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審決分類 審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y43
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y43
管理番号 1119698 
審判番号 無効2004-89024 
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-08-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-05-20 
確定日 2005-06-24 
事件の表示 上記当事者間の登録第4723948号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4723948号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1.本件商標
本件登録第4723948号商標(以下「本件商標」という。)は、平成15年3月27日に登録出願され、「筑紫樓」の文字を横書きしてなり、第43類「宿泊施設の提供,飲食物の提供,会議室の提供,展示施設の提供」を指定役務として、平成15年11月7日に設定登録されたものである。

第2.請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第58号証を提出した。
1.請求の理由
(1)無効事由
本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び第4条第1項第8号に該当し、同法第46条第1項第1号により無効にすべきものである。
(2)無効原因
(2-1)請求人は、昭和53年に「筑紫樓」の名称で創業を開始し、その後、平成6年7月7日に「筑紫樓」の称号をそのまま使用して法人となった資本金1000万円の株式会社である。
(2-2)請求人の営業目的は、中華料理店、そのほかの東洋料理店、日本料理店の経営を主とし、特にふかひれを主体とした中華料理店として広く全国的に周知、認識されるに至った著名な会社である。
(2-3)請求人は、現在恵比寿店、広尾店、丸ビル店、グランデュオ立川店、八丈島店を開店しており、今年度は新しく日本橋三越店を開店する予定である。請求人の従業員は現在84名である。平成15年度の年間売り上げ金額は、約16億円である。
(2-4)このように、請求人は「筑紫樓」の名称で長年にわたり営業を続け、ふかひれを主体とした中華料理店として全国的に周知、認識されるにいたっている。一方、被請求人はふかひれ麺店を営んでいる形跡はない。
(2-5)以上のことから、被請求人の行為は、商標法第4条第1項第1 0号及び第4条第1項第8号に該当し、本件商標は無効とされるべきである。
2.弁駁の内容
被請求人は、答弁書を提出しているが、請求人としてはその答弁の理由には到底承服することができないので、以下の通り弁駁する。
(1)先ず、被請求人は、「請求人が『筑紫樓』の名称で長年にわたり営業を続け、ふかひれ専門店として全国的に周知・認識されるに至っている。」との主張について争うと答弁をしているが、請求人の標章である「筑紫樓」は既に周知・著名性を有するものとして認められていることは特許庁の審査例において明らかな事実である。(甲第33号証及び甲第34号証)。
(2)被請求人が、当該周知・著名性については前述のとおり争っており、かつ、請求人の一部の主張に対しては不知と答弁をしているので、請求人は請求人が「飲食物の提供」について使用している標章「筑紫樓」が、当該登録商標の出願日前に既に周知・著名となっていたことを更に立証すべく、請求の理由(無効原因)及び証拠を追加提出する。
(3)請求人は昭和53年(1978年)に恵比寿に「筑紫樓」として中国料理店を開業したのであるが、その開店当時店舗を賃借するにあたり、貸主(志村産業株式会社)と賃貸借契約を締結した。
貸主はそれまでに「筑紫樓」という屋号で中華料理店を営んでおり、賃貸借契約を締結する際に貸主は「筑紫樓」という屋号を絶やしたくないので、この「筑紫楼」を継続して使用して欲しいとの意向を有していたため、請求人はこの貸主の意向を快諾して店名を「筑紫樓」にしたという経緯がある。
(4)請求人の「筑紫樓」は、「魚翅海鮮酒家」と称することから分かるようにフカヒレ料理を主とする店である。
従来高級食材とされていたフカヒレ料理は、請求人のオーナーである岡田久徳社長が乾燥法から研究を重ね、気仙沼の業者に特注して大量購入することにより原価を抑えることによって、「フカヒレ料理」が高級料理であるというイメージを一新させることに成功し、その結果、フカヒレ料理の「筑紫樓」は一般大衆も気楽に食することができるとの評価が高まったため、平成6年(1994年)には「東口店」と同じ恵比寿に「恵比寿店」を新規開店すると共に、平成6年(1994年)7月7日には個人営業を法人組織に改めて請求人会社を設立したものである。
請求人は、当該登録商標の出願日である平成15年3月27日前より雑誌、新聞等による広告、宣伝をし、ガイドブック、雑誌等にも恵比寿店の提供するフカヒレ料理は広く紹介されるようになった。
例えば、講談社発行の「東京おいしい店ガイド98-99厳選1003軒」、文芸春秋社発行の「東京いい店うまい店2001-2002年版」、ザ ガットサーベイ発行の「東京のレストラン2001」、グルメぴあ発行の「首都圏版2002」、柴田書店発行の「MOOK dining vol.2」、イマジカパブリッシング発行の「ARIGAT0 vol.15 2002年12月号」等に紹介されている(甲第35号証ないし甲第40号証)。
(5)また、インターネットにより「筑紫樓」を検索キーとして抽出してみると、計461件(甲第41号証)が抽出された。これらの記事の大多数は恵比寿店でフカヒレ料理を食した一般人による感想文であり、その記事のほとんどは「フカヒレで有名な恵比寿店」と記載されている。
(6)このように、請求人によって提供されるフカヒレ料理はかっては高級料理であるというイメージがあったが、請求人のたゆまぬ努力により一般大衆も手軽に食することができるようになったため、請求人の「筑紫樓」はむしろ一般大衆の口こみにより人気店となったと言っても過言ではない。
(7)請求人は、その後も「筑紫樓」の営業表示をした店舗を次々と新規開店し、平成10年(1998年)6月には八丈島のリゾート施設「筑紫荘」を開業し、平成14年(2002年)9月には「丸の内店」と「広尾店」を、平成16年(2004年)4月には「立川店」を出店する等、東京の主要な繁華街に次々と出店したのである。また、平成16年10月11日には、グランドオープンした日本橋三越本店新館に「筑紫樓」を開店した。
そして、請求人は、すべての店名を「筑紫樓」とし(甲第45号ないし甲第49号証。)、各店舗で着用する厨房ユニホーム、ホールユニホーム(甲第50号証及び甲第51号証。)やメニューにも「筑紫樓」を継続使用している(甲第52号証ないし甲第55号証)。
更に、近日中に東京駅八重洲北口に「東京駅北口店(仮称)」を、平成17年(2005年)2月には中部国際空港ターミナルビル4階に「中部国際空港店(仮称)」の出店が決定している。
(8)前述の通り、請求人は、平成14年9月に当時話題となった東京駅の丸ビル内に店舗を構えたのであるが、2002年11月15日付けの日本外食新聞には東京駅の丸ビル店について「…恵比寿にある同店はフカヒレ料理の専門店としてあまりにも名高く、全国各地から同店のフカヒレ料理を求めて来店する。…土・日で650ないし700人、平日でも400人前後の来客がある。」として請求人を著名なフカヒレ料理店として紹介する記事が掲載されている(甲第56号証)。
(9)また、請求人の「筑紫樓」は、テレビのグルメ番組等でも著名な「フカヒレ料理店」として数回紹介され、その一例を示せば、2001年10月28日にテレビ東京で放映された「ドライブAGOGO」、2001年12月9日にフジテレビで放映された「堂本兄弟」、更に、テレビ東京で毎週土曜日に放映されている「アド街ツク天国」では1995年6月17日、1998年4月18日、2004年9月18日の3回も請求人の店が紹介されている。なお、必要であればテレビ番組で紹介されたビデオを提出する用意があることを念のため申し添える。
(10)請求人による全店舗の年間売り上げは、平成10年度が8億6千400万円、平成11年度が8億8千200万円、平成12年度が9億500万円、平成13年度が9億8千700万円、平成14年度が12億7千400万円、平成15年度(8ヶ月)は10億800万円であり、出店数の増加と共に売り上げを伸ばしていることが明らかである(甲第57号証)。
(11)前記したように、請求人は、平成14年9月に東京駅の「丸ビル」内に店舗を出店したが、その際に次のような記事が掲載されている。
「ふかひれ料理といえば中華料理の中でも最高級品というイメージがあるが、ふかひれ専門店筑紫樓は手ごろな価格でふかひれを提供している。… その筑紫樓が、丸ビルに出店して話題を呼んでいる。来店客のうち、主婦層の占める割合が高く、ランチタイムではそれが特に顕著になる、と語るのは丸ビル店支配人の六本木友明さん。…恵比寿店が繁盛していたことから丸ビル出店の話しを頂きましたが、いざ出店してみると予想の3倍以上のお客様がご来店くださるようになったのです。… 最近はビジネスマンの皆様が気軽においしいものを食べられる店としてご利用くださるようになったのです。」(甲第58号証)。
ここで注目すべきは、請求人が丸ビルに出店する経緯は丸ビル側からの要請に基づくものであったということである。
周知の通り丸ビル内にはレストラン、アパレル関係等多種多様の店舗が数多く入っているが、その全ての店舗は世界的に著名な店舗ばかりであるということである。
請求人に対し出店要請があった時、請求人としては丸ビルのような商業施設での出店は経験がなく、会社の方針により一旦は出店要請を断ったのであるが、度重なる丸ビルからの要請があったため出店を決断したものである。
この丸ビル出店に際する経緯からしても、請求人の「筑紫樓」が如何に著名であったかが理解される。
(12)以上詳述したように、請求人の店舗名である「筑紫樓」は、遅くとも当該登録商標の出願日前には既に著名な標章となっていたことは明白であり、また、「筑紫樓」は請求人の略称でもあるから略称としても著名となっていたこともまた明白である。

第3.被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする。との審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べている。
1(手続の経緯)については認める。2(無効事由)については争う。
3(無効原因)について(3-1)、(3-2)、(3-3)については不知である。
(3-4)の「著名性」については争う
すなわち、商標法4条1項10号に該当するためには、隣接数県の相当の地域にわたり、少なくともその同種取り扱い業者の半ばに達する程度の層に認識されていることを要するところ、請求人の表示がかかる認識を有されているとは言えず、請求人の表示は未だ広く知られてはいない。
また、「被請求人はふかひれ麺店を営んでいる形跡はない」との請求人の主張については認めるが、被請求人は平成16年4月に、東京都新宿区大久保1-1-11所在のビル内において「レンタルスペース筑紫樓」の名称の下、貸展示場をオープンさせた。
しかしながら、本件物件は手狭になったため、現在は新たな場所に飲食店を併設した展示施設および貸し会議室を開店するべく鋭意準備中であるが、現在のところ被請求人としては「ふかひれ麺店」を営む計画は無い。
(3-5)については争う。
請求人の表示が著名あるいは周知性を獲得していない以上、請求人の主張には理由がない事は明らかである。

第4.当審の判断
1.「筑紫樓」の著名性について
請求人の提出に係る甲号各証によれば、以下の事実が認められる。
(1)営業許可証(甲第3号証ないし同第9号証)
請求人は、渋谷区恵比寿三丁目2番2号、同恵比寿南一丁目10番2号(プライムスクエアプラザ)、東京都八丈島、千代田区の丸の内ビルディング、立川市のグランデュオ立川に、いずれも本件商標の登録出願前である、平成6年4月22日、同7年6月2日、同10年6月30及び同14年8月29日より「筑紫樓」あるいは「筑紫樓魚翅海鮮酒家」を営業所の名称(屋号又は称号)として、請求人名あるいは株式会社筑紫樓が飲食店の営業許可を得ている。
(2)雑誌による請求人店の紹介記事(甲第11号証ないし同第22号証、同第32号証)
1995年7月1日発行 光文社ブックスVOL27 マンボウムックス6「おいしい中華料理屋さんの本」に「恵比寿のお手軽ランチなら、午後も美肌をキープ!」との見出しで、「筑紫樓」広尾店が紹介され(甲第11号証)、2003年1月1日 (株)集英社発行「BAILA 1」に、「あのふかひれそばがランチに!」の見出しで「筑紫樓」広尾店が紹介され((甲第16号証)、2002年11月10日 角川書店発行「Tokyo Walker」に、「絶品のフカヒレスープと釜焼きの北京ダックは一度食べたらやみつき」との見出しで「筑紫樓魚翅海鮮酒家」が紹介され(甲第19号証)、 平成5年12月1日 株式会社講談社 講談社MOOK ’94東京の「うまいもの屋555店」に「手作りの旨い”ふかひれ”が15種」の見出しで「筑紫樓(恵比寿)」が紹介され(甲第21号証)、1994年1月1日 世界文化社発行 家庭画報1月号臨時増刊 「ごちそうマガジン」に、「この店の厨房拝見」の見出しで「筑紫樓本店」が紹介された(甲第22号証)。
(3)「株式会社 筑紫樓」の年間総売上(甲第57号証)
平成10年度が約8億6千400万円、平成11年度が約8億8千200万円、平成12年度が約9億500万円、平成13年度が約9億8千700万円、平成14年度が約12億7千400万円、平成15年度(8ヶ月)は約10億800万円の総売上である。
(4)以上の請求人の主張、弁駁及び前記証拠よりすれば、請求人は、昭和53年4月より中華料理店「筑紫樓」の営業を開始し、高級食材であった「ふかひれ」を、独自の方法での仕入れ、手軽な値段で提供し、上記(1)の営業許可証からも明らかなように、平成6年頃より恵比寿、同14年9月に丸の内、広尾に出店し、この間「筑紫樓」は、「ふかひれ料理専門店」として雑誌等に取り上げられ、遅くとも本件商標の出願時において、既に請求人の業務に係る役務「ふかひれ料理等の中華料理を主とする飲食物の提供」を表示する商標又は店名若しくは請求人の略称として、取引者・需要者の間に広く認識され、その著名性は登録査定時においても継続していたものとみるのが相当である。
2.商標法第4条第1項第8号について
商標法第4条第1項第8号は、他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名・・・若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものをの除く。)について登録を受けることができない旨規定しているところ、本件商標は、前記のとおりの構成よりなるものであり、請求人の店名又は著名な略称である「筑紫樓」と「楼」の文字も旧字の「樓」を用いた全く同一の「筑紫樓」の漢字よりなるものである。
してみれば、本件商標は、請求人の著名な略称である「筑紫樓」の文字よりなるものであって、その他人の承諾を得たものということはできないから、商標法第4条第1項第8号に該当するものといわなければならない。
3.商標法第4条第1項第10号について
本件商標は、前記のとおり、請求人が「ふかひれ料理等の中華料理を主とする飲食物の提供」について使用し、広く知られた商標と類似の商標であって、請求人の役務と同一又は類似の役務に使用するものであるから、その指定役務中「飲食物の提供」については、商標法第4条第1項第10号に該当するものといわなければならない。
4.結語
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第10号に違反して登録されたものであるから、その登録は、同法第46条第1項の規定により無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2005-03-31 
結審通知日 2005-04-04 
審決日 2005-05-13 
出願番号 商願2003-29225(T2003-29225) 
審決分類 T 1 11・ 25- Z (Y43)
T 1 11・ 23- Z (Y43)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小田 昌子 
特許庁審判長 山田 清治
特許庁審判官 岩崎 良子
小林 薫
登録日 2003-11-07 
登録番号 商標登録第4723948号(T4723948) 
商標の称呼 チクシロー、ツクシロー 
代理人 東谷 隆夫 
復代理人 保田 眞紀子 
代理人 相川 裕 
代理人 船山 暁子 

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