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審決分類 審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 003
管理番号 1119705 
審判番号 無効2002-35358 
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-08-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-08-28 
確定日 2005-07-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第4051523号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4051523号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4051523号商標(以下「本件商標」という。)は、平成7年10月25日に登録出願、「MANE and TAIL」の欧文字と「メイン アンド テイル」の片仮名文字とを二段に横書きしてなり、第3類「せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き」を指定商品として、平成9年9月5日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第64号証(枝番号を含む。ただし、甲第44号証ないし甲第59号証は欠番。)及び参考資料1及び2を提出した。
(1)商標法第4条第1項第7号違背について
(ア)請求人は、商標「Mane ‘n Tail」(以下「引用商標」という。)の米国における所有者であり、該引用商標は、本件商標の出願日(平成7年10月25日)前には、既に米国において、商品「シャンプー,ヘアコンディショナー」について盛んに使用され、周知又はほぼ周知であった。
当時、引用商標を付した請求人の商品「シャンプー,ヘアコンディショナー」の我が国への輸入は、僅かな量に止まっていたものの、当該商品の業界においては、ある程度知られた状態にあった。
(イ)被請求人は、請求人の引用商標の存在及びその所有者が請求人であることを熟知していた。このことは、平成10年1月12日提出の登録異議申立書(平成10年異議第90093号:参考資料1)において、登録異議申立人(本件審判請求人)が詳しく記載し、証拠により立証した。その異議申立書を参考資料1として提出し、同書に添付の証拠の一部を本件審判事件においても同じ付番の甲号証として提出した。
(ウ)被請求人の本件商標及びその指定商品「第3類『せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き』」は、請求人所有の引用商標及びその使用に係る商品「シャンプー,ヘアコンディショナー」と互いに同一又は類似のものである。
(エ)英語圏では、前後の2つの単語を結ぶ「and」がある場合には、これをしばしば「‘n」で表示することが行われる。したがって、引用商標は、「Mane and Tail」の省略形であると英語を理解する人であれば、容易に理解できる。してみると、本件商標は、請求人の引用商標と称呼において同一又は類似し、かつ、いずれも「たてがみとしっぽ」の観念を有することから、両者は、観念においても同一又は類似である。
以上のように、両商標は、称呼及び観念において同一又は類似のものである。
(オ)このことは、請求人が平成9年5月9日に第3類に属する商品を指定して行った出願(商願平9-115136号:甲第60号証)に係る商標「Mane ‘n Tail」が本件商標と類似するとして拒絶されたことからもいえる。
(カ)甲第4号証及び甲第5号証により立証されているように、被請求人は、本件商標の出願日(平成7年10月25日)前の遅くとも1995(平成7)年8月7日までには、引用商標が請求人の所有に係る商標であることを熟知していながら、本件商標の出願を行ったのであり、その出願は、請求人の営業活動を妨害しようという不正の意図によるものであることが明らかである。したがって、かかる行為は、公正な取引を乱し、国際信義に反するものであり、公序良俗に違背するので、商標法第4条第1号第7号に該当し、その登録を無効にすべきである。
(キ)実際、被請求人は、本件商標が登録されるや、請求人の販売代理店に対し、引用商標を付した商品の販売中止を求める警告を行っている(甲第8号証)。
(ク)また、請求人が第3類に属する商品を指定して行った前述の出願(甲第60号証)に係る商標が本件商標の存在により拒絶されていることから、本件商標の登録は、請求人の営業活動を妨害しようとの不正の意図に基づいて取得されたことが立証される。
(ケ)請求人の上記(カ)ないし(ク)の主張にもかかわらず、前記登録異議申立(参考資料1)の判断では、本件商標が商標法第4条第1号第7号に違反しないとされた。
しかしながら、当該異議決定は、商標そのものの構成が公序良俗に反しなければよいとするにすぎないものであって、法律の適用を誤っていることは明らかである。
(コ)引用商標の使用状況について
(a)本件商標の出願日(平成7年10月25日)までに、請求人は、被請求人の本件商標と類似する引用商標を米国内において「シャンプー,ヘアコンディショナー」について広く使用した結果、引用商標は、需要者の間において周知されていた。それが周知であることは、商標法第4条第1項第7号の要件ではないので、請求人の引用商標として使用していた事実を証明しさえすればよいが、他の無効理由(商標法第4条第1項第19号)についての該当性要件として、請求人の引用商標の周知性の立証が必要なため、請求人は、本件商標の出願時までに請求人の引用商標が米国での取引において周知されるまでに広く使用されていた事実を立証する。
(b)請求人の代表的な製品としては、米国において販売されている「シャンプー,ヘアコンディショナー」がある(甲第2号証の1)。全米において1750の小売店舗を運営する米国エッカード社の証明が示すように、請求人は、引用商標を付した「シャンプー,ヘアコンディショナー」の創作会社であり、さらに、引用商標を付した「シャンプー,ヘアコンディショナー」によって創始以来、今日まで小売業界におけるマーケットリーダーを努めている(甲第2号証の2)。
(c)請求人は、米国において、国際分類第3類及び同第5類について、商標「MANE ‘N TAIL」(以下「請求人米国登録商標」という。)の登録を受けている(甲第2号証の3(1)(2)(4)(5))。
(d)請求人の引用商標を付した「シャンプー,ヘアコンディショナー」は、1995(平成7)年の米国内ドラッグストア販売実績についての市場調査結果(証拠は提出しないが)によれば、ヘアコンディショナーに関しては全競争相手合計の9.4倍、シャンプーに関しては全競争相手合計の4.3倍の売上実績を誇っている。
(e)他社の商品カタログ及び出版物でも、請求人の引用商標が紹介されている(甲第10号証No.1及びNo.2)。
(f)日本でも有名であり、米国において著名な雑誌「Forbes」1994年1月17日号(甲第10号証No.4)、雑誌「People」1994年10月17日号(甲第10号証No.4-1)、雑誌「Newsweek」1993年10月11日号(甲第10号証No.4-2)には、従来、馬用の「シャンプー,コンディショナー」であった請求人の引用商標を付した商品が人用の商品としてベストセラーになっていることが大きく紹介されている。
(g)米国における三大TVネットワークのテレビニュース(甲第10号証No.6-1ないしNo.6-11、甲第10号証No.12-1)では、延べ11回、従来、馬用の「シャンプー,コンディショナー」であった請求人の引用商標を付した商品が人間用の商品としてベストセラーになっていることが大きく報道されている。
(h)引用商標は、請求人が所有しているレーシングカーに大きく表示されており(甲第10号証No.9-1)、そのレーシングカーは、多くの著名なカーレースに出場し、世界中のテレビネットによりレース中継されたので、世界中の視聴者が引用商標を目にしている。
(i)また、請求人所有の引用商標を付したレーシングカーのレーシングチームに関しては、「レキシントン ヘラルド リーダー」1994年8月20日(甲第10号証No.12-3)、「アトランタ ジャーナル」1994年8月20日(甲第10号証No.12-4)、「ソルトレーク トリビューン」(甲第10号証No.12-5)、「ザコロンビアン」1995年7月5日(甲第10号証No.12-6)、「モーニングコール」1995年6月11日(甲第10号証No.12-7)、「ザ コロンバス ディスパッチ」1995年5月13日(甲第10号証No.12-8)といったマスコミ報道でも大きく紹介されている。
(j)請求人は、引用商標を付した「シャンプー,ヘアコンディショナー」を全米各地に広くピーアールするために、1992(平成4)年から1995(平成7)年にかけて全米各地で開催された延べ166回の商業展示商談会(1992年:14箇所、1993年:42箇所、1994年:20箇所、1995年:90箇所;甲第11号証No.1ないしNo.4)に、引用商標を付した「シャンプー,ヘアコンディショナー」を出品して、全米各地で引用商標は広く認識されるに至った。
(k)請求人の引用商標は、1989(平成1)年11月から1994(平成6)年12月までの5年間だけをみても、全米各地で発行された多数(78種類)の雑誌に延べ126回(甲第12号証No.1ないしNo.144-2)掲載されている。これらの雑誌の各々の発行部数については、甲第13号証を参照されたい。
(l)以上のように、従来、馬用の「シャンプー,コンディショナー」であった請求人の引用商標を付した商品は、人間用の商品として素晴らしい効果があり、全米においてベストセラーになっていることが全米各地の多数の一般消費者に向けて紹介されている。
(m)また、請求人は、甲第14号証ないし甲第42号証で示すように、全米で発行された多数の雑誌に引用商標を付した「シャンプー,ヘアコンディショナー」に関する広告を掲載した。前記雑誌は、いずれも「シャンプー,ヘアコンディショナー」の主要な需要者である女性を対象としており、いずれも大きなスペースにより広告されている。
(n)甲第5号証及び甲第6号証で示すように、請求人は、日本向けの窓口商社を通じて、平成6年から日本の会社(アルファテクノ社)と提携し、我が国での拡販準備を行っていたが、法規制により商品成分を日本仕様に変更する必要があり、日本への輸入に手間取っていたものの、全国の小売店に対し盛んに宣伝活動し、輸入準備を行っていた。
(o)以上のように、請求人は、米国内は勿論、我が国においても「シャンプー,ヘアコンディショナー」について引用商標を使用しており、我が国でも、ある程度知られるようになっていた。特に、本件商標の商標権者である被請求人は、請求人の「シャンプー,ヘアコンディショナー」に使用される引用商標の存在を熟知していた。
(サ)被請求人は、本件商標の出願日(平成7年10月25日)の約2ヶ月半前に、請求人にFAXで引用商標が付された「シャンプー」等の輸入をしたい旨の書面(甲第4号証)を送付するとともに、我が国における請求人の商品の販売代理店になりたい旨の申し入れをしてきたが、請求人は、それを拒否した。その理由は、甲第5号証で示すように、当時、請求人は、日本向けの窓口商社を通じて、他の日本の会社(アルファテクノ社)と提携をしていたからである。そのために、被請求人に対し、請求人の窓口商社であるサンディエゴの「Q’Numed社」から電話で、引用商標の販売権は譲れない旨回答するとともに、他ブランド商品であれば、販売権譲渡も可能である旨回答したが、被請求人からは何らの回答もなかった。請求人と窓口商社であるサンディエゴの「Q’Numed社」とのやりとり及び日本の「アルファテクノ社」とのやりとりの詳細については、1994(平成6)年以降の書面(甲第6号証)を参照されたい。
また、被請求人から、請求人の我が国における当時唯一の販売会社(甲第3号証)であった「エイチエムプランニング株式会社」(以下「エイチエム社」という。)に対して送付された引用商標を付した商品の販売中止を求める警告文(甲第8号証)及びその警告文に対するエイチエム社の回答については、甲第9号証を参照されたい。
(シ)以上のように、被請求人による本件商標の我が国への出願は、米国で請求人により広く使用され、我が国でも、ある程度使用されていた引用商標と本件商標とが類似することを知りながら、請求人の商標が我が国に未だ登録されていないことを奇貨として、外国(米国)権利者である請求人による我が国への参入を阻止し又は請求人に対し被請求人を国内代理店とする契約を強制させる目的で出願したものであり、商標法第4条第1項第7号に規定する公序良俗並びに国際信義に反する行為であるから、その登録は無効とされるべきである。
(2)商標法第4条第1項第19号違背について
被請求人(本件商標権者)は、本件商標が他人(請求人)の業務に係る商品を表示する商標として外国(米国)の需要者間において広く知られていた商標と同一又は類似であることを知りながら、不正に本件商標の登録を得たものであるから、その登録は商標法第4条第1項第19号に該当し、同法第46条第1項第1号により、その登録は無効にされるべきである。
請求人は、前記2(1)(コ)において、本件商標の登録出願前から引用商標が「シャンプー,ヘアコンディショナー」について請求人により米国内で広く使用され、周知になっていたことを立証した。
また、前記2(1)(サ)及び(シ)において、被請求人が本件商標と他人(請求人)の商標とが同一又は類似であることを知りながら、不正に本件商標の登録を得たことを立証した。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に規定する他人の業務に係る商品を表示するものとして外国における需要者の間において広く認識されている引用商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用するものについて商標登録を得たとの要件に該当するので、その登録は、無効にされるべきである。
(3)被請求人の答弁に対する弁駁
(ア)被請求人は、請求人の引用商標における「‘n」が「and」の省略形であるとの請求人の主張に対し、何らの根拠もないと答弁しているが、これは誤りである。特許庁では、既に本件商標と類似すると指摘し(甲第60号証)、「‘n」から「アンド」の称呼及び「and」の観念を生じるとしている。このことは、拒絶された請求人の商願平9-115136号(甲第60号証)に係る商標及び現在係属中の請求人の商願2002-75711号に係る商標が本件商標と類似する旨の通知(甲第62号証:2003年5月19日付けの拒絶理由通知)がされていることから明らかである。また、被請求人提出の乙第2号証には、米俗語として「‘n」が「and」の略であると搭載されていること自体、辞書に収録する必要性があるほど一般化していることを証明している。さらに、例えば、次の辞書にも搭載されている。
「‘n,’n’/n/《口語》=→and’」研究社[新英和・和英中辞典]電子版
「 and/(弱形) n(d),n;(強形) nd/」同上(審決注: 部分は「e」の天地を逆にしたような記号)
「’n[ n,n]《発音つづり》→AND;→THAN.」研究社「リーダースプラス英和辞典」電子版(審決注: 部分は「e」の天地を逆にしたような記号)
「’n[n]【発音】conj.【1】発音綴り・=and.:rock’n’roll ロックンロール Look’n listen.よく見てよく聞け.(また’n’)」「ランダムハウス英語辞典」
これらよりして、「‘n」は、俗語ではなくて「and」の省略形を示すものとして広く知られていると考えられる。
以上のように、本件商標と請求人の引用商標とは称呼上互いに類似し、かつ、観念上も類似することは明らかである。
さらに、甲第60号証で立証した事項について、被請求人は、本件商標と請求人の引用商標とが本件商標の出願当時(平成7年)非類似であったと主張しているが、これは我が国に導入されて比類のない主要外国語として定着した英語の100年以上に亘る歴史を無視した暴論である。その主張では、被請求人による本件商標の出願から僅か2年後(平成9年)にされた出願(甲第60号証)においては、急に、両商標が類似するとの判断に変わったことになり、被請求人の主張は不合理である。
また、「and」に代えて、しばしば「’n」が使用されることについては、例えば、甲第64号証の1(米国特許庁データベースの米国登録第1871035号商標「Fresh ’n SQUEEZE」商標)、甲第64号証の2(1999 Nov.30のウエッブサイトの広告「Kibbles ’n Bits」)、甲第64号証の3(1999 Nov.30のウエッブサイトの広告「Nice ’n Easy」)、甲第64号証の4(1999 Nov.30のウエッブサイトの広告「Sweet ’n Healthy」、甲第64号証の5(米国特許庁データベースの米国登録第1047255号商標「TACK ’n TOGS」)等、数多くの事例がある。したがって、被請求人の主張は誤りである。
(イ)被請求人は、「MANE and TAIL」が本件商標の出願当時、米国において慣用商標であったので、被請求人がそれを我が国において自己の商標として採用することには何らの問題もないと主張しているが、このような事実は存在しない。被請求人提出の乙第3号証ないし乙第11号証は、立証の根拠にはならない。なぜならば、これらの証拠における第三者(被請求人は使用者を明記していない)による当該商標の使用は、請求人所有の引用商標に抵触するので、本来、使用されてはならないものであるにもかかわらず、請求人の引用商標の評判にあやかり、只乗りを試みたものである。請求人は、全てに対応しきれないけれども、甲第63号証(諸外国おける請求人の対応を示すリスト)に示すように、米国はもとより他の国でも訴訟及び異議申立で対処し、ほとんどの場合に主張が認められている。乙第12号証ないし乙第18号証のカタログについても同様である。したがって、被請求人の主張は成り立たない。
(ウ)米国の商標制度は、使用主義に基づくものであり、使用がなければ登録もない。被請求人が請求人に接触した当時、請求人の引用商標は、単に使用されていただけでなく、既に米国内で周知されていたことは、請求書で立証したとおりであって、その周知性は、本件商標の出願時に、それが登録されていたか否かに関係がない。
この点に関して、請求人が引用商標を使用開始した時から登録時までの経緯を示すと次のとおりである。
1971年8月に、請求人は、馬用シャンプーに引用商標の使用を開始した。1990年5月に、請求人は、人用シャンプーに引用商標の使用を開始した。ただし、引用商標を付した馬用シャンプーが人用に使用されたのは、それよりずっと前である証拠を有する。1994年1月11日に、請求人は、馬用シャンプー等の製品について、請求人の米国登録商標に係る出願をした。1994年7月15日に、請求人は、人用シャンプー等の製品について、請求人の米国登録商標に係る出願をした。1994年12月24日に、請求人は、「Miriam Collins-Palm Beach Beauty Products Company」(以下「パームビーチ社」という。)(「Lucky Kentucky」として営業)を米国連邦地方裁判所に訴えた。1995年8月7日に、被請求人は、請求人の米国登録商標を付したヘアケア製品の輸入をしたいと申し入れた。1995年10月に、被請求人は、本件商標の登録出願をした。1996年1月11日に、パームビーチ社は、人用シャンプーについての上記請求人の米国登録商標に係る出願に対し、登録異議の申立てをした。1996年3月に、上記異議の審理は、請求人とパームビーチ社との間の紛争が解決するまで中止された。1996年5月に、被請求人は、本件商標を付した人用シャンプーの販売を開始した。1996年9月5日に、請求人とパームビーチ社とは、連邦地方裁判所の訴訟において和解した。和解は、パームビーチ社が「Mane, Tail & Body’」の語の使用を停止し、また、請求人の所有する引用商標、「Mane ‘N Tail and Body」及びそれらに類似する商標の使用をしないという条件であった。1996年11月5日:米国特許庁は、パームビーチ社による上記登録異議申立を却下した。1998年10月27日に、請求人の動物用の上述の米国登録商標に係る出願は登録された。1999年5月25日に、請求人の人用の上記米国登録商標に係る出願も登録された。
(エ)請求人は、引用商標の周知性につき米国内での周知性の立証については充分であると思料する。一部資料の日付等には不充分なものもあるが、請求人が捏造したものではなく、手元にあった資料の写しを作為を加えずに提出したものであり、全体の証拠を総合すれば、周知性は確たるものであると思料する。
(オ)商標「MANE and TAIL」が慣用商標でないことは、甲第63号証からわかる。また、引用商標が「Mane and Tail」と発音上及び観念上もほとんど同一といってよいことは、先述のとおりである。したがって、被請求人の答弁には根拠がない。
(カ)請求書で、被請求人からの申し入れを請求人は「拒否した」と記載したが、「直接拒否を通知した」という意味で使用したのではなく、受け入れる意思がなかったので回答しなかったということを端的に「拒否した」と表現したにすぎない。しかし、このことは本質的なことではなく、問題なのは、被請求人が請求人の引用商標の存在を知りながら、それと類似する本件商標の出願をしたことであり、その行為が商標法第4条第1項第7号の規定に違背することである。しかも、被請求人が請求人に対し、請求人の引用商標を付した「シャンプー」等の製品を販売したいと申し入れてきた事実であって、拒否したとか回答しなかったとかの事実は、本件に関係ない。
(キ)被請求人は、引用商標が請求人の商標であることを知りながら、それと類似する本件商標を出願したが、そのこと自体が公序良俗に反するのに、本件商標が登録されるや、請求人の引用商標を付した「シャンプー」等の輸入販売を差し止めようとして警告書を請求人の代理店に送付しており、そのことは、被請求人自身が両商標の類似性を充分に認識していた証拠である。もしも、類似でないというのであれば、警告を行う筈がない。
また、被請求人は、本件商標を出願し登録を得たきっかけとして、米国の販売業者であるパームビーチ社から、「MANE and TAIL」が米国で慣用されていることを教えられたので、本件商標の出願に及んだと主張しているが、パームビーチ社は、請求人のみが人用シャンプーについて引用商標を使用しており、決して慣用されていないことを知っていた筈である。パームビーチ社は、引用商標及びそれに類似する商標を米国内で使用できない立場にあり、被請求人も、その事実を知っていた筈である(上記(エ)参照)。そのうえ、請求人は、常に引用商標及び請求人の米国登録商標に「TM」を付記していたので、被請求人は、これを知っていた筈である。他社も引用商標が請求人所有の商標であることを常に承知していた筈である。
さらに、被請求人は、「Lucky Kentucky」とパームビーチ社との関係を混乱させているが、前者は、後者の営業マークである。
(ク)請求人の引用商標が本件商標と称呼において類似することは繰り返し述べたとおりであり、実際、その判断がなされている(甲第62号証)。したがって、請求人は、現在、引用商標を出願しているけれども、本件商標の商標権が存在する限り、再び拒絶されることは目に見えている。
また、被請求人が警告文を送付してきた理由は、請求人の引用商標に「メインアンドテイル」の片仮名文字が付記されているからであるというが、後者は、前者の本来の綴りの単なる音訳にすぎず、被請求人の警告は、請求人の引用商標に対する警告であったことは明らかである。

3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第23号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第7号の不該当性について
(ア)本件商標と引用商標の類否
請求人は、引用商標について、「英語圏では前後の2つの単語を結ぶ『and』がある場合には、これをしばしば『‘n』で表示することが行われる。したがって、引用商標は、『Mane and Tail』の省略形であることは英語を理解する人であれば、容易に理解できる。」と述べている。
しかしながら、英語圏において、前後の2つの単語を「and」に代えて「‘n」で結ぶことや英語を理解する人であれば、容易に理解できるとの主張については、何の証拠も示していない。
そこで、被請求人は、逆に乙第1号証及び乙第2号証として、福武書店発行「プロシード英和辞典」及び三省堂発行「最新コンサイス英和辞典」を提出し、上記請求人の主張に反論する。
乙第1号証は、広く学生達の間に使用されている英和辞典であり、乙第2号証は、世人に広く汎用されている英和辞典である。ところが、これらの乙号証のうち、乙第1号証には「‘n」の項の記載はなく、乙第2号証には「‘n」の項の記載はあるが、その発音記号を「 n,n」(審決注: 部分は「e」の天地を逆にしたような記号)とし、「《米俗》and又はthanの略」と記載している程度である。「《米俗》」とは、その凡例よりして、「米国の俗語」の意味である。当然ながら、「and」の項には「and」を「‘n」として使用する用法の解説の記載はない。
そうとすれば、「‘n」を「and」の意で用いることがあるとしても、それは米国におけるごく一部の限られた者の間のことであって、米国以外の英語圏において、2つの単語を結ぶのに「‘n」を用いることは、普通にはないと考えるのが相当であり、我が国における普通の英語知識の持ち主では容易に理解できる筈はない。しかも、その語意において「and」と「than」があることを考え併せるとなおさらである。
現実に、請求人が提出した甲第4号証A(被請求人が本件商標の出願前に提出した書面)についての請求人の翻訳文である甲第4号証Bにおいても引用商標を単に「メインテイル」と翻訳している。
したがって、仮に、英語辞書をひもといて「‘n」を探っても、また、その「‘n」の発音「 n,n」(審決注: 部分は「e」の天地を逆にしたような記号)からしても、引用商標は、「メインンテイル」としか称呼されず、「メインアンドテイル」と称呼されることはあり得ない。この理は、例えば、普通の英語知識を有する者であれば誰でも知っている「I am」を「I’m」と表記したとき、「I’m」を「アイアム(aiam)」と称呼せず、「アイム(aim)」としか称呼しないのと同じである。そうすると、請求人の引用商標は「メインアンドテイル」と称呼せず、「メインンテイル」のみの称呼を生ずるというのが相当である。
そこで、本件商標から生ずる「メインアンドテイル」の称呼と引用商標から生ずる「メインンテイル」の称呼を比較すると、両者は、「メイン」と「テイル」の称呼を共通にするものの、「アンド」と「ン」の相違を有する。
「アンド」と「ン」の音の相違を聴者が誤聴することはあり得ないし、全体として称呼しても構成音数の差異から誤聴されることはあり得ないので、両者は、称呼において非類似の商標である。
してみると、引用商標から「メインアンドテイル」の称呼を生ずるとの請求人の主張は誤りである。
また、観念については、「‘n」を通常の英語知識を有する者が理解できない以上、「and」と比較するすべはないので、これまた類似しないものというべきである。
さらに、外観については、一見して相違するので非類似である。
以上のように、本件商標と引用商標とは非類似であるというのが相当である。
さらに付言すると、後述のように「MANE and TAIL」は、米国では、この種商品に慣用されているから、たとえ、引用商標が請求人の所有であったとしても、両商標は、類否の判断に馴染まないものである。
(イ)米国での「MANE and TAIL」の自他商品識別力
「MANE and TAIL」は、米国では、本件商標の出願前より今日まで商品「シャンプー,コンディショナー」について、その用途又は慣用表示として使用されている(乙第3号証ないし乙第18号証)。
また、米国では、本件商標の構成と同一性を有する商標「MANE AND TAIL」を、この種商品においては、指定商品の用途又は品質として捉えている(乙第19号証及び乙第20号証:米国商標公報)。
例えば、コンディショナーについて「MANE & TAIL」(乙第3号証)、「TAIL & MANE」(乙第4号証)、「MANE & TAIL」(乙第7号証)、「Tail & Mane」(乙第9号証)、「MANE & TAIL」(乙第13号証)、「MANE & TAIL」(乙第14号証)、「シャンプー,コンディシヨナー」について「Mane & Tail」(乙第5号証)、「Tail & Mane」(乙第11号証)、シャンプーについて「Mane & Tail」(乙第6号証)、「Tail & Mane」(乙第8号証)、「MANE ’N TAIL」(乙第18号証)、トリートメントについて「TAIL & MANE」(乙第10号証)、この種商品について「MANE & TAIL」(乙第12号証)、「MANE ’N TAIL」(乙第15号証)、「MANE ’N TAIL」(乙第16号証)、「MANE ’N TAIL」(乙第17号証)がそれぞれ他の商標と併記されている。
このように「MANE and TAIL」は、この種商品に慣用的に使用されているから、該表示が請求人の所有する商標であるということはあり得ない。
(ウ)請求人の引用商標が本件商標の出願時に米国で未登録であったこと
請求人は、「請求人は、米国内において国際分類第3類及び国際分類第5類において、請求人の米国登録商標の登録を受けている。」(請求書第7頁6行ないし8行)と述べ、あたかも本件商標の出願前に、請求人の引用商標が登録になっていたかのような主張をするとともに、「米国において、1994(平成6)年7月15日出願で、国際分類第3類について商標登録を受けた請求人の米国登録商標(甲第2号証の3(1)ないし(3))に関し、ラッキーケンタッキー社より登録異議の申立てが行われたが、該異議申立は、権利侵害として却下されている。」と述べ、既に登録を受けていた請求人の米国登録商標について他人が権利侵害したことを米国特許庁が認めたかの如き主張をしている。
しかしながら、かかる主張は事実に反する(甲第2号証の3(1)ないし(3))。なぜなら、これらの甲号証には請求人の引用商標が登録されている事実は示されておらず、申立人も「ラッキーケンタッキー社」ではないから、同社が権利侵害したとの判断が示されたものではないことが明らかである。
(エ)請求人の引用商標の周知性
請求人は、その引用商標が米国内において周知であると述べ、複数の甲号証を提出しているが、そのほとんどに客観性が見られない。
請求人が引用商標を使用しているとして提出した甲号証のうち客観性が見られるのは、せいぜい甲第2号証の1、甲第10号証BNo.1及びNo.2、甲第10号証BNo.4ないしNo.4-2、甲第10号証BNo.9-1、甲第14号証ないし甲第43号証である。
これらについては、刊行物又は写真(各写し)等、実際に存在する物の複写物と思われるので、一応の客観性が認められる。
しかしながら、かかる刊行物にあっても、甲第33号証、甲第36号証ないし甲第42号証のように、本件商標の出願後のものが含まれており、かかる甲号証は、本件商標の出願前の周知性を判断する材料には供し得ない。
(オ)請求人は、「請求人の引用商標が同時期までに、我が国においても、ある程度使用され、ある程度知られるに至っていた。」(請求書6頁下から7行)及び「国内において、ある程度知られるようになっていた。」(請求書9頁下から4行)と述べているが、何らの立証もしていない。
(カ)請求人は、「ヘアコンディショナーに関しては全競争相手合計の9.4倍、シャンプーに関しては全競争相手合計の4.3倍の売上実績を誇っている。」(請求書7頁15行ないし17行)と述べているが、何らの立証もしていない。
(キ)請求人は、「米国における三大TVネットワークにおけるテレビニュース(甲第10号証No.6-1ないしNo.6-11、甲第10号証No.12-1)において延べ11回、従来、馬用の『シャンプー,コンディショナー』に付されていた請求人の引用商標を付した人間用の商品『シャンプー,コンディショナー』がベストセラーになっていることが大きく報道されている。」(請求書7頁下から3行ないし8頁2行)と述べているが、甲第10号証No.6-1ないしNo.6-11は、単に紙に文字がタイプ打ちされているというだけのものであって、その作成者も不明であり、これらがその報道に関するものであるのか否かを確認するすべがなく、証拠としての成立は認められない。
(ク)レーシングカーに請求人の引用商標が表示されていることが認められるとしても、どの程度の人がレース中に、このレーシングカーを見たのかという証拠は、何ら示されていない。この提出証拠も紙にタイプ打ちされただけのもので、その作成者も不明であって、刊行物であることを確認することができないから、その成立は認められない。
(ケ)請求人は、引用商標を付した「シャンプー,ヘアコンディショナー」を全米各地に広くピーアールするために、全米各地で開催された商業展示商談会に出品したと述べ、甲第11号証No.1ないしNo.4を提出しているが、これまた、単に自ら文字を紙に印書しただけのものであって、客観性がなく、その事実を確認できないから、その成立は認められない。
(コ)請求人は、引用商標が1989(平成1)年11月から1994(平成6)年12月までの5年間だけをみても、全米各地で発行されている多数(78種類)の雑誌に延べ数126回(甲第12号証No.1ないしNo.144-2)掲載されていると述べているが、これまた、媒体そのものでもなければ、その複製物でもなく、単に紙に文字が印書されただけのものであり、その作成者も不明であって、その内容が確認できないので、その成立を認めることはできない。
(サ)こうした中で、本件商標の出願前に引用商標が周知であるとの判断に供し得るのは、甲第14号証ないし甲第43号証の証拠中、甲第33号証、甲第36号証ないし甲第42号証を除いた残余の甲号証のみということになる。
そこで、これらの雑誌の発行時期をみると、ほとんどが1995(平成7)年7月に集中しており、とても継続的に広告宣伝が行われていたとは思えない。してみると、一過性の広告により、請求人の引用商標が周知になるとは考えにくい。そのうえ、既述のように、本件商標の出願前には、引用商標は、請求人以外にも慣用されていたから、なおさらである。
以上のとおりであるから、請求人提出の甲各号証からは、請求人の引用商標が本件商標の出願前に周知であったとは認められない。
(シ)本件商標が不正の目的をもって登録出願されたものでないこと
(a)被請求人は、米国で開発され、人間用に改良された馬用シャンプーについて、商品として興味を持ち、米国の業者4社ないし5社に引き合いを行った。業者のうちの一社が請求人である。被請求人は、請求人に対して、1995(平成7)年8月7日にFAXで申し入れを行った(甲第4号証)。
請求人は、被請求人からの申し入れを拒否したが、その理由として、請求人は、「当時、日本向けの窓口商社を通じて、他の日本の会社(アルファテクノ社)と提携していたからである。」(請求書10頁下から7行ないし3行)と述べている。しかしながら、請求人が被請求人に回答を寄せた事実はない。このことは、請求人自らが提出した甲第5号証A及びBにおいて、請求人自らがはっきりと述べている。請求人提出の甲第5号証A及びBは、請求人(元異議申立人)の元代理人が請求人に問い合せた内容であって、「なぜ(被請求人に)回答しなかったのか説明せよ」に対するものである。これには、請求人自ら「被請求人からの問い合せのファックスに直接回答しなかったのは・・・」と記述しており、回答しなかったことを認めている。したがって、請求人が被請求人の申し入れに対して「拒否した」という事実は存在しない。
また、請求人は、被請求人に対して、請求人の窓口商社であるサンディエゴの「Q’Numed社」から電話で請求人の引用商標を付した商品の販売権は譲れないとの回答をした旨述べ、甲第6号証の1ないし9を提出しているが、「Q’Numed社」から被請求人に対しては何らの回答もされていない。これについて請求人が提出した証拠は、請求人と窓口商社であるサンディエゴの「Q’Numed社」との間のいわゆる身内同士のやりとりに関するものであって、被請求人に通知されたものではない。
よって、請求人が被請求人に対して申し入れを拒否したとの主張及び請求人の窓口商社であるサンディエゴの「Q’Numed社」から被請求人に回答をしたとの主張は、いずれも事実に反する。かかる主張は虚偽である。
(b)請求人は、「被請求人が本件商標の登録によって、是が非でも請求人の引用商標を付したオリジナル商品の日本代理店になりたいとする強い意図があり、仮に、日本代理店になれない場合には、日本市場における請求人の引用商標を付したオリジナル商品の販売を阻止しようとする強い意図があった。」旨述べているが、これは主張のみであって、それを裏付けるものは何もなく、被請求人にも、そのような意図は全くない。
被請求人が本件商標を登録出願した理由は、商標「MANE and TAIL」が米国では馬の飼育場所において「シャンプー」等につき普通に用いられており、誰にも独占的権利を主張し得ないことを取引先であるパームビーチインク社から聞いたことと、我が国では、「MANE and TAIL」は、人の化粧品の業界においては勿論、馬の飼育業界においてさえ普通に用いられていないから、人間用のこの種商品においては、当然特別顕著性を有すると考えたからである。
本件商標が特別顕著性を有することは、登録異議申立の期間中に何人からも登録異議の申立てがされなかったことから明らかである。
(c)商品を製造販売する者にとって、それを使用する商標の登録出願を行い、権利を取得することは当然のことである。上述のとおり、被請求人は、請求人から何らの回答も寄せられなかったので、その時の引き合いの一相手業者であったパームビーチインク社と取引をするに至った。因みに、同社は、商標「MANE AND TAIL」の文字を付した人間用に改良されたシャンプーを製造販売している会社である。被請求人が同社より商標「MANE AND TAIL」を付した商品「シャンプー,コンディショナー」を輸入し販売を開始したのは平成8年5月である。被請求人は、自社の販売網にその商品を載せ“馬シャン”というロゴを付して宣伝広告活動を行い、相当数の売上高を示すに至っている。他方、請求人は、甲第3号証にみられるように、被請求人による本件商標の出願よりも遙かに後の平成9年4月15日に群馬県高崎市に所在するエイチエム社と代理店契約を締結した。その後、エイチエム社は、請求人の商品を販売した。そこで、被請求人は、エイチエム社に対して、平成9年10月8日付で警告文を送付したのである(甲第8号証)。
(d)請求人は、「請求人の我が国における唯一の販売会社であるエイチエム社に対し、被請求人は、引用商標を付した商品の販売中止等を求める警告文(甲第8号証)を送付してきた。」旨述べているが、この表現は、事実と異なる。被請求人が販売中止を求めたのは、「エイチエム社が販売している商品の表示中、「メインアンドテイル」という表示(乙第21号証ないし乙第23号証:広告)を付した商品や「MANE & TAIL」等と表示して、「メインアンドテイル」の称呼を生じさせ、取引の場に供されている商品についてのみである。言い換えると、エイチエム社は、引用商標にわざわざ振り仮名を付し、本件商標の称呼「メインアンドテイル」と同じ読みとしている。引用商標のみの表示であれば、被請求人は何ら関知しない。もともと、被請求人は、「メインアンドテイル」の称呼と「メインンテイル」の称呼とは類似しないとの認識だからである。エイチエム社が、殊更、「メインアンドテイル」の表示を併記したことに問題があると被請求人は認識している。したがって、警告文の送付は、商標権者である被請求人としては当然の行為である。
(ス)以上のとおり、本件商標は、請求人の業務に係る商品を表示する引用商標と同一又は類似であることを被請求人が知りながら、不正に登録を得たものではないから、その登録は、商標法第4条第1項第7号の規定に該当するものではない。
(2)商標法第4条第1項第19号の不該当性について
上記商標法第4条第1項第7号の不該当性についての項で述べたように、被請求人の本件商標と請求人の引用商標とは同一又は類似でなく、しかも、「MANE and TAIL」は、米国で慣用されているから、類否の判断に馴染まず、被請求人が不正の目的をもって、我が国において商標登録を得たものではない。仮に、請求人の引用商標が周知であったとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第19号の規定に該当するものではない。
(3)請求人の弁駁に対する再答弁
(ア)被請求人は、「‘n」が「and」の省略形でないなどと述べているのではない。
被請求人は、請求人が請求書において、引用商標について、「英語圏では、前後の2つの単語を結ぶ『and』がある場合には、これをしばしば「‘n」で表示することが行われる。したがって、引用商標は、『Mane and Tail』の省略形であることが英語を理解する人であれば、容易に理解できる。」(請求書3頁下から7行ないし5行)と何の証拠も提出せずに主張しているので、逆に乙第1号証及び乙第2号証を提出して「‘n」を「and」又は「than」の意で用いる場合があることを乙第2号証の記載から理解したうえで、「米国以外の英語圏において、2つの単語を結ぶのに『‘n』を用いることは普通にはないと考えるのが相当であり、我が国における通常の英語知識の持ち主では容易に理解できる筈がない。」(答弁補充4頁6行ないし8行)と述べたのである。被請求人は、「‘n」が乙第2号証から「and」の省略形であることを理解しつつも、我が国の通常の英語知識を有する程度の者では、容易にこれを理解できないと述べたのである。
(イ)請求人は、被請求人提出の乙第2号証に「米俗語として『‘n』が『and』の略であるとして搭載されていること自体、辞書に収録する必要があるほど一般化していることを証明している。」(弁駁2頁下から6行ないし4行)と述べているが、辞書に掲載される単語は、一般化しているから掲載されるのではなく、辞書は、その単語の読み方、意味、語源、用例などの不知な者であっても、理解し易いように編集したものであって、一般化されているとかいないとかは無関係である。なお、請求人は、幾つかの辞書の電子版について言及しているが、証拠として提出されていないので、被請求人としては、言及のしようがない。いずれにしても、請求人は、通常の英語知識を有する者であれば、容易に理解できるというのであれば、それを立証するのが筋である。
(ウ)本件商標は、請求人の引用商標とは類似しない。請求人は、引用商標からどのような称呼を生ずるかを明確にし、そのうえで、本件商標との称呼を比較すべきであるにもかかわらず、どのような称呼が生ずるかを明確にしていない。
請求人は、請求人の出願に係る商標が本件商標を引用して拒絶されたことを種々述べているが、本件商標の出願時と請求人の出願に係る商標の拒絶査定時とでは事情が異なっているだけでなく、請求人自身が類似であると騒ぎ立てた結果、そうなったのであるから、致仕方ない(答弁補充53頁10行ないし15行)。
なお、請求人は、「我が国に導入されて比類のない主要外国語として定着した英語の100年以上に亘る歴史を無視した暴論」(弁駁3頁12行ないし13行)と述べるが、全ての英単語を我が国国民が理解しているという必然はなく、その単語の持つ意味合いを我が国の国民の通常の英語知識を有する者が容易に理解することができるかどうかが重要なのである。
(エ)請求人は、「『and』の代わりにしばしば『‘n』が使用されることは、例えば・・・」(弁駁3頁16行ないし22行)と述べ、その証拠として甲第64号証の1ないし5を提出しているが、これらは、いずれも米国内での頒布に係るものであり、しかも、甲第64号証の2ないし4は、本件商標の査定時以降の日付であるから、これらをもって、本件商標の出願時に、我が国の国民のうち、通常の英語知識を有する者、すなわち、請求人主張の「英語を理解する人」が「容易に理解できる」ことの証左とはならない。
(オ)請求人は、「第三者(被請求人は使用者を明記していない)による使用は、請求人所有の米国登録商標「Mane ‘n Tail」に抵触するので、本来、使用されてはならないものであるにもかかわらず、請求人の引用商標の評判にあやかり、只乗りを試みたものである。」(弁駁4頁1行ないし4行)と述べている。
しかしながら、請求人の米国登録商標は、本件商標の出願時に登録されていなかったことは、記述のとおりである。
したがって、米国において、請求人の引用商標が登録されているということを本件商標の出願時に、被請求人は知ることができない。
(カ)請求人は、「甲第63号証(諸外国における請求人の対応を示すリスト)に示すように、米国はもとより他の国でも訴訟及び異議申立で対処し、ほとんどの場合に主張が認められている。」(弁駁4頁5行ないし7行)と述べているが、それに掲載された事例のほとんどが米国のものであり、また、本件商標の出願以降の事例であるから、これまた、被請求人が本件商標の出願時に、そのことを知ることができなかったものである。仮に、本件商標の出願前の事例があったとしても、殊更、日本で報道されたものではなく、知ることには無理がある。
(キ)請求人は、「被請求人が請求人の引用商標の評判にあやかり、只乗りを試みたものである。」(弁駁4頁3行ないし4行)と述べているが、本件商標の出願時以降の被請求人と関係のない他人(第三者)の事実をもって、被請求人が本件商標の出願時に只乗りを試みることができる筈はない。
(ク)請求人は、「被請求人は、乙第3号証ないし乙第11号証を提出しているが、立証の根拠にはならない。」(弁駁3頁下から1行ないし4頁1行)及び「乙第12号証ないし乙第18号証のカタログについても同様である。」(弁駁4頁8行)と述べているが、被請求人は、米国での乙号証に示されている事実をそのまま示したのであるから、それを否定することはできない筈である。
そもそも、請求人は、本件商標の登録を無効とする理由を商標法第4条第1項第7号及び同第19号に依拠しているところ、それらは、本件商標の出願時に、請求人との関係で被請求人に公序良俗違反があったか否か、出願時に、被請求人は、請求人が主張している米国で周知の引用商標を不正の目的(不正の目的を得る目的、他人に損害を与える目的、その他の不正目的)をもって使用する者であったか否かが重要な意味合いを持つのである。
したがって、米国内における乙第3号証ないし乙第11号証及び乙第12号証ないし乙第18号証に示されている客観的な事実は極めて重要である。 被請求人は、かかる乙号証の事実を見聞きすることはできても、請求人の引用商標が米国内で周知であることを見聞きすることはなく、また、それが日本において周知であるという事実もなかった。
(ケ)請求人は、「米国の商標制度は、使用主義に基づくもので、使用がなければ登録もない。」(弁駁4頁12行)と述べているが、それはそのとおりである。
しかしながら、使用により登録されたことと周知性とは何の関係もない。仮に、請求人主張の事実(弁駁4頁下から4行ないし5頁下から1行)を並べ立てたとしても、また、請求人の引用商標が米国で周知であったとしても、日本において、それらが殊更報道されたわけではなく、被請求人は、それを全く知ることができなかった。
先述のとおり、少なくとも、乙第3号証ないし乙第11号証及び乙第12号証ないし乙第18号証に示されている客観的事実は存在した。
(コ)請求人は、使用開始から登録に至る経緯を述べているが(弁駁4頁下から5行ないし5頁下から1行)、被請求人は、請求人に関する部分及び証拠提出のない部分については不知である。
なお、請求人は、被請求人が1995(平成7)年10月に本件商標を登録出願したと述べているものの、これに対し、登録異議の申立てをしたことについて述べていない。
本件商標の登録に対し、請求人は、本件審判請求と同様の理由をもって登録異議の申立をしたが、平成11年9月10日に登録を維持する決定がなされている。
この決定では、「申立人の提出に係る証拠を検討し、かつ、職権をもって調査したところによれば、申立人は、米国において引用商標を『シャンプー,ヘアコンデイショナー』に使用していることは認められるが、引用商標が本件商標の出願時に我が国においてはもとより、米国においても、取引者、需要者の間において広く認識され、周知著名性を獲得するに至っていたものとは判断することができない。してみれば、本件商標をその指定商品に使用しても、当該商品が申立人又は申立人と何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれはないものといわなければならず、本件商標は、不正の利益を得る目的又は他人に損害を与える目的をもって使用されるものとも判断し得ない。」としている。
(サ)請求人は、「被請求人は、請求人提出の証拠が偽造であることを何ら立証していない。かかる被請求人の主張は証拠もなく請求人を誹謗するものであり・・・」(弁駁6頁14行ないし15行)と述べているが、被請求人は、請求人の提出証拠が捏造とか偽造であるとは一言も述べていない。
被請求人は、請求人の証拠に対する主観はどうあれ、客観性のない証拠については、その事実を確認できないと述べたにすぎない。
(シ)請求人は、引用商標が本件商標の構成中の欧文字「MANE and TAIL」と比較して「発音上及び観念上もほとんど同一といってよい」(弁駁6頁下から8行ないし7行)と述べているが、引用商標がどのように称呼されるのかを一言も明確にしていない。先述のように、前者は、「メインンテイル」の称呼、後者は、「メインアンドテイル」の称呼しか生じない。観念については、本件商標の出願時に「‘n」が「and」の略であることを普通の英語知識を有する者が理解できない以上、比較するすべはない。
(ス)請求人は、「請求書で、被請求人からの申し入れを請求人が『拒否した』と記載したが、『直接拒否を通知した』という意味で使用したのではなく、受け入れる意思がなかったので回答しなかったということを端的に拒否したと表現したにすぎない。」(弁駁6頁下から4行ないし1行)と述べ、かつ、「このことは、本質的なことではなく・・・」と述べている。
しかしながら、請求人によるこの主張の変更は、本質に関わる問題である。請求人は、積極的に拒否したとの具体的理由を述べ、そのことを被請求人に回答したとはっきり述べている。そして、被請求人からは、何らの回答もなかったとしている。これがどうして、「受け入れる意思がなかったので、回答しなかったということを端的に拒否したと表現したものにすぎない。」ということになるのか、請求人が被請求人に回答しなかったということと、被請求人に回答したが、被請求人からは回答がなかったということとは大変な違いである。
請求人は、「被請求人による本件商標の出願は、不正の意図で出願されたものであり、公序良俗に反する。」とか、「請求人の活動を妨害しようとの意図に基づいて、本件商標を取得したことが以下に立証される。」と述べ、被請求人による本件商標の取得(不正の意図に基づく出願)に公序良俗違反があったこと若しくは不正競争の目的があったことについて真っ先に主張している。その主張は、一度に止まらず、請求書でも同様の主張が繰り返されており、その主張が真実でないと指摘されるや、「このことは本質的な問題ではない。」としている。しかしながら、請求人の主張が真実でなければ、不正の意図そのものの立証がなくなるのである。
(セ)被請求人は、請求人に引用商標を付した商品の取引のために接触したことはそのとおりである。
しかしながら、引用商標とは別に、先に乙号証に示したように、その当時、被請求人が取引を開始した商標「Mane and Tail」、「Mane & Tail」は、請求人以外の者によっても多数製造販売されていた。
被請求人は、請求人との取引を希望していたが、請求人から回答がなかったので、そのときの一相手業者を取引の相手に選んだ。
このことは、先に「被請求人は、請求人から何ら回答を寄せられなかったので、そのときの引き合いの一相手業者であるパームビーチインク社との取引を行うに至った。因みに、同社は、『MANE and TAIL』の文字を付した人間用に改良されたシャンプーを製造販売している。」と述べたとおりである。
このような状況下において、どうして、引用商標や「Mane and Tail」につき請求人のみが独占権を有し、しかも、それが周知商標であると被請求人に知り得ようか。乙号証に示した事実は、客観的な事実であり、その事実からしか物事を判断することはできない。
(ソ)請求人は、「被請求人が本件商標を出願し登録を得た行為が不正である。」とし、種々理由を述べている。
しかしながら、当時、米国においては、請求人以外の商品であって、乙号証に示した商品も取引の場で提供されていたから、被請求人としては、請求人の引用商標や「Mane & Tail」あるいは、「MANE and TAIL」が請求人の商品を表示する標識であるというよりは、むしろ、米国で、この種商品について普通に使用されているものとしか理解のしようがなかった。それでも、被請求人は、請求人の引用商標を避け、新たな取引者との関係で、本件商標を選択したのである。
被請求人は、本件商標が我が国において特別顕著性を有すると考え、その商標登録出願を行い、登録を得たのであり、商品を製造販売する者にとって、商標を登録出願し、権利を取得することは当然のことである。
(タ)請求人は、「被請求人は、引用商標が請求人の商標であることを知りながら、それと類似する本件商標を出願したこと自体、公序良俗に反する。」と主張している。
しかしながら、商標が自他商品識別標識としての機能を有するか否かにかかわらず、単に文字、図形、記号、若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合を一定の要件のもとに使用しているという意味であればともかく、被請求人は、本件商標の出願時に引用商標が請求人の商標を表示する標識として自他商品識別力を有していたことについて知らなかった。請求人は、引用商標が請求人の商品の識別標識として機能することを被請求人が「知りながら」と再三述べているが、本件商標の出願時に、引用商標が請求人の商標として自他商品識別標識としての機能を有することを被請求人が知っていたことについて、請求人は一切証明していない。
被請求人提出の乙号証に示されている米国における客観的事実から、被請求人が引用商標や「Mane and Tail」を、この種商品について慣用されているものと理解したことは極めて自然である。
(チ)請求人は、被請求人が本件商標を出願したことのきっかけが米国の販売業者にあると述べるかの如き指摘をしているが、被請求人の答弁をよく見るべきである。
被請求人は、本件商標の登録出願をした理由として、「『MANE and TAIL』が米国では馬の飼育場所においてシャンプー等に普通に使用されているマークであり、誰にも独占的権利を主張し得ないことを取引先であるパームビーチインク社より聞いていたことと、我が国では『MANE and TAIL』が人の化粧品の業界においては勿論、馬の飼育業界においてさえも普通に使用されている事実がないことから、人間用のこの種商品においては、当然特別顕著性を有すると考えたからである。」と述べたが、これに対し、請求人は、パームビーチ社が引用商標及びそれに類似する商標を米国内で使用できない立場にあり、被請求人もその事実を知っていた筈である。」と証拠を提出せずに述べている。しかしながら、そのようなことについて被請求人は不知である。
(ツ)請求人は、「引用商標及び請求人の米国登録商標に『TM』を付していたので、被請求人は、これを知っていた筈である。」と述べているが、被請求人が出願し登録を得たのは本件商標であって、引用商標ではない。被請求人にとって、当時は、乙号証に記載されている事実のみが客観的に知ることのできた状態であるから、引用商標が請求人の自他商品識別標識としての機能を有するかは知ることができなかった。まして、「MANE and TAIL」に至ってはなおさらである。
(テ)請求人は、被請求人やアルファテクノ社が、いずれも請求人に接触して、販売契約の締結を求めたり、あるいは、締結したのは、請求人の引用商標を付した製品の成功を知っており、引用商標を付した製品の販売をしたかったからであると述べている。
しかしながら、被請求人は、請求人のみに接触したのではない。被請求人は、馬用シャンプーにつき、商品として興味を持ち、米国の4社ないし5社に引き合いを行った。そのうちの一社が請求人というだけのことである。また、被請求人以外のアルファテクノ社が請求人と契約を締結したことは、被請求人にとって何の関係もない。
(4)まとめ
叙上のとおりであるから、被請求人は、他人の業務に係る商品を表示する引用商標と同一又は類似であることを知りながら、不正に本件商標の登録を得たものであるとか、被請求人は、他人の業務に係る商品を表示する商標として外国において需要者の間に広く知られていた引用商標と同一又は類似であることを知りながら、不正に本件商標の登録を得たものであるとかという事実はなく、商標法第4条第1項第7号又は同第19号の規定に該当しないから、同法第46条第1項第1号の規定により無効にされるべきであるとの請求人の主張は失当である。

4 当審の判断
(1)本件商標と引用商標の類否
(ア)本件商標は、「MANE and TAIL」の欧文字及び「メイン アンド テイル」の片仮名文字を二段に横書きした構成よりなるところ、その構成中、前半の「MANE」が「たてがみ」等の意を、また、後半の「TAIL」が「尾,しっぽ」の意を有することから、全体として「メインアンドテイル」の称呼を生ずるとともに、「たてがみとしっぽ」の観念を生ずるものといえる。
(イ)これに対し、請求人の引用商標は、「Mane ‘n Tail」の文字よりなるものである。
しかして、我が国においては、例えば、「rock ’n’ roll」が「rock and roll」の省略形(短縮形)であることは、よく知られており、このことは株式会社研究社発行「新英和大辞典第5版」1830頁及び1831頁の「rock and roll=rock ’n’ roll/[音楽]ロックンロール《・・・;rock and rollともいう》」という記載よりしても是認し得る。
これを踏まえて引用商標をみるに、引用商標「Mane ‘n Tail」の構成中の「‘n」が「and」の省略形(短縮形)として用いられる場合のあることは、被請求人も「『‘n』が『and』の省略形でないなどとは述べていない。」と自認しており(答弁書(第二)2頁11行及び12行)、また、被請求人提出の乙第2号証(昭和41年9月10日株式会社三省堂発行「最新コンサイス英和辞典」732頁)に「’n[ n,n]/《米俗》and又はthanの略」(審決注: の部分は「e」の天地を逆にしたような発音記号)との記載があることよりすると、「’n」が「and」の省略形(短縮形)として用いられることがあり、このことは我が国においても相当程度知られているとみるのが相当である。
そうとすれば、引用商標「Mane ‘n Tail」よりは、「Mane and Tail」の省略形(短縮形)であるということが容易に理解、認識され、それより「メインアンドテイル」の称呼を自然に生じ、「たてがみとしっぽ」の観念を生ずるとみるのが相当である。
この点について、被請求人は、引用商標からは「メインンテイル」の称呼しか生じないとしているが、撥音「ン」を二度連続して発するのは困難であって、これを引用商標から生ずる自然な称呼とすることはできない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、「メインアンドテイル」の称呼及び「たてがみとしっぽ」の観念を共通にし、互いに紛れるおそれある類似の商標であるといわなければならない。
(2)引用商標の周知性
請求人提出の甲第14号証ないし甲第32号証、甲第34号証は、本件商標の出願前に発行された15種類の米国の雑誌であり、これらの雑誌には、述べ20回に亘り、引用商標が表示された「シャンプー,ヘアコンデショナー」等の製品(ボトルの写真入り)の広告が全て1頁を使用して掲載されている。
また、甲第35号証ないし甲第42号証は、本件商標の出願後ではあるが、その登録査定日前に発行された米国の雑誌であり、これらにおいても上記と同様に継続して請求人の引用商標が表示された「シャンプー,ヘアコンデショナー」等の製品(ボトルの写真入り)の広告が全て1頁を使用して掲載されている。
以上によれば、請求人の引用商標は、遅くとも本件商標の出願時には、前記の商品について米国における需要者等の間において広く認識されていたものと認められる。
(3)不正の目的について
請求人提出の甲第4号証A及びBは、被請求人が本件商標の出願前の1995年8月7日に、請求人に対して送付した書面及びその翻訳文と認められるところ、この書面(翻訳文)によれば、被請求人は、その文中で「弊社では、貴社のお名前と製品について、4、5年前から存じ上げております。とりわけ馬用のヘアケア製品に興味を持っております。」及び「要点としては、弊社は貴社の『メインテイル』ヘアケア製品に非常に興味をもっており、できれば貴社から輸入したいと考えております。・・・」と記述されていることが認められる。
本件商標は、日本の企業である被請求人が容易に想起し得る程に簡単な語の結び付きであるとは認め難く、綴字に大文字と小文字の差異があるとしても、「and」(又は「‘n」)の前後の欧文字の合致よりして、請求人の引用商標と酷似していることから、被請求人による本件商標の採択が偶然に行われたものとは解し難い。
してみれば、請求人の引用商標と偶然の一致により、それと類似する本件商標が採択されるに至ったとは考え難く、被請求人は、本件商標が請求人の業務に係る商品を表示するものとして少なくとも米国における需要者等の間において広く認識されていた引用商標と類似であることを知りながら、引用商標が我が国において未だ登録されていないことを奇貨として米国の権利者である請求人の国内参入を阻止し、あるいは、国内代理店契約を有利に導き、若しくは、それを強制するために、又は請求人の引用商標の顧客吸引力を希釈化させ、ないしは、それに便乗して不当な利益を得る等の目的のもとに出願し、権利取得したものと推認せざるを得ないから、本件商標は、不正の目的をもって使用をする商標に該当するものといわなければならない。
(4)むすび
したがって、本件商標は、請求人のその余の無効事由について論及するまでもなく、商標法第4条第1項第19号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2004-06-25 
結審通知日 2004-06-29 
審決日 2004-07-16 
出願番号 商願平7-109888 
審決分類 T 1 11・ 222- Z (003)
最終処分 成立  
前審関与審査官 八木橋 正雄 
特許庁審判長 小池 隆
特許庁審判官 柴田 昭夫
鈴木 新五
登録日 1997-09-05 
登録番号 商標登録第4051523号(T4051523) 
商標の称呼 メインアンドテイル 
代理人 宇野 晴海 
代理人 倉内 基弘 
代理人 風間 弘志 

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