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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 117
管理番号 1119710 
審判番号 審判1997-2833 
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-08-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 1997-02-24 
確定日 2005-07-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第2715313号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第2715313号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2715313号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に示すとおりの構成よりなり、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、平成2年8月3日登録出願、同8年7月31日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人が引用する商標
請求人が引用する商標は、以下のとおりである。
(1)登録第852071号商標(以下「引用A商標」という。)は、ややデザイン化した「VALENTINO」の欧文字を横書きしてなり、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、昭和43年6月5日登録出願、同45年4月8日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
(2)登録第1415314号商標(以下「引用B商標」という。)は、「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を横書きしてなり、第17類「被服(運動用特殊被服を除く) 布製身回品(他の類に属するものを除く) 寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、昭和49年10月1日登録出願、同55年4月30日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
(3)登録第972813号商標(以下「引用C商標」という。)は、「VALENTINO」の欧文字を横書きしてなり、第21類「宝玉、その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和45年4月16日登録出願、同47年7月20日に設定登録されたものであるが、指定商品中の「かばん類、袋物」についての登録は、一部放棄により抹消され、その登録が平成2年6月25日になされている。
(4)登録第1793465号商標(以下「引用D商標」という。)は、「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を横書きしてなり、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉及びその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として、昭和49年10月1日登録出願、同60年7月29日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
(5)登録第1786820号商標(以下「引用E商標」という。)は、「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を横書きしてなり、第22 類「はき物(運動用特殊ぐつを除く) かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として、昭和49年10月1日登録出願、同60年6月25日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第32号証(枝番を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第8号について
請求人は、イタリアの著名な服飾デザイナー「VALENTINO GARAVANI(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」の同意を得て、同氏のデザインに係る各種の商品を製作、販売し、これらの商品に「VALENTINO」あるいは「VALENTINO GARAVANI」の欧文字からなる商標を使用している者であるが、同氏は単に「ヴァレンティノ」(VALENTINO)と略称されており、この略称も「VALENTINO GARAVANI」とともに本件商標の登録出願の日前より著名なものとなっている。
すなわち、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノガラヴァニ)は、1932年イタリア国ボグヘラで誕生、17才の時パりに行き、パリ洋裁学院でデザインの勉強を開始し、その後、フランスの有名なデザイナー「ジーン・デシス、ギ・ラ・ロシュ」の助手として働き、1959年ローマで自分のファッションハウスを開設した。1967年にはデザイナーとして最も栄誉ある賞といわれる「ファッションオスカー(Fashion Oscar)」を受賞し、ライフ誌、ニューヨークタイムズ誌、ニューズウィーク誌など著名な新聞、雑誌に同氏の作品が掲載された。これ以来、同氏は、イタリア・ファッションの第1人者としての地位を確立し、フランスのサンローランなどと並んで世界三大デザイナーと呼ばれ、国際的なトップデザイナーとして知られている。この「ファッションオスカー」は無彩色である白を基調にまとめた「白のコレクション」に与えられたものである。その後も同氏の作品は無地の服を得意とし、大胆な「白」と「素材」を特徴とし、その服飾品は芸術に値すると賞賛されており、その顧客には、レオーネ・イタリア大統領婦人、グレース・モナコ王妃、エリザベス・テーラー、オードリー・ヘップバーンなどの著名人も多い。同氏のデザイン活動は、婦人用、紳士用衣服を中心にネクタイ・シャツ・ハンカチーフ・マフラー・ショール・ブラウスなどの衣料用小物、バンド・ベルト・ネックレス・ペンダントなどの装身具、バッグ・さいふ・名刺入れその他のかばん類、その他サングラス、傘、スリッパなどの小物からインテリア装飾にも及んでいる。
わが国においても、「ヴァレンティノ ガラヴァニ」の名前は、1967年(昭和42年)のファッションオスカー受賞以来知られるようになり、その作品はVogue誌などにより継続的に日本国内にも紹介されている。昭和49年には三井物産株式会社の出資により同氏の日本及び極東地区総代理店として株式会社ヴアレンテイノヴテイックジャパンが設立され、ヴアレンテイノ製品を輸入、販売するに至り、同氏の作品は、わが国のファッション雑誌にもより数多く掲載されるようになり、同時にわが国においても著名なデザイナーとして一層注目されるに至っている。
以上のとおり、「ヴアレンテイノ・ガラヴアニ」は、世界のトップデザイナーとして本件商標が出願された平成2年8月当時には、既にわが国においても著名であった。同氏は、「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンティノ・ガラヴアニ」とフルネームで表示され、このフルネームをもって紹介されることが多いが、同時に新聞、雑誌の記事や見出し中には、単に「VALENTINO」「ヴァレンティノ」と略称されてとりあげられることの多いことは甲第3号証ないし甲第7号証によっても明らかなことであり、ファッションに関して「VALENTINO」「ヴァレンティノ」といえば同氏を指すものと広く認識されるに至っていたところである。
しかるところ、本件商標は、別掲に示すとおりのものであって、商標中の「Rudolph Valentino」の文字中後半の「Valentino」の文字が「ヴァレンティノ」と称呼されるものであることは明らかであるから、本件商標は「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)の著名な略称を含む商標であり、その者の承諾を得ずに登録出願されていることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものである。
2 商標法第4条第1項第11号について
本件商標と引用A商標及び引用B商標とを比較するに、本件商標は、別掲に示すとおりのものであって、「Rudolph Valentino」の欧文字は、その全体を称呼するときは「ルドルフ ヴァレンティノ」の9音にも及ぶ冗長なものとなるばかりでなく、「ルドルフ」と「ヴァレンティノ」の間に段落を生ずるものであり、しかも、上記のデザイナー「VALENTINO GARAVANI」が「VALENTINO」(ヴァレンティノ)と略称されて著名なものとなっていることとも相挨って、これに接する取引者、需要者は、その構成文字中、取引者、需要者に親しまれている「Valentino」の文字に相当する「ヴァレンティノ」の称呼をもって、取引に当る場合が決して少なくないものとみるのが自然である。
したがって、本件商標は、「ヴァレンティノ」の称呼をも生ずるものといわざるを得ない。
一方、引用A商標及び引用B商標のうち、引用A商標は「VALENTINO」の文字を書してなるものであるから、「ヴァレンティノ」の称呼を生ずるものであること明らかであり、また、引用B商標は「VALENTINO GARAVANI」の文字を書してなるものであるが、その全体を称呼するときは「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」の称呼を生ずるものであって、この称呼は冗長なものであるので、上記デザイナー「VALENTINO GARAVANI」が「VALENTINO」(ヴァレンティノ)と略称されて著名なものとなっていることとも相俟って、引用B商標は、その構成文字中、前半の「VALENTINO」の文字に相応する「ヴァレンティノ」の称呼をもって取引に資される場合も決して少なくないのが実情である。すなわち、引用A商標及び引用B商標は、いずれも「ヴァレンティノ」の称呼をも生ずるものであるといわざるを得ない。
してみると、本件商標と引用A商標及び引用B商標とは、「ヴァレンティノ」の称呼を共通にする類似の商標であり、また、本件商標の指定商品と引用A商標及び引用B商標の指定商品は同一のものであることは明らかであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
3 商標法第4条第1項第15号について
請求人は、上記のとおり各種の商品について多数の登録商標を使用しているところであって、引用各商標は、婦人服、紳士服、ネクタイ等の被服、バンド、バッグ類、靴等に使用された結果、本件商標の登録出願の日前より全世界に著名なものとなっていることは明らかである(甲第3号証ないし甲第15号証)。
また、本件商標の指定商品と引用各商標の指定商品は服飾品の範疇に属する商品であるばかりでなく、商品の流通経路を同じくする場合も少なくない密接な関係にあるものである。
したがって、本件商標は、これを被請求人がその指定商品に使用した場合、その商品があたかも請求人の製造、販売の業務に係る商品であるか、または請求人と経済的あるいは組織的に何らかの関係にある者、すなわち姉妹会社等の関係にある者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
4 答弁に対する弁駁
(1)利害関係について
請求人は、本件審判請求をするについて、いわゆる利害関係を有するものである。
すなわち、請求人が本件審判請求の理由中、本件商標が商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるとして引用した引用A商標及び引用B商標の商標権者であること(甲第21号証及び甲第22号証)、また、本件商標が商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるとして引用した引用C商標及び引用D商標にしても、商標権者が請求人であることが明らかである(甲第23号証及び甲第24号証)。
そして、請求人の旧名称が「グロベレガンセ ビー ベー」であったこと及びイタリアの有名な服飾デザイナー「VALENTINO GARAVANI」が自己の氏名をあらわす引用B商標を所有していて、これを請求人に譲渡したことも明らかであるばかりでなく(甲第22号証)、「VALENTINO GARAVANI」が自己の氏名を請求人が被服等の商標として使用し、登録を受けることに同意していることは甲第32号証の同意書の写しによって明らかである。しかも、商願昭62―132065号に対する登録異議の申立てについての決定謄本の写し等(甲第25号証ないし甲第28号証)の理由をみれば、請求人の上記の引用各商標が「VALENTINO」の文字を有する商標とは係わりのあることは明らかなところである。
したがって、本件商標に対して無効審判を請求した請求人は、本件審判請求するについて、いわゆる利害関係を有する者であることが明らかである。
(2)著名性について
「VALENTINO」あるいは「VALENTINO GARAVANI」の文字からなる引用商標が被服、ネクタイ、バック等に使用され、少なくとも昭和62年前から周知著名であることは特許庁における登録異議の申立てについての決定謄本の写しにて明らかにされているところであり(甲第25号証の3)、また、例えば「VALENTINO」の文字が「SHANEL」や「DIOR」の文字と同等にかつ独立した表示として用いられていることもみることができる(甲第29号証の2、甲第30号証の3及び甲第31号証の1)。
したがって、「VALENTINO」の文字を有し、かつ「V」字形の図形(記号的表示を含む)を有してなる商標は、少なくとも服飾品の範疇に属する商品に使用された場合、その商品はあたかも請求人の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生じさせるおそれがあるものである(甲第26号証ないし甲第28号証)。
5 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第11号及び同第15号に違反して登録されたものであるから、商標法第46条の規定により無効とされるべきものである。

第4 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は、これを却下する、又は本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第72号証(枝番を含む。)を提出した。
1 利害関係の有無について
請求人は、請求の理由中で自らを「イタリアの著名な服飾デザイナー〜氏の同意を得て、同氏のデザインに係る各種の服飾商品を制作、販売しており、これらの商品について『VALENTINO』あるいは『VALENTINO GARAVANI』の欧文字からなる商標を使用している者」とするが、そのことを直接ないし間接的に明らかにする証拠方法は見出すことができない。
甲第18号証として提出されている引用C商標の出願人は、商標公報ではオランダ国籍の「グロベレガンセ・エヌ・ベー」(請求人の旧名称?)で、引用B商標、引用D商標及び引用E商標以下の出願人(商標権者)としてはイタリー国籍のヴァレンティノ・ガラヴァニ氏である。
無効審判を請求するには民事訴訟法の「利益なければ訴権なし」の原則が適用されるので、無効審判を請求することについての法律上の利益が必要とされるところ、上記のように請求人はこの点について明確にせず、非類似の商品についての商標権及び他人の商標権を提示した請求をなしているので、商標法第56条第1項で準用する特許法第135条の規定により本件審判請求は却下されるべきである。
2 商標法第4条第1項第8号について
本件商標は、ハリウッドの無声映画時代の映画俳優の氏名(1926年没)に由来する商標といえる。
請求人は「VALENTINO」「ヴァレンティノ」を含む商標はヴァレンティノ ガラヴァーニの著名な略称を含む商標であるとするが、時代的には本件商標の由来する人物の方が遥かに古い。
外国映画俳優全集・男優編の「ルドルフ・ヴァレンティノ Rudolph Valentino」の項(乙第1号の1)に掲載のように、わずか31歳で急逝した美男の映画俳優で急逝後葬儀のときに街路をファンが埋めつくしたとの有名なエピソードを残している。
アーヴィング・シュルマンの評伝である「VALENTINO」(1967年)を開けば「VALENTINO」が頻出する(乙第1号証の2)が、いうまでもなく「Rudolph Valentino」を指す。
「スターダムーハリウッド現象の光と影」アレグザンダー・ウォーカー著 渡辺武信・渡辺葉子訳では一章(第10章)を割いて「大いなる恋人の登場―ヴァレンティノ」の表題で27頁にわたり論じられている(乙第1号証の3)。
株式会社研究社の新英和大辞典(第5版1980年)の「VALENTINO」の項目(乙第1号証の4)では「RUDOLPH VALENTINO」を意味するとし「イタリア生れの米国の俳優」と掲載されている。
岩波書店発行の百科事典を兼ねるといわれる「広辞苑第3版」P188の「ヴァレンチノ」の項目でも「Rudolph Valentino」が挙げられている。
昭和56年5月26日の朝日新聞夕刊(乙第1号の5)に掲載されているように、天才ダンサー、ルドルフ・ヌエーレフがルドルフ・バレンチノを演じて評判になった「バレンチノ」(1977)がTBS(東京放送)で5月25日で放映された。
「VALENTINO」はローマ法王(アレッサンドロ6世)の庶子でイタリア統一の野望に燃えたチェーザレ ボルジアがスペインのヴァレンシアに領地を所有していたのでイタリア語化したヴァレンティーノ枢機卿、ヴァレンティーノ公爵と呼称され(「チェーザレボルジアあるいは優雅なる冷酷」 新潮社刊 塩野 七生著 ルクレツィアボルジア 集英社刊 中田耕治著等 参照)、イタリア出身のアメリカの1920年代のマフィアの著名なボスの「ヴァレンティノ」などに代表されるように、イタリア人の氏ないし名として極めて一般的なかつありふれたもので、日本に引き直していえば、鈴木、中村、伊藤、一郎、太郎などに相当する。
ヴァレンティノ ガラヴァーニが特定の分野、例えばオートクチュールの分野で著名であることは認めるにやぶさかでないが、氏名の構成の一部として商標中に採択される「VALENTINO」を含む商標について、著名な略称を含むものとするには当たらないものである。
例えば、乙第2号証の1及び2に示すとおり、「mario valentino」も被服のデザイナーとして著名である。
姓ないし名が共通する有名デザイナーを新ファッションビジネス基礎用語辞典から抜き出せば「valentino garavani」「mario valentino」以外に4例ある(乙第3号証)。
請求人は「VALENTINO」(ヴァレンティノ)が略称として著名であることは甲第3号証ないし甲第15号証で明らかであるとする。
その根拠として、請求人は服飾デザイナーの「VALENTINO GARAVANI」氏の氏名は単に「VALENTINO」(ヴァレンティノ)と新聞、雑誌の記事や見出し中には略称されていて同氏を指すものと広く認識されるに至っていたとする。
しかし、甲第16号証として請求人の提出したプレイロード株式会社の商標公報に示された引用A商標は「VALENTINO」で旧第17類の被服等を指定商品とし、昭和43年6月5日の出願に係るもので、昭和45年4月8日の登録に係り現在まで2度更新されている。
グロベレガンセ エヌ べ一は商標「VALENTINO」を旧第17類に商願昭45-38413号として出願していたが、昭和54年8月29日拒絶審決を受けている。このことはグロベレガンセ エヌ べ-はこの拒絶審決を受けた商標の審査の過程において上記のプレイロード株式会社の抵触する商標の存在を認識していたはずである。
また、「Valentino」を要部とする商標を商願昭48-146326号として登録出願したが昭和54年11月14日拒絶審決を受けている(乙第4号証)。
甲第5号証の9(昭和51年10月1日 センイジャアナル)の「なおブランドは、紳士服メ-カープレイロードが、”ヴァレンティノ”で打ち出していることから“ ヴァレンティノ・ガラバーニ”とする。」との記述からすればヴァレンティノブティック・ジャパンもプレイロードの商標を認識していたこと確実である。
請求人の主張は、氏名商標「VALENTINO GARAVANI」の構成の一部「VALENTINO」が他人の登録商標であるにもかかわらず、マスコミによる誤用、不適切な使用を根拠として他人の登録商標と同一に略称されるとするものである。
請求人の主張によれば、引用B商標の通常使用権者(ヴァレンティノブティック・ジャパン)が登録商標と類似する商標(VALENTINO)を使用して他人(プレイロード)の業務に係る商品と混同を生ずるものとしたので、商標法第53条の規定に該当し取り消されるべということになる。
請求人は、一般にイタリア人の名前として認識される「VALENTINO」が著名な略称として保護されるとするが、将来出現するであろう氏名に「VALENTINO」を含むデザイナーは自らの氏名の使用、登録もままならない不合理な結果となることから考えてもその主張の正当性を有しないこと明らかである。
旧第17類を指定商品とし、出願人がイタリア国籍のもので「VALENTINO」の文字を含む商標の登録例としては「OSCAR/VALENTINO」及び「valentino/orlandi」がある(乙第5号証及び乙第6号証)。
ちなみに、アメリカでも乙第7号証ないし乙第23号証に示すとおり「VALENTINO」及び「VALENTINO」を含む商標が請求人及びヴァレンティノ ガラヴァーニ以外の名義で多数登録されている例がある。
乙第10号証の登録第1141353号の「Rudolph Valentino」については架空の氏名であるとするが、乙第1号証の1などから明らかなように「Rudolph Valentino」の本名に近い氏名商標で、乙第11号証の登録第1210072号の「Valentino’s」商標については、有名な俳優である「Rudolph Valentino」に由来するとしている。
3 商標法第4条第1項第11号について
本件商標の連合商標であった登録第2357409号商標は、審査において引用A商標を引用されて拒絶査定となったが、拒絶査定不服審判で登録審決を受けている(乙第24号証)。
引用B商標との類否について、本件商標の審査における異議決定で本願商標(本件商標)と引用B商標とは非類似と認定されている(乙第25号証)。
引用D商標は、引用C商標とは非類似として別人の名義で登録されている。
引用D商標の出願に対してのマリオ・バレンチーノよりの異議申立てに対する異議答弁書(昭和53年12月22日付)で出願人であるヴァレンティノ ガラヴァニは次のように述べている。
「本願商標は『VALENTINO GARAVANI』と2記(?語の誤り)の結合からなるものであるが、これを一連に発音した「ヴァレンティノ ガラヴァニ」の称呼は全体でも冗長ではないし、全体としての冗長認感(?)も不自然ではなくまとまって印象づけられる。したがって、本願商標は『VALENTINO』及び『GARAVANI』が不可分一体に構成され、連続して発音されるものであってこれを分離するものとして把握するのは適当でない。さらに、本願商標の前半部『VALENTINO』は一般にイタリア人の名前として認識されるところから、本願商標はその全体で初めて強い識別力を発揮し、この意味からも本願商標は常に一体として称呼されるものである。」とし、さらには「氏名から採択したものであって、本願商標はこのデザイナーとの関連からも不可分一体のものとして認識される。」とする。加えて、「『バレンチーノ』、『ヴァレンティノ』の称呼を生ずる引用商標とは〜非類似」(乙第26号証)。
この主張は乙第27号証として提出する異議決定でも支持されている。 請求人は、この過去のヴァレンティノ ガラヴァニの異議答弁書での主張との整合性をどのように考えるのであろうか。
4 商標法第4条第1項第15号について
請求人は、旧第17類に加えて、旧第21類、旧第22類についての自ら所有する登録商標「VALENTINO GARAVANI」及び旧第21類の登録商標「VALENTINO」を提示し使用しており全世界に著名となっていることは甲第3号証から甲第15号証で明らかで、本件商標から「ヴァレンティノ」の称呼も生じるので類似の商標の使用となり、出所の混同を生じるとする。
甲第3号証の5及び6は、ヴァレンティーノ氏のインタビュー記事であるが、何時どの雑誌に掲載されたのか不明である。
甲第3号証の7は、昭和49年5月8日の新聞記事と認められるが、「バレンチノ・クチュール・ジャパンを設立する」との内容で事情通を読者とするものと認められる。記事の中には「バレンチノ・クチュールとの提携は〜」としているが請求人との関係は明示されていない。
甲第3号証の8も、同じ内容の織研新聞とするが「イタリアのオートクチュラーバレンチノ氏と提携」としている。
甲第3号証の9は、昭和49年6月の日経新聞とし見出しは「伊バレンチノ社上陸、物産など三社と合弁」で内容では「バレンチノ社(本社ローマ市)が近く日本に資本進出する」とされ「組んで合弁会社を設立し〜合弁会社はバレンチノ・ブティック・ジャパン」であるとする。
甲第3号証の1lは、日時掲載紙不明(日本繊維新聞?)の記事では「ヴァレンティノ・ブティックジャパンは3年目に入ったが、7月期の売上高は8億円と実質倍増を予定している。〜ここ1、2年で低くみても11、2億円の売上は達成できる〜」とされている。
甲第4号証の2は、ほとんど判読不能「ヴァレンティノ・ガラバーニ」と氏名が認識できるのみである。
甲第4号証の3は「バレンティノ・ガラバーニのショーが開催される」旨の朝日新聞の記事である。
甲第4号証の4は、週刊女性中の赤坂サンローゼ内のブティックの紹介(広告)で、広告であるとすればプレイロード社の商標権の侵害となる。
甲第4号証の5は、日刊ゲンダイの記事で「ヴァレンティノ ガラバーニ氏」を前提に「ヴァレンティノ氏」と略称していることが見てとれる。 甲第4号証の6は、ヴァレンティノ・ガラバーニ氏の「秋冬コレクションの開催を記事」でその旨を記事中で触れながら記事中で「ヴァレンティノのショーでも」としたり、小見出しで「ヴァレンティノのショーから」としているものと認められる。
甲第4号証の7は、「秋冬のコレクション」に関するものである。
甲第4号証の8は、日付不明の伊勢丹の広告と認められるが、「〜バッグはヴァレンティノです」とあるが、請求人も認めているように「かばん類、袋物」は引用C商標の指定商品より放棄されているはずである(登録年月日 平成2年6月25日)。
甲第4号証の9は、週刊TVガイドで、女優松阪慶子がドラマの中で着用する衣装についての「バレンチノ」を採用するとのことで請求人の預かり知らない誤用と認められる。
甲第4号証の10の日経流通新聞では、「ヴァレンティノ」が略称として用いられている様子はまったく認められない。
甲第4号証の11では、見出しに「ヴァレンティノ・コレクション」とあるが、記事中には「イタリアン・ファッションを代表するデザイナー ヴァレンティノ・ガラバーニ」と説明されている。
甲第4号証の12は、高島屋のチラシと認められるが、「ヴァレンチノ・ガラバ-ニ」と「valentino garavani」が表記されている。
甲第4号証の13及び14は、ハンドバッグの記事?とも認められるが、前記のように「かばん類、袋物」については指定商品より放棄している。 甲第4号証の15は、週刊明星に掲載されたバレンチノのデザインのアクセサリーとするが全体として不鮮明である。
甲第4号証の16は、肝心の箇所が判読不能である。
甲第4号証の17は、商標権について知悉していないライターによる誤用と認められる。
甲第4号証の18では、「ヴァレンチノ・ガラバーニ」に続けて商品の普通名称を付して定価を記載してある。
甲第4号証の19は、グラスらしき物が見えるのみで提出の意図を推し量ることができない。
甲第4号証の20は、ヴァレンティノブティックジャパンの広告かとも推測できるが、媒体、掲載年月日は不明である。
甲第4号証の21は、発行年日日、発行者の示されない書籍か雑誌か広報誌のいずれか不明な「マイライフシリーズ」(題号)に掲載されたバッグについて商標「ヴァレンティノ」を用いているとするが、先にも述べたように現在では登録商標の使用とはいえない。
甲第4号証の22は、ベルトに「ヴァレンティノ」を用いているが、本件商標の指定商品とは非類似の商品であるといえる。
甲第4号証の23では、「Valentino Garavani」を表記し、これを前提に「ヴァレンティノ」と略記している会社の紹介というべきものである。
甲第4号証の24は、雑誌か書籍か発行年月日も不明な資料で、しかも旧第21類の商品に関するものである。
甲第4号証の25は、an・an臨時増刊号のブランド別カタログであるが、商標権の帰属について知ることがないために「ヴァレンティノ」と略称したものと認められる。
甲第4号証の26は、提出の意図が不明であるといわざるを得ない。コピーを繰り返したために肝心の箇所が写っていないとも考えられる。
甲第4号証の27は、旧第21類に属する商品についてのものである。 甲第4号証の28と29は、順序が逆になっているプレジデント特別増刊号の記事である。ここでは「ヴァレンティノ・ガラバーニの世界」との見出しの下に紹介記事(記事広告?)で「valentino garavani」を前面に押し立ててから「ヴァレンティノ」と略称しているので文章を短くするための手法であるといえる。
甲第5号証は、株式会社博報堂作成のPRモニターであるとする。この表紙には「1976.9.22〜28」と期間が明示されている一方、不思議なことに内容では昭和51年9月17日の日本工業新聞から昭和51年11月3日の千葉日報までの切り抜きが含まれている。
これらの切り抜きは、甲第5号証の2に掲載されている「ヴァレンティノガラバーニの76年度秋冬物新作発表会」(東京ホテルオークラ 大阪ロイヤルホテル)に関する短信についての反響をまとめたものである。また、甲第7号証も新聞に掲載された発表会の見聞及び批評の記事である。
甲第8号証は、発表会において配布されたと思われる定価表と推察される。
これらをもって商標が周知著名であるとするには足りないと思われる。すなわち、外国におけるオートクチュールの日本進出に際して多くのマスコミが取り上げた事実を明らかにするものではあるが、子細に検討すれば、提出された多くのマスコミにおける読者はほとんど重ならないので、一般需要者からすれば、一度ないし数度雑誌や新聞で見たり聞いたことがあったというにすぎない。先に述べたように、甲第5号証の9に掲載されているように「ヴァレンティノ・ガラバーニ」及び「グロベレガンセ ビ- べ-」は、甲第9号証のプレイロードの「VALENTINO」商標の存在を認識していたことからマスコミに対して姓名として表記するように要請すべきであったと思われる。
甲第8号証についていえば、作成頒布した定価表に「valentino」が掲載されていることをもって著名とするためには、何時、誰に、どの程度の数を頒布したのかを明確にしないと著名性を立証する証拠とはいえない。
また、この甲第8号証の使用態様は、甲第16号証に示す他人(プレイロード)の商標権の侵害に該当するものである。
甲第9号証ないし甲第15号証は、「世界の一流品大図鑑」に掲載されたことを示すために提出しているものと認められる。
甲第9号証の2では、「V.GARAVANI」「ヴァレンティノ・ガラバーニ」をショルダーバッグ(ハンドバッグ)について用いていると認められる。
甲第10号証の2では、「VGARAVANI/ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」を衣服用ベルトに用いている例と認められる。
甲第11号証の2ないし4では、婦人服、紳士靴、パーテイバッグについて「VALENTINO GARAVANI」や「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」を用いている例と認められる。
甲第12号証の2では、衣服用ベルトについて「VALENTINO GARAVANI/ヴァレンティノ・ガラバーニ」と表記している。
甲第13号証の2ないし8では、「VALENTINO GARAVANI」や「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」が婦人服、紳士靴、ドレス、婦人用ポロシャツ、ネクタイ、婦人靴、ブレザー、ポロシャツ、パンツ、スカートに用いられている様子が示されている。
甲第14号証の2は、ベルトについて「VALENTINO GARAVANI/ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」と表記してなるものである。
甲第15号証の2は、ネクタイについて「VALENTINO GARAVANI/ヴァレンティノ・ガラバーニ」と表記されているものである。
これらの請求人のいう甲号証を子細に検討しても「VALENTINO」(ヴァレンティノ)が本件商標の出願時(平成2年8月3日)に略称として著名であるとの根拠とはなり得ない。ほとんど「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンティノガラヴァーニ」として用いられて「VALENTINO(ヴァレンティノ)」と略称して通用してはいないからである。
反対に、請求人の提出していない世界の一流品大図鑑’82では、商品「衣服ベルト」について「MARIO VALENTINO」と「VALENTINO GARAVANI」が同一頁に掲載されている(乙第28号証)。
また、乙第28号証に示す雑誌「ヴァンサンカン」の1989年の5月号の広告によれば、靴メーカーのレヴィヨン(甲第13号証の7)は、「valentino garavani」と「Rudolph Valentino」の双方のブランドを用いている。被請求人は請求人の引用した商標の類に加えて、対応する現行分類の一部についての「VALENTINO」関係の公告登録されている商標の一覧を提出する(乙第30号証)。
これらの公告登録されている商標の存在自体、本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当しないことを明かす証拠方法であるといえる。
このなかで被請求人の所有する旧第17類の商標の商標公報を提出する(乙第31号証及び乙第32号証)。
乙第33号証ないし乙第36号証は、旧第21類、旧第22類、についての被請求人の所有する「バレンチノ」の称呼が生じる構成を含む商標の商標公報である。
さらに、請求人所有以外の「バレンチノ」の称呼が生じる旧第22類の商標公報及び商標登録原簿を提出する(乙第37号証及び乙第38号証)。 なお、先に述べたように、請求人が主として「VALENTINO GARAVANI」商標を使用している婦人用被服や履物について「VALENTINO」商標を使用すると他人の商標権(引用A商標及び登録第1970394号)の侵害ということになる。
してみると請求人の主張は奇妙にも、自らの登録商標「VALENTINO GARAVANI」は、他人の登録商標「VALENTINO」と称呼において類似するものであると主張するに等しい。
旧第17類にて先に一覧で提出した商標出願の経過をみると、氏名商標としては一体として判断されるべきとされている審決例等が多い(乙第39号証ないし乙第41号証)。
なお、乙第30号証の一覧表の「CLOCHETTE VALENTINO」商標については異議申立があったものの平成8年5月31日異議理由なしの決定及び登録査定が出されている。同じく、旧第17類を指定商品とする「VALENTINO LANDUCCI」商標に関しても同日に同じ決定及び査定が出されている。
これらの本件商標と同じ分類の審査例の存在自体が直接、本件請求の理由のないことを雄弁に物語るといえる。
日本では「キャデラック」といえば米国の高級車として著名商標といえるが、米国では1701年にデトロイトの都市建設事業を行ったフランス人冒険家Cadillacに由来するものであるからか、同一綴りの商標が明らかな米国の別法人の名義で自動車以外の商品に関して出願されており、日本でも登録されている(乙第42号証及び乙第43号証)。
歴史的人物となっている著名人に由来する商標との観点でいえば、明治7年7月16日に生まれオーストラリア.ハンガリ-帝国の代理公使ハインリッヒ・クーデンホーフ・カレルギーに嫁いだクーデンホーフ光子の「光子」が命名の由来となった香水のブランド「MITSUKO」がある。
これらの例に見られるように著名人の氏名に由来する商標の採択使用は一般的に行われるところである。
本件商標は、通常使用権者により指定商品中の「セーター、ポロシャツ、ネクタイ、ハンカチ、パンティストッキング、バスタオル、フェイスタオル、シーツ、ふとん」に現実に継続して使用され(乙第44号証ないし乙第52号証)、取引上の大きな地歩を占めている。
5 以上に述べたように、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第11号及び同第15号に該当するものではないから、同法第46条第1項の規定によりその登録を無効とされるべき理由は全く存在しない。

第5 当審の判断
1 利害関係について
被請求人は、本件審判の請求につき、請求人は法律上の利益が必要とされるにもかかわらず、この点について明確にしていない不適当なものであるから、その請求は却下されるべきである旨主張するので、この点について検討するに、ある商標の登録の存在によって直接不利益を被る関係にある者は、それだけで利害関係人として当該商標の登録を無効にする審判を請求することにつき、利害関係を有する者に該当すると解するのが相当である。
本件においては、請求人は、本件商標の登録が存在することにより、自己の取り扱いに係る商品と本件商標を使用した商品との間に、出所の誤認混同を生じさせるおそれがある、ないし請求人の人格権が害されると主張しているのであるから、本件商標の登録を無効にし、排除せんとすることは、商標権の本質に照らして当然の権利というべきものである。
したがって、請求人は、本件商標の存在によって、直接不利益を受ける者であるから、本件審判の請求をするにつき、利害関係を有するというべきで ある。
2 「VALENTINO(ヴァレンティノ)標章」の著名性について
本件審判の請求の理由、甲第3号証ないし甲第15号証(枝番を含む。)及びファッション関係雑誌を総合してみるに、以下の事実が認められる。
(1)ヴァレンティノ ガラヴァーニ(Valentino Garavani)は、1932年イタリア国ボグヘラで誕生、17才の時パリに行き、パリ洋裁学院でデザインの勉強を開始し、その後フランスの有名なデザイナー「ジーン・デシス、ギ・ラ・ロシュ」の助手として働き、1959年ローマで自分のファッションハウスを開設した。1967年にはデザイナーとして最も栄誉ある賞といわれる「ファッションオスカー(Fashion Oscar)」を受賞し、ライフ誌、ニューヨークタイムズ誌、ニューズウィーク誌などの新聞、雑誌に同氏の作品が掲載された。これ以来、同氏は、イタリア・ファッション界の第1人者となり、サンローランなどと並んで世界三大デザイナーとも呼ばれるようになった。
(2)甲第4号証2ないし29は、主に昭和51年9月から同52年1月にかけて発行された新聞、週刊誌等におけるヴァレンティノ ガラヴァーニのデザインに係る紳士服、婦人服の紹介記事を抜粋したと認められるものであって、以下の記事が掲載されている。
(ア)「親しみやすいものばかり」の見出しで、「…バレンティノ・ガラバーニのわが国初めての本格的ショーが、このほど東京と大阪のホテルであい次いで開かれた…もっともバレンティノにいわせると…」(甲第4号証の3、昭和51年10月5日「朝日新聞」)。
(イ)「バレンティノ大胆なカットがモダンなトリコットのドレス。…」(甲第4号証の4、1976年(昭和51年)10月12日「週刊女性」)。
(ウ)「日本人の感覚にピッタリ」の見出しの下に、「世界のVIP女性愛用のヴァレンティノ・コレクション発表…」(甲第4号証の5、昭和51年10月2日「日刊ゲンダイ」)。
(エ)「秋冬もの“綿素材”の進出」の見出しで、「…ヴァレンティノ・ガラバーニの‘76秋冬コレクションが、このほど大阪ロイヤルホテルで開かれた…ヴァレンティノのショーから」(甲第4号証の6、昭和51年(1976年)9月30日「読売新聞」)。
(オ)「ヴァレンティノ・コレクション」の見出しで、「…イタリアン・ファッションを代表するデザイナー、ヴァレンティノ・ガラバーニの秋冬コレクション。…」(甲第4号証の11、昭和51年10月5日「サンケイ新聞」)。
(カ)バックルつきベルトの写真の下に「『ヴァレンティノ』…イニシャルVのメタルをはめ込んだトップ式バックル、ベルトにもV文字がプリントされた…」(甲第4号証の22、1977年(昭和52年)1月1日発行「アイリス マガジン」)。
(キ)「有名デパートの特選コーナーから選んだ『世界の特選品』」の見出しの下に、「ヴァレンティノはイタリアのオートクチュール出身のメーカー。…20〜40歳まで、いいものがわかる人なら誰でもがヴァレンティノを愛してしまう。」(甲第4号証の25、「anan臨時増刊号 FALL&WINTER 1976〜‘77 ブランド別CATALOGUE」)。
(ク)「ヴァレンティノ・ガラバーニの世界」の見出しで、「『ヴァレンティノ・ガラバーニはイタリアン・ファッション界の第一人者である。』…『ヴァレンティノ・ガラバーニは世界のプレタ・ポルテ界を牛耳る大ものデザイナーのベスト・スリーの一人に数えられる』など、ヴァレンティノ・ガラバーニに対する賛辞は枚挙にいとまがない。」(甲第4号証の29、昭和51年11月30日発行「プレジデントの特別増刊号)。
(3)甲第5号証の2ないし42は、主に昭和51年9月から同11月にかけて発行された新聞、週刊誌等におけるヴァレンティノ ガラヴァーニのデザインに係る紳士服、婦人服の紹介記事を抜粋したと認められるものであって、以下の記事が掲載されている。
(ア)「鮮やか黒いファッション ヴァレンティノ秋冬ショー」の見出しで、「イタリアンのデザイナー、ヴァレンティノ・ガラバーニの秋冬コレクションが東京・ホテルオークラで紹介された。…(ヴァレンティノ秋冬ショーから)」(甲第5号証の3、昭和51年9月28日「繊研新聞」)。
(イ)「ヴァレンティノ・コレクション 日本で初の開催」の見出しで、「(東京)イタリアンのデザイナー、ヴァレンティノ・ガラバーニのコレクションがこのほどホテルオークラで、わが国で初めて開かれた(主催ヴァレンティノブティック・ジャパン)。…メンズのデザイナーとしも定評のあるヴァレンティノは、今回のショーでも…」(甲第5号証の5、昭和51年9月29日「センイジヤアナル(大阪)」)。
(ウ)「伊の鬼才ヴァレンティノ これが76年秋冬の新作」の見出しで、「…今度はイタリアから。同国のファッション界の鬼才といわれるヴァレンティノ・ガラバーニの76年秋冬コレクションがこのほど紹介された。…」(甲第5号証の20、昭和51年10月6日「日経産業新聞」)。
(エ)「秋・冬に向かってのイタリアン・ファッション」の見出しで、「…イタリアンで人気の高いランチエッティやバレンティノもフォークロアをテーマにして作品をみせていましたが…」(甲第5号証の24、昭和51年10月8日「週刊朝日」)。
(オ)「FASHION INFOMATION」の見出しで、「ヴァレンチノとミッシェル・ドメルク…ヴァレンチノの作品はパンツが中心。…」(甲第5号証の35、昭和51年10月20日「ノンノ」)。
(カ)「資生堂ザ・ギンザ・秋冬のファッション」の見出しで、「従来のヴァレンティノ・ガラバーニに加えてもう一人ミッシェル・ドメルクの登場です。イタリア・ファッションの第一人者ヴァレンティノも日本に登場して2年、…」(甲第5号証の36、昭和51年11月「婦人画報」)。
(4)甲第9号証ないし甲第15号証(枝番を含む。)は、1981年(昭和56年)から1990年(平成2年)までのファッション関係雑誌の紹介記事で、以下の記載等が認められる。
(ア)「V.GARAVANI ヴァレンティノ ガラバァーニ(イタリア)」の見出しで「永遠にエレガンスを追求するヴァレンティノにとつて…ヴァレンティノの高度のファッション感覚に色づけされたハンドバッグは、…」(甲第9号証の1及び2 「世界の一流品大図鑑’81年版」)。
(イ)「VALENTINO GARAVANI/ヴァレンティノ ガラヴァーニ(イタリア)Vのイニシャルを生かしたカラフルなファッションベルトです。 」(甲第10号証の1及び2 「世界の一流品大図鑑’83年版」)。
(ウ)「VALENTINO GARAVANI」見出しで、「女性用スーツ、紳士靴及びパーテイバッグ」の写真とともに、「…ヴァレンティノ…」(甲第11号証の1ないし4 「世界の一流品大図鑑’85年版」)。
(エ)バックル付きベルトの写真の下に「VALENTINO GARAVANI/ヴァレンティノ ガラヴァーニ(イタリア)…オフタイムこそ、(ヴァレンティノで洒落てみたい。」(甲第12号証の1及び2 「男の一流品大図鑑’85年版」)。
(オ)婦人服、紳士服、ロングドレス、婦人用ポロシャツ、ネクタイ及び婦人靴の写真とともに、「VALENTINO GARAVANI」、「VALENTINO GARAVANI SPORT」及び「valentino garavani」と「V」を図案化した図形の組み合わせ(甲第13号証の1ないし8 「世界の一流品大図鑑’88年版」)。
(カ)ベルトの写真とともに、「VALENTINO GARAVANI/ヴァレンティノ ガラヴァーニ(イタリア)」(甲第14号証の1及び2 「男の一流品大図鑑’88年版」)。
(キ)ネクタイの写真とともに、「VALENTINO GARAVANI/ヴァレンティノ ガラヴァーニ(イタリア)」(甲第15号証の1及び2 「世界の一流品大図鑑’90年版」)。
(5)そして、1991年(平成3年)、1997年(平成9年)のファッション関係雑誌の紹介記事でも、以下の記載等が認められる。
(ア)ネクタイの写真とともに、「VALENTINO GARAVANI/ヴァレンティノ ガラヴァーニ(イタリア)」( 「世界の一流品大図鑑’91年版」)。
(イ)モデル着用の婦人用毛皮服、婦人服及び婦人用バッグの写真とともに、「ヴァレンティノ」若しくは「VALENTINO」( 「エル・ジャポン1997年8月号」)。
(6)以上の(2)ないし(5)のように、「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」の氏名、またはそのデザインに係る商品について、単に「ヴァレンティノ」の表示のみで紹介されている記事が多数掲載されている事実よりすれば、「VALENTINO(ヴァレンティノ)標章」は、「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」のデザインに係る商品群を表示するブランドとして、本件商標の登録出願日前より、わが国のファッション関連商品の分野において広く認識されていたものと認め得るところであり、その著名性は、本件商標の登録査定時においても継続していたということができる。
そして、「ヴァレンティノ」(若しくは「バレンチノ」)の表示は、「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」の氏名、またはそのデザインに係る商品群に使用されるブランド(「VALENTINO(ヴァレンティノ)標章」)の略称を表すものとして、本件商標の登録出願前より、わが国のファッション関連の商品分野の取引者及び需要者の間で広く認識されていたものというのが相当である。
3 出所の混同について
本件商標は、別掲に示すとおり、その構成中の「Rudolph Valentino」の欧文字が16文字、これより生ずる「ルドルフヴァレンティノ」の称呼も9音であって、その構成文字又は称呼のいずれよりみても、一つの名称のものとしては冗長というべきである。さらに、本件商標は、全体として特定の熟語や氏名を表すものとして一般の取引者、需要者によく知られているというような事情も、被請求人の提出した証拠によっては認めるに足りない。
そして、前記2(6)のとおり、本件商標の登録出願時には、既に、VALENTINO(ヴァレンティノ)標章が、紳士服、婦人服等のファッション関連の商品について使用され、ヴァレンティノ ガラヴァーニ(Valentino Garavani)のデザインに係る商品に付される商標ないしは同人の略称として著名であったこと及びVALENTINO標章が付される商品「紳士服、婦人服」等と本件商標の指定商品は、共にファッション関連の商品であって、同一又は高い関連性がある商品といい得るものであること等を併せ考慮すれば、本件商標をその指定商品に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、その構成中後半の「VALENTINO」の文字のみを捉え、著名なVALENTINO標章を連想、想起し、それがヴァレンティノ ガラヴァーニ又は同人と何らかの関係がある者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあったものと判断するのが相当である。
また、この混同を生ずるおそれは、本件商標の登録出願時から登録査定時においても継続していたものと認められる。
4 商標法第4条第1項第15号に関する被請求人の主張について
被請求人は、「VALENTINO」が「VALENTINO(ヴァレンティノ)標章」の略称として、著名ではない旨主張し、他の登録例、審査・審判例を挙げている。
しかしながら、前記2及び3で認定したように、「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」は、1967年にはデザイナーとして最も栄誉ある賞といわれる「ファッションオスカー(Fashion Oscar)」を受賞し、ライフ誌、ニューヨークタイムズ誌、ニューズウィーク誌などの新聞、雑誌に同氏の作品が掲載された。これ以来、同氏は、イタリア・ファッション界の第1人者となり、サンローランなどと並んで世界三大デザイナーとも呼ばれるようになった。わが国においても、昭和50年代はじめには、同デザイナーが手がけた被服等が新聞雑誌等を通じて紹介され、商品のデザインがエレガントであることなどの理由により、その名前は、ファッション関連の業界にとどまらず、一般の消費者の間にも広く知られるようになったということができる。そして、わが国においては、「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」、ないし同デザイナーのデザインに係る商品群について使用される「VALENTINO(ヴァレンティノ)標章」が、単に「ヴァレンティノ」と表示されている事実があることからすると、「ヴァレンティノ」若しくは「VALENTINO」との表記から、一般の消費者は、「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」の「VALENTINO(ヴァレンティノ)標章」を想起、連想するというのが相当である。
そして、「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」以外の、「VALENTINO」の文字を含むデザイナーに係る商品のブランドが、単に「ヴァレンティノ」若しくは「VALENTINO」と略称されている事実は存在しない。
また、本件商標の指定商品を含めた他の商品の区分において、「VALENTINO」の文字を含む商標が登録されている事実が存在するとしても、本件商標をその指定商品に使用した場合に、その登録出願時から査定時において、「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」の「VALENTINO(ヴァレンティノ)標章」を使用した商品との間に、出所の混同を生ずるおそれがあったか否かの問題であるから、被請求人が挙げる登録商標等の存在に、前記認定が左右されるものではない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲


審理終結日 2002-06-11 
結審通知日 2002-06-14 
審決日 2002-07-03 
出願番号 商願平2-88776 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (117)
最終処分 成立  
前審関与審査官 尾原 静夫小松 裕沖 亘 
特許庁審判長 三浦 芳夫
特許庁審判官 茂木 静代
野本 登美男
登録日 1996-07-31 
登録番号 商標登録第2715313号(T2715313) 
商標の称呼 ルドルフバレンティノ 
代理人 末野 徳郎 
代理人 小川 順三 
代理人 杉村 暁秀 
代理人 杉村 興作 
代理人 中村 盛夫 

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