
結審通知日 2005-04-08 
審決日 2005-04-19 
出願番号 商願2001-17525(T2001-17525) 
審決分類 T 1 8・ 16- Z (Z09)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村田 有香 
特許庁審判長 佐藤 正雄
特許庁審判官 山本 良廣
宮川 久成
商標の称呼 ワントゥワンエイテイエム、ワントゥワン、エイテイエム 
代理人 西山 善章 

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